M 罵MOm
OF
S▲G ▲MI IN 蝕TITUT 甅 OF T−CHNOLOGY Vo 且
.
14,
No.
1卩
19802
サ
ィ
ク
ル
エン ジ ン
の
材 料
に
つい
て
田 辺 明*・平
綿
勝 彦
*・
木 村
広幸
* *On
the
Material
Test
of2
Cycle
Racing
Engine
Akira
TANABE
,Katsuhiko
HIRAwATA
and
Hiroyuki
KIMURA
The
2−
cycle engine,
which we have tested,
has only a 100 cc cylinder capacity and,
according tothe co皿 petition rules
,
is not a 且10wed to be equipped with a gear shifLSo
the engineis
required tohave first of al1
, stable power performance
from
thelower
speed revolution range to that ofhigher
one
.
This requirement gives to the 2−
cycle racing engine quite a different design from that of the ordinary 2・
cycle engine which is equipped with gear shift and of which the perfor皿 ance shows a peakonly within the particular revolution range
.
Our
test has the following two purposes : First, in orer to find what ingredients they contain
,
wehave analyzed the metal materials used for the racing engine designed under such conditions
.
And inso
doing,
we have tried todiscover
what metals call prevent the engine from over−
heatingin
solving the current problem of power loss causedby
over・
heating。
Secondly,
we have investigated variousconditions which
have
caused the engine tobe
over−heated
with theimprQvement
of performance.
As
for
the エnetal test,
wehave
tried various experiments such as microstructure observation as we 至1 as macro・
structure,
hardness test,
chemical analys 玉s and so on.
1.
目 的 こ こ に取 りあ げた2サ イ クル エ ン ジ ン は, 競 技 用エ ン ジン で,
100cc とい う限 ら れ た容 積で,
し か も規 則で は 変速 機が許さ れ ない ことか ら,
エ ソジ ンに要 求され る性 能 も 低 速 回 転 領域か ら高速 回転領 域まで 安 定し た出 力が 必 要に な り,
変 速機付 ぎの2
サ イ クル エ ソジン の トル ク カー
ブの よ うに ある特 定の回転 領域に ピー
クをもつ エ ン ジン設 計 とは異なっ て くる。 我々の テー
マ の 目 的は,
こ の よ う な条 件 下で 設計された エ ン ジ ンの材 質がどの よう な 成 分で構成さ れて い る か材 質 検査を行い, 現在 問 題と なっ て い るオー
バー
ヒー
ト に よる出 力 低 下に つ い て,
ど の ような材質を用い るこ とに よ り,
効 率 よく熱を外 部に 逃 し これを防止で きる か,
ま た性 能向 上に伴 な う2
サ イ クル エ ン ジ ンの焼 付 ぎ 原因 を比 較 検 討 する こ との 2点に ある。 本 報 告は前 記 目的のた めの第一
段階と して 現 用の ニ ン *講 師,
* *助 手 機 械工 学科1979
年10
月9
日受 理 ジン につ い ての 調 査結果を比較 考 察し た もの で ある。
材質検 査は, 顕 徴鏡組 織観察,
マ クロ 組 織 観 察,
硬さ 試 験, 化 学 分析等に つ い て 実 験し比 較 検 討 するv ま た 2 サ イクル エ ン ジン の焼 付 き 原 因を追 求 する た め の一
環 と して,
走 査 型電 子顕微 鏡に よる焼 付 き 状 態の観 察 を 行っ た 結 果につ い て報 告 する。2.
実 験 方 法 本 実 験に供 し た 2サ イ ク ル エ ンジ ンは,
現在,
数多く 使用 されて い る国 産 メー
カー
で あるヤ マハ
製 KT100A , イタ リ ア の メー
カー
で ある IAME 社の コ メ ッ ト (K88
TT ),
パ リ ラ (TT23
)の 3種 を 用い た。本 報で は
,
日的で述べ た よ うに,
問 題と な っ て い る熱 に よ るエ ソ ジ ン の たれ (出 力の低 下 するこ と を ’ ‘た れ”
とい っ て い る) 現象を追 求する た め に, ピス トソ,
ピス トン リング, シ リン ダライナ の 3つ の部 分に つ い て比較 検討を行っ た。Photo
1
に 実 験に供 し た各 = ン ジン を示 して ある。 まず写真左の エ ン ジ ンは, 日本初の国 際公 認 41相模工業 大学紀要 第
14
巻 第1
号Yamaha
KT100A
Parilla
TT22
/TT23
Komet
K88TT
/K78TT
/K80TT
Photo 1
.
各 種2 サ イ クル エ ンジン の 形状 エ ン ジ ソの ヤマ ハKT100A
で ある。
52×46 mm (97.
6 cc )とい うシ ョー
ト ス トロー
ク タ イ プで,
20,000
回転とい う高速回転に耐え得る高 性能を有するエ ンジ ンである。 写 真中央は,
IAME 社の パ リ ラェ ン ジ ン で,
TT22 ,TT23
と2
つ の タ イ プ が あるが外 観上は全 く同じで 48.
Ox53.
8mm (97.
3cc ) の P ングス トロー
ク の典 型 的 なエ ン ジン と し て注 目されてい る。 写 真 右に コ メ ヅ ト ェ ンジン K88TT と K78TT を示 す。 こ れ らは燃 焼 室 が異 なり,
写 真か ら もわか る よ うに,ヘ
ッ ドの外 観形状 も変 っ て い る。 またK78TT
と外 観 形 状は全 く変ら な いK80TT
があり, これは クランクを全体 的に大 ぎく し て中高速の威力を増し てい る。 ボアス トロー
クはいず れ も 50.
6×48.
5mm (97.
4cc ) でシ ョー
トス トロー
ク の 部 類に属する。 い ずれのエ ン ジンも冷 却 フ ィ ン の 形状 が 異な り,
大 き く作られてい る のが特 徴である。 材質 検査に おける ような顕微 鏡 組 織は, 鋳 鉄の析出 黒 鉛の形 状 と 大い さ を 決 定 するために100
倍と 400 倍で 比 較 観 察を行っ た 。 材 料の硬さ測 定に は, ビッ カー
ス 硬度 計を使用し た。 ま た鋳鉄の基地の 硬 さ, ピス トン リング に施 して ある ク ロ ム メ ッ キ層の硬 さは,
マ イクロ ピ ッ カー
ス硬 度 計を使 用 し,
ク ロ ム メ ッ キ層の厚さ測 定は, マ イ ク ロ微測 計に て測 定 した。 化学分 析 する金 属 元 素の 決 定は,
顕 微 鏡組 織観察, 鉄en1
) t 非鉄21 のJIS
ハ ン ド ブッ ク, 顕微 鏡写 真s)・
4)の 解 説に よ り, 材質を推 定し各元 素につ い て定量 分 析 を行っ た。 エ ン ジ ン の焼付ぎ状 態の観 察に は,
IAME 社の エ ソ ジ ンであるパ リラの ピス トソ,
ピス ト ン リ ソ グ,
シ リン ダライナにつ い て 明石 製作所のMINISEM
(SMS −・
1
)の 走 査 型電子顕微鏡 を 用い比較 観察を 行っ た。3
.
実 験 結 果 お よ び考
察3−1
ピス トン材 料 につ いてガソ リン機 関の ピス トン材料として 必要な 性質と し て は
,
1)熱伝導 度の良い こ と。2
)比 重の小さい こ と。 3) 高 温に おける強度お よび硬さ が大であるこ と。4
)膨 張 係数 お よび摩 擦 係 数の 小さい こ との 諸性 質があ げられ る。 これ らの諸 条件を満足 する実用 合 金 と して は, ア ル ミ ニ ウ ム合金 が 最 適で,
Jlsz
)に 規 定 し てい るアル ミニ ウ ム合 金鋳 物の うち ピス トン用 とし て,TabIe
1 に示 す4
種 類が規 格 化されてい る。Table
2
にそ れ らの金 型 試験 片の機 械的性 質 を 示 す。 本実 験に供し たピス トン も Table 1・
アル ミニ ウム合金 鋳 物の化学成 分 (JIS
) 種 類 5種A8 種A8 種B8
種C
記 号 AC5AAC8AAC8BAB8C 化 学 成 分 %Cu
Si
Mg
Zn
Fe
Mn
Ni
Ti
A1
3.
5〜
4.
5 0.
6 以 下 1.
2〜
1.
8 0。
8〜
1.
3 11.
0〜
13.
0
0.
7〜1.
3
2 .
O・
−4 。
0
8.
5〜10.
5
0.
5〜
1.
52 .
O〜4.
0
8.
5〜10.
5
0 。
5〜1.
5 0.
1以 下0 .
1
以下 0.
5以下 0.
5
以下 0.
8 以 下 0.
3 以下 1.
7〜2.
3 0.
2 以下 残部 0.
8 以下0
.
1以 下1
。
0〜
2.
50
.
2
以 下残 部
1.
0
以下0 .
5
以 下O.
5〜1.
5
0.
2 以 下 残部1.
0
以下0.
5
以 下一
〇・
2 以下 残 部 42一
2 サィ クルエ ンジン の 材 料 にっ い て (田 辺 明
・
平 綿 勝 彦・
木 村広幸 ) 顕微鏡組織か らこれ らに類 似し たもの と想 定して化学 分 析を行っ た。Table
3
に ヤマハ
製とIAME
製パ リラ,
コ メ ッ トの ピス トン の分 析 値を示 す。 ま ずヤマ ハ 製の ピ ス トン の場 合,Table
1
のAC8A
(ロー
= ッ クス)の化 学成 分と 比 較 し て み る と Cu が 1.
09% で,
規 格 0.
8〜
1.
3% 以 内に おさまっ てい る。 次にSi
は, 11,
22 % で 規格の11.
O・
− 13.
O
% 以内で,
以下 Mg,
Zn,
Fe,
Mn,
Table
2.
Ni, Ti すぺて規格内に存在 する含有率であ り,
ヤ マ ハ 製 KT100A の ピス トソ 材 質は,
アル ミニ ウム 合 金鋳物AC8A
で あるこ とがわ かっ た。 こ れに対し て IAME 製 の ピ ス トンは,
ヤマ ハ 製の材 質と 同様にAC8A
に近い ものだ が Si をか な り多 く添 加し た高 Si ロー
エ ッ クス を使用し てい るこ とが わか っ た。 ま ずSi
量につ い てみ る と,
ヤマ ハ 製の 11.
22% に対 し て 15.
41% と多く含 金 型 試 験 片の 機 械 的 性 質 種 類1
質別 I c
i
5種AI
鋳 造の ま ま[
1 焼な ま し 焼 入れ・
焼 もど し 焼 入 れ ・焼 も ど し 引 張.
試 験 記 号 AC5A−
F[
弧 強・象
飆
・AC5A −
T2112 ° 以 上 AC5A−
T6AC5A −T7
Il22 以 上1
{216以上} {196以 上}「
30 以 上[
{294
以上}24
以 上 {235
以上 } ブリ ネル 硬 さ 参 考 HB (101500130
) 約65
約 1108種AI 鋳 造の ま ま
lAC8A
−
F…
焼も ど引
・C・A−T
・1
焼 入 れ・
焼「AC8A −T6
1も どし
〔
約 80118
以 上 {177以 上} 22 以 上 {216以 上} 28 以 上i
{275以 上 } 8種BI 鋳 造の ま ま II
焼 もどし1
焼 入れ・
焼 も どし AC8B−
FAC8B −T5
AC8B −T6
上 上 上 上 上 上 以 以 以 以 以 以 877106875 11
22
22 {{
〔 約 go 約
110
約90
約110
熱 処 理 焼な ま し 温 度 (°C
) 約 350 時 間 (h) 約2
溶 体 化 温 度 (°C
) 時 間 (h
) 焼も どし 約 520 約 5208
種C
鋳造の ままAC8C −−F
焼 もど し 焼入れ。
焼 も どしAC8C −T5
AC8C−
T618
以 上一
{177以 上} 21 以 上『
{206
以 上} 28 以 上 {275以 上} 約go
約 110 約 520 約 520 約 520 間 ) h 時 ( 度 )C
O 昼 (、
著 約 7 約 200 約 7 約320
約4
約 4 約 4 約180
約170
約180
約 170 約180
約 170 約 5 約 4 約8
約10
約8
約 10 約8
約 10 種 類Table
3.
Yamaha
とIAME
ピス トン の化 学 成 分分 析 元 素
IAMEYamaha
Cu
Si
Mg
Zn
FeMn
NiTiAl
1.
24
15.
41
0.
43
0.
02
0 .
62
0.
43
1.
96
0.
04
残 1.
09 11.
22 1.
08 0.
03 0.
41 0.
04 1.
30 0.
12 〃_
43_
相 模工 業 大 学 紀 要 第
14
巻 第 1 号 有 して い る。 他の添 加元素,
不 純 物元素は AC8A に も と ず き分析し た結 果である。 以 下,
添加 元素に よる影響 に つ い て比較 考察し て み る。 こ の競 技 用2V
イ クル エ ン ジン は,
他の熱 機 関に 比 較 して100
cc の 小 排 気 量で高回転 (エ ソ ジンに よっ て は,20,
000 回転以 上に も達 する)高 負荷 (ク ラ ッ チ が ない た め衝撃 負荷が大 ) とい う非常に過 酷な使 用 条 件を ピス ト ソに 要 求し て い る こ と か ら高 温に お け る強 度お よび硬さ が問 題になっ て くる。KT100A に 痩用されて い るピス ト ン材 料,
AC8A は T6 処理 (520°
C −
4 h 溶 体 化 処 理後,
約170
°C−
10 h 時効 処 理 )を施 し て使 用され るもの で, 硬 さにつ い て み ると, ヤマ ハ 製ピス トン の 硬 さは,
Hv 123 を示 し たQ これ は, HB 107 に 相 当 する値で ほぼ規 格のHB
110
に近い値を得た。 これに 対 して,
IAME
製 ピス トン は,
Hv 122 と 両 者 ほぼ同 じ よ う な硬さ を得 た。 化 学 分 析 値か ら判 断し た場合,
高温 強 度に必 要な添 加元素 Ni が IAME 製の方が,
o.
66% 多 く含 有し て い る。Ni
は耐熱性 効 果に著 しい 影 響 を もつ 添 加 元 素で ある が高 価であるた め, JIS
で は,
Table 1 に示 すよ うにAC8B
から高価 な 添 加 元 素で あるNi
を除い たAC8C
が規格 化さ れ て い る。 しか し IAME 製 ピス トン の場 合,
競技用エ ン ジン として わ ずかで も 耐 熱 性の す ぐ れた安全率の高い材 質を とい うこ とで Ni を添 加 し て あ るもの と判 断 し たQ 次に Mg の 添 加 量に つ い て み た場 合,IAME
製の O.
43% に対 して,
ヤ マハ
製は,1.
08
% と2倍 以上の量が添加 さ れて い る。 Mg は熱 処 理 効 果の 非常に大 きい添 加 元 素でAC8A
で は, O.
7〜
1.
396 まで の成 分範囲で規定 されて い る。 し か しMg
が規格の上 限ま で添加さ れ る とピス トン 製造 上 問 題が多く,
ピス ト ン の 性能上 か ら も M9 は 下限に近い方が好ま しく,
R,
F .
Smart5
}等の 報 告で は,
Mg の機械 的性質に及 ぼ す 影響につ い て0 .
4
% ま で は著しい 添 加効果があるが,
そ れ 以上で は,
こ の効 果は小さい として い る。
も う一
つ 高温強度の点で注 目 したい添 加 元素にMn
がある。 ヤ マハ
製の 場合は, O .
04
% とほ と ん ど存 在 しない の に対 し て IAME 製の場 合,
O.
43% 含 有して い る。 工業 的にNi
が高 価とい う点で,Ni
を含まない ピス トン用アル ミ = ウム合 金で は ,Ni
の 代用 と し て Mn を添 加し てい る が,LF .
コ ロ ブ ネ フ6忙 よれ ば,
こ の Mn 添 加は,
硬 さ に お よぼす 影響が著し く, ま たMn
が合金の高温カ タ サ を 上げてい るの は,
原 子 間の結 合 が 大 きい こ と お よ び Photo2.
ピス トン の マ ク ロ組 織 AI 内 で の拡 散係数が他の元素に比べ て 小 さい こ と を 理 由づけ として い る。 Photo 2 は, ピス トン の マ クロ 組織 を示 した もの である。 写 真 左が ヤマハ
製で,
右がIAME
製の ピス トン である。 ヤマ・
・
製の v ク ロ 組織は, IAME 製に比較し全 般に均一
かつ微 細化 してい る。IAME
製 は,
写 真か らわか る よ うに金 型に接 し た 部 分か ら柱 状 晶 が中 心 部に向っ て発 達 し た 凝 固組 織が ボ ト ム リ ン グ(
bottom
ring ) 下 部 付 近に認め られる。AC8A
の 添 加元素の
一
つ で あ る Ti に つ い てみた場 合,
ヤ vハ
製の O.
12% に対 し て IAME 製では,
O.
04
% と ほ とん ど含 まれて い ない。 Ti 添加は結 晶粒微細 化を 目的と し て添 加 する 元素であるが, その添 加 量はJIS
に規定して あ る よ うに0・
2
% 以下で 充 分 その 効 果 を発揮 する。 ゆ え に ヤマ ハ 製の 0.
12% Ti が添 加されてい るマ ク卩 組 織 からわか る ように,
結 晶は均一
かつ 細か く微 細 化されて い るが,
IAME 製は柱 状 晶の発 達な ど KT100A に比較 して あ らい凝 固 組織で あっ た。Photo
3 は,
ヤマハ
製 とIAME
製の ピス トン の 顕 微 鏡 組織写 真で ある。 撮 影 倍 率 は 50 倍と 200 倍で,
研摩の状 態で撮 影 し たもの で あ る。 まず 左側のKT100A
に つ い てみてみ ると,
初 晶 α (A1)と灰 色の共 晶 中の Si が晶 出して い る。 次にこ のAl−Si−Ni−
Mg−Cu
系 実用合 金の凝 固 過 程を 状 態図的に説明する。 幸田 71らに よれぽAC8A
に 含ま れ るCu
と大 半のM9
は初晶 α に固 溶する と し て, 凝 固 組織を Fig.
1 に示した AI−Si−
Ni 系の 3元 合 金 と し て考えるこ と がで きる と して い る。 こ の 系の 不変 点ET
は 0568 °C,
5.
40 %Ni
, 11.
35%Si
でET
:ム# α+AlsNi
+Si
な る 不変系反 応で ある。 3
元系 と し て み た この合 金の 組 成は,
Fig.
1 の AI−
Si共 晶 線 上,
1.
3%N
量 側に入っ た付 近に相 当 する。 し た がっ て2
元 共 晶線一 44 一
2 サ ィ クル ェ ン ジン の 材 料につ い て (田 辺 明・ 平綿勝 彦 ・木 村広 幸) ×
50
KT100A ピス トン ×50
×2001AME
ピス トンPhoto
3.
ピス トン の 顕 微 鏡 組 織 x200 ・f
’ t・
J、。 ,.,η。
、 。
,。 5i ‘%7 Fig
.
1.
Al−
Ni−
S正3 元 系 A1 側 状 態 図 上 で は, α とSi
が 共 晶で晶 出 し, 恥 点で α, Si および A1sNi が 3元 共 晶と して 晶 出 するD 写真上,
Si
(初 晶 ) よ りも若 干明か るい板状の 明灰 色の析 出 物が ε(A13Ni) で あ る。 ま た 骸 骨 状の黒 色の析出物は,
固 溶 限 以 上の Mg が Si と結合 し て生 じ た Mg2Si で あ る。
次 に左側 に示 すIAME
製 ピス トソ の場合,
Si
量が15・
41% と 多く高 Si ロー
エ ッ ク ス と して考え るこ と がで きる。 ヤ マ ハ 製と 同様,
ほ とん どの Cu,
Mg が 初 晶 α に固溶 し,
ま た AC8A に は含まれて いない O・
43% の Mn もHansen
のAl−Mn
合 金 状 態 図81より,
658・
5°C で 1・
4 % Mn の固 溶 限か ら Cu,
Mg と同 様ほ とん ど固 溶 する も の と すれば, Al−Si−Ni
系とし て考え るこ とがで きる。Fig.1
il
こお い て ヤ マハ
製よ りSi
側,Ni
側, に 入っ た ところ に相 当 する。 した がっ て初 晶 と してSi
が晶 出 す る。 写 真上,
灰 色,
多 角 形の塊 状がそれで等 しい 大 きさ で 分 布 し てい る。 後は AC8A と同 じ2元 共 晶 線上で α とSi
の共 晶の 晶出,
ET
点で αpSi
お よびA13Ni
が3
元 共 晶と して 晶 出 する。IAME
社の ピス トソの場 合, 高 Si ロー
エ ッ クス が使 用されてい る が,
こ の Si の働 きは,
ピス トン材 料に要 求される性 質の うちで 熱 膨 張 係 数を減少させ る効 果があり,
特oeA19 】 の 熱 膨 張 係数は 24・
58×10−
6/°C と 大 きく, 14.
5%Si
で19.
8×10−
6/°
C
にまで減少するこ と が で きる。 ヤ マハ
製 ピス トン の場 合, Si は 共 晶 程 度の 含 有 率 とい うこ とで,
ピ ス トン を 真 円で な くカ ム仕上げ するこ とに よ り,
熱 膨 張に よる焼 付 きを防 止 し て い る といわれて い るが,
現 実に は,
膨 張 の著しい と思わ れ る排 気 側を設 計に た よ り, 取 り 除 くわ けである。 ゆえ に ヤマハ
製ピス トンはtIAME 製ピス トンに比 較し て エ ン ジ ソ が冷えて いる間は , 事 実上, 吹 抜け が お こっ てい る。 た と えエ ン ジ ソが あっ た まっ た状 態でもそ れが真円に 膨 張 し てい るとはかぎらず不安 定な 要素が 残る。 45相 模 工業大 学 紀 要 第
14
巻 第1
号3−
2 ピス トリン グ につ い て こ こ で と り’
あ げた3種 類の ビス トン リン グは, 2本で 構成 さ れてい る。 リン グ材 とし て現在最 も広 く使用され てい る材 料は鋳 鉄である。 材料の安定性 とい う点から考 えて鋳鉄より も鋼の ほうが すぐれてい るに もか か わらず 鋳鉄が使用されてい る。 これは単に鋳鉄が安 価であり, 製造しやすい とい う理 由だけか らで は ない。 む し ろ鋳鉄 がもつ材 質的特性 がリン グ材と し て優れてい るこ とが真 の理 由である。 す なわち リン グ材と し ての必 要 条 件は, 耐摩 耗 性,
強 靱 性,
耐熱 性,
熱 伝 達の 良さなどの ほかに 設 計上材料の弾性率の 大 ぎ さ がち ょ うど都合よい こ とが あげら れる。 鋳 鉄は よ くこれ らの条 件に か なっ た材 料 と い うこ と がいえ る。 まず IAME 社の パ リ ラ, コ メ ッ ト の リング は, その鋳 鉄 製で あるこ とが顕微 鏡組 織か らわ か っ た ため, こ れ ら に 含まれる合 金 添 加元素 として,Ni
,Cr
,Cu
,Zr
,Mo
に つ いて化 学 分 析 を 行っ た。 ヤ マ ハKT100A
の場 合は,
鋼製で作られてい るこ とが わか り,
分析する元 素は,
パ リラ , コ メ ッ ト と同 じ元素につ い て行っ た。 そ れ らの結 果 を Tab 且e 4 ta示す。 ま た各 機 種の リングの顕 微鏡組織をPhoto
4−−
6 に示 す 。 まず Photo 4 は,
ヤマ ハ1
(T100A
の 顕微 鏡 組 織で あ り , ト ッ プ リン グ, ボ トム リン グと も 同 じ材 質で作 られてお り 形 状 も 同じで ある。 写 真上 段 が 100倍,
中段 が 400倍,
下段が 同 じ400
倍で撮 影した リン グ地の組 織で あ る。 写 真上段にみ ら れ るメ ッ キ 層の厚さ は101
μ で その硬 さ は,
Hv 749 を示 し た。 次にTable
4 の化学成 分につ い て み て み ると, 炭 素 量が0.
77% 含 まれる他に 0.
3
%Si
と 0,
48% Mn で構成され,Cu
,Ni
,Cr
,Mg ,
Mo
は殆ん ど 含まれてい ない こ とがわ か っ た。 鋼 単 体の リン グを圧 力 リソグ と し て用い て い る例は少 な く,
使用材 料 に は炭素 鋼,
低 合 金 鋼の 他,
ス テ ン レ ス鋼 等が用い られてい る。
Table
5
とTable
6
にJIS
に よ る ば ね鋼 材料の種 類と その機械的性質を 示 す。 さきの結 果と比較し て み る と
SUP
3
に相 当する材質とい うこ とがわか っ た。 ま たこの バ ネ鋼 材料は, 焼入 れ (830〜860
°C
油 焼 入れ ) 焼 も どし (450〜
500°C )の処 理を施 し て使用する ×100
x400Photo
4.
Yamaha
KT100A piston ring の 顕 微 鏡組 織Table 4
.
各 種ピス トン リングの 化 学 成 分 (wt % )種 類
Yamaha
RingKomet Top Ring
Komet
Bottom
Ring
Parilla
Top
Ring
Parilla Bottom
Ring
分 析 元 素
C
SiMnP
S
NiCrCu
ZrMo
Fe
0
.
773.
623.
893
.
973
.
94 0.
302.
742.
922
.
742
.
93 O.
480.
500.
510
.
470
.
59 0.
050.
310.
320
.
390
.
36 0.
0260。
0330.
0450
。
0420
.
044 O。
030,
030
.
050
.
080
.
06 0.
030.
070.
190
.
240
.
24 O.
020.
170,
110
.
120
.
10 0.
010.
010.
010
.
010
.
01 0.
OlO.
OlO.
010
.
020
.
01 残 〃 〃 〃 〃(注)
Yamaha
Ring
は Top. Bottom と も 同 材質で あ る。
2 サ イ クルエ ン ジ ンの材 料につ い て (田 辺 明
・
平 綿 勝 彦・
木 村広幸 ) Table5.
ば ね 鋼 鋼材の化学 成分 (JIS
) 種 類記号 化 学 成 分 %C
Si
Mn
P
S
Cr
V
B
SUP
3SUP
4SUP6SUP
7SUP gSUPgASUP10SUPl1A
0.
75− O .
90 0.
15〜
0.
35 0.
30〜
0.
600 .
90〜
1.
10 0.
15〜
0.
35 0.
30〜0 .
60
0 .
55〜0 .
65
1.
50〜1.
80
0.
70−
1.
00
0 .
55〜0 .
65 1,
80〜
2.
20 0.
70−
1.
00 0.
50〜
0。
60 0.
15〜
0.
35 0.
65−
0.
950 ,
55− O .
65
0 .
15〜0.
35
0.
70〜1 .
00
0。
45〜
0.
55
0.
15〜
0.
35 0.
65〜O .
951
・・
55−
・・
65
…5−
・・
35
・・
7
・一
・… 0.
035以下0 .
035
以 下 0.
035以下 O.
035以 下 0.
035以下0 .
035
以下0 ,
035
以 下0 .
035
以下 0.
035以 下}
0 .
035
以 下冖
0.
035以下一
〇.
035以 下一
〇.
035
以下O.
65・
−O。95
0.
035以 下 O.
70 〜
1.
OO
O 。
035
以 下0。
80〜1.
OO
O .
035
以 下0 .
70〜
1.
00O
.
15〜
O.
25−
_
0 .
0005
以 上Table
6・
機 械 的 性 質 (耐 力,
引 張 強さ,
伸び,
絞 り及 び硬さ) 記 号SUP
3
】SUP
4 SUP 6 SUP 7SUP
9
SUP
gA SUP10 SUPl1A 熱 処 理゜
C 焼 入 れ瞬
もど ・ 機 械 的 性 質830〜860
油 冷830 〜860
油 冷 830〜
860 油 冷 830−
860 油 冷 830〜
860 油 冷830 − 860
湘 冷 840〜
870 油 冷 830〜
860 油 冷 450〜500
450〜500
480〜
530 490〜
540 460〜
51046G− 520
470〜
540 460〜
520 耐 力0.
2
% kgf!mm2 (N!mm2 ) 引 張 強 さ kgf!mm2 (N!mm2 ) 伸 び % 絞 り % 硬 さ 4号 ま た は 4号 試 験片 7号 試験片 HB85
以 上 (834)以 上 90 以 上 (883
)以 上 110 以 上 (1079)以 上 110 以 上 (1079)以 上 110 以 上 (1079)以 上 110 以上 (1079
)以 上 110 以 上 (1079
)以 上 110 以 上 (1079
)以上110
以上 (1079)以上 115 以上 (1128)以上 125 以 上 (1226)以 上 125 以 上 (1226)以上125
以 上 (1226)以 上 125 以上 (1226
)以 上 135 以 上 (1226
)以上125
以上 (1226)以上8
以上 7 以上 9 以 上9
以 上 9 以 上9
以一
ヒ 10 以 上9
以上 10 以上 20 以 上 20 以上 20 以 上 20 以 上 30 以上 20 以上341〜401
352〜415
363−W429
363〜429
363〜
429363〜
429 363〜
429 363〜429
もの で,
リン グ地の硬 さにつ い てみて み ると,Hv
380
(HB 368>を 示 し,
規 格の HB 341〜
401 以内で ある こ とが わか っ た。 ま た, さ きに述べ た顕 微 鏡組織は,
ソル バ イ ト組 織とい うこ とになる。 次にパ リラの ピス トγ リ ン グ につ い て で あ る が,Photo
5
は , パ リ ラの顕微 鏡組 織で あり, トッ プ リン グ を左側に, ボ トム リ ングを右側に示 す。 ヤマ ハ の リン グ 構成とは異 な り,
トッ プリン グの L 型と ボ トム リン グ で構 成されて い る。 鋳 鉄 製 とい うこ とか ら,
鋼 製に比べ て 厚め に 作 られて い る。 トッ プ, ボ トム リング と もに析 出 黒鉛10)の 形 状は,B
型黒鉛でバ ラ状を 呈 し ていて無方 向配 列に属 し,
黒鉛の大い さは, No ・5
(析出 黒鉛片の 長 さ 12.
7〜
6.
3mm )の等 級で細か く晶 出し て い る。 次 に ク ロ ム メ ッ キ層 とリング地の硬さにつ い て み る と,
ト ッ プ リングの ク ロ ム メ ッ キ層 厚さ30
μ,
ボ トム リン グ が, 35μと ほぼ 同 様 な 厚さを 示 し た。 これはヤマハ
製 と 比 較 し た場 合,
1/2 以 下で非 常に うすい もの である。 メ ッ キ層の硬 さは,
トッ ブ リン グ がHv
749
, ボ トム リン グ が Hv 790 で ヤマ ハ 製 と同 程 度で あ る 。 リン グ地の硬 さは トッ プ リン グ がHv
234,
ボ トム リン グが Hv 263 とHv
30
ほ ど ボトム リン グの硬さ が大 きい。 こ こ で 析 出 黒 鉛 を 除いたマ ト リ ッ クス の硬 さを 知る ため に,
V イ47
相摸工業 大学 紀 要 第 14 巻 第 1 号 x100 X400 ×100 ×400 ×
400
Top
ringBottom
ring
Phote
5。
Parilla
piston ring の顕微鏡組 織×400 ク ロ ビ ッ カ
ー
ス硬 度 計 (P
:50gT :30s)に て測 定 を行 っ た。 その 結 果, トッ プ リ ン グの マ ト リッ ク ス の硬さ はHv
367,
ボ トム リン グHv
423
と非 常に硬 く,
ボ ト ム リ ン グで, リン グ地の硬さ よ り Hv 160 も硬い こ とが わ か っ た。 ま た Table 4 に 示 す 分 析 結 果で は,
トッ プ,
ボ トム リ ング ともに 同 様な組 成を 示 し, 合金 元素と し て, O.
24 % の Cr,
約 O.
1% のCu ,
ま た 0.
06〜
0 .
08
% のわ ずかのNi
を含ん だ合金鋳鉄 製リン グ であ るこ と が判 明 し たQ こ の リソグに 含まれ るCr
添 加の 効 果は, 耐 熱 性の改善,
硬 さの増 加 さ らに高 温 耐 摩 耗 性の 向 上に有効であ り,CU
は,
パー
ライ ト基地の 緻密化,
黒 鉛の均一
分 布 化, 更に チ ル 化の防 止に役 立っ て い る。Photo
6
はコ メ ッ ト の顕微 鏡組 織で リソ グ構 成は, パ リ ラと同 じで ある。Table
4 に 化 学 分析結果を 示 して ある。 まず顕 微 鏡 組織につ い て である が, 析 出 黒 鉛の形 状 を 見る と,
トッ プ リ ン グ は,
黒 鉛が球 状を 呈 し てい る。 いわ ゆる球 状 黒 鉛鋳鉄で,Mg
を 溶 融鋳鉄に投 入 し た後,
接種 を行 う と黒 鉛が球 状 化し,
片 状 黒 鉛 鋳 鉄tc比 べ て 著しく機 械的 性 質が向上 し衝 撃 値,
弾 性 率,
振 動 吸 収能も優れてい る。 マF
リヅ クスの組織は,
針 状の マ ル テ ソ サ イ ト組織で熱 処 理が施さ れ て い る のが わか る。 こ れに対して ポ トム リ7 グは A +B 型 黒 鉛 形 状で片 状 黒 鉛 とバ ラ状 黒 鉛が混 在 した組 織で,
そ の 黒鉛の大い さ は,No .5
(析出 黒鉛の長 さ12,
7〜6 .
3mm
) とパ リラ リン グのパ ラ状黒鉛と同 様の 大い さである 。 マ ト リッ ク ス組織は , ソ ル パ イ ト に幾 分パー
ラ イ トが 残っ て い る状 態 が観察で きるが, これ は冷却過程に よ るもの か熱処 理 によるものか明ら か で ない 。 リン グ地の 硬さ結果で は,
トッ プ゜
リング が H▽ 285, ボ トム リング がHv
250 で ト ッ プ リン グ の方が優る硬 さ結 果であっ た。 ま た, マ イク一 48
2
サ ィ クル エ ン ジン の 材料にっ い て (田 辺 明・
平綿 勝彦・
木村広 幸 ) ×100
x400 Top Ringの
欝鐸、
X100 薯韈
欝
x400 x400Bottom
Ring
Photo 6
.
Komet piston ring の 顕 微 鏡 組 織x400 卩 ビ ッ カ
ス 硬 度 計に よる マ トリ ッ ク ス の 硬 さは , トッ プ リング が Hv 362
,
ボ トム リングが Hv 386 とパ リラ の リソ グ程 で は ない が,
トッ プリン グ で Hv 77,
ボ ト ム リン グでHv
136
とv ト リ ッ クス の 方 が非常に硬い こ と が わか る。 次に メ ッ キ 層につ い て で あるが,
トッ プ リン グの硬さ 65μに対 して ボ トム リン グ41μ と約 20μ トッ プ リング の方 が厚く施 さ れて い る。 硬 さは,
トッ プ リ ン グHv
761 , ボ トム リングHv
750
とヤマ ハ , パ リ ラ と同 様な硬さ を示 し てい る。 次に化 学 分 析結 果で ある が,
トッ ブリ ン グ の 3.
62%C
に対 し て ボ トム リン グが3 .
89
%C
と若干,C
量が ボ トム リン グの方が多 く含 有 し て い る。 合 金 元 素と し て は, パ リ ラ の リン グの よ うに同 じ成 分で は な く,
トッ プ は,
O.
17% の Cu と 0.
07% Cr これに対 し て ボ トム は O.
19%Cr
と0.
11
%Cu
を含む合 金鋳鉄である こ と が判明 し た 。 3−
3 シ リンダ ラ イ ナ につ い て アル ミニ ウム 合金製の シ リンダブロ ッ ク では,
シ リン ダ部に 鋳 鉄 製の ラ イ ナが使われる。Photo
7 に各機 種の シ リン ダライナ の顕微 鏡組織写 真を 示 す。.
.
L
段が ヤマ ハ KT100A , 中段 がパ リ ラ,
下 段が コ メ ッ トで,
研 摩の ま ま での状態を撮 影し た もの で ある。 またPhoto
8
に こ れ らをナ イタル (Nital)液で腐食し た状態を 示す。 これ らの組織から判断 するといず れ も鋳鉄 製で作られて い る こ とがわ か る。 まずヤマ ハ 製ライナ の場 合, 析出 黒鉛の 場合の形状 は,A
型で いわゆる均一
分 布,
無 方 向 配 列の 部 類に属 し,
黒鉛の大い さは,No ・4
(黒鉛の長さ25 ・
4
〜12.
7mm ) の等 級 順 序で ある。 その硬 さは,
Hv 207 を 示し た。 マ ト リッ クス の 組織は, 層 状パー
ライ トを示 し てい る。 ピス トン リン グの マ ト リッ クス 硬さ測 定 と同 様に, マ イク ロ ビ ッ カー
ス硬度 計 (P
:50gT :30s
) に よ りマ ト リッ ク ス の硬さを 測 定 し た結 果,
Hv 303 を_ 49
相 模 工業 大 学 紀 要 第 14 巻 第 1 号 Yalnaha ×
100
ParMa
x100 ×400 ×400
×400Photo
7・
シ リンダラ イ ナ の顕 微 鏡 組 織 (no etching ) 示し,
マ ト リッ クス + グラ フ ァ イ トに比べ , 約Hv
100
程マ ト リ ッ クス の方が 硬い結 果であっ た。’
次に パ リ ラ の シ リンダ ライナにつ い て で あるが, 析 出 黒 鉛の形 状は,
B 型の バ ラ状 黒 鉛,
無 方 向 配 列 を 示 して い る。 析 出黒鉛の大い さは,
ヤマ ハ 製と 同 じNo .
4 (析 出黒鉛 片の長さ 25・
4〜
12・
7mm ) の大い さで分 布し て い るが, ヤマ ハ 製で見られた, 均一
分布し た片状黒鉛に 比較 して こ の 種の パ ラ状 黒 鉛の方が機 械 的 強 度で は劣 る。 硬 さ は Hv 229 とヤマハ
製よ り Hv 20 程度硬い結 果 であっ た。 マ トリッ ク ス は, ソ ル パ イ ト組 織を 呈 し,Hv
341
の硬さで,
ヤ マ ハ 製の マ トリッ クス よ りも優る 結 果で あっ た。 最 後に コ メ ッ ト の シ リン ダライナ につ い て である が, 析出 黒 鉛の形状は,
ヤマ ハ 製のA
型,
パ リラ製の B 型に 対し て D 型で樹 枝 状 偏析,
無 方 向配 列 とい っ た形 状を呈 し,
その大い さも No・
5 (黒鉛片の長 さ12.
7〜6 ,
3mm
)とい う,3
機 種 中一
番 小さ な分 布を 示 し た。 Photo 8 の 左 側に 示し た 100倍の組織で 見て み ると一
部B
型の バ ラ状 黒鉛が混 在して い る部 分 も観 察 された。
こ の コ メ ッ トに見ら れ たD
型 は,
析 出黒鉛の 大い さがNo .5
で一
番 小さい こ と か ら もわかるよ うに 強 さ は確かに大 きい が,
靱 性が低 く,
ま た原 則 的に 耐摩 粍性 も 低い こ とが しばしば 報告されて い る。 硬さはHv
218
を示し,
3 機 種を比較し た場 合,
パ リ ラ (Hv
229
)50 一
2
サ ィク ル エ ン ジンの材 料にっ い て (田 辺 明。
平 綿 勝彦。
木 村広幸 ) 〉 コ メ ッ ト (Hv
218
)〉 ヤ マハ
(Hv
207
)の順であるこ とがわ か っ た。 v ト リッ ク ス の硬さはHv
277 で パ リ ラ (Hv
341 )〉 ヤ マ!
・
(Hv 303)〉 コ メ ッ ト (Hv
277
)の 順である。
しか しながらマ ト リッ クス の組織は,
パ リ ラ と 同 じように ソ ル パ イ ト状を呈して い る。 Yamaha X100
Parilla
×100Komet
Photo
8.
次にシ リン ダライ ナ の分 析 結 果 を Table 7 に示す。 その 結 果からヤマ
ハ
製シ リンダ ライナは,O .
17
%Cr
を 含む 合 金 鋳鉄で ある。一
方 パ リ ラ の ラ ィ ナ は,
0.
12%Ni ,0 .
24
%Cr ,0.
9
%Cu
に少 量のMo
,V
を 含 む 合 金鋳鉄であ り,
も う一
つ の コ メ ッ ト の シ リ ン ダ ラ イ ナ x400 ×400
×100 シ y ン ダラ イ ナの 顕微鏡組織 (ナ イ タル で腐 食) ×400Table
7.
各種 シ リン ダラ イ ナ の 化学 成 分 種 類KometParillaYamaha
分 析 元 素C
S
董Mn
PS
Ni
Cr
Mo
VCu
Mg
Fe
2.
94
2.
420 .
66
0,
082 0.
0923.
23
2.
57 0.
81 0,
076
0.
118
3.
00
2 ,
03
0 .
76
0.
0150.
115
0.
23 0.
24 0,
04 0.
05
0.
19 0.
002 残 0.
12 0.
24 0.
060.
04
0 .
90
0 .
001
〃0.
05
0 .
17
0.
01
0.
01
0.
05 0。
002
〃
51相模工業 大学紀 要 第 14 巻 第 1 号 は
,
0.
24% Ni, とパ リ ラ に比べ 2 倍 近い添 加 量で,
Cr は,O .
24
% と同 じで あっ た。 また添 加 元 素の一
つ であ る Cu は,
パ リ ラ の 1/4 以下で , Mo,
V は ほ と ん ど パ リ ラ の分 析 値と同じ程 度含ま れ てい る。 硬さ結 果に お い て,
V ト リッ クス の硬 さ を比較した結 果,
パ リ ラ (Hv
341)〉ヤ マ ハ (Hv 303)〉 コ メ ッ ト (Hv277
)の1
順で パ リラ とコ メ ッ ト で Hv 64 だ け パ リラ の方が 硬い結果で あっ た。 パ リ ラ, コ メ ッ ト の マ ト リッ ク ス 組織 が同 様の ソ ル バ イ ト状を 呈 し てい たに もか か わ らず硬さ が 異 なっ た 理 由と して,Cu
の添加量 がコ メ ッ トに 比べ4
倍 以 上 含まれて い た こ とに よ る影 響と考え られる。 またCulo
[ 添 加は,
すべ り摩耗抵抗 性を向 上 する 目 的で シ リ ンダラ イ ナや プ レー
キ胴な どe: 1% 内外の 少量 を配 合 する 場合 があ り,
これ と同時に0 .
3〜0 .
5
% のCr
を 併 用 し て一
層 よ い結 果を 得た報 告も あ る。3−
4 走 査型電 子 顕 微 鏡 に よ る 焼 付 き状態の観 察 エ ソ ジン の 焼 付き状 態の 観察には,
パ リ ラの ピス トン,
ピス トン リン グ,
シ リ ン ダ ライナ を 用い,
Photo9
に 焼 付 き を 生 じ た ピス トンの側 面と頭 部を示す。 排気側の か じ り か ら は じ ま り,
次に トヅ プ リン グが 折損 して,
ピ ス ト ン頭 部に強 く うち くだ かれ,
端 部が破 壊 し て しまっ たもの で ある。 これは ピス トン とラ イ ナ の ク リ ア ラ ン ス が 6/100
に とっ てあるもの で走 行 後,20
分た らずで焼 付いたもの である。 Photo 10 に ラ イ ナの カジ リ を生じ x30Pheto
9.
焼 付 きを盗 じ た Parilla の ピス トン ×100 x400Photo
10.
Parilla シ リンダラ イ ナ の焼 付き状況 (電子顕微鏡)52
2 サ イ クrU エ ン ジン の 材 料 につ い て (田 辺 明
・
平綿勝 彦・
木村広幸 ) て い る部分の 顕微 鏡 組 織 を 示 す。 上か ら30倍,
100 倍, 4QO 倍で撮 影 し た もの で, 写 真の 縦 方向 が ピス トン の 運 動方向で,
こ の 方 向に沿 っ てカ ジ リに よっ て 生 じた 凹 凸 が波の うね りの よ う な状 態に波 しぶ きの よ う な様相で ピ ス トン か らの摩 耗 粉 が付着して い る。 Photo 11 は, ピ ス トン側の ボ トム リン グ付 近の焼付き状態を 撮 影 し たも x30灘
鞍
謎鞍
崢
戛
…
饕店
卍
慈 貿 愚、
ぎ 鱒 儺幅職「
転 ま’
擁
準、
鋤 瓢,
100x
×200
Photo
11.
Parilla
ピス トン の ボ ト ム リン グ 付 近 の焼 付き状 況 (電子顕 微鏡) の で倍 率は,
30倍,
100倍,
200 倍で観察した もの で あ る。 30 倍の 観 察で は,
中 央 ボ トム リン グ 面 に ピ ス ト ン,
ス リー
ブの 摩 粍 粉が凝着し て い る。 ま た 100倍の写 真で は,
リン グとピス トンのす き間は ピス トン端 部の た だれた部 分 と破 壊さ れた リン グ との溶着 状態,200
倍で 撮 影 し たピス トン面に は,
ス リー
ブ と同 様に カジ リに よ る焼 付 き状 態が観 察で きるDPhoto12
は ピス トン側の 焼 付き状 態の 少ない 部 分を30
倍,
100 倍で撮 影し た も の で ある。 さきに示 した付 着の激しい 部分に比べ て リン グ, ピス トン の面が な め らか で あ るこ とがわ か る。 こ の ような ピス トン リン グ とス リー
ブ間の 焼 付 きは, 溶 着摩 耗 (ScuMng ) とい われて い るもの で ある。一
般に平 滑 な 面 も,
ミ ク 卩 的には数 多くの 凹 凸を もっ て お り, した がっ て平 滑な画 に お け る接 触 も,
有 効 接 触 面 積 比は,0 .
01% 以 下で ある と さ れ て い る。
こ の た め入念に 仕 上 げ られた面 同 志で あっ ても 初 期の摩 擦に おい ては突起 部に 負 荷が集 中し,
単位 面 積 当りの圧 力 が 非常に 大 き くな る。 その ため摩擦熱に よる温 度上昇,
さ らに 局部 的 軟 x30 × 100Photo
12.
Parilla ピ ス トンの ボ トム リン グ 付 近 の 焼 付き 状 況 (電子顕 微 鏡 )53 一
相 模工 業 大 学 紀 要 第 14 巻 第
1
号 化,
溶融 をひ き起 こ し て こ の よ うな焼 付 きの原因 とな る。Photo
9
に 見ら れ た よ うに ト ッ プ リン グ が折 損 し て い る状態が観 察 さ れ た が,
こ の焼 付 き 原 因と し ては,
リ ング破 損に よ る もの か,
潤 滑 油がき れて発生 した溶 着 摩 耗に よる もの かは 不 明で ある。 溶 着 摩 耗 が 原 因だ とすれ ば,
あ らか じ め入 念 な な じみ運 転 を 行 っ て,
接触面 積 を 大 き くして お く必 要 が ある。 競技用エ ンジ ンの 出 力 向 上の手 段 として ピス トγ とシ リソ ダラ イ ナの ク リア ラン ス をせ ま くと る方法がある。 〔3−
1〕で述ぺ た よ うに ヤ マハ
製 ピス トンは,
燃 焼 熱に よ る ピス トンの 膨張を カ ム仕上 げに より焼 付 きを防 止 し て い るが,
こ の場合,
その膨 張 部の取 り し ろ を どの程 度に し た らよ い か が問題 とな り, 取り方に よっ て は溶 着摩 耗 を誘 発する原 因にな りかね ない。 ゆえ に各々 のエ ン ジン の ピス トンとシ リン ダライナ の ク リア ラ ソ ス の適正値を 選 定するこ とは, 焼 付き 防 止に役立つ もの と判断し た。4
. 結
論
ヤrtハ KTIOOA
,IAME
社の パ リ ラTT23
, コ メ ッ ト K88TT の ピ ス ト ン,
ピス トン リン グ,
シ リソダ ラ イナ につ い て の材 質 検 査お よ び走 査 型 電子顕微 鏡に よ る パ リ ラTT23
の 焼 付 き状 態の観 察を行っ た結 果,
次の 事 柄が得 られ た。 1) ピ ス トン につ い て ヤ v ハ 製ピス トンは,AC8A
とい うAl−Si−Ni−Mg −
Cu 系 合金 (ロー
エ ッ クス )であるこ とがわ か り,
これ に対 し て IAME 製の ピス トン は, AC8A 中に 含 まれるSi
をかな り多くした高Si
P一
エ ッ クス である。IAME
製 ピス トンに は,
高温 強 度 を 高め るNi
とMn
が併 用 添 加 さ れて い るの に対 して, ヤ マ ハ 製 ピス トンの 場合,Ni
量 はIAME
製よ り も 少なく, Mn は 含 ま れ て い ない こと が わか っ た。 結 晶 粒 微 細 化を目的 とした Ti は,
ヤ マハ
製ピス トソ に は,
添 加されて いた が,
IAME 製ピス トンに は含ま れて い ない02
) ピス トン リン グにつ い て ヤ マハ
製 リン グ が鋼製 リン グ (ば ね鋼SUP
3
) で作 られてい るの に対 し て, パ リ ラ,
コ メ ッ トリン グは,
鋳 鉄製で作られて お りCr
,Cu
,Ni
を含む合 金 鋳鉄であ る こ と が判 明 し たQ3 機種の リン グ中
,
= メ ッ ト の ピス トン リン グ は, ト ッ プ リン グ に 球 状 黒 鉛 鋳鉄,
ボ トム リン グIC A +B 型の 片 状 黒鉛とパ ラ状 黒鉛が混 在 する組 織を もつ 材質で構 成 されて い たが,
通 常, 上死 点 付 近は,
燃 焼 熱に よ り油 膜 が切れやすい と か,
ボ トム リン グ より強い 衝 撃 応 力 を 受 ける こ とに なる等 を 考 慮 して,
片 状 黒鉛 鋳鉄よ りも強 度 の 高い 球状 黒鉛 鋳鉄を用い,
さ らに 必 然 的 に摩 耗 も 多 く なるこ とを 考 慮し,
表 面に施 した ク 卩 ム メ ッ キ層もボト ム リング よ り厚 く作 られて お り,
ピス トン リン グの材 質 と し て適 切 な 考 え 方 を して い るこ とがわか っ た。3
) シ リン ダ ライナ につ い て ヤvハ
KT100A , パ リラTT23
, コ メ ッ トK88TT
とも,
いずれ も鋳鉄 製で 作られて お り,Ni
,Cr
,Cu
な ど を含む合金鋳 鉄で あ るこ と が わ か っ た。 析出黒鉛の形 状と大い さに つ いて,
3 機種 中 最 もの ぞ まし い 形 をして い た の は,A
型 (均一
分 布, 無 方向配 列)で大いさNo .4
(析 出 黒鉛 片の長さ25 .
4〜12.
7mm
) を 示 した ヤマハ KTIOOA
で あっ た。 (Table
8
を 参 照 ) Table8.
各 種シ リン ダラ イナの析 出 黒 鉛の 形 状 と大い さ エ ン ジン の 種 類 YamahaParillaKomet
組 織 片 状黒鉛 析出 黒鉛の形状A 大い さNo .4
片状黒 鉛 析 出 黒 鉛 の形状B
大い さNo .4
片 状黒鉛 析 出黒鉛の形 状D 大い さ No.5
4
) 走 査型電子 顕微鏡に よ る焼 付き状態 の 観察に つ い て パ リ ラTT23
の ピス トン,
ピス トン リン グ,
シ リソ ダライナ につ い て 焼 付 き 状 態 を 観察 した 結 果, ピス ト ン,
ピス トン リソ グ, シ リン ダライナ各 面に摩 耗 粉が付 着し てい る状 況 や,
溶着摩耗の状況 が 明瞭に観察するこ とが でぎた。 終 りに本研 究の 御 指 導をい た だいた千葉工 業大 学,
金 属工学 科,
助 教 授 水島輝 夫 氏に感 謝の 意 を 表 しま す。 1)2
)3
) 4) 5) 参 考 文献 日本 規格協 会 :JIS
ノ・
ン ド ブヅ ク鉄 鋼 1979.
日本 規 格 協 会:JIS
ハ ン ドブ ッ ク非鉄1979.
佐藤知雄 著: 鉄 鋼の 顕微鏡写 真 と解 説.
渡辺久 藤・
佐 藤 英一
郎 著:実 用 合 金 状 態 図 説.
R
.
F .
Smart
:British
Foundryman
,64
(1971
),430
,
一
54)
6
) 7 ) 8 2 サ ィ クル エ ン ジン の 材 料につ い て (田 辺 明 ・平綿勝 彦 ・木 村広幸)LF .
コ ロ ブ ネ フ: 鋳 物 用アル ミニ ウ ム 合 金 の耐 熱性,
軽金 属協会.
幸田成 康・
和 泉 修・
諸 住正太 郎・
寺沢正武 著: 金 属 組 織 写 真 集 (非 鉄 材 料 編 ),
Hansen
M.
: Constitution of Binary Alloys.
)