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全天X線監視装置MAXI によるSMCX-1 観測データの解析

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全天 X 線監視装置 MAXI による

SMCX-1 観測データの解析

明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系 天文学研究室

11S1-046 谷 敬正

(2)

[1]

Abstract

X 線を強く発する天体は高温で、エネルギーの高い現象が起こる。それらの現象を X 線望遠鏡などを駆使して解明することは宇宙の構造や進化について知ることにもつ ながる。今研究では全天 X 線監視装置 MAXI のデータを用いて SMC X-1 のX線強度変 化から周期性を導き出しそこから連星間の距離と視線方向の角度を求めた。また、以 前から存在は確認されている X 線連星の超軌周期についてその不安定性について考察 した。 目次 はじめに 第 1 章 X 線観測 1.1 X 線とは 1.2 天文学における X 線観測 1.3 全天 X 線監視装置 MAXI 1.4 X 線を出す天体・現象 1.5 X 線パルサー 第 2 章 観測データの解析 2.1 SMC X-1 2.2 データ解析の準備 2.3 MAXI のデータ取得 2.4 データの解析方法 第 3 章 データ解析の結果 3.1 SMC X-1 の軌道周期 3.2 SMC X-1 の光度曲線 3.3 SMC X-1 の超軌道周期 第 4 章 考察 4.1 SMCX-1 の連星の運動から求められる連星間の距離 4.2 連星に対する視線方向の傾き 4.3 超軌道周期について 謝辞 参考文献

(3)

[2]

はじめに

天文学は近年、科学技術の発展により大きく進歩している学問であると感じる。昔 と比べて望遠鏡の大きさや精度も大きく向上し、地上だけでなく宇宙空間での観測も 行えるようになってきた。また、可視光だけでなく受信可能なあらゆる電磁波(赤 外、紫外、電波)を利用した観測を行うことで解明できなかった事象も解明や理解が 飛躍的に進んでいる。 学問が進歩していくにつれ、観測可能な対象の幅が広がった。特にX線を強く発す る天体は高温度、高エネルギーの現象が起こる。そのような現象を調べることは、地 球上では再現できないほど壮大なスケールを感じることができ、尚且つ天文学で学ぶ ことのできる最新の技術を感じることができると考える。 今研究ではX線観測衛星 MAXI のデータを用いて SMC X-1 の X 線強度変化から周期性 を導き出すことを目標とした。

(4)

[3]

第 1 章 X 線観測

1.1 X 線とは

人間が肉眼で感じることのできる光は「可視光線」といわれる電磁波の一種である。 「可視光線」の波長はおおよそ 380nmから 770nmである。電磁波は可視光以外にも 数種類あり、それらは波長によってわけられる。 以下の図を参照されたい。 ここでは X 線の特徴について述べていく。X 線の波長は 1nmから 0.01nmであ る。X 線は波長が短いために可視光線より屈折しにくくエネルギーが高い。 エネルギー範囲は 1keV から 100keV で分子の構造や、振動には関係なく個々の原子 が持つ電子と直接相互作用を行うようになり、原子の電離や励起といった現象を引き 起こす。そのため、X 線は分子の構造などに関わらず、原子の種類と個数によって透 過するかどうかが決まる。例えば、炭素原子で比較してみる。可視光では、ダイヤモ ンドは厚みによらずほぼ透過し鉛筆の芯のような炭素の塊は薄くても透過しない。一 方、X 線では、密度と厚さのみが透過の条件であり、いわば透過方向に炭素原子がい くつ存在するかが透過の可否を決めるのである。 また、物質の種類によっても透過率は違う。可視光はガラスをよく通過するが X 線 は透過しにくい。反対にアルミホイルは可視光を透さないが、X 線は比較的よく透過 する。 さらに、波長が短ければエネルギーも高いので、当然透過率は上がる。 図 1.1 電磁波の種類と波長 (JAXA http://astroh.isas.jaxa.jp/challenge/x-ray/)

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[4]

1.2 天文学における X 線観測

天体を観測している X 線の波長範囲は、1nm から 0.01nm である。短波長 X 線と長波 長 X 線では、透過距離すなわち物質との相互作用において6桁の差がある。レントゲ ンなどで使用される波長が 0.01nm 程の波長の X 線は硬 X 線と呼ばれる領域のもので透 過力の強いものを使用する。波長が 1nm程の X 線は軟 X 線と呼ばれる領域にあるも ので透過力はさほど高くない。この透過力の違いを利用し、様々な X 線の波長で強度 を観測することで X 線を発しているところと観測者との間に存在物質の量を推定する ことができるのである。 また、あらゆる物体は表面温度に応じた電磁波を発している。人間の体表温度では 赤外線が発せられているが、X 線の波長域の電磁波は数万度から数億度の高温を持つ ものから発せられる。 宇宙では数億度を超える超高熱現象から絶対零度に近いような超低温の現象まで 様々な現象が起きている。これらの観測はそれぞれの現象に適した電磁波を使うこと で可能となる。X 線による観測では、星の構造や爆発現象・ブラックホール周辺の現 象などといった、数万~数億度の高温状態を観測することができ、これらの現象を解 析が可能になる。 しかし、X 線は前述したように原子の種類とその厚みによって透過するかどうかが 決まる。地球は大気に覆われており、可視光は大気と相互作用を起こさないために地 表までのその光が届くが、X 線は大気をまったくと言っていいほど透過しない。その ため、宇宙からやってくる X 線を観測するためには大気より外側に X 線検出器を持っ ていく必要がある。よって、X 線望遠鏡は人工衛星として大気圏外に置かれ、観測を 行っているのである。

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[5]

1.3 全天 X 線監視装置 MAXI

全天 X 線監視装置 MAXI(Monitor of All-sky X-ray Image)とは国際宇宙ステー ションの日本実験棟「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されている天文観測 装置のことである。ガススリットカメラ(GSC)とソリッドステートスリットカメラ (SSC)の二種類のスリットカメラを用いて全天を観測する装置である。観測周期は国 際宇宙ステーションが地球を周回する約96分が一周期になる。

図 1.2 全天 X 線監視装置 MAXI の実際の写真(上) 全天 X 線監視装置 MAXI の概要図(下) (JAXAのMAXIパンフレットより)

(7)

[6] ガ ス ス リ ッ ト カ メ ラ ( GSC) 160 度(長さ)×1.5 度(半値幅)の視野を二方向に持ち、瞬時で観測できる領域は 全天の 2%になる。そのため、一周期ごとに全天の 90%から 89%を走査できる。 エネルギー範囲 2-30kev の X 線を 5350 ㎠の広い面積で検出している。検出面積が広 いほどより暗い天体まで観測することが可能である。 ソ リ ッ ド ス テ ー ト ス リ ッ ト カ メ ラ ( SSC) 90 度(長さ)×1.5 度(半値幅)の視野を二方向に持つカメラであり、瞬時に観測 できる空の領域は全天の 1.3%になる。一周期ごとに全天の約70%を走査する。 エネルギー範囲 0.5-12kev の X 線を高い分解能で検出する。ノイズを少なくするた めに CCD はマイナス 60℃まで冷却されている。 図 1.3 MAXI の視野角を表したイメージ図 青色がガススリットカメラの視野角 緑色がソリッドステートスリットカメラの視野角 進行方向と天頂方向の 2 方向を見るように配置されている (MAXI のパンフレットより)

(8)

[7] MAXI は全天を観測する装置としてスリットカメラを用いている一次元位置検出器と 金属の板を並べたコリメータ、直交した細長い隙間のスリットを組み合わせ、X 線が 来る方向を検出する。国際宇宙ステーションの動きに合わせて X 線天体は動くので、 カメラの視野内に現れる時刻から X 線天体の座標が決定される。 MAXI の特徴としては国際宇宙ステーションに電力供給や姿勢制御・通信などの基本 機能を依存することができるため、以前より大型の検出器を搭載できることがあげら れる。このことにより、天体から放出されている X 線を検出する感度が以前の全天監 視型の観測装置より約 10 倍高くなった。 高い速報能力も特徴としてあげられる。MAXI が走査したデータは即座に地上へと 送信され、データ解析を経てからインターネットで速報される。X 線天体が MAXI の視 野に入ってから速報されるまで必要とされる時間は 30 秒以下である。これにより、変 動現象が起きた対象天体をすかさず光や電波などの多波長で観測することが可能にな る。取得されたデータの公開は平成22年より始まっており、MAXI の研究チームだけ でなく世界中の研究者などに提供されている。 図 1.4 スリットカメラの概要図 (MAXI のパンフレットより引用)

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[8] 全 天 X 線監視装置 MAXI の基本仕様 MAXI のパンフレットより

(10)

[9]

1.4 X線を出す天体・現象

宇宙には様々な X 線を出す天体や現象がある。銀河団や活動銀河核、ブラックホー ル、超新星爆発、X 線バーストなどがあげられる。これらは巨大な重力や爆発エネル ギーを伴うもので、高いエネルギーを持つ。 銀河系において X 線を多量に放射する天体は数百個ほど存在しており、その多くは 中性子星と恒星の近接連星系である。相手の恒星から中性子星に質量が降着し、重力 エネルギーを解放することで X 線が放射される。このことから X 線連星とも呼ばれ る。

1.5 X 線パルサー

中性子連星系は相手の星の質量により二つに分けることができる。相手の星が太 陽質量の 10 倍以上の OB 型星である場合を大質量 X 線連星、相手の星が太陽質量以下 の場合を小質量 X 線連星という。このうち、大質量 X 線連星のほとんどは X 線強度が 周期的に変動しており、X 線パルサーといわれる。周期は 69 ミリ秒から 1000 秒近く の範囲で分布している。降着ガスはケプラー速度で円運動をしており、円盤に沿い中 性子星に向かい流れ込む。磁場の圧力がガスの圧力とつりあう点でガスの流れはせき 止められ、磁力線に沿って移動し、両磁極に流れ込む。この際、磁極付近に落ち込ん だ物質は加熱され、X 線を放射する。中性子星の磁極が回転軸に対し傾いていると、 中性子星の回転とともに見え隠れすることになり、そこから放射されている X 線パル スとして観測される。 図 1.5 X 線パルサーの概念図 中性子星へ降着するガスはやがて強い 磁力線にそって中性子星の磁極に落ち 込む。中性子星が自転することによっ て磁極が見え隠れし、X 線パルサーと なる。

(11)

[10]

第 2 章 観測データの解析

2.1 SMC X-1

SMC X-1 とは小マゼラン雲にある X 線パルサーである。多くの X 線パルサーが発見 されている小マゼラン雲の中でも SMC X-1 は X 線強度が比較的きれい周期性を示す。 1970 年に打ち上げられた世界初の X 線天文衛星 Uhuru によって X 線連星として詳細 な観測が行われた。 パルサー周期や連星周期のほかに独自の周期をもつ超軌道周期についても存在が予 言されており、多くの研究者によって研究が行われてきた。 下記に SMC X-1 の物理量を示す。 中性子星 相手の恒星 質量(M⊙) 17.6 ± 0.6 1.6 ± 0.1 半径(R⊙) 16.2 ± 0.4 ― 連星までの距離(kpc) 50 ± 8 パルス周期(sec) 0.72 連星周期(day) 3.892 ※M⊙は太陽質量 R⊙は太陽質量

“Optical spectroscopy of the massive X-ray binary SMC X-1/sk 160” A.P.Reynolds et al (1993) より 図 2.1 小マゼラン星雲(NGC292) きょしちょう座。南天の星座で、日本からは見えない。距離:約20 万光年。星雲 中に多くの X 線連星パルサーがある。ピンク十字は SMCX-1 の位置を示す。 (http://aladin.ustrasbg.fr/AladinLite/?target=smcx1&fov=3.00&survey=P%2FDSS2%2Fcolor)

(12)

[11]

2. データ解析の準備

MAXIのWEBページ (http://maxi.riken.jp/top/index.php?cid=1&jname=J1958+352)SMC X-1 のデータ をダウンロードする。 今回は SMCX-1 の全観測期間 MJD5058.156250 日から 56994.968750 日のデータを使用し た。 図 2.2 SMC X-1 の X 線エネルギー別ライトカーブ(1dot/day) 横軸:MJD(修正ユリウス日) 縦軸:単位面積当たりの単位時間のカウント数[counts/sec/cm2] 黒:2.0-20kev 赤:2.0-4.0kev 緑:4.0-10.0kev 青:10.0-20.0kev

(13)

[12]

2.4 データの解析方法

光度曲線をさまざまな周期で畳みこみ、畳まれた光度曲線が一致する時間を周期と みなす。解析には、MAXI チームの開発した解析ソフト folding search を使用した。 決定した周期で公開データを折り畳み、波形をグラフで出力する。折り畳み MAXI チー ムの開発した folding のプログラムを使用し、画像出力は HEAsoft を使用。 HEAsoft(High Energy Astrophysics software) は解析に必要な様々なソフトをまとめ たものであり、以下のURLからダウンロードが可能 http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/software/lheasoft/ 折りたたむ光度曲線の時間または日数を分割し、それぞれについて解析することによ り時間経過による変化についても考える。

(14)

[13]

第 3 章 データ解析の結果

3.1 SMC X-1 の軌道周期

連星の軌道周期を 3.88 日から 3.90 日までと仮定しその間を 100 分割した周期で 折り畳みを行い、x!検定で周期を求めた。 最もよく一致が見られた周期は 3.892 日であった。

軌道周期の

査結果

𝑥

!

仮定した軌道周期

day)

図 3.1 軌道周期の探査結果 横軸:仮定した軌道周期 縦軸:x!検定の数値

(15)

[14] 全期間のデータを 3.892 日で折りたたむと軌道周期一周期分で折り畳まれた位相が 現れた。エネルギー範囲は 2.0-20kev である。 下の図をみると、横軸が 0.7 あたりで単位時間のカウント数が急激に 0 付近まで落 ち込み、その後 0.85 日付近でもとの単位時間当たりのカウント値に近づくグラフにな っている。中性子星が相手の星に隠れているいわゆる「食」が起きていることが確認 できる。

軌道周期で折りたたんだ

X 線光度曲線

軌道周期で折りたたんだ位相

図 3.2 軌道周期で折りたたんだ X 線光度曲線

(16)

[15]

3.2 SMC X-1の超軌道周期

次に超軌道周期について調べる。 SMCX-1 の全観測データを 50 日から 60 日の期間で周期探査を行うと、55.8 日にピー クが現れた。つまり、55.8 日周期で X 線強度が変化していることが導き出された。 ピークが何箇所も出ているのは、連星周期の整数倍で重ね合わされて現れたものだ。

超軌道周期の

査結果

𝑥

!

仮定した軌道周期

day)

図 3.3 超軌道周期の探査結果

(17)

[16] 超軌道周期 55.80 日で折りたたんだグラフを以下に示す。各エネルギー範囲でカーブ の緩やかさに若干の違いがあるが、どれも単位時間当たりの単位面積のカウント数が 0 付近までに落ち込んでいることがわかる。それぞれは 50 ビンでまとめてある。 A B C D 図3.4 A:2.0-2.0kev のエネルギー範囲で折りたたんだ超軌道周期の位相 B:2.0-4.0kev のエネルギー範囲で折りたたんだ超軌道周期の位相 C:4.0-10.0kev のエネルギー範囲で折りたたんだ超軌道周期の位相 D:10.0-20.0kev のエネルギー範囲で折りたたんだ超軌道周期の位相

(18)

[17]

第 4 章 考察

以上の結果より起動周期の時間および1周期の光度曲線から推定できることを考察 する。

4.1 SMCX-1 の連星の運動から求められる連星間の距離

ここで、連星の運動について考える。質量 M1と質量 M2の星が距離 a 離れて互いの 周りを角速度Ωで回っているとする。2つの星は重心の周りを回ることになるから、 重心から M1までの距離をr1、M2までの距離をr2とすると r 1= ! !+!𝑎 r!= !! !+!𝑎 …(1) この連星系の回転運動が円であると仮定すると、Mの星の運動方程式は重心の周りの 回転による遠心力と、Mに引かれる重力のつりあいの式になるから、 Mr 1Ω 2!!1!2 !2 … (2) となる。(1)の式を(2)に代入すると MM M+M𝑎Ω 2GM1M2 𝑎! ここから 𝑎!=!(!!+!!) !2 … (3) を得る。 図4.1 連星の関係を表した略図 𝑎:連星間の距離 Ω:角速度 ×印が連星の重心

(19)

[18] ここで連星の回転周期を PBとすると Ω=2π P! だから(3)式は 𝑎!=G(M!+M!) (2π)! P!! … (4) SMCX-1 の各天体の質量は光の観測(Reynolds etal.1993)によって求められている (ここでの誤差は考えないことにする)。 M=1.6M8 M=17.2M8 連星周期 PBは MAXI のデータを folding search した結果より PB=3.892 day G は万有引力定数で G=6.67×10-11 m3/kg·s2 M 8太陽質量で M 8=1.99×10 30 kg これらの数値を(4)式に代入すると 𝑎! =6.67 1.6×1.99×10!"+17.2×1.99×10!" 2×3.14 (3.892×24×60×60)! m! ≈ 7.15×10!" m! 𝑎 = (7.15×! 10!"m 𝑎 = 1.93×10!" m 太陽と地球との距離が約1.5×10!! mであることを考えると SMCX-1 は非常に近い距離 で連星が回っていることが分かる。

(20)

[19]

4.2 連星に対する視線方向の傾き

MAXI のデータを連星周期で折りたたんだ光度曲線から、私達から見ている方向が連 星の軌道面に対してどれほど傾いているかを考える。 連星周期で折りたたんだ光度曲線は X 線のカウント数がゼロに落ちている部分は私 達から見て中性子星が相手の後ろに隠れている食であることを示している。 この食にいる時間を連星がどれくらいの角度を回る時間に相当するかを換算し、食 になっている回転角を2φ!とおく。 取得したデータより2φ = 43.2°であるため、φ!= 21.6°である。 図4.2 連星が一周する時の回転角 軌道周期で折りたたんだ X 線光度曲線を連星が回 転する回転角の変化で表したもの。食に当たる時 間をφ!に換算する。

(21)

[20] X 線源である中性子星を中心に中性子星から相手の星の中心を見た方向を X 軸、連星 の回転軸の方向を Z 軸とする。そして私達(観測者)は Z 軸から傾き角𝑖の方向にい て、その方向から中性子星を観測しているとする。中性子星の中心から観測者の方向 を視線方向とする。 SMCX-1 において、中性子星の相手の星の半径 R は光の観測より R = 16. 2R8 となっている。ここで R 8は R8=6.96×10! m である。 図4.3 連星と視線方向の傾き 原点:中性子星の中心 x軸:中性子星から相手の中心を見た方向 z軸:連星の回転軸 𝑎: 連星間の距離 R:相手の星の半径 𝑖:連星に対する視線方向の傾き

(22)

[21] 今、z軸方向と視線方向(座標中心から観測者を見る方向)とが含まれる面を「視線 方向子午面」と呼ぶことにする。2 つの星の中心を結んだ線を X 軸として固定した座 標を考えると視線方向子午面はz軸の周りを連星周期で回ることになる。したがって この座標系では観測者がいる視線方向が傾き角𝑖を持って z 軸の周りを連星周期でグル グルと回ることになる。そして、ある時間の視線方向子午面のx軸からの回転角をφ とし、z 軸を真上から見た x-y 面は下図のようになる。 MAXI のデータを連星周期で折りたたんだ光度曲線から中性子星の食の入りと出の回 転角度2𝜑!を求められるわけだが、この食の入りまたは出の時は視線方向が星の表面 にちょうど接した時に相当する。X 軸よりもっと大きい角度離れると視線方向は相手 の星の内部を通ることはなくなるのである。 図 4.4 連星に対する観測者方向の変化 φ:ある時間の視線方向子午面のx軸からの回転角 線方向子午面:軸方向と視線方向とが含まれる面

(23)

[22] 次に食の開始時・終了時の視線方向と相手の星との幾何学的関係について考える。 視線方向が相手の星に接する点を P とする。そして点 P からx-y面に垂直におろし た点を点 Q とする。中性子星の中心位置を A 相手の星の中心位置を B とすると A、B、 P、Q、の関係は以下のようになる。 ここでα =! !− iを導入する。点 P は点 B を中心とする半径 R の球に接しているわけだ から ∠APB=直角 である。よって△APB は直角三角形で AP= 𝑎!− 𝑅! 点 P からx-y面に垂直におろした点が点 Q であるから、∠PQA=直角で、 AQ=AP ∙ cos α PQ = AP ∙ sin α 図 4.5 食の開始時・終了時の視線方向と相手の星との幾何学的関係 点 A:中性子星の中心 点 B:相手の星の中心 点 P:視線方向が相手の星の表面と接する点 点 Q:点 P からx-y面に垂線をおろした点 この時、点 P は食が表れる境界の点になる。

(24)

[23] また、∠PQB=直角だから BQ!=BP!− PQ! であり、BPは相手の星の半径 R と等しいから BQ!=R!− AP!∙ sin α = R!− (𝑎!− R!) ∙ sin!α = R!R!sin!α − 𝑎!sin!α 三角形 ABQ に対して余弦定理より BQ!= AQ!+ AB!− 2 ∙ AQ ∙ AB ∙ cos φ ! だからAB=aを考慮すると R!+ R!sin!α − 𝑎!sin!α

= (𝑎!− R!)cos!α + 𝑎!∙ a!− R!∙ cos α ∙ sin φ ! となり、変形して整形すると cos α cos φ!= a!− R! a を得る。 これより cos α= cos π 2− 𝑖 = sin 𝑖 だからcos αをsin 𝑖に置き換えると sin 𝑖 = 𝑎!− R! 𝑎 ∙ cos φ! によって視線方向の傾き角𝑖を求めることができる。

(25)

[24] φ! = 21.6° R は相手の星の半径であるから R = 16.2R8≈ 1.13×10!" m また、点 A から点 B までの距離 a は 𝑎 = 1.93×10!" m と求められている。 これらを sin 𝑖 = 𝑎!− R! 𝑎 ∙ cos φ! に代入して sin i = (1.93×10!")!− (1.13×10!")! (1.93×10!") ∙ cos 21.6 ≈ 0.88 これより、傾き角𝑖は arc sin(0.88) ≈ 60.4 より 𝑖 = 60.4° となる。

連星に対する視線方向の傾きは先行研究“Pulse profile and refined orbital elements for SMC X-1” F.PRIMINI et al (1977)では𝑖の値は 63 ± 10 °となっており、と今結果と よく一致していると言える。

(26)

[25]

4.3 超軌道周期について

今研究ではデータ解析の結果、SMCX-1 では軌道周期として求めた 3.892 日よりも長 い 55.8 日の超軌道周期を確認することができた。 超軌道周期は軌道周期よりも長い時間で変動する周期のことだ。1984 年に超軌道周 期の存在が発見されたが、明白なパターンを発見することはできず、その後何度も研 究者によって超軌道周期について調べられたが、いまだその謎は解明されていない。 軌道周期の原因とその不確定性について考えていきたい。 以下の図は観測期間 MJD55058.156250 日から 56858.156250 日までを 5 分割しそれぞ れを 50 日から 60 日の期間で超軌道周期を検証したものである。 ところどころにピークが表れているが、超軌道周期としてはおおよその周期が確認 できると考えられる。 仮定した軌道周期

(day)

図4.5 全観測時間の 5 分の1の超軌道周期 (上左)55058.156250-55418.156250 (上右)55418.156250-55778.156250 (下左)55778.156250-56138.156250 (下中)56138.156250-56498.156250 (下右)56498.156250-56858.156250 MJD 日

(27)

[26] 前ページまでの超軌道周期の探査結果を表 4.1 にまとめた。 表.4.1 上記の通り超軌道周期は大体 50 日~60 日周期の間で推移している。 なお、図 4.5 のグラフで現れたピークは連星周期の整数倍で重ね合わせが行われて いることで現れたピークだと考え、その数値は超起軌道周期とはいえないと考える。 しかし、グラフには軌道周期 3.892 日に近い間隔でピークが表れることを考慮する と、軌道周期と超軌道周期の関係性があるのではと私は考える。 先行研究ではその関連性はないといわれていたが、軌道周期と、それに近い周期で 何かしらの変化が起きていれば、超軌道周期に説明がつくのではと感じる。 その他、SMCX-1 において超軌道周期が起こりうる可能性としてはガスが降着する時 に何らかの状態変化が起こっているということも考えられる。しかし、現段階で確証 はされておらず、今研究でも超軌道周期が起こる可能性になりうるものは検出できな かった。 先行研究は SMCX-1 の超軌道周期は HerX-1 や CygX-2などほかの X 線連星系におい ても、似ている形状の周期が発見されている。 超軌道周期は SMCX-1 のデータだけでなく、その他の X 線連星系のデータも解析し、 統計的なデータを解析することで解明することができるのではないかと考える。 期間(MJD) おおよそのピーク周期(日) 55058.156250-55418.156250 54.0~56.5 55418.156250-55778.156250 56.5~58.5 55778.156250-56138.156250 50.0~53.5 56138.156250-56498.156250 56.0~56.5 56498.156250-56858.156250 52.5~55.0

(28)

[27]

謝辞

本卒業論文の作成にあたり、井上一先生、小野寺幸子先生、日比野由美さんには 最後まで多くのご指導をいただき、感謝申し上げます。 また、研究に対するアドバイスや励ましの言葉をいただいた同研究室院生の皆様 にも感謝いたします。

(29)

[28]

参考文献

MAXI RIKEN サイト http://maxi.riken.jp/top/ X線で探るブラックホール―X線天文学入門― (北本 俊二 著) 裳華房 シリーズ現代の天文学 「ブラックホールと高エネルギー現象」 (小山勝二、嶺重慎 編)日本評論社 X-Ray Binaries LEWIN,VAN PARADIJS and VAN DEN HEUVEL (CAMBRIDCE) jaxa X 線天文学の世界 http://astro-h.isas.jaxa.jp/challenge/x-ray/ http://www.hubblesite.org/gallery/album/entire/pr2005004a aladin http://aladin.u-strasbg.fr/AladinLite/?target=smcx1&fov=3.00&survey=P%2FDSS2%2Fcolor

“Pulse profile and refined orbital elements for SMC X-1” F.PRIMINI et al (1977)

“Open Research Online The mass of the neutron star in SMCX-1” Journal Article et al (2005)

“TRACKING THE ORBITAL AND SUPERORBITAL PERIODS OF SMC X-1” Sarah Trowbridge et al (2007)

“Optical spectroscopy of the massive X-ray binary SMC X-1/sk 160” A.P.Reynolds et al (1993)

参照

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現到着経路 (好天時以外) (A,C滑走路) 現出発経路 (C,D滑走路) 現到着経路 (好天時) (A,C滑走路) 現到着経路 ( 好天時以外 ) (A,C滑走路) 新出発経路

2.2.2.2.2 瓦礫類一時保管エリア 瓦礫類の線量評価は,次に示す条件で MCNP コードにより評価する。

2.2.2.2.2 瓦礫類一時保管エリア 瓦礫類の線量評価は,次に示す条件で MCNP コードにより評価する。