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IRUCAA@TDC : 口の健康と認知症の予防

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

口の健康と認知症の予防

Author(s)

村松, 和浩

Journal

歯科学報, 116(2): 2i-2i

URL

http://hdl.handle.net/10130/3977

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口の健康と認知症の予防

村 松 和 浩

認知症は,脳の経年的変化が元にあり生じてくる病気である。大脳は,目,耳,鼻,口,手足など から伝えられる感覚情報を分析,判断して行動を起こす機能(認知機能)を担っている。この機能が障 害されて,社会生活に支障をきたすようになった状態を認知症という。 口は,食べること,話すこと,笑うことなどの感情表現などをするところであり,日常生活,社会 生活では極めて多くの役割を持つ。大脳において口の感覚や運動を司る領域は,ペンフィールドの頭 頂葉地図ではほぼ全体の3分の1を占めて,口は鋭敏かつ,細かな機能に関する感覚を有する。さら に,口を構成する唇や舌の占める割合が大きく,口の感覚を刺激すると体性感覚の3分の1が刺激さ れることになる。食べることや話すことで口を運動させると,運動野に関しても3分の1が刺激され ることになる。すなわち,大脳が担う認知機能においてかなり大きな部分に口が関連し,認知機能障 害には口の健康が大きな影響を及ぼすことが容易に想像できる。 近年,口の健康が全身の健康を脅かすことが注目されるようになった。世界で最も患者数が多い感 染症として NHK の“ためしてガッテン”で取り上げられた歯周病はその最たるもので,日本でも7 割の人が罹患しているということである。特に糖尿病とは密接な関係があり,悪化させることがあ る。さらに,歯周病菌が血管内に入ると血栓ができやすくなり,心臓病や脳梗塞のリスクを高める。 糖尿病は,動脈硬化,小血管病,糖毒性,インスリン代謝異常,脂質異常症などの各種の糖尿病関 連状態を介してアミロイド β の産生と脳虚血を助長しアルツハイマー病,脳血管性認知症などの認 知症を誘発する。また,糖尿病自体が認知症を呈することが,糖尿病性認知症の名称で提唱されてい る。 歯周病菌が血管内に入り,血栓をできやすくして脳梗塞のリスクを高めることは,勿論直接に脳梗 塞などの脳血管障害が原因となる脳血管性認知症を誘発することになる。また,脳血栓症の原因とな る脳動脈硬化の本体は血管の炎症と言われている。歯周の炎症部位から炎症性物質(サイトカイン)が 放出され,これが動脈壁の炎症を引き起こして動脈硬化を促進し,脳小血管病変が進行すると考えら れる。近年,脳小血管病変は脳組織からのアミロイド β の排出を阻害して,その蓄積の原因の一つ と考えられるようになっており,アルツハイマー病の発症にも寄与すると考えられる。よって,高齢 者の歯周病の治療は,認知症予防につながるものの一つと考えられる。 家庭でできる歯周病の予防である歯垢を除去するためのブラッシングは,前脳基底部マイネルト核 からのコリン作動性刺激及び神経栄養因子(NGF)の分泌を高め大脳皮質の血流を改善する効果があ ると考えられる。すなわち,アルツハイマー病で起こる前脳基底部でのコリン作動性神経刺戟の減少 に対して有効である可能性がある。 近年は,8020運動や口に関して関心が高くなっていることもあり,高齢の方も多く歯が残るように なった。しかし,認知症高齢者は歯が抜けて残った歯(残存歯数)が少ないという調査がある。健常高 齢者を6年間経過観察したら,元から歯がなかった方は,歯が20本以上あった方に比べて認知症リス クは5.2倍であったという調査がある。よって,歯が抜けることは認知症の危険因子になる可能性が ある。 マウスの実験で,奥歯をヤスリで削って,餌を潰せなくして,記憶・学習への影響を調べると,奥 歯を削ったマウスは学習が苦手であった。原因は,奥歯を削ると記憶に関係する海馬の神経細胞が減 少することにあった。奥歯を使ってしっかり噛むことで記憶を担当する神経細胞が維持されるのであ る。このように,咀嚼運動は脳の機能の維持,特に記憶に重要なのである。すなわち,よく噛むこ と,噛めることは認知症予防に大切なことと考えられる。 以上,口の健康は認知症の発症予防において極めて重要であり,超高齢化社会を迎えている我が国 においては,歯科医科連携が喫緊の課題であると考えられる。 (東京歯科大学市川総合病院神経内科 教授)

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