Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№13:脱負荷モデルにおけるインプラント周囲骨の解
析
Author(s)
大津, 雄人; 松永, 智; 中島, 孝輔; 古川, 丈博; 阿部,
伸一; 矢島, 安朝
Journal
歯科学報, 120(2): 208-208
URL
http://hdl.handle.net/10130/5180
Right
Description
目的:近年,メカニカルストレスに対する骨強度の 評価として骨の質的因子を考慮する必要性が増して おり,中でも生体アパタイト(BAp)結晶配向性 が注目されている。BAp 結晶は,主としてコラー ゲン線維に沿って c 軸方向に配列し,骨の力学的特 性に深く関与している。BAp 結晶配向性は部位依 存性が高く,骨密度よりも局所応力に敏感に反応す る。本研究では,インプラント埋入が周囲皮質骨へ 与える影響の一端を解明することを目的として,尾 部懸垂によるマウス大腿骨にインプラント埋入を行 い,インプラント周囲骨の BAp 結晶配向性及びコ ラーゲン線維走の異方性を評価した。 方法:試料は,12週齢雄性の C57BL/6NCrSLc マ ウスを用いた,1週間の予備飼育後,マウスの尾を 上方に牽引して前肢のみ接地させ,尾部懸垂飼育を 3週間行った。その後,大腿骨骨幹中央部に直径 0.8mm 長さ1mm のチタン合金製インプラントを 埋入し,3週間後に屠殺して大腿骨の試料を得た。 関心領域は中央骨幹部におけるインプラント周囲皮 質骨とした。インプラント体中央部において大腿骨 の水平断を行い,100μm の非脱灰研磨標本を作製 した。微小領域エックス線回折装置(RINTRAPID-CMF,Rigaku)を用いて回折強度比を算出するこ とで,BAp 結晶配向性の定量評価を行った。また, 共 焦 点 レ ー ザ ー ス キ ャ ン 顕 微 鏡(LSM880 Airy NLO,ZEISS)を用い,第二高調波発生(SHG)イメー ジングを用いてコラーゲン線維走行を観察した。 結果:脱負荷状態ではインプラント周囲の新生骨量 は明らかに乏しく,周囲の皮質骨は菲薄化してい た。インプラント周囲の新生骨は既存骨の配向性と は異なり,大腿骨長軸方向への1軸優先配向性を失 い,それ以外の方向に対する回折強度比の増加を認 めた。コラーゲン線維走行は,インプラント周囲で 明らかな変化を認め,BAp 結晶の配向方向と一致 していた。 考察:インプラント周囲骨の変化は,尾部懸垂によ る脱負荷によるものであることから,抜歯による歯 槽骨における骨質の変遷に類似していることが推察 された。インプラント周囲骨は,本来の大腿骨とは 異なる構造特性を示したことから,インプラント周 囲の様々な荷重環境と骨のミクロ/ナノ構造特性に ついて,その関連性の一端を評価するのに有用であ ることが示唆された。 目的:下顎骨骨折は,顎顔面領域で起こりうる外傷 の中で最も多く,事故や転倒等が主な原因である。 今回,自身の咬合力によって下顎骨骨折をきたした 患者に遊離腓骨皮弁再建を行い,インプラントを併 用して咬合再建した症例を経験したので報告する。 症例:58歳,男性。2016年6月に咬合時痛 を 自 覚 し,紹介元歯科医院を受診した。同月下顎骨骨折の 加療目的に当科を受診となった。初診時の所見とし て顔面および口腔内に受傷を考えうる創は認めな かった。パノラマエックス線写真にて下顎は高度に 菲薄化を認め,下顎左側骨体部に骨折線を認めた。 CT 所見でも同様の所見を認めた。金属プレートに よる整復固定は困難と判断し,腓骨による下顎骨再 建術を計画した。手術に先立ち,下顎骨と腓骨の3 D 模型を作製し,術中のシミュレーションを行っ た。同年9月,下顎骨骨折に対し,全身麻酔下に下 顎骨区域切除術,遊離腓骨皮弁再建術を施行した。 術後1年3か月が経過し,CT 所見で下顎骨と再建 骨の接合部に骨化を認めたため,2017年12月に全身 麻酔下でミニプレートへの置換術を行った。術後の 経過は良好であった。しかし,義歯の維持が得られ なかったため,インプラントオーバーデンチャーに よる咬合再建を計画した。そこで,2018年7月に広 範囲顎骨支持型補綴装置埋入手術(Nobel Biocare Branemark systemⓇ MKⅢ Tiunite 計4本)を施行 した。埋入後5か月で二次手術を行い,インプラン トオーバーデンチャーを装着した。上部構造装着後 2年が経過したが,再建骨,インプラントに異常は ない。本症例では OHIP による QOL 評価で,術前 と比較して著名な改善を示し,デンタルプレスケー ルⓇ (GC)を用いた機能評価では平均圧,咬合力, 咬合接触面積の改善を認め,グミゼリーを用いた咀 嚼能率評価でも Score0から Score3へ改善を認め た。 成績および考察:腓骨皮弁は骨の整形が可能で,本 症例のような広範囲の顎骨再建に有用である。ま た,顎義歯では維持が得られなかった症例に対し て,インプラントを併用した咬合再建は機能的な改 善だけでなく QOL の向上にも寄与できると考えら れた。