初等中等教育におけるICTの活用:4.海外におけるICT活用教育 -韓国と日本の比較を中心として-
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(2) 特集. 初等中等教育における ICT の活用. 2). メキシコ. トルコ. 日本. ポーランド. 日本. 韓国. ベルギー. イスラエル. スロベニア. スペイン. ポーランド. ドイツ. エストニア. チリ. ハンガリー. チェコ. アイルランド. スロバキア. アイスランド. ポルトガル. オーストリア. スイス. ギリシャ. フィンランド. 韓国. ドイツ. エストニア. ベルギー. イスラエル. アイスランド. イタリア. ハンガリー. ポルトガル. スイス. メキシコ. スロバキア. オーストリア. フィンランド. チリ. スペイン. ギリシャ. 0.6 0.4. -1. 韓国. 日本. フィンランド. スイス. アイルランド. イタリア. ハンガリー. ギリシャ. オランダ. イスラエル. スロベニア. スロバキア. ポーランド. ベルギー. ドイツ. オーストリア. トルコ. チェコ. アイスランド. オーストラリア. ニュージーランド. エストニア. スペイン. ポルトガル. -0.6. スウェーデン. -0.8. チリ. 0 -0.2. デンマーク. 0.2. 方法の習得ではなく,ソフトウェ. 図 -3 学校の勉強と宿題をするために ICT が有効であると認識する(標準化指数) 1. 通じ論理的思考力を育むことが主. 0.8. な目的である.政治的な強いリー. 0.4. 0.6 0.2 ノルウェー. デンマーク. スウェーデン. アイスランド. ドイツ. オーストリア. フィンランド. エストニア. 韓国. ポーランド. スイス. オーストラリア. イスラエル. アイルランド. ベルギー. ニュージーランド. チェコ. イタリア. チリ. オランダ. スペイン. -1. ポルトガル. ある.韓国の中等教育では選択科. -0.8. トルコ. -0.6. スロバキア. 備えられ,必須科目化する方向に. -0.4. メキシコ. 校までの段階的なカリキュラムが. ハンガリー. 0 -0.2. 目,日本の高等学校では必履修科. スロバキア. 1 0.8. -0.4. ダーシップのもと,小学校から高. スウェーデン. 図 -2 学校での ICT 活用度(標準化指数). .ICT 機 器 の 活 用. グ)などによる開発・製作経験を. ニュージーランド. -0.8. チェコ. -0.4. オランダ. 0. -1. アとプログラミング(コーディン. アイルランド. -0.6. ☆6. イタリア. まると予想される(図 -5 参照) .. てきている. トルコ. 与するのでさらに関心と活用が高. ータ科学 ” の教育課程が重視され. ニュージーランド. 0.4. -0.2. 初等中等学校における “ コンピュ. オランダ. 0.6 0.2. 最近,イギリスと米国を中心に. スウェーデン. 1 0.8. 教師間のコミュニティ作りにも寄. OOコンピュータ科学カリキュ ラム導入の遅れ. ノルウェー. 図 -1 学校での ICT アクセシビリティ(標準化指数). スロベニア. 克服するきっかけとなるとともに,. -1. オーストラリア. タル教科書に関する著作権問題を. -0.8. メキシコ. 3). る .このようなサービスはディジ. -0.6. ノルウェー. 後はその活用が増える見込みであ. -0.4. 日本. も連動するようになっており,今. 0 -0.2. ギリシャ. た.これは,ディジタル教科書と. 0.2 デンマーク. working Service)サービスを開始し. 0.4. オーストラリア. 習過程の情報共有 SNS(Social Net-. 0.6. ノルウェー. 育部で最近 wedorang と呼ばれる学. 1 0.8. デンマーク. ンツ生成を促している .韓国教. 図 -4 学習のための ICT 活用への抵抗感(標準化指数). 目としての情報科が設定されてい るが,現状は ICT に関する知識と活用方法などの習. ンピュータ科学 ” が目的とする論理的思考力が十分. 得が主な内容で,必ずしもイギリスと米国などの “ コ. 育まれる仕組みになっていない.そのため,韓日両 国とも情報教科の改善と強化を検討しており,その. ☆ 6. 332. イギリス https://www.gov.uk/government/speeches/michael-gove-speaksabout-securing-our-childrens-future http://www.techweekeurope.co.uk/news/national-curriculum-icteducation-computing-121214 米国 http://m.whitehouse.gov/blog/2014/12/08/celebrating-computerscience-education-week-kids-code-white-house. 情報処理 Vol.56 No.4 Apr. 2015. 後が注目されている.. OO既存の学校課題の解決が ICT 活用の理由 として挙げられない 日本と韓国では ICT を取り入れる理由を最近 3 ~ 5 年,.
(3) 海外における ICT 活用教育─韓国と日本の比較を中心として─. 04. OO校務情報化の遅れ 韓国の学校教育情報化推進の大きなきっかけになっ たのは NEIS(ナイス)という学校教育教務情報サービ スである.全国のそれぞれの教育委員会別に教務情報 の基準と項目などを統一させ管理することで,結果的 に教師にとって ICT がより日常的になり,ICT 機器操作 能力の向上にも良い影響を与えたと言われる.. OO無料の教育用ディジタルコンテンツの不足 図 -5 韓国のディジタル教科書で作成したメモを「wedorang」へ 転送する画面. 韓国では小学校 3 年生から高校まで 3 科目(国 語, 数 学, 英 語 ) の 教 科 書 が デ ィ ジ タ ル 化 さ れ (e - 教科書),全国の児童生徒と教師は無料でダ. あるいは近未来予測から求める場合が多い.すなわ. ウンロードしてモバイルでも活用することができ. ち,インターネットとスマートフォンなどの普及を. る. 含めた情報化の動向と,創造性や問題解決能力など. 市では kkulmat. が含まれる 21 世紀型能力の育成がいつも目的として. ざまな教育用ディジタルコンテンツが無料で活用. 挙げられる.しかし一方で,これまでの学校教育で. 可能な環境が備えられている(図 -6 参照).日本. 生じた課題を十分踏まえた情報教育が取り上げられ. の国立教育政策研究所では最近「教育情報共有ポ. てないように見える.先に述べたような “ 教育課程. ータルサイト」のサービスを開始したが,児童生. の柔軟性欠如 ” と “ 学習過程で生み出される情報に. 徒が活用しにくいこと,PDF 資料中心であるなど. 対する関心の低さ ” などの課題の背景にある形式的. の制限がある.. ☆7. .また,“ サイバー学習 ”(たとえば,ソウル ☆8. )と “EDUNET. ☆9. ” もあり,さま. かつ結果中心の学校教育の問題体質がそのまま残り 続けることで,ICT 活用教育の足を引っ張る恐れがあ. OOICT 活用は教育に適さない・危ないとの認識. る.そして学校教育の情報化環境が整備されても 21. 韓国にも個人情報漏洩とスマートフォンの利用依. 世紀型能力の育成に繋がるとは考えにくい.学校教. 存,そしてインターネットを利用した学校暴力な. 育の問題を克服する方法の 1 つとして ICT を戦略的. どの問題が強調されているが,表 -1(学習のため. に捉え実践を積んでいかなければ,ICT 活用学校教育. の ICT 活用への抵抗感)のような強い抵抗感はない.. の定着と普及にはなりにくいと思われる.. その反面,日本ではインターネット上の情報は宿題 に使えるほどの信憑性がない,といった認識が比較. 韓国の ICT 活用教育の現状から見 える日本の課題. 的に強い.注意深くインターネット上の情報を扱う. 韓国の ICT 活用学校教育の現状から見える日本の. 対処するかが 1 つの課題であるといえる.. といえるが,それが消極的な ICT 活用に繋がる恐れ もある.したがって,このような意識にどのように. 課題としては 4 点が思い浮かぶ.すなわち “ 教務の 情報化の遅れ ”,“ 無料の教育用ディジタルコンテ. OO学校と家庭の連携不足. ンツの不足 ”,“ICT 活用は教育に適さない・危ない. 学校と家庭の連携には 2 つの種類があるといえ. との認識 ”,“ 学校と家庭の連携不足 ” である.. ☆ 7. http://book.edunet.net/ebook/main.do. ☆ 8. http://www.kkulmat.com/. ☆ 9. http://www.edunet.net. 情報処理 Vol.56 No.4 Apr. 2015. 333.
(4) 特集. 初等中等教育における ICT の活用. 学習でコンピュータを使用するのは 面倒だ. インターネットは誰でもアップロー ドできるので,一般的に学校の宿題 をするのに適さない. インターネット上の情報は,学校の 宿題に使えるほどの信憑性がない. 韓国. 日本. OECD 全体. 韓国. 日本. OECD 全体. 韓国. 日本. OECD 全体. 非常に同意. 5.38. 14.54. 10.48. 2.98. 9.6. 10.91. 1.49. 12. 10.59. 同意. 24.93. 23.38. 18.97. 20.2. 29.03. 26.24. 10.33. 35.55. 24.26. 同意しない. 53.91. 40.65. 42.97. 61.13. 44.7. 43.76. 64.98. 38.59. 44.22. まったく 同意しない. 15.25. 16.78. 22.48. 15.21. 12.08. 13.88. 22.71. 9.31. 15.77. 欠測値. 0.52. 4.65. 5.11. 0.48. 4.6. 5.21. 0.5. 4.54. 5.16. 表 -1 学習のための ICT 活用への抵抗感(標準化指数). い.これは教育情報化のための親の認識と理解に貢 献することも期待できる.さらに,学校教育の拡張 と地域活性化などの意味で学校と地域の連携が注目 されているため,このような連携は日本の ICT 活用 学校教育にも必要であると考える.. 韓国の ICT 活用学校教育の現状 最後に,よく日本の ICT 活用教育関係者から尋ね られる “ 最近の韓国の ICT 活用教育 ” の現況につい 図 -6 韓国教育学術情報院の EDUNET 初期画面を Google 翻訳し た画面(学習者と教師などが活用できるコンテンツが揃えられて いる) (e - 教科書とディジタル教科書も含まれている). て簡単に紹介する.全体的には,よりよい ICT 活用 学校教育のために,コンテンツ・情報インフラ・シ ステムなどの改善が進められている.. る.教師が親に子どもの学習状況を知らせることと,. 教育用コンテンツを提供する “EDUNET” と “ サイ. 教師と学校外の児童生徒とコミュニケーションする. バー学習 ” そして “ ディジタル教科書 ” を統合させ. ことである.前者としては,デンマークのインクル. るクラウド基盤プラットフォームが改良され,その. ジョンという Web サイト. ☆ 10. とピアソンという企. ☆ 11. 中に “wedorang” という SNS 機能も追加されている.. ,そして韓国(教育部)では. 正規教科のオンライン授業とオンライン自動採点シ. “ 保護者へのお知らせ(たとえば,http://hes.sen.. ステムなどの革新的な取り組みも進められている.そ. go.kr/ )” というサービスがあり,子どもの時間割. して,このようなサービスをより効果的に活用でき. と給食などの学校生活の情報を発信する上,担任教. るように,標準化と法制度などを検討している.保. 師とのメッセージ交換もできる.また,韓国ではカ. 護者等に対する学校教育情報の公開がより拡大され. 業のフロンティア. ☆ 12. などの SNS. るとともに,個人情報の保護がより強化されている.. を通して教師と児童生徒(場合よっては教師と保護. 以上の現状を踏まえ,2014 年 12 月に公開され. 者)がメッセージなどを送受信することが珍しくな. た「第 5 次教育情報化基本計画(2014 ~ 2018) 」. カオトーク. とクラスティング. ☆ 13. 4). では,今後の ICT 活用教育の課題と政策方向が示さ. 334. ☆ 10. http://www.inklusionsklar.dk. ☆ 11. れている.5 つの領域(幼・初・中等教育,高等教育,. http://com.fronter.info/. ☆ 12. http://www.kakao.com/. 生涯・職業教育,教育福祉・障害教育,公共情報活. ☆ 13. https://www.classting.com. 情報処理 Vol.56 No.4 Apr. 2015. 用基盤・サイバー文化)で構成されており,5 カ年.
(5) 海外における ICT 活用教育─韓国と日本の比較を中心として─. 戦略課題(予算) 教育課程に基づく 教育情報好循環システムの構築 (270). 創造的教授・学習活動の 支援体制の構築 (2,152). 正規教科のオンライン授業の 強化と活性化 (181). カスタマイズされた 進路情報流通システムの構築 (356). 教員の教授学習能力の強化 (809). いつでもどこでも学習すること ができる学校環境の構築 (4,046). 創造的な ICT 人材育成のための 情報教育の強化 (3,458). 5 カ年の 予算. 実行課題 教育課程に基づく教授・学習教材の開発,確保,共有の拡大. 53. 教育と ICT が融合した学習者中心の教授・学習事例の発掘とモデル体系化. 144. EDUNET の再構築を通じた好循環構造の教育情報共有.流通システム構築. 72. ディジタル教科書を活用活性化するための教授.学習プラットフォームの構築. 104. ビッグデータベースの統合分析と共有体制の構築. 80. 個々にカスタマイズされた学習環境の提供. 90. カスタマイズ学習支援のための韓国語自動採点プログラムの開発. 32. スマート科学実験室の構築とモデル事業運営. 35. 次世代大学入試講義のサービス. 04. 1,768. 創造人性教育ネットの活性化. 42. オンライン授業の管理システムの構築および運用の拡大. 116. オンライン授業の広報と研修. 17. 自己主導型学習の支援と管理体制の構築. 25. オンライン評価システムの構築. 8. オンライン授業コンテンツの確保と共有の拡大. 16. カスタマイズされた進路情報サービスの提供. 80. 保護者対象の進路情報発信システムの構築. 21. スマート機器を通じた進路情報発信システムの構築. 16. 遠隔画像の進路メンタリングサービスの提供. 239. 教員の情報化能力開発のための標準教育課程の運営と認証制度の強化. 64. 遠隔教育研修院の運営環境改善のための情報公開基盤の構築. 24. 教員専門性向上のための能力開発支援. 311. 予備教員の情報化能力開発支援. 50. 学校別情報化支援員の拡大と専門研修施設の構築. 361. いつでもどこでも学習することができるクラウド教育環境の構築. 760. 学習者 1 人 1 端末機導入. 3,200. 国立学校の情報インフラ高度化. 86. 学校教育を通じたディジタル市民能力習得. -. 創造的な ICT 高度な人材の養成基盤の構築. 286. 学習者の ICT 融合能力強化. -. 教員の ICT 融合教育力の強化. 3,171. 表 -2 韓国の “ カスタマイズ学習支援体制を構築する幼・初・中等教育 ” の課題と予算(単位:億ウォン). 全体予算は約 2 兆 3 千億ウォンが想定されている.. 億ウォン)” である(表 -2 参照).“ 教員の ICT 融. その中で,幼・初・中等教育の領域の予算は全体. 合教育力の強化 ” は情報教育を強化するための戦. の約半分の 1 兆 1,272 億ウォンである.そして,幼・. 略課題であり,教員養成大学の教育課程と教員研. 初・中等教育の領域の実行課題の中で最も予算が. 修に集中的に予算が費やされることが見込まれる.. 多い 3 件は “ 学習者 1 人 1 端末機導入(3,260 億ウ. “ 次世代大学入試講義のサービス ” は韓国教育放送. ォン)”,“ 教員の ICT 融合教育力の強化(3,171 億. 局(EBS)が提供する大学入試のための教育番組(動. ウォン)”,“ 次世代大学入試講義のサービス(1,768. 画)を改善・強化する戦略課題である.. 情報処理 Vol.56 No.4 Apr. 2015. 335.
(6) 特集. 初等中等教育における ICT の活用. また,2018 年までに 1 人 1 台の PC と学校の無. 拡散している.. 線インターネット 100%完備,そしてディジタル教. 韓日両国は,以前より互いに ICT 活用教育を参考. 科書の常用化が具体的な目標となっている.. としてきたが,これからはもっと具体的な検討と協. 第 5 次教育情報化基本計画はその名のとおり,基. 力が必要であると思われる.両国の児童生徒に不必. 本計画であり,より具体的な政策内容は今後,変化. 要な政策的試行錯誤を体験させることをできるだけ. する教育と情報環境の中で論じられまた取り組まれ. 減らすことが ICT 活用教育にかかわる両国の民官学. ると思われる.. の関係者の責務であるといえる.. これまで,初等中等教育における ICT の活用に関. . して,世界的な潮流を踏まえ,日本と韓国における 在り方と海外の取り組みの違いを述べ,これからの 方向性について検討してみた. 世界的に見ると韓国と日本の学校教育における ICT 活用は類似する面が少なくない.幸い最近日本 の教育情報化政策は “ 教育の IT 化に向けた環境整 備 4 カ年計画 ” など積極的になってきているように 見える.自治体によってはディジタル教科書の活用 と反転学習など先進的な取り組みも多くなり各地へ. 336. 情報処理 Vol.56 No.4 Apr. 2015. 参考文献 1) Kim, H.(2014)OECD PISA2012 における韓国の教育情報化の レベルと示唆点,韓国教育学術情報院,pp.91-96[韓国語]. 2) 韓国教育学術情報院(2012)海外教育情報化動向,「教育情 報化白書」,pp.40-41[韓国語]. 3) 韓国教育学術情報院(2014),「教育情報化白書」[韓国語]. 4) 韓国教育部(2014),第 5 次教育情報化基本計画(2014 ~ 2018)[韓国語]. (2014 年 12 月 15 日受付). 曺 圭福 ■ [email protected] 韓国教育学術情報院の研究員,東京外国語大学修士課程と広島大 学博士課程修了,教育学博士,ICT 活用学校教育の研究に従事..
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