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ICTを利用している視覚障害者の情報保障の実態とQOLに関する研究

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Academic year: 2021

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(1)lCTを利用している視覚障害者の情報保障の実態とQOLに関する研究 特別支援教育学専攻 心身障害コース ”07113J. 藤本正史 2)調査期間:2008年3月20日∼4月30目. I 問題と目的  ICTの発展により国民生活の利便性が向上す. 3)調査方法. るなど生活に大きな恩恵を与えるようになって. (1)電子メールを利用している視覚障害者を対. きた反面、視覚障害者においては、ICTの利活. 象にして、視覚障害者関連メーリシグリストに. 用は十分には進んでおらず、デジタル・ディバ. アンケートの依頼文を投稿し、アンケートの協. イドの解消が重要な課題となっている。ICTを. 力及びメールの転送を依頼した。. 活用できない人は、情報を得にくい情報弱者(生. (2)アンケート内容は、①回答者のプロフィー. 田,1999)となる危険性があることが指摘され. ル、②情報の利用状況、③生活の質(満足度)、. ている。また、平成18年度身体障害児・着実. ④情報保障の問題点に関する質問項目とした。. 態調査結果(厚生労働省,2008)によると、視. 2 面接調査. 覚障害者のパソコンの利用率は1214%と身体障. 1)目的. 害者のなかでも最も低いことが報告されている。.  ICTの導入が視覚障害者の情報保障とQOLに.  一方、近年のノーマライゼーションの流れの. 与える影響を調査し、QOLに基づいた情報保障. 中で、障害をもつ人自身が選択する機会を設定. のあり方を検討する。. することの重要性が叫ばれている(山田,1995)。. 2)調査期問:2008年7月9日∼8月4日. また、Hughes,Hwang,Kim,Eiseman,and. 3)調査方法. Ki11ian(1995)は、選択決定できることはQOL. (1)地方群と都市群の2群に分けたICTを利用. の重要な指標の一つであるとしている。. する視覚障害者10名に半構造化面接を行った。.  このことから、視覚障害者自身がICTの利活. (2)質問内容は、①視覚障害の理由と見え方、. 用よって主体的に情報を取得し、選択決定しQOL. ②仕事や生活と支援者、③ICT導入の経緯・動. の向上につなげることが重要といえる。. 機・過程、④ICTによる情報取得および利活用.  そこで本研究では、ICTを利用している視覚. の状況、⑤情報保障と生活上の問題点、⑥ICT. 障害者を対象として、情報保障の実態や心理的. による物理的環境の変化とQOL、⑦行政サービ. 実態等を調査することにより、ICTの利活用の. スや社会への不満・要望とした。. 課題やQOLに与える影響を明らかにし、情報保. 皿 結果と考察. 障のあり方を社会に提言していくことを目的と. 1質問紙調査  全国41都道府県からメールで220名の回答. した。. I 方法. を得た。.  回答者の64%は、必要な情報が得られず日ご. 1質問紙調査. ろより困難と感じており、視覚障害者の情報保. 1)目的.  ICTを利用している視覚障害者の情報保障の. 障が担保されていない実態が明らかにされた。. 実態とICTの利活用がQOLに与える影響を明ら. ICTは、これまでのテレビやラジオなどの受け. かにする。. 身的な情報取得から、主体的な情報取得を可能. 一232■.

(2) にするばかりでなく、コミュニケーションや情.  視覚障害者が外出に先だってうまくICTを利. 報発信の手段としての自己表現を可能にしてい. 用することで必要とする情報が取得され、外出. る実態が明らかになった。また、インターネッ. の困難性や不安感が軽減されると同時に、ICT. トは「楽しい」 「なくてはならないもの」で、. の利用が外出への動機付けとなっている。. ICTの利活用による情報取得やコミュニケーシ. ③視覚障害者自身の主体的な活動と社会参加. ョンによって、ものの見方を広げたり深めたり.  の促進. して社会参加の機会を得られるとしていた。こ.  ICT導入による双方向のネットワークコミュ. れらのことから、ICTが生活スタイルを変え、. ニケーションの増加は、選択の機会の増加を促. 生活の質を高める手段となっていることが示さ. し、視覚障害者自身の主体的な活動や社会参加. れた。. につながっている。.  また、回答者の生活の質を高めるキューを集. ④QOLの二一ズ対応関係性. 言十して福祉施設・交通網の発達などの生活イン.  ICT導入による視覚障害者のQOLは、個人差. フラ整備状況の異なる地方群と都市群を比較し. があり、本人の二一ズとの対応関係性で評価さ. た。その結果、パソコン・携帯電話などの情報. れる。ICT導入によって、視覚障害者の高い二. メディアは地方群が、都市群より高いキューを. 一ズが満たされれば主観的QOLが高く、逆に二. 示した。このことから、ICTが自宅にいながら. 一ズが低い場合にはICT導入による主観的QOL. さまざまなサービスが受けられる点において、. は言平価されない。. 生活インフラ整備等の物理的格差を解消する手. w結論と今後の課題. 段となる可能性が示唆された。.  外出と情報取得に困難性があるため家の中に.  自由記述のコメントのカテゴリー関連図から. 閉じこもりがちになる視覚障害者にとって、ICT. は、ICT利活用に関わる環境の阻害要因として、. の果たす役割は重要なものになっている。. 「携帯電話に問題がある」「ソフトに問題があ る」「アクセシビリティが保障されていいない」.  本研究では、ICTの利活用による情報保障の 実態とQOLに及ぼす影響を調査した。その結果、. 「パソコンに問題がある」「パソコンのスキル. ICTの利活用が視覚障害者自らの選択決定を可. アップができない」の5点が示された。いずれ. 能にし、自立と社会参加を促進しQOLを向上さ. も、本人の能力では解決できないものであり、. せていくことにつながることが示された。. 社会の理解が求められるものであった。.  しかし、視覚障害者のICTの利用率は極端に. 2面接調査. 低いばかりか、ICT利活用の阻害要因のため、.  インタビューの逐語録を要約し、ICT導入前. うまく情報が利活用できず、孤独感・不安感を. の環境因子とICT導入後の情報の利活用の実態. 持っている人も多い。したがって、情報弱者で. とQOLについてカテゴリー関連図にまとめた。. ある視覚障害者にとって、健常者と同じように. その結果、次①∼④のことがわかった。. ICTの利活用ができる情報保障環境を整備する. ①lCTの利活用による活動能力の向上. ことが強く求められる。それには社会の理解と.  ICT導入によって、必要とする情報を自分で. 支援が重要であり、ICT利活用のメリットが享. 取得するなど自分でできることが広がり、生活. 受されるよう期待するものである。. を効率化するなど生活スタイルに影響を与える とともに、自己満足感につながっている。. 主任指導教員  芝田裕一. ②外出の困難性や不安感の軽減と外出への動. 指導教員 芝田裕一.   機付け. 一233一.

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参照

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