主体的学習における「主体」の問題-新学力観における学習「主体」をめぐって-
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(2) た側の言説を分析した。新学力観は,学習者の. も,新学力観以前の主体概念,すなわち従順で. 意欲,思考力,判断力,表現力を重視する。し. 服従する主体を構築していた。というよりは,. かし,その学力の段階的な認識や態度を評価す. 教育現場の混乱と同じく,主体の主体的なふる. る問題,絶対評価の問題などが見られた。これ. まいに注目するだけで,その主体概念にまで触. らは,いずれも従順な身体,服従する主体が構. れる言説は見られなかったのである。. 築されることを示していた。. このことは,新学力観が教育界に浸透してい. 新学力観の影響は,学力論への注目となり,. く過程において,新学力観をとらえ直し,新た. 戦後教育の学力論や学力論争の言説が多く見ら. な学力観やそれに基づく学習内容や方法を提唱. れた。そのほとんどが,態度主義を軸にした各. する言説においても,同様であった。つまり,. 論の配置であった。このことは,新学力観の態. 新たな学力論や学習論の言説にも,監視による. 度主義を問題にし,新たな学力論構築をめざし. 規律・訓練一権力の容認とそれに服従する主体概. ていたことを示している。. 念が見られたのである。むしろ,その権力は,. 一方,新学力観以前から,主体的な学習につ. 学習者の主体の性向そのものにまで範囲を広げ. いての学習論がある。それは,全国生活指導研. たかのようでもあった。. 究協議会の学習集団形成と吉本均の学習主体,. このような権力関係に対して,それを撹乱し. 村上芳夫の主体的学習である。. 変容させるものとして,フーコーの欲望の理論. 学習集団形成の言説を分析すると,学級集団. とバトラーの行為遂行性を検討した。欲望の理. づくりの技術をそのまま学習集団形成に活用し. 論では,主体的学習の「学習要求」に,権力関. ていることが分かった。これは,学級集団づく. 係を揺るがす可能性があることが明らかとなっ. りの主体概念をそのまま学習集団の形成に持ち. た。また,行為遂行性では,言説,発話のもつ. 込むことになる。また,学習主体では,グルー. 行為性やその反復,慣習などに,社会的文脈を. プ学習や教師の指導性(発問)などの重視から,. 切断して新たな社会的文脈を構築する可能性が. その主体は,教師に服従する主体であることが. 見られた。これが,権力関係をずらしたり変容. 明らかとなった。これは,主体的学習も同様で,. させたりする。. その学習方法訓練が,まさに規律・訓練一権力を. 新学力観の主体的な主体が,現在まで続いて. 示すものである。ただ,これらの主体的学習に. いるのであるから,表層的な主体のふるまいに. は,そのような権力・関係を揺るがす可能性も見. のみ着目していては主体的な主体は構築されな. られた。それは,r学習要求」とr学習方法の自. いのではないか。その主体を,欲望する主体,. 覚化」である。. 行為する主体としてとらえ直し,権力関係を変. このような主体的学習と比較しつつ,新学力. 容させていくことが,主体概念構築に重要なの. 観のいう主体的な主体について分析した。まず,. である。. 教育現場は混乱し,その結果,主体的というこ とを学習者の表層的な態度としてとらえ,主体. 主任指導教諭(杉尾 宏). 的にするための技術重視へと向かった。また,. 指導教員(杉尾宏). 肯定的な言説においても否定的な言説において. 一33一.
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