助 産 師 教 育
の現
状
と
課 題
一
4
年
制 大 学
の助 産 師教
育
の問 題
点
の検
討
か ら
一
The
Present
State
andProblems
of
Midwifery
lnstruction
一
〇
nthe
Point
ofMidwifery
Course
in
University
一
蓼 沼
由紀 子
,鈴 木
由美
要 約
助 産 師 教育が 四年 制 大 学で行わ れるようになっ てか ら
,
さ まざ まな 問題が生 じてい る.
地 域 母 子 保 健実習 をほ かの地 域実 習と置 き換 えるい わゆる単 位の 「よみか え」や,
指 定規 則で 「助産師 教 育は本来6
ケ 月以E
で22 単位を 修 得しな け れ ば な ら ない」の に対 し て,
「∠均 15 単位 程 度の 科 目 履修に よっ て助産師 国 家試験 を受験 して助 産 師に なっ てい る 現 実 が あ り,
また実 習 時 間な ど が少ない た め,
臨 床 に お ける実 践 力の 低下 が懸 念さ れて い る とい う報 告が ある.
助 産 師 業 務 と は本来どうい うこ と なの か とい う原点か ら始まり,
助 産 師 教 育は 母 性 看 護 学の延 長で は な く,
基 礎 看 護 教育 終了後 1年以 上 かけて行 う必 要が あ るこ とを 再 認 識 し, 1年制の 助産師 教 育 機 関存続の重要性 につ い て述べ る た め に助産 師 教 育の あ り方につ い て検討 した.
キー
ワー
ド助 産 師 教育, 4 年制大学 は じ め に
医 学生
,
研 修医 が卒後 研 修 を義 務 化され最 良の 教 育を 受 ける こ とが義 務 付け ら れて い るが,
医 療 者の 責 務の視 点か ら助 産 師 に おい ても同様に義 務 付け ら れ て も よい もの と考えら れ る.
ま た助 産 師の ケ アの 対.
象であ る あ ら ゆ る年 代の 女 性に とっ て,
最 良の助 産 ケア を受ける権利 に視 点 を胃 く と き,
助 産師教育 機 関で も最善 策を検討 する必 要がある と考え ら れる.
近年の助 産師教育は, 4 年制大学の中で助産師 養成 コ
ー
ス を 選 択 する こ とが で きる ようになっ た.
しか し,
その教 育 内 容 が 不十分 とい う意 見が教 育 機 関お よ び 卒 業 生 など か ら聞か れ る1:.
第30 回全国助 産 師 教 育 協議 会 研修 会および第40回 全国 助 産 師 教 育 協 議会 総 会の 報 告か らも, 4年制大 学で行われ て い る助 産 師 養成には無理 が ある こと,
お よび十 分な教 育が行わ れて い ない 現 実につ い て論 議さ れ た.
助 産 師 教育が 保 健 師 助 産 師看 護 師学 校 養 成 所 指 定 規 則で22
単位,6
ケ 月以 ヒの 助 産 師 教育 を受けて い るこ と と定めら れ てい るもの の,
4 年制 大学で は平均でその6・
−
7 割の 単 位 しか 修得さ れてい ない 現実お よび学生の 満 足度 が 極めて 低い 現 実, 必須とさ れ てい る 「10
例 程 度」の 分 娩 件 数 につ い て の拡 大解 釈,
そ して単位の 「よみ か え」など に よ る問 題など,
何よ り も 助 産の対 象と な る女性の ニー
ズに応 じるだ けの教育が 施 さ れ ない 危険 性 などをは ら ん でい る.
助 産の 対 象は分 娩だけ で はない こ とは,
日本 助産学会の 「日 本の 助産 婦が 持つ べ き実践能 力と責 任 範 囲 」およ び[CM の 「基 本 的助 産 業 務に必 要な能 力 」の 中で述べ ら れてい るz.
.
6
ヶ月程 度の教 育,
15単位程度の取 得で助 産 師 に な れるの で あ れば, 4 年制 大学におい て3
つ の 資 格が取 得できる点が メ リ ッ トの よ うに思 わ れ る が, 実は学 生 に とっ ての 過 密カ リ キ ュ ラム,
教員の 過 大なる負 荷な どの 問題 点も あ り,
い ず れに せ よ養成 者,
学生 の み ならず,
助 産の対 象で ある消 費者 と し て の 女 性 たちに とっ て,
満足の行く助 産 師 教育 を行 うことへ の 制 約 を伴 うと考える.
今 回はこれ らの こ と を 踏 ま えて
,
1年課程の助産師 養 成 機関の位 署づけを確 認し,
その 存 続の 重 要 性を 追求し たい と考える.
その ため に助 産 師 教 育につ い て1年課程と4
年 制大学での 養 成 課 程 に焦 点を当て て 比較し, 検 詞する こ とにした,
そ して 助 産 師 教 育 へ 且3 桐生短 期 大 学 紀 要.
第16号.
2005一
の周 囲の理解を促 すこ との
一
助とす る.
研 究 目的
,方
法
日本助産 師 会, 全 国助 産師 教育協 議 会に よ り
,
’
7
一
成16
年6
月に文部 科 学 大 臣宛の 要 望 書 をもと に,
報 告 書,
学 術 論 文な どか らの デー
タ を も と に,
減 少 しつ つ あ る1年制の助産師 養 成 機 関存 続の 重要 性 を 明 ら か にし,
その一
方で増 加 或い は移行 しつ つ あ る4
年制大 学の助 産師教 育につ い て,
カリキュ ラム,
分 娩 介 助 実習な ど か らの 問題 点を抽 出し,
今 後の助 産師教育 の あ り方を検 討する.
2
つ の要 望
書
に み る大 学
助
産
師教育
の問題 点
1)
文部 科 学 省宛の要 望 書平成
16
年6
月28
日,
日本 助 産 師 会および 全 国 助 産師 協議 会では 文部 科 学 省宛に要 望 諢:を提出 し,
4つ の 要 望事項 挙 げてい る が,
その なか で も次の文部科学 省宛の3
つ の要望事 項は今 回の 課題に関連したもの で あ る.
麟
广
1
.
高 度 専 門ならびに の継 続 的
2.
大 学に お指 導監督
3
助 産 学 教攻 科の養 成 数の維持 と質の確保 を図ら れ たい
.
これ らにつ い て の要望の 理由は 以下に抜 粋 した.
1
につ い て : 「助 産 学 教 育は専門領 域の 高 度 な 知 識・
技 術 を 培い,
総合 的な判 断や実 践 能 力を持つ 人 材 を 育 成 す る た めに,
専 門職 大 学 院にお け る 教育を 継 続的に支援 し推 進さ れ たい.
現在の 看護学 学士課 程 に お け る 教 育 は,
看 護 学の 基 礎 教 育で あり,
助 産 学の特化 し た教 育になっ てい ない状況 に あ る.
医療 の 高度 複雑化 が急速 に進 行 する中で, 助 産 師に は消 費者の ニー
ズ に対応 し周 産期ケアの 安 全 性と快 適 性,
そ して 出 産へ の 満 足感を保証する ケア が もと め ら れ る.
吏にリ プロ ダク テ ィブヘ ル ス/ラ イツ の 視点 か らも,
女 性の 生 涯 を 通 じ て の健 康 支援の 取り組み や,
適 切 な 体 制 を構 築 する ことが 求め ら れ てい る.
ま た,
国 際 社会の 中では,
発 展 途上 国か ら 助 産 師の活動が 期 待さ れ,
これ らの期 待に応え られ る国 際感 覚豊 か な 人間 性と,
実 践 能 力に優れ た助 産師の 育成 が 必 要 であ る.
こ の ような社 会 的要 請 に 対 応 す る た めには
,
大 学 に お ける助産 学 教育は,
看 護 学の基礎 教 育に位 置づ けるの で は な く,
助 産 学に特 化 し た専門職 大 学 院, 並 びに大学院 修.
ヒ課 程の 教 育 と して位 置づける よう,
継 続 的な支 援を推 進さ れ たい.
専 門 職大 学院, 並び に大 学 院修士 課 程 に お け る 助 産学 教 育の推 進に当た っ て は, 大学 運 営へ の 補助 並び に学生へ の 奨 学 金の 潤 沢 化な ど,
財 政 的措置 に おい て の充実を図ら れ た い.
」s’
1
とある.
加えて助 産 師に期 待さ れ る 業 務につ い ては
,
日本 助 産 学 会より 「凵本の 助 産婦が持つ べ き実 践 能 力と 責 任 範 囲」2’
と して 1998 年に,
更にICM で 「基本 的 助 産 業 務に必須な 能 力 」 と して,
助 産師は女 性の ラ イフサ イクル の 各期に応じた性 と生殖に関 する支援 者とし て期 待 され て い る2/,
こ と か ら,
そ れ らに 対 応 できる基礎と な る知 識 と技 術 が取 得で きる ように教 育 する ことが責 務 とい われてい る.
こ の こ と か ら助 産 学 教 育は分 娩 だけで はな く,
そ れに付 随 する女 性 の一
生 を扱 う職 業である こ と,
そ れに対す る助産師 教 育が必 要であり, もはや 指定規則における6
ヶ月以 上の 教 育 期 間で22 単位で は不 足で ある こ と を 改め て 認識 する こと ができる.
平成8年
,
指 定 規 則が一
部改正 とな り教 育 内容が弾 力 化さ れ て, 独 自性の 尊重,
特色 あ る教 育 課 程のた め に,
単 位に よ らない カ リ キュ ラム 展 開をする よう になっ た.
しか し その 結 果,
そ れ ぞ れの大 学の 裁 量 に任さ れ る ように な り, 基礎 看 護 教 育を 上台に した 助産師教 育につ い て は差 異を 生 ず る よ うになっ たの で はない だろ うか,
その 修得 単位数は16
単 位 前 後で あ り,
少ない とこ ろ で は10単.
位以下 である.
指 定規 則の 22 単位に は到底及ばない こと が 明 ら かになっ て い た4.
.
更にその 詳 細を見る と,
「基 礎 助 産学」で は6 単 位を ド回る2.
3単位であ り,
助 産学以外に看護 学の 教科に は含まれ ない 「助 産診 断 技 術 学 」も指 定 規 則 で6単位のとこ ろ が 平均 4,
7
弔位,
「助 産学 実 習 」では 8 単位に対し て平均 6,
4単 位,
「地 域 母子 保 健 」 「助 産 管理」がない カリキュ ラム もあっ た とい う4’
.
「助 産 診 断 技 術 学 」の単 位数 は,
比 較 的単 位 数が多めで は あっ た もの の,
分 娩 介助だ け を 行えば,
或い は助 産 に必 要 な技 術 と知識 だ け を 履修し さ えすれ ば助 産 師 にな れるわけで はない.
「地域母 子 保 健」 「助 産管理」 な どの科目は助 産 師としての アイデ ンテ ィティ形 成 に影響を 及ぼす 科 目で ある た め,
これ ら が おろそか になる こ とに より,
病 院で分 娩 介 助 し かで き ない助 産師が育つ ことが 予 測さ れ る.
桐生短期 大学 紀 要.
第16号,
2005 114一
分 娩 介 助を10例行い , 国家 試験 に 合 格 す れ ば 助 産 師に な れる が
,
それ はラ イ セ ン ス獲 得の 表面 的 な 手 段に過 ぎない,’
ド澤らの 調査によ る と9
割 以 上の4
年 制 大 学 卒 業 者が, 大学で の助 産 師 教 育に不満足 を訴 えてい たL.
教 育 期間も6ヶ 月 以 上であ るとさ れてい る が,
6ヶ 月で は要望 事項 にある条 件が満た さ れ ない こと が わ かる.
分 娩 介助 例 数につ い て も, 「
10
例 程 度」の 「程 度」 につ い ての 拡 大 解 釈が 問 題視されて いる.
江 幡4.
に よ る と 「い つ の 時代にあっ て も , 助 産 師の 什事
の 中 核,
すな わ ち卵でい え ば,
最 も重 要な黄 身の 部 分は 分 娩 介 助である が,
今,
助産学 生の 分 娩 介 助 実 習 が 危 機 的状 況にあり, 指 定規 則で定め る分 娩介助1〔}例 程 度は遵 守さ れず, 継 続 受け持ち 実 習 も経 験 す るこ とな く助 産 実習が終了 する例が 多く なっ て い る」と 述べ てい る.
分 娩 介助 例 数の 「10例 程 度」は厚 生 労 働 省で は 「9例以上」の こ とを指 してい る.
し か し,
実 際にはこの 「10例 程 度 」の 「程 度 」につ い て は拡 大 解 釈さ れ て い る.
例えば, 学生2 名で1
件の 分 娩,
あるい は 切追した症 例で,
分 娩 第2期になっ て 受け持 っ た もの も1例とする考 え方な ど様々 である.
こ の ように, 4 年制大学に お ける助 産 に関 する科 目 の平均 単 位 数が 15
.
5 単位である こ とか ら,
4年 制 大 学 の 殆どで この条 件を満たすような教育が なされて い ない もの と考えら れ る.
し か し草間, 粟屋 らの 報 曾 にある よ うに,
一
部 の大 学で は学 生 や 教H
が か な り の 時 間 的,
肉体 的な労 力を割い て 22 単位をク リアし てい る とこ ろもある.
教 貝の 助 産 師 観に基づ くと こ ろ も大きい の では ない か と考える.
.
一
方で,
要望書にある ように助 産 師 教 育を大学院 に て行 うこ とが望 ましい かどうか は疑問が残る.
池 上の報 #ii
,,にある よ うに,
学 卒 看 護 者が’
F
均 3 年以内 で職 場 を 去る現 状があるこ と を踏ま える と, 高学 歴 に な るこ とで助 産師教 育の水 準をL
げる ことは で き る だろ うが,
助 産 師不 足を解 消で きる問 題である と は考 えら れ ない.
新田,
池上の 報 告f’
/で は,
学 卒 者 はその 後の 研究や進 学な ど を 理由に退 職 する傾向が あ るこ と か ら,
臨床には定 着しに くい の では ない か と考え る.
ま た,
大 学 教 育 はそ れ ぞ れの 大学の裁量に任さ れ てい る た め,
指 定規則に見 合っ た だけの教 育がなさ れない可能性 が ある と考え られ る.
そ し て,
そ の こ とが 「・
定の レベ ル を保つ こ と がで きず,
国 民に対 す る義 務が果た さ れ ない」と要望 書で は指 摘 し てい る,
そこ で 平行 して問 題 と な るの は単 位の 「よ み か え」であ り,
大 学生に とっ て余 裕のない カリキュ ラ ム である.
単位の 「よ み か え」につ い て は例え ば助 産に関す る科目 を母 性 看 護で履 修を認めた り,
地 域 母 子 保 健におい て は母 子に関 する家 庭 訪問 を老人の 家 庭訪 問な ど を持っ て置き換え ら れ た りする現 実を 江幡4 は指 摘してい る.
2
につ い て : 「大 学にお ける助 産 学 教 育は,
教 育を 行 う全て の大 学が大 学 院 教 育に位 置づけられ る こと が 望 ましい が,
実 現 するまで の移行 期間に お い て は, 当面の措 置と して4
年 間の中で行われ る助 産 学 教 育の 質と向E
を 図 られ たい.
そ の ひ とつ とし て, 文部科 学 省 管 轄の大 学 及び短 期 大 学 専 攻 科に おける助 産 学 教 育につ い て,
保 健 師 助 産 師 看 護 師 法の指 定 規則に 定め る教 育の 質を維 持 向上 さ せる よう,
指 導 監 督で 強 化さ れ たい.
大 学 教 育は,
各 大 学の 自治に任され る とこ ろ で あ る が,
国 民の健 康に関わる国 家 資 格を 付 与する専 門 教 育につ い ては,
一
定の レベ ルを保つ こ と が 教 育E
の 責 務である.
国家 試 験 受 験 資 格に必 要な 助 産学の履 修 単 位 数は,
養 成 所 指 定 規 則に示さ れてい るが,
大学での助産 学 教 育は,
看 護基礎 教 育 の教科目で読み替え ら れ,
大学に よっ て助 産 学 修 得 単位数にか なりの 差がみ ら れ てい る.
看 護の教 科口 との 読 み替え は,
卒 業 時の実 践 能 力レベ ル と消 費 者 や医療チー
ム が も と める レベ ル とに乖 離を 生じ さ せ , 国 家資格 を付 与す る教 育 機 関と して,
社 会 的 責 務を 全 う してい ない 社 会 倫理 上 の問 題が生 じて い る,
ま た4 年制で看護学以 外に22
単位の助 産学 科目を教 育 す るには 過密カ リ キュ ラム に なり,
大 学牛 とし て 自ら 考 え学 び習 得 してい く環境 に適 応で き ず,
適切 な学 習 環 境の 保 証 が 出 来てい ない 現実が ある.
これ らの こ と に鑑 み,
大 学で の 助産 学 教 育につ い て,
適止 な 国 家 試 験受験資
格の指 定規則に準 じ た教 育が実 施さ れ る よう,
教育 機 関の 認可,
並 びにその 後の評 価に おい ての 指 導監 督 を 強 化 さ れ たい.
ま た,
文部 科 学 省管轄の 助 産師教 育に関す る検 討 会 等におい ては助 産 師の 参画 を 図 ら れ たい.
P
と ある.
第
30
回 全 国 助 産 師 教 育協議 会研 修会 お よ び第40
回 全国助 産 師 教 育 協 議 会総会の 報 告 にも あるように,
地域母 子 保健などに おい て老 人の 家 庭訪問 な ど を経 験 して も,
母子保健の 科目に 「よ みか え」ら れ,
そ の ような手段 をとっ て も,4
年 制 大 学の助 産学総単位 数の平均が 15.
5 単位で あっ た こ となど7 :か ら,
看 護基 礎 教 育と保 健 師課 程の他 に 助 産 師 課 程 を1
年間置くこ とに無理 が あ るこ とが わ か る.
本来,
専門教 育を 基 礎 看 護 教 育と平行させ て い るこ と に無理 が あ り,4
年 115 桐牛短 期 大学紀要,
第16号.
2005一
制 大 学では保 助 看 合 同であ るこ と か ら
,
過 密 カ リ キ ュ ラム とそ こ から派生 する学生・
教 員 双 方にお ける 負 担の増 加な ど も早 急に検 討さ れ るべ きことであ る と考える,
ま た前 述し た ように,
母 性 看 護で修 得 した 科 目 が 助 産 学に置き換え られてい たりもする.
看 護 学の基礎 教 育で は,
看 護ケア を 必 要 としてい るあらゆ る年 齢・
性 別・
健 康 レベ ル の人に健康の 回 復, 維 持 増進の ための 生 活援助に必 要 な 基 本 的看 護i
能 力の習 得を ね らっ て い る.
その な かで母 子の ケア に関 連した教 育は,
母 性看護 学の 中で 行 っ て い る.
母 性 看 護と は,
母 性と して の機 能が健全 に 発 揮で き る ように,
女性の・
生 を通じて は た ら きかける看護 活 動で あるた め,
その対 象は,
小 児 期・
思 春 期・
成 熟 期・
更 年期・
老 年 期 すべ て の 時 期にある母 性で あ る.
そ れに対 し助 産の対象は,1976
年 に 発行さ れた 第1
回 看 護 白書に助産師と その 業務につ い て次の よう に 述べ られ てい る.
助 産 婦 業 務 と はリプロ ダ クシ ョ ン,
い わ ば次の世 代の維 持に直接 関 連 す る 業 務であ る.
具 体的には,
助 産 介 助,
妊 産 婦 並び に新生児の 保 健 指 導お よ び 思春 期か ら 更年期 にい た る 婦 人 に保 健 指 導並 びに衛生教 育を行 うもの で ある.
従っ て助 産 師 業 務におい て は
,
思 春 期 前後か ら 年 齢段 階に応じて心身の保 健 指 導と性 教 育を 積 み 重 ね,
結 婚 適 齢 期にあ る婦人には結婚 衛 牛,
家 族 計 画 な ど を,
新 婚ま も ない 夫婦には新生活の指 導,
家 族 計 画,
妊娠に関する指 導な ど,
ま た 非 妊 婦 人,
更年期 婦 人 の 日常の保 健 指 導,
並 びに家族の 保健管 理 がで き る よう, かつ 地 域杜会の 保健活 動に関 心 を 持 たせ る よ う指 導 する もの である.
助 産婦と はこ の ような 広義 の母 子 保 健 業 務を行 う専 門 看護 職で あ る,
女性の 生涯を 通 じてニ
ー
ズに応える 仕事
で あ り,
ライフサイクル各 期にある女性 すべ て が対 象で ある こと を示す こ と か ら,
母 性看護学,
助 産 学ともに扱 う対 象は同じで あるが,
「母 性 看 護 学 」 と 「助 産 学」 の 教 育目的は同一
では ない.
助 産 師に は,
妊娠の 診 断か ら,
分 娩 介 助を含め,
妊婦,
産婦,
褥 婦 に 対 し て妊 娠に関 連 した一
連の事
項に集 中 し た ケアを 提供 する こと が要 求さ れてい る.
さ らに助 産師の 場 合 は,
注 意 義 務とし ての 予 測 能 力と回避 能 力の 期 待 水 準は,
医 師 同 様に厳し く,
看 護 師の過 失 に適 応 さ れ る医師 の監 督 指 導 責 任は,
助 産 師には 適 応 さ れ ない.
それ だけの 能 力が要求さ れてい るの であ る.
助 産 師 には,
看 護の基 礎 教 育の上に,
さ らに妊 娠の診断や分 娩 開 始の診 断な どの特 別な 知 識・
技 術 を 含め た,
助 産に 桐生短 期 大学 紀 要.
第16号.
2005 特 化した高 度で専FIJ
的な知 識,
技 術が要 求さ れ る.
助 産 学の 中で はそれ に対応するだ けの専門教育 を 行 っ てい く必 要がある81.
この こ と か らも, 4 年間で看 護 教 育と助産 師教 育 を 行 うこと には無理が あ り
,
平 澤の報 告にある ように 学生の 9割が不満足 を訴えてい て も不思議では ない こ とである.
3
につ い て : 「助 産 学 教 育の過 渡 期におい ては,
短 期 大 学 専 攻 科の 養 成 数の 維 持と質の確 保を 図 ら れ た い.
助 産 師 養 成 機 関は,
看 護 系 大 学が増 加す る 中 で短 期 大 学 専 攻 科 及び助 産 師 養成所が減少 し,
大学 での助 産 師 教 育が増 加し てい る傾 向にある.
助 産師 教育 機関数とし て は大 学が増加 し てい るが,
大 学に お ける助 産 師 教 育は選 択 課 程 或い は科目 選択に位置 づ けら れ, 1大学あたりの養i
成 数 は5〜14
名 と少 ない.
短 期大 学 専 攻 科お よび助産師 養成所での 養成数は,1
校 あた り20〜
30 名であるこ と か ら,
実 質 的には養成 数は減少 傾 向にある.
平成 16 年 度か ら専鬥職 大 学 院での助 産 学 教 育が開 始さ れ たが,
今 後 更に,
大 学院修 [:課程 や 大 学 専攻 科で の教 育が 新興 し,
助 産 師 養成数の増 加が図れ る こ と を願っ てい る.
し か し, 助 産師教 育の過 渡 期に おい て は,
過 去に制 度 変 更 時に生 じ た 助 産師供 給数 の激 減を繰 り返さ ぬ よう,
当面の 間,
短 期 大 学 専攻 科で の養 成 数の維 持と教 育の質の確 保が図ら れ る よ う,教育環境の整 備につ い ての措 置を講じ られ たい.
」 1 / と ある.
短 期 大 学 専 攻 科の立場とし ては,
こ の ような措 置 が と られたい と願 うとこ ろ であるが,
その た めには 短 期 大 学や1年制の助 産 師 養 成 校が存 続さ れるこ との 意 義が, 関係 者ばか りでな く杜会 的にも 認 知 さ れ な け れ ば ならない と考える.
1
年 制の助産師 課程或い は 大 学院で行わ れ てい る助 産 師 教 育の メ リッ トが 認 識 され る必 要がある と考える.
表1
に示 すように,4
年 制大 学に行 くと3つ の資格が取 得で きる こ と,
学位 が 得ら れ る こと な どが認 識さ れてい る よ うであ る.
大 林1.
の 報 告にある ように,
4 年制大学におい て助 産師 課程を希 望 する学生の 中には 「つ い で に ライセ ン ス を 取得 する」 とい っ たニ ュ ア ンス の学生 も多い こ と か ら 「助産師に な りた い」 とい うより は,
看護 師 免 許 を取 得 するつ い で に助 産 師の国 家 試 験 受 験 資 格を 得 る とい うもの が多い とい われ てい る.
ま た 大 林の 挙 げる4 年制大学で の助 産 師教 育の メリッ ト,
デ メ リ ッ トは以 下の通 卵 である.
ll6一
表1 大学に お け る 助産 師教 育のメリッ ト と デメリッ ト メ リ
ッ
ト・
多様な資格 取得 者の希望 のこ・
ズ に応じ ら れ る こ と・
学士資 格取得が 可能であること・
看 護基 礎 教育の 巾 で体 系的 に学 習 し な が らの資恪 取得がII亅能で あ る こ と デ“
メ「丿ツ ト・
助 差技術 の修得 が こ れ ま での 昏 攻 科 の ように 十 分 で な く な る 可 能 群「・
夏休みの実習も必要とな る 〔ゆと りの ない教 育:.
・
多く の 学 生 が 資 格 取 得 で き ない 学生は4 年制大 学での メリッ トをこの ようにとらえ てお り,6
ヶ月 以 上の教育を受け れ ば 良い と考 えると, 助 産 師 資 格を取 得し ようとい う考えに なる こ とは自 然である.
しかし, ICM の提 言や要 望 書に み る よ うに助 産 師 は分 娩だけで は な く
,
女 性の一
生の 性と健康に 関わ る職 業である こ と を考える と不 足が 生 じ る こ と はい う まで もない.
そ して4年 制 大 学に おける助 産 師 教育で は, 草 問, 粟屋 らS
.
は,
「学 部 内での 時間的な制 約がある中で か な りの努 力を して教授 して も, 学生全 員が卒 業 後に 助 産 師になるわ けで もな く,
強 制 する こ とがで きな い 現実があり , 学 生の助 産 学選択に 対 しての動 機が 明確で はな く,
自分た ちが助 産 学に関 する専門教 育 を受けたとい う 自覚 と認 識 が希 薄である」G )と 述べ てい る.
ま た, 「大学院で教育すれ ば助産学 履修の 動 機,
意思が はっ き りし,
徹 底 した専門教 育を実現で きる た め, 社 会に確 実に還 元で きる」5・1 と 述べ てい る が,
還元 に焦 点を当て る と果た し て本 当に還元で きる か どうか疑問 がの こ る.
こ こ で1年生の 助 産 師 養 成 所 (校 )を存 続さ せ る意 義につ い て, 文 部 科 学 大臣宛に要望 書が提 出され た 同日の 平 成 16年 6月28日に,
厚生労 働 大 臣宛の要 望 書1°: も提 出さ れ てい る の で紹 介し たい.
その な か で3つ の 要 望事項のう ちの 1つ で 「助産師教 育に関 し て」とし, 次の ように述べ てい る.
1.
助 産 師 養成 機関の教 育 環境の充 実を 図ら れ たい.
1)看護 師 学 校 卒 業 者が 進学 する助 産 師 養 成所の存続, 新設につ い て 要望の理由につ い て は以 ドの通 りである
.
「昭 和 61 年には,
看 護 師 養成所を卒 業し た 人 が進 学 する1
年課 程 (制 )の助 産 師 養成 所は80
校 あっ た が,
平成16年に は33 校と な り,
都 道 府 県 別に見る と 助 産 師 養成所が ある のは,
たっ た23
都 道 府 県し か なくな っ てい る.
こ の ような 状 況 から,
1年課程 (制)の助 産師養成所 (校 )の卒 業生 はこ の9
年 間に1505
人 か ら1212
人 と293
人も減 少し てい る.
さ らに,
こ れらの養 成所 (校 )には,
大学 卒 業生の人学 者が15% を占め てい る.
その た め, これ らの養 成 校の 入学倍 率が5〜
10倍 と軒並み に高 くなっ て きて い る.一
方,
看 護 師 養 成 数は増 加 してお り,
助 産 師に なる こと を希 望 す る看護 師が増 えて きて い る.
従っ て , こ れ らの 看 護 師が進 学 する た めの助 産 師 養 成所 (校 )が こ れ以上 減 少し ない よう, 助産 師 養 成所 (校 )の 存 続, 新設 へ の積 極 的 支 援を 図ら れ たい.
」]e.
1 と ある.
先の 要 望書
3
と類似 した要 望事項であるが, 1年制 の 助 産 師 養 成 校の減 少,
閉鎖,
或い は短 期 大 学 専 攻 科の 大 学へ の昇 格は4 年制大学の 助 産 師教 育へ 移 行 す る こと 回避 し たい 問 題 を含ん でい る.
これまでに
,
要望 書の 中 に4 年制大学に お ける助 産 師 教育の 切実な問 題点を み る こ と が で き, また複 数 の報 告か ら4 年制大学にお ける現状につ い て の報 告が 得ら れ た.
短 期 大 学 或い は養 成 所に おける助 産 師教 育が大 学 化さ れ, 昇格したかの ように みえて も, 必 要単 位 数 や実 習 条 件な どか ら みて も,
助 産 師教 育につ い て は もはや大 学の 看 護 学部 など におい て基 礎 看 護 教 育の 中で行われ るべ き もの で はない と考える.
大 学につ い て は大 学 院 化が考 えられ る が , 短 期 大 学が大 学に 昇格 し た場合に は どの ような方 策が と ら れ るの が良 い か につ い て は,
一
部の大 学で申請中で ある 「大 学 専 攻 科 」が 方策とし て望 ましい の で は ない だろ うか.
大
学
専 攻 科
につ い て 神戸市 看 護 大 学では,
学 部 教 育 内の助 産 師 教 育で はな く,
助 産 学 専 攻 科を創設 し,
助 産 師 教 育に取 り 組む準 備を進めてき た.
高田ld’
i
による と,
助産師資 格 取 得 希 望は 大学生408 名の うち,
1年コー
ス の助 産 師教 育へ の進 学 希望につ い て は,
希望者が多 く,
約 6 割が希 望 し てい た.
学生に とっ て も1
年 課 程の,
学 部 外で の助産師 教 育は魅力 的な ものなの で あろ うと 思 わ れる.
し か しこ の ケー
ス では,
兵 庫 県における助 産 師の 需 要が高い こ と,
助 産 師 資 格 取 得を望む学生 の 声が大きい こと,
学士 を有する学生 は助 産 師教 育 を大 学に おける助 産 師専 攻 (1
年コー
ス)に希望 して い るこ と,
な ど が背 景にあっ た とい わ れてい る.
特 徴と して は,
周 産 期だけでは な く,
ラ イフサ イ ク ル全般の女性,
乳幼 児や家族に寄 り添うこ と,
女 性の内なる力を信じ 入間 性を 重視し,
エ ヴィ デ ン ス に基づ くケ ア,
支援 を行う専門 職の 養成,
特に問 題 解 決 能 力,
判 断 力,
女性の人権を 基 盤 と し たウ イメ ンズヘ ル ス を推 進 する能 力を養 うこ と,
助産師とし て自律 し,
専 門 職と して の役 割を 遂行す る な ど11.
期 lt7 桐生 短期 大学 紀 要.
第且6号.
2005一
待され る内容である