Japan Advanced Institute of Science and Technology
JAIST Repository
https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 大手企業におけるカーブアウト型新事業創造の実態調 査 Author(s) 佐久間, 啓; 太田, 健一郎; 渡辺, 誠一; 仲澤, 英憲; 植松, 秀雄; 阿部, 仁志 Citation 年次学術大会講演要旨集, 23: 678-681 Issue Date 2008-10-12Type Conference Paper Text version publisher
URL http://hdl.handle.net/10119/7654
Rights
本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.
2C09
大手企業におけるカーブアウト型新事業創造の実態調査
○佐久間 啓、太田健一郎、渡辺誠一、仲澤英憲、植松秀雄、阿部仁志 (社団法人 科学技術と経済の会) 1.はじめに 1990 年代初頭でのバブル崩壊以来、日本経済再活 性化のためにベンチャー起業の重要性・必要性が叫 ばれ、TLO 創設や大学発ベンチャー育成など様々な 支援策が講じられてきた。近年は、最後に残る有力 なベンチャー創出プラットフォームとして、大企業 発ベンチャーの推進が論じられている。異業種交流 団体である(社)科学技術と経済の会(JATES)では、 2002年来R&D成果の事業化推進をテーマに専門研 究会を実施してきており、今回会員企業を主体に大 手企業においけるカーブアウト型新事業創造の現状 について、アンケート調査を行ったのでその結果を 報告し考察する。 2.カーブアウト型ベンチャーの背景 かつて経団連の新産業・新事業委員会では、1995 年に「新産業・新事業創出への提言-起業家精神を 育む社会を目指して」、1996 年に「日本型コーポレ ート・ベンチャーを目指して」という2つのコーポレ ート・ベンチャー促進策を提言している。それから 10 年以上が経過しているが、当時論じられ期待され たほど、日本のコーポレート・ベンチャーが育ってい るとは言えない。その間、総合科学技術会議や経済 産業省を中心に、日本のベンチャー育成の必要性が 論じられてきた。ベンチャー活性化のために種々の 法整備も行われ、大学発ベンチャーやスピンアウト、 スピンオフも奨励されてきた。 一方最近、米国では、大手企業の中にこそ新しい 先進的な事業の種があるはずだ、大手企業こそ新規 事業を育てる資金、ノウハウ、人材を持っているは ずだとの考えから、コーポレートベンチャーキャピ タルの実態を調べ、政策的にもコーポレートベンチ ャリングの活性化を促そうという議論が盛んになっ ている(例えば[1])。 目下日本の大手企業にも閉塞感があり、何らかの ブレークスルーが強く求められている。2000 年以降、 親元企業のノンコア技術を切り出し、外部のリソー スを使って新規事業に育てる“カーブアウト型ベン チャー”による起業手法の有効性が日本でも認識さ れるようになって来て([2])、関連の専門書も出版 されている([3],[4],[5])。また数年前から日本でも ハンズオン型のカーブアウトベンチャーファンドが 立ち上がっており、従来の金融機関を中心とするベ ンチャーファンドと異なる実績を挙げつつある。 3.アンケート調査の概要 これまでJATES では、研究開発主導の新事業創 出による企業価値創造について研究会を実施してき ており、その一環として2007 年末に会員企業に対 して、大手企業における研究開発主導の新事業起業 に有効と考えられる「カーブアウト型ベンチャー」 に関して、アンケートによる実態調査を行った。カ ーブアウトの定義は以下とした。 図 1. カーブアウトの定義 図 2. 業種別アンケート回答数 カーブアウトの定義 経営戦略上の成長戦略の一環として、研究開発成果を企 業から主要メンバーとともに切り出し(カーブアウト)、第 三者の投資と支援を得て、事業化するスキームで、研究開 発主導の新事業創造の選択肢を格段に広げ、もって企業の イノベーションインテンシブな体質への強化と産業の活性 化を図ろうとするものである。 形態的にはスピンオフに近いとみられるが、経営戦略上 の明確な意思をもって、積極的に第三者等外部の力を活用 する点が特徴である。 0 2 4 6 8 10 12 14 回 答 件 数 機械・ 電気機器 石油・ 鉄鋼 他 化学 運輸・ 情報 通信他 水産 ・農林 ・建設 他 輸送用機 器・ 精密機器他 繊維 ・パ ルプ ・紙 食品 商業・ 金融 他図 3. 回答者の役職 回答企業数は47 社、回収率は 35%であった。図 2、 3 に、回答者の属性を示す。業種は食品・商業等を 除く広い分野に亘り、回答者はCTO、取締役を中心 に、技術系幹部となっている。 4.大手企業における新事業創出体制の現状 以下に”R&D 成果”からの新事業創出を各社が如何 に実行しているかについてのアンケート結果を示す。 図 4. Q1:R&D 成果からの新事業創出プロセス 図 5. Q2:新事業創出のための事業化推進組織 図 6. Q3:事業化推進組織と R&D グループとの関係 図 7. Q4.事業化推進組織の経費負担はどこか 図 8. Q5.どのような新事業創出制度を用いるか 図 9. Q6.新事業創出によるこれまでの成果(対売上) 図 10. Q7.出向者の処遇について R&D 成果から新事業を起そうと言う場合、事業部 が引き取ってくれればよいが、事業部で扱わない製 品分野の場合等がネックとなる(図4/Q1)。その様 なケースに対して予め専任組織(事業化推進組織 等)を置いている企業が 19%、その都度新たに組 織・担当をアサインするが 39%となっている(図 CTO 12% 取締役 20% 専門 2% 執行役・ 部長 30% その他 36% 合計企業 数47 随時対応 42% その他 6% しくみ無し 6% (事)への 引渡し のみ 24% 事業化の しくみあり 22% 全社組織 20% その他 14% R&D内 専任組織 15% R&D企画 部門内 7% CTO直属 8% その都度 29% 提案制度 7% 専任組織 19% 組織設置 30% その他 12% 事業部門 担う 11% 担当者 0% 担当者割 当 9% 研究部門 担う 19% 研開費用 内 35% 全社R&D 費とは別 立て 26% 全社R&D 経費充当 24% R&D部門 と別立て 11% その他 4% MBO制度 2% その他 40% カーブアウト 4% 社内ベン チャー 42% スピンオフ 10% 社外斡旋 2% 1~3% 16% 利益貢献 0% 1%以下 70% 3~10% 11% 凡そ10%以 上 3% ケースごと 48% その他 19% 事後的相 談 14% 復帰可能 17% 復帰なし 2%
5/Q2)。事業化推進組織等を CTO 直属とする企業 が8%、R&D 内または同企画部門の中が 22%、全 社組織とするが20%となっている(図 6/Q3)。 表 1. Q8.事業化推進組織による新事業創出の実績件数 (事業部引渡し以外/平成 10 年以降目安) 図 11. Q8.事業化推進組織による新事業創出の実績%(同上) 図 12. Q9.実績のない場合、その理由 一方、事業化推進組織の経費負担は全社レベルの研 究費からの充当が24%、別立ての全社費用が 26%、 それ以外では割当の年間研究費からひねり出す (35%)例が多い(図 7/Q4)。 表 2. その場合、制度を利用した理由(複数回答) 新事業を創出するための制度としては、社内ベンチ ャー制度が最も多く(42%)、スピンオフ・カーブア ウトが合わせて 14%などとなっている(図 8/Q5、 複数回答)。 こうして創出した新事業が売上に 3%以上貢献は、 およそ14%、70%は1%未満の貢献である(図9/Q6)。 出向者が無条件に親企業に復帰可能とするルールを 持つ企業は17%と少ない(図 10/Q7)。 事業化推進組織による平成 10 年以降の新事業創出 実績は合計107 件、その内社内ベンチャー制度利用 が67 件・62%を占めている(表 1、図 11/Q8)。 事業化推進組織による起業化実績がない回答の理由 としては、自力推進が53%、上手く行かないままの ところが14%などとなっている(図 12/Q9)。 事業化推進組織の実績がある場合、制度選択の主な 理由は、リスク回避、事業化期間短縮、部門外人材 活用、本業でない、などとなっている(表2)。 図 13. Q11.カーブアウト方式について 今回の主題であるカーブアウトについては、「知る/ 実績あり」が5%、「知る/実績なし」が 47%、「興味あ り」が38%という結果であった(図 13/Q11)。 5.考察と結び アンケート結果:これからのR&D にはオープンイ ノベーションによる外部資源の活用が必須と言われ るが、アンケート結果に見る限り日本産業界の現実 はまだそこまで行っていないように見える。電機・ 自動車など国際競争が厳しい分野を除いてカーブア ウトベンチャーやコーポレートベンチャリングにつ いての認識は、まだこれからと言える(表3、図14)。 事業部門が受け取らないR&D 成果の事業化のため に専任組織を持っている企業は19%であり、多くの 企業はアドホックに対応している。また42%の企業 が社内ベンチャー制度を有しており、最近の新事業 創出実績の62%がこれによっている(図 15)。 あきらめ 0% 上手くいかな い 14% 自力推進 53% その他 33% 興味なし 10% 知る/実績なし 47% 知る/実績ある 5% 興味あり 38% その他 0% その他 30% スピンオフ 5% 社内ベンチャー 62% MBO制度 0% カーブアウト 2% 斡旋制度 1% 0 0 0 1 0 0 ⑥MBO制度 1 1 1 1 3 2 ⑤その他 0 1 0 0 0 0 ④外部ベンチャー斡旋制度 0 1 1 1 1 1 ③カーブアウト 0 2 1 1 0 1 ②スピンオフ支援制度 3 7 5 0 7 4 ①社内ベンチャー制度 その他 本業以外 の事業で あるため 部外人材の 活用を図る ため 部外資金を 調達活用す るため 事業化期間 短縮のため リスクを回 避するため 狙いや理由 制度 0 0 0 1 0 0 ⑥MBO制度 1 1 1 1 3 2 ⑤その他 0 1 0 0 0 0 ④外部ベンチャー斡旋制度 0 1 1 1 1 1 ③カーブアウト 0 2 1 1 0 1 ②スピンオフ支援制度 3 7 5 0 7 4 ①社内ベンチャー制度 その他 本業以外 の事業で あるため 部外人材の 活用を図る ため 部外資金を 調達活用す るため 事業化期間 短縮のため リスクを回 避するため 狙いや理由 制度 0 0 0 ⑥MBO制度 11 21 32 ⑤その他 1 0 1 ④外部ベンチャーキャピタル斡旋制度 0 1 2 ③カーブアウト 0 5 5 ②スピンオフ支援制度 28 34 67 ①社内ベンチャー制度 本業と関連の薄い非重点事業 本業に近い重点事業 本業との関連性 実績 件数 制度 0 0 0 ⑥MBO制度 11 21 32 ⑤その他 1 0 1 ④外部ベンチャーキャピタル斡旋制度 0 1 2 ③カーブアウト 0 5 5 ②スピンオフ支援制度 28 34 67 ①社内ベンチャー制度 本業と関連の薄い非重点事業 本業に近い重点事業 本業との関連性 実績 件数 制度
表 3 大手企業におけるベンチャー制度の発展例 図14. コーポレートベンチャリングの発展スキーム 図15. 大手企業における社内ベンチャー制度の発足年度 社内ベンチャー制度の限界:社内ベンチャー制度は、 新事業創出の手段、起業家精神の涵養による企業風 土の変革、人材育成などを目的に作られるとされて おり、ベンチャー側のメリットとしては親企業の経 営資源の活用が挙げられる。一方親会社があるが故 の起業家精神の不足や、親会社の古いビジネスプロ セス・判断基準・運営管理、特にスピードの遅れ等 による自由度の制約がデメリットと言われている。 カーブアウト方式:カーブアウトでは、親会社の持 ち株比率を下げることによりベンチャーの裁量の自 由度を向上させることができ、起業家精神の発揮、 外部資源の活用(技術、ファンド、市場など)が可 能など、これまでの社内ベンチャー制度の弱点を補 うことが可能となる([6])。 テクノロジーカーブアウトファンド:カーブアウト ベンチャーが成功率を高めて行くには、折角のその 主旨を十分に生かした環境つくりが重要である。前 述のハンズオン型のテクノロジーカーブアウトファ ンドは、日本の企業風土に欠けている“シリコンバ レー”の機能を担うものと考えられる。ベンチャー 経験がない技術者・研究者出身の起業家と、今まで 社内事業化が主でオープンイノベーションの経験に 乏しい親企業に、当該企業の企業風土を踏まえた上 で、①第三者の目で課題の事業化可能性を評価・助 言、②ベンチャー起業のノウハウをコーチ、③外部 機関との連携の橋渡し(図16)、④資金調達の支援 等を提供できる。自社判断の足りないところを補い、 自社では届かない外部との連携推進のためには、こ のような外部の力の活用が極めて有効であろう。 製造業主体の集まりであるJATES としては、さ らにコーポレートベンチャリングについて考察を進 めると共に、会員企業が外部資源の有効活用を図る 手段の一つとしてのカーブアウトベンチャー手法を 検討し活用できるよう議論を深めていきたい。 図 16.カーブアウトファンドを通じたオープンイノベーション 参考文献
[1] “Corporate Venture Capital” I. MacMillan, et al., http://www.nvca.org/pdf/NIST4_CVC_073108_Web.pdf [2] H19 年度 NEDO 受託研究報告資料「大企業発ベンチャー研 究会提言 -大企業とベンチャーの WIN-WIN 成長-」 http://www.jates.or.jp/Z-Temp/METI_Report_080409.pdf [3] 「カーブアウト経営革命」木嶋豊著 東洋経済新報社 (2007.2) [4]「スピンオフ革命-新しい日本型産業創出のモデルとシナ リオ」前田昇著、東洋経済新報社 (2002.4) [5]「企業を成長させるコーポレートベンチャー戦略」D.L. ロ ーリー著 福本晃訳 出版文化社 (2003.4) [6]”イノベーション強化への世界的産業転換とカーブアウト起業の勧め” 渡辺誠一 技術と経済 2007 年 1 月号 pp.17-25 企業A 企業B 企業C カーブアウト ファンドZ 企業D 企業E 企業F カーブアウト ファンドY 企業G 企業H 企業K カーブアウト ファンドX 情報交換・共有の場 大学等 公的研究機関 政府・自治体・地域 大学M 地域クラス ターN 公的研 究機関 情報入手 情報入手 情報入手 企業A 企業B 企業C カーブアウト ファンドZ 企業D 企業E 企業F カーブアウト ファンドY 企業G 企業H 企業K カーブアウト ファンドX 情報交換・共有の場 大学等 公的研究機関 政府・自治体・地域政府・自治体・地域 大学M 地域クラス ターN 公的研 究機関 情報入手 情報入手 情報入手 2001年:米国で投資ファンド 事業に出資総額1億ドル 米NECが4000万ドル拠出 1992年:社内起業家制度 1995年:ベンチャー推進プロ グラム NEC 2005年:ティー・ハンズオン インベストメント㈱設立 1996年:社内ベンチャー ファンド500億円 1989年:全社課長以上対象 に新規事業テーマ社内公募 トヨタ 2005年: 1999年:投資ファンド 1994年:ベンチャー制度 富士通 2005年:ネクストハンズオン パートナーズ㈱設立/40億円 2000年:日立CVCファ ンド100億円 1995年:新事業推進本部設 立→社内ベンチャー募集 日立製作所 社外ベンチャー キャピタル 社内ベンチャー ファンド 社内ベンチャー 制度 2001年:米国で投資ファンド 事業に出資総額1億ドル 米NECが4000万ドル拠出 1992年:社内起業家制度 1995年:ベンチャー推進プロ グラム NEC 2005年:ティー・ハンズオン インベストメント㈱設立 1996年:社内ベンチャー ファンド500億円 1989年:全社課長以上対象 に新規事業テーマ社内公募 トヨタ 2005年: 1999年:投資ファンド 1994年:ベンチャー制度 富士通 2005年:ネクストハンズオン パートナーズ㈱設立/40億円 2000年:日立CVCファ ンド100億円 1995年:新事業推進本部設 立→社内ベンチャー募集 日立製作所 社外ベンチャー キャピタル 社内ベンチャー ファンド 社内ベンチャー 制度 各種報道記事から作成 0 2 4 6 8 1 0 1 2 1 4 1 6 '8 8 '9 0 '9 2 '9 4 '9 6 '9 8 '0 0 '0 2 '0 4 '0 6 ㈱日本総研セミナー資料+ネット検索データから作成 発足件数 0 2 4 6 8 1 0 1 2 1 4 1 6 '8 8 '9 0 '9 2 '9 4 '9 6 '9 8 '0 0 '0 2 '0 4 '0 6 ㈱日本総研セミナー資料+ネット検索データから作成 0 2 4 6 8 1 0 1 2 1 4 1 6 '8 8 '9 0 '9 2 '9 4 '9 6 '9 8 '0 0 '0 2 '0 4 '0 6 ㈱日本総研セミナー資料+ネット検索データから作成 発足件数 社内ベンチャー 制度 社内ベンチャー ファンド 社外ベンチャー キャピタルへの 投資 新事業創造と 社内活性化 人材育成 社内外ベンチャー への直接投資に よる自社資産の 有効活用など 社外独立ベンチャー への投資を通じた 将来の事業方向の 探索など 社内ベンチャー 制度 社内ベンチャー ファンド 社外ベンチャー キャピタルへの 投資 新事業創造と 社内活性化 人材育成 新事業創造と 社内活性化 人材育成 社内外ベンチャー への直接投資に よる自社資産の 有効活用など 社内外ベンチャー への直接投資に よる自社資産の 有効活用など 社外独立ベンチャー への投資を通じた 将来の事業方向の 探索など 社外独立ベンチャー への投資を通じた 将来の事業方向の 探索など