特別支援学校で学ぶ医療的ケアを要する子どもへの口鼻腔内・気管内吸引実施に至る学校看護師の判断プロセス
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(2) Ⅰ.研究背景 特別支援学校で学ぶ医療的ケアを要する子ども(以下、医療的ケア児)の数は増加し、 医 療 的 ケ ア の 内 容 も 複 雑 化 し て い る ( 文 部 科 学 省 , 2017; 大 崎 , 新 平 , 小 澤 他 , 2017)。 特別支援学校で実施されている医療的ケアの内容として、口鼻腔内吸引や気管内吸引(以 下 、 吸 引 ) が 多 く を 占 め て い る ( 大 崎 , 新 平 , 小 澤 他 , 2017)。 吸 引 は 、 定 時 に 実 施 す る 経管栄養といった医療的ケアとは異なり、必要な時に随時実施する医療的ケアである。医 療的ケア児には個別性があり、その理解が難しいことが、学校看護師のストレスの要因と し て 報 告 さ れ て い る( 松 澤 , 吽 野 , 2014)。学 校 看 護 師 に と っ て 、医 療 的 ケ ア 児 を 理 解 し 、 その子に適した吸引などの呼吸ケアをどのように提供するかの判断が難しいことが推測さ れる。学校看護師は、教諭が適切に呼吸ケアを実践できるよう指導することも求められて おり、まずは吸引などの呼吸ケアに関する自身の判断力を高めておくことが必要である。 これまで、入院する子どもへの気管内吸引の必要性の判断に関しては、どのようなこと を 手 掛 か り に 看 護 師 が 判 断 を し て い る の か は 報 告 さ れ て い る が ( Thomas M. & Fothergill-Bourbonnais F., 2005)、子 ど も に 対 す る 吸 引 の 判 断 に 関 す る 研 究 報 告 は 少 な く 、 在宅や学校で過ごす子どもに対し吸引を実施するにあたり、どのように看護師が判断して いるのかは明らかにされていない。. Ⅱ.研究目的 特別支援学校で学ぶ医療的ケア児に対して、吸引実施の必要性の判断をどのように学校 看護師が行っているのかを明らかにする。. Ⅲ. 方法 1.研究デザイン 帰納的アプローチによる質的記述的研究 2.研究対象者 近畿圏内の特別支援学校に 3 年以上勤務し、医療的ケア児への吸引のケアを実施した経 験のある学校看護師を対象とした。医療的ケア児の疾患や年齢は問わないこととした。 3.データ収集方法 研究協力の承諾を得られた学校看護師に対し、インタビューガイドに基づいて、一対一 の半構造化インタビューを、研究協力者もしくは研究者の勤務校内のプライバシーが確保 できる部屋で実施した。インタビューにおいて、医療的ケア児への吸引の必要性の判断に.
(3) 関して、学校看護師が考えたことを自由に話してもらうようにした。インタビュー実施期 間 は 、 2018 年 7 月 ~ 2018 年 12 月 で 、 イ ン タ ビ ュ ー 所 要 時 間 は 平 均 36 分 間 で あ っ た 。 イ ン タ ビ ュ ー 内 容 を 、 研 究 対 象 者 の 許 可 を 得 た 上 で IC レ コ ー ダ ー に 録 音 し 、 個 人 名 ・ 学 校 名 ・ 地 域 名 は ABC 表 記 と し 、 匿 名 性 を 保 持 し た 形 で 逐 語 録 と し た 。 4.データ分析方法 質的帰納的に分析した。学校看護師が医療的ケア児への吸引実施に至るまでにどのよう な情報をもとにし、どう判断しているのかを意識しながら、逐語録を何度も読み込み、学 校看護師の吸引に至るまでの行動や考えを表すデータ部分を抽出した。データから浮上す る意味を考え、類似するデータを具体例として概念を生成した。概念ごとに、修正版グラ ウ ン デ ッ ド・セ オ リ ー・ア プ ロ ー チ( 木 下 ,2003)で 用 い る 分 析 ワ ー ク シ ー ト を 作 成 し た 。 複 数 の 概 念 が 生 成 し た 時 点 で 、概 念 間 の 関 係 を 検 討 し た 。概 念 間 の 関 係 を 検 討 す る 際 に は 、 その概念の対極となる概念や、存在する可能性のある概念についても考え、データに戻り 確 認 し た 。 学 校 看 護 師 18 名 分 の デ ー タ 分 析 を 行 っ た 時 点 で 、 学 校 看 護 師 の 語 り か ら 新 た な概念が見いだされなくなったため、理論的飽和に至ったと判断した。概念間の関係を考 え、カテゴリーを生成した。概念、カテゴリー間の関係をストーリーラインとして文章化 し、結果図を作成した。真実性の確保のため、質的研究の経験を有する小児看護学領域の 研究者から意見をもらい分析結果の検討を重ね、研究協力者の意図と分析結果のずれがな いかを郵送にて確認した。 5.倫理的配慮 研究対象者に、研究の趣旨、目的、研究協力の自由性、匿名性の保持、研究目的以外に 得た情報は使用しないこと、データの保存方法および破棄の時期、研究結果を学会等で発 表することを、口頭・書面で説明し、同意書への署名で研究協力の同意を確認した。日本 看護科学学会の研究倫理審査を受け承認を得て、研究に着手した(承認番号: JANS018-002-1).. Ⅳ. 結果 1.研究協力者の概要 研 究 協 力 者 は 、学 校 看 護 師 18 名 で あ っ た 。全 員 女 性 、非 正 規 雇 用 で あ っ た 。週 5 日 勤 務 が 13 名 、 週 4 日 勤 務 が 4 名 、 週 2 日 勤 務 が 1 名 で あ っ た 。 特 別 支 援 学 校 や 地 域 の 小 中 学 校 で の 勤 務 を 除 く 、看 護 師 と し て の 経 験 年 数 は 、4~ 25 年 で 平 均 14.8 年 で あ っ た 。特 別 支 援 学 校 で の 経 験 は 3.4~ 15.3 年 で 平 均 7.8 年 で あ っ た 。 特 別 支 援 学 校 や 地 域 の 小 中 学 校.
(4) 以 外 で 小 児 看 護 を 経 験 し て い た 者 は 11 名 で 、 彼 ら の 小 児 看 護 経 験 年 数 は 1~ 17.5 年 で 平 均 8.7 年 で あ っ た 。3 名 は 、地 域 の 小 中 学 校 で 学 校 看 護 師 と し て 2~ 5 年 の 経 験 を 有 し て い た。すべての学校看護師は、教諭も医療的ケアを実施する体制の特別支援学校に勤務して いた。 2.分析結果 20 概 念 、 5 カ テ ゴ リ ー が 見 い だ さ れ た 。. Ⅴ. 考察 今回、学校看護師は、子どもの身体面の観察は常に行いながらも、子どもを観察して得 た身体面のデータだけで、吸引の必要性を判断しているのではなく、経験を通して、その 子のことをつかみ、それをふまえ、吸引実施を待てるかどうかを判断していることが明ら か と な っ た 。ま た 、吸 引 実 施 を 待 て る と 判 断 し た 場 合 は 、教 諭 の 吸 引 の タ イ ミ ン グ の 判 断 、 保護者の吸引のタイミングの判断や思い、その子の吸引の希望といった、複数の判断や希 望をすり合わせ、教育活動を妨げないよう、吸引のタイミングを見つけていることが明ら かとなった。 学校看護師には、教諭や保護者の判断や思いを受け止め、それらをどう自分の判断とす り合わせて、最終的な判断を下していくのかという高度な判断力が求められている。吸引 のタイミングの判断をすり合わせる際に、教諭の判断を参考にしていたことからも、教諭 と学校看護師がお互いに判断力を高めておくことが必要である。そのためには、学校看護 師はどのような情報をもとにどう判断しているのかを教諭に伝え、教諭の考えを聴き、学 校看護師と教諭が互いに学びあうことが重要である。. 謝辞 研究にご協力いただいた教育委員会、学校長、学校看護師の皆様、分析にあたり、ご助 言いただいた先生方に、深く感謝いたします。本研究は、公益財団法人 在宅医療助成 勇 美 記 念 財 団 2017 年 度 ( 後 期 ) 研 究 助 成 を 受 け て 実 施 し ま し た 。. 引用文献 木 下 康 仁 ( 2003) . グ ラ ウ ン デ ッ ド ・ セ オ リ ー ・ ア プ ロ ー チ の 実 践 ―質 的 研 究 へ の 誘 い , 弘文堂,東京. 松 澤 明 美 , 吽 野 聡 子( 2014). 特 別 支 援 学 校 に お い て 勤 務 す る 看 護 師 の ス ト レ ス の 要 因 . 小.
(5) 児 保 健 研 究 , 73( 6) , 874-879. 文 部 科 学 省 ( 2017) . 平 成 28 年 度 特 別 支 援 学 校 等 の 医 療 的 ケ ア に 関 す る 調 査 結 果 に つ い て, Retrieved from http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/ material /__icsFiles/afieldfile/2017/04/07/1383567_04.pdf ( accessed 2017-8-10). 大 崎 博 史 , 新 平 鎮 博 , 小 澤 至 賢 他 ( 2017) . 特 別 支 援 学 校 に お け る 医 療 的 ケ ア に 関 す る 実 態 調 査 報 告 ―医 療 的 ケ ア の 実 態 及 び 移 動 手 段 や 宿 泊 を 伴 う 活 動 等 の 対 応 を 中 心 に ―. 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所 ジ ャ ー ナ ル , 6, 33-38. Thomas M., & Fothergill-Bourbonnais F. ( 2005 ) . Clinical judgments about endotracheal suctioning: what cues do expert pediatric critical care nurses consider? Critical Care Nursing Clinics of North America, 17( 4) , 329-340.. 調査研究を終えた感想 研究助成をいただき、研究に取り組むことができました。大変感謝しています。今回の 研究を終えて、研究の面白さをさらに感じることができました。特別支援学校に勤務する 学校看護師が実践するケアについて明らかにする研究をこれからも積み重ねていきたいと 考えています。現場にいるからこそできることはたくさんあります。現場で研究に取り組 むとともに、研究で明らかになったことを現場でいかしていけるように頑張っていきたい と思います。.
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