• 検索結果がありません。

訪問看護における終末期の意思決定- Advance Care Planning(ACP)‐への取り組み ―在宅高齢者への実践の現状と課題―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "訪問看護における終末期の意思決定- Advance Care Planning(ACP)‐への取り組み ―在宅高齢者への実践の現状と課題―"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2018年度(前期) 一般公募「在宅医療研究への助成」完了報告書. 「. 訪問看護における終末期の意思決定‐Advance Care Planning(ACP)‐への取り組み ―在宅高齢者への実践の現状と課題― 」. 申請者:. 中木 里実. 所属機関: 山陽学園大学看護学部 提出年月日:2019 年 8 月 31 日.

(2) 1.はじめに 高齢者は複数の疾患を持つことが多く、持病とともに社会で生活し、家族の一員として役 割を担い老いていく。住みなれたわが家で最期を迎えたいと思っている高齢者も多い。しか し、人口動態統計 1)によると、第 2 次世界大戦終了後の在宅死は 8 割であったが、経済発 展や社会構造の変化などにより徐々に減少し、1976 年には病院死と逆転した。現在、病院 死は 8 割程度で推移しており、在宅死はわずか1割に過ぎない。この一因として、家で看取 ることに対する家族の不安と家族に負担をかけたくない高齢者の配慮がある。 訪問看護師は在宅での経過を見守りながら、最期をどう過ごしたいかを一緒に考える機 会を作り、生活の延長上に自然な形で高齢者自身が望む死を捉え実現していけるよう高齢 者及び家族への支援を行うことが重要な役割の一つである。在宅で終末を迎えることを希 望する患者および家族に対して、本人と家族が納得したうえで後悔のない選択ができるた めの十分な情報提供と意思決定への支援が求められている。 これまで患者のよりよい死への歩みを支援するための取り組みとして、事前指示書が注 目されてきたが、健康な時に示した意思は、実際に終末期になったときには役に立たないと の指摘もある 2)。そこで、最近では単に意思を記録することを目的とするのではなく、終末 期に対する思いを語り合う過程が重視され Advance Care Planning(以下;ACP)という概念 が注目されてきている。厚生労働省が、人生の最終段階における医療およびケアのあり方や、 方針の決定手続きについてまとめた「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関す るガイドライン」の改訂版3)にも ACP の概念が盛り込まれた。ACP とは、患者の死にゆ く過程においてその人の価値感や受けたいと思う医療について話し合う過程であり、それ によってその人が終末期になって自分の思いを伝えられなくなった状態になっても自らが 望んでいた医療を受けることができるようにすることを目的とする 4)。ガイドラインでは、 高齢者が自分らしく生ききるために、望む医療やケアについて、患者本人もしくは患者が意 思表示できない場合は家族など患者の意思を推定しうる家族等と医療者が何度も話し合う ことの重要性が示されている。 「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する立場表明5)でも、高齢者の終末期はさまざ まな要因の影響を受けて多変動性に経過するため余命の予測が難しく、そのため医師、看護 師等の高齢者と家族の終末期医療にかかる意思決定支援の難しさも指摘されている。超高 齢社会を迎えている現代において、終末期医療およびケアの意思決定支援については、喫緊 に検討すべき課題である。これまで在宅看護での ACP 取り組みについて研究されたものは 少なく、意思決定支援において ACP について検討していくことは重要な意味を持つと考え られる。 2.目的 本研究の目的は、高齢者が在宅で穏やかに自分の望む終末を迎えるための訪問看護師に よる支援として Advance Care Planning(ACP)への取り組みについて以下を明らかにするこ とである。.

(3) 【研究課題 1】高齢者および家族に対する Advance Care Planning(ACP)の実施状況の実態 を把握する。 【研究課題 2】訪問看護師へのインタビューにより、Advance Care Planning(ACP)を行う 過程での課題について明らかにする。 3.研究方法 研究デザイン:実態探索型記述的研究 【研究課題1】 高齢者および家族に対する Advanced Care Planning(ACP)の実施状況の実態を把握する。 1)対象者 中四国地方の A 県および B 県内の看取り対応が行われている訪問看護ステーションの訪 問看護師 500 人程度を予定した。 2)調査方法 各訪問看護ステーション所長宛に、文書で本研究の趣旨を説明し、調査対象者への調査依 頼、調査説明書、調査票および返信用封筒の配布を依頼した。方法は無記名自記式質問紙の 郵送法とした。 3)調査内容 (1)対象者の属性 年齢、性別、訪問看護師経験年数、臨床看護師経験年数等について調査した。 (2)所属する訪問看護ステーションの特性 宮田らの在宅高齢者終末期ケアの調査研究6)を参考に、質問項目を作成し、設置主体、訪 問エリア、24 時間連絡体制加算等について調査した。 (3)意思把握に対する訪問看護師の認識 意思把握をする際の困難感と意思把握の役割について質問した。 (4)ACP に対する認識と実施状況 ACP をどの程度認知しているか、どの位実施したことがあるか調査した。 4)分析方法 統計ソフトを使用した。上記(1) 、 (2)については各質問項目の回答を単純集計し、度数 等を検討する。 (3) 、 (4)については、単純集計し度数を検討し、さらに ACP の実施状況と 困難感との相関についても検討した。 【研究課題2】 訪問看護師へのインタビューにより、Advanced Care Planning(ACP)を行う過程での課題に ついて明らかにする。 1)対象者 研究課題 1 の調査対象者の中から、アンケート用紙の最後でインタビュー対象者を募っ た。さらに A 県内で 10 年以上終末期在宅支援に取り組んでいる施設の関係者に ACP を実 践している訪問看護師の紹介を依頼した。.

(4) 2)調査方法 訪問看護ステーション所長に許可を得たうえで、訪問看護師に研究の趣旨を説明し、自由 意思で研究参加を表明した看護師を対象とした。面接時間は30~60分程度を予定して いた。 3)調査内容 これまで ACP を実践した中で本人の終末期医療の提供ができたと認識した事例もしくは 提供できなかったと認識した 1 事例について選択してもらい、事例の状況を確認し、認識 した根拠を質問する。データ収集は半構造化面接により行った。その事例に関する終末期医 療の提供に必要な基本的情報について説明してもらうことをあらかじめ依頼しておいた。 4)分析方法 訪問看護師による語りを逐語録に起こし、質的記述的研究方法により分析し、ACP を行 う過程での課題を抽出した。 4.結果 質問紙調査では、120 人から回答が得られ(回収率 31.6%)、回答に不備のあるものを除 いた 105 人(有効回答率 87.5%)を分析対象とした。 ACP への認識は「漠然と理解している」が最も多く 59 人(55.7%)であり、ACP への 取り組み姿勢は「ふつう」が最も多く 49 人(46.2%)であった。死亡した利用者のうち事 前に主治医と終末期の方針確認していた割合は「80%以上」は 45 人(42.5%) 、 「50~80% 程度」は 33 人(31.1%)であった。意思確認については 89 人(84.0%)が経験しており、 本人もしくは家族の意思に対して 91 人(85.8%)が支持していた。 訪問看護師の ACP の実施状況と在宅の看取りの状況との関連については、「ACP に対す る認識」と「ACP への取り組み姿勢」との間に正の相関(r=.53、p<.01)が示され、 「看 取り方や場所確認実施の有無」と「看取り方や場所選択に対する姿勢」との間に正の相関(r =.62、p<.01)が示された。在宅での看取りについて「主治医の姿勢」と「訪問看護師の姿 勢」に正の相関(r=.56、p<.01)が認められた。 面接調査では、終末期の医療やケアに対する意思決定支援について困難感を感じたこと が「有る」と回答した対象者は 72 人と 67.9%が困難感を感じていた。72 人のうち困難感 についての具体的内容記載のあった 61 人を分析対象とした。訪問看護師の困難感について 【意思確認をする時期の難しさ】【病状を理解していない時の関わりの難しさ】等のカテゴ リーが抽出された。 5.考察 ACP への知識が定着し理解が深まっていくことで、訪問看護師は ACP に対して積極的 に取り組んでいける可能性がある。意思を尊重できるかどうかわからない段階では、看取り 方や場所の確認について実施できておらず、準備状況が不十分なため確認できない可能性.

(5) も考えられる。研修会や医療チームでの検討会等を行い訪問看護師の準備状況を整えるこ とで ACP の実践も拡がっていくと考えられる。また、単独で住宅を訪問しているため、病 院看護師よりも訪問看護師の方がストレスが強い事が明らかになっている(西尾他,2013) が、医療チームと協力体制を整備することで軽減し積極的な姿勢で関わることができると 考えられる。 家族や医療者との関係性が強い程自分の意向を示さず任せることによって安心する傾向 が指摘されており、任された側もその意向を推し量って配慮する特徴がある(相羽他,2002) 。 日本人の文化に合わせながら、終末の意思について表出しやすい ACP の進め方について考 える必要がある。自分の人生観や死生観に根ざした終末期医療に対する意思を事前に考え られるような機会を如何に作るかが今後の課題であると考えられた。 さらには、高齢者の意向に沿ったよりよい最期を迎えられる支援として意志把握のため のツールの使用や医療チームでのカンファレンス等、医療チームで協働できるような具体 的な支援策の必要性が示唆された。 【謝辞】 本研究の実施にあたり研究協力にご快諾くださいました訪問看護ステーションの管理者 の皆様、研究参加者の皆様に心より感謝申し上げます。 なお本研究は、公益財団法人在宅医療助成勇美財団の助成を受けて実施いたしました。研 究助成をいただきまして深く感謝いたします。 文献 1) 厚生労働省:平成28年人口動態統計.2017. http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/. (最終ア. クセス日:2018/04/22) 2) 高橋方子、布施淳子:在宅高齢者の終末期医療に対する意思把握に訪問看護師が必要とする情報、日 本看護研究会誌、36(5)、35‐47、2014. 3) 厚生労働省:人生の最終段階における医療普及・啓発の在り方に関する検討会「人生の最終段階にお ける医療・ケアの決定プロセスに関する報告書」、http://www.mhlw.go.jp/file/05-shingikai-10801000 (最終アクセス日:2018/05/22) 4) Green MJ、etc.:The era of“e” the use of new rechnologies in advance care planning、Nurse Outlook、 60(6)、376-383 5) 日本老年医学会:「高齢者の終末期およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」2012、 http:/www://jpn-geriat-soc. (最終アクセス日:2018/04/22) 6) 宮田和明他:在宅高齢者の終末期ケアー全国訪問看護ステーション調査に学ぶ、東京、中央法規出 版、242-256、2004 7) Danis JM. et al. :A prospective study of advance directive for life-sustaining care.、N Engl J med、 324(13)、882-888、1991. 8) Teno JM. Et al.: Prediction of survival for older hospitalized patients: the HELP survival model.、AM Geriatr Soc、48(5)、16-24、2000. 9) Abel J. 、et al.:The impact of adavance care planning of place of death, a hospice retrospective cohort.

(6) study, BMJ Support、Palliat Care、3(2)、168-173、2013.. 感想 本研究を実施して、終末期の意思決定の支援の必要性について改めて実感することがで きました。在宅看護におけるアドバンス・ケア・プランニングを実施する際の困難の実際に ついて明確にできたことも大きな成果のひとつでした。今後も、本研究の結果をふまえて研 究を発展させてゆき、在宅看護の実践に貢献できるように努めてまいりたいと思います。 本研究に対して研究助成をしていただけましたことから調査のための諸費用をまかなう ことができ、多くの研究協力者を募り円滑に研究をすすめていくことができました。助成し ていただける機会を得ることができましたことに深く感謝申し上げます。.

(7)

参照

関連したドキュメント

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

We concluded that the false alarm rate for short term visual memory increases in the elderly, but it decreases when recognition judgments can be made based on familiarity.. Key

ア  入居者の身体状況・精神状況・社会環境を把握し、本人や家族のニーズに

の 立病院との連携が必要で、 立病院のケース ー ーに訪問看護の を らせ、利用者の をしてもらえるよう 報活動をする。 の ・看護 ・ケア

では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動

現行アクションプラン 2014 年度評価と課題 対策 1-1.