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音楽を臨床に活かす:神経疾患の音楽療法

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Academic year: 2021

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(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2015-MUS-107 No.10 2015/5/24. 音楽を臨床に活かす:神経疾患の音楽療法 佐藤 正之† 治療手段として音楽を用いる場合、対象とする症候・疾患、用いる方法、予想される効果などがある程度決まってい ることが必要である。治療として確立するためにはそれに加え、効果をもたらす脳内機序についての理解が求められ る。神経疾患に対する音楽療法では、パーキンソン病や認知症の BPSD (behavioral and psychological symptoms of dementia)、失語症に対する Melodic Intonation Therapy (MIT)などの有効性がエビデンスとして確立しつつある。本講演 では、神経内科医である筆者がこれまでに行ってきた取り組みについて紹介し、音楽と脳をとりまく医学的研究の現 況について概観したい。. 1. はじめに. は歌詞を流暢に唄う現象がしばしば観察される。このこと から歌唱を失語の訓練に活かせるのではとの期待が生じた. 音楽療法 (music therapy) は「精神および身体の健康の回. が、これまでの報告では単なる歌唱では効果はないか、あ. 復・維持・改善という治療目的を達成するうえで音楽を適. っても限定的であった。音楽的な要素を用いた系統的な失. 用すること」と定義される (全米音楽療法協会)。 “治療目的. 語訓練法に melodic intonation therapy (MIT) がある。MIT は. を有する”ということから、単なる趣味や娯楽としての音. 音楽のリズムや節回しを利用して失語症患者の発話を改善. 楽鑑賞、レクリエーションとは区別されるが、実際には音. させる方法で、米国神経学会により有効性が認定されてい. 楽を用いて患者に何かはたらきかければ音楽療法と称され. る。本邦へは杉下らのグループによって導入されたが (関. ることも多い。医療に身を置くものにとっては、どのよう. 1983)、手法の“肝”にあたるところが紙面では表しにくい. な手段を用いても患者の利益に役立てれば良いという見方. ことから汎用されるまでに至っていない。. もある一方、医学からみると客観的証拠 (エビデンス) も しくはそれへの志向に基づかない取組は、 “治療 (therapy)”. 2.3 パーキンソン病. ではなく“まじない・祈祷”と同列に捉えられる。あまり. パーキンソン病(以下 PD)患者でみられるすくみ足や突. に多様な意味をもつようになった“音楽療法”という語に. 進などの歩行障害(いわゆるパーキンソン歩行)が、床に平. 対し、科学的・医学的視点を重視した自らのアプローチを. 行線を引くことにより改善することは、1940 年代から知ら. music-supported training (MST) や music-movement therapy. れてきた。音 楽 の リ ズ ム も 同 様 の 効 果 を 持 つ こ と. (MMT) と呼ぶ研究者もいる。本講演では、後者の意味で音. が期待され、これまで音楽聴取やメトロノーム. 楽療法という語を用いる。. に合わせて歩くことにより、パーキンソン歩行 が改善することが報告されている. 2. 神経疾患に対する音楽療法 音楽療法のエビデンスは未だ確立していない。そのよう. ( M o r r i s 1 9 9 4 )。. 筆者は、患者自身の歌唱を用いたパーキンソン 歩行に対する音楽療法を施行し、良好な結果を 得 て い る (Satoh 2008)。. な中、neurology において医学的批判に耐えうる質を保持し た報告の多いのが、認知症、失語症、パーキンソン病に対. 参考文献. する音楽療法である。. 1) McDermott, O., Crellin, N., Ridder, H.M., Orrell, M.: Music therapy in dementia: a narrative synthesis systematic review. Int J Geriatr Psychiatry, Vol 28, No.8, pp.781-794 (2013). 2) Ueda, T., Suzukamo, Y., Sato, M., Izumi, Shin-ichi.: Effects of music therapy on behavioral and psychological symptoms of dementia: A systematic review and meta-analysis. Ageing Res Rev., Vol 12, pp.628-641 (2013). 3) 関 啓子, 杉下守弘.: メロディックイントネーション療法に よって改善のみられた Broca 失語の一例. 脳と神経, Vol 35, pp.1031-1037 (1983). 4) Morris ME, Iansek R, Matyas TA, Summers JJ.: Ability to modulate walking cadence remains intact in Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry, Vol 57, pp.1532-1534 (1994). 5) Satoh M, Kuzuhara S.: Training in mental singing while walking improves gait disturbance in Parkinson’s disease patients. Eur Neurol Vol. 60, pp.237-243, (2008).. 2.1 認知症 認知症の症候は、もの忘れなどの中核症状と、心理・行 動上の異常である behavioral and psychological symptoms of dementia (BPSD) に分けられる。音楽は情動に直接はたら きかけることから BPSD に対する効果が期待されてきたが、 最近の複数のシステマティック・レビューでもその有効性 が確認されている (McDermott 2012; Ueda 2013)。 2.2 失語症 言語能力のすべてを失った全失語の患者が、歌唱の際に † 三重大学大学院医学系研究科認知症医療学講座 Department of Dementia Prevention and Therapeutics, Graduate School of Medicine, Mie University. ⓒ2015 Information Processing Society of Japan. 1.

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