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肩甲下腿型筋萎縮症の筋CT所見と臨床症状との対比

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Academic year: 2021

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原  著 〔東女医大誌 第62巻 第11号頁1222∼1226平成4年11月〕

肩甲下轡型筋萎縮症の:筋CT所見と臨床症状との対比

  東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福由幸失教授) スズキ ノリコ ァライ    オオサワマキコ スミダ サワコ

鈴木 典子・.新井 ゆみ・大澤真木子・炭田 澤子

シシクラ  ケイコ  スズキ  ハルコ  フクヤマ  ユキオ

.宍倉 啓子・鈴木 才子・福山 幸夫

(受付 平成4年8月7日) Clinical and Muscle CT Findings in Scapulo−Peroneal Muscular Atrophy Noriko SUZUKI, Yumi ARAI, Makiko OSAWA, Sawako SUMIDA, Keiko SHISHIKURA, Harllko SUZUKI and Yu虹。 FUKUYAMA     Department of Pediatrics(Director:Prof. Yukio FUKUYAMA)       Tokyo Women’s Medical College   Scapulo−peroneal muscular atrophy(SPA)is a relatively rare syndrome presenting w童th neurogenic,血yogenic or mixed types. There have been few reports on associated muscle CT findings. Thus, we present skeletal muscle CT findings, in relation to clinical features, in 2 SPA patients,   Subjects were 23(pt1ンand 21(pt2)・year・old females whose SPA was diagnosed by EMG, muscle biopsy and clinical feastures. Skeletal muscle CT scans were obta孟ned at five levels in each case. In. both cases, deep tendon reflexes of all extremities were abolished, and muscle atrophy in the shoulder girdle, pectoralis, brachial and leg muscles and diffuse, slowly progressive muscle weakness,including the lumbar area, were clinically apparent.   Muscle CT findings included severe scapular muscle atrophy and prominent low CT density(LD) in paravertebral muscles, thigh flexors and the crus in both cases. LD in triceps surae muscles were more prominent than in peroneal.muscles, especially in pt1.   Characteristic changes seen in both cases were clinical atrophy of the shoulder girdle, brachium and crus muscles, and fatty replacement of muscles, as demonstrated by LD. However, atrophic changes were more prominent in pt1, wh三le the pattern of LD was patchy in ptl and striped in pt2. Their CT characteristics were compatible with EMG findings, that童s, ptl is considered to have neurog6nic changes while pt2 is myogenic type, although serum CK is presently normal。          はじめに  筋CTは種々の神経筋疾患で施行され,現在で は,神経原性疾患や筋原性疾患でそれぞれCT上 異なった特徴的なパターンを示すことが明らかに なってきたn∼4).今回,我々は,肩甲下墨型筋萎縮 症と診断された2症例につき,筋CT検査を施行 した.肩甲下腿三筋萎縮症は,顔面肩甲上腕三筋 萎縮症の一亜型と位置づけられている疾患である が,その成因として筋原性,神経原性または両者 の混合性のものが考えられている5)6).しかし,そ の筋CTの詳細な報告はない.我々は本症におけ る筋病変の分布を検索し,筋CT上の神経原性お よび筋原性のパターンと臨床所見との相関につい て検討した.       症例および方法(表)  1.症例  症例は,現在23歳と21歳の女性.2例とも,家 族歴に特記すべきことなく,孤発例である.  1)症例1:23歳,女性.  既往歴および現病歴:精神運動発達は正常で

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症例 1 2 年齢 23歳 21歳 発症 4歳 5歳 筋力低下 頸 屈/伸 4一/4 2/3 肩 屈/伸 2/2 3+/3+ 肘 屈/伸 3一/3一 4/4一 股 屈/伸 2一/2 3一/3  膝 屈/伸 3一/4 3/4一 足 屈/伸 3/4 3㎜/4 検査所見 CK(mU/ml) 544 56 筋電図 神経原性 筋原性 筋生検 筋線維大小不同 十 十 中心核軽度増加 十 十 2B線維 欠如 2C線維 増加 あったが,4歳頃,転びやすく,走るのが遅いこ とを指摘された.7歳時,踵四時に踵を地につけ ることができなかった.徐々に進行を認め,某大 学病院整形外科を受診,9歳と10歳時に両側アキ レス腱延長術をうけ,2回目の手術時,高クレア チニンキナーゼ(以下CK)血症(2,100mU/ml) が判明した.その後,11歳頃より重い物の持ち運 びが困難となり,徐々に上肢前方挙上がしづらく なってきた.13歳時に当科初診,筋生検精査によ り筋原性肩甲下腿型筋萎縮症と診断された7).17 歳時より跳躍や両手洗顔が不可能となり,現在, 歩行時は杖を必要とし,寝返りが困難となってき ている.  現症:筋萎縮が肩甲・上腕・下腿にあり,腰椎 前攣をみる.顔面筋罹患はな:く,線維性攣縮を認 めない.筋力テストでは,現在4∼2のレベルで, 肩と股関節での筋力低下が優位であった.知能は 正常,知覚障害は認めない.  2)症例2:21歳,女性.  既往歴および現病歴:精神運動発達に特に異常 はなかったが,5歳頃歩行が遅いことに気付かれ ていた.10歳過ぎに爪先歩きができなくなり,階 段昇降登墓性起立,重い荷物の持み運びが困難 症と診断された.その後転居し当科へ来院.現在 歩行可能であるが,転倒しやすい状態である.  現症:やせ型で,顔面は面長,顔面筋にごく軽 度の筋力低下がある.上肢は手も含め全体に細く, 躯幹・下腿の萎縮もあり,翼状肩甲が認められる. 筋力テストでは,現在4∼2のレベルで,頸の前 屈や肩,股関節での筋力低下が優位であった.知 能は正常,知覚障害を認めない.  3)両症例の主な検査所見  筋生検と筋電図は両者共,発症8∼9年目の13 歳時に,大腿四頭筋(症例1)と上腕二頭筋(症 例2)で施行された.筋生検像は,両面共筋原性 変化で,筋線維大小不同,中心核軽度増加の所見 と,症例1には,2B線維欠如および2C線維増加が 認められた7).筋電図では,症例1は神経原性変 化,症例2は筋原性変化を認めた.現在CKは,

症例1は544mU/mlと高値,症例2は56mU/ml

と正常である.  両者共,動悸や呼吸困難の自覚はないが,拘束 性の呼吸障害を有した.  臨床経過と検査(CK,筋生検と筋電図)より, 症例1は,筋原性変化が主体で神経原性要素もみ る肩甲下腿型筋萎縮症,症例2は,筋原性の肩甲 下腿血筋萎縮症と診断された.  2.方法  筋CTの検査CTは,日立CT W−2000を用い, スライス幅10mm,120kVの条件で撮影した.スラ イスレベルとしては,①肩甲骨を通る高さ,②第 3腰椎椎体(L3)を通る高さ,③骨盤骨の高さ, ④大腿中央部,⑤下腿最大径部で行った.各CTレ ベルについては肉眼的に評価した.          結  果  1.肩甲レベル(図1)  両症例とも肩甲帯筋の極めて著明な筋萎縮を認 めた.  2.L3および骨盤レベル(図2,3)  症例1では,大腰筋と腰方形筋の萎縮が著明で, 紙のように薄く,傍脊柱筋は,最内側の多面筋の 陰影をわずかに認めるのみで,全体に虫喰い状の 低吸収域化(LD)が著明であった.骨盤レベルで

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図1 症例1(上),2(下)の肩甲骨レベルのCT縁 図3 症例1(上),2(下)の骨盤骨レベルのCT像 図2 症例1(上),2(下)のし3レベルのCT像  1.大腰筋,2.腰方形筋,3.多裂筋,4.背最長筋,  5,腸腰筋 轡筋の萎縮とLD化も強く認められた.  症例2では,筋萎縮よりもLD性変化が主体で あり,特に傍脊柱筋に縞状LDがび漫性に認めら れ,智筋でも同様のLDが全体的に出現した. 図4 症例1(上),2(下)の大腿レベルのCT像  1.大腿直筋,2,中間広筋,3.内側広筋,4.外側  広筋,5.大腿二頭筋(短頭),6。大腿二頭筋(長頭),  7.縫工筋,8.織筋,9.大内転筋,10.半膜様筋,  11.半腱様筋 3.大腿レベル(図4) 両症例とも変化は屈筋群(大腿二頭筋,半懸鯛

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図5 症例1(上),2(下)の下腿レベルのCT像  1.前脛骨筋,2.腓骨筋,長趾・長母趾伸筋3.後 脛骨筋・長日屈筋,4.腓腹筋,5.ヒラメ筋 筋,半膜様筋)により強くみられたが,症例1は 全体に萎縮とLDが,症例2は萎縮は軽度で,むし ろ全体にLDがみられた.ただし,症例1では温品 が,症例2では大腿直筋が比較的よく保たれてい た.  4.下腿レベル(図5)  両症例とも下腿三頭筋のLDが強く,症例1で は,腓腹筋の萎縮があった.しかし,前および後 脛骨筋はよく保たれ,腓骨筋も足底筋の下腿三頭 筋より軽度の変化であった.

 以上のごとくCT,2例とも各CTレベルでの

罹患筋の分布は共通していたにもかかおらず,症 例1では筋萎縮所見,すなわち神経原性要素,症 例2では筋内LD所見,すなわち,筋原性要素が優 位に認められた.          考  察  両症例とも,臨床的に,筋萎縮は,上肢近位帯, および下肢遠位帯から始まり,緩徐進行性に増悪 し筋力低下は現在下肢近位部に及んでいる.筋力 低下が下肢近位部に及ぶことは,肩甲下腿型筋萎 縮症の特徴の1つといわれている.両懸は現在そ れぞれ23,21歳で,発症より14∼15年経ており, 筋CT上,肩甲帯,下腿のみならず大腿の変化も 考えられた.  筋CT上の変化は,傍脊柱筋群と下肢屈筋群に 最も強く,前および後脛骨筋は比較的保存されて いた.大腿四頭筋が保たれ,腰方形筋,半腱様筋, 半膜様筋の変化が強いことは,Duchenne型筋ジ ストロフィーの筋CT所見8)と異なる点であっ た.  進行例では近位筋の筋力低下がある点や,CT での下腿屈筋群の障害は,常染色体性劣性遠位二 筋ジストロフィー(三好)9)にも共通してみられる が,我々の両症例では傍脊柱筋や大腿屈筋群が強 く障害されており,肥大やhigh densityを示す常 染色体性劣性遠位霊湯ジストロフィー(三好)と は異なっていた.  肩甲下腿型筋萎縮症の筋CT所見に関する報告 は,rigid spineを伴う1例で傍脊柱筋のCT所見 を報告した1論文10)があるのみである.我々の2 症例は,rigid spineを呈さないにも拘らず,傍脊 柱筋の著明な変化が共通して認められたことは, 傍脊柱筋の病変が,肩甲下腿二筋萎縮症の主要所 見の一つであることを示すものと考えられる.  我々の2症例は,罹患筋の解剖学的分布の点で は同様の分布を示したが,筋CT像の性質は異 なっていた.すなわち,症例1個口,LD所見のみ ならず著明な萎縮所見を呈し,神経原性変化と考 えられたが,症例2では,縞状のLD域がび漫性に 全体に出現し,筋原性変化が存在すると考えられ た.  症例1は,神経原性の筋電図所見と高CK血症 所見から筋原性変化・神経原性両者混在型とみら れるが,筋CTも,萎縮所見が優位であり,神経 原性要素が認められた.一方,症例2は臨床検査・ 筋CTともに,筋原性型要素から構成されると考 えられた.両側とも,成因的には筋電図所見と一 致した筋CT所見を呈したことになる.          結  論  1)肩甲下二型筋萎縮症の2症例において,筋 CTを施行した.臨床上,筋力低下は,腰部も含め, 全身性に緩徐進行性で,筋萎縮は,肩甲・上腕・ 下腿優位であった.CT所見では,肩甲・大腿・下

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腿は臨床症状と同様に障害されていた.  2)筋CT上の変化は,傍脊柱筋群と大腿屈筋 群・下腿三頭筋の下肢屈筋群に最も強く,前およ び後脛骨筋は比較的よく保存されていた.  3)筋CT所見は,両例とも,肩甲筋は著明に萎 縮下肢屈筋群では低吸収域変化が優位であった.  4)肩甲・下腿以外の筋CT所見について,他の 検査所見との相関をみると,筋電図上神経原性変 化を示した症例1では,虫喰い状の低吸収域より, 萎縮性変化がより優位で,神経原性CTパターン を呈したのに対し,筋原性変化の症例2は縞状の 低吸収域が優位で筋原性パターンを呈し,肩甲下 腿型筋萎縮症のCT所見は,その成因としての筋 原性,神経原性によるそれぞれパターンを有した.  本論文の要旨は,第19回関東小児神経学研究会(1992 年3月28日:都市センター)にて発表した.       文  献  1)Hawley RJ, Schellinger D,0’Doherty DS=    Computed tomographic patterns of muscles in    neuromuscular disease. Arch Neurol 41:    383−387, 1984  2)長尾秀夫,高橋 貢,羽原心治ほか:神経筋疾患   の骨格筋computed tomography(CT).日小児会   誌90:140−147,1986 3)小田嶋奈津,松永高志,古川哲雄ほか:筋緊張性   ジストロフィーにおける筋萎縮分布一CTによる   検討一.臨床神経 30:707−712,1990 4)Sambrook P, Rickards D, Cumming WJK;   CT muscle scanning in the evaluation of   patients with spinal musculr atrophy(SMA).   Neuroradiology 30:487−496,1988 5)Seitz D:Zur nosologischen Stellung des   sogenannten scapulo・peronealen Syndroms.   Dtsch Z Nervenheilk 175:54卜552,1957 6)Kaeser HE:Scapuloperoneal muscular atro・   phy. Brain 88:407−418,1965 7)岡田典子,広瀬和恵,大澤真木子ほか:筋原性の   肩甲下腿型筋萎縮症の1例.東女医大誌 57:   臼69−674, 1987 8)川井 充,国本雅也,本吉慶史ほか:Duchenne型   筋ジストロフィー症の骨格筋CT所見とこれにも   とつく病気分類.臨床神経 25:578−590,1985 9)水澤英洋,小林史枝,中西孝雄:常染色体劣性遠   位型筋ジストロフィーにおける骨格筋障害様式:   臨床的ならびにCTによる検討,臨床神経 27:   177−184, 1987 10)松元 渉,梅原藤雄,福永秀俊ほか:Rigid spine   を伴い,筋生検で多数のlobulated且berを認めた   肩甲下腿型筋萎縮症の1例.臨床神経31:   417−421, 1991

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