Title
病原細菌のリボンーム RNA を使った分類同定システムの
開発( はしがき )
Author(s)
江崎, 孝行
Report No.
平成7年度-平成8年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(B)(2)
課題番号07557028) 研究成果報告書
Issue Date
1996
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/245
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。病原細菌のリボソームRNAを使った分類同定システムの開発
研究目的 地球上の微生物をリポソームRNAを使って系統的に分類し、その系統進化を論じる分子進化学が急 速に進展し,現在までに記載されたの細菌約4000種のうち綿けの菌種のリポソームRNA配列が既に決 定された。そのうち医学細菌領域の病原体は危険を伴うことから、研究者が少なく、現在も重要な菌種の配 列が決定されないまま取り残されておりその数は属にして約620属に達する。従って病原微生物を遺伝子 配列で分類同定するにはいまだ情報の集積が不十分であり、本研究を通じて、医学細菌学上、重要な細菌の リポソームRNAの遺伝子配列のデータを蓄積する必琴がある。人の生活環境から分離される細菌が属する 基準種の16リポソーム遺伝子配列を決定し、その中から同定に有効な可変領域を特定することで、新しい 細菌の分類と同定体系に有用なデータを蓄積する。 研究成果の要約 1)この研究期間に国際的なデータの集積が進み我々のデータを含めて1997年1月までに真正細菌の9.割以 上の'16SリポソームRNA配列が決定されが系統分類体系が整理された。 その結果真正細菌は現在表1 に示すごとく,大きく分けて13種類の異なった系統に分類されるようになった。その中で病原微生物は8 種類の系統に分類される。本件期間中に我々はグラム陽性菌の配列を中心に決定してきた。グラム陽性菌は GC%が低い菌群64属,GC%が高い菌群106属の合計170属が分類されているがそのうち10属の基準種 のデータが未決定で残されているのみになった(表2a,b)。 表1.真正細菌の系統 Proteobacteria群 α β γ ∂ F止micu【es群 Low GC群放射題品雷
藍藻 群 黄色硫貴細菌 群 5pirochetes群 Bacteroides-CytOPllaga群 PlancIOmyCeS群 緑色非硫黄細菌 群-1-2)病原微生物のうちわが国で危険度2以上にランクされている菌種は約200種でDSM(ドイツ)で は約700種が分類されている。本研究ではわが国で危険度2以上の菌種の配列を収集しシークエンスに よる同定方法の確立を目指してきた。DSMの一部の病原体を加えめ332菌種の配列の登録状況を表3にし た。危険度3の菌種のすべての配列が決定され,残り60種の病原体の配列が残されているのみとなっ た(〕 3)データの蓄積により配列の一部を使い菌種を同定する方法がさまざまな薗種で報告されるようになっ た。 我々は本件を通じてグラム陽性菌,特に抗酸菌,コリネフォルム,レンサ球菌に焦点を絞り同定方法 の作成を行なってきた。16SリボソームRNALの配列から特異プローブ,PCRprimerを作り,主たる抗 酸菌の検出と同定に利用できることを証明した。 4)一般細菌の同定に特異プローブ方法は実用的ではない。■ そこでRNAの部分配列が同定に利用できな いかを検証し,同定に便利な約340塩基をRNAの配列から選択し,配列がわかっているすべての微生物 のRNAの配列を比較したところ,この長さで十分同定に利用できることが証明できた(表4)。 5)RNAの配列が蓄積するに連れて従来から種の定義として使用されてきた定量的DNA/DNAハイプ リダイゼーションで明らかに独立した幾つかの種がまったく同じ16SリボソームRNA配列を持っている ことがわかってきた。坤COぬc血皿】血8㍊ぶ克と叫匹Obac血皿gお摘まその代表的例である。このことからリ ボソームの進化が種の進化より遅いことが予測されたが,同様の例はその後多くの例で見つかってきた。 出現してきた同擾点 データの蓄積に伴い16SリポソームRNAの配列を使った分類,同定の問題点も明らかになってきた。 多くの菌種ではリボソームRNAの遺伝子は複数個存在し,その数は菌群により1個∼10個と異なっ ている。全染色体の配列が決定された應闇叫血肋血伽肌拭では7個のコピーの全塩基配列が同じであるこ とが証明されたが,大腸菌では7個の中で配列が異なる16SリボソームRNAが存在することがわかってい る。また古細菌で2つ?16SリボソームRNA遺伝子の配列の違いが80個もあることが証明された。 一方医学細菌では病原性菌株を非病原菌から区別する必要がありt病原性因子の保有の産むが問題になる。 助鹿助 郷・と励d血血由c血は遺伝学的に近いことが知られているが馳吻舶全菌種のリボソームRNA の配列はE・COliの配列と2-5個の違いしかなかった。この違いは且co〟の菌株でもみられ動画血と 励血血血aの16SリボソームRNAの実質的な違いはなかった。 医学細菌学ではその他DNA/DNAハイブリッドで70%以上の配列の類似性があるにもかかわらず病 原性の遠いから独立した種として分類されている菌が多数存在する。これらの菌種はリボソームRNAの 配列も同じであり,リボソーム配列だけでは同定できないことから分類の変更が必要であることが明らかに なってきた。
-2-以上のことから,リボソームRNAの分類,同定における利用方法は以下のようにまとめることができる。 [現在細菌はリボソームRNA配列に基ずいた系統分類が行なわれている。従って分#された未 知菌株の系統分類学的位置を知るのにリボソームRNA配列を決定することは重要である。この 方法は掃属する属名の推測ができない病原体の同定には特に有効である。ところがリボソームR NA配列が既存の菌種と同一,もしくきわめて類似する(99%以上)場合でも分類学的な種の 決定にはならない場合がある。 病原性菌株の同定にはさらに病原因子の検出,種の確認には定 量的DNA/DNAハイブリッド形成実験が必要になる。 しかし多くの日和見病原体の同定には病原因子の同定は必要ではなく基準株と配列が一致すれば 同定できたと判定しても支障はない。同定には16SリボソームR NAの部分配列でよく5'末 端から340塩基ほどの長さがあれば通常の同定には十分利用できる。】 上記の考え方に沿って微生物を同定する手順を図1にフローチャートで示した。 現在国際的にも細菌分類学者の間ではRNAの配列が97%以下であれば新しい種の可能性,97%以上の 菌種が見つかった場合はその菌種と定量的DNA/DNAハイブリッド形成実験を実施し新しい種である かどうかを判断するという考えが優勢になっている。