2. 情報化を巡る状況と課題 - 共通ルールの必要性
2.1 輸出入における主体と標準的な業務プロセスとその傾向の分析 平成14年~16年に分析された海上物流にかかる業務プロセスは有る程度分析がされて いる。それらの分析を参照した結果、輸出入に関する標準的業務プロセスについて、関わる 各主体の役割を明確にすれば、以下の2点に大きな傾向・概念を把握することができる。 様々な主体が関わる海上物流において、もっとも主体を明確に認識することのできる要素 は、情報化の推進という観点から、貨物の授受に係る部分、書類の授受に係る部分と代理性 する部分の要素で順次分析することがもっとも主体を明確にし、傾向を分析することができ ると考えられる。主体
貨物の授受
書類授受
代理性
荷主等 貨物授受性 書類授受性 - 海貨等 - 書類授受性 荷 主 の 代 理 的 側 面 陸運等 貨物授受性 - - 船社 - 書類授受性 - コンテナヤード 貨物授受性 書類授受性 船 社 の 代 理 的 側 面 2.1.1. 情報を作って行く輸出業務 輸出業務の大きな傾向は、「情報を作りながら、貨物を作りながら受け渡していく」という ことにある。つまり、荷主の元に空コンテナ(情報:ブッキングNo.-コンテナ No.)が来る 頃には、まだ、どのコンテナに何を入れるかということは決まってはいない。荷主の元を出 るときには、どのコンテナに何の貨物が入っているかが初めて確定(情報:ブッキングNo. - コンテナNo. -シール No. -貨物品名)する。そのコンテナがどの海貨が通関(情報:ブッ キングNo. -コンテナ No. -シール No. -貨物品名-通関事業者)し、どのトラック事業者 によって運送(情報:ブッキングNo. -コンテナ No. -シール No. -貨物品名-通関事業者 -トラック事業者)され、最終的にコンテナターミナルに、どのように引き渡されたのかを 証明(情報:ブッキングNo. -コンテナ No. -シール No. -貨物品名-通関事業者-トラッ ク事業者-ターミナル事業者)する必要がある。この荷主・海貨等が中心となって、風上情報を作りながら引き渡していく行為が、輸出業 務の繁雑性な理由であり、情報化が進み難い点である。その為、実際輸出業務を中心に平成 18年度は電子化が進んでいない業務の検討を進めている経緯がある。
貨物の流れ 荷 主 海 貨 陸 運 船 社 コンテナヤード ①船腹予約 ②ブッキング番号発行 ③ブッキング番号通知 ④船積依頼書 ⑥陸送依頼 ⑦コンテナ搬入票・機器受領書(EIRサイン) ⑧コンテナ搬入票・EIRサイン ⑨コンテナ引受 情報通知 ⑩B/L発行 ⑫運賃支払決済 取引成立 輸送準備 開始 バンニング 本船着岸 ヤード荷役 本船離岸 海上コンテナに係る業務の概要(輸出プロセスの分析) 海上コンテナに係る業務の概要(輸出プロセスの分析) ⑥貨物受領書・コンテナ積込情報送付 ⑪B/L送付 ⑤空コンテナ手配依頼書 実コンテナ ヤード持込 ●端的に言えば、荷主・海貨等が情報を作りながら、貨物を引き渡していくプロセスである 注)理解を助ける為通関等の詳細な業務を除く主な業務 図2-1 海上コンテナに係わる業務の概要(輸出プロセスの分析) 2.1.2. 決まった情報を確認していく輸入業務 輸入業務の大きな傾向は、「情報が既に確定されていしまっており、情報を確認しながら貨 物の引き渡していく」ということにある。つまり、船社のA/N とマニフェスト情報から全て の輸入業務が開始されるといっても過言ではない。日本に船舶が着く頃には貨物の情報はす でに関係者が把握している状況にある(情報:B/L No. -コンテナ No. -シール No. -貨物 品名-通関事業者-ターミナル事業者)。 この確定した情報を元に、確実にコンテナを引き渡していくという作業が輸入業務の傾向 といえる。その為、引き渡される方の情報と実物コンテナを突き合わせていくことが大きな 業務であるといえる。 比較的輸出業務に比べて、輸入業務は情報が確定している分、比較的情報化が進め安いと 考えることができる。しかしながら、輸入業務については、情報が確定している分、多くの 事業者に情報を事前に送付して、情報共有を進めておく必要があるから、実際に情報の授受 は多くの事業者に行われていると考えられ、情報化の効果が大きいと考えられる。 また、荷主・海貨等が中心となって風上情報を作っていた輸出業務と比較して、船社・タ ーミナル・トラッカー等が風上情報を確認しながら作業を繰り返していくという構図になっ ている。 また、A/N 等輸入業務のトリガーとなる情報も比較的明確になっていることから、情報化 の要素も比較的明確であると考えられる。
海上コンテナに係る業務の概要(輸入プロセスの分析) 海上コンテナに係る業務の概要(輸入プロセスの分析) 貨物の流れ 荷 主 海 貨 陸 運 船 社 コンテナヤード ⑤D/O番号通知 ⑦搬出依頼書 ⑧コンテナ受領手続(フリータイム精算等) ⑨機器受領書(EIRサイン) ④搬出許可(D/O)番号発行 ②B/L送付 入港前業務 開始 本船着岸 荷主配達 ヤード搬出 ヤード荷役 デバンニング ①到着通知書 ⑥搬出依頼書 ⑩貨物受領手続(EIRサイン) ⑪空コンテナ返却手続(EIRサイン) 空コンテナ 返却 ③B/L持込・運賃支払決済 本船 輸出港出港 ●端的に言えば、物流業者が固定された(既定)情報を確認しながら引き渡していくプロセス 注)理解を助ける為通関等の詳細な業務を除く主な業務 図2-2 海上コンテナに係わる業務の概要(輸入プロセスの分析) 2.1.3. 平成18年度の実験について 平成18年度は、事業者等のヒアリング等の結果、輸出業務を中心におこなう事にしてい る。これは、情報を作りながら貨物を引き渡していくという輸出業務が、確定された情報を 確認して引き渡していく輸入業務に比べ、非常に繁雑で情報化が進み難い分野であると考え られるからである。 また、それに加え、米国の外国港での船積前24時間ルールの適用に より、船社がマニュフェスト情報を国内で作ってしまう必要があることから、民-民間の情 報化を底上げする必要があることが経団連等から指摘されている(2004年6月22日「輸 出入・港湾諸手続の効率化に関する提言~ITを活用した港湾をめぐる諸手続の効率化とセ キュリティの確保に向けて~」経団連・貿易会等提言)。 また、平成16年度には、国土交通省と関係省庁が連携し、「安全かつ効率的な国際物流に 係る施策パッケージ」を取りまとめ、この中に於いても、北米船積24時間前ルール等の適 応等のセキュリティ強化による物流効率化を阻害する要因を乗り越える為、民民間の情報化 を進めることが重要であることがとりまとめられている。 それらを勘案し、平成18年度は輸出業務を優先事項として取り組むこととしている。 しかしながら、前述にあるように輸入業務は比較的情報化の効果が大きいと考えられるこ とから、輸入についても今後の検討対象と考えるべきである。 【「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言~ITを活用した港湾をめぐる諸手続の効率化 とセキュリティの確保に向けて~」】(社)日本経済団体連合会ほか 8 団体との共同による20 04年6月22日付の提言よりの抜粋。
② 民民手続における完全電子化 民民における電子化もいまだ100%には程遠い状況にある。このため米国 24 時 間前マニフェスト提出ルールへの対応などに時間がかかっている。また、米国と 同様に貨物情報の事前提供を義務付ける動きが欧州などにも出てきており、わが 国がマニフェストの事前提出を求められる貿易相手国が増加していく可能性が高 い。したがって、民民の手続においても電子化を促進させるべく、努力しなけれ ばならない。そのためには、参加者がインターネットを通して手続ができ、省庁 や参加企業の固有システムとの連繋が容易にできる仕組みを構築し、荷主を初め、 貿易・港湾諸手続に関係する官民すべての当事者が参加できるネットワークシス テムを目指すべきである。 また全面電子化を前提に、電子申告の導入を促進するため料金面等におけるイ ンセンティブを付与すべきである。身電子化の中小零細企業への対応としては、 入力代行サービスセンターの設置や設備投資面での補助など、期限を限って支援 策を講ずるべきであり、また、その後の対応としてサービスプロバイダーを活用 した電子申請の環境を整備すべきである。 2.2 空コンテナ搬出に係る業務プロセス 実際に、業務プロセスが異なる場合について、今回の空コンテナ搬出入に係る場合につい て、関係事業者等へのヒアリング等から象徴的な事例を抽出し整理した。 空コンテナ搬出業務という1業務プロセスをサンプル的に検証しても、具体的な相違が出 ることが確認された。 ● 相違① 空コンテナの蔵置場所の相違 「空コンテナはどこに蔵置されているのか」ということが、大きな業務の違いが生じる場 合があるようである。つまり、国内に巨大な市場シェアをもつ船社にとってみれば、空コ ンテナはCY内におくことはまれである。つまり、CY内は実入コンテナの搬出入専用に 使い、空コンテナはCY外のオフドックデポに蔵置されることが多い。これは、空コンテ ナ搬出入に係るゲート混雑をさけ、狭隘なCY内を有効に使うためには、CY外のオフド ックに蔵置する方法をとることになる。 一方で、中国・アジアの中小船社になると、市場シェアが小さいことから、空コンテナ数 も少なくなり、CYの外にオフドックデポを維持できるような余裕はない。特にこのよう な船社は空コンテナの需給調整・引き当ても含め代理店に任せるケースがある。その為、 CY内で空コンテナを管理する船社・代理店も複数存在している。 この「空コンテナがどこに蔵置されているのか」という船社毎にことなるビジネスモデル が実際には業務プロセスの相違につながる事になる。 つまり、CYに空コンテナを蔵置しない船社は、空コンテナ搬出依頼は「どこのオフドッ クデポから引き出されるのか?」というところから始まるプロセスと、CYに空コンテナ を蔵置する船社は「あのCYから空コンテナを引き出す」というプロセスから始まる場合 では、当然意志決定の構造が異なるため、送付先や、帳票も変わってきてしまうことにな る。 ● 相違② オフドックとCYで管理事業者の相違 CY外でオフドックデポを運用されている場合は、CYの管理事業者とオフドックの管 理事業者がことなる場合もある。その為、事業者間で空コンテナの引き当て情報を共有す るプロセスが生じる等、管理主体・事業主体の相違で更に運用に相違が生じることになる。
船社 CY 海貨 場所指定 引出 P/O 引当 トラッカー 配車 引出 CY外オフドックがある場合 CY内で空コン管理の場合 報告 船社 トラッカー オフドック CY 海貨 引当 配車 P/O 引当 図2-3 空コンテナに搬出に係わる業務プロセスの概要 2.3 業務における帳票の相違の把握とその分析 実際に、業務プロセスが異なることで、結果的に帳票が異なる事態が生じると考えられる。 具体的にどこまで相違が生じているのか、実際に比較することで、その背景にある業務プ ロセスの違いを分析し、有る程度帳票からそのプロセスの違いを把握することが可能である。 今回は、当該実験対象にもなっている空コンテナ搬出依頼票(PICK-UP-ORDER)について、 入手が可能な範囲(調査の結果、一般に HP 等で配布されていることが解った:詳細は10 章)で6社・7パターンの帳票を比較し、その帳票の相違・業務プロセスの相違を検証し、 帳票統一・業務プロセス統一の難しさを把握した。 実験を円滑に行う為には、これらの相違・困難性を具体的に把握しておくことが、実施に あたり重要な基本的知識として必要である。 2.3.1. 空コンテナ搬出業務について 空コンテナの搬出業務とは、船社がもつコンテナを輸出荷主が借り受ける為に、海貨が荷 主の代行で船社(または、船社代理のターミナル)に空コンテナ搬出票で依頼をする業務で ある。今回モデル事業の内容に「コンテナピックアップオーダー」という帳票は、まさにこ の部分である。 各社のHP等で入手できることからもわかるように、実際にはこの部分は紙で行われてい るのが実態である。 理由としては、実際に空コンテナ搬出票は海貨からトラッカーへも送付され、事実上の配
2.3.2. 帳票の相違 ① 船社毎、ターミナル毎、地域毎に違う実態がある。 実際に空コンテナ搬出入依頼票は、船社・ターミナルのHP等で配布されており、 一般に誰でも手に入れることができるようになっている。 その為、帳票も非常に多くのものが収集し易いため、分析対象としては、非常に興 味深いものがあった。船社毎・ターミナル毎に違う事に加え、同一船社であっても地 域で違う例が確認された。 ② 基本的な情報はほぼ同じである。 帳票を分析すると、基本的な情報が同じな部分が多く、特に本船名、仕向地、陸 揚げ港、荷主名、Booking No、運送事業者等、その後の業務に重要な情報といのは、 会社・地域を問わず夫基本的な業務プロセスをもっていることがわかる。 ③ 違いが大きいのは、各社の業務体制・サービス内容の部分である。 帳票で特に大きな違いが出ているのが、積み港、空コンテナ搬出場所指示、コン テナ性能指示等の部分である。 つまり、積み港が決まっていない場合や、空コンテナ搬出場所は後ほど指示され る場合(荷主向けに選択される空コンテナがコンテナターミナルにある場合や、オ フドックデポにある場合等がある)や特殊コンテナによるサービスの多様化等によ り帳票の相違が生じていると考えられる。
A社 B社 C社(横浜) C社(神戸) D社 E社 F社 ● ● ● ● ● ● ● 空コンテナ- 搬出票 EMPTY CONTAINER PICK UP 輸出空コンテ ナー搬出依頼 書 輸出空コンテ ナー搬出依頼 書 空コンテナピッ クアップオー ダー 空バンPICK 空コンテナ PICK UP 申 込書 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● コールサイン ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 積港選択 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 担当者 ● ● ● ● ● ● 電話番号 ● ● ● ● ● ● FAX.No ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● パレッタイズ ● ● ● ● ● ● ● ● TEL No ● ● ● ● ● ● ● 名称・会社名 ● 空バン搬出場所 ● ● ● ● 場所選択 ● ● ● ● ● ● ● ● 搬入先照会 ● 場所選択 ● ● ● ● ※受先判断 搬入先照会 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● オープン/フラット詳細 ● ● ● 温度設定(リーファ) ● ● ● ● ● ● 換気要望(VENT) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 次航 問い合わせ先(船社) 問い合わせ先(港運) 船社名 荷姿 貨物重量 危険品有無 内・外貨 REMARKS Voy.No 仕向地 陸揚港 搬出日・引取予定日 荷受地 積港 品名 通関業者(乙仲) 荷主 Booking.No 空コンテナ搬出依頼票の様式の比較 帳票名 FAXNO 本船名 本数 運送業者 バン詰場所 実入搬入場所 SIZE TYPE ラッシング等その他 積 港 決 まってな い 搬 出 先 が 決 ま っていな 細 か い サービス