音の文化の継承
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(2) デザイン学研究特集号 Vol.28-2 No.104. 存在するが、日本で特異的に発展した文化である。日本人は、虫の音、鳥の 声、水音など、音の中に風情を感じ、愛でてきた。風鈴も江戸時代以来夏の 風物詩として、音に涼を求めてきた。音を積極的に生活に取り入れて楽しむ 文化の代表といえる。. 3.音に気付くための活動としての風鈴 平成25年(2013年)に「かなざわ風鈴(図1)」というものを考案した。 これは、6枚の1辺10センチの正方形の紙を組み合わせた立体を作り、その 中に真鍮のパイプと5円玉をつるした構造になっている(図2)。大きな音 ではないが、余韻の長い澄んだ響きが特徴となっている。通常の風鈴は金属 であれば鋳造、ガラスであれば宙吹きように、技術の習得には時間がかかる ものである。しかし、かなざわ風鈴は特別な技術を要しないため、ある程度 の準備をあらかじめしておくことで誰でも作り上げることができる。自分自 図1 かなざわ風鈴. 身で音を感じ、楽しむことができるという特徴があるため、研究室主催の風 鈴づくりワークショップを重ねてきた。 平成27年(2015年)より、寺院に場を借りて市民を対象とした風鈴づくり を行っている(図3、4)。寺町には多くの寺院が集積している。地元の住 職らが宗派を超えて連携して平成26年(2014年)に寺町台寺活協議会を結成 した。寺院と市民の距離を縮めるため、様々な活動を行っているところに 我々も協働した活動を行っている。これも、単に風鈴というものを作ること を目的としているわけではない。風鈴を通じて、音風景を愛でる文化を継承 し、新しい金沢の音風景を創出することを意図した活動である。. 図2 かなざわ風鈴の構造. 図3 学生が指導する寺院でのワークショップ. . 図4 寺院でのワークショップ後の展示. 2018年には、加賀市山代温泉通り商店街の実施する「やましろアートマー ケット」との協働を要請された。そこで加賀五彩をモチーフとしてガラスに 絵付けをする「加賀風鈴」(図5)を提案した。この風鈴に絵付けをする風 鈴ワークショップをアートマーケットの期間中に実施した(図6)。 2019年には「かなざわ風鈴」の発音部を外し、かわりに LED を挿入する. ことであかりにした「かなざわ彩灯」(図7)も考案した。これについても 制作ワークショップを実施している。. 71.
(3) 72. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 図5 加賀風鈴. 図6 アートマーケットでのワークショップ. 4.てらまちや 風心庵 前述のような研究室活動を街中で展開するため、2016年に寺町通りに面する小 さな町家を個人で購入した。大正時代の建築と推定されるこの家屋は傷みが激し いものであったが、ここを研究室のサテライトとして2017年に再生させた(図 8,9)。改装設計は本学 OG で、町家の改装経験のある「あとりいえ。」のやま. だのりこ氏(1級建築士)によった。環境面の要求性能を示したうえで、それを 実現することに尽力いただいた。 1階はコレクションの風鈴ギャラリーとしている(図10)。また、英会話サー クル等の趣味のシェアスペースとしても利用できる。2階はゲストハウスとして 地域外の方の宿泊場所として活用する(図11)。これによって、地域内外の方に 図7 かなざわ彩色灯. 寺町という場所を体感し、深く味わい親しんでもらうことを目指している。. 図8 改装前のてらまちや風心庵 . 図9 改装後のてらまちや風心庵. 図10 風心庵1階の風鈴ギャラリー . 図11 風心庵2階の宿泊スペース.
(4) デザイン学研究特集号 Vol.28-2 No.104. 5.ゼミ活動とのかかわり 改装にあたっては学生たちにも建築の現場を体験してもらおうと考えた。 改装設計を依頼したやまだ氏と協働し、内装の塗装ワークショップを1日 行った(図12)。建築を学んでいても学生時代には現場のことを経験する機 会は少ない。ごく一部の作業ではあるが、専門家に話を聞き、指導を受ける ことで刺激になることを意図している。また、1階に配置する家具の設計と 制作も学生で行った(図13)。その場の空間的要求を満たすような解決策を 考える実践的な機会とした。. 6.今後の展望 現在、風心庵ではかなざわ風鈴、加賀風鈴、さらにはかなざわ彩灯という あかりの制作ワークショップを随時行うことができるようにしている。ま た、この施設を拠点として、まち歩き(特にサウンド・ウォーク)を学生た ちで立案・実施する。地域の魅力を再発見し、未来に残すまちを考えるよう な活動につなげたいと考えている。. 図12 学生たちによる塗装. 図13 学生たちによる家具づくり. 73.
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