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音の文化の継承

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Academic year: 2021

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(1)70. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 土田義郎 Tsuchida Yoshio 金沢工業大学. Kanazawa Institute of Technology. 第二部:活動報告. 音の文化の継承 町家リノベーション+風鈴制作体験 Inheritance of the Culture of Sound: Renovation of a Traditional Townhouse + Experience of Making Wind Bells. 1.はじめに 金沢は京都とともに戦災を免れた都市ということで、昭和初期以前のまち なみが保持されている。江戸時代の地図を見てまちを歩くことすら可能であ る。観光都市としてひがし茶屋街や主計町茶屋街、兼六園などは、昭和、平 成とにぎわってきた。特に平成27年(2015年)3月の北陸新幹線の金沢延伸 以降、観光客が格段に増えている。 その一方で、旧市街地においては空き家の増加が問題となっていた。まち なみ全体の風景を保全するためには、一つ一つの建物が保全されていること が必要である。空き家を放置すればその分だけまちなみの美しさが損なわれ てしまう。寺町は国の重要伝統的建造物群保存地区として平成24年(2012 年)12月に指定された。ひがし茶屋街、主計町茶屋街に並ぶ、金沢の大切な 資産になっている。電柱の地中化は順次進められており、重伝建指定に伴う 建物の助成もあるが、この地域では景観形成が未だ不十分である。 環境庁(現環境省)が平成8年(1996年)に選定した「残したい " 日本の. 音風景100選 "」に、「寺町の鐘の音」が指定されている。これは地元の有志. 「鐘音(しょうおん)愛好会」の活動のたまものである。目で見えるものだ けが風景ではなく、音もまたまちの風景である。音風景(サウンドスケー プ)は雰囲気を形成する重要な要素となっている。寺院の集積する寺町であ るからこそ、鐘の音の響くまちなみはそのアイデンティティになっている。. 2.まちの音風景をはぐくむ、守る、創る 私は、音環境に関する研究の中でも、サウンドスケープを主として研究し ている。特に庭園のサウンドスケープやサイン音といった内容が多い。また サウンドスケープに関わる実践活動として、音に意識を向けるようなサウン ド・エデュケーションを行ってきている。大人から子どもまで、その対象は 幅広い。例えば、「サウンド・マップ」というアクティビティでは、ある地 点を選択して静かに耳を澄まし、聞こえた音を紙の上に記号化して描きこむ ものである。それ以外にも、聞こえた音をリスト化して、さらにその特徴か ら分類する「イヤー・クリーニング」のようなものもある。様々なアクティ ビティを組み合わせて地域内を散策するものは「サウンド・ウォーク」とし て総称される。 私は趣味として風鈴を蒐集していた。風鈴は、古代中国に起源を有し、日 本には平安時代に伝来したといわれている。アジア地域を中心として各地に.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 存在するが、日本で特異的に発展した文化である。日本人は、虫の音、鳥の 声、水音など、音の中に風情を感じ、愛でてきた。風鈴も江戸時代以来夏の 風物詩として、音に涼を求めてきた。音を積極的に生活に取り入れて楽しむ 文化の代表といえる。. 3.音に気付くための活動としての風鈴 平成25年(2013年)に「かなざわ風鈴(図1)」というものを考案した。 これは、6枚の1辺10センチの正方形の紙を組み合わせた立体を作り、その 中に真鍮のパイプと5円玉をつるした構造になっている(図2)。大きな音 ではないが、余韻の長い澄んだ響きが特徴となっている。通常の風鈴は金属 であれば鋳造、ガラスであれば宙吹きように、技術の習得には時間がかかる ものである。しかし、かなざわ風鈴は特別な技術を要しないため、ある程度 の準備をあらかじめしておくことで誰でも作り上げることができる。自分自 図1 かなざわ風鈴. 身で音を感じ、楽しむことができるという特徴があるため、研究室主催の風 鈴づくりワークショップを重ねてきた。 平成27年(2015年)より、寺院に場を借りて市民を対象とした風鈴づくり を行っている(図3、4)。寺町には多くの寺院が集積している。地元の住 職らが宗派を超えて連携して平成26年(2014年)に寺町台寺活協議会を結成 した。寺院と市民の距離を縮めるため、様々な活動を行っているところに 我々も協働した活動を行っている。これも、単に風鈴というものを作ること を目的としているわけではない。風鈴を通じて、音風景を愛でる文化を継承 し、新しい金沢の音風景を創出することを意図した活動である。. 図2 かなざわ風鈴の構造. 図3 学生が指導する寺院でのワークショップ.  . 図4 寺院でのワークショップ後の展示. 2018年には、加賀市山代温泉通り商店街の実施する「やましろアートマー ケット」との協働を要請された。そこで加賀五彩をモチーフとしてガラスに 絵付けをする「加賀風鈴」(図5)を提案した。この風鈴に絵付けをする風 鈴ワークショップをアートマーケットの期間中に実施した(図6)。 2019年には「かなざわ風鈴」の発音部を外し、かわりに LED を挿入する. ことであかりにした「かなざわ彩灯」(図7)も考案した。これについても 制作ワークショップを実施している。. 71.

(3) 72. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 図5 加賀風鈴. 図6 アートマーケットでのワークショップ. 4.てらまちや 風心庵 前述のような研究室活動を街中で展開するため、2016年に寺町通りに面する小 さな町家を個人で購入した。大正時代の建築と推定されるこの家屋は傷みが激し いものであったが、ここを研究室のサテライトとして2017年に再生させた(図 8,9)。改装設計は本学 OG で、町家の改装経験のある「あとりいえ。」のやま. だのりこ氏(1級建築士)によった。環境面の要求性能を示したうえで、それを 実現することに尽力いただいた。 1階はコレクションの風鈴ギャラリーとしている(図10)。また、英会話サー クル等の趣味のシェアスペースとしても利用できる。2階はゲストハウスとして 地域外の方の宿泊場所として活用する(図11)。これによって、地域内外の方に 図7 かなざわ彩色灯. 寺町という場所を体感し、深く味わい親しんでもらうことを目指している。. 図8 改装前のてらまちや風心庵    . 図9 改装後のてらまちや風心庵. 図10 風心庵1階の風鈴ギャラリー   . 図11 風心庵2階の宿泊スペース.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 5.ゼミ活動とのかかわり 改装にあたっては学生たちにも建築の現場を体験してもらおうと考えた。 改装設計を依頼したやまだ氏と協働し、内装の塗装ワークショップを1日 行った(図12)。建築を学んでいても学生時代には現場のことを経験する機 会は少ない。ごく一部の作業ではあるが、専門家に話を聞き、指導を受ける ことで刺激になることを意図している。また、1階に配置する家具の設計と 制作も学生で行った(図13)。その場の空間的要求を満たすような解決策を 考える実践的な機会とした。. 6.今後の展望 現在、風心庵ではかなざわ風鈴、加賀風鈴、さらにはかなざわ彩灯という あかりの制作ワークショップを随時行うことができるようにしている。ま た、この施設を拠点として、まち歩き(特にサウンド・ウォーク)を学生た ちで立案・実施する。地域の魅力を再発見し、未来に残すまちを考えるよう な活動につなげたいと考えている。. 図12 学生たちによる塗装. 図13 学生たちによる家具づくり. 73.

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