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公立小学校における学校規模ポジティブ行動支援の継続的取り組みの効果

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-31 182

-公立小学校における学校規模ポジティブ行動支援の継続的取り組みの効果

○月本 彈1)、榎本 大貴2)、大対 香奈子3)、田中 善大4)、野田 航5)、大久保 賢一6) 1 )株式会社LITALICO、 2 )東京大学大学院先端表現情報学、 3 )近畿大学総合社会学部、 4 )大阪樟蔭女子大学児童学部、 5 )大阪教育大学教育学部、 6 )畿央大学教育学部 KEY WORDS:SWPBS,第 1 層支援,小学校 1  問題と目的 学 校 規 模 ポ ジ テ ィ ブ 行 動 支 援(S c h o o l - W i d e Positive Behavior Support : SWPBS)は、子どもの 適切な行動の増加とQOLの向上を目的とし、学校全体 で取り組む多層的な支援システムである。米国を中心 として成果が示されており、日本の学校場面において も同様に効果的であると考えられるものの、日本にお いて学校規模の行動支援に関する研究はほとんど報告 されていない(神山, 2017)。 著者らは、公立小学校においてSWPBSを導入し、約 1 年間取り組んだ成果を報告している。例えば月本ら (2017)によれば、取り組む前に比べて 1 年後、SLAQ とSDQの得点が有意に改善したことを報告しており、 また大久保ら(2017)は、シングルケースデザインを 用いて標的行動が改善したことを報告している。 本研究では、月本ら(2017)と大久保ら(2017)の 取り組みを継続し、 2 年間の取り組みの成果を検証す ることにより、SWPBSの長期的な効果を検討すること を目的とした。 2  方法 対象:公立小学校において平成 X 年から平成 X + 1 年 に実施した。対象校は X 年度は、児童263名、教職員 が25名であった。 X + 1 年度は、児童244名、教職員が 26名であった。また、両年度とも通常学級は 6 学年10 学級であり、特別支援学級は知的障害学級と自閉症・ 情緒障害学級が 1 学級ずつ存在し、合計 6 人の児童が 在籍していた。 ( 1 ) 学校目標マトリックス表の作成 X 年度に第 6 発表者が、小学校でSWPBSに関する研 修を教職員に対して60分程度行った。研修の内容は、 SWPBSの概要に加えて、3 項随伴性、学校目標マトリッ クス表と記録、賞賛と記録の重要性についてであっ た。その後、教職員のみの校内研修が行われ、教職員 の話し合いにより児童生徒に期待する学校目標 3 つ と、それを指導する場面が決定した。さらに、それぞ れの目標を達成するための具体的な行動が各場面ごと に決められ、学校目標マトリックス表が作成された。 校内研修の様子や学校目標マトリックス表の作成過程 は、教職員によってインターネット上の掲示板を用い て、発表者らに伝えられた。発表者らは、掲示板を通 し助言を行った。また、X + 1 年度には、教職員によっ て加筆修正された。 ( 2 ) 行動指導計画の作成 校内研修において教職員によって、学校目標マト リックス表の中で優先度の高い行動が選ばれ、行動の 指導手立てが話し合われた。その後、第 3 発表者が小 学校において、行動指導計画についての研修を60分程 度行い、教職員によって優先度の高い行動 5 つの指導 計画表が作成された。 X + 1 年度は、 X 年度とは異な る優先度が高い行動が学年ごとに選ばれ、 X 年度同様 に行動指導計画表が学年ごとに作成された。 ( 3 ) 行動指導計画の実行 行動指導計画に従って、教職員によって行動の指導 が行われた。 X 年度は、学校全体で同時に指導が開始 した。 X + 1 年度は 1 つの行動のみ学校全体で取り組 まれ、それ以外は学年ごとに各行動が指導され、その 後 3 つの行動が学校全体で取り組まれた。職員会議で 定期的に、行動の指導についての共通理解や調整、指 導状況の確認が行われた。また、掲示板を通して、指 導の状況や行動の記録が発表者らに伝えられた。行動 の記録については、発表者らがグラフ化し、掲示板を 通し教職員に提供した。 3  結果 S W P B S の 効 果 を 日 本 語 版 S c h o o l L i k i n g a n d A v o i d a n c e Q u e s t i o n n a i r e(S L A Q) と 日 本 語 版 Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を 修正したものを用いて検証した。SLAQは、学校肯定感 や学校回避感を測定する尺度であり、本研究では学校 肯定感のみを尋ねた。質問紙は、児童を対象に X 年度 5 月と 3 月(それぞれ X 年度前、 X 年度後とする)、 X + 1 年度 3 月( X + 1 年度とする)に実施した。分 析は、 1 要因の分散分析を行った。 SLAQの結果をFig 1. に、SDQの結果をFig 2. に示 す。SLAQと、SDQの困難性総合得点と下位項目の全て の項目で、SWPBS導入前の X 年度前より X + 1 年度の方 が、得点が有意に改善した。一方、ほとんどの項目に おいて X 年度前、 X 年度後、 X + 1 年度の順に点数は 改善したが、 X 年度前と後、また X 年度後と X + 1 年 度に有意差は見られなかった。 4  考察 月本ら(2017)は、SWPBSを導入し、 1 年間取り組 んだことによりSLAQとSDQの得点が改善し、児童の学 校肯定感や適応感、行動的・情緒的問題が改善したこ

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-31 183 -とを報告している。本研究では、 2 年間取り組むこと で 1 年間取り組んだ後の得点より改善は見られたが、 有意差は見られなかった。これより、日本の公立小学 校においてもSWPBSを導入することは効果的であり、 継続することで効果が維持されることが示唆された。 今後は、統制群を設定し比較することにより効果を厳 密に検討する必要がある。また、SWPBSを継続するた めの要因、例えば教員の同意や予算などのリソースに ついて検討する必要がある。さらに、今回SLAQやSDQ は、全児童が質問紙に回答するものであったため、 データの収集は 1 年に 1 回であった。今後は、さらに 短い期間でのデータの推移を観察するための指標を検 討する必要がある。 倫理的配慮 介入手続きを立案する際には、対象校の全教職員の 同意を得て決定した。また研究成果の公表に際して は、学校長と教育行政の責任者から口頭あるいは書面 による同意を得た。さらに、今回の発表にあたり、学 会が示している倫理に関する項目を全て満たしている ことを確認した。 文献 神山努,(2017).スクールワイドPBISの研究に関する 現状と課題. 障害科学研究, 41, 45-57.月本彈ら, (2017). 小学校におけるSWPBSの効果1. 第55回日本特 殊教育学会, 2017年 9 月.大久保賢一ら,(2017). 小 学校におけるSWPBSの効果2. 第55回日本特殊教育学 会, 2017年 9 月.(TSUKIMOTO Hazumu, ENOMOTO Daiki, OTSUI Kanako, TANAKA Yoshihiro, NODA Wataru, OHKUBO Kenichi,)

参照

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