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非意図的マインドワンダリングと非適応的機能との関連性

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-25 346

-非意図的マインドワンダリングと非適応的機能との関連性

○管 思清1)、立石 七海1)、高橋 徹1,2)、川島 一朔3)、熊野 宏昭4) 1 )早稲田大学人間科学研究科、 2 )日本学術振興会特別研究員、 3 )早稲田大学総合研究機構、 4 )早稲田大学人間科学 学術院 【目的】 マインドワンダリング (Mind Wandering; 以下MW) とは,現在行なっている課題や外部環境の出来事から 注意が逸れて思考をする現象である(Smallwood & Schooler, 2015)。 MWは,持続的な注意課題でのミスの増加(McVay & Kane ,2012),ネガティブな気分の随伴(Smallwood et al., 2009)といった非適応的機能を有する一方, 自 伝 的 プ ラ ン リ ン グ(B a i r d , S m a l l w o o d & Schooler,2011)といった適応的機能を有することが 報告されている。 近年,MWを意図的に行うかどうかという意図性を考 慮することの重要性が指摘されている。非意図的MWと 精神疾患の関連を検討した研究によると,非意図的MW の 発 生 頻 度 が 高 い 人 は, 注 意 欠 如 多 動 性 障 害 (Attention Deficit Hyperactivity Disorder; ADHD)

傾向と強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder; OCD)傾向が強いことが見られたが,意図的なMWの発 生頻度が高い人は,ADHD傾向とOCD傾向との相関関係 は見られなかったことが報告されている(Seli, P. et al.,2015; Seli, P. et al.,2016)。これらのこと から,意図的MWと非意図的MWは精神疾患の症状に及ぼ す影響が異なる可能性があると考えられる。また,意 図的MWは,非意図的MWより未来指向の内容が多いこと も明らかになっている(Seli et al.,2017)。そして, 意図的MWで生起した未来指向の内容は,自伝的プラン ニングに関連しているが,非意図的MWで生起した未来 指向の内容は,未来の出来事に対する心配に関連して い る 可 能 性 が あ る と 指 摘 さ れ て い る(Seli et al.,2017)。 MWと 抑 う つ に 関 す る 研 究 で は, 大 う つ 病 性 障 害 (Major Depressive Disorder; MDD)患者は健常者と 比べると,ポジティブ感情価よりネガティブ感情価の MWが多く,未来志向より過去指向のMWが多いという傾 向が示されている(Hoffmann et al., 2016)。しか し,MWにおける意図性を考慮して抑うつとの関連性を 検討することはまだ行われていない。特に,非意図的 MWは,抑うつ気分や心配や反芻といった非適応的機能 に関連している可能性があると考えられる。 そこで本研究では,非意図的MWと非適応的機能の関 連性を明らかにすることを目的とした。 【方法】 実験対象者 私立大学に在籍する大学生を対象とし,30名(男性 11名,女性19名;平均:23.5±4.5歳)を分析対象とし た。 質問紙

( a ) Depression and Anxiety Mood Scale (DAMS;福 井, 1997) 抑うつ性気分総合得点の測定

( b ) Rumination-Reflection Questionnaire 日本語版 (RRQ;高野・丹野, 2008) 反芻と省察の測定 ( c ) Penn State Worry Questionnaire 日本語版

(PSWQ; 本岡・松見・林, 2009) 心配の測定 ( d ) Self-rating Depression Scale 日本語版(SDS;

福田・小林,1983)抑うつ傾向の測定 実験課題

The sequential Sustained Attention to Response Task(数字順版SART :Seli et al.,2016)を実験課題 として用いた。数字順版SARTでは, 1 から 9 が数字の 順にパソコンの画面に呈示された。数字が250ms呈示 され,その後に注視点が900ms呈示されたため, 1 試 行は1150msで呈示された。実験協力者には, 3 以外の 数字が出たときに「スペースキー」を押して反応し, 3 が 出 た と き に は 反 応 を し な い よ う に 指 示 し た。 No-goエラー数,Go-trial反応時間(RTs)を課題パ フォーマンスの行動指標として測定した。また,課題 の途中で,MWの意図性,時間的指向性,感情価に関す る思考サンプリングが,900試行の間に20回ランダム なタイミングで呈示された。さらに, 9 試行の間に は, 2 回以上プローブが呈示されない設定で実施し た。 手続き 実験協力者には,質問紙に回答させた後に,実験課 題の説明を行い,18試行からなる練習課題を実施し た。練習課題においての理解度を確認した後,900試 行からなる本課題を実施した。 分析方法 本研究では,意図的に行われる課題に無関連な思考 を意図的MWとし,非意図的に行われる課題に無関連な 思考を非意図的MWと操作的に定義した。思考サンプリ ングにおいて,課題に集中したと回答されたデータを 除 外 し た。 そ の 結 果,MWし た と 回 答 さ れ た デ ー タ (N=334)が得られたため,それを用いて以下の分析を

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-25 347 -行 っ た。 各 種 類 のMW発 生 数 とNo-goエ ラ ー 数,Go-trial平均反応時間(RTs),DAMS,RRQ反芻,RRQ省察, PSWQ,SDSにおいてSpearmanの順位相関を算出した。 倫理的配慮 本研究は,「早稲田大学人を対象とする研究に関す る倫理委員会」の承認を得て行われた(承認番号: 2017-113)。 【結果】 1 .非意図的MWと非適応的機能 非意図的MW発生数はNo-go Errorsと弱い正の相関が 示され(ρ =.31,p <.10),Mean Go-trial RTsと中程 度の正の相関)が示され(ρ =.59,p <.01),RRQ(省 察 ) と 中 程 度 の 正 の 相 関 が 示 さ れ た(ρ =.51,p <.01)。意図的MW発生数は,No-go ErrorsとMean Go-trial RTsとの相関は示されなかった。 2 .未来指向の非意図的MWと非適応的機能 未来指向の非意図的MW発生数はMean Go-trial RTs と 中 程 度 の 正 の 相 関 が 示 さ れ(ρ =.50,p <.01), PSWQと の 間 に も 中 程 度 の 正 の 相 関 が 示 さ れ た(ρ =.41,p =.02)。 3 .ポジティブ感情価の非意図的MWと非適応的機能 ポジティブ感情価の非意図的MW発生数は,No-go Errorsと弱い正の相関(ρ =.37,p =.04),PSWQと弱 い正の相関が示された(ρ =.38,p =.04)。RRQ(反芻) と弱い正の相関(ρ =.32,p =.09)。 【考察】 本研究の結果,意図的MWは課題遂行ミスと反応時間 の増加に関連せず,非意図的MWは課題遂行ミスと反応 時間の増加に関連していることが示された。意図的MW は,戦略的に目前の簡易な課題から注意を逸らしてい る状態であることから,課題のパフォーマンスに影響 を及ぼさないと考えられる。一方で非意図的MWは,課 題遂行ミスと反応時間が増加することから,持続的注 意制御の失敗により生起しており,課題のパフォーマ ンスを妨害しやすいといった非適応的機能に関連して いると考えられる。 次に,非意図的MWは自己省察の主観指標に関連して いることが示された。実験課題で生起した非意図的MW は,過去指向かつネガティブの思考内容が多い(Guan et al,2018)。自己省察は現在の問題を理解しようと した上で,解決策を生み出すことができない時に,ネ ガティブで慢性的な自己反芻に移行しやすいと指摘さ れている(Miranda & Nolen-Hoeksema, 2007)。従っ て,非意図的MWで生起した過去指向かつネガティブの 思考内容は,自己省察をしようとするものの,本人が 意図せずにネガティブで慢性的な自己反芻に移行しや すいといった非適応的機能に関連する可能性があると 考えられる。 未来指向の非意図的MWは,課題反応時間の増加と心 配に関連していることが示された。先行研究では,非 意図的MWで生起した未来指向の内容が,未来の出来事 に対する心配に関連している可能性があると指摘され (Seli et al.,2017),本研究の結果と一致した。未来 指向の非意図的MWは,意図せずに目前の課題に無関連 な未来思考を行うことにより,病理的心配と関わりや すく,課題反応時間の増加といった非適応的機能に関 連すると考えられる。 ポジティブ感情価の非意図的MWは,課題遂行ミスの 増加と心配と反芻といった非適応的機能に関連してい ることが示唆された。先行研究では,ポジティブ感情 にも気分障害において果たす理論上の役割があると指 摘されている(Feldman et al. ,2008)。ポジティブ 感情価の非意図的MWでは,意図せずにポジティブ感情 の内容が生起した際に非適応的な自己注目をすること により,病理的心配と反芻と関わりやすく,課題遂行 ミスの増加といった非適応的機能に関連すると考えら れる。例えば,「自分の幸福が長く続かないこと」に 対する心配,「自分のような人間が幸せになってもい いのか」に対する反芻が挙げられる。 本研究の結果から,各種類の非意図的MWと非適応的 機能との関連性が示された。よって今後の研究では, MWの意図性に注目することが重要である。 最後に本研究の限界点を述べる。本研究の限界点と して,意図的MWと非意図的MWが主観報告法によって測 定されたため,被験者の認知バイアスが関わりやすい ことが考えられる。そのため,意図的MWと非意図的MW を区別できる客観指標が望まれる。

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