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分娩施設のない離島に住む母親の妊娠期・産褥期におけるセルフケア行動

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分娩施設のない離島に住む母親の

妊娠期・産褥期におけるセルフケア行動

The self-care activities of mothers who lives in remote locations without

childbearing facilities during gestation and childbirth

猪 目 安 里(Anri INOME)

*1

井 上 尚 美(Naomi INOUE)

*2

吉 留 厚 子(Atsuko YOSHIDOME)

*3 抄  録 目 的 分娩施設のない離島に住む母親の妊娠期・産褥期のセルフケア行動の実態を明らかにし,セルフケア 行動の特徴に合わせた保健指導を考える資料とする。 対象と方法 分娩施設のない離島に住む分娩後1年以内の母親9名を対象に,インタビューガイドに基づき,半構 造的面接法を用いてフォーカス・グループ・インタビューを行った。 結 果 分娩施設のない離島に住む母親は,妊娠期は【経験者やインターネットから情報収集】を行い,【家族 の協力を得ながら自分の体と胎児の為のセルフケア】を行っていた。また,《妊娠に伴う体調の変化に応 じて自ら病院を受診》,《自分で出血を観察しながらの対処行動》という【早めの対処行動と症状の観察】 と,《島の昔からの文化にならった食事を摂る》の【島に伝承された食文化にもとづいたセルフケア】と いう特徴があった。産褥期は【産後の回復に向けたセルフケア】を行っていた。《体調の変化に応じて早 期の常備薬の内服,病院受診》,《乳房トラブルに対して情報源にアプローチし,対応》する【異常症状 に対して行動・対応】,《産後の針仕事と水仕事はしてはいけない》,《母乳をたくさん出すために魚汁を 必ず飲む》という【島の昔からの文化にならったセルフケア】に特徴があった。 結 論 分娩施設のない離島に住む母親は,分娩施設がなく,産科医・小児科医が常駐ではない環境にあるか らこそ異常に移行しないようにしなければならないという強い思いから,異常症状を自身の感覚を通し て敏感に察知し,自ら判断・行動していた。分娩施設のない離島における妊産婦が安心・安全に妊娠期 ・産褥期を過ごすためには,島に伝承されているセルフケア行動も取り入れつつ,母親が身体の変化に 敏感になり,感覚を通して変化を察知できるように,医療従事者は正しい情報を与え,担保していくよ 2019年8月9日受付 2019 年12月29日採用 2020年5月29日早期公開

*1前鹿児島大学大学院保健学研究科(Former Kagoshima University Graduate School of Health Sciences) *2鹿児島大学医学部保健学科(Department of Health Sciences, Kagoshima University School of Medicine)

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うな関わりが必要かもしれない。

キーワード:離島,セルフケア行動,妊娠期,産褥期

Abstract Purpose

The purpose of this study was to examine the self-care activities of mothers who live in remote locations without childbearing facilities during gestation and childbirth so as to provide healthcare guidance in accordance with their established self-care activities.

Methods

We conducted a focus group interview and qualitative descriptive analysis with nine mothers, who live on remote islands without childbearing facilities, within one year of delivery. In the study, multigravidas (women who have been pregnant before) provided responses based on their experience of raising children.

Results

Mothers living on remote islands without childbearing facilities reported that they gathered information from the Internet or consulted experienced individuals during their pregnancies and practiced self-care for their bodies and fetuses with their families' assistance. They visited the hospital in response to changes in their physical condition, carefully observed bleeding, and ate meals in accordance with their cultural traditions. During the postpartum recovery period, they undertook traditional self-care, with a focus on responding to abnormal symptoms, taking home remedies at an early stage in response to changes in their physical condition, hospital visits, and investigating breast abnormal-ities. The cultural traditions reported include not doing needlework or working with water after childbirth, and drink-ing fish juice to increase breast milk output.

Conclusion

Mothers living on remote islands without childbearing facilities did not handle their own labor; however, as a result of a strong desire to avoid unnecessary travel and living in locations without resident obstetricians, they skill-fully detected abnormal symptoms and responded on their own. In order for women to undergo pregnancy and post-partum periods safely on remote islands without childbearing facilities, they must be able to sense changes them-selves, and should be provided with accurate information from doctors, public health nurses, and other healthcare professionals. In the future, the healthcare industry must be aware of these trends and should have an increased responsibility in providing relevant information to mothers in remote locations.

Key words: remote islands, self-care activities, gestation, puerperium

Ⅰ.緒   言

妊娠期は,正常な経過,胎児の成長発育のために 母体の健康管理は重要である。産褥期は新しい役割 を適切に果たすとともに,妊娠・分娩によって生じた 全身及び生殖器の復古を促し,体力と気力の充実をは かるための健康管理が重要である。特に,医療者の 管理下ではなく,日々の生活の中で妊婦・褥婦自身 が行うセルフケアが妊婦・褥婦の健康管理の中心と なる。 これまでの研究では,妊婦のセルフケア行動は内発 的動機づけにより実行されており,動機に影響する要 因が明らかにされている(眞鍋他,2006a;眞鍋他, 2000; 眞 鍋 他, 2001a; 眞 鍋 他, 2001b; 眞 鍋 他, 2002;眞鍋他,2001c;高津他,2013;植村他,2011) 海外においても同様の研究が行われている(Altfeld, et

al. 1997;Auerbach, et al. 2014;Hawkins, et al. 1998; Kost, et al. 1998;Lin, et al. 2009)。

産褥期のセルフケア行動については,妊娠中のセル フケア行動と産後の母親役割達成感との関連性,母乳 育児,乳房ケアに関する研究が行われ(原他,2007; 小西他,2010;小西他,2004;眞鍋他,2006b;村上 他,2008;岡田他,2013;吉留他,2006),セルフケ ア行動実施までの機序は明らかにされているが,妊婦 ・産婦の実際に行われるセルフケア行動についての質 的研究は,妊娠期は 2 件のみであり(國清他,2008; 高津他,2013),産褥期は研究されていない。 平成27年国勢調査によると,日本には416島の有人 離島があるが,産婦人科医がいる離島は 10 島のみで ある(平成 23 年離島振興課)。産科医・小児科医が不 足している現在,産科医療機関のない離島における周 産期医療の確保は難しい。産科医療機関のない離島に

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住む女性は,妊婦健康診査や分娩のために専門医が来 島するのを待つか,島外の医療機関を利用せざるを得 ず,容易に受療することができない環境にある。母子 ともに安全に周産期を過ごすために,母親の妊娠期・ 産褥期におけるセルフケア行動は,離島部では特に重 要である。沖縄の離島を対象とした調査では,「離島 のような容易に医療機関を利用できない環境において は,自分の身体は自分で管理し,守ろうという意識が 強くなる」ことが示されている(國清他,2008)が, その他の文献は見当たらない。 以上のことから,内発的動機づけや生活環境が特徴 的である離島に着目した。さらに,妊娠期・産褥期と もに,医療者は母親に正しい知識の提供,自己管理方 法の伝授,健康診査の必要性などの指導を行っている が,母親のセルフケア行動の実践には個人差があると いわれており,本研究は分娩施設のない離島に住む母 親の妊娠期・産褥期のセルフケア行動の実態について 明らかにし,セルフケア行動の特徴に合わせた保健指 導を考える資料とすることを目的とする。 〔用語の定義〕 1. 妊娠期のセルフケア行動:眞鍋らは「妊娠期の 心身の変化に適応し,分娩や育児期の準備のた めに実施することが望ましい日常生活上および 健康管理上の行動」と定義しており(眞鍋他, 2001b),本研究が考えるセルフケア行動に合致 するため,定義として用いることとする。 2. 産 褥 期 の セ ル フ ケ ア 行 動 : 真 鍋 ら の 妊 娠 期 の セ ル フ ケ ア 行 動 の 定 義 を 参 考 に(眞 鍋 他, 2001b),本研究では「産褥期の心身の変化に適 応し,健康回復や育児のために行っている日常 生活上および健康管理上の行動」と操作的に定 義する。

Ⅱ.研 究 方 法

1.研究デザイン 半構造的質的記述的デザイン 2.データ収集地 B島は,A 県本土から南に 380km の地点に位置し, 2019年の人口は 6975 人(11 月 1 日時点),年間出生数 は約50人である。病院1か所,診療所1か所を有して いるが,産科医・小児科医は常駐ではない。そのた め,母親は産科医が来島する週 4~5 日の間に妊婦健 康診査を予約し,健診を受けおり,産科医が滞在して いる間は産科医による診察を受けることができる。し かし,台風などの影響で産科医の滞在期間が短縮する こともあり,産科医が不在の場合は他科の医師による 診察を受けることもある。また,分娩は取り扱ってい ないため,診断書や医師の同乗が必要なく,飛行機や 乗船できる分娩予定日の約1か月前,妊娠37週迄には 分娩する病院の地域へ移動し,近くのウィークリーマ ンション等を借りて分娩待機をしなければならない。 移動手段としては飛行機が多く利用されている。 また,B島では20年ほど前までは地域で活動する開 業助産師がいたが,現在は島内にある病院に勤務する 助産師のみとなっている。病院の助産師は,看護師と して勤務しており,保健師が新生児訪問を行った際に 母親から乳房トラブルケアなどを依頼された時のみ助 産ケアを行っている。 3.データ収集方法 データ収集までの手続きは,A県B島の保健師の協 力を得て,B島に在住する分娩後1年以内の母親をリ ストアップした。対象者の選定条件は,1)胎児の異 常を指摘されていない,2)島外分娩をしている,3) 分娩後,B島の自宅に戻っており,分娩後1年以内で あることとした。ただし重度な精神疾患の既往がある 女性,心身ともに不安定であり,調査協力が対象に悪 影響を及ぼすと考えられる女性,死産・流産であった 場合は参加対象から除外した。次に,リストを基に, 保健師から対象者に研究依頼文を示し,研究参加の依 頼をし,内諾を得た。 インタビューは2017年2月に行った。調査日のイン タビュー前に再度,面接者より文章および口頭にて研 究の趣旨・内容を説明し,研究参加の意思の最終確認 を行い,同意書のサインを得た。 今回のデータ収集は,下記のインタビューガイドに 基づいて半構造的面接法を用いて Focus Group Inter-views(以下,FGI)で行った。FGI は,絶えず変化す る相互作用を通してデータを生み出し,互いの意見に 応えることで情報提供者の語りが広がることが期待で きるなどのメリットがある。本研究は,グループ間で 絶えず変化する相互作用によって,母親のセルフケア 行動についての語りが広がることを期待し,FGIを選 択した。

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1) 妊娠中,日頃から健康に良いと思い行動してい た内容とその動機 2) 妊娠中,異常と思った時に取り組んだ内容とそ の動機 3) 妊娠中,気を付けようと思ってもできなかった 内容とその理由 4) 分娩後,日頃から健康に良いと思い行動してい た内容とその動機 5) 分娩後,異常と思った時に取り組んだ内容とそ の動機 6) 分娩後,気を付けようと思ってもできなかった 内容とその理由 7) 全体を通して不安だったこと 面接はグループのプライバシーを保護できるように グループが入れる個室で行われた。インタビューは9 名の 1 グループに 1 時間半程度の面接を 1 回行い,対 象者の許可を得てボイスレコーダーに録音した。録音 された内容はすべて逐語的に記録し,分析資料とし た。 4.分析方法 録音された会話から逐語録を作成した。それらの文 章を,意味や内容を変えないよう一文に表したものを コードとし,各コードの共通点や相違点を比較してサ ブカテゴリを作成した。さらに,内容が類似している サブカテゴリを整理し,カテゴリを作成した。分析結 果の確証性を確認するために,研究者 3 名でディス カッションを行い,母性看護学・助産学を専門とする 教員2名からのスーパーバイズを受けた。 5.倫理的配慮 研究対象者に対して,研究目的及び内容,研究に参 加した場合の利益・不利益,自由意思による参加,個 人のプライバシーの保護と研究成果の公表,研究終了 後の資料・データ等の破棄方法を口頭及び文書で説明 し,書面にて同意を得た。また,本研究は鹿児島大学 医学部・臨床研究等倫理委員会の承認を得て行った (承認番号390)。

Ⅲ.結   果

対象者は,A県B島の保健師から紹介されたB島に 在住している分娩後1 年以内の母親9 名,平均年齢は 31.6歳であった(表1)。 1.分娩施設のない離島に住む母親の妊娠期における セルフケア行動 妊娠期におけるセルフケア行動は,【経験者やイン ターネットから情報収集】,【家族の協力を得ながら自 分の体と胎児の為のセルフケア】,【早めの対処行動と 症状の観察】,【島に伝承された食文化にもとづいたセ ルフケア】,の 4 カテゴリ,11 サブカテゴリが抽出さ れた(表2)。尚,結果の記述は,各カテゴリ【】,サブ カテゴリ《》,コード「」を用いて示した。 1)【経験者やインターネットから情報収集】 《年配者や島の経験者から情報収集》では,母親は 「年配者や島の経産婦から妊娠中に気を付けることを 聞いて参考にした」と,妊娠中の健康維持のために気 を付けることを,年配者や島の妊娠・分娩を経験した 人から話を聞き,参考にしていた。また,《インター ネットから妊娠中の過ごし方について情報収集》で は,「体を冷やさないための方法は病院からではなく 雑誌やインターネットから知った」,「インターネット で妊娠中に気を付けたほうが良いことを探した」と, 注意すべき内容や方法について,自らインターネット や雑誌を使って情報を得ていた。 2)【家族の協力を得ながら自分の体を胎児の為のセ ルフケア】 母親が,正常な妊娠経過,安全な分娩のために日常 生活の中で行うセルフケアの中でも,妊娠中によく言 われている行動を示した。 《体重管理と出産の体力づくりのために歩く》では, 「つわり後,体重が増えやすくなったため,畑の近く を歩いた」,「体重が増えすぎることはなかったが,出 産を乗切るための体力づくりとして歩いた」,「1 人目 の時は時間があれば歩いた」と,体重管理と出産に向 けた体力づくりのために歩いていた。中には,「ポケ 表1 対象者背景 年齢 出身地 出産回数 産後何か月 A 31 島内 3経産 9カ月 B 30 島内 2経産 3か月 C 37 島内 3経産 10カ月 D 25 島内 3経産 10カ月 F 29 島外 2経産 6か月 G 27 島外 初産 8カ月 H 36 島内 3経産 5カ月 I 35 島外 3経産 4カ月 J 35 島内 3経産 7カ月

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表 2 分 娩 施 設 のない 離 島 に 住 む 母 親 の 妊 娠 期 におけるセルフ ケア 行 動 【カテゴリ】 《サブカテゴリ》 コード 経 験 者 やインターネットから 情 報 収 集 年 配 者 や 島 の 経 験 者 から 情 報 収 集 年 配 者 や 島 の 経 産 婦 から 妊 娠 中 に 気 を 付 けることを 聞 いて 参 考 にした インターネットから 妊 娠 中 の 過 ごし 方 について 情 報 収 集 体 を 冷 やさないための 方 法 は 病 院 からではなくインタ ーネットや 雑 誌 から 知 った インターネットで 妊 娠 中 に 気 を 付 けた 方 が 良 いことを 探 した 刺 身 は 好 きだがインターネットで ダメと 書 いてあったため 食 べなかった 家 族 の 協 力 を 得 ながら 自 分 の 体 と 胎 児 の 為 のセルフケア 体 重 管 理 と 出 産 の 体 力 づくりのために 歩 く つわり 後 , 体 重 が 増 えやすくなった ため , 畑 の 近 くを 歩 いた 体 重 が 増 えすぎることはなかった が , 出 産 を 乗 り 切 るための 体 力 づくりとして 歩 いた 1 人 目 の 時 は 時 間 があれば 歩 いた ポケモン GO ® をきっかけに 体 力 づくりのために 歩 いた 1 人 目 の 時 は 自 分 の 母 親 の 体 重 増 加 が 多 く , 遺 伝 する と 聞 いた ため 食 べる ものは バ ラン ス を 考 えて , 野 菜 や 魚 中 心 にしていた 体 を 冷 やさないために 衣 類 と 飲 み 物 を 工 夫 寒 いときは 靴 下 の 2 枚 履 きや , 妊 婦 帯 をはめていた ( 着 用 していた ) 冷 たい 飲 み 物 は 極 力 飲 まないようにして , 常 温 のものを 飲 んだ 妊 婦 健 診 では 医 師 から 冷 たい 物 を 飲 まないよう に 言 われたため , 夏 場 でも 常 温 のものを 飲 んだ 妊娠 中 つわりがひどかった ため , 体 を 冷 やさないようにした 児 への 影 響 を 考 え 食 事 を 調 整 貧 血 があり 食 事 で 鉄 分 を 摂 るように 気 をつけた カフェインを 摂 りすぎないようにし た 重 たい 物 は 持 たないように 工 夫 子 どもは 立 って 抱 っこしないで , 座 って 抱 っこするようにした 重 たい 物 は 持 ってもらった 身 近 な 感 染 予 防 妊 娠 中 は 薬 が 安 易 に 飲 めないため , 人 ごみやスーパーでは 常 にマスクをして 感 染 予 防 した インフルエンザの 予 防 接 種 を 受 けた 猫 の 糞 にはトキソプラズマ がいるため 子 供 の 砂 場 遊 びでもなるべく 触 らない 花 植 え , 土 いじりはしない ように 言 われたためしなかった つわりがひどく 家 業 は 家 族 に 任 せて 自 宅 で 休 養 つわり がひどか ったが , 畑 仕事 の 手 伝 いは 姑 が 「 し なく ていいか ら 」 と 言 って 自 宅 でず っ と 寝 ていた 早 めの 対 処 行 動 と 症 状 の 観 察 妊 娠 に 伴 う 体 調 の 変 化 に 応 じて 自 ら 病 院 を 受 診 妊 娠 中 , つわりがひどかったため , 病 院 を 受 診 して 漢 方 をもらって 内 服 した 貧 血 がひどいときは 病 院 から 鉄 剤 をもらった 自 分 で 出 血 を 観 察 しながらの 対 処 行 動 島 では 出 産 ができないため , 出 血 には 敏 感 になり , 出 血 した 時 は 量 とか 色 をよく 観 察 した 島 は 産 科 医 が 常 勤 ではないた め , 出 血 があればよ く 観 察 し , 病 院 や 保 健 師 に 電 話 をして 対 応 を 聞 いた 島 に 伝 承 された 食 文 化 にもとづいたセルフ ケア 島 の 昔 からの 文 化 にならった 食 事 を 摂 るヤ ギ 肉 を 食 べてはいけない と 言 われたため 食 べなかった 子 どもの 髪 がよく 生 えるようにとわ かめをよく 食 べ , 海 藻 類 を 食 べさせられた

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モン GO® をきっかけに体力づくりのために歩いた」 と,携帯ゲームの配信をきっかけに歩き始めた者もい た。 《体を冷やさないために衣類と冷たい飲み物を工夫》 では,「寒いときは靴下の 2 枚履きや,妊婦帯をはめ ていた(着用していた)」と衣類に注意した体の冷え予 防と,「冷たい飲み物は極力飲まないようにして,常 温のものを飲んだ」,「妊婦健診では医師から冷たい物 を飲まないように言われたため,夏場でも常温のもの を飲んだ」など,冷たい飲み物に注意した体の冷え 予防を行っていた。「妊娠中,つわりがひどかったた め,体を冷やさないようにした」と,冷えによる体調 の変化を経験したことで,体の冷えに注意した者もい た。 《児への影響を考え食事を調整》では,「貧血があり 妊婦健診で指摘されたため,食事で鉄分を摂るように 気を付けた」と,妊娠に伴う貧血があり食事で鉄分を 摂るようにした,「カフェインを摂りすぎない」と,児 への影響を考え食事を調整していた。 《重たいものを持たないように工夫》は,「子どもは 立って抱っこしないで,座って抱っこするようにし た」,「重たい物は持ってもらった」とあり,日常生活 動作の中で重いものは持たないように意識し,周囲の 人の助けや子どもの抱っこは座ってするなど工夫をし ていた。 《身近な感染予防》では,「妊娠中は薬が安易に飲め ないため人ごみやスーパーでは常にマスクをして感染 予防した」,「インフルエンザの予防接種を受けた」と, 胎児への影響を考え,薬を安易に飲むことができない ため,日頃からインフルエンザなどの感染症に注意 し,マスクの着用や予防接種など身近にできる感染予 防を行っていた。「猫の糞にはトキソプラズマがいる ため子どもの砂場遊びでもなるべく触らない」,「花植 え,土いじりはしないように言われたためしなかっ た」と,子どもとの遊びの中でもトキソプラズマなど の感染症の予防に注意していた。 《つわりがひどく家業は家族に任せて自宅で休養》 は,「つわりがひどかったが,畑仕事の手伝いは姑が 『しなくていいから』と言って自宅でずっと寝ていた」 と,つわりのひどさに日常生活が難しい状態であった が,家族のサポートを受けて休養を取っていた。 3)【早めの対処行動と症状の観察】 分娩施設がないため,異常症状に敏感となり,早期 対応や自ら行動したというセルフケア行動を示した。 《妊娠に伴う体調の変化に応じて早めに病院受診》 は,「妊娠中,つわりがひどかったため(B 島の)病院 を受診して漢方をもらって内服した」,「貧血がひどい ときは(B島の)病院から鉄剤をもらった」と分娩施設 がないため,状態によっては島外への入院となること から,つわりや貧血のマイナートラブルなど妊娠に伴 う体調の変化に対して,病状が悪化する前に病院を受 診していた。 《自分で出血を観察しながらの対処行動》では,「B 島で出産できないため,出血には敏感になり,出血し た時は量とか色をよく観察した」,「B島は産科医が常 駐ではないため,出血があればよく観察し,病院や保 健師に電話して対応を聞いた」と,B島には分娩施設 がなく,島外施設での分娩に間に合わないことを絶対 に避けるために,異常症状として出血に敏感になり, 出血した際は自らよく観察をしていた。また,医療従 事者に助言を求め,その助言をもとに対応していた。 4)【島に伝承された食文化にもとづいたセルフケア】 妊娠に関して,B島で昔から言い伝えられている食 文化にもとづいたセルフケア行動を示した。 B島では,妊娠中の言い伝えとして昔から「(早産に なるため)ヤギ肉をたべてはいけないと言われたため 食べなかった」,「子どもの髪がよく生えるようにとわ かめをよく食べ,海藻類を食べさせられた」と食事に 関する文化があった。母親は妊娠中に島の人々から, 昔から言い伝えられている話を聞き,文化にならって 行動していた。 2.分娩施設のない離島に住む母親の産褥期における セルフケア行動 産褥期におけるセルフケア行動は,【産後の回復に 向けたセルフケア】,【島の昔からの文化にならったセ ルフケア】,【異常症状に対して行動・対応】,【経験を もとに母乳育児の対応】の4カテゴリ,8サブカテゴリ が抽出された(表3)。 1)【産後の回復に向けたセルフケア】 《姑や実母のサポートを受けてゆっくり休息》では, 「姑が家のことをしてくれた」,「実家では何もせずに ゆっくり過ごした」と,姑や実母のサポートを受ける ことで,産後の身体の回復のために休息をとってい た。島外出身の母親にとっては姑のサポートが強 かった。また,「母は元気でなくてはならないため食 事をしっかり摂った」と母親として体調を整える必要 性を考え,意識して食事をしっかり摂る者もいた。

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表 3 分 娩 施 設 のない 離 島 に 住 む 母 親 の 産 褥 期 のセルフケア 行 動 【カテゴリ】 《サブカテゴリ》 コード 産 後 の 回 復 に 向 けたセルフケア 姑 や 実 母 のサポートを 受 けてゆっくり 休 息 姑 が 家 のことをしてくれた 実家 で 何 もせずにゆっく り 過 ごした 母 として 自 分 の 健 康 を 保 つため 食 事 をしっかり 摂 る 母 は 元 気 でなくてはなら ないため 食 事 をしっかり 摂 った 島 の 昔 からの 文 化 にならったセル フケア 産 後 の 針 仕事 と 水 仕事 はしてはいけな い 「 産 後 が 針 仕事 と 水 仕事 はしてはいけない」 と 言 われ , 姑 がしてくれた 母 乳 をたくさん 出 すために 魚 汁 を 必 ず 飲 む 母 乳 がたくさん 出 るようにと , 島 で 飲 まれている 魚 汁 を 必 ず 飲 まされた 異 常 症 状 に 対 して 行 動 ・ 対 応 体 調 の 変 化 に 応 じて 早 期 の 常 備 薬 の 内 服 , 病 院 受 診 自 分 が 元 気 でない と 子 ど もたち をみる 人 がいな いため , 少 しでも 体 調 が 悪 いと , すぐ に 常 備 薬 を 飲 むようにした 病 院 へ 行 くべきか , 様 子 をみるべきか 分 からないときは 病 院 へ 行 った 島 は 知 り 合 いが 多 く 島 で 入 院 するこ とが 嫌 なた め , 体 調 が 悪 いと き は 早 期 に 病 院 受 診 をし て 対 応 した 乳 房 トラブルに 対 して 自 ら 情 報 源 に アプローチし , 対 応 餅 を 食 べるとすぐに 乳 房 が 張 ったため , お 餅 は 食 べない 乳 腺 炎 の 時 は 病 院 に 行 け ないため , 冷 え ピタとポカ リスエット を 飲 んで こまめに 着 替 えを した ネッ トで 乳 腺 炎 の 時 はな るべくくわ えさせた 方 が 良 いと あり , 赤 ちゃん にくわえさ せ て 乗 り 越 えた 母 乳 のことについては 健 診 を 受 けた 病 院 と 保 健 師 に 聞 いた 乳 腺 が 詰 まったと きは , イン ターネ ッ トで 調 べてキ ャ ベツ で 冷 や したり , 温 かい 物 を 飲 ん だ 経 験 をもとに 母 乳 育 児 の 対 応 第 1 子 の 経 験 をもとに 母 乳 育 児 の 対 応 1 人 目 は 泣 い ている 理 由 もわ からなか ったが , 3 人 目 になる と 何 で 泣 いてい るのかわ かるよ うになり , 必 要 以上 に 母 乳 をあげなかった 子 どもに 合 わせて 断 乳 ・ 卒 乳 1 人 目 の 時 は 子 どもが ご 飯 の 方 が 美 味 しく 好 んだ ため , 徐 々に 母 乳 の 量 を 減 らして 卒 乳 でき た 1人 目 の 時 は 母 乳 育 児 に 関 する 情 報 がな く 辛 か ったが , 2 人 目 は 赤 ち ゃんの 方 があっ さりと 卒 乳 してくれた 2 人 目 は 離 乳 食 を 好 んだため , 簡 単 に 断 乳 することができ た

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2)【島の昔からの文化にならったセルフケア】 B島には昔から,産後の言い伝えとして《産後の針 仕事と水仕事はしてはいけない》,《母乳をたくさん出 すために魚汁を飲む》という文化があった。「『産後は 針仕事と水仕事はしてはいけない』と言われ,姑が家 のことをしてくれた」と語られ,昔からの言い伝えと して針仕事は裁縫を指し,産後は目が疲れやすいた め,また水仕事は台所仕事を指しており,産後は子ど もの世話と最低限のことにとどめ休息が取るという理 由から,洗濯や裁縫は姑が行っていた。また,「母乳 がたくさん出るように,B島で飲まれている魚汁を必 ず飲まされた」と,母親は慣習として,産後はB島で 飲まれている魚汁は主体的に必ず飲んでいた。 3)【異常症状に対して行動・対応】 母親は,「自分が元気でないと子どもたちをみる人 がいないため,少しでも体調が悪いと,すぐに常備薬 を飲むようにした」,「病院へ行くべきか,様子を見る か分からないときは病院へ行った」と,産後の体調の 変化に対して敏感に反応していた。また,「島は知り 合いが多く島で入院することが嫌なため,体調が悪い ときはすぐに病院受診して対応した」と,B島の病院 では切迫早産などで入院することはできるが,島とい うコミュニティの狭さから,病院のスタッフや入院し ている患者は知り合いであり,ポータブルトイレの使 用など,母親は知り合いに介助をされることを嫌い, 症状が悪化する前に《体調の変化に応じて早期の常備 薬の内服,病院受診》を行っていた。 《乳房トラブルに対して自ら情報源にアプローチし, 対応》では,「餅を食べるとすぐに乳房が張ったため, お餅は食べない」,「乳腺炎の時は病院に行けないた め,冷えピタとポカリを飲んでこまめに着替えをし た」など,経験をもとに乳房トラブルの予防や対応を 行い,「ネットで乳腺炎の時はなるべくくわえさせた 方が良いとあり,赤ちゃんにくわえさせて乗り越え た」,「母乳のことについて健診を受けた病院と保健師 に聞いた」,「乳腺が詰まっときは,インターネットで 調べてキャベツで冷やしたり,温かい物を飲んだ」 と,自ら情報を得ることで対応していた。 4)【経験をもとに母乳育児の対応】 《第1子の経験をもとに母乳育児の対応》では,「1人 目は泣いている理由もわからなかったが,3人目にな ると何で泣いているのかわかるようになり,必要以上 に母乳をあげなかった」と,第 1子ではわからなかっ たことが第2子からはわかるようになり,円滑に母乳 育児を行うことができるようになっていた。《子ども に合わせて断乳・卒乳》では,「1人目の時は子どもが ご飯の方が美味しく好んだため,徐々に母乳の量を減 らして卒乳できた」,「1 人目の時は母乳育児に関する 情報がなく辛かったが,2人目は赤ちゃんの方があっ さり卒乳してくれた」,「2人目は離乳食を好んだため, 簡単に断乳することができた」と,子どもの離乳食へ の移行に合わせて断乳・卒乳を行っていた。

Ⅳ.考   察

分娩施設のない離島に住む母親の妊娠期・産褥期に おけるセルフケア行動は,8カテゴリと19サブカテゴ リにより構造化された。本結果から(1)情報はイン ターネットを活用し医療従事者に確認,(2)家族のサ ポートと島に伝承されたセルフケア行動,(3)分娩施 設のない離島に対する思いとセルフケア行動,という 3つの特徴があると考えられた。 1)情報はインターネットを活用し医療従事者に確認 母親は,身近な日常生活に関する内容を,インター ネットを使用し自ら情報収集を行い,得た情報と異常 症状について保健師や来島する産科医に確認していた。 妊婦の情報収集についての報告では,情報収集源とし てインターネットが最上位であるが,情報の有効性・ 信用性については医師や助産師が上位であることが明 らかにされている(小山田他,2014;田中他,2017; 吉野他,2012)。母親が情報源としてインターネット を選ぶ理由には,医療従事者から情報を得るためには 病院を受診という手間と時間がかかること,妊婦健診 時に相談する時間が十分でないことがある(田中他, 2017)。B島においては,産科医・小児科医が常駐では なく,常時専門医から情報を得ることができないため, 身近な自己管理については,必要な時に欲しい情報が 手に入るインターネットが選ばれ活用されていたと考 えられる。また,情報の信頼性の確認では,母親は語 りの中で相談する医療従事者として保健師を挙げてお り,B島は医師が常駐ではないため,常に相談できる 母子保健に携わる保健師が,母親が正確な情報を得る ための相談者としての役割と担っていたと考えられる。 日本では,19世紀からインターネットが普及し,現 在ではパソコンやスマートフォンから簡単に情報を得 ることができる。必要な時に知りたい情報を得ること ができるという点では,インターネットは便利である が,セルフケア行動に関する情報は飽和しており,中

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には医学的根拠はなく,医療従事者からみて適切な内 容ばかりではないことが危惧されている。すぐに医療 機関を受診できないような環境にある妊産婦にとっ て,市町村に設置されている保健所,保健センターに 常駐する看護師,保健師は一番身近な医療従事者であ り,妊産婦が得た情報,行っているセルフケア行動を 確認し,正しい情報を与え,支援していくことで,効 果的なセルフケア行動につながると考えられる。 2)家族のサポートと島に伝承されたセルフケア行動 母親は家族やB島の人々からの情報的サポートと手 段的サポートを受けていた。情報的サポートには「妊 婦は早産になるためヤギは食べてはいけない」,「母乳 をたくさん出すためには産後に魚汁を飲むことがよ い」,「産後は針仕事と水仕事をしてはいけない」と, 島で昔から伝承されている文化にならったものであ り,島の特徴と考えられる。國清ら(2008)の調査で も,離島の女性は,島の経験者から知恵の伝承を受け ながら,情報が自分に当てはまるか,自分にとって必 要か不必要かを判断した上で実際に生活の中に生かし ていた。古来より妊娠・出産について,知恵に基づく 多くの伝承や習慣があるが,その価値は伝承されにく い現状にある。人は成長に応じですでに社会に用意さ れている様式を模倣して学習していくが,離島では島 独特の文化があり,島全体のコミュニティの強さと外 部からの影響を受けにくいという環境から,生活の中 で培った知恵が伝承されやすいと考えられる。本研究 では,母親 9 名のうち 6 名は B 島出身であり,幼いこ ろからB島の文化に触れており,言い伝えを受け入れ やすく,母親自身が得た情報を有用であると判断した ため,言い伝えを守り,行動に移したと推測される。 また宗像(1996)は,「本来,人は自ら保健行動を行 う動機を強め,負担を軽減しようとする力を持ち,周 りからのサポートを得ながら,本人が動機と負担のバ ランスをとり保健行動を実行する」(p. 3)と述べてい る。母親が保健行動変容を行い持続していくために は,周りからのサポートは重要であり,母親は家族の 中でも姑のサポートがセルフケア行動を促進していた と考えられる。このことから,医療従事者は地域で伝 わるセルフケア行動が適切であるかを評価し,適切で あるものは取り入れ,周囲のサポートを有効に取り入 れられるよう援助していく関わりが考えられる。 3)分娩施設のない離島における医療に対する思いと セルフケア行動 対象者は,《妊娠に伴う体調の変化に応じて自ら病 院を受診》や,《自分で出血を観察しながらの対処行 動》など,身体の異常症状に対して自ら早期対応する という特徴がみられた。背景には,分娩施設がなく, 島外施設での出産に間に合わないことを避けるため や,B島内の病院であっても島のコミュニティの狭さ から入院することを嫌うことが挙げられた。また,母 親の語りの中では,分娩施設がなく,産科医・小児科 医も常勤ではないため現状に対して「離島であるため しょうがない」と思いながらも,「B島で入院中も産科 医が不在になるため不安」,「産科医不在の場合,専門 医に診てもらえないことへの不安」などの不安を持っ ており,常に異常に移行するかもしれないという危機 感を持つことで,自ら判断・行動し自分で自分の身体 を管理しなければならないという意識につながってい たと考えられる。國清ら(2008)の調査でも,本研究 と同様の結果が得られており,自分の身体の変化を敏 感に察知し,日ごろから異常へ移行しないための予 防,変化や異常症状に対して自ら判断・行動する姿 は,離島の女性ならではの特徴であると考えられる。 宗像(1996)は保健行動シーソーモデルを用いて, 人はどのような状態の時に保健行動を実施するかにつ いて説明している(図 1)。モデルは両側に「動機」と 「負担」があり,自己決定によってバランスが決まる。 「動機」が「負担」より重い状態のときに保健行動を実 行され,「動機」が重くなるには,①「負担」を軽くす る,②「動機」自体が重くなる,という 2 つの場合が ある。本研究に照らし合わせると,分娩施設がないか らこそ,正常であるために,異常症状を自身の感覚と して敏感に察知し,悪化させないために自分で状態の 良し悪しを判断・早期対応をしなければならないとい う思いが,強い「動機」となっていた。また,家事や 育児などの「負担」は,実母や姑のサポートにより軽 減されることで,「動機」が重くなり,セルフケアの実 行・持続につながっていたと考えられる。B島の母親 は,環境に対する不安などの思いに加え,分娩施設が なく,産科医・小児科医が常駐ではない環境で異常に 移行しないように,身体の変化に敏感になり,自ら対 応しなければならないという動機付けが一層強いこと が特徴と考えられる。このことから,医療従事者は, 離島における妊産婦に対して,個人のセルフケアに対 する意識を評価し,離島特有の島外病院との距離的問 題や,利用できる医療資源の問題から,日常的なセル フケア行動に加え,異常症状に対しての具体的な観察 内容や対応についても伝授していく必要が考えられる。

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Ⅴ.本研究の限界と今後の課題

本研究のデータは後ろ向き調査によるものであり, 分娩後1年程度経過した対象者では妊娠期・産褥期に おけるセルフケア行動について語られなかった内容も あると考えられる。また,対象者は経産婦が多く,内 容が経産婦に偏っていることが考えられる。 今後は,他島の対象者を調査していき,医療機関を 容易に利用することができない離島・へき地における セルフケア行動の実態をさらに明らかにし,妊娠期・ 産褥期におけるセルフケア行動に影響する要因の分析 やセルフケア行動を高めるための支援について検討し ていく必要がある。

Ⅵ.結   論

分娩施設のない離島に住む母親は,妊娠期・産褥期 に必要なセルフケア行動について,経験者やイン ターネットから情報を得て行っていた。セルフケア行 動の中には,島に伝承されてきた内容が島の特徴とし て挙げられた。また,母親は分娩施設がなく,産科医 ・小児科医が常駐ではない環境にあるからこそ異常に 移行しないようにしなければならないという強い思い から,異常症状を自身の感覚を通して敏感に察知し, 自ら判断・行動しており,離島に住む女性の特徴と考 える。分娩施設のない離島でも女性が安心・安全に妊 娠期・産褥期を過ごすためには,島に伝承されている セルフケア行動を取り入れつつ,母親が身体の変化に 敏感になり,感覚を通して変化を察知できるように, 医療従事者は正しい情報を与え,担保していくような 関わりが必要かもしれない。 利益相反 本論文内容に関し開示すべき利益相反の事項はな い。 文 献

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参照

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