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MSD 2010年10月号 (立ち読み)

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特集 神経疾患とニューロイメージング

脊髄損傷モデルの

拡散MRI

Diffusion MRI in spinal cord injury model

疋島 啓吾

1,2)

・藤吉 兼浩

1,3)

岡野 栄之

1)

1)慶應義塾大学医学部生理学教室  2)(財)実験動物中央研究所 3)慶應義塾大学医学部整形外科教室

Key Words: spinal cord injury, common marmoset, diffusion tensor tractography, q-space imaging 疋島 啓吾(ひきしま けいご) 2003年東京都立保健科学大学保健科学 部卒業。東京大学医学部付属病院放射 線部,産業技術総合研究所人間医工学 研究部門勤務。'07年慶應大学医学部生 理学教室特別研究助教,実験動物中央 研究所室長代理兼務。'08年首都大学東 京 保健科学博士。研究テーマ:小動物 MRI,拡散MRI,q-space imaging ■はじめに 近年の画像診断機器の発達は,磁気共鳴画像法 (magnetic resonance imaging: MRI)システムの高磁 場化においても目を見張るものがある。マウスや ラットなど実験小動物を対象とした研究用MRIは, 7テスラという高い静磁場強度が主流となり,11.7 テスラもの超高磁場システムも提供されるように なった。静磁場強度に比例して画像の信号対雑音 比も大きくなるため,ラットのように脳体積が小 さな実験動物においても十分なMRI画質が確保さ れ,脳機能や神経走行を可視化する先進的なMRニ ューロイメージングの適用が広がりつつある。 われわれの目的はヒトの脊髄再生であり,げっ 歯類と比べて神経解剖的にヒトと近縁であること, ヒトの脊髄損傷の病態に近いことから霊長類であ るコモンマーモセットを対象に研究を実施し1) 脊髄損傷の病態や治療の効果判定に7テスラの高磁 場MRIを用いている。コモンマーモセットは,そ の体重が300〜500 gとラットのサイズと同程度で あるため,ラット用の比較的ボアの小さな高磁場 装置を使用可能であり,同時に高い傾斜磁場シス テムを適用できることから高分解能画像を得るこ とができる。 しかし,脊髄は大脳に比し小さく,体動や脳脊 髄液の拍動によるアーチファクト,磁化率アーチ ファクトの問題が影響しやすいことから,依然と して再現性の高い計測が困難である。我々は,マ ーモセットが全身麻酔の下,磁化率の影響を最小 限にするための計測法を用い,特別に設計された 頭部固定装置付きアクリルベット上に固定し,さ らに画像を制御して取得するため心電図同期を実 施している。これらの工夫の結果,高い画像分解 能で損傷脊髄のMRI画像を取得することが可能と なった(図1)。図1のようにconventionalなMRIで は損傷の局在を十分評価できるが,一方,脊髄損 傷の病態解明と治療効果判定を目的とした場合に はさらなる病理組織学的な情報が必要であり,そ ■Keigo Hikishima1,2), Kanehiro Fujiyoshi1,3), Hideyuki Okano1)

1)Departments of Physiology, Keio University school of medicine 2)Central Institute for Experimental Animals 3)Departments of Orthopedics, Keio University school of medicine

磁気共鳴画像装置(MRI)の高磁場化,傾斜磁場の高度 化により,実験小動物を対象とした基礎医学研究にお いても,先進的なニューロイメージング法の適用が広 まりつつある。中でも生体内の拡散現象を基に神経走 行を可視化するDiffusion tensor tractography(DTT)は 生きたままに軸索の状態を評価可能とし,さらに細胞 サイズを定量するq-space imaging(QSI)といった組織 学的なMRI手法も提案されている。本稿では,マーモセ ットの脊髄損傷におけるDTTの有用性とQSI法を用いた 今後の研究展開について紹介したい。

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7 (1039) れ ら を 反 映 し た 新 た な 計 測・解析法が求められた。 本稿では,神経走行を可 視 化 す る Diffusion tensor tractography (DTT)を用いた 脊髄損傷の解析について概 説し,さらに,細胞構造を 定量するq-space imagingを 用いた脊髄損傷研究につい て紹介する。 ■拡散テンソルトラクト グラフィ 組織内の水は,細胞膜の ように運動を制限する組織形状に起因して3次元的 な拡散分布を示す。特に白質のように神経軸索が 密な場所において,水分子の空間的なふるまいは 軸索の方向に沿った異方性を形成する。Diffusion tensor imagingはこの拡散異方性を楕円体モデルを 用いて解析する方法であり,DTTはその主軸を追 跡することで神経走行を可視化する方法である2) われわれはサル脊髄損傷に対するヒト神経幹細 胞移植の有用性を報告してきた1)。最近では,安 全性の高いマウス由来の人工多能性幹細胞(iPS細 胞)を髄鞘形成不全マウスであるシバラーマウス の損傷脊髄に移植し,機能回復を認めたことを報 告したところである3)。移植細胞による脊髄再生 メカニズムはまだ不明な点が多いが,脊髄の再生 を評価する上で軸索の評価は必須である。従来は 大脳皮質の運動野にBDAなどのトレーサーを注入 し,組織学的に評価せざるを得なかったが,臨床 応用を見据えているわれわれは非侵襲的なDTTに 着目し,トレーサーにかわる軸索評価が可能であ るかどうかを検討してきた。われわれは,コモン マーモセットの皮質脊髄路(corticospinal tract: CST) 図1 マーモセット脊髄圧挫損傷モデルにおける経時的MRI 同一動物において,損傷前,頸髄損傷(C5/6椎体高位17g)後 1日,3日,7日,14日後にT2強調MRI(冠状断像)にて観察。 図2 マーモセット 錐体交叉における拡 散テンソルトラクト グラフィ 交叉性神経構造を有 する錐体交叉におい て,橋腹部と上位脊 髄 側 索 に ROIを 設 定 し,錐体交叉を通過 する脊髄皮質路を描 出することに成功し た。FA mapにおける 各軸位像レベルにお いて,super imposeし たトラクトグラフィ が,CaMKⅡα染色, LFB染 色 像 で 示 さ れ る解剖学的な下降性 投射路の位置と一致 している。(文献4) り引用,一部改変)

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特集 神経疾患とニューロイメージング

パーキンソン病と

ニューロイメージング

Neuroimaging of Parkinson's disease

鎌形 康司

1)

・君塚 孝雄

1)

本井 ゆみ子

2)

・服部 信孝

2)

1)順天堂大学放射線医学講座

2)順天堂大学大学院医学研究科神経学講座

Key Words: パーキンソン病,MRI, DTI,SPECT,PET 鎌形 康司(かまがた こうじ) 2007年3月順天堂大学医学部卒業。'07 年4月順天堂浦安病院研修医。'09年3月 同病院研修終了。'09年4月順天堂大学 放射線科入局。研究テーマ:パーキン ソン病のMRI ■はじめに パーキンソン病(以下PD)はアルツハイマー病 についで2番目に頻度の高い神経変性疾患であり, その病理の中核は黒質などの神経細胞変性とLewy 小体の出現である。 PDのニューロイメージングはstructual imaging (形態学的画像)とfunctional imaging(機能画像) に分けることができる。現在に至るまで,PDの病 態生理やメカニズムを評価する上で,もっぱら SPECTやPETなどfunctinal imagingが重要視され, CTや従来のMRIなどStructual imagingではPDの特異 所見はないと言われていた。しかし近年,拡散強 調像(以下DWI),拡散テンソル画像(DTI)や3D-T1強調像を用いたVoxel-based Morphometry(以下 VBM)など新たなMRI技術によって,PDの形態学 的な変化を捉えることが可能となってきている。 従来のstructual imaging,functional imagingに加えて, DTI,VBMなど最近の知見も交えて記述する。 ■従来のMRIによるstructual imaging PDの病理学的特徴は黒質緻密部や青班核のメラ ニン含有細胞の脱落,迷走神経背側核の神経脱落 で,残存する神経細胞にLevy小体が出現する。肉 眼病理では黒質緻密部や青班核の脱色として認識 することができるが,通常のMRIで萎縮や信号変 化を捉えるのは困難であり,従来のMRIで異常を 指摘できないことがPDの特徴とも言うこともでき る。感度,特異度はそれほど高くないが病態を反 映するような従来から記載のある所見が幾つかあ り,以下にそれらのMRI所見を挙げる。 1)黒質緻密層の萎縮 T2強調像軸位断像で赤核と黒質網様質,大脳脚 の間隙を便宜的に黒質緻密層の幅として計測する1) (図1-A)。本病ではこの実測値及び中脳内での比 率がともに狭小化を認める。しかし他のパーキン ソニズムでもみられ,また画像と病理が一致しな いこともある。 2)被殻のT2強調像における低信号化 OlanowらによるとT2強調像でパーキンソン症状 の患者の45%が被殻に低信号域を認め,鉄集積に よるものであると考えられ,この変化は被殻の後 外側部(病理的ドーパミン低下の著明部分)に強 調されるという報告もHauserらによってされてい る2)(図1-B,図2)。

■Koji Kamagata1), Takao Kimiduka1), Yumiko Motoi2), Nobutaka Hattori2) 1)Department of Radiology, Jyuntendo university school of medicine

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11 (1043) ■Functional imaging In vivoで人体の神経伝達機能を視覚化し,局所 血流,代謝,受容体結合能を評価できることが SPECT,PETなど核医学検査の特徴である。PETは 局所血流,代謝,受容体結合能すべてを評価する ことができ,SPECTは感度が劣るが,局所血流と受 容体結合能を評価することができる。 1)脳血流シンチグラフィ(SPECT) 脳血流シンチグラフィにより局所脳血流の評価 が可能であり,脳血流異常の分布や程度を知るこ とができる。PDでは前頭葉内側部と後頭葉3)で, 多系統萎縮症,晩発性小脳変性症及びMachardo-Joseph diseaseでは小脳,皮質基底核変性症では中 心溝近傍の皮質や線条体,進行性核上性麻痺では 中脳,前頭葉,線条体に低下を認めることが多く, 臨床的にパーキンソニズムを呈する疾患鑑別のた めに補助診断として用いることができる。 2)18FDG PET 脳はブドウ糖をエネルギー源として活動してお り,糖代謝を測定することにより,脳の活動を間 接的に評価することができる。18FDGは細胞内に取 り込まれヘキソキナーゼによりリン酸化されると 代謝が止まり,脳組織に蓄積する。この性質を利 用して脳糖代謝の定量測定や脳機能評価に利用さ れる。 パーキンソニズムを呈する変性疾患ではそれぞ れ特徴的なFDG-PET所見がある。しかし,PDの FDG-PET所見は特徴に乏しく,関心領域を用いた 検討では統一見解がなかった。レビー小体型認知 症で後頭葉のブドウ糖代謝の低下が知られている が,最近のSPMや3D-SSPなど統計画像解析を使用 した報告では,PDでも後頭葉のブドウ糖代謝が低 下していることが報告された4) 3)ドーパミン代謝イメージ i )ドパミンシナプス前イメージ <脳ドーパミントランスポーターシンチグラフィ (SPECT)> 123I-β-CITあるいは 123I-FP-CITを投与すると血液脳 関門を通過し,ドパミントランスポータと結合す る。ドパミントランスポータは主として,線条体 ドパミン系ニューロシナプス前の細胞膜に存在し, シナプス間隙に放出されたドパミンの再取り込み を行っている。したがって,これら薬剤により PETの18F-FDOPA同様にシナプス前機能が評価でき る。パーキンソン病では症状のない時期から線条 体においてドパミントランスポーターが低下する ため,早期診断に用いることができる5)。これに 対して,本態性振戦では低下しないため,鑑別診 断に用いることができる(図3)。 <18F-DOPA(PET)> PETでシナプス前機能を評価するためには18 F-DOPAを用いて,ドパミン代謝を評価する方法が ある。PDではドパミン作動性神経細胞の低下によ り線条体でのドパミン分泌が低下する。初期は背 側被殻から低下し,尾状核や腹側被殻は比較的保 図1 A: T2強調像軸位断像(PD),B: T2強調像軸位断像(PD) 図2 A: T2強調像軸位断像(健常者),B:T2強調像軸位断 像(健常者) T2強調像軸位断像で赤核と黒質網様質,大脳脚の間隙を 黒質緻密層の幅として計測すると健常者(図2-A)に比 べPD患者(図1-A)で黒質緻密層は狭小化している。T2 強調像軸位断像(図1-B)で左被殻の後外側部に低信号 域が認められる。健常者(図2-B)では見られない。  A B

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特集 神経疾患とニューロイメージング

小児急性脳症と

ニューロイメージング

Neuroimaging in acute encephalopathy in children

高梨 潤一

1)

・多田 弘子

2)

1)亀田メディカルセンター小児科  2)千葉県済生会習志野病院小児科

Key Words: Encephalopathy, ANE, AESD, MERS 高梨 潤一(たかなし じゅんいち) 1988年千葉大学医学部卒業。2001年 UCSF神経放射線科,'02年放射線医学 総合研究所 客員協力研究員。'05年より 現職。'10年東邦大学医療センター佐倉 病院放射線科 客員教授。研究テーマ: 小児神経放射線,特に急性脳症,変性 代謝疾患 ■急性脳症の概要 急性脳症は,病理学的には非炎症性浮腫を主体 とし,意識障害,けいれん,異常言動・行動など の脳機能障害を呈する症候群である。小児では感 染を契機とするものが多い。 感染性脳症の病原体は種々であるが,インフル エンザウイルス,ヒトヘルペスウイルス6型 (HHV-6),ロタウイルスの頻度が高い。病態は感染を契 機とした免疫反応やサイトカインにより神経細胞 の代謝異常をきたしていると推定される。 インフルエンザ脳症,HHV-6 脳症と起因病原体 により呼称されることが多い。しかし,各々単一 の疾患ではなく複数の臨床・画像症候群の集合体 で あ る 。 症 候 群 と し て 急 性 壊 死 性 脳 症 (acute necrotizing encephalopathy of childhood [ANE]),出 血性ショック脳症症候群,二相性けいれんと遅発 性拡散能低下を呈する急性脳症 (二相性脳症, acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion [AESD],けいれん重積型急性脳症 を含む), Reye症候群,可逆性脳梁膨大部病変を 有する脳炎・脳症 (clinically mild encephalitis/ encephalopathy with a reversible splenial lesion [MERS])などに分類される。本稿では日本の小児 に特有な二つの脳症,ANE,AESDに加え,MERS について解説する。 ■急性壊死性脳症 (ANE) ANE は Mizuguchi らにより提唱された小児期の 急性脳症であり,病変が両側の視床を含む特定の 脳領域に左右対称性に生じる1)。東アジアの乳幼 児に好発し,欧米にはごくまれである。ANE発症 に先行して発熱を伴うウイルス感染症が認められ, インフルエンザ,突発性発疹 (HHV-6, 7感染症), ロタウイルス腸炎の頻度が高い。「サイトカインの ■Jun-ichi Takanashi1), Hiroko Tada2)

1)Department of Pediatrics, Kameda Medical Center

2)Devision of Pediatrics, Chibaken Saiseikai Narashino Hospital

急性脳炎の診断は,病理学的な炎症の3所見(グリア 増殖,血管周囲の白血球・マクロファージ浸潤,神経 細胞変性壊死)をもってなされる。急性脳症は脳浮腫 を主体とし炎症所見を欠くものとされる。感染以外に, 低酸素,高血圧,代謝異常(肝不全,高アンモニア血 症,尿毒症など)などが原因となりうる。感染に伴う 急性脳症は日本の乳幼児に好発し,インフルエンザ脳 症,ヒトヘルペスウイルス6型脳症と起因病原体により 呼称されることが多い。しかし,各々単一の疾患では なく複数の臨床・画像症候群(病態分類)の集合体で ある。画像所見が決め手となる以下の3つの脳症:① 急性壊死性脳症 (ANE),②二相性けいれんと遅発性拡 散能低下を呈する急性脳症 (AESD),③一過性脳梁膨大 部病変を有する脳炎・脳症 (MERS) について概説する。

参照

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