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一. 中 国 最 新 法 令 (2016 年 3 月 中 旬 ~2016 年 4 月 中 旬 公 布 分 ) 1. 中 央 法 規 1 (1) 中 華 人 民 共 和 国 慈 善 法 主 席 令 第 43 号 2016 年 3 月 16 日 公 布 2016 年 9 月 1 日 施 行 1 背 景

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TMI 中国最新法令情報

―(2016 年 4 月号)―

TMI 総合法律事務所

〒106-6123 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23 階 TEL: +81-(0)3-6438-5511 E-mail: chinalaw@tmi.gr.jp 〒200031 上海市徐匯区淮海中路 1045 号 淮海国際広場 2606 室 TEL: +86-(0)21-5465-2233 〒100020 北京市朝陽区朝外大街乙 12 号 昆泰国際大厦 2412A 室 TEL:+86-(0)10-5925-1200 皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。 お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事 の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下 さい。バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、 併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/china/index.html) 目次 一.中国最新法令 1. 中央法規 (1) 中華人民共和国慈善法 (2) 流通分野商品品質監督管理弁法 (3) 財政部、税関総署、国家税務総局のクロスボーダー電子商取引小売輸入税政策に関す る通知 二.連載 中国企業法実務/第九弾:刑事法 (第 7 回 刑事訴訟法) 三.中国法務の現場より 1. 税制改正による現場レベルでの影響 2. 「外国 NGO 法」の成立による各種団体への影響について

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一.中国最新法令(2016 年 3 月中旬~2016 年 4 月中旬公布分)

1.中央法規 (1) 中華人民共和国慈善法1 主席令第 43 号 2016 年 3 月 16 日公布 2016 年 9 月 1 日施行 ① 背景 汶川大地震後、国民のチャリティー意識が大幅に高まり、慈善事業が前例のない発展 を遂げてきた。社会における寄付の総額は、2006 年の 100 億元未満からいまの 1,000 億 元前後に達した2 しかし、その一方で慈善事業の発展とともに、郭美美事件3、ジェット・リーワン財団 及び嫣然天使基金等タレントが設立した基金が疑問視される事件が相次ぎ、慈善事業に 対する不信感も高まってきている。 このような背景のもとで、2016 年 3 月 16 日に、中華人民共和国慈善法(以下「慈善 法」という。)は、数年の検討を経て、漸く第 12 期全人代第 4 回会議にて可決された。 ② 主な内容 ア 慈善法の適用範囲について 自然人、法人及びその他の組織が慈善活動及び慈善に関する活動を行う場合、慈善 法が適用される4 ここにいう慈善活動とは、自然人、法人及びその他の組織が財産を寄付したり、役 務を提供したりする等の方法で、自らの意思により、展開する次のような公益活動の ことをいう5 (a) 貧困扶助 (b) 老人、孤児、患者、障碍者を助け、軍人及びその家族に優遇を与えること (c) 自然災害、事故又は公衆衛生事件等突発事件による損害に対して救助すること (d) 教育、科学、文化、衛生、体育等の事業を促進すること (e) 汚染とその他の公害を防止し、エコシステムを保護し、改善すること (f) 慈善法が規定するその他の公益活動 イ 慈善組織について (a) 慈善組織の定義とその設立手続の明確化 慈善組織とは、法律により設立され、慈善法の規定を遵守し、社会に対して慈善 活動を行うことを目的とする非営利的組織のことをいう。慈善組織は、基金会、社 会団体、社会サービス機関等の組織形態をとることができる6 1 《中华人民共和国慈善法》 2 关于《中华人民共和国慈善法(草案)》的说明——2016 年 3 月 9 日在第十二届全国人民代表大会第四次会 议上 3 2011 年 6 月 21 日に、ユーザ名を「郭美美 Baby」とする女性が、weibo.com で大きな別荘に住み、マセラ ティを持つ 20 歳の女の子であると自称し、且つその認証された身分が「中国赤十字商業総経理」であるこ とにより、中国赤十字に対する不信感を引き起こした事件である。 4 慈善法第 2 条 5 慈善法第 3 条 6 慈善法第 8 条

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慈善組織の設立条件として、慈善活動の展開を目的とすること、営利を目的とし ないこと、自己の名称と住所を持つこと、定款を有すること、必要な財産を有する こと等が挙げられている7 慈善組織を設立する場合、県以上の人民政府の民政部門に登記を申請する必要が あり、民政部門は申請を受理した日から 30 日以内に決定しなければならない。慈善 法が公布される前に既に設立された基金会、社会団体、社会サービス機関等の非営 利的組織は、その登記した民政部門に慈善組織の認定を申請することができ、民政 部門は申請を受理した日から 20 日以内に決定しなければならない8 (b) 慈善組織の行動規範と内部統制に関する規制 慈善組織の発起人、主要寄付者及び管理者は、その関連関係を利用して、慈善組 織、受益者の利益と社会公共の利益を侵害してはならない9 慈善組織は国家安全と社会公共の利益に危害をもたらす活動を援助したり、法律 法規と社会倫理に違反する条件を付す寄付を受けたり、受益者に法律法規と社会倫 理に違反する条件を付したりしてはならない10 慈善組織の清算後の残余財産は、慈善組織の定款に基づき、同じ又は類似の目的 の慈善組織に譲渡しなければならない。定款に規定がない場合、民政部門の指導に より、同じ又は類似目的の慈善組織に譲渡し、且つ公告しなければならない11 (c) 慈善組織の情報開示義務の強化 慈善組織は、社会に対して、定款と意思決定、執行、監督機関のメンバーの情報 及び国務院の民政部門が開示を要求するその他の情報を開示しなければならない12 慈善組織は、毎年その登記を行った民政部門に年次報告書と財務報告書を提出しな ければならならず、報告書には、当年度の募金状況と寄付状況、慈善財産の管理使 用状況、慈善プロジェクトの実施状況及び慈善組織の従業員の賃金福祉状況を含ま なければならない13。情報の開示は、真実性、完全性及び適時性を保証しなければ ならない14 また、国家秘密、商業秘密、プライバシーに関する情報、及び寄付者、慈善信託 の委託人が氏名、名称、住所、連絡方法等の情報の開示に同意しない場合、これら の情報を開示してはならない15 ウ 慈善募金16と慈善寄付について (a) 公開募金資格について 慈善組織が公開募金を行う場合、公開募金資格を取得しなければならない。法に 基づき登記して満 2 年の慈善組織は、その登記した民政部門に公開募金資格を申請 7 慈善法第 9 条 8 慈善法第 10 条第 1 項、第 2 項 9 慈善法第 14 条第 1 項 10 慈善法第 15 条 11 慈善法第 18 条第 3 項 12 慈善法第 72 条第 1 項 13 慈善法第 13 条 14 慈善法第 71 条 15 慈善法第 76 条 16 中国語では“募捐”。金銭に限らず財物の寄付を募ることを意味する(慈善法第 21 条)。但し、日本語 で適切な単語がないため、本稿では、財物の寄付を募ることを、便宜上「募金」と記載する。

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することができ、当該慈善組織の内部統制が健全であり、且つ運営が規範化してい れば、民政部門は公開募金資格証書を発行しなければならない。法律、行政法規の 規定により、登記の日から公開募金を行うことができる基金会と社会団体について、 民政部門は、直接、公開募金資格証書を発行することができる17 (b) 公開募金の方法と要求について 慈善組織は、公共の場所で募金箱を設置したり、社会公衆に対して、チャリティ コンサート、チャリティー競技会、チャリティーセール、チャリティー展示会、チ ャリティーオークション、チャリティーパーティー等の方法で募金したりする場合、 その登記した民政部門の管轄地域内で行わなければならない。もしその登記した民 政部門の管轄地域外で行う必要がある場合、その募金活動を行う地域の県以上の人 民政府の民政部門に届出を行わなければならないが、他方、寄付者の寄付行為には、 地域的制限がない18。慈善組織は、インターネットで公開募金する場合、国務院の 民政部門の統一の又は指定する慈善情報プラットフォームを通じて募金情報を発信 しなければならず、且つ同時に自己のウェブサイトで募金情報を発信することがで きる19。そして、公開募金を行う際には、募金目的、募金期間・地域、責任者氏名 と連絡先、寄付受付方法、銀行口座、受益者、募金の用途、経費や余剰財産の処理 等について募金方案を作成し、民政部門に届け出る20。その上で、公開募金の活動 現場又は活動媒体の目立つ場所に、組織名称、公開募金資格証書、募金方案、連絡 先、募金情報問い合わせ方法等を掲示しなければならない21 なお、公開募金資格を有しない組織又は個人は、慈善目的に基づき、公開募金資 格を有する慈善組織と提携することができるが、その場合には、慈善組織が公開募 金を実施し、かつ寄付された財物を管理する22 (c) 特定の対象に対する募金について 慈善組織は、特定の対象に対して募金を行う場合、発起人、理事会メンバーと会 員等特定の対象に対して行うものとし、且つ募金対象者に対して募金の目的、募集 した金品の用途等を説明しなければならない23。この場合、公開募金の方法をとる ことができない24 (d) 寄付契約について 慈善法は、詐欺的な慈善を防止するための対策を入れている。寄付者は寄付契約 に基づいて寄付義務を履行しなければならない。寄付者が寄付契約に違反して、期 限を過ぎても寄付財産を交付せず、且つ次の一つに該当する場合、慈善組織又はそ の他寄付を受ける者は、寄付財産の交付を請求することができる。寄付者が交付を 拒否する場合、慈善組織とその他寄付を受ける者は、人民法院に支払命令を申立て、 17 慈善法第 22 条 18 慈善法第 23 条第 2 項 19 慈善法第 23 条第 3 項 20 慈善法第 24 条 21 慈善法第 25 条 22 慈善法第 26 条 23 慈善法第 28 条第 2 項 24 慈善法第 29 条

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又は訴訟を提起することができる25 (i) 寄付者がラジオ、テレビ、新聞、インターネット等のメディアを通じて、寄付 を約束した場合 (ii) 寄付財産を貧困扶助、老人、孤児、患者、障碍者を助け、軍人及びその家族に 優遇を与える活動、自然災害、事故又は公衆衛生事件等突発事件による損害へ の救助活動に使用するものとし、且つ書面の寄付契約を締結した場合 もっとも、慈善法は、例外を規定している。すなわち、寄付者が公開で寄付を約 束し、又は書面の寄付契約を締結した後に、経済状況が著しく悪化し、その生産経 営又は家庭生活に重大な影響を及ぼした場合、公開で寄付を約束し、又は書面で寄 付契約を締結した地の民政部門に報告し、且つ社会に対して公開で事情を説明した 上で、寄付義務の履行を免れることができる26 エ 慈善信託について 慈善信託とは、委託人が慈善の目的で、法によりその財産を受託人に委託し、受託 人は委託人の意思に基づき、受託人の名義で管理・処分し、慈善活動を行う行為のこ とをいう27 (a) 慈善信託の届出制度 慈善信託を設立するためには、受託人と監査人を確定し、かつ、書面でこれを行 わなければならない。受託人は、慈善信託文書締結後 7 日以内に、関連の書類を受 託人所在地の県以上の人民政府の民政部門に届け出るものとする28 (b) 受託人の範囲について 委託人は、その信頼する慈善組織又は信託会社を慈善信託の受託人に選任するこ とができる29。慈善信託の受託人が信託義務に違反し、又は職責を履行することが 困難である場合、委託人は受託人を変更することができる30 。 (c) 受託人と監査人の義務について 慈善信託の受託人は信託財産を管理・処分する場合、信託目的に基づき、職責を 尽くし、信義則を守り、慎重に管理しなければならない31。慈善信託の委託人は必 要に応じて、信託監査人を選任することができる。信託監査人は受託人の行為につ いて監督し、法に基づき、委託人と受益者の権益を守る32 オ 慈善財産について (a) 慈善財産の分配禁止 慈善組織の財産は、定款と寄付契約に基づき、全て慈善目的に使用しなければな らず、発起人、寄付者及び慈善組織のメンバーの間で分配してはならない。また、 如何なる組織や個人も、慈善財産を分配、流用、留置、又は横領してはならない33 25 慈善法第 41 条第 1 項 26 慈善法第 41 条第 2 項 27 慈善法第 44 条 28 慈善法第 45 条第 1 項 29 慈善法第 46 条 30 慈善法第 47 条 31 慈善法第 48 条第 1 項 32 慈善法第 49 条 33 慈善法第 52 条

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(b) 慈善財産を利用した投資について 慈善組織は、財産の価値の維持・増加のために、投資を行う場合、適法性、安全 性と有効性の原則を守るとともに、投資で取得した利益を全て慈善目的に使用しな ければならない。慈善組織の重大な投資方案については、意思決定機関構成員の三 分の二以上の同意を得なければならない。また、慈善組織の責任者と従業員は、慈 善組織が投資した企業における兼任又は報酬の取得を行うことができない34 35 (c) 慈善組織の支出と管理費について 慈善組織は、積極的に慈善活動を行い、十分且つ効率的に慈善財産を使用し、管 理費用は最も必要な支出に限る原則を遵守し、節約を励行し、不必要な経費を削減 しなければならない。公開の募金資格を有する基金会が慈善活動に使用する年度支 出は、前年度の総収入の 70%又は過去 3 年間の平均収入の 70%を下回ってはならな い。また、年度管理費は同年度総支出の 10%を超えてはならない。特別な状況によ り、年度管理費を上記規定の通りに抑えることができない場合、民政部門に報告し、 且つ社会に対して公開で事情を説明しなければならない。公開募金資格を有する基 金会以外の慈善組織が慈善活動を行うための年度支出と管理費の基準は、国務院の 民政部門が国務院の財政、税務等の部門と共同で上記の原則に基づいて規定する。 寄付契約で単独の寄付財産に関する寄付活動の支出と管理費について約定がある場 合、それに従うものとする36 カ 慈善役務について (a) ボランティアの募集について 慈善組織は、慈善役務のためにボランティアを募集する場合、慈善役務に関する 全ての情報を開示し、役務提供過程におけるリスクを告知しなければならない37 (b) ボランティアに関する記録について 慈善組織は、ボランティアについて実名で登録し、ボランティアの役務提供時間、 内容、それに対する評価等の情報を記録しなければならない。更に、慈善組織は、 ボランティアの要望に応じて、無償で事実通りのボランティアの役務提供記録証明 を発行しなければならない38 (c) ボランティアの権益について 慈善組織は、ボランティアの年齢、教育程度、技能と健康状況に応じて、ボラン ティアを役務に参加させなければならない39。慈善組織は、ボランティアが役務に 参加するために必要な条件を提供し、ボランティアの合法的な権益を守らなければ ならない。慈善組織は、ボランティアを危険のある慈善役務に参加させる前に、ボ ランティアのために、傷害保険に加入しなければならない40 34 慈善法第 54 条第 1 項 35 これらの具体的な事項については、国務院民政部門によって規定が置かれることとなる(慈善法第 54 条 第 2 項) 36 慈善法第 60 条 37 慈善法第 64 条第 1 項 38 慈善法第 65 条 39 慈善法第 66 条 40 慈善法第 68 条

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キ 慈善事業の促進に関する措置について (a) 慈善組織、寄付者と受益者の税制上の優遇措置41 (b) 貧困扶助の慈善活動に対して特別の優遇政策42 (c) 企業の慈善寄付支出が法律の規定する企業所得税の課税所得計算時に控除できる 当年度分を超えた場合、その後の 3 年間に繰り越すことができる43 (2) 流通分野商品品質監督管理弁法44 国家工商行政管理総局令第 85 号 2016 年 3 月 17 日公布 2016 年 5 月 1 日施行 ① 背景 近年、オンラインショッピングが盛んになり、オンラインショッピングにおける商品 の品質問題が多発している。工商部門は新対策を次々と出し、インターネット等の方法 により販売する商品の品質に対する監督を強化し、オンラインショッピング消費者の権 益を守るように力を入れている。 流通分野商品品質監督管理弁法(以下「弁法」という。)は、まさにその新対策の一つ である。弁法は、オンラインとオフラインの監督を同時に行い、店舗販売とそれ以外の 販売ルートを全て監督の範囲内に入れ、オンラインとオフラインの品質検査を同時に行 い、検査結果についても、オンラインやオフラインに関わらず、同一基準を適用するよ うにしている。 ② 主な内容 ア 販売禁止商品の明確化 販売者は、次の商品を販売することができない45 (a) 人の健康と生命、財産安全を保障する国家基準、業界基準を満たしていない商品 (b) 商品又は商品の包装に表示されている製品基準を満たさない製品、商品説明及び 現物サンプルなどをもって明確にされている品質状況に合致しない商品、具備すべ き使用性能を具備していない商品 (c) 国が明文をもって取扱いの廃止を命じ、且つ販売を禁止する商品 (d) 生産地を偽装した商品、他人のメーカー名、メーカー所在地を偽装し、又は不正 使用した商品、認証マーク等の品質マークを偽造し、又は不正使用した商品 (e) 機能を喪失した商品、変質した商品 (f) 製造年月日を改ざんした商品 イ 販売者の義務について 弁法は販売者の義務について規定している。例えば、販売者の販売する商品の使用 機能に瑕疵があり、強行法規に違反しない場合、販売者は、商品、包装又は販売場所 の目立つところに、「処分品」、「不良品」、「規格外品」等と明記し、且つ公告等の方法 で、商品の瑕疵又は実際の品質状況を事実通りに説明する義務がある46 。 41 慈善法第 79 条乃至第 82 条 42 慈善法第 84 条 43 慈善法第 80 条第 1 項 44 《流通领域商品质量监督管理办法》 45 弁法第 10 条 46 弁法第 12 条

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ウ 工商部門の監督管理について (a) 工商部門は、抜き取り検査を主な監督方法とする47 (b) 各地の工商部門の間の通報制度についても規定している48 (c) 工商部門は、行政指導を行い、アドバイス、インタビュー、模範例を示す等の方 法で経営者を合法的且つ規範化した経営に導くことができる49 エ 販売者に対する処罰の軽減について50 (a) 商品の品質に関する違法行為による危害の結果を自発的に除去・軽減し、商品取 下げ等の措置を採り、又は積極的に消費者との紛争を解決する販売者に対しては、 処罰を軽減するものとする。 (b) 販売する商品が販売禁止商品であることを知らないことについて、充分な証拠を もって証明でき、且つ事実通りに商品の供給源を説明した販売者に対しては、処罰 を軽減することができる。 (3) 財政部、税関総署、国家税務総局のクロスボーダー電子商取引小売輸入租税政策に関 する通知51 財関税〔2016〕18 号 2016 年 3 月 24 日公布 2016 年 4 月 8 日施行 ① 背景 近年、中国では、クロスボーダー電子商取引が盛んに行われている。公平に競争する 市場環境を作り、クロスボーダー電子商取引の健全な発展を促進するために、財政部、 税関総署、国家税務総局のクロスボーダー電子商取引小売輸入租税政策に関する通知(以 下「通知」という。)は、これまでの行郵税を調整し、クロスボーダー電子商取引小売輸 入租税政策を実施することにした。 行郵税とは、非貿易性の入国物品に対して、関税・増値税・消費税を合わせて徴収す る総合輸入税のことをいう。その税率は、総じて同じ種類の輸入貨物にかかる総合税率 より低くなっている。 クロスボーダー電子商取引小売輸入品は、郵便で輸入されているとは言え、非貿易性 の書類伝票、乗客の別送手荷物、友人等からの贈り物等と違い、その取引には貿易の性 質があり、行郵税のみを徴収すると、全体的の税負担が国内で販売する同類の一般貿易 輸入貨物と国産の貨物の税負担より軽くなり、競争が不公平になる。そこで、通知は、 クロスボーダー電子商取引小売輸入品について、貨物として、関税と輸入時の増値税、 消費税を徴収することにした。 ② 主な内容 項目 概要 税目52 クロスボーダー電子商取引小売輸入品は、貨物として関税及び輸入に係 る増値税、消費税を徴収する。 47 弁法第 3 条 48 弁法第 26 条 49 弁法第 28 条 50 弁法第 34 条 51 《财政部、海关总署、国家税务总局关于跨境电子商务零售进口税收政策的通知》 52 通知第 1 条

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上限53 クロスボーダー電子商取引小売輸入品の 1 回の取引上限は人民元 2,000 元で、個人の年間取引上限は人民元 20,000 元とする。 税率54 上限値以内で輸入したクロスボーダー電子商取引小売輸入品は、関税税 率を暫定的に 0%とし、輸入に係る増値税、消費税は、徴収免除を取り 消し、暫定的に法定納税額の 70%により徴収する。 1 回で上限値を超える取引、累計後に個人の年間取引上限を超える 1 回 の取引、及び 1 回の課税価格が 2,000 元の上限値を超える 1 件の分割で きない商品は、全て一般貿易方式に基づき全額課税する。 課税価格55 実際の商取引価格を課税価格(貨物小売価格、運賃及び保険料を含む。) とする。 納 税 義 務 クロスボーダー電子商取引小売輸入品を購入する個人を納税義務者と する56 クロスボーダー電子商取引小売輸入品の購入者(注文者)の身分情報は、 認証を行わなければならない。認証を行わない場合、購入者(注文者) の身分情報は、支払人と一致しなければならない57 代 理 徴 収・代理納 付義務者58 電子商取引企業、電子商取引プラットフォーム企業又は物流企業を代理 徴収・代理納付義務者とすることができる。 ポ ジ テ ィ ブ リ ス ト と 適 用 範 囲59 今回の租税政策は、海外から輸入した、「クロスボーダー電子商取引小 売輸入品リスト」の範囲内に属し、且つ取引・支払・物流電子情報の「3 証憑」の照合が実現でき、若しくは「3 証憑」の情報を提供できる商品 に適用する。 クロスボーダー電子商取引小売輸入品に属さない個人物品及び「3 証憑」 の情報を提供できないクロスボーダー電子商取引小売輸入品は、現行規 定により執行する。 返品60 クロスボーダー電子商取引小売輸入品は、税関通過の日から 30 日以内 に返品する場合、税還付を申請することができ、且つこれに応じて個人 の年間取引総額を調整する。 (呉燕・中国法顧問) 53 通知第 3 条 54 通知第 3 条 55 通知第 1 条 56 通知第 1 条 57 通知第 5 条 58 通知第 1 条 59 通知第 2 条 60 通知第 4 条

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第 7 回 刑事訴訟法

1.背景 本連載の第 7 回となる今月号では刑事訴訟法について紹介する。 刑事訴訟法は、中国の憲法に基づいて制定された、刑事訴訟に関する手続法であり、且 つ、基本法でもある。 刑事訴訟法は、1979 年 7 月 7 日に公布、1980 年 1 月 1 日に施行された後、1996 年 3 月 17 日および 2012 年 3 月 14 日の二回にわたって改正が行われており、直近の改正法は、2013 年 1 月 1 日より施行されている。 刑事訴訟法は犯罪懲罰と人権保障を制定目的としており、おおまかに、①刑事訴訟にお ける主管機関の権利及び義務、②刑事訴訟における当事者等の権利及び義務、③刑事訴訟 の原則、規則及び制度、④刑事訴訟における証拠の収集及び使用の規則及び制度、⑤刑事 訴訟の手続について詳細な規定を設けている。 今回は、刑事事件における主管機関、強制措置、公訴事件の手続の概要について条文に 沿って簡単に紹介する。 2.各刑事手続における主管機関 刑事手続の各段階における主管機関について、刑事訴訟法はそれぞれ以下のとおり定め ている。 すなわち、刑事事件に対する捜査、拘留、逮捕の執行及び予備審問は公安機関61が、犯 罪事実の調査摘発、逮捕の承認、検察が直接に受理した事件の捜査及び公訴の提起は人民 検察院62が、裁判は人民法院が行うとされており63、法律に特段の定めがある場合を除き、 その他のいかなる機関、団体及び個人も、これらの権力を行使する権限を有しない。 3.強制措置 刑事訴訟の順調な進行を保証するため、公安機関、人民検察院及び人民法院は、法律に 61 日本における警察に該当する。 62 日本における検察に該当する。 63 刑事訴訟法第 3 条第 1 項

二.連載 中国企業法実務

第九弾:刑事法(第 7 回/全 8 回)

第 1 回 2015 年 10 月号 中国刑法の特徴 第 2 回 2015 年 11 月号 刑法総則 第 3 回 2015 年 12 月号 刑法各論 1 第 4 回 2016 年 1 月号 刑法各論 2 第 5 回 2016 年 2 月号 刑法各論 3 第 6 回 2016 年 3 月号 刑法各論 4 第 7 回 2016 年 4 月号 刑事訴訟法 第 8 回 2016 年 5 月号 治安管理処罰法

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基づき、犯罪被疑者又は被告人の人身自由を制限し、又は、剥奪する強制措置をとること ができる。ここにいう強制措置として、刑事訴訟法上、勾引、保釈、居住監視、逮捕、拘 留64 が定められており、その概要は以下のとおりとなっている。 種類 内容 勾引65 公安機関、人民検察院又は人民法院が、身柄を拘束されていない被 疑者又は被告人に対し、強制的に尋問を受けさせる方法である。 被疑者又は被告人が取り調べに召喚されたにもかかわらず、正当な 理由がなく応じない場合、公安機関、人民検察院又は人民法院は、 勾引を行うことができる。 なお、勾引の継続時間は通常 12 時間を超えてはならない。重大且 つ複雑な事件で逮捕措置を講じる必要がある場合、勾引時間を 24 時間まで延長することができる。但し、連続勾引の形式によって形 を変えて被告人を拘束してはならない66 保釈67 68 刑事訴訟の過程において、公安機関、人民検察院又は人民法院は、 犯罪被疑者又は被告人が捜査、公訴提起、裁判から逃避することを 防ぐため、以下のいずれかに該当する被疑者又は被告人に対して、 保証人の提供又は保証金の支払を命じることができる。保釈は、公 安機関が執行する。また、保釈期間は長くても 12 ヶ月を超えては ならない69 70 ①保護観察もしくは拘役又は独立して適用する付加刑に処される 可能性があるとき ②有期懲役以上の刑罰に処される可能性があるが、保釈の措置を講 じても社会的危険性が生じないとき ③重い疾病に罹り、自ら生活することができない者、又は妊娠しも しくは自己の嬰児に授乳している女子について、保釈の措置を講 じても社会的危険性が生じないとき ④拘束期間満了時に、事件がなお完了しておらず、保釈の措置を講 じる必要があるとき 64 「逮捕」及び「拘留」は、いずれも被疑者又は被告人の身柄を拘束する強制措置であるが、拘留は現行 犯又は重大な被疑者の身柄を一時的に拘束して、拘留期間内に逮捕するかどうかを決定するための強制措置 で、緊急的な場合に行われるものであるのに対し、逮捕は犯罪事実を証明する証拠がある場合に行われるも のである。拘留が逮捕の前段階となるという点においては、日本の刑事訴訟法にいう「逮捕」と「勾留」に 類似する点もあるが、概念としては全く異なっている。意味を重視して、中国語の“拘留”を「逮捕」、中 国語の“逮捕”を「勾留」と和訳することもあるが、本稿では混乱を避けるため、中国語の用語をそのまま 用いている。 65 刑事訴訟法 64 条(勾引の原文は“拘传”) 66 「中華人民共和国刑事訴訟法」の適用に関する最高人民法院の解釈(《最高人民法院关于适用《中华人 民共和国刑事诉讼法》的解释》法釈〔2012〕21 号)第 115 条 67 刑事訴訟法 65 条(保釈の原文は“取保候审”) 68 被告人だけでなく、被疑者の段階でも保釈が認められている。 69 刑事訴訟法 77 条 70 保釈が認められた被疑者又は被告人には、居住地を離れてはならない等、法律上の義務を負う(刑事訴 訟法 69 条)。

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居住監視71 人民法院、人民検察院及び公安機関は、逮捕の条件に合致し、次の いずれかに該当する被疑者又は被告人に対して、許可なく住所又は 居所を離れてはならないことを命じ、その行動を監視、制限する居 住監視を行うことができる。居住監視は、公安機関が執行する。ま た、居住監視の期間は長くても 6 ヶ月を超えてはならない72 ①重い疾病に罹り、自ら生活することができないとき ②妊娠し又は自己の嬰児に授乳している女子 ③自ら生活することができない者の唯一の扶養者であるとき ④事件の特殊な情況又は事件処理の必要により、居住監視措置を講 じることがより適切であるとき ⑤拘束期間満了時に、事件がなお完了しておらず、居住監視措置を 講じる必要があるとき また、保釈の条件に合致するが、被疑者又は被告人が保証人を提供 することができず、かつ保証金も納付しない場合は、居住監視を行 うことができる73 逮捕74 犯罪事実が存在することを証明する証拠があり、懲役以上の刑罰に 処する可能性がある被疑者又は被告人に対し、保釈を講じても、な お下記の社会的危険性の発生の防止に十分でない場合は、逮捕しな ければならない75。被疑者又は被告人の逮捕は、人民検察院の承認 又は人民法院の決定を経なければならず、公安機関がこれを執行す る76 ①新たな犯罪を行う可能性があるとき ②国の安全、公共の安全又は社会秩序に危害を及ぼす現実的な危険 性があるとき ③証拠を毀滅し、偽造し、証人の証言を妨害し、又は通謀して虚偽 の供述をするおそれがあるとき ④被害者、通報者、告訴人に打撃報復を行うおそれがあるとき ⑤自殺又は逃走を企てるとき また、犯罪事実の存在を証明する証拠があり、10 年の有期懲役以上 の刑罰に処する可能性がある場合、又は、犯罪事実の存在を証明す る証拠があり、懲役以上の刑罰に処する可能性があり、過去に故意 71 刑事訴訟法 72 条(居住監視の原文は“监视居住”) 72 刑事訴訟法 77 条 73 刑事訴訟法第 72 条第 2 項 74 刑事訴訟法第 78 条 75 刑事訴訟法第 79 条 76 刑事訴訟法第 78 条

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犯罪を行ったことがあり、もしくは身元が明らかでない場合は、逮 捕しなければならない77 保釈が認められ、又は居住監視を命じられた被疑者又は被告人が保 釈又は居住監視に関する規定に違反し、情状が重大である場合は、 これを逮捕することができる78 拘留79 現行犯又は重大な容疑者が次のいずれかに該当する場合は、公安機 関は直ちに拘留することができる。公安機関において、被逮捕者に ついて逮捕の必要があると認めるときは、拘留後3 日以内に、人民 検察院に承認審査を請求しなければならないとされており80、人民 検察院は、自ら受理する事件の被疑者又は被告人を拘留する権限を 有する。拘留期間は通常 14 日を超えてはならず、人民検察院はか かる拘留期間内に被拘留者を逮捕するかどうかを決定しなければ ならない。逮捕する必要がない場合は、直ちに被拘留者を釈放しな ければならない81 ①現に犯罪を準備し、犯罪を実行しているか、犯行直後に発見され た者 ②被害者又は現場の目撃者によって、犯人であると認定された者 ③身辺又は住所で犯罪証拠が発見された者 ④犯行後に自殺もしくは逃亡を企て、又は逃亡中である者 ⑤証拠を毀滅し、もしくは偽造し、又は通謀して虚偽の供述をする おそれがある者 ⑥真実の氏名又は住所を述べず、身元が明らかでない者 ⑦放浪中に犯罪を引き起し、何回も罪を犯し、又は集団的犯罪を行 う重大な疑いのあるとき 4.刑事訴訟の手続 (1) 立件82 公安機関、人民検察院又は人民法院は、事件の届出、告訴、告発及び自首の資料につ いて、管轄範囲に従い、迅速に審査をしなければならず、犯罪事実があり、刑事責任を 追及する必要があると認める場合は、事件を立件しなければならない。他方、犯罪事実 がなく、又は犯罪事実が著しく軽微であり、刑事責任を追及する必要がないと認める場 合は、立件せず、その理由を告訴人に通知する。告訴人は、不服がある場合は、不服審 査を申し立てることができる。 77 刑事訴訟法第 79 条第 2 項 78 刑事訴訟法第 79 条第 3 項 79 刑事訴訟法第 80 条。中国語では“拘留”という文字を用いる。 80 刑事訴訟法第 89 条第 1 項 81 刑事訴訟法第 165 条 82 刑事訴訟法第 110 条(立件の原文は“立案”)

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(2) 捜査83 公安機関は、すでに立件された刑事事件について、捜査をし、被疑者の有罪又は無罪 及び罪の軽重に係る証拠資料を収集し、取り寄せなければならない。現行犯又は重大な 容疑者に対しては、法に基づき直ちに拘留することができる。逮捕条件に合致する被疑 者に対しては、法に基づき逮捕しなければならない。検察機関が直接に受理する事件の 捜査は検察機関が行う。 主な捜査の種類 内容 被疑者の取調べ 捜査官は、被疑者の取調べに当たり、まず被疑者の犯罪行為の有 無を取り調べ、被疑者に有罪の情状又は無罪の弁解を陳述させた 後に質問をしなければならず、被疑者は、事件と関係のない質問 を除き、捜査官の質問に対して、ありのままに答えなければなら ないとされている84 85 なお、捜査官は、被疑者を取り調べる時に、被疑者に対し、あり のままに自己の犯罪行為を供述すれば、寛大な処分を受けられる 旨の法律規定があることを告知しなければならない86 証人尋問、被害 者の尋問87 捜査官の証人尋問は、犯罪の現場のほか、証人の勤務先、住所又 は証人が請求した場所でもこれを行うことができ、また、必要が ある場合は、証人に通知し、人民検察院又は公安機関で証言させ ることができる。 被害者の尋問には、証人尋問の規定を準用する88 検証、検査89 捜査官は犯罪に関する場所、物品、身体及び死体に対して、検証 又は検査をしなければならず、必要がある場合は、専門知識を有 する者を指名派遣し、又は招聘し、捜査官の主宰の下で検証又は 検査をさせることができる。 捜索90 犯罪の証拠を収集し、又は犯罪者を捉えるため、捜査官は、被疑 者及び犯人又は犯罪の証拠を隠匿するおそれがある者の身体、物 品、住所その他関係する場所を捜索することができる。 捜索の際には、被捜索人に対し捜索状を提示しなければならな い。逮捕又は拘留を執行する場合において、緊急の状況があると きは、別途捜索状がなくとも捜索をすることができる91 92 証拠物及び書証 捜査活動中に発見した被疑者の有罪又は無罪の証明に用いるこ 83 刑事訴訟法第 113 条(捜査の原文は“侦查”) 84 刑事訴訟法第 118 条第 1 項 85 いわゆる黙秘権は与えられていないといえる。 86 刑事訴訟法第 118 条第 2 項 87 刑事訴訟法第 122 条(証人尋問の原文は“询问证人”) 88 刑事訴訟法第 125 条 89 刑事訴訟法第 126 条(検証の原文は“勘验”、検査の原文は“检查”) 90 刑事訴訟法第 134 条(捜索の原文は“搜查”) 91 刑事訴訟法第 136 条 92 捜索状は、人民法院により発行されるものではなく、捜査機関(公安機関又は人民検察院)の内部での 許可があれば発行される。

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の封印及び押収 とのできる各種の財物及び書類は、封印又は押収しなければなら ない93 被疑者の郵便物又は電報を押収する必要があると認める場合は、 公安機関又は人民検察院の承認を経て、郵便電信機関に関係する 郵便物又は電報を提出するよう通知し、押収することができる94 預金又は送金の 調査及び凍結 人民検察院又は公安機関は、犯罪捜査の必要に基づき、規定に従 い、被疑者の預金、送金、債券、株券又はファンド持分等の財産 について調査し、又はこれを凍結することができる。但し、これ らの財産がすでに凍結されている場合は、重複して凍結してはな らない95 鑑定96 事案を明らかにするため、事件に含まれる一定の専門的な問題を 解決する必要がある場合は、専門知識を有する者を指名派遣し、 又は招聘して、鑑定させなければならない。 公安機関が捜査を終結した事件については、犯罪事実を明らかにし、証拠を確実かつ 十分に揃え、かつ起訴意見書を作成し、事件記録資料及び証拠と一括して同級の人民検 察院に送致して審査決定を行わせると同時に事件送致情況を被疑者及びその弁護士であ る弁護人に知らせなければならない97 (3) 公訴の提起 公訴を提起する必要がある事件は、一律に人民検察院が審査決定し、人民検察院は、 被疑者の犯罪事実がすでに明確で、証拠が確実かつ十分であり、法に基づき刑事責任を 追及するべきであると認める場合は、起訴の決定をした上で、裁判管轄の規定に従って 人民法院に公訴を提起し、かつ事件記録資料及び証拠を人民法院に移送しなければなら ない98 99。他方、被疑者に犯罪事実がない場合、又は以下のいずれかに該当する場合、 人民検察院は、不起訴の決定をしなければならないとして、不起訴となるべき場合が法 定されている100 (a) 情状が著しく軽微で、危害が大きくなく、犯罪と認められないとき (b) 犯罪がすでに訴追の時効期間を過ぎているとき (c) 特赦令によって刑罰が免除されたとき (d) 刑法により告訴を待って初めて処理される犯罪について、告訴がなく、又は告訴 を取り下げたとき (e) 被疑者又は被告人が死亡したとき (f) その他法律の規定により刑事責任の追及が免除されるとき 93 刑事訴訟法第 139 条第 1 項 94 刑事訴訟法第 141 条第 1 項 95 刑事訴訟法第 142 条 96 刑事訴訟法第 144 条(鑑定の原文は“鉴定”) 97 刑事訴訟法第 160 条 98 刑事訴訟法第 172 条 99 したがって、公訴が提起された時点で証拠等の資料が人民法院に移送されるということになる。 100 刑事訴訟法第 173 条第 1 項、第 15 条

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また、犯罪の情状が軽微で、刑法の規定により刑罰に処する必要がなく、又は刑罰を 免除する場合は、人民検察院は、不起訴の決定をすることができる101 102 (4) 第一審手続 人民法院は、公訴が提起された事件に対して審査をした後に、起訴状に犯罪事実の明 確な指摘がある場合は、開廷の決定しなければならない103。人民法院は、第一審事件を 裁判する場合は、公開により行わなければならないとされているが、国家機密又は個人 のプライバシーに関連する事件については、審理を公開せず、また、営業秘密にかかわ る事件について、当事者が審理の非公開を申し立てた場合は、審理を公開しないで行う ことができるとされている104 公判手続は以下の流れで行われる。 ① 冒頭手続 開廷の際に、裁判長は、当事者が出頭したか否かを調べ、事件名並びに合議廷の構成 員、書記員、公訴人105、弁護人、訴訟代理人、鑑定人及び通訳人の名簿を読み上げ、当 事者が合議廷の構成員、書記員、公訴人、鑑定人及び通訳人に対して忌避を申し立てる 権利を有する旨を告知し、被告人が弁護権を有する旨を告知する。 ② 証拠調べ手続 (a) 陳述及び尋問 公訴人が法廷において起訴状を朗読した後に、被告人及び被害者は、起訴状に指 摘された犯罪について陳述をすることができ、公訴人は、被告人に尋問することが できる。被害者、弁護人及び訴訟代理人は、裁判長の許可を得て、被告人に対して 質問することができる106 (b) 証人の出廷証言 公訴人、当事者、弁護人又は訴訟代理人107が証人の証言に対し異議があり、かつ 当該証人の証言が事件の犯罪の認定及び量刑に対し重大な影響を及ぼし、人民法院 が証人を出廷させて証言を行わせる必要があると認めた場合は、証人は出廷して証 言をしなければならない108 (c) 鑑定人の出廷証言 公訴人、当事者、弁護人又は訴訟代理人が鑑定意見に対し異議があり、人民法院 101 刑事訴訟法第 173 条第 2 項 102 公安機関が送致した事件について、人民検察院が不起訴を決定した場合、公安機関は不起訴の決定に誤 りがあると認めるときは、不服審査を申し立てることができ、意見が受け入れられない場合は、一級上の人 民検察院に対して再審査請求を提起することができる(刑事訴訟法第 175 条)。 また、人民検察院が、被害者のある事件について不起訴を決定した場合、被害者において不起訴の決定に 不服があるときは、不起訴決定書の受領後 7 日以内に一級上の人民検察院に不服を申立て、公訴の提起を 請求することができ、人民検察院は、再審査決定を被害者に告知しなければならない。人民検察院が不起訴 の決定を維持した事件については、被害者は、人民法院に提訴することができる。被害者は不服申し立て を経ることなく、直接人民法院に提訴することもできる(刑事訴訟法第 176 条)。 103 刑事訴訟法第 181 条 104 刑事訴訟法第 183 条第 1 項 105 公訴人とは、法律に基づき公訴権を行使する検察官のことをいう。 106 刑事訴訟法第 186 条 107 ここにいう訴訟代理人とは、事件被害者及びその法定代理人等の代理人となる者である(刑事訴訟法第 44 条)。 108 刑事訴訟法第 187 条第 1 項

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が鑑定人を出廷させる必要があると認めた場合は、鑑定人は出廷して証言しなけれ ばならず、人民法院の通知を受けたにもかかわらず、鑑定人が出廷して証言するこ とを拒否した場合は、鑑定意見は最終決定の根拠としてはならない109 。 (d) 証拠物の提示 公訴人及び弁護人は、法廷に対して証拠物を提示し、当事者に弁別させなければ ならず、法廷に出席しない証人の証言記録、鑑定人の鑑定意見、検証調書その他の 証拠としての文書については、これを当該法廷において朗読しなければならない。 裁判官又は人民陪審員は、公訴人、当事者、弁護人及び訴訟代理人の意見を聴取し なければならない110 ③ 弁論手続 法廷審理の過程において、犯罪の認定及び量刑に関する事実及び証拠に対してはいず れも調査、弁論を行わなければならず、公訴人、当事者、弁護人及び訴訟代理人は、裁 判長の許可を得て、証拠及び事件の状況に対して意見を発することができ、かつ相互に 弁論することができる111 ④ 被告人の意見陳述 裁判長が弁論終結を宣告した後に、被告人は最終陳述を行う権利を有する112 ⑤ 評議、判決 被告人が最終陳述を行った後に、裁判長は、休廷を宣告し、合議廷は評議を行い、す でに明らかとなった事実、証拠及び関連する法律の規定に基づき、それぞれ次に掲げる 判決を下す113 114 115 (a) 事件の事実が明確で、証拠が確実かつ十分であり、法律に基づき被告人の有罪を 認定する場合は、有罪判決を下さなければならない。 (b) 法律に基づき被告人の無罪を認定する場合は、無罪判決を下さなければならない。 (c) 証拠が不十分であり、被告人の有罪を認定することができない場合は、証拠不十 分により、起訴犯罪不成立の無罪判決を下さなければならない。 5.執行 判決及び裁定は、その効力が生じた後に、その内容に応じて以下のとおり執行される116 刑の種類 内容 無罪判決 第一審の人民法院が被告人の無罪又は刑事処罰免除の判決を下した 場合において、被告人が拘束中であるときは、判決宣告後直ちに釈放 しなければならない117 。 109 刑事訴訟法第 187 条第 3 項 110 刑事訴訟法第 190 条 111 刑事訴訟法第 193 条第 1 項、第 2 項 112 刑事訴訟法第 193 条第 3 項 113 刑事訴訟法第 195 条 114 なお、判決の宣告については、一律に公開される(刑事訴訟法第 196 条)。 115 なお、上訴期間は当事者又は人民検察院が判決書を受け取った日の翌日から起算して 10 日間である(刑 事訴訟法第 219 条)。 116 刑事訴訟法第 248 条 117 刑事訴訟法第 249 条

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死刑判決 死刑は、刑場又は指定された拘置場内において、銃殺又は注射等の方 法により執行される118。執行を指揮する裁判官は、受刑者が本人であ ることを確認し、遺言又は信書があるか否かを質問した後に、執行員 に引き渡して死刑を執行させることとなっている119 執行猶予期間 2 年付死刑、無 期懲役、有期 懲役、拘役 公安機関が法に基づき、執行猶予期間 2 年付死刑、無期懲役、有期懲 役の判決に処せられた受刑者を刑務所に引き渡して刑罰を執行させ る。なお、有期懲役の判決に処せられた受刑者が刑罰の執行のために 引渡される前に残存刑期が 3 ヶ月以下である場合は、留置場でこれを 執行する120 政治的権利剥 奪判決 政治的権利剥奪の判決に処せられた受刑者については、公安機関がこ れを執行する。執行期間が満了した場合は、執行機関が本人及びその 勤務先、居住地の基礎組織に書面で通知しなければならない121 罰金 罰金の判決に処せられた受刑者が期限を徒過しても納付しない場合 は、人民法院は、強制的に納付させなければならない122 財産没収 財産没収の判決は、附加適用であるか、又は独立適用であるかを問わ ず、一律人民法院がこれを執行するものとされており、必要がある場 合は、公安機関と共に執行することができる123 6.再審(裁判監督)手続124 再審手続は、すでに発効した判決及び裁定に誤りがある場合、人民法院又は人民検察院 が事件を改めて審理する手続である。 (1) 当事者等の不服申し立て 当事者、その法定代理人及び近親者は、すでに法的効力の生じた判決又は裁定に対し て、人民法院又は人民検察院に対して不服を申し立てることができ、当該不服申し立て が次のいずれかに該当する場合、人民法院は、改めて裁判を行わなければならない。但 し、判決又は裁定の執行を停止することはできない125 (a) 新たな証拠により、原判決又は裁定で認定した事実に確かに誤りがあり、犯罪の 118 死刑は、最高人民法院の承認を経なければならない(刑事訴訟法第 235 条)。 中級人民法院が死刑の判決を下した第一審事件について、被告人が上訴しない場合は、高級人民法院が 再審査した後に、最高人民法院に報告し、その承認を求めなければならず、高級人民法院は、死刑判決に同 意しない場合、自ら裁判を行うか又は差し戻して新たに裁判を行わせることができる。また、高級人民法院 が死刑の判決を下した第一審事件について、被告人が上訴しない場合、及び第二審事件において死刑の判 決を下した場合は、最高人民法院に報告し、その承認を求めなければならない(刑事訴訟法第 236 条)。 最高人民法院が死刑事件を再審査する場合は、死刑を承認するか否かについて裁定を下さなければなら ない。死刑を承認しない場合は、最高人民法院は差し戻して新たに裁判を行わせ、又は裁判を改めること ができる(刑事訴訟法第 239 条)。 119 刑事訴訟法第 252 条 120 刑事訴訟法第 253 条第 2 項 121 刑事訴訟法第 259 条 122 刑事訴訟法第 260 条 123 刑事訴訟法第 261 条 124 原文は“审判监督程序” 125 刑事訴訟法第 241 条、第 242 条

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認定及び量刑に影響を及ぼす可能性があることが証明されたとき (b) 犯罪の認定及び量刑の際に根拠とした証拠が確かなものでなく、不十分であり、 法により排除されるべきであるとき、又は事件の事実を証明する主要な証拠相互間 に矛盾が存在するとき (c) 原判決又は裁定の法律適用に確かに誤りがあるとき (d) 法律に定める訴訟手続に違反し、公正な裁判に影響を及ぼす可能性があるとき (e) 裁判官等が当該事件を審理する際に、汚職収賄、私利を図る不正な行為又は法を 曲げて裁判を行う行為があったとき (2) 人民法院の院長、人民法院、人民検察院による再審手続の発動126 ① 人民法院の院長による再審手続の発動 各級人民法院の院長は、すでに法的効力が生じた当該人民法院の判決又は裁定につい て、事実認定又は法律適用の上で確かに誤りがあることを発見した場合は、裁判委員会 に提出し、処理しなければならない。 ② 人民法院による再審手続の発動 最高人民法院は、すでに法的効力が生じた各級人民法院の判決又は裁定について、上 級の人民法院は、すでに法的効力を生じた下級の人民法院の判決又は裁定について、確 かに誤りがあることを発見した場合は、自ら裁判を行い、又は下級の人民法院に再審を 命ずる権限を有する。 ③ 人民検察院による再審手続の発動 最高人民検察院はすでに法的効力が生じた各級人民法院の判決又は裁定について、上 級の人民検察院は、すでに法的効力が生じた下級の人民法院の判決又は裁定について、 確かに誤りがあることを発見した場合は、再審手続に従い同級の人民法院に対し上訴を 提起する権限を有する。 (3) 再審手続による裁判 人民法院が再審手続に従い改めて裁判を行う事件について、原審人民法院が審理する 場合は、原審での合議体とは別に合議体を構成して裁判を行わなければならない。 原審が第一審事件である場合は、第一審手続に従い裁判を行わなければならず、これ により下された判決又は裁定については、上訴することができる。 原審が第二審事件である場合、又は上級の人民法院が自ら裁判を行う事件である場合 は、第二審手続に従い裁判を行わなければならず、これにより下された判決又は裁定は 終審の判決又は裁定となる127。また、人民法院が再審手続に従い裁判を行う事件につい ては、原判決又は裁決の執行の中止を決定することができる128 126 刑事訴訟法第 243 条 127 刑事訴訟法第 245 条 128 刑事訴訟法第 246 条

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[応用編] 経済大国になった中国では外国人犯罪も増えている。刑事訴訟法の第 16 条では「外国 人の犯罪に対して刑事責任を追及しなければならない場合は、本法の規定を適用する。 外交特権及び免除権を有する外国人の犯罪に対して刑事責任を追及しなければならない 場合は、外交ルートを通じて解決する。」と定めており、罪を犯した外国人は中国法を知 らないということを理由に懲罰を免れることはできない。また、刑事訴訟法の適用に関 する司法解釈では、人民法院が渉外刑事事件を審理する場合に使用する言語は中国語と し、被告人が弁護士に弁護を委託する場合は、中国の弁護士資格を有し、かつ法に従い 執務証書を取得した弁護士に委託しなければならないと規定しているうえ、中国刑事訴 訟は日本の刑事訴訟法と同じ用語を用いながらも異なる意味合いを持っているなど、日 本人が直ちにその手続の意味を理解することも極めて困難である。馴染まない言葉と刑 事手続に直面した場合、専門家に相談し、その力を借りながら対応することが適切且つ 望ましい。 (包城偉豊・弁護士、楊華・中国法顧問)

三.中国法務の現場より

1.税制改正による現場レベルでの影響 中国で 2012 年から始まった増値税改革の試みが、この度、全面的に実施されることとな った。具体的には、2016 年 5 月 1 日から、建築業、不動産業、金融業及び生活サービス業 を含むすべての役務提供が、物品の売買と同様に増値税の課税対象に含まれることとなっ た129。かかる改革により、すべての業種において税負担が軽減されることが見込まれてい る。なお、営業税が増値税に変更されるということから、中国語では「営改増」と略され ている。 もっとも、現場レベルでは、一部で「営改増」に便乗した(又はそのように批判されて いる)料金の値上げが生じている。特に、ネット上では一部高級ホテルの値上げがこれに 該当すると批判の声が上がっている。また、日本人駐在員との関係では、駐在員が居住す るサービスアパートの貸主が 5 月 1 日から賃料の値上げを提示している事例があるとも聞 いている。 「営改増」の施行は間もなくだが、施行後しばらくは混乱が生じる可能性も否定できな い。 (中城由貴・弁護士) 129 「営業税に代えて増値税を徴収する試験の全面的な実施に関する通知」(財税〔2016〕36 号)

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2.「外国 NGO 法」の成立による各種団体への影響について

4 月 28 日に「中華人民共和国域外非政府組織域内活動管理法130」が全人代常務委員会で

可決・公布され、2017 年 1 月 1 日から施行されることになった。

これは、いわゆる「外国 NGO 法」(Foreign NGO Law)として、特に欧米系のメディア や国際組織関係者により、草案段階から注目を浴びていた。 BBC によれば、中国では 7,000 もの外国の NGO が活動しているとされる131 本法は、総則で、外国 NGO が中国の国家統一、安全、民族統一に危害を与えること、 国家の利益を損なうことの禁止、営利活動・政治活動への従事や支援の禁止、不法に宗教 活動に従事又は支援することの禁止を定めている132。また、外国 NGO が中国において代 表機構を設置する場合と、中国国内で臨時に活動を行う場合の登記機関が公安局となって おり133、かつ、各種検査・調査・処罰権限を与えているため134、アムネスティ・インター ナショナル等の人権団体からは、公安当局が NGO の活動を規制できるようでは、市民社 会を窒息させるものであるとの批判がある。 他方、正面の目的としては、「外国 NGO の中国国内での活動を規範化・保護して、交流 と提携を促進する」135ものであり、これまで、制度上空白となっていた領域を埋める法的 意義がある。 一定の要件を満たす外国 NGO が代表機構を設置する場合には、外国企業の代表機構(代 表処)と類似の仕組みにより、税務登記、印鑑作成、銀行口座開設等を認め136、首席代表 1 名を置き、一般代表を 1~3 名設置可能としている137。また、中国統一の会計制度を実施 し、会計資格を有する人員に会計確認業務を行わせ、かつ、中国の会計士事務所の監査を 受けるものとされる138 。外国 NGO の代表機構は、税制優遇139 や、代表の就業資格を享受 することができる140 外国 NGO が代表機構を設置せずに、臨時の活動を行う場合には、中国の国家機関、人 民団体、事業団体、社会組織(中方合作単位)と提携して活動を行うものとされ141、その 場合には、中方合作単位により活動を行う 15 日前までに届出を行うものとされる142。そ の場合の活動資金は、中方合作単位が専用口座を開設して取り扱う143 他方、外国 NGO は、上記の代表機構登記又は臨時活動届出なくして、中国で活動して はならず、中国国内の団体や個人への委託、支援等を通じて形を変えて活動することも禁 止される144。また、代表機構登記又は臨時活動届出を行った外国 NGO でも、中国国内で 130 《中华人民共和国境外非政府组织境内活动法》 131 http://www.bbc.com/news/world-asia-china-36157052 132 第 5 条 133 第 6 条第 1 項 134 第 41 条及び第 45 条以下 135 第 1 条 136 第 13 条 137 第 29 条 138 第 24 条 139 第 36 条 140 第 38 条 141 第 16 条 142 第 17 条 143 第 22 条第 2 項 144 第 9 条第 2 項

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寄付を募ることはできず145、また、会員を増強することもできないとされる146 なお、外国の学校、病院、自然科学及び工程技術の研究機関や学術組織が、国内の対応 する機関や組織と交流・提携する場合には、国の関係規定に従うこととされ、本法の適用 外となる147 以上のような内容であることから、これまで法規制の外で、個人の名義や、中国国内の 団体や企業の名義やそれらとの提携により、各種活動を行ってきた外国 NGO にとっては、 かなり厳しい規制下に置かれる結果が生じることは否めない。 他方、本法では、第 2 条第 2 項にて「外国 NGO」の定義を、「域外で適法に成立した基 金会、社会団体、シンクタンク等の非営利・非政府の社会組織をいう」と規定されており、 実際に多数存在する、中国に在住する外国人が自発的に公益活動を行っている各種団体等 には、直接的な適用はないといえる。また、そのような各種団体の中には、「social enterprise」 といって、コンサルティング会社等の企業法人の形式を取って公益活動を行うものも多く、 本法の施行により、直接的な影響が及ぶ範囲は、それほど大きくないとも言える。 他方で、日本など海外の NGO 等が、中国国内の協力者に資金を提供したり、事実上の 事務所を設置したりするなどして公益活動を行う例も尐なくない。そのような場合には、 本法の適用対象となりうるため、注意が必要と言える。 もっとも、登記管理や処罰を公安機関が行うとされる一方で、外国 NGO の活動に関す る業務主管単位は、国務院の関係部門・単位と省レベル人民政府の関係部門・単位とされ、 また、運用の細則について、国務院の規定に委ねる規定もある。そのため、中国における 新法制定時に普遍的に見られるように、運用が固まるまで具体的な執行がなされなかった り、地方や主管部門間で運用が異なったりすることも十分想定される。 (山根基宏・弁護士) TMI 中国最新法令情報―2016 年 4 月号― 発 行:TMI 総合法律事務所 監 修:何連明・外国法事務弁護士 編集主幹:山根基宏、包城偉豊・弁護士 発 行 日:2016 年 4 月 29 日 145 第 21 条第 3 項 146 第 28 条。但し、国務院が別途定める場合を除く。 147 第 53 条第 1 項

参照

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