聾学校 にお けるダ ンス学習指導
体育教室
佐 分 不
J井
上
Dance Education at School for the]Deaf
lkuyO SABURI,Shigeko INOUE*
1.は
じめ に 聴覚障害 は,言
語 だけでな く体力や運動能力の遅れ をももた らしている。桜井 らは一連 の聴覚障 害児の体力 と運動能力 に関する調査研究 において,昭
和49年,50年
の奥 田体育賞会の調査同様,普
通児 との有為 な差 を認 めている(IX2x3ち その原因の一つ として桜井 は幼児期か らの生活環境,す
なわ ち言語能力の回復 に費やされ る時間が多 く,遊
びの中で運動能力 を高めてい く経験が少 ない ことも あげられ るので はないか としている“ち又,普
通児 との差 は認 めなが らも,修
学後 の運動能力 の発達 がl隠調であることをあげ,聾
学校 での学習指導の課題 の大 きさを指摘 している。 聾学校での体育 の学習内容 は普通教育 に準ず るとされている。 しか しなが ら,児
童生徒数の制約 か ら実際 には特殊 な ものに偏 りがちである。特 にチームゲーム は取 り入れに くく,課
外活動 につな がる聾学校間の試合 も陸上競技 と卓球 という個人や二人で行 うものに限 られている。普通学校 との 競技や交流 も実現が難 しい。鳥取聾学校 では,教
師や職員 の協力,卒
業生 との練習 によってバ レー ボールな どのチームゲームを経験 させている。準ず る とはどうい うことなのか,ど
こまでその内容 を保障す るべ きか,ま
たで きるのか は,運
動能力 の発達,さ
らに生涯体育や卒業後の生活全般 にま で及ぶ問題である。 鳥取聾学校 の中学部 と高等部で は,学
習内容 として創作 ダンスを取 り上 げ,そ
れを通 して学校外 との交流 も行 って きた。創作 ダンス学習の継続 によって,生
徒 のダンス技能 は普通児 におけると同 じように発達 しいち その中で,言
語表現への広が りもあった。少人数での学習で も,3人
以上であれ ばグループ としての表現性 の追求やグループ活動 も体験 させ ることがで きた16J。このグループ感覚や 仲間 との関係 の体験,コ
ミュニケーション,表
現欲求の満足等,セ
ラピー としての貢献 も期待で き る(7)。 本研究で はこの創作ダンス学習指導について,全
国の聾学校での実施状況 を探 ると共 に,聾
学校 での学習内容 としての創作 ダンスの課題 を明 らか にしたい。Department of Physical Education,Faculty of Education,「 Fottori University
・ 鳥取県立鳥取聾学校 TOttOri School for the Deaf
代
子
育
茂
66
佐分利育代・井上茂子 :聾学校 におけるダンス学習指導2.研
究 方法 全国の聾学校中学部及び高等部の体育指導者 を対象に行 った調査結果を用いて,聾
学校における 創作ダンスに関する上記の課題などについて考察する。 調査の概要 は次の通 りである。 調査対 象 調査 方法 調査期 間 回収率 調査項 目 表1.授
業形態 授 業 形 態 中学部%
高等部%
全体%
学 年 別 男 女 別 学 年 別 男 女 合 同3学
年 合 同 男 女 別 27.73学
年合同男女合同 そ の 他 27.3 27.5 集 計 全国聾学校 中学部及び高等部 の女子生徒担 当の体育指導者各一名 中等部 。94校 高等部・74校 選択肢 と自由記述 による質問紙 (記名)を
郵送 により送付,回
収 1990年 6月 か ら7月 中等部・58.5%(55校
)
高等部・63.5%(47校
)
全体・60。7%(102学
部)①ダンス学習指導の実施状況
②教材 としてのダンス観
③創作ダンス学習指導の実施状況
④創作ダンス学習指導実施の方法
選択肢による回答は
SPSS‐Xを 用いて集計
回答 は全体 の63,7%(65人
)が
女性,35.3%(35人
)わS男性か らの ものであった (不明2.0%)。 年齢の内訳 は,30代
が最 も多 く32.4%(33人
),続
いて20代25.5%(26人 ),40代 21.6%(22人
),50
代19.6%(20人 ),60代
1%(1人
)で
あった。聾学校での勤務年数 は3年
が最 も多 く,17.6%(18
人),続
いて1年
と2年
で11.8%(12人
)で, 3年
未満が48.0%を
占めた。次 に4∼ 7年
が多 く(27.4%),比
較的聾学校経験 の浅 い指導者が多かった。最 も長 い勤務年数 は30年 で2人
であった。 授業形態 は表1のようで,各
学年別 で 男女別 のクラスによる体育の授業 を行 っ ているのは,中
学部で2校 (3.6%),高
等部で5校 (10.6%)だ
った。 その他 としている学校では,授
業 によ って,男女合同であつた り別であった り, その形態が一定 していない とい う回答で あった。3.ダ
ンス学 習宇旨導 の実態 ①ダンス学習指導の実施状況 (1)ダンス学習指導の実施状況 全国の聾学校でのダンス学習指導の実施状況については図 1の 結果を得た。何 らかのダンス学習 を行っている聾学校 は,中
学部 と高等部合わせて49.0%(50人
)で
あった。回答者の性別では,女
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第33巻 第
1号
(1991) 性42人(64.6%),男
性 で は8人 (22.9%)し
か指導 していなか った。 実施 した学習 の時間数 で は6∼
10時 間が最 も多 か った。(図2) E]高 等部 臣]中学部 図1
ダンス学習与旨導の実施状況 図2
ダンスにかけた時間 ②ダ ンスの実施 内容 実施 しているダンスの種類 を複数回答で求めた。創作ダンス とフォー クダ ンスはほぼ同 じ割合で (なん らかのダンス指導 を実施 していると答 えた指導者 の内,56.0%と
58.0%)実
施 されていた。 図3は学部別のダンスの種類で,高
等部で「エアロビック・ ダンス」 も多 く行 われていた。指導 者の性別で は,女
性 は「創作 ダンス」 と「 フォークダンス」 を取 り入れてお り,男
性 は標本が少な く断言で きないが,「フォークダ ンス」や「ェアロビック・ダンス」のようなステ ップの決 まった も のに取 り組 む傾向にある。 「創作 ダンス」「フォー クダンス」「民踊J「既成作品」の内容 は,表
2のようである。「エアロビ ック・ ダンス」や「ジャズダ ンス」で は使用 した曲名があげられていた。「エ アロビック・ ダ ンス」 では『ス トレッチング,ラ
ンエ ング中心 に』等,身
体づ くりとして,「ジャズダンスJで
も『創作ダ ンスや他 の種 目の準備運動 として』行 っているものがあった。「エアロビック」「 ジャズJと
名称が 異なるほど内容 を区別 して使 っているか どうか は余 り明確ではなかった。68
佐分利育代・ 井上茂子 :聾学校 におけるダンス学習指導 図3
学習にとり入れたダンスの種類 (単位 :人) 表2.ダ
ンスの内容 (3)リ ズムやタイ ミングの合わせ方 聴覚障害児 は,音
楽が聞 き取れないために リズムが とりに くく,友
だち とも合わせ に くい ととら れていることが多い。実際の指導で はどの様 に行われているかを選択肢で尋ねた。創作 ダンスを実 施 している指導者か ら,「F語ってい る生徒 自身の呼吸や気持ち」で合わせている との回答 を多 く期待 したが,「身体 に感 じる音 (タイコ,楽
器 な ど)」 や「視覚 (指導者 または指揮者 の合図,友
だちの 動 き)」 の選択が どち らも約80%あ
った。 どの内容 のダンスの指導にも同 じ結果 を得 た。 ②教材 としてのダンス観 (1)教材 としてのダンス観 教材 としてのダンスについて,「良 さ」はどんな所 にあると思 うか質問 した。 その結果 を指導 して いると答 えた人 と指導 していない人 に分 けて示 したのが図4で
ある。回答 は選択肢 よ り最 も重要 と 思われ るもの3つの選択 とした。 ダンスの良 さの選択 の結果 よ り,ダ
ンスは,「リズム」「感情」「表現 。伝達」の特性 を持 ち,実
施 によって「い ろいろな運動体験」が得 られ る教材 ととらえられていることがわか る。 3つの選択 を要求 したにもかかわ らず,実
施 していない指導者で は,平
均1.6項目の選択 しか して 中 学 部 (24人) 高 等 部 (26人) 13臣群I鶴鶴 絆 :韓韓 h障■韓 韓 II彗報 鵡 : 4E■4= 4〔霧 =孝 5=■■導諄 = 2睡 6[群4単洋 創作ダンス フォークダンス 民 踊 エアロ■ンクダンス ジャズダンス 既 成 作 品 そ の 他 115 114 コ i3 111 14 コ 3 15 ダ ン ス の 種 類 内 容(作
品 名 ) 創作 ダ ンス 中学部 お祭 り 夢 夢 の中へ 花 と妖精 宝島 青い島 ロボッ ト スポーツ 夏が好 き 高等部 グ ロ リア 月 と海 四季 喜 び 願 い あ あ青春 ソー ラ ン節 に合 わせ て 枯葉 の舞 鳥の一生 涙 を見せない 大都会 カラスの愛 青い鳥 I want free 学校生活 フ ォ ー ク ダ ン ス オ クラホマ ミクサー13校 マ イムマイム11 タタ ロチ カ4
パ テ ィケー ク・ ポル カ4 ジ ェー シー・ ポル カ2
オ ー スザ ンナ2 コロブチ カ8
ジ ェ ンカ5 アメ リカ ン・ プ ロム ナー ド3 線路 は続 くよ どこまで も2 他 踊 民 ソーラン節2校
河内音頭 炭坑節 ドンパ ン節 越 中お はら節 こきりこ節 室蘭 ばや し 既 成 作 品 荒城 の月 花畑 の朝 浜千鳥 戸倉ハル全集の中か ら 聾学校音頭2校
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 33巻 第
1号 (1991) 69
おらず,実
施 した指導者が2,8項目選んでいるの と大 きな隔た りがあった。実施 してその良 さを発見 し,発
見 した良 さを深 めるべ く,さ
らに次の実施へ と向か うもの と思われる。 ダンス指導 を実施 した指導者 としない指導者 の差が特 に大 き く現われたのは,「生徒 の普段で はみ られない面が発見で きる」と,「楽 し く体力づ くりをさせ られ る」の項 目であった。実施 によって実 感で きる良 さ (ダンス観)と
思われ る。 「題材への興味 を生徒 に持 たせ られ る」 は,実
施 した指導者 に もしない指導者 にも全 く選択 され ていなかった。生徒が興味 を持 ちに くい教材 としてのダンス観が指導者 にはあるようである。学習 内容 としてのダ ンスを取 り上 げている指導者が約半数で しかない こととの関連が予想で きる。 図4
ダンス教材の良 さ(単位 :人) 指導 した (50人) 指導していない(43人) 感情 を豊かにする 表現・ 伝達の喜びを体 験 させ られ る 自己開放 させる 題材への興味を持たせ ら津ιる リズム感 を養 う 楽 しく体力づ くりをさ せ られ る いろいろな動 きを体験 させ られる 身体意識 をもたせ られ る 生徒の普段では見 られ ない面が発見で きる 生徒数が少な くても グループ活動がで きる 日本や外国の文化や伝 統が伝 えられる貫ヂ甲妄寿ぐり多ご巻
わせるのが難 しい 音が聞 こえないのでイ メージを持たせに くい 生徒 に興味がない 指導者 に経験がない 他の教材で間に合 う 他の教材で手いっぱい だか ら 他の学年が実施 してい ない そ の 他 女 性 (20人) 図5
ダンス学習を実施 しない理由 (単位 :人)佐分利育代・ 井上茂子:聾学校 にお けるダンス学習指導 (2)ダンスをしない理由 ダンス指導 を実施 していない理由 として
,男
性 の14人 (60。9%)が
「指導者 自身の経験 の無 さ」 を,続
いて「他 の教材で手いっぱいだか ら」 を選択 している。女性で も「他の教材で手いっぱいだ か ら」の選択が最 も多かつた(図5),時
間 を作 つてで も取 り入れたい と思 うほど,教
材 としてのダ ンスの特性 は評価 されていない といえる。 また女性 の指導者で も,「自身の経験 の無 さ」が「 その他」 に次 ざ3番
目に選択 されていたが,指
導者 の経験不足 と教材 としてのダンスヘの不理解 は,創
作 ダ ンスが学習 に取 り入れ られて40年以上経 て未解決の課題 として重要である。 その他 の理 由で は,「男女一緒 にで きれば」があ り,聾
学校での男女合同の授業形態がダ ンス実施 上の一つの障害 となってい ることが うかが える。男女共修 のダンス学習 は,普
通教育での課題 で も ある。指導計画の再検討で男女別 クラスの可含留性を探 ると同時 に,男
女共修でのダンス指導法研究 も特 に必要である。 「生徒 に興味がない」を選択 した女性指導者が4人
あった。教材 としての良 さに関 して,「題材へ の興味 を生徒 に持 たせ られ る」が全 く選択 されなかった ことと合わせ,生
徒 のダンス観 に対 す る指 導者の この評価 もまた,ダ
ンスを学習内容 とす ることを妨 げる一要因 と思われる。 ③創作 ダンス学習指導の実施状況 創作 ダンス学習指導 は,今
回の調査で は中学部で23.6%,高
等部で31.9%の
学校で行われていた。 ダンスを取 り上 げている学校 だけでみると,中
学部で54.2%,高
等部で57.8%の
割合であつた。 創作 ダンスの学習 にか けた時間 は4∼ 5時
間が最 も多 く(図6),放
課後 も指導 した ことがある と した指導者が42.8%あ
った。学習のまとめ としての発表会 はどの学校 も行 ってお り,授
業 の中だけ でな く,校
内の学習発表会や運動会で80%が
学習の成果 を発表 していた。 創作 ダンス は,聾
学校 だけでな く,普
通学校 との交流の機会 も得 られ る学習内容である。校外 で の発表会への参加 は, 3校
で はあるが行 っていた。 図 0 時 間 創作ダンス実施時間数鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 33巻 第
1号 (1991) 71
④創作 ダンス学習指導実施 と課題 (1)創作 ダンス学習指導のために解決すべ き課題 創作 ダンス学習指導 を実施 していない指導者で,今
後指導 してみたい と答 えたのは41,9%で
半数 に満たなかった。 指導 してみたい理 由,今
後 も指導 したい とは思わない理由をそれぞれ 自由記述で求 め,得
た内容 を表3のように分類 した。倉1作ダンスを今後指導 してみたい理由 としての52の内容が,し
た くない 理由 として24の内容があつた。 表3
今後指導 したい理由とした くない理由 指導 してみたい理 由のほ とん どがダンスの表現性 に関す るものであ り,自
己表現力,豊
かな感情 の面でダンスが聴覚障害児 の教材 として最 も魅力 あることととらえられてい ることがわか る。言語 表現や音楽 との関係 について,
どうとらえているかにまで及ぶ記述 はなかった。 指導 した くない理 由 として は,「指導 に自信が無い」「指導が困難」 の記述が多 く,指
導法や指導 内容 に具体性 を見 いだせず にいる指導者 の存在が想像で きる結果であった。 指導 してみたい とす る理 由にも,「豊かな感情 を養 う」「表現,伝
達 の喜びを体験 させ られる」「 自 己の表現方法 を知 らせ る」「聴覚障害 のある子 どもにとって,イ
メージを豊か にする訓練 に役立つ」 等,身
体運動 による表現活動 に期待する反面,「現実 は難 しい」「生徒 の心が離れす ぎて どうしよう もない」「現実には可能か どうか」の記述があ り,指
導 にはかな りの不安があることがわかった。 誰 にもで きる具体的で とりかか りやすい指導法,生
徒 にも「面 白そうだな」,「やれそうだ」,「や っぱ り面 白い」 と思わせ る内容が これ までに示 されていないわけではない。 しか し,未
だに充分 に は浸透 していない といえる。 ダンス全体 に対す る質問の回答で も「指導者の気持 ちがダンス指導実施 に向いていない」 ことが 現れていたが,創
作 ダンスヘの指導者 の非積極性 は,指
導に対す る不安がその一原因 となっている ことが明 らかである。 この創作ダンス指導 に対 す る非積極性 は実際 に指導 を実施 した指導者 に もみ られた。 創作 ダンス学習指導 を実施 した指導者 に生徒の興味関心 を尋ねた項 で,「ほ とん どの生徒が楽 しく 学習 に参加 し,次
への意欲 をわか している」と評価 したのは半数で しかなかった こと(図7),ま
た, 学習後 の生徒 の変化 について尋ねた項で も,「や り始めた ら意欲 を持 って取 り組 んだ」「や り終 えた 満足感 は残 るようだ」等,学
習への導入や指導 を進 めることの難 しさの続 み取れる記述が あった こ とな どである。 また,「指導者 に不満が残 る」等,指
導者 自身にも達成感が得 られなかった との回答 今後創作ダンスを指導 してみたい理 由人 創作ダンスは指導 した くない問題点
人 自己表現力 を育 て られ る
21
感情 を豊かにし,美
しさに感 じる心 を 育て られ る 生徒が好 きだか ら リズム感 を養 える 創 る活動の苦 しみ楽 しさを味わわせ ら 孝tる 生徒の普段見 られない面が発見で きる グループ作 りがで きる,体
力づ くりが で きる 等 その他 ・3 6 4 2 2 4 ・ ダンス指導 に自信がない5
・指導が困難 な教材 である5
。生徒数が少ない5
・ 生徒が興味 を持 ちに くい教材である2
・ 時間が とれない2
・ 他の もので間に合 う2
表現力………言語力 運動量………他 の種 ロ メジャー スポーツをや らせたい 。指導 しな くて も特 に問題 はない1
佐分利育代・ 井上茂子:聾学校 におけるダンス学習指導 も多 くあった (表4)。 これ らの回答 は
,現
在創作 ダンスを指導 していると答 えた指導者 も将来指導 しな くなる可能性 も あることを示 してい るように思われ る。 ほとん どの生徒が楽 し く学習 に参加 し 次への意欲 をわか している 半分位の生徒が楽 しく学習 に参加 し次 への意欲 をわか して =ゝ る 嫌いな生徒が多 く楽 しんで学習で きな い 図7
指導者が評価 した生徒の興味関心 A. B. C. 表4.創
作 ダンス学習後生徒 に現れた変化 ・ や り始 めたら意欲 を持 って取 り組 んだ5人
・ や り遂 げた満足感 は残 るようだ4
・ 指導者 に不満が残 る3
・ 他 の種 目の苦手 な生徒がダ ンスで自信 を持 った3
・ 身体表現への興味 を持 った2
・ 運動会への興味 を持 った2
・ 他 の種 目,生
活面 の動 きが良 くなった2
しか し,「取 り組 む ことへの意欲」「や り遂 げた満足感」 を生徒が味わつている こと,「運動会への興味 を持 った」のよう に学習 を通 して学校行事への参加 に興味 を持 った こと,そ
して「ダ ンスで 自信 を 持 った」「他 の面での動 きが良 くなった」 等,ダ
ンスで生か された生徒がいた との 指導者の評価 は見逃せない。一人一人 の 障害の度合が異 なるとい うだけで個性的 な生徒が,一
人で も意欲 を持 って個 を生かせ る機会 を指導者が評価す るな ら,そ
の場 は確保 される 必要がある。 創作 ダンス学習の指導が,指
導者 に不安や未達成感 を感 じさせ,指
導 に対 して積極的になれな く している原因 は何か。指導法が行 きわた らない理 由は何か。 これ らについて,先
の表3においてあ げ られた,創
作 ダンスを指導 してみたい理 由 としての「良 さ」の記述内容 の抽象性が指摘で きる。 すなわち,指
導法具体化 よ り以前の問題,教
材 としての創作 ダンスの特性 自体が未だに具体 的に理 解 されていない ところに創作 ダンス学習指導の実施 を妨 げている原因が ある と思われ る。 他 の教材では得 られない創作 ダ ンスだけの体験 の一つ一つが はっ きりと理解 されていれば,指
導 法が現実のもの として指導者 に受 け入れ られるに違 いない。どんな表現性や運動が体験で きるのか, 多 くの実践例か ら共通す るものを拾 い出 し,教
材 としての創作ダンス観 を指導者 に持 たせ ることが 指導理論 を具hJl■のあるもの として意味づ ける。新指導要領 における選択制導入 に対処す るために もこの ことは必須である。 そ してさらに,聴
覚障害 を持 つ生徒 のための教材 としての創作ダ ンス観 の明確化が必要である。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 33巻 第
1号
(1991) 本当に言語表現の指導で間に合 うのか,他
の運動教材で間に合 うのか,少
人数だか らで きないのか, 男女同一 クラスで はで きないのか, 3学
年同― クラスで はで きないのかなどの解決すべ き問題点 も すべて ここにその糸 口があると考 える。 男女共修で,それぞれの良 さが発揮で きた とす る実践例や181,創作ダンス学習 を通 して得 られ る創 造性 の報告 もなされている0。他 の運動種 目で は体験 で きない創作 ダンス学習独 自の体験 のデータを 整 え,創
作 ダンス観 を明確 に持 たせ ることで,学
習指導への教師の非積極性 を積極性 に転換 させ る ことが創作 ダンスの学習指導実践率 を高 めるために急務であ り,今
後 の課題 である。 り)聾学校 における創作 ダンス学習指導の課題 創作 ダンス学習指導実施者が実際 に用 いている指導の方法 を通 して聾学校 における創作 ダ ンス学 習指導の課題 を探 った。 ・ イメー ジの持 たせ方 に関する課題 身体運動表現学習のためのイメージの持たせ方 を自由記述で求 めた。各手がか りの内, aは ,ィ
メージをもたせ る手段 として, bは ,イ
メージを様々 な表現手段で一度表現 させ る方法 として以下 のように分類 した。 言語表現 を手がか りに 視覚 を通 して 音,曲
を使 って 動 きか ら ダ ンスを観て 「動 きか ら」のa.b.は
ダンスの二側面か らのイメージの持 たせ方で, 5人
(16%)あ
った。 他の手がか りでa。 として分類 した もの は原体験 の範躊で とらえられ る。b.は
いろい ろな表現方 法があることや他の表現 とダンス表現の違 いを知 らせ るため,ま
た,い
ろい ろな角度か らとらえさ せ るために興味ある指導法 といえる。 しか し,他
の表現手段で表現 したイメージを運動表現 に置 き 換 えると考 えるな らば,そ
れ はダンスに対 して遠 まわ りの方法である。 今回の調査で は言語表現 を聾学校でのダンス学習指導の手がか りとして考 えている指導者が最 も 多かった。イメージをもたせ るために言葉 を見つ けさせ る方法 は,普
通児の創作ダンス学習で よ く 用い られ る。 しか し,言
語表現 にハ ンデ ィを持つ聴覚障害児 に とって,言
葉がその内的体験 を代弁 し,ダ
ンスで眼前化す るための橋渡 しの役 を荷 なえるのか どうか は疑間である。ダンスの表現が表 現欲求 を満 た し,言
葉では語 り尽 くせない ことを表現 し,言
葉で は感 じ取れなかった部分 を感 じ取 らせ,普
通児 に とってそうである以上 に,生
徒 の周 りにあるものを増や したい とのね らいで指導 さ れるな ら,こ
こでの言葉の介入 は不必要である。 とは言 うものの,聾
学校での学習 に於 て,言
語 の問題 は大 きい。言語教育 と結び付 けざるをえなa.詩
か ら連想 して…… ……… … … …… … ………3人
b.テ
ーマや言葉 のイメージをで きるだけ多 くの言葉 にして…9人
a.ビ
デオや写真 を通 して表現 の対象 を体験 させ る………7人
b.絵
を描かせて 色 のイメー ジを出させて………2人
a.曲
を何度 も聞かせて・……Ⅲ………・……・………3人
b.テ
ーマか ら曲を選 んで………1人
a.運
動 の持つ感情表出性 の体験 を手がか りにしてい………3人
b.運
動体験 の追体験 を手がか りにして… … …… ………2人
・教師の師範で………Ⅲ………Ⅲ………・……Ⅲ………4人
・ 参考作品 をビデオで観 て………Ⅲ………3人
74
佐分利育代・井上茂子 :聾学校 におけるダンス学習指導 いのであればダンスでの表現 は,言
語表現への広が りという形での橋渡 し役 を,そ
の目的の一つ と して指導 しなければな らないであろう。 ・ 動 きの引 き出 し方 ダンス としての動 きを生徒 自身の もの として行 わせ るために,指
導者が とっている方法 を自由記 述で尋ねた。回答 は,動
きの引 き出 し方 に関す るもの と,そ
の発展 のさせ方に関す るものに分 ける ことがで きた (表5)。 動 きの引 き出 し方の うち,生
徒 に体験 させたい『ダンスの動 き』 に対す る指導者の考 え方が比較 的 よ く現れていた記述 を,Aと
して くくった。 これ らの指導者 は,日
常の動 きをダンスの動 きに変 えてい く方法,表
現者が何 を最 も表 したいのか明確 にす ること。 自分 な りの感 じ方を大切 にす るこ と等ダンスの運動観 を,そ
れぞれの言い方で生徒 に伝 えていた。18の回答 の内, 3分
の1の6人
が ここに入 るものであった。 このうち,ダ
ンスの動 きへのアプローチの仕方 を直接的な表 し方で記述 した回答 は,「架空の大 げさな動 き」「極限の動 き」「動 きの特徴が はっきりしているもの」の3つだ けであった。 これ らは,松
本 らによる課題学習 の運動観 と通ず る(1の 。Bは
,リ ズムや呼間 とい う,ダ
ンスの運動の時間や力 の性質か らの指導で,2人
があげていたが, 動 きの内容 についての記述 はなかった。聴覚障害 のある生徒が,自
己の内的 リズムを発見 し表現す ることを援助で きるな ら,一
つの有効 な手がか りであろう。Cは
観賞 を通 してダンスの動 きに対 す る予備知識 を与 え,それ をヒン トに動 きを見つけさせ た り, 意欲づ けた りしているものであるが,指
導者 の運動観が推測で きない。5人
が ここに入 った。Dは
動 きに対す る指導者 の考 えが具体 的に現れていない記述 として1グループにした。手がか り の無い自由は活発 な学習活動 を生 み出さない と思 えるが,こ
のような記述が5人
にあった。 以上,運
動観が明確 に示 されないまま生徒 に渡 されて しまう学習が多い ように思われた。 表5。 動 きの引き出し方 架空の大 げさな動 き 極限の動 き 動 きの特徴が はっ きりしているもの 人 と変わった動 き (運動の課題 よ り) 観客がみてハ ッとした り,面
白いな と思 う ようなモチーフ リズムの刻 みに とらわれす ぎない リズムを与 えて動 いてみる 呼間で動 く 指導者がイメージにあった動 きを出す 師範す る ときがある 観賞 したステージの動 きや,ビ
デオでの先 輩 の動 きにヒン ト 写真や本 を参考 に リーダーが 自分 の動 きを他 の人 に模倣 させ, それ に新 しい動 きを加 えてい く 二人一組 でAの
動 きをBが
模倣 した りして発 翼4呼
間 を単位 に1段
階4呼
間 ×4…A
基本 のパ ター ンを A′になるよう子旨導2段
階4呼
間X8…
A
空間の使 い方 もい れて32呼間を基本 にす る 動 きの引 き出 し方 動 きの発展 の させ方鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 33巻 第
1号
(1991)D.想
像 した通 りに動 く 生徒 自身が まず動 く 生徒が創 った動 きを発表 子供たちに考 えさせた リーダーを決 め,各
個人 に責任 を持 たせた ビデオ等で個々の動 きを視聴 させた ビデオで生徒 の動 きを撮 り,自
分の動 きを観 て何 を考 えるか 生徒が まず動 き,バ
リエー ションを増やす 動 きの発展のさせ方 についての記述 として分 けた ものは小数で はあったが,動
きの引 き出し方 と 似た立場での内容があった。 このうち, 4呼
間を単位 に動 きを見つ けさせ,そ
れ を発展 させている 方法 は,形
式 を手がか りにす るもので,邦
(11上 江 口。からラバ ン理論 の流れを汲む指導者 によって広 く教育現場 に浸透 し,客
観的なよりどころとされて きた ものである。 しか し,聴
覚障害のある生徒 への指導法 として は,規
制 の方が多す ぎる手がか りで はないか と思われ る。 。作品づ くり 作品 として まとめる活動 については図8のようであった。高等部 ほ ど生徒 中心 に行われていた。 中 学 部 高 等 部4麟
帥 6i苺華雪露肇華垂華華華霊葺華 4睡華垂著議雪霊尋語 2:三Ξ
ttΞΞ
A B C D la 17コ
lA:生
徒 たちがグループで相談 してテーマやイメージづ く りか ら動 きづ くりまで全部考 え作品 としてまとめた B C D 半分 くらい教師がかかわって作品 としてまとめた ほとんど教師がかかわって作品 としてまとめた穿
9猿法
翫雪
募
皇亀
3えと
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な
かった
がィメ
ージ
図8
作品のイメージづくり(単位:人) 中学部で指導者が作品 をまとめるのに関与す る割合が高かった。中学部で は,学
習段階 として作 品をまとめる段階 にまで達 していない と思われるが,そ
の段階な りの まとめ方の工夫 も,達
成感 を 高めるためには必要である。 高等部 になればダ ンス経験が少な くて も,表
現 したい ことを作品 として まとめる力があるとも考 えられるが,こ
の結果 を学習の発展の様子 ととらえることもで きる。学習が継続 されることの重要 性への示唆 と考 えたい。 ・ 伴奏音楽,
リズムやタイ ミングの合わせ方 ダンス指導全体 で も尋ねたが,聴
覚障害児 のダンス指導 に於てハ ンデ ィと考 えられ ることの多い 伴奏,友
だち と併せて踊 ることについて,創
作ダンスの指導での実状 を自由記述で尋ねた。 回答 は大別 して3つの考 え方 に分 けられた (表6)。表
6.伴
奏音楽, リズムやタイ ミングの合わせ方 合わせ方 実 践 し た 方 法 生徒 の動 き に合 わせ る6人
お互 いの呼吸で合わせ る 現在 はリズムを合わせ ることを第一 としない 伴奏音楽 は無 しで今回 は行 った 生徒の動 きに合 う曲を選 んだ 生徒 の創 った リズムに太鼓 を合わせ る 床 をな らしステ ップさせ る 音楽 に合 わ せ る 9ノ粍 聞 こえる生徒 中心 に反復練習(2人
)
よ く聞 き,聞
き取 るまで繰 り返す 時間 をか けて曲を感 じ取 らせてか ら動 きにはいる 呼間 を数 え声 を出させなが ら動 く(2人
) 変速的な リズムでな く一定の リズムが打てる曲を選 び,呼
関数 を覚 えさせ何度 も練 習 させた 動 きのフレーズ (16∼ 32呼間)を
覚 えた ところで太鼓 の合図 をはずす フロアーに置いたス ピーカーの振動で伝 える 指 導者 の指 示 に合 わせ る5ノ
に タイコ,手 ,で
指揮 した 手 を打 つた り,指
示棒 を振 った りで指示 を出す 指導者 の合図(2人
) 指導者が師範 を示 し模倣 させ る 佐分利育代・井上茂子 :聾学校におけるダンス学習指導 生徒の自己表現 としての創作 ダンスの学習 に もかかわ らず音楽や指導者 の合図に合わせて踊 って いる生徒が多かつた。「現在 はリズムを合わせ ることを第一 とはしていない」と回答 を寄せた指導者 も,「以前 はより聞 こえる生徒 にたよって リズムを合わせた り光刺激装置で完璧 に合わせ るようにし た」 とその考 え方の変化 を記述 しているが,生
徒の表現 を主体 として,伴
奏 をとらえる指導者が ま だまだ少ない ことがわか る。 創作ダンスに於 ける伴奏音楽 は,表 現 を助 けるもの として使 われ るものである。M.ドウブラーが, 「 リズム構造 を通 して,音
楽 は運動反応 の リズム的形式 を導 き,ム
ー ドや観念 に対 して舞台装置 を 与 えることがで きよう。」 と,述
べ るように°9,聴
覚 に障害の無い子 どものダンス倉」作過程 に於て, 音楽 はイメージをぶ くらませ,作
品を組み立て るのを助 ける。 しか し聾学校で は,イ
メージを豊か にす ることより,音
楽 の リズムに合わせ ることに何倍 も精力 を使わ されている生徒が多いのが実状 のようである。表現 は伴奏音楽 との相乗効果で より強め られ るもので はある力単10,聴
覚 に障害のあ る生徒のダンス作品の場合,そ
れ は聴覚 に障害の無 い観 る側 に とっての問題 になる。聴覚 に障害の ある生徒 に とって,音
楽 にあっているか を気 にしなが ら踊 ることが どれほ どの意味 を持つのか疑問 である。 しかし,イ
メージの引 き出 し方におけると同様,こ
れ も純粋 にダンスでの表現 を楽 しませたい と の立場か らの考察である。創作 ダンスの学習 をリズム教育 として とらえるな ら,ま
た,聴
く能力の ある限 り音楽 も聞かせ その感 じを味わわせたい との視点で指導 されるのであれば,「音楽 に合わせる」 指導全てを拒む ことはで きない。そしてそのような立場 に立つ として も,既
成 の リズム,特
に単純 な拍節的な リズムを体験 させ るのみにとどまらず,生
徒 自身の内的な リズムの現れ としての運動の リズムをも体験 させたい。 ここに創作ダンスを学習内容 とす るひ とつの意味がある。 ・ グループ活動のさせ方 グループ活動 に関 して,グ
ループの人数,構
成,創
作活動の進 め方等,20人
か ら回答があつた。 グループの人数で は,「 6・7人
」「3人
以上5人
以内で」「2・ 3・ 4と 増や していつて」 など,鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第33巻 第
1号
(1991) 学習内容や,生
徒 の希望 によって流動的に考 えられている事がわかった。一方「グループ活動 にま で至 っていませんJと
の回答 も1つであるがあった。 グループの構成 は,「学年が混 ざって」「学年毎 に」「好 きな もの同志で」等 これ も流動的で,少
人 数,学
年混合でのグルー ピングに対 す る問題点 をあげた指導者 はなかった。 しか し活動 の進 め方 に関 して,「リーダーが中心で協力 して(2人
)」「一人一人が動 きを考 え,そ
れをつな ぐよう指示 した」等の他,「リーダーが教師のサブ的役割」「聞 こえる生徒 を主 にや らせて しまい」「能力 の高い生徒が主になって しまっている」「なかなか意見が まとまらず,何
時間 も話合 いのみに終わ り身体活動が少な く残念」の問題点が寄せ られた。先の,「グループ活動 にまで至 って いません」の回答 を含 め,理
想 とす る活動が得 られない実態報告である。 問題点の中には特 に リーダーのあ り方 に対 する混乱があるように思われる。グループ表現 を追求 するための リーダーか,指
導者 との通訳 なのか,伴
奏 を聞いて伝 える役なのかの混乱である。生徒 同志の活動 に指導者が どの様 にかかわ るか と同時 に,そ
のコ ミュニケーションの問題がある。 これ は聾学校特有 の問題 ともいえる。 以上,実
践 されている指導法 には,聾
学校特有 のあるいは,普
通学校 にも共通 の問題点があった。4.お
わ りに 全国の聾学校 中学部,高
等部 の体育指導者 を対象 とす るダンス及び創作ダ ンス学習指導の実態 に 関す る調査 よ り得 られた結果 をまとめると次のようである。1.ダ
ンスは,49,0%の
聾学校で学習指導 され,創
作ダンスの実施率 は中学部で23.6%,高
等部 で31.9%で
あった。2.ダ
ンス学習指導実施 の有無 にかかわ らず指導者 は,「リズム」「感情」「表現・伝達」「いろい ろな運動体験」の特性 を持つ とのダンス観 を持 っている。実施 した指導者 は「生徒 の普段で は み られない面が発見で きる」「楽 しく体力づ くりをさせ られる」教材 ともとらえている。3.創
作 ダンス学習指導が実施 されない理 由は,指
導法具体化の問題以前 に,「生徒が興味 を持 ち に くい教材 とのダ ンス観」,「指導者 の経験不足」と「ダ ンス教材 の特性への不理解」のように, 『創作ダンスの特性 自体がいまだに指導者 に具体的に把握 されていない こと』が あげ られ る。 創作 ダンス学習指導実施 のためには,「創作ダ ンスの教材 としての特性 を具体的なデータを通 して指導者 に理解 させ,明
確 な創作 ダンス観 を持 たせ ることで,学
習指導への指導者 の非積極 性 を積極性 に転換すること」が課題 である。4.創
作ダンスを実際に指導 している方法か ら,聾
学校での創作 ダンス学習指導の課題 として次 の ことがあげられた。 《イメージの持 たせ方》 運動の持つ表現性や,運
動体験 を通 してのイメージを学習の手がか りとしてい る指導者 は少 な く,言
語表現 をダンスの手がか りとして考 えている指導者が最 も多かった。 言語表現 とどうかかわ らせてい くかの,聾
学校 としての課題がある。 《動 きの引 き出 し方》 学習者 自身の体験の結果 としてのダンスの動 きへのアプローチの方法 を,直
接的 な言葉でア78
佐分利育代・ 井上茂子 :聾 学校 におけるダンス学習指導 ドバイス している指導者 は少な く,指
導者 の多 くは,創
作 ダンスの動 きに対す る明確 な運動観 を持たないで指導 しようとしているようであつた。 《作品づ くり》 高等部 ほ ど生徒 中心に作品づ くりが行 われ,中
学部で は指導者が作品をまとめることに多 く 関与 していた。学習段階な りの,表
現の まとめ方の工夫が必要である。 《伴奏音楽,
リズムやタイ ミングの合わせ方》 生徒 の表現 を主体 として,伴
奏 を とらえている指導者が まだまだ少 ない。イメー ジの表現 よ り,音
楽 の リズムに合わせ ることに何倍 も勢力 を使 わされている生徒が多い。 リズム教育 との関わ りに於 て聾学校特有 の課題がある。 《グループ活 動のさせ方》 少人数,学
年混合 に対す る問題 をあげた指導者 はなかったが,特
に リーダーのあ り方,グ
ル ープ表現 を追求す るための リーダーか,指
導者 との通訳 なのか,伴
奏 を聞いて伝 える役 なのか に,混
乱がある。生徒同志の活動 に,指
導者が どの様 にかかわ るか と同時 に,そ
のコ ミュニケ ー ションの問題があ り。 ここに聾学校特有 の課題がある。 小学校教師 を対象 とした1978年の調査結果 を例 に西谷 らは,子
どもたちの「ダンス嫌 い」の原因 として,教
師の指導上 の問題,教
師のダンスに対 す る臆病 な姿勢 をあげている。そ して,指
導 目標 の明確化 と,日
標 にしたがった指導体系の確立が その解決法 とし,他
の表現教材 との比較 によって 目標 の検討,学
習内容へ と考察 を進 めている(15ち また茅野 らも,栃
木県での中学校 のダ ンス指導の 実態調査 を通 して「誰 にで もで きる指導法の充実が早急 に望 まれている」 と報告 してい る。0。 1982年に行 った鳥取県内の小学校教師 に対す る調査で も,ダ
ンス指導の問題 は指導者 自身の問題 解決 にあると考 えている教師が多かつた。つ。しか しその内容 としてあげられた,「教師のダ ンス指導 に対す る意識 の変革」,「実技研修への参加」,「意欲 の向上」 はむしろ,指
導体系の確立や指導法の 充実 よ りも西谷 らの「他教科で は補 うことので きないダンスの特殊性 を高 く評価す るな らば」(1めの 前提が受 け入れ られているか どうかの地点 に留 まるものである。 この ことは今回の調査結果,ダ
ン ス学習指導の課題 は,「ダンスの特性 を具体 的に把握 していない指導者の存在」との視点 と共通す る といえる。それが解決 されない限 り,
どれだけ指導法が示 されて もダンスの経験 は子 どもに届かな い。聾学校で も障害 を持たない子 どもの学校 において もまず第一 に指導者 のこの問題 か ら着手 し直 さなければな らないのが現状 といえる。 最後 に,本
研究での調査 にご協力下 さった全国の聾学校 中等部,高
等部 の体育科担 当の先生 方に深 く感謝致 します。注および引用文献
桜井 博 :聴覚障害児の運動能力についての一考察一本校の12, 学附属養護学校紀要,第6巻 ,1984年 桜井 博 :聴覚障害児の体力についての一考察一本校の12,13, 養護学校紀要,第7巻 ,1985年 13,14才 児の 8年 間の推移か ら一,筑
波大 14才児の 8年 間の推移から一筑波大学附属 (3)桜井 博 :聴覚障害児の体力・運動能力の最近10年間の変化,筑波大学附属養護学校紀要,第
8巻 ,1986年鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第33巻 第
1号
(1991) 79
(4)桜井 博 :聴覚障害児体百② 聴覚障害幼児の「運動あそび」と運動能力,障害者体育,V01.3,No l,1982 年G)佐
分利育代 :ダ ンスの即興表現の発達について一聴覚障害児を対象 として一,山 陰体育学研究,第 2号 ,1986 年 (6)佐分利育代 :グ ループによる即興表現について一聴覚障害児のダンス学習を対象 として一山陰体育学研究, 第 3号,1987年(7)Fran J.Levy:Dance Movement Therapy A Healing Art,AAHPERD,1988年
俗