1207
74.
611. 44成 人 ニ 發 見 セ ラ レ タ ル 甲 状 腺
形 成 缺 損
ノ1剖
檢 例
岡山醫科大學病理學教室(田 部教授 指導)
佐
野
進
[昭 和7年10月28日 受 稿]Aus dem Pathologischen Institut der Okayama Med. Fakultat
(Leiter: Prof. Dr. H. Tanabe).
Uber einen
Sektionfall
von Schilddrusenaplasie
bei Erwachsenen.
von
Dr. Susumu Sano.
Eingegangen am 28. Oktober. 1932.
Bei Erwachsenen findet man die totale Schilddrusenaplasie
aussert selten.
Ver
fasser hat uber einen Fall von Schilddrusenaplasie in dem physiologischen Fundorte
berichtet, die er bei der Sektion an einer 43 jahrigen Frau, welche keine Symptome von
Funktionsstorungen
der Schilddruse intra vitam zeigte und
an akuter Pneumonie
starb, bemerkt.
Pathologisch-anatomisch war hochgradige Fettsucht vorhanden, der
Korperbau war im allgemeinen Proportional, nichts Adnormes war an dem Wachstum
zu bemerken.
Struma war an dem Zungengrund und
dem Zungenbein zu finden.
Hyperplasie der Hypophyse, Atrophie der Nebenuierenrinde und
Hyperplasie
des
Nebennierenmarkes war zu bemerken.
Der Tumor des Zungengrundes bestand hauptsachlich aus Schilddrusen-gewebe.
Da aber in einem Teile der Zungengrundstruma,
welcher besonders unterhalb des
Foramen caecum linguae liegt, ein mit Flimmerepithelien bekleidetes drusiges Gewebe
zu sehen war, muss diese Struma des Zungengrundes wohl aus dem Ductus lingualis
hervorgekommen sein. Die Struma des Zungenbeins bestand hauptsachlich aus eigent
lichem Schilddrusen-gewebe und
muss daher aus dem Ductus thyreoideus herovr
gewachsen sein.
Da die Frau
keine bedeutenden
Ausfallerscheinungen
der Schilddruse
intra
vitam
zeigte,
muss
die
Struma
des
Zungengrundes und
die
des
Zungenbeins
eine
im
ganzen
vollkommene
Schilddrusenfunktion
gehabt
haben,
obwohl
die Fettsucht
wabr
scheinlich
auf leichtere
Funktionsstorungen
der Schilddruse
zuruckzufuhren
ist.
Bei
der Hyperplasie
der Hypophyse und
dem Auftreten
von grossen
chromophoben
Zellen
in dem
Vorderlappen
handelt
es sich wohl um eine korrelative
Veranderung,
welche
sich infolge
der
Schilddrusenaplasie,
bzw.
der
Funktionsstorungen
der
Schilddruse
entwickelt
hat.
(Auroreferat.).
目
次
第1章 緒
言
第2章 實驗例
第1節 臨牀的所 見概要
第2節 剖檢所見摘要
第3節 病理組織學的所見
A.頸 部 腫 瘍 所 見 B.内 分 泌 臟 器 所 見 C.内 臟 諸 臟 器 所 見 第3章 總 括 及 ビ考 按 第4章 結 論第1章
緒
言
1850年Curling1)ハ10歳 ノ 「ク レ チ ン」症 ヲ有 セ シ小 兒 ニ 於 テ 甲 状 腺 ノ 形 成 ヲ 其 ノ 正 常 部 位 ニ 認 メザ リ シ事 ヲ 報 告 シ テ ヨ リ, Fletscher, Beach2) , Bournevill3), Pineles4)等 ノ 諸 氏 ハ 何 レモ 甲 状 腺 機 能 障 碍 ノ症 状 ヲ以 テ 斃 レタ ル 小 兒 ニ於 テ 甲 状 腺 形 成 缺 損 ヲ 發 見 シ, Pineles4)等 ハ 本 症 ハ先 天 性 粘 液 水 腫 ト密 接 ナ ル 關 係 ヲ 有 ス ル モ ノ ナ ル コ トヲ 論 ゼ リ.又 本 症 ノ 病 理 解 剖 學 的 所 見 ニ 關 シ テ ハMaresch5), Aschoff6), Erdheim7), Dieterle8), Un germann9), Zuckermann10),Schilder11), Schultze12), Boyce u. Beadles14), Rocaz Cru chet13), Mac, callum15), Fabyan15)等 ニ ヨ リ報 告 セ ラ ル.而 シ テ 之 等 ノ 諸 例 ヲ 見 ル ニ 殆 ド常 ニ 甲 状 腺 機 能 ノ脱 落 症 状 テ 呈 シ,弱 年 ニ テ 死 亡 セ リ.
成 人 ニ 於 テ 甲 状 腺 ノ 完 全 形 成 缺 損 ヲ見 ル コ トハ 甚 ダ 稀 有 ニ シ テ 余 ノ 渉 猟 セ シ文 獻 ノ範 圍 ニ 於 テ ハ 唯Ungermann9)ガ30歳 ノ 男 子, Zackermann10)ガ41歳 ノ 女 子, Schultze12)ガ26歳 ノ 女 子 ニ 於 テ 經 驗 セ シ例 ア ル ニ過 ギ ズ.
余 ノ 茲 ニ 報 告 セ ン トス ル ハ, 43歳 ノ女 ニ シ テ 急 性 肺 炎 ヲ 主 因 ト シ テ 他 界 セ ル 屍 體 ノ剖 檢 ニ際 シ偶 々 正 常 部 位 ニ於 ケ ル 甲 牀 腺 完 全 形 成 缺 損 ヲ見 出 シ タ ル 稀 有 ノ例 ナ リ.
成人 ニ發見 セ ラレ タル甲状腺 形成缺損 ノ1剖 檢 例
1209
第2章
實
驗
例
第1節
臨 牀 的 所 見 概 要
近 ○ 美○ 哀. 43歳.女.職 業.看 護 婦 寄 宿 舎 々監 既 往 症 遺 傳 的 關 係 トシテ認 ム ベキ モ ノナ シ,平 素 健 康 ニ シテ 既 往 ニ 於 テ特 筆 ス ベ キ疾 患 竝 習 癖 ナ シ. 大 正14年1月3日 突 然惡 寒 發 熱,體 温38°-39°, 最 初 右 胸 痛 ヲ訴 ヘ シ ガ次 デ左 胸 痛 ヲ訴 フル ニ至 ル, 咳 漱 喀 痰 ア リ,次 第 ニ呼 吸 困 難 トナ リ,食 慾 不 振, 睡 眠 障 碍 セ ラレ,依 テ 大 正14年1月15日 當 大 學 附 屬 醫 院 ニ入 院 ス. 現 症 體 格 榮 養 中等,體 温38.2C,舌 ハ 被 苔 セ ラ レ,咽 頭 發 赤 シ,扁 桃 腺 腫脹 ス.胸 部右 側 後 下 部 ニ 細 小 水 泡 音 ヲ聞 ク,右 側 前後 共 ニ濁 音 ヲ呈 シ,下 部 ニ至 ル ニ 從 ヒ 著 明 ナ リ,呼 吸 雜 音 ハ 一般 ニ微 弱 ニ シ テ 後 下 部 ニ於 テ 捻 髪音 ヲ聞 ク,心 臟 音 微 弱,大 正14 年1月19日 死 亡. 臨 牀的 診 斷 急 性肺 炎第2節
剖 檢 所 見 摘 要
田部教授執刀
死後18時 間 經 過 體 格 中 等,榮 養 可良,體 重545kg.身 長140.0cm 強 ク肥 満 ス,皮 膚 蒼 白 乾 燥 ニ シテ 稍 々弛 緩 ス,頭 部 頭 髪 色 黒 島 シテ 發 育良,眼 瞼 結 膜 蒼 白 稍 々 黄疽 色 ヲ 呈 シ角 膜 溷 濁 シ瞳 孔 散 大 左 右 同 大 ナ リ,頸 部 短 ニ シ ト太 ク淋 巴 腺 ノ腫 脹 ヲ觸 レズ,胸 部 膨 隆 ノ程 度尋 常, 乳 房 ハ 小兒 頭大 ニ シテ 緊 張 シ硬 度 硬 シ,四 肢,陰 部, 肛 門 ニ異 常 ヲ 認 メズ,皮 下脂 肪 組 織 ノ發 育 可良 厚 サ 胸 部 ニ於 テ3.3cm腹 部 ニ於 テ7.2cm筋 肉 ノ發 育 微 弱 ニ シテ褐 色 ヲ呈 ス. (腹 腔 概 觀) 腹腔 ヲ開 ク ニ,體 壁 腹 膜 白 色 表 面 平 滑 濕 潤 光 澤 ア リ,大 網 膜 ハ胃 部 ノ下 方 ニ捲 退 シ脂 肪 ニ富 ミ血 管 怒 張著 シ,胃 ハ瓦 斯 ヲ以 テ 膨 満 シ下 縁 ハ正 中 線 ニ於 テ 劍 状 突 起 下20.0cmニ ア リ,漿 膜 ハ平 滑 濕 潤 光 澤 ア リ,腸 管 ハ 瓦 斯 ヲ以 テ膨 満 シ其 ノ漿 膜 平 滑 ニ シテ 蹄 係 相 互 ニ癒 着 ヲ認 メ ズ,蟲 様 突起 ハ繊 維 性 ニ周 圍 ノ 組 織 ト癒 着 ス,肝 臟 下縁 ハ 右 乳 線 ニ於 テ 肋 骨 下 縁 ヨ リ10.0cmノ 所 ニ在 リ,脾,腎,副 腎,膵 臟 ノ位 置 尋 常,腎 臟,脾 臟,副 腎 ハ ヨ ク發 育 セ ル 脂 肪 組 織 ニ ヨ リテ被 包 セ ラ ル,腸 間 膜 ハ平 滑 濕潤 ニ シテ 腸 間 膜, 淋 巴 腺 ノ腫 脹 ヲ認 メズ,膀 胱 収 縮 シ 内 ニ尿 ヲ容 レズ, 骨 盤 腔 及 ビ腹 腔 内 ニハ 異 常 ノ内容 ナ シ. 横 隔 膜 ノ高 サ,左 第6肋 骨,右 第5肋 間 (胸 腔 概 觀) 胸 腺 ハ全 ク脂 肪 化 ス,縦 隔 賓 異 常 ナ シ,心 嚢 内 ニ ハ 約100.0ccノ 淡 青 黄 色 水 様 液 ヲ容 ル,左 胸 腔 内 ニ ハ惡 嗅 ア ル 黄 色 化 膿 性 液 ヲ約800.0cc容 ル,肋 膜 ハ 胸 壁 ト固 ク繊 維 性 ニ癒 着 セ リ. 心 臟.大 サ 本 屍 手 拳 ノ約1倍 半 大,硬 度 稍 々尋 常 ヨ リ軟,外 膜 色淡 平 滑,外 膜 下脂 肪組 織 ノ發 育 著 シ, 腱 斑 ヲ認 メ ズ,冠 状 血 管 走 行 太 サ尋 常,左 室 腔 ノ大 サ稍 々大 ニ シ テ 肉 柱通 常 ニ比 シテ 太 シ,乳 嘴 筋 著 シ ク肥 厚 ス,筋 質 ノ厚 サ2.0cm色 稍 々淡 褐 色,少 シ ク 溷 濁 ス,所 々ニ於 テ 黄 色 ヲ帯 ブ,内 膜 色 淡 平 滑 灰 白 色 ハ微 細 ナル 線 條 ヲ認 ム,瓣 膜 装 置 ニ異 状 ナ シ,左 心 房 腔 ノ大 サ常 ニ比 シテ 大,内 膜 色 淡 ニ シ テ灰 白色 ノ微 細 ナ ル 線 條 ヲ認 ム,心 耳 内 ニ ハ 暗 赤 色 ノ血 液 凝 塊 ヲ容 ル,右 室 乳 嘴筋 ノ發 育 著 明 ニ シテ 内 膜 色 蒼 白, 筋 質 ノ厚 サ, 0.7cm,色 淡 硬 度 常 ニ比 シ稍 々軟,肉 柱 間 ニ 於 テ暗 赤 色 ノ血 液 凝 塊 及 ビ灰 白 色 ノ血 液 凝 塊 ヲ 附 着 ス,剥 離 困 難 ナ リ,右 心 房 腔 ノ大 サ 著 シ ク大.内 膜 平 滑 色 淡,心 耳 内 ニ暗 赤 色 ノ凝 血 ヲ認 ム ル モ剥 離 ハ 容 易 ナ リ,卵 圓 孔 ハ鎖 閉 ス. 大 動 脉起 首 部,幅6.0cm,内 膜 淡 黄 色 石 灰 様 色 ヲ 帯 ブ,硬 度 軟 骨 様 ナ リ,所 々 ニ硬 度 硬 カ ラザ ル灰 白 色 ノ隆 起 ヲ認 ム. 冠 状 動 脉.太 サ 常 ニ比 シテ小,内 膜 平 滑,所 々 ニ 黄 色 ノ扁 平 隆 起 ヲ認 ム. 左 肺,形 態 尋 常,大 サ右 肺 ニ比 シテ著 シ ク小 ナ リ, 表 面 ハ 上葉 ノ後 側 及 ビ肺 尖 部 ニ於 テ灰 白色 稍 々 血 色 ヲ混 ズ ル 繊維 素 性 物 質 ヲ附 着 ス,前 外 側 部 ハ 略 ボ全 面 ニ亙 リ大 ナ ル 膿腔 ノ壁 ニテ 被 ハ ル,壁 ハ 表 面 著 シ ク灰 青色 膿 様 物 質 ヲ以 テ 被 ハ レ結 締 織 ノ肥 厚 ヨ リ形 成 セラ ル,上 葉 ハ 後 側 ニ於 テ ハ 捻 髪 音 ヲ聞 キ 含 氣 性 ノ液 ヲ出 ス コ ト著 シキ モ其 ノ他 ノ部 分 ハ無 氣 性 ニ シ テ 色 淡,限 局 性 硬結 ヲ觸 レズ,下 葉 殆 ド全 葉 ニ亙 リ 稍 々灰 白色 ヲ帯 ビ殆 ド無 氣 性 ニ シテ 彈 力 性 ニ乏 シク 液 ヲ出 ス コ ト少 ナ シ,又 限 局 性 硬 結 ヲ認 メズ,氣 管 枝 粘 膜 色 稍 々 血色 ニ 富 ム一 般 ニ輕 ク腫 脹 シ少 量 ノ粘 液 ヲ以 テ 被 ハ ル,氣 管 枝 淋 巴 腺 碗 豆 大 ニ腫 大 シ割 面 帯 縁 黒 色 ナ リ,血 管 ハ 内面 平 滑 ニ シテ 黄 色 ノ脂 肪 斑 ヲ認 ム. 右 肺.形 態 尋 常 ヨ リ稍 々 大,硬 度 略 ボ通 常 ナ リ殆 ド全 面 ニ亙 リ輕 キ 浮腫 ノ部 分 ヲ認 ム 之 ヲ壓 ス ル ニ捻 髪 音 ヲ 聞 カ ズ,割 面 色 淡 血 量 ニ乏 シ各葉 ニ於 テ 同 様 ニ泡 沫 液 ヲ 出 ス,限 局 性 硬 結 部 ヲ認 メズ. 氣 管 枝 粘 膜 赤 色 ニ シテ 輕 度 ニ腫 脹 シ稍 々灰 白 色 ノ 粘 稠 液 ニ ヨ リ被 ハ ル,氣 管 枝 淋 巴 腺 ハ米 粒 大 ニ シテ 色 蒼 白,血 管 ノ腔 ノ大 サ 略 ボ 普 通 ニ シ テ異 常 物 ナ シ, 内 膜 色 淡 ニ シテ 所 ニ 々黄 色 ノ斑點 ヲ認 ム. 頸 部 各臟 器 舌.形 態 大 サ 尋 常,硬 度 稍 々 強 ク,外 面 色 淡 舌 苔 ヲ認 メズ,割 面色 淡 ニ シテ血 量 ニ乏 シ,舌 根 部 淋 巴 腺 腫 脹 シ所 々 ニ輕 ク粟 粒 大 ニ至 ル溢 血斑 ヲ認 ム,舌 根 部 ヲ深 ク正 中 線 ニ沿 ヒ切 割 ヲ加 フル ニ舌 盲 嚢 ヨ リ 後 方 舌 骨 ニ至 ル 斜 線 ヲ直 徑 ト シテ周 圍 ノ舌 組 織 卜全 ク 境 界 ヲ 明 カ ニセ ル限 局 性 腫 瘍 然 組 織 ヲ認 ム,大 サ ハ稍 々腕 豆 大 ニ シテ 圓 形色 灰 褐 色 ヲ呈 シ周 圍 ヨ リ結 締 織 繊維 ヲ以 テ包 被 セ ラル,實 質 ハ 甲状 腺 様 ノ觀 ヲ 呈 シ一 種 ノ膠 様 物 質 ヲ容 ル,其 ノ間 ヲ結 締 織 繊 維 ノ 網 状 ニ走 行 セ ル ヲ見 ル,筋 質 ハ一 般 ニ淡 色 ヲ呈 ス. 扁 桃腺.左 右 同 大, 2.3×1.0×0.8cm,表 面 色 淡, 割 面色 淡 ニ シテ 硬 度 略 ボ尋 常,左 扁 桃 腺 ニ小 ナ ル 灰 緑 色 ノ化 膿 部 位 ヲ認 ム. 咽頭 粘 膜.輕 度 ニ腫 脹 ス. 食道 粘 膜.稍 々色 蒼 白 ニ シテ臚 胞 ヲ認 ム. 喉 頭粘 膜.輕 度 ニ腫 脹 シ色 淡稍 々黄 色 ニ富 ム. 聲 帯.浮 腫 状 ヲ呈 ス. 氣 管粘 膜.色 淡 ニ シテ腫 脹 ス. 甲 状腺.兩 側 共 ニ 之 ヲ正 常 發 生 部 位 ニ認 ム ル コ ト ヲ得 ズ,固 有 ノ甲 状 腺 部位 ニア タ リ左 右2箇 ノ約 小 豆 大 ノ嚢 腫 ア リ,周 圍 ハ脂 肪 組 織 ヲ以 テ被 ハ レ色 ハ 白 色 ニ シテ透 明 ナ リ,内 容 ト シテ 僅 ノ水 様 物質 ヲ容 ル. 上 皮 小 體.頸 部 ニ4箇 ヲ發 見 ス. 甲 状 軟 骨 前 側舌 骨 下 ニ接 シ テ前 正 中 線 上 ニ於 テ小 ナ ル 略 ボ球 形 ノ腫 瘍 ヲ認 ム,上 側 ハ細 キ 柄 ヲ以 テ 舌 骨 内 側 ニ入 ル,大 サ, 1.5×11×0.8cm色 ハ 蒼 白 稍 々 褐 色 ナ リ,割 面 稍 々透 明 ナ ル褐 色 味 ヲ帯 ブ,硬 度 ハ 彈 力 性 軟,内 ニ粟 粒 大 ノ暗 赤 色 ノ小 ナ ル限 局 竈 ヲ認 ム,舌 骨 内 側 ニハ 前 記 舌 根 部 腫 瘍 ニ類 似 ス ル外 觀 ヲ 呈 ス ル組 織 ノ發 育 ヲ見 ル. 脾 臟.重 量57.0g,大 サ80×6.0×1.5cm,形 態 大 サ 略 ボ尋 常 表 面 色 淡 ニ シ テ平 滑,割 面 暗 赤 色 ニ シ テ 血 量 ニ乏 シ櫨 胞 不 明,脾 材 著 明,脾 髓 ハ 稍 々軟,限 局 性 病 竃 ヲ認 メ ズ. 肝 臓.重 量1500.0g,大 サ23.0×(内 右 葉15.0)× 18.5×6.0cm,形 態 大 サ 尋 常,表 面 平 滑 色 淡 ナ ル モ 僅 ニ 紫 色 ヲ帯 ブ,硬 度 略 ボ尋 常,被 膜 ハ肥 厚 セ ズ, 割 面 蒼 白,黄 色 ニ 富 ム,小 葉 ノ像 ハ 大 部 分 明 カ ニ シ テ 溷 濁 ス,血 量 中 等 ニ シテ 静 脉 内 ニ赤 色 血 栓 ヲ認 ム
成 人 ニ發 見 セ ラ レタ ル 甲状 腺 形 成 缺 損 ノ1剖 檢 例 1211 其 ノ表 面 ニ灰 白色 ノ繊 維 素 性 物 質 ヲ附 着 ス,結 締 織 繊 維 ノ増 殖 ヲ見 ズ. 膽 嚢 内 ニ臟 汁16.0ccヲ 容 ル. 總 輪 膽 管 ハ開 通 ス. 膵臓.重 量75.0g,大 サ19.2×4.0×4.5cm,外 面 稍 々黄 色 ニ シテ硬 度 軟,周 圍 ノ組 織 ト強 ク癒 着 ス, 割 面葉 状 ノ像 著 明 ニ シテ色 黄 色 微 ニ光 澤 ニ乏 シ,其 ノ他 限 局 性 病 竃 ヲ認 メズ,間 質脂 肪 組 織 發 育 著 シ. 左 腎.重 量140.0g,大 サ10.0×6.5×4.0cm.周 圍 脂 肪組 織 ノ發 育 著 シ其 ノ黄 色 調 強 シ,硬 度 ハ 増 加 ス, 被 膜 ノ剥 離容 易,表 面 色淡 褐,星 芒 静 脉 充 盈 著 シ ク 小 腎 ノ像 明 カ ナ ラ ズ,硬 度 尋 常,割 面稍 々血 量 ニ富 ム 色淡 褐,皮 質 ノ厚 サ通 常,皮 髓 兩質 ノ境 界 明 瞭, 大 サ ノ關 係尋 常 限 局 性 病竈 ヲ認 メズ,腎 盂 腔 ノ大 サ 尋 常,内 膜 平 滑 ニ シ テ色 淡,所 々 ニ粟 粒 大 ノ溢 血 斑 数 箇 ヲ認 ム. 右 腎.重 量180.0g,大 サ11.3×6.9×3.0cm,周 圍 脂 肪組 織 ノ發 育 著 明,被 膜 ノ剥 離 容 易,表 面 色淡, 星 芒静脉 ノ像 明 カ ナ リ,割 面 色淡 褐 ニ シテ 血 量 ニ富 ミ,硬 度 略 ボ尋 常,皮 質 ノ厚 サ0.5cm,皮 髓 兩 質 ノ 境 界 ハ 明 カ ナ リ,腎 盂 内膜 色 淡 ニ シテ 僅 ニ血 管 ノ充 盈 ヲ認 ム 其 ノ1ツ ニ於 テ粟 粒 大 ノ溢 血 斑 数 箇 ヲ見, 輕 ク溷 濁 セ ル灰 白色 ノ内 容少 量 ヲ容 ル,周 圍 ノ脂 肪 組 織 ノ發 育 著 シ. 左 副 臀.重 量5.0g,大 サ5.0×2.5×0.9cm,周 圍 ノ 脂 肪組 織 ノ發 育 著 シ,外 面 脂 肪 組 織 ト癒 着 著 シ ク黄 色 僅 ニ赤 色 ヲ帶 ブ,割 面 硬 度 常 ニ比 シ軟,一 般 ニ血 量 ニ乏 シ,皮 質 著 シ ク黄 色 ヲ呈 シ一 部 分 ニ於 テ 髓 質 著 シク肥 大 ス. 右 副 臀.重 量4.0g,大 サ5.0×2.0×0.9cm,外 面 脂 肪 組 織 トノ癒 着 著 シク,色 淡 黄 色 僅 ニ 血色 ヲ帯 ブ 硬 度 軟,割 面 皮 質 血 量 ニ乏 シ著 シ ク黄 色 ヲ呈 シ稍 々 萎 縮 セ リ,色 素 層 ノ發 育良,髓 質稍 々著 シク肥 大 シ 其 ノ他限 局性 病 竈 ヲ認 メズ. 大 網 膜.表 面 平 滑 ニ シテ 脂 肪 組 織 著 シ ク發 育 シ, 細 血 管 ノ充 盈 稍 々強 シ. 胃.稍 々著 シ ク擴 張 ス,漿 膜 平 滑,細 血 管 僅 ニ充 盈 ス,内 ニ 汚穢 灰 白色 粥 摩 状 ノ物 質 ヲ容 レ粘 膜 ハ幽 門 部 ニ於 テ稍 々暗 黒 緑 色 ノ斑 點 ヲ認 ム,其 ハ部 分 ノ 細 血 管 ハ 充 盈 ス,物 質 缺 損 ヲ認 メ ズ. 十 二指 腸.一 般 ニ膽 汁 色 ヲ呈 シ,乳 頭 ハ 輕 ク腫 脹 シ,物 質 缺 損 ヲ認 メ ズ. 小 腸.全 長80.0cm,粘 膜 ハ皺 襞 尖 端 ニ於 テ細 血 管 ノ充盈 著 シ,其 ノ他 ハ稍 々腫 脹 シ色 淡 ニ シテ 輕 ク 黄 色 ヲ帯 ブ,軟 泥 様 帯 黄 色 物 質 ヲ以 テ被 ハ レ,廻 盲 部 淋 巴装 置 ニ腫 脹 ヲ認 メズ,廻 盲 部 色 淡 細 血 管 ノ充 盈 著 シ ク物 質 缺 損 ヲ見 ズ,蟲 様突 起 ハ 長 サ6.0cm,周 圍 ト輕 ク繊 維 性 ニ癒 着 シ中央 迄 開 通 ス夫 レ ヨ リ尖 端 ニ至 ル 約3.0cmノ 部 分 ハ硬 度稍 々硬 ク帯 緑 灰 白 色 ノ粘 稠 ナ ル化 膿 物 質 ヲ有 ス ル膿 瘍 ヲ形 成 ス. 直 腸.粘 膜 僅 ニ細 血 管 ノ充 盈 ヲ認 ム 物 質 缺 損 ナ シ. 腸 間 膜.平 滑 ニ シ テ脂 肪 組 織 ノ發 育 著 シ ク淋 巴 腺 ノ腫 脹 ヲ認 メズ 門 脉 内 膜 ニ脂 肪 斑 ヲ認 ム. 骨 盤 腔 臟 器 膀 胱,著 變 ナ シ. 卵 巣.右 卵 巣.重 量5.5g,大 サ3.8×2.9×1.5cm, 被 膜 灰 白色 ニ シテ 硬 ク凹 凸 不平 周 圍 ト輕 ク繊 維 性 ニ 癒 着 ス一 般 ニ平 等 ニ肥 厚 ス割 面 著 シク繊 維 性 ニ シテ 血 量 ニ乏 シ小 ナ ル嚢 腫 ア リ直 徑 略 ボ0.7cm,黄 體1 箇 ヲ認 ム卵 巣 門 ニ 近 ク暗 赤 色 ノ帯 褐 色 ニ シ テ黄 味 ヲ 有 ス ル斑 點 ヲ混 ズ ル 小 ナ ル限 局 竈 ア リ. 左 卵 巣.重 量9.0g,大 サ3.7×2.6×0,7cm,卵 巣 ノ 外 面 所 見 ハ右 卵 巣 ト同 様,割 面 ニ2乃 至3箇 ノ嚢 腫 ア リ其 ノ1ツ ノ直 徑0.7血 色 ニ 富 ム 内 容 ヲ容 ル. 左 輪 卵 管.後 半 部 ハ 著 シク腫 脹 シ,内 ニ少 量 ノ血 液 ヲ容 ル. 右 輪 卵 管.後 半 部 ハ強 ク擴 張 シ内 ニ暗 赤 色 ノ血 液 ヲ少 量 容 ル. 子 宮.大 サ7.0×5,0×3.5,内 膜 蒼 白,腔 ノ大 サ尋
131
常,内 ニ血液 ヲ混 ズ ル 少 量 ノ粘 液 及 ビ少 量 ノ暗 赤 色 ノ凝 血 ヲ容 ル,筋 質 異 常 ナ シ,子 宮 腟 部 ノ前 側 ニ當 リ直 徑 約2.3cmノ 略 ボ圓 形 ノ膨 隆 セ ル嚢 腫 ア リ,外 面 平 滑,細 血 管 ノ充盈 稍 々著 シ ク波 動 ヲ觸 ル,割 面 單 胞 性 ニ シテ 内 面 平 滑,内 ニ灰 白色 半 透 明 ノ粘 稠 ナ ル液 ヲ容 ル. 腟,異 常 ナ シ. 中樞 神 經系 統 ノ檢 査ハ 精 神 科 教 室 ニ譲 リタル ヲ以 テ 茲 ニ記 載 セ ズ. 大腦 下 垂 體.重 量1.49,大 サ2.0×1.3×1.0cm, 形 状 ハ 長 橢 圓 形 ニ シテ 下 垂 窩 ノ全 部 ヲ 満 ス.腦 下垂 體 皮膜 ハ 固 ク實 質 ト密 着 シ剥 離 ハ困 難 ナ リ,前 葉 ノ 一 部 ハ腫 瘍 状 ニ腫 大 シ,其 ノ他 ノ組織 トノ限 界明 カ ナ ル モ色 調 ニ差 違 ヲ認 メ ズ,其 ノ表 面 ハ 凹 凸 不 平 ニ シテ硬 度 ハ硬 シ割 面 前葉 バ一 般 ニ色 淡 紅 ナ リ,腫 瘍 状 部 ハ多 少細 血 管 充 盈 著 明 ニシテ 淡 赤 色 ヲ呈 ス. 松 菓 腺.形 大 サ尋 常 變 化 ヲ認 メ ズ. 病 理 解 剖 的 診 斷 1)甲 状 線 ノ正 常 位 置 ニ於 ケル 完 全 形 成 缺 損 2)舌 根 部 甲 状 腺 腫 3)舌 骨 下 甲 状 腺 腫 4)腦 下 垂 體 肥 大 5)副 腎 皮 質 ノ萎 縮 及 ビ髓 質 ノ肥 大 6)高 度 ノ脂 肪 過 多 症 7)心 臟 肥 大 及 ビ擴 張 8)動 脉 硬 化 9)左 膿 胸 10)左 肺 擴 張 不 全 及 ビ繊 維 素 性 肺 炎 11)扁 桃 腺 肥 大 12)脾 臟 萎 縮 13)急 性 絲 毬 體 腎 炎 14)慢 性 化 膿 性 蟲 様突 起 炎 15)卵 巣 萎 縮 及 ビ嚢 腫 形 成 16)再 側 喇 叭 管 炎 17)子 宮隆 部「ナ ボ ト」氏 小卵
第3節
病 理 組 織 學 的 所 見
A.頸 部 腫 瘍 舌 根 部 腫 瘍 腫 瘍 ノ周 圍 ハ全 ク結 締 織 繊 維 ニ ヨ リテ 被 ハル,腫 瘍 ハ 腺 様 實 質 組 織 ニ シテ大 小 不 同 ノ幾 多 ノ臚 胞 ヲ形 成 ス,臚 胞 上 皮 ハ多 クハ 單 層 ニ シテ 扁 平 或 ハ 高 キ骰 子 形 ナ リ,比 較 的 大 ナ ル臚 胞 ニ於 テ ハ 上 皮 細 胞 ハ扁 平 ニ強 ク壓 平 セ ラ ル,細 胞 境 界 明 カナ ラ ズ,核 ハ同 大 ニ シテ「ク ロ マ チ ン」ニ富 ミ一 般 ニ橢 圓 形 ナ リ,腺 腔 内 ニハ無 造 構 ノ「エ オ ジ ン」色 素 ニ染 マル 膠 様 物 質 ヲ容 レ其 ノ染 色 度 モ種 々 ニ シテ濃 淡 ノ差 ア リ又 アル モ ノ ニ於 テ ハ 大 小 ノ空 胞 ヲ其 ノ内 ニ見 ル ホ カ腺 上皮 ノ脱 落 セ ル モ ノ モ證 明 セ ラ ル,臚 胞 バ一 般 ニ擴 張 シ 其 ノ或 ル モ ノハ 内腔 交 通 シ不規 則 ナ ル形 ヲ トル モ腫 瘍 ノ邊 縁 ニ近 キ部 分 ノモ ノハ多 クハ 壓迫 セ ラ レ扁 平 ノ形 トナ リ腫 瘍 中 心 ノモ ノハ 圓形 ニ近 キ形 ヲ トル. 實 質組 織 ノ間 ニ於 テ 間 質 結 締 織 繊 維 ガ種 々 ノ方 向 ニ走 行 シ,ア ル モ ノハ 硝 子様 ニ變 性 ス,結 締 織 中 ニ ハ 又 多 ク ノ血 管 ア リ何 レモ擴 張 シテ 赤 血 球 ヲ 以 テ 充 盈 セ ラ レ又 臚 胞 内 ニ出 血 セ ル モ ノモ 認 メラ ル,尚 ホ 舌 盲 孔 ノ深 層 ニ ア リテ 限 局 性 ニ發 育 セ ル腺 様組 織 ヲ 見 ル,之 ハ前 記 ノ腫 瘍 組 織 ト全 ク異 ナ ル 所 見 ヲ呈 シ 一 部 ハ甲 状 腺 組 織 ト交 錯 シテ存 在 ス.腺 上 皮 ハ 氈 毛 圓 柱 上 皮 ニ シテ腺 管 又 ハ嚢 腫 ヲ形 成 シ其 ノ内腔 ニハ 上 皮 ノ脱 落 セ ル モ ノ及 ビ「ヘ マ トキ シ リ ンエ オ ジ ン」 染 色 ニ ヨ リ紫 色 ニ染 マ ル絲 状 ノ粘 液 様 物 質 ヲ容 ル コ ノ周 圍 ニハ 結締 織 繊 維 ハ殊 ニ著 シ ク増 殖 シ粘 膜 下組 織 リ於 テ其 ノ腺 ノ排 泄 管 タル大 小 ノ圓 柱 上 皮 ノ重 層 セ ル ヲ認 ム,右 腫 瘍 組 織 ト下 方 ノ筋 肉 組 織 トハ明 カ ニ結 締 織 纎維 ヲ以 テ 境 セ ラ ル,筋 肉 組 織 ニバ 一 般 ニ 脂 肪 組 織 ノ發 育 著 シ,舌 下腺 ハ間 質 結 締 織 ノ増 殖著 132成 人 ニ發 見 セ ラ レ タル 甲状 腺 形 成 缺 損 ノ1剖 檢 例 1213 明 ナル 他 著 變 ヲ認 メズ. 舌 骨 内腫 瘍 舌 骨 内面 ハ著 シ ク腫 瘍組 織 ノ タ メ ニ壓 迫 セ ラ レ骨 組 織 内 ニ一 部 腫 瘍 ノ侵 入 セ ル 部 分 ア リ,腫 瘍 組 織 ハ 看 根部 ニ存 在 セ シモ ノ ト殆 ド同 一 ノ構 造 ヲナ シ周 圍 ハ結 締 織 繊維 ヲ以 テ被 ハ レ 腺 様 實 質 組 織 ト種 々 ノ方 向 ニ走 行 ス ル間 質 結 締 織繊 維 ヨ リナ ル,腺 組 織 バ 一 般 ニ大 小 不 同 幾多 ノ臚 胞 ヲ形 成 シ其 ノ多 クハ 圓形 ヲ 呈 ス ル モ舌 骨 内 面 ニ 接 スル 部 分 ノ モ ノハ 多 少 扁 平 ノ 長 橢 圓 形 ヲナ シ臚 胞 上 皮 ハ 單 層 圓 桂 上皮 ニ シ テ核 ハ 「ク ロ マ チ ン」ニ富 ミ,ア ル モ ノ ニ於 テ ハ其 ノ原形 質 内 ニ褐 色 ノ色 素 顆 粒 ヲ含 有 シ,カ カ ル顆 粒 ハ マ タ臚 胞 内 ニ モ現 ル,間 質 結 締 織 中 ニハ 細 血管 ノ發 育 著 明 ニ シテ 何 レモ擴 張 シ赤 血球 ヲ以 テ 充 盈 ス. 舌 骨 組 織 バ 一 般 ニ萎 縮 性 ニシテ 菲 薄 トナ リ,「 ハ バ ー」 氏 管及 ビ骨髓 腔 ハ擴 張 セ リ. 舌 骨 下 腫 瘍 腫 瘍 組 織 ノ周 圍 ハ繊 弱 ナ ル 結 締 織 繊 維 ニ ヨ リテ被 ハ ル,腫 瘍 ノ柄 部 ハ 殊 ニ結 締 織 繊 維 増 殖 強 ク,其 ノ 部分 ヨ リ腫 瘍 ノ中 心 部 ニ向 ヒ多 ク ノ錯 走 セ ル結 締 織 繊 維 束 ヲ出 ス,實 質 ハ 略 ボ舌 根 部 竝 ニ舌 骨 内腫 瘍 ノ 所 見 卜大 差 ナ キ モ臚 胞 上皮 ニ於 テ 核 ノ分 裂 著 シ ク且 至 ル トコ ロ ニ認 メ ラル,腫 瘍 中心 部 ニア タ リ實 質 組 織 ガ比 較 的 太 キ結 締 織 繊 維 束 ニ ヨ リ圍 マレ タ ル區 域 ア リ,此 部 ニ於 テ 殊 ニ核 分 裂 像 ヲ顯 著 ニ認 ム,カ カ ル部 分 ニ ア リテ ハ 細 血 管 ノ新 生 増 殖 著 明 ニ シテ 腫 瘍 組 織 ノ増 殖 盛 ナ ル傾 向 ヲ示 ス,腫 瘍 内 ニ ア ル大 小 ノ 血 管 ハ 一 般 ニ擴 張 シ,赤 血球 ヲ以 テ 充 盈 セ ラ ル,又 腫 瘍 ノ邊 縁 部 ニ近 キ部 分 ニ於 テ 實 質 内 ニ著 シキ 出 血 竈 ヲ認 ム,新 鮮 ナ ル赤 血球 ヲ見 ル他,褐 色 ノ色 素 顆 粒 出現 セ リ. 頸 部 正常 甲 状 腺 ノ發 生 部 位 ニ相 當 シテ發 見 セ ラ レ タル2箇 ノ嚢 腫. 嚢 種 ハ多 房 ニ シテ 壁 ハ互 ニ連 合 シテ 内腔 ハ 單 層 ノ 上 皮細 胞 ニ ヨ リテ 圍 マレ 其 ノ上 皮 ハ立 方形 ニ シテ 氈 毛 ヲ有 ス ト雖 モ 其 ノ多 クハ 死 後 ノ變 化 ノ爲 メ消 失 ス 嚢腫 ノ内 容 ハ 「エ オ ジ ン」色 素 ニ ヨ リ薔 薇 赤 色 ニ染 色 シ大 部 分 ハ 無 構 造 ナ レ ドアル 部 分 ニ ア リテ ハ 絲 牀 ヲ 呈 ス ル モ ノア リ,空 胞 ヲ生 ズ ル モ ノモ亦 存 ス,而 シ テ 多 ク ノ彎 曲 セ ル嚢 腫 壁 ノ周 圍 ハ 微 弱 ナ ル結 締 織 繊 維 ヲ以 テ被 ハ ル モ其 ノ他 ノ部 分 ハ 脂 肪 組 織 化 シ,其 ノ組 織 中 ニ小 ナ ル多 数 ノ粘 液 腺 ノ存 在 シ,大 ナ ル 排 泄 管 ヲ有 シ,其 ノ管 内 ニ上 皮 ノ剥 脱 セ ル モ ノ ヲ容 ル. B.内 分 泌 臟 器 大 腦 下垂 體 前 葉.色 素嗜 好 細胞 ハ 中央 部 ニ比 較 的 少 数 ニ存 在 シ就 中鹽 基 嗜 好細 胞 ガ 著 明 ニ群 集 セ ル トコ ロ ア リ, マ タ「エ オ ジ ン」嗜 好細 胞 ノ集 合 ス ル トコ ロ ア リ,兩 者 ノ混 在 ス ル トコ ロア リテ,兩 種 細 胞 ノ出 現 程 度 ハ 略 ボ 同様 ナ リ,「嫌 色 素 」細 胞(Chromophobe Zellen) バ 一 般 ニ色 素 嗜 好 細 胞 ノ数 ヲ遙 ニ凌 駕 シ,周 邊 部 ニ 於 テ ハ特 ニ主要 細 胞 ガ著 シ ク 増殖 シ,梁 材 様 配 列 ヲ 呈 ス ル所 ア リ,其 ノ部 分 ニテ ハ細 胞 核 ハ 圓 形 或 ハ 長 圓形 ニ シテ 比較 的 「クロ マ チ ン」ニ乏 シ ク透 明 胞 状 ヲ 呈 ス,細 胞 體 ハ 原 形 質 ニ 乏 シ ク境 界 モ著 明 ナ ラ ズ, ア ル モ ノハ 腺 管 ノ状 ヲ呈 シ管 腔 ヲ有 ス,カ カ ル細 胞 ガ部 位 ニ ヨ リテ ハ瀰 蔓 性 又 ハ 限 局 性 結 節 状 ニ腺 腫 様 増 殖 ヲ來 セ リ,「嫌 色 素」細 胞 ノア ル モ ノハ 極 メテ 細 胞 體 ニ富 ミ甚 ダ大 形 ニ シテ細 胞 境 界 ハ鮮 明 ナ ラ ザ レ ド,略 ボ紡 錘 形 又 ハ長 橢 圓 形 ニ シテ 圓形 ニ近 キ モ ノ モ 存 在 シ,「 ヘ マ トキ シ リ ンエ オ ジ ン」染 色 ニ ヨ リテ 帯 青 淡 赤 色 ヲ呈 シ,「 ワ ンギ ー ソ ン」氏染 色 ニ ヨ リテ 淡 褐 色 ヲ呈 ス,核 ハ 頗 ル大 ニ シテ 胞 状 ニ シ テ 「ク ロ マ チ ン」 ニ乏 シク色 淡 ニ シテ 明 カ ナ リ.本 細 胞 ト主 要 細 胞 トハ其 ノ分 布 排 列 ニ於 テ密 接 ナ ル聯 絡 ヲ示 シ 中 間移 行 型 ヲ證 明 ス,腺 管 状 ヲ呈 ス ル モ ノハ 腔 内 ニ 「エ オ ジ ン」ニ染 マ ル膠 様 物 質 ヲ ア ラ ハ シ,マ タ時 ト シテ 之 ニ 著 明 ナ ル石 灰 ノ沈 着 ヲ認 ム,實 質 間 ノ血 管 ハ寳 状 ニ擴 張 シ血 液 ノ充盈 著 シ ク,且 膠 様 物質 及 ビ 133
多 數 ノ針 状 結 晶 ヲ證 明 ス,前 葉 ノ後葉 ニ近 キ部 分 ハ 主 トシテ 「エ オ ジ ン」嗜 好 細 胞 ア ラ ハ レ主 要 細胞 ノ増 殖 ハ乏 シ,其 ノ間 ニ少 數 ノ特 殊 ノ大 型 細胞 ア ラハ ル. 血 管 ノ甚 ダ シ ク強 ク賓 状 ニ擴 張 シ,血 液 量 多 ク,膠 様 物 質 ヲ容 ル. 中 間 部.膠 様 質 ノ充 盈 ハ 甚 ダ強 シ,尚 ホ 「プ ラ ス マ」細 胞 ノ集積 ヲ見 ル. 後 葉.表 面 ハ 結 締 織 纎 維 ヲ以 テ 包 マ レ,其 ノ中 ニ 圓 形 細 胞 ノ浸 潤 ア リ後 葉 組 織 ハ「ノイ ロ グ リヤ」様 結 締 織 ヨ リナ リ,ア ル部 分 ニ於 テ ハ所 々 ニ淡 褐 色,色 素 顆粒 ノ沈 着 ア リ,毛 細 血 管 ハ 何 レモ擴 張 シ,血 液 ヲ以 テ 充 盈 シ,血 管 内 ニハ 大 小 種 々 ノ大 サ ヲ有 ス ル 滴 状 ニ シテ「ヘ マ トキ シ リ ンエ オ ジ ン」染 色 ニ ヨ リ赤 染 ス ル膠 様 物 質 ヲ證 明 ス. 松 菓 腺.退 行 性 變 性 ニ陷 リ石 灰 ノ沈 着 高 度 ナ ル ヲ 認 ム. 上皮 小 體.間 質一 般 ニ「リボ マ トー ゼ」著 シ キ他 著 變 ヲ認 メ ズ. 副 腎.皮 質 束 状 層 及 ビ網 状 層 ニ於 テ ハ 毛 細 血 管 ノ 充 盈 著 シ,「 ズ ダ ン」III染 色 ニ ヨ ル ニ皮 質 ハ 類 脂 肪 ニ富 ミ,全 層 ノ實 質 ハ 殆 ド平 等 ニ黄 赤 色 ニ染 マ リ各 細 胞 ハ 大 小 ノ顆 粒 ヲ以 テ 充 盈 ス,髓 質 ハ皮 質 ヨ リ淡 明 ニ シテ 稍 々毛 細 管 ノ充 盈 強 シ,静 脉 ハ著 シ ク擴 張 シ,「 ク ロー ム」親 和 細 胞 ハ相 集 リテ圓 形 又 ハ長 橢 圓 形 ノ索 状 トナ リ,索 状 相集 リテ 網 状 ヲ呈 スル モ多 量 ニ ア ラ ズ,髓 質 組織 ノ所 々 ニ淋 巴 細 胞 ノ浸 潤 スル ヲ 見,又 少 量 ノ脂 肪 物 質 ヲ證 明 ス. 膵 臟.膵 小葉 ノ配 列 ハ 異 常 ナ ケ レ ド腺 細 胞 ハ 「チ モ ー ゲ ン」 顆 粒 少 ナ ク,且 腺 房 中 心 細 胞 ノ發 育 著 明 ニ シテ 「ラ ンゲ ル ハ ンス」島 ハ肥 大 ス. 卵 巣.一 般 ニハ 原 始 臚 胞 ハ其 ノ数 甚 ダ少 ナ シ,所 所 ニ多 数 ノ嚢 腫 性 變 性 ヲ現 ス,嚢 腫 ハ低 キ1列 ノ上 皮 ヲ有 ス ル モ ノ或 ハ 全 ク上 皮 剥 脱 セ ル モ ノア リ實 質 間 ノ結 締 織 ハ 増 殖 ハ 著 シ,褐 色 ノ色 素 顆粒 沈着 ヲ認 ム. C.内 臓 諸 臓 器 心 臟.筋 肉 一 般 ニ肥 大 シ,核 モ亦 著 シ ク大 ナ ル モ ノ多 シ,核 ノ兩 端 ニ ハ 褐 色 色 素 顆 粒 ガ稍 々 強 ク現 ル 共 ノ他 異 常 ヲ認 メ ズ. 肺 臟.左 肺.上 葉 ハ肺 胞 一般 ニ擴 張 不 全 性 ニ シテ 肺 胞 内 ニハ 剥 脱 上 皮及 ビ白 血 球 淋 巴 細 胞 ヲ容 レ,又 ア ル 部 ニ於 テ ハ 繊 維 素 性 物質 ガ ア ラハ ル,下 葉 ハ一 般 ニ炎 性 俘 腫 ヲ呈 シ所 々 ニ氣 管 校 末 端 強 ク擴 張 シテ 細 胞 及 ビ繊 維 素 性 滲出 物 ヲ充 満 シ,廣 ク壞 死 ヲ示 シ, 核 ノ崩 壞 強 シ・ 其 ノ變 化 ハ周 圍 ノ肺 胞 ニ及 ブ 之 ヲ中 心 トシテ 肺 胞 バ一 様 ニ強 ク繊 維 素 性 物 質 ヲ充 満 シ, 又少 量 ノ白 血 球 ヲ認 ム,間 質,所 々 ニ炭 末顆 粒 ヲ含 ム 大 ナ ル 細 胞 ノ出 現 ア リ殊 ニ 氣 管 枝 周 圍 ニ於 テ強 シ, 氣 管 枝 内 ニハ 圓 形 細 胞 殊 ニ淋 巴 細 胞 ノ出 現 ヲ見 ル, 血 管周 圍 ノ結 締 織 ハ著 シ ク増 殖 シ其 ノウ チ ニ 圓 形 細 胞 ノ浸 潤 セル モ ノア リ,下 葉 肋膜 壁 ハ 著 シ ク肥 厚 シ, 其 ノ部 ノ結 締 織 ハ 増殖 シ硝 子 様 トナ ル,而 シテ 淋 巴 細 胞 ノ浸 潤 ヲ見 ル,肋 膜 ニ近 キ部 即 チ 肺 ノ表 面 ニ近 キ 肪 胞 ハ何 レモ擴 張 不全 ヲ呈 ス. 右 肺.上 葉 ハ一 般 ニ氣 腫 状 ヲ呈 ス,中 葉 及 ビ下 葉 ハ 浮 腫 状 ニ シテ 肺 胞 内 ニハ 白 血球 ノ浸 潤 及 ビ色 素 顆 粒 細 胞 ノ出 現 ア リ,中 隔 組 織 ニハ 彈 力繊 維 ノ増 殖 ア リ,血 管 周 圍 ノ結 締 織 ノ發 育 著 シ ク氣 管 周 圍 ニ ハ炭 末 色 素 顆 粒 ノ沈 着 ア リ,氣 管 内 及 ビ其 ノ附 近 ノ組 織 内 ニ圓 形 細胞 ノ浸 潤 ア リ,氣 管 ハ一 般 ニ擴 張 ス. 脾 臟.被 膜 及 ビ脾 材 ハ肥 厚 シ,硝 子 様 ナ リ,臚 胞 ハ 著 シク萎 縮 ス,中 心 動 脉 壁 ニ 硝 子 様 變 性 ヲ認 ム. 脾 髓 索 ハ 腫 脹 シ,網 状織 細胞 及 ビ静 脉 壁 内 皮 ノ腫 大 セル ヲ見 ル. 肝 臟.小 葉 周 邊 以 外 ノ肝 細 胞 索 ハ一 般 ニ狭 小 ニ シ テ 毛 細 管稍 々擴 張 ス 「ズ ダ ン」III染 色 ニ ヨ リテ 一 般 ニ脂 肪 沈 着 ヲ認 ム,殊 ニ周 邊 部 ニ於 テ強 度 ナ リ,小 葉 間 結 締 織 ニ ハ多 少 圓 形 細 胞 ノ浸 潤 ヲ認 ム ル他 異常 ナ シ. 腎 臟.左 腎.絲 球 體 ハ一 般 ニ充 血 著 明 ニ シテ 強 ク
134
成 人 ニ發 見 セ ラ レ タル 甲 状 腺 形 成 缺 損 ノ1剖 檢 例 1215 腫 大 ス,「 ボ ー マ ン」氏 嚢 内 ニハ 異 常 ノ液 ヲ容 レ ズ, 「ボ ーマ ン」氏嚢 ハ稍 々肥 厚 シ,結 締 織 ハ増 殖 セ ル モ ノ ア リ,細 尿 管 主部 上 皮 ハ 細 胞 境 界 不 明 トナ リ,核 モ一 般 ニ染 色 力 ノ度 弱 キ モ ノ多 シ,管 腔 内 ニ 硝 子 様 圓柱 ヲ容 ル モ ノア リ,間 質 結 締 織 ハ稍 々増 殖 ス,血 管 ハ何 レ モ擴 張 シ,赤 血球 ヲ以 テ 充盈 ス,周 圍 ノ結 締 織 ハ増 殖 シ,輕 度 ノ淋 巴 細胞 ノ浸 潤 ヲ認 メ得. 右 腎.絲 毬 體 ハ強 ク腫 脹 シ,「 ボ ー マ ン」氏 嚢 ヲ満 ス,核 ノ増 殖著 シキ モ ノ ア リ,充 血 ハ時 トシテ 中 等 度 ノ モ ノア レ ド一 般 ニ血 液 ヲ見 ザル モ ノ多 シ,骨 髓 巨 大 細胞 裸 核 ノ介 在 セ ル モ ノ ア リ,一 二 ノ硝 子 様 變 性 ヲ來 タセ ル絲 毬 體 ア リ,細 尿 管 主 部 バ一 般 ニ腫 脹 ス,核 染色 ノ不良 ナ ル モ ノ ア リ,間 質 ハ血 液 ニ乏 シ ク細 胞 浸 潤 ヲ認 メズ. 「ズ ダ ン」III染 色 ニ ヨ リ「ボ ー マ ン」氏 嚢 ニ脂 肪 顆 粒 ヲ證 明 ス,細 尿 管 主 部 ハ 汎 發 性 ニ脂 肪 微細 顆 粒 ヲ 認 メ,「 ヘ ン リー」氏蹄 係 部 ニ脂 肪 沈 着 特 ニ強 シ. 胃 ビ腸 管.粘 膜 下 層 ノ血 管 ニ擴 張 ヲ見 ル他 變 化 ヲ 見 ズ. 大 動 脉.動 脉 内膜 ノ部 分 ガ膨 隆 シ,多 数 ノ空 胞 現 レ,表 面 ニ多 数 ノ圓 形 細 胞 ノ浸潤 ア リ,肥 厚 ノ中 心 ニ ハ内 膜 組 織 ガ鬆 粗 トナ リ,核 染 色 性 ノ乏 シキ 部 分 ア リ,「 アテ ロー ム」性 トナ ル 部 分 ア リ,尚 ホ所 々 ニ 内膜 細 胞 肥 大 シ圓形 細 胞 ノ浸 潤 強 キ トコ ロ ア リ,内 膜 ノ結 締 織 ノ肥 厚 ハ 著 シ カ ラ ズ,中 膜 筋 質 内 ニ輕 キ 石 灰 ノ沈 着 ヲ見 ル ノモ多 シ,外 膜 ノ血 管 周 圍 ニ輕 度 ノ圓 形 細 胞 ノ浸 潤 ヲ認 ム.
第3章
總 括 及 ビ 考 按
本 例 ハ43歳 ノ未 産 婦 ニ シ テ體 重54.5kg,身 長140.0cmヲ 示 シ 甚 ダ シ ク 肥 満 セ ル モ 生 來 健 康 ニ シテ 生 前 ニ 於 テ 何 等 甲 状 腺 機 能 障 碍 ト認 ム ベ キ症 状 ヲ 呈 セ ズ,急 性 肺 炎 ニ 罹 リテ 死 亡 シ剖 檢 ニ ヨ リテ 偶 々 甲 状 腺 ノ 正 常 位 置 ニ於 ケ ル 完 全 ナ ル 形 成 缺 損 ヲ證 明 セ ル モ ノ ナ リ,全 身 的 ニ ハ 高 度 ノ脂 肪 過 多 症 ヲ 呈 セ ル モ身 體 一 般 ニ均 整 ニ シテ,其 ノ 發 育 程 度 ニ於 テ 毫 モ 異 常 ヲ認 メ ザ リキ, 尚 ホ 舌 根 部 及 ビ舌 骨 部 ニ テ 甲 状 腺 腫 ア リ腦 下 垂 體 ハ 肥 大 シ,副 腎 皮 質 ノ萎 縮 及 ビ髓 質 ノ 肥 大 ヲ 認 メタ リ.甲 状 腺 完 全 形 成 缺 損 ノ病 理 解 剖 學 的 所 見 ハ 已 ニMaresch5), Aschoff6), Erdheim7), Dieterle8), Ungermann9), Zuckermann10), Schilder11), Schultze12)等 ノ 詳 細 ナ ル 報 告 ア リ,之 等 ノ 諸 例
ニ 於 ケ ル 甲 状 腺 完 全 形 成 缺 損 ニ ア リテ ハ 甲 状 腺 機 能 ノ 脱 落 症 状 ヲ 呈 シ弱 年 ヲ 以 テ 死 亡 セ ル カ 或 ハ 長 ク生 存 シ得 タ ル 例 ニ 於 テ ハ 常 ニ舌 状 管 部,舌 根 部,喉 頭,又 ハ 氣 管 附 近 等 ニ 甲 状 腺 様 組 綴 ヨ リナ ル 腫 瘍 ノ存 在 テ 認 メ ラ レ タ リ. 余 ノ 例 ニ於 テ モ 中 年 ニ 至 ル迄 生 存 シ,甲 状 腺 ノ形 成 ハ 毫 モ 其 ノ 正 常 部 位 ニ 認 メ ラ レ ザ ル モ, 舌 根 部 及 ビ舌 骨 附 近 ニ於 テ 明 カ ニ甲 状 腺 様 組 織 ヲ 證 明 シ タ リ. 而 シ テ カ カ ル 舌 根 部 甲 状 腺 腫 ノ 發 生 ニ 就 テ ハ 今 日 種 々 ノ説 ノ存 在 ス ル トコ ロ ナ ル モ,カ カ ル 組 織 ノ發 生 ハ 正 ニ 遠 ク 胎 生 時 期 ニ存 ス ル コ トハ 何 人 モ 疑 ヒ ヲ 容 レザ ル ト コ ロ ナ リ, His16)及 ビ Streckeisen17)ニ ヨ レバ 一 般 ニ 甲 状 腺 ハ胎 生 學 的 發 生 上 中 顋 弓 窩 ニ於 テ 甲 状 腺 基 礎 ノ 漸 次 下 方 ニ 嵌 入 スル ヤ最 初 甲 状 舌 管 ニ ヨ リテ 始 原 ロ 底 ト交 通 ス ル モ後 ニ此 管 ハ萎 縮 消 失 シ 只 ダ盲 孔 ノ ミ 其 ノ 遺 殘 物 ト シ テ 久 シ ク 舌 根 部 ニ存 在 ス ル ニ 至 ル モ ノ ナ リ,此 ノ如 キ 甲 状 舌 管 ノ消 失 甲 状 腺 ノ 135
完 全 ナル發 育 ハ胎 生 期 ニ於 ケル 平常 發 育 ノ場 合 ニ見 ル處 ナ ル モ屡 々 異常 ヲ來 タ シ舌 根 部 ヨ リ舌
骨 ニ至 ル膜 状 管 ノ遺 殘 甲 状 管 ノ存 在 等 ヲ見 ル 事 ア リ,故 ニ若 シ其 ノ通 路 ニ於 テ甲 状 腺 ヲ發 生 シ
得 べ キ上 皮 ノ遺 殘 ス ル コ トアラ ン カ,甲 状 腺 基 礎 ノ如 ク漸 次 發 育 シ遂 ニ甲 状 腺 組織 ヲ有 スル腫
瘍 ヲ生 ズ ル ニ至 ル モ ノ ナ リ,而 シテ 吾 人 ノ 目撃 ス ル處 ノ甲 状 腺 錐 體 モ亦 此 一 種 タ リ ト,即 チ甲
状 腺 ヲ發 生 シ得 ベ キ上 皮 ニ シテ 舌根 部又 ハ舌 骨附 近 ニ殘 留 セ ンカ茲 ニ甲 状 腺 腫 ヲ形 成 スル コ ト
ハ當 然 ナ リ.
Albert18)ハ 舌 根 部 甲 状 腺 腫 ノ發 生 ハ 胎 生 時 ニ ア ル 何 等 カ ノ 原 因 ニ ヨ リ甲 状 腺 ノ一 二 腺 葉 ガ 本 腺 ト ノ結 合 ヲ 失 ヒ遂 ニ 成 形 セ シ モ ノ ニ シ テ 發 育 抑 制 ニ ヨ ル 畸 型 ニ 屬 ス ベ キ モ ノ タ リ ト述 べ, Gruber19)ハ 甲 状 舌 管 ノ經 過 ニ於 ケ ル 副 甲 状 腺 即 チWolfler氏 ノ正 中 副 甲 状 腺 ハ 胎 生 的 甲 状 舌 管 ノ 分 化 ニ際 シ其 ノ 芽 胚 ノ殘 留 ニ 依 ツ テ 發 生 ス ル モ ノ ナ リ ト セ リ, Rosenberg20)ハ 舌 排 泄 管 (Ductus Escretoriuslinguae)ガ 永 ク 存 在 シ テ 舌 骨 ノ 盲 孔 トノ 連 絡 ア リ トセ バ 舌 骨 附 近 ニ ア ル 腺 體 ヨ リ管 ニ 向 ツ テ 突 起 ヲ 出 シ管 ガ 閉 鎖 ス ル 時 ハ 獨 立 ノ腫 瘍 ヲ形 成 ス ト説 明 セ リLympias21) ハ 錐 體 ヨ リ1分 枝 ガ舌 管 ニ逹 シ夫 レ ガ閉 鎖 シ タ ル 時 ニ ハ 獨 立 ノ腫 瘍 トナ ル ト云 フ,小 山22)ハ 舌 根 部 甲 状 腺 腫 ノ發 生 ハ 胎 生 時 中 央 基 礎 ノ下 降 行 ハ レ ズ シ テ 元 位 ニ殘 留 シ更 ニ 腫 瘍 状 ニ増 殖 發 育 セ シ モ ノ ナ リ トナ セ リ,併 シ ナ ガ ラ 舌 根 部 甲 状 腺 腫 ハ 甲 状 腺 形 成 缺 損 症 ニ 必 ズ 發 生 ス ル モ ノ ニ ア ラ ズ, Galisch23), Staelin24), Meixner25), Onodi26)ノ 報 告 ニ於 テ ハ,固 有 ノ 甲 状 腺 ハ 正 常 部 位 ニ存 在 シ尚 ホ 且 舌 根 部 ニ甲 状 腺 腫 ヲ證 明 セ リ,又Ungermann9)ノ 如 キ ハ30歳 ノ 營 働 者 ノ 甲 状 腺 機 能 脱 落 症 状 ヲ 呈 セ ザ リ シ屍 體 ニ 於 テ 頸 部 ニ 甲 状 腺 ヲ缺 キ 舌 根 部 ニ 甲 状 腺 腫 瘍 ヲ認 メ且 其 ノ 組 織 的 所 見 ニ ヨ リ腺 様 實 質 ノ 盛 ナ ル 機 能 状 態 ニ ア ル ヲ 觀 察 シ之 ガ 甲 状 腺 腫 ヲ 代 償 性 舌 甲 状 腺 ト呼 べ リ. 舌 根 部 甲 状 腺 腫 ト甲 状 舌 管 ノ 發 育 障 碍 トノ 間 ニ ハ 密 接 ナ ル 關 係 ノ存 在 ス ル コ ト ハ 從 來 ヨ リ論 ゼ ラ レ シ ト コ ロ ニ シテ, Aschoff6), Erdheim7)ハ 其 ノ組 織 的 所 見 ニ 基 キ,同 腫 瘍 ノ發 生 ヲ專 ラ 甲 状 舌 管 ニ歸 セ メ シ,又Dieterle8), Schilder11), Zuckermann10)等 ハ 舌 根 部 甲 状 腺 腫 ヲ 舌 状 管 ノ 細 胞 分 芽 又 ハ 舌 状 管 ノ畸 型 的 増 殖 産 物 ナ リ ト見 做 セ リ.Aschoff6), Erdheim7), Dieterle8), Ungermann9), Schilder11)等 ノ 記 載 セ シ舌 根 部 腫 瘍 ニ ハ 何 レ モ 常 ニ 其 ノ 一 部 ニ於 テ 扁 平 上 皮,氈 毛 上 皮 又 ハ 粘 液 腺 ヲ證 明 シ正 ニ腫 瘍 ガ 舌 状 管 ヨ リ増 殖 發 生 セ シ コ トヲ 思 ハ ス ニ充 分 ナ リ,余 ノ 例 ニ 於 ケ ル 舌 根 部 腫 瘍 ハ 主 ト シ テ 甲 状 腺 組 織 ヨ リ ナ リ 其 ノ 一 部 ニ 於 ニ 殊 ニ 舌 盲 孔 ノ深 層 ニ ア タ リ氈 毛 圓 柱 上 皮 ヨ リ被 ハ ル 腺 様 組 織 ノ 發 育 セ ル ヲ 認 ム ル ガ 故 ニ此 舌 根 部 腫 瘍 ハ 正 ニErdheim7)ノ 所 見 ト同 ジ ク 舌 状 管 ヨ リ發 生 セ ル モ ノ ナ リ ト見 做 シ テ 誤 ナ キ ガ 如 シ. 又 舌 骨 部 甲 状 腺 腫 ハ 全 ク 甲 状 腺 組 織 ノ ミ ヨ リナ リ氈 毛 上 皮 ヲ認 メザ ル モ 恐 ラ ク 甲 状 管(Du ctus thyreoideus)ヨ リ發 生 セ ル モ ノ ト思 考 ス.之 ヲ要 ス ル ニ 本 例 ニ於 テ ハ 甲 状 舌 管 ノ下 降 機 轉 ガ 舌 骨 部 ニ 迄 至 レル コ トヲ證 スル モ ノ ニ シ テ 以 後 甲 状 腺 胚 葉 ノ 下 降 ガ防 止 セ ラ レ前 述 腫 瘍 ヲ
成 人 ニ發 見 セ ラ レ タル甲 状 腺 形 成 缺 損 ノ1剖 檢 例 1217
形 成 セル モ ノ ト認 ム べ キ ナ リ.
文獻 ニ徴 スル ニ,甲 状 腺 完 全形 成 缺損 ヲ有 スル 者 ハ多 ク ハ弱 年 ヲ以 テ死 亡 スル モ,之
ニ伴 ヒ
舌 根 部 甲状 腺 腫 ヲ有 セ シモ ノハ比 較 的永 ク生 存 セル ヲ見 ル,然
レ ドモ カ カ ル舌 根 部 甲 状 腺 腫 ハ
甲状 腺 機 能 ヲ完 全 ニ代償 スル モ ノ極 メテ少 ナク,多
ク ハ粘 液 水 腫 ヲ ア ラハ ス ヲ常 トス.
Ungermann9)ノ
報 告 セ ル1例
ハ生 前何 等 甲状 腺 ノ脱 落 症 状 ヲ呈 セザ リ シ, 30歳 ノ男 子 ニ シ
テ舌根 部 甲 状 腺 腫 ハ即 チ平 常 ノ甲 状 腺 ト同様 ノ機 能 ヲ 有 セ シガ如 シ,又Chamisso27),
Seldowi
tsch28)等 ハ舌 根 部 甲状 腺 腫 ヲ摘 出手 術 ヲ行 ヒ シニ数 週 ナ ラズ シテ 粘 液 水 腫 ヲ起 シ,其 ノ際 氣 管
切 開術 ニ ヨ リテ 固 有 ノ甲 状 腺 ヲ認 メザ リ シ例 ヲ報 告 セ リ.我 國 ニ於 テ ハ小 山22)ハ 甲 状 腺 中 葉 缺
損 シ側 葉 ノ高度 ニ萎 縮 セル67.歳 ノ婦 人 ニ於 テ舌 根 部 ニ拇 指 頭 大 ノ甲 状 腺 腫 ヲ認 メ,其 ノ高 齡 迄
ノ生存 ヲ專 ラ其 ノ甲 状 腺 腫 ノ機 能 ニ歸 セ シメ タ リ.
本 例 ニ於 テ ハ後 述 ス ル肥 胖 症 ノ他 生 前 ニ何 等 著 シキ甲 状 腺 機 能 脱 落症 状 ヲ呈 セザ リシ ヲ以 テ
恐 ラク舌 根 部 及 ビ舌 骨 附 近 ニ形 成 セル 甲状 腺 腫 ガ可 ナ リ充 分 ナル 甲 状腺 機 能 ヲ營 ミ シモ ノ ト謂
ハザ ル可 カ ラズ.
次 ニ本例 ニ於 テ注 目 スべ キハ 高 度 ノ脂 肪 過 多 症 ノ存 在 ナ リ.
甲状 腺 機 能 減 退 ニ於 テ 其 ノ新 陳 代謝 障 碍 ノ結 果 トシテ脂 肪 過 多 ノ來 ル コ トハ 已 ニRossle29)ノ
觀 察 セ シ トコ ロナ リ.
尚 ホGunther30)ハ
甲 状 腺 缺 損 症 ニ於 テ時 トシテ頸 部 ニ對 照 瀰 蔓性 ニ脂 肪 組 織 増殖 ヲ來 ス ヲ
報 告 シLipomatosis
cervicalis thyreo aplasticaト 呼 べ リ.
Magnus
Levy及
ビBergmann32)
等 ハ甲 状腺 機 能 減 退 ハ 「ヱ ネル ギー 」ノ一需 要 及 ビ消 費 ヲ低 下 セ シム ル モ ノ ナ リ ト唱 へHerto
ghe32), Lorand32)ハ
内 因性 脂 肪 過多 症 ガ甲状 腺 性 性 質 ナ ル コ トヲ云 ヘ リ, Noorden32)ハ
カ カ ル
内因 性 脂 肪 過 多 症 ノ本 態 ヲナ ス 酸化 現 象 ノ減 少 ハ全 然 甲状 腺 機 能 減 退 ニ基 ク モ ノナ リ トナ シ尚
ホ甲 状 腺 ノ機 能 低 下 ノ程 度 ニ ヨ リ粘 液水 腫 ヲ ア ラハ シ或 ハ脂 肪 過 多 症 ヲ ア ラハ ス ト云 ヘ リ.
Lorandニ
ヨ レバ 粘 液 水 腫 ハ 内 因性 脂 肪 過 多 ノ程 度 ノ高 キ モ ノ ニ シテ 皮 下組 織 ニ於 テ脂 肪 過
多 及 ビ粘 液 水 腫 ガ同所 ニ發 生 スル コ トヲ認 メ,尚 ホ 高 年 ニ於 テ 甲 状 腺 機 能 低 下 現 象 ノ發 現 ト共
ニ脂 肪 ノ粘 液 水 腫 性 變 化 ヲ呈 スル コ トヲ認 メタ リ.
余 ノ例 ニ於 テ脂 肪 過 多 ハ著 明 ナ リ シモ粘 液 水 腫 ヲ認 メズ,以 上 文獻 ニ徴 シ本 例 ヲ考 察 スル ニ
脂 肪 過 多 ハ恐 ラク比 較 的輕 キ 甲状 腺 機 能 障 碍 ノ存 在 ニ基 キ發 生 セ ル モ ノ ト認 ム べ シ.
尚 ホ 本 例 ニ於 ケ ル 内分 泌 腺 臟 器 中特 ニ著 變 ヲ見 タ ル ハ大 腦 下 垂 體 ニ シテ 其 ノ肥 大 タ ル ヤ頗 ル
顯 著 ナ リ.即 チ余 ノ剖 檢 セル腦 下垂 體 ハ横20mm縦13mm高10mm重
量140gニ
シテ其 ノ容
積 ハ正 常 ノ約3倍
半重 量 約2倍 牛 ニ相 當 セ リ.
其 ノ組織 的 所 見 ヲ見 ル ニ前 葉 ノ色 素 嗜 好 細 胞 ハ減 少 シ之 要 細 胞 増 加 シ且 腺 腫 様 増 生 ヲ來 タ セ
リ,紡 錘 形 又 ハ長 橢 圓形 乃 至 圓 形 ノ大 型 細 胞 甚 ダ多 数 ニ出 現 セ リ,其 ノ核 ハ頗 ル大 ニ シテ 胞 状
ヲ呈 シ「ク ロ マ チ ン」ニ乏 シク淡 明 ナ リ,而 シテ カ カ ル大 型 細 胞 ト主 要 細 胞 トノ間 ニハ明 カニ移
行 型 ヲ證 明 ス ル モ ノ ア リキ.
從 來 甲 状 腺 形 成 缺 損 症 ニ 於 ケ ル 腦 下 垂 體 ニ就 テ ハ多 数 ノ學 者 ニ ヨ リテ 研 究 セ ラ レ就 中Rocoz u. Cruchet13), Dieterle8), Maresch5), Schilder11), Schultze12)等 ハ 本 症 ニ 於 テ腦 下垂 體 ノ 肥
大 ヲ 證 明 セ ザ リ シ例 ヲ 報 告 セルレモAschoff6), Zuckermann10), Mac, Callum u. Fabyan15), Comte33), Bournevill3) u. Briccn, Boyce u. Beadler14), Schultze12), Rossle32)等 ハ 甲 牀 腺 完
全 形 成 缺 損 ニ際 シ,腦 下 垂 體 ノ肥 大 ヲ證 明 セ リ.
而 シ テ 組 織 學 的 檢 査 ニ於 テ 多 ク ノ 人 々 ハ 主 要 細 胞 ノ増 加 及 ビ肥 大 セル コ トヲ記 載 セ リ(Mac. Callum Fabyan15), Schilder11), Zuckemann10), Schu1tze11), Rossle33)等), Zuckermann10)
ノ 例 ニ 於 テ ハ 腦 下 垂 體 ノ大 部 分 ヲ 形 成 ス ル モ ノ ハ 特 異 ノ 細 胞 ニ シ テ ソ ハ 鹽 基 嗜 好 細 胞 ヨ リ其 ノ 大 サ バ 大 ニ シ テ,大 ナ ル 核 ヲ有 シ,明 ル ク 原 形 質 ニ 富 ミ「ヘ モ ア ラ ウ ン」染 色 ニ ヨ リ薔 薇 色 ニ 染 マ リ,顆 粒 ヲ含 ム,此 細 胞 ハ 「エ オ ジ ン」嗜 好 細 胞 及 ビ鹽 基 嗜 好 細 胞 ト異 ナ ル 點 ハ細 胞 境 界 不 明 ニ シ テ,時 ニ多 数 ノ細 胞 結 合 シ テ 一 團 トナ ル ガ 如 キ状 態 ヲ 呈 シ,又 細 胞 及 ビ其 ハ核 ノ大 サ 頗 ル 大 ナ ル コ ト及 ビ「ハ イ デ ン ハ イ ム」氏 鐵 「ヘ マ トキ シ リ ン」染 色 ニテ 酸 性 細 胞 ハ黒 染 スル ニ 本 細 胞 ハ 染 色 セ ザ ル ノ 差 ア ル 在 ル ト,而 シ テ カ カ ル 本 細 胞 ノ 大 サ 形 状 境 界染 色 状 態 及 ビ原 形 質 ノ 性 状 ハErdheimノ 記 載 セ シ妊 娠 細 胞 ニ 類 似 ス ル モ ノ ニ シ テ,妊 娠 細 胞 ニ ア リ テ ハ 核 ノ分 裂 ノ 像 ヲ 見 ル コ ト ア ル モ本 特 異 細 胞 ニ ハ 之 ヲ缺 如 ス ト云 ヘ リ,其 ノ 他Schultze12)ノ 例 ニ 於 テ ハ 腦 下 垂 體 ノ 前 葉 ニ 主 要 細 胞 ヨ リナ ル 腺 腫 形 成 ヲ見, Rossle33)ハ2例 ニ 於 テ 腺 腫 ヲ報 告 シWegelin42) モ 亦 一 部 分 大 型 細 胸 ヲ 混 ズ ル 主 要 細 胞 性 ノ腺 踵 ノ2例 ヲ 記 載 セ リ. 余 ノ例 ニ於 ケ ル 腦 下 垂 體 ニ見 ラ レタ ル大 型 細 胞 ハ 形 態 學 的 ニZuckermann10) Schilder11)等 ノ 記 載 セ シ大 細 胞 ト全 ク 一 致 シ且 主 要 細 胞 ヨ リ形 成 セ ラ レ タ ル モ ノ ト認 ム べ シ,而 シ テ 腦 下 垂 體 ノ 肥 大 ハ 專 ラ 主 要 細 胞 ノ臟 腫 様 増 殖 及 ビ大 型 細 胞 ノ顯 著 ナ ル 出 現 ニ 基 ケ リ,斯 カ ル 腦 下 垂 體 ノ 變 化 ノ發 生 理 由 ニ 就 テ ハ 已 ニ 諸 家 ノ 考 察 ア リ. Schilder11)バ カ カ ル 甲 状 腺 形 成 缺 損 ニ於 ケ ル 腦 下 垂 體 ノ 肥 大 ヲ 甲 状 腺 機 能 障 碍 ニ ヨ ル 腦 下 垂 體 ノ機 能 増 進 ニ歸 セ シ メ, Boyce u. Beadles14), Comte33), Ponfick34), Abrikosoff35),加 茂36), Schonemann37)等 ハ 粘 液 水 腫 ノ屍 體 ニ於 テ 何 レモ 腦 下 垂 體 ノ著 シ キ肥 大 ヲ 證 明 シ,之 ヲ 甲 状 腺
機 能 障 碍 ニ ヨ ル 代 償 性 ノ肥 大 ナ リ ト云 ヘ リ,殊 ニ加 茂 ノ 例 ハ 腦 下 垂 體 ノ前 葉 ノ 大 部 分 ヲ 形 成 ス ル 細 胞 ハ 主 要 細 胞 及 ビSchilder11), Zuckermann10)ノ 記 載 セ シ大 細 胞 ニ頗 ル 類 似 シ且 所 謂 妊 娠 細 胞 ニ モ 甚 ダ 似 タ ル 特 異 ノ 大 細 胞 ニ シ テ 余 ノ 例 ニ 於 ケ ル 所 見 ニ近 似 セ リ.
Blumreich, Jakoby38)ハ 家 兎 ニ於 テ 甲 状 腺 摘 出 セ ル ニ 何 等 變 化 ヲ 腦 下 垂 體 ニ 認 メ ザ リ シ モ, Rogowitisch39), Stieda40), Leonhardt41)等 ハ 何 レモ 家 兎 甲 状 腺 摘 出 後 腦 下 垂 體 ノ肥 大 ヲ 證 明
シ,組 織 的 ニ ハ 境 界 不 明 ノ 主 要 細 胞 ノ肥 大 セ ル ラ 見 タ リ ト云 ヘ リ.
即 チ 上 述 文 献 ニ 徴 ス ル ニ 腦 下 垂 體 ノ肥 大 ハ 甲 状 腺 機 能 缺 損 若 ク ハ 障 碍 ニ密 接 ナ ル 關 係 ヲ 有 ス べ キ 事 争 フ べ カ ラ ザ ル ガ 如 シ.
成 人 ニ發 見 セ ラ レ タ ル 甲 状腺 形成 缺 損 ノ1剖 檢 例 1219
Comte33)及 ビAbrikosoff35)ハ 粘 液 水 腫 ニ於 ケ ル 腦 下 垂 體 ノ 肥 大 ヲ 甲 状 腺 機 能 障 碍 ニ ヨル 代 償 性 肥 大 ナ リ ト シ, Rogowitisch39), Stieda40) Leonhardt41)等 ハ 甲 状 腺 摘 出 後 ノ腦 下 垂 體 肥 大
ヲ 同 ジ ク 代 償 性 肥 大 ナ リ トス. Rossel33)ハ 又 甲 状 腺 缺 如 ノ 腦 下 垂 體 ヲ 補 充 性 肥 大(Sussogat-Hyperophie)ト 稱 セ リ. Zuckermannハ 腦 下 垂 體 ノ 肥 大 テ 單 ニ 甲 状 腺 障 碍 ニ對 ス ル 特 殊 反 應 ナ リ ト云 ヘ ル モ,サ レ ドWegelinハ 甲 状 腺 機 能 障 碍 ノ場 合 ニ 見 ラ ル ル 腦 下 垂 體 ノ 變 化 ノ原 因 ニ 關 ス ル 吾 人 ノ知 見 ハ現 今 未 ダ 確 定 的 ナ ラ ズ トナ シ腦 下垂 體 ガ 生 物 學 的 竝 形 態 學 的 立 場 ヨ リ見 テ 甲 状 腺 機 能 ヲ 代 理 ス ル コ トハ 考 ヘ ラ レザ ル 所 ナ ル ガ 故 ニ 腦 下 垂 體 ノ 増 殖 機 傳 ラ 目 シテ 代 償 性 肥 大 ナ リ ト云 フ能 ハ ズ 云 ヘ リ. Berblinger43)ハ 甲 状 腺 機 能 障 碍 ニ於 テ ハ 血 液 中 ニPlasmafremdstoffナ ル モ ノ ガ 生 ジ カ カ ル モ ノ ガ 作 用 シ テ 主 要 細 胞 ノ肥 大 及 ビ腦 下垂 體 ノ増 大 ヲ示 ス モ ノ ナ リ ト云 ヘ リ. 又Seitz及 ビLeidenius44)ハ 母 家 兎 ノ甲 状 腺 機 能 低 下 ニ ヨ リ仔 家 兎 ノ腦 下 垂 體 肥 大 ヲ 惹 起 セ ル 事 デ報 告 セ リ. 本 例 ニ於 テ ハ 腦 下 垂 體 ノ 肥 大 ト同 時 ニ 甲 状 腺 形 成 缺 損 ヲ件 ヒ而 モ 甲 状 腺 機 指 ハ 前 述 ノ舌 根 部
及 ビ舌 骨部 甲状 腺腫 ニ ヨ リテ一 定 度 迄 營 爲 セ ラ レタ リ ト雖 モ之 ニ ヨ リテ完 全 ニ代 償 セ ラ レ能 ハ
ザ リ シバ前 述 ノ所 見 ニ徴 シ テ モ明 カ ナ リ ト謂 フべ ク從 ツテ本 例 ニ於 ケル 腦 下垂 體ノ肥 大 ハ カ カ
ル甲状 腺機 能 障碍 ト密 接 ナル 關 係 アル モ ノ ト認 ムベ シ而 シテ カ カ ル肥 大 ノ意 義 ニ就 キ テ ハ 前 記
諸 家 ノ見 解 ニ一 致 ヲ見 ズ ト雖 モ余 ハ之 ヲ甲 状 腺 機能 障 碍 ニ ヨル 對 應 的 變 化 ニ他 ナラ ズ ト思 惟 ス
ル モ ノナ リ.
第4章
結
論
1)本
例 ハ43歳
ノ未 産 婦 ニ シテ 生 前 ニ於 テ 何 等 甲 状 腺 機 能 障 碍 ト認 ムベ キ症 状 ヲ 呈 セズ 急
性 肺炎 ニ罹 リ死 亡 シ剖 檢 ニ ヨ リテ 偶 々甲 状 腺 ノ正 常 位 置 ニ於 ケ ル形 成 缺 損 ヲ證 明 セル モ ノ ナ
リ,全 身的 ニハ 高度 ノ脂 肪 過 多 症 ヲ呈 セル モ身 體 一般 ニ均 整 ニ シテ其 ノ發 育 程 度 ニ於 テ毫 モ 異
常 ラ認 メザ リキ,尚 ホ舌 根部 及 ビ舌骨 部 ニ ハ甲状 腺 腫 ア リ,腦 下垂 體 ハ肥 大 シ,副 腎 皮 質 ノ萎
縮 及 ビ髓 質 ノ肥 大 ヲ認 メタ リ.
2)本
例 ニ於 ケ ル舌 根 部腫 瘍 ハ主 トシテ甲 状 腺 組織 ヨ リ形 成 セ ラル ル モ其 ノ 一 部 殊 ニ舌 盲 孔
ノ深層 ニア タ リ氈 毛 圓柱 上皮 ヨ リ被 ハル ル 腺 様組 織 ノ發 育 セル ヲ認 ム故 ニ此 舌根 部 甲 状 腺 腫 ハ
恐 ラク舌 状 管 ヨ リ發 生 セル モ ノ ナ ラ ン.又 舌 骨 部 甲 状 腺 腫 ハ全 ク甲 状 腺 組織 ノ ミ ヨ リナ リ氈 毛
上 皮 ヲ認 メザル モ恐 ラ ク甲状 管 ヨ リ發 生 セル モ ノ ト思 考 ス.
3)本
例 ハ肥 胖 症 ノ他 生 前 ニ何 等 著 シキ甲 状 腺機 能 脱 落 症 状 ヲ呈 セ ズ舌 根 部 及 ビ舌 骨 部 甲 状
腺 腫 ガ可 ナ リ充 分 ナ ル 甲 状 腺 機 能 ヲ營 ミ シモ ノナ リ.
4)本
例 ニ於 ケ ル脂 肪 過 多 症 ハ恐 ラク比 較 的 輕 度 ノ 甲状 腺機 能 障 碍 ノ存 在 ニ職 由 セル モ ノ ト
認 ムベ シ.
139
5)本
例 ニ於 ケル腦下 垂體 ノ増生肥大及 ビ大型 細胞 ノ顯 著 ナル出現 ハ甲状 腺形成缺損 ニ伴 フ
同臟 器機 能 障 碍 ニ ヨル對 應 的變 化 ト認 ム.
擱筆 ニ臨 ミ終 始 御指 導 ヲ賜 リ,御 校 閲 ノ勞 ヲ辱 フ セ シ恩 師 田 部 教 授 ニ深 甚 ナ ル感 謝 ノ意 ヲ表 ス.
文
獻
1)
Curling
zit. nach Pineles.
2)
Fletscker,-Bench, zit. nach Pineles.
3)
Bournevill,
zit.
nach Pineles
4) Pineles, Wien. klin. Wochschr. Nr. 43, 1902.
5) Maresch, Zeitschr. f Heilk. Bd.
19, 1898.
6)
Aschoff, Deutsch. Med. Wochschr. Nr. 33, 1899.
7)
Erdheim,
Ziegl. Beitr. Bd. 35.
8) Dieterle, Virchow's Arch. Bd. 184.
9) Ungermann,
Virchow's Arch. Bd. 187.
10) Zuckermann,
Frankf. Zeitschr. f. Path. Bd. 14, 1913.
11)
Schilder, Virchow's Arch. Bd. 203.
12)
Schultze,
Virchow's Arch. Bd. 216.
13)
Rocaz, Cruchel, Neurolog. Zentralblatt. Nr. 27, 1903.
14 Boyce,
u. Beadles,
The Journ.of Path. a. Bakt. Vol. 1, 1893.
15)
Mac. Callum, u.
Fabyan,
zit. nach
Znckermann.
16)
His, Arch. f. Anat. Physiol. 1891.
17)
Streckeisen, Virchow's Arch. Bd.
103. 18) Albert,大 日本 耳 鼻 咽 喉 科 會 々報 中 村 豊 論 文 引 用.
19)
Gruber,
Virchow's Arch. Bd.
76.
20)
Rosenberg, Deutsch. Med. Wochschr. 1892.
21)
Lympias, Deut. Zeitschr. f. Chirurg.
1897. 22) 小 山 東 京 醫 學 會 雜 誌. 24巻.
23)
Galisch, Deut. Zeitschr. f. Chirurg. 1893.
24)
Slaelin, zit. nach Ungermann.
25) Meixner,
Deut. Zeitschr. f. Chirurg. 1905.
26)
Onodi,
Arch. f. Laryngolog. 13.
27)
Chamisso, Beitr. z. Klin. Chirurg. Bd. 19, 1897.
28)
Seldowitsch,
Zentralblatt f Chirurg. Bd. 24, 189.
29)
Rossle,
Ergebniss d. allg. Path. u. path. Anat. Bd. 20,
1923.
30)
Gunther,
zit. nach Lubarsch Handbuch d. sp. path. Anat. u. Histolog. Bd. 8, S. 345.
31)
Dercum,
zit. nach Lubarsch Handbuch d. sp. path. Anat. u. Histolog. Bd. 8, S. 345.
32)
Magnus-Levy, u. Bergmann,
Hertoghe, Lorand, Noorden. Bauer. Konstitutionelle
Disposition z. inneren
Krankheit. S. 232.
33)
Comte, Rossle, zit. nach Lubarsch Handbuoh d. sp. path. Anat. u. Histolog.
Bd. 8, S. 256.
34)
Ponfik, Zeitschr. f. Kliu. Med. Bd. 28, 1899.
35)
Abrikosoff, Virobow's
Arch. Bd. 177. 36) 加 茂,京 都 醫 學 會 雜 誌, 11巻, 3號.37)
Schonemann, Virchow's Arch.
Bd. 129.
38)
Blumreich, Jakoby,
Pfluger Arch. Bd. 4.
39)
Rogowitisck, Ziegl. Beitr. Bd.
4.
40)
Stieda, Ziegl. Beitr. Bd. 7.
41)
Leonhardt,
Virchow's Arch. Bd. 149.
42)
Wegelin,
zit. nach Luharsch Handbuch d. sp. path. Anat. u. Histolog. Bd. 8, S. 925.
43)
Berblinger,
Mitt.
an d. Grenzgeb. d. med. Chirurg. Bd. 33, 1921.
44)
Seitz, u. Leidenius,
zit. nach Lubarsch
Handbuch d. sp. path. Anat. u. Histolog. Bd. S. 358.
附
圖
説
明
Fig. 1. 甲 状 腺 ノ正 常 位置 ニ於 ケル 完 全 形 成 缺 損 正 面(肉 眼 的 標 本) Fig. 2. 舌根 部 甲 状 腺 腫(組 織 的 標本) Fig. 3. 看 骨 内 甲 状 腺 腫(組 織 的 標 本) Fig. 4. 舌 骨 下 甲 状 腺 腫(組 織 的 標 本) Fig. 5. 腦 下 垂 體(組 織 的 標 本) A… … 主 要 細 胞 B… … 鹽 基 嗜 好 細 胞 C… … 大 型 細 胞140
佐 野 論 文 附
圖
Fig. 1. Fig. 2.
Fig. 3.
Fig. 4. Fig. 5.
