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はじめに 近年 金融機関や企業のセキュリティエリアをはじめとして 様々なところで生体認証システムの導入が進んできました 現在 生体認証の利用に対しては 導入しさえすれば高いセキュリティが得られる という考えから どのように導入してもセキュリティホールの発生は免れない という考えまで幅広く 特に 両端

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Academic year: 2021

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生体認証システムの導入・運用事例集

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はじめに

近年、金融機関や企業のセキュリティエリアをはじめとして、様々なところで生体認証 システムの導入が進んできました。 現在、生体認証の利用に対しては、「導入しさえすれば高いセキュリティが得られる」 という考えから「どのように導入してもセキュリティホールの発生は免れない」という考 えまで幅広く、特に、両端の意見は誤解を招く可能性があります。 生体認証は、認証の際のセキュリティと利便性を、適用環境やコストに合わせて調整で きるという利点があります。生体認証の特徴を充分理解し、目的に合致したシステムを導 入、運用することが重要です。 そこで、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)では、生体認証が健全に導入、 運用され、そして、利用してもらえるように、運用者に向けては「生体認証導入・運用の ためのガイドライン」を、利用者に向けては「生体認証利用のしおり」を発行し、生体認 証を客観的に理解してもらうよう努めてきました。 本書は、生体認証システムが実際に導入、運用された事例集です。「生体認証導入・運 用のためのガイドライン」で示した導入、運用のポイントが、実際どのように実現されて いるのか、その実例を集めました。生体認証システムの導入を検討されているみなさんの 参考になることを目的としています。

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目 次

1. 概要...1 2. 佐賀県庁...2 3. SBI 損害保険株式会社...5 4. 東陽倉庫株式会社...7 5. 明和地所株式会社...10 6. 株式会社三井住友銀行...12 7. 医療法人恵佑会札幌病院...14 謝辞

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1.概要

本事例集に収録した実例は、現在、国内に導入、運用されている事例のうち、できるだ け多くの適用種別、および、使用する生体部位の種類を含み、かつ、異なるユーザ規模を 含むように選択した。何れも、生体認証を導入、運用した組織・団体に面会等行い、シス テムの概要や運用状況、そして、ユーザやシステム管理に配慮した点等、伺った。 表 1 事例一覧 適用種別 生体識別部位 (モダリティ) 組織名 システム概要 ユーザ 規模 PC ログイン 認証 指紋認証 佐賀県庁 県内関係機関を結ぶネットワークを充実さ せ、職員一人に一台の PC を配備。各 PC か ら庁内電子システムにログインする際、利用 者確認のために指紋認証を導入。 大 入退室管理 (オフィス) 虹彩認証 SBI 損害保険 株式会社 オフィス、会議室、サーバルームなど、オフィ スのあらゆる場所への入室に虹彩認証を導 入。サテライトオフィスの生体認証もサーバク ライアントシステムを構築して一元管理。 小 入退室管理 (セキュリティ エリア) 手のひら 静脈認証 東陽倉庫 株式会社 機密文書、重要文書を保管する倉庫の入退 室管理に手のひら静脈認証を導入。IC カー ドとの併用、専用 LAN を用いたネットワーク 構成等、頑強なセキュリティを構築。 小 入退室管理 (マンション) 指紋認証 手のひら 静脈認証 音声認証 明和地所 株式会社 マンションの共用玄関やエレベータホール での入居者確認に生体認証を導入。導入さ れた生体認証は、指紋認証、手のひら静脈 認証、音声認証。 中 金融サービ ス 指静脈認証 株式会社 三井住友銀行

ATM(Automatic Teller Machine)の取引の 利用者確認に指静脈認証を展開。コンビニ エンスストアを含めて、生体認証機能付き ATM を全国に約 5,500 台配置。 大 医療応用 手のひら 静脈認証 医療法人 恵佑会札幌病 院 治療行為における患者確認を強化するため に手のひら静脈認証を導入。入院時の問診 の際、病室などで個人生体情報を登録。手 術当日、手術室内で本人を確認。 中 小:100 人未満、中:100 人以上 500 人未満、大:500 人以上 以降、組織名としては次のように記する。 SBI 損害保険株式会社:SBI 損保 東陽倉庫株式会社:東陽倉庫 明和地所株式会社:明和地所 株式会社三井住友銀行:三井住友銀行 医療法人恵佑会札幌病院:恵佑会札幌病院

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2.佐賀県庁

2.1.導入の経緯

佐賀県庁では、庁内電子システムの利用者確認のために指紋認証を導入した。 自治体においては住民に関する個人情報や機密情報をセキュリティ高く管理することが 望まれている。佐賀県庁では、「県民サービスの向上」、「行政事務の簡素化・効率化」を目 的に電子県庁の構築を推進しており、平成 11 年度から県内関係機関を結ぶネットワーク を充実させ、職員一人一人に各一台のパソコンを配備してきた。佐賀県庁は、これらのパ ソコンのセキュリティを確保するために、利用者確認の方法を検討した。 検討においては、利用者確認における他人なりすましの防止とともに、実際に運用可能 か否かという問題を重視した。パスワードに基づく方式では、セキュリティ確保にために 長いパスワードを設定すると記憶が困難になること、そして、忘却するとログインができ なくなるということを問題と考えた。また、IC カードや USB デバイスを用いる方式では、 他人との間で貸し借りが可能であること、再発行の際に手間とコストがかかることが問題 であると考え、最終的に生体認証を導入することを決定した。

2.2.認証システムの概要

生体認証は職員が利用するPC で、庁内イントラネットを利用する際に行う(図 2-1 佐 賀県庁指紋認証システム構成)。PC の起動時に生体認証を行い、庁内イントラネットを通 じて接続されているシングルサインオンサーバによって認証を受けると、県庁内の各シス テムを利用できるようになる。 生体認証センサは職員が利用するPC に USB ケーブルで接続している。PC は、主に県 庁の執務室に設置しているが、一部、育児休職の職員等はモバイル環境で利用することも ある。 佐賀県庁提供資料「生体認証によるセキュリティ確保」より抜粋 図 2-1 佐賀県庁指紋認証システム構成

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2.3.ユーザに対して配慮した点

システム設計時に、指紋認証装置を導入するに当たり、以下の点に配慮した。 ・ 指紋認証を利用することによる職員の心理的抵抗感の低減 ・ 全職員を対象にすることによる登録拒否率の低減 ・ 登録される生体情報を他の目的で利用されないかといった不安感の払拭 ・ 偽造に関する不安感の低減 生体認証の利用者となる県庁職員に理解と協力を求めるため、システム導入3 ヶ月前と 2 週間前に、全職員を対象として生体認証の方式と導入に関する説明会を実施した。説明 会に向けては、操作のポイントをわかりやすく解説したビデオファイルやパンフレット(図 2-2)を用意した。 佐賀県庁 提供 図 2-2 生体認証の説明パンフレット

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実際のシステムにおいても、ログイン画面に表示される指紋情報の入力部分を網掛け表 示にするなど、利用者に配慮した工夫を凝らしている。 運用においては、電話による問い合わせ対応を行うと共に、認証ユニットやケーブルの 不具合には新品交換、使い方の個別説明を行うヘルプデスクを用意している。また、生体 認証ができない場合には、ヘルプデスクのガイダンスにより、生体情報の再登録を行って いる。

2.4.システム管理に配慮した点

特に、生体情報の管理に配慮した。指紋センサには、残留指紋が残らないスイープ型感 熱センサを採用し、システム内部にも指紋画像が残らないように、指紋画像を特徴情報に 変換して使用するシステムとした。指紋の特徴情報から元の指紋画像を復元することも不 可能である。

2.5.運用状況

全職員の理解が得られ、特に問題なく、良好に稼動している。

2.6.システム導入の効果

パスワード方式を採用していた時には、パスワードは各自で定期的に変更することを義 務付けていたが、なかには簡単なパスワードを使い続ける場合があるなど、セキュリティ 意識は決して高いとはいえないものであった。 しかし、生体認証システムの導入により、自ら認証情報の登録作業を行うなどセキュリ ティ対策に参加したことで、職員一人ひとりのセキュリティ意識が高まった。

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3.SBI 損害保険株式会社

3.1.導入の経緯

SBI 損保では、オフィスやサーバルームへの入室者を確認するために、虹彩認証を導入 した。 近年、個人情報や企業の重要な情報の管理に対する意識が高まっている。SBI 損保でも、 損害保険という商品の性格上、個人情報等の機微情報を多く抱えている。そこで、SBI 損 保では電子的セキュリティの強化に加え、社内のオフィス、会議室、サーバルーム等の入 室に対しても、本人確認の強化を検討した。 入室管理システムはオフィスのあらゆる場所に配置し、常に運用する。そのため、SBI 損保では、主として可用性の観点に立ち、紛失や忘却の心配がなく、人間が常に備えてい る生体情報を用いた生体認証を導入することを決定した。 SBI 損保の入室管理システムは、2007 年 5 月から運用を開始している。

3.2.認証システムの概要

生体認証装置は、メインオフィスとサテライトオフィスの各室の扉に設置している。何 れも建物内部にあり、直射日光等が当たることはない。 生体認証装置の前の適正な位置に立つと、音声による案内がある。そして、生体認証セ ンサに目を合わせると自動的に認証処理が行われ、認証が成功すると開錠する(図3-1 生 体認証装置利用例)。 図 3-1 生体認証装置利用例 利用者の生体情報は、メインオフィスのサーバルーム、もしくは、サテライトオフィス に配置された生体認証装置を用いて登録する。登録した生体情報は、サーバと各扉の生体 認証装置で多重に保管している。各生体認証装置で読み取った生体情報は、各装置内で照 合するので、サーバとの通信による遅延はない。なお、各生体認証装置において保管して

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いる個人の生体情報は、暗号化しているので、各生体認証装置上においても安全に管理さ れていると言える。

3.3.ユーザに対して配慮した点

常日頃、生体認証を利用するため、特に、使い勝手についても配慮している。生体認証 装置は、男女の身長差を考慮し、およそ150cm の高さに設置した。背の高い人は、装置に 付属するカメラ部分を上向きにすることで利用できる。また、装置には、適正な立ち位置 を判断するインジケータも用意されている。さらに、目に疾患を持つ社員でも、認証がス ムーズに行えるよう、片方の目のみでの認証も可能とした。

3.4.システム管理に配慮した点

生体認証にかかる運用時の負担を軽くすることに配慮している。具体的には、システム 全体をメインオフィスのサーバで管理しているといえども、サテライトオフィスの社員が、 メインオフィスに出向くことなく登録できるように、サテライトオフィスからでも生体情 報を登録できるようにした。

3.5.運用状況

生体認証装置は、メインオフィスとサテライトオフィスに計 5 台配置している。2008 年1月現在登録されているのは、全社員約 40 名である。これまでのところ良好に稼動し ており、特に問題は発生していない。 稼動当初、設置した生体認証装置の一つが、良好に認証できなかったが、その装置付近 の天井のスポット光の向きを変えることで、スムーズに認証が行えるようになった。

3.6.システム導入の効果

虹彩認証の導入によって、社内のセキュリティ管理が向上した。 運用面の上からはカード発行などの手間がないこと、日々の利用面の上からは手を使う必 要がないことなどにより、便利さを実感している。

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4.東陽倉庫株式会社

4.1.導入の経緯

東陽倉庫では、機密文書の管理を行う倉庫への入退室者を確認するために手のひら静脈 認証を導入した。 近年、個人情報や機密文書の管理に意識が高まり、個人情報や機密情報を電子化し、電 子的に高セキュリティな環境において管理することが進んできた。一方、重要な文書の中 には、書類自体に物理的に価値があり、電子化困難な場合もある。東陽倉庫では、そのよ うな電子化困難な重要文書を管理するセキュリティの高い倉庫の建設を検討した。 倉庫のセキュリティ確保にあたっては、倉庫の設計の段階から検討を開始した。検討に あたってはIT 技術を導入することを必須とし、IT セキュリティを検討する数社と検討を 重ねた結果、検討時における最適なセキュリティとして、IC カードと生体認証を組み合わ せて入退室管理システムを構築することを決定した。 本倉庫は2006 年 10 月から運用を開始している。

4.2.認証システムの概要

東陽倉庫が新たに建設した建物は6 階建てで、2 階以上が倉庫になっており、生体認証 装置は、倉庫がある各階の入口に設置されている。入口には入室用の扉があり、扉の外側 の脇には入室用の認証装置を、扉の内側の脇には退室用の認証装置を配置している。(図 4-1、図 4-2)。 図 4-1 倉庫階入口外観

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図 4-2 手のひら静脈による本人確認 認証装置を設置した環境は、何れも建物内部に相当し、照明は一定の状態に維持されて いる。 入退室の本人確認は、IC カードと生体認証の併用である。認証装置は、IC カード認証 機能と手のひら静脈認証機能を兼ね備えており、先ず、IC カードを提示して IC カード認 証を行った後、手のひらをかざして生体認証を行う。 利用者の生体情報は、厳重に管理された2 台のサーバで管理している。倉庫の各認証装 置とサーバとは、社内のLAN とは独立した LAN で接続されており、生体認証の照合はサ ーバ上で行われている。 本生体認証の利用規模は30 名を想定しており、現時点では倉庫関係者約 20 名が利用し ている。

4.3.ユーザに対して配慮した点

本システムの運用開始に合わせて、利用者には、事前に1 日程度の実践練習会を実施し た。常日頃、社内でセキュリティ教育を実施しているため、生体情報という機密情報の取 り扱いについても高い理解が得られた。 利用者は男女をともに含むことから、認証装置を設置する高さは、男女双方の身長を配 慮して決定した。生体認証装置自体も、手を乗せる小さな台があり、そこに手を乗せるこ とで容易かつ適切に手をかざすことができる。センサ部に直接、接触しない認証方式を選 んだことにより、衛生面においても利用者の理解が得られた。

4.4.システム管理に配慮した点

システム管理においては特に生体情報の紛失や漏洩への対策を強化した。生体情報を管

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理するサーバは専用のサーバルームに配置している。サーバルームへの入退室は IC カー ドによって本人確認を行うようにし、特定の社員以外は入れないようにしている。生体情 報を管理するサーバも2 台を用い、多重管理により信頼性を高めている。

4.5.運用状況

認証失敗が多発する利用者に対しては、認証装置の利用に対する再説明をするとともに、 再登録を行う。再説明、再登録後は、何れの利用者も問題なく認証できている。 初めて訪れた運送業者が本倉庫の高セキュリティシステムに戸惑うことがある。その際 は、本倉庫のセキュリティの高さを説明し理解を得ている。一貫して、運用後も、導入当 初に立てたセキュリティポリシーの維持を徹底している。

4.6.システム導入の効果

生体認証の導入より、倉庫へ搬入、搬出を行う保管文書をはじめとする荷物の管理の徹 底が実現した。 セキュリティの高さは書類を預ける人への安心感につながっている。

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5.明和地所株式会社

5.1.導入の経緯

明和地所では、マンションにおける入居者の確認のために、指紋認証、手のひら静脈認 証、音声認証を導入した。 近年、国内において凶悪犯罪が増加しつつあり、一般住居のセキュリティ向上について 意識が高まっている。明和地所では、マンションを建設・販売するにあたり、安全性の高 い物件を提供するため、セキュリティの高い共用玄関の設置を検討した。 マンションの共用玄関は、そのマンションの住民が、日常生活の中で利用する。そのた め、セキュリティの確保に加え、利便性も高いことが要求される。そこで、鍵を不要とし ながらも、セキュリティを確保できる本人確認の方式として、生体認証を導入することを 決定した。

5.2.認証システムの概要

生体認証装置は、マンションの共用玄関、もしくは、エレベータホールに配置している。 入居者は、入居者確認の方法を、従来の方法か生体認証かのどちらかを選択できる。生体 認証を共用玄関で実施するケースでは、生体認証によって玄関内部に入ることができ、エ レベータホールに配置しているケースでは、他の階で停止しているエレベータをエレベー タホールのある1 階に呼び出すことができる。 指紋認証もしくは手のひら静脈認証を導入しているマンションでは、生体認証と暗証番 号による認証を併用する。また、音声認証システムを導入しているマンションでは、あら かじめ緊急キーワードを登録しておけば、認証用のマイクに登録した緊急キーワードを発 声することにより、警備会社に連絡することができる。 生体情報の登録は説明者が立会う。その機会も繰り返し設けている。生体認証システム のメンテナンスは、マンションの竣工後年1回、また、状況によってはマンションの管理 者の判断のもとで、必要に応じて行っている。

5.3.ユーザに対して配慮した点

生体認証の使いやすさに配慮した。具体的には、生体認証付き入退室管理装置の設置に あたって、入居者の年齢や身長に配慮した。

5.4.システム管理に配慮した点

生体情報の管理に特に配慮している。登録された生体情報は各物件の特別な場所に設置 されたコンピュータ内に格納し、限られた人間にしか操作できないように管理・運用を行 い、生体情報の漏洩・盗難に配慮した。

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5.5.運用状況

生体認証システムを導入したマンションは、関東に9 物件あり、512 世帯が利用してい る。残念ながら、現時点では生体認証の利用頻度はあまり高くない。しかし、入居者より、 鍵を忘れてオートロックのドアの外に出てしまっても、生体認証により入館できたという 報告が多くあり、生体認証が「第二の鍵」であるという理解が増えつつある。

5.6.システム導入の効果

生体認証を導入することで、確かな防犯対策を実現できたと同時に、安全へ配慮した共 用玄関に対する理解が高まり、マンションの販売促進にも効果があった。

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6.株式会社三井住友銀行

6.1.導入の経緯

三井住友銀行は、ATM(Automatic Teller Machine)における利用者確認のために指静 脈認証を導入した。 2003 年、キャッシュカードのスキミング犯罪が多発し、国内の金融機関は金融商品のセ キュリティ向上に関して意識が高まった。そこで、三井住友銀行はキャッシュカードを、 偽造が困難な IC カードにすることを決定し、さらに、本人確認も強化することを検討し た。 キャッシュカードの利用者は、子どもからお年寄りまで幅広く特に年齢制限がない。そ のため新規に導入する本人確認は、誰もが直感的に利用できることが望まれた。さらに、 カード同様、偽造が困難な方法であることも望まれた。以上の条件を総合的に判断し、最 終的に生体認証を採用することを決定した。

6.2.認証システムの概要

三井住友銀行では IC カードをキャッシュカードとして用い、このカードを使用するた めには、カードへの生体認証情報の登録を必須とする商品を展開した。このカードを使用 する際は、先ず、ATM へカードを挿入し、次に、ATM のタッチパネルの脇に配置された 生体認証センサに、指をかざす(図5-1 生体認証機能付き ATM 使用例)。 (Copyright 2008, 三井住友銀行) 図 6-1 生体認証機能付き ATM 使用例 生体情報の登録は行員の説明のもとに本・支店窓口で行う。登録の際の本人確認は、免 許証等の証明書により行う。登録する生体情報は生体認証機能付き IC キャッシュカード

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のIC チップに記録される。認証時、ATM の生体認証センサにより取得した生体情報はキ ャッシュカード内部に送り込まれ、カード内に記録された生体情報とカード内で照合され る。カードの外には照合結果しか出力されない。照合に成功したという結果は、ATM を 経由して銀行のメインサーバに送信され、取引を開始することができる。 生体認証機能付きATM は、コンビニエンスストアへも含めて、全国で約 5,500 台配置 されている。また、登録用としては全国の本・支店窓口に約2,000 セットが配置されてい る。

6.3.ユーザに対して配慮した点

三井住友銀行は、年齢層が広い多くの顧客に生体認証を理解してもらえるよう、サービ スおよびシステムをシンプルに構築するよう努めた。そのため、生体認証機能付き IC キ ャッシュカードを利用するためには、カードへの生体認証情報の登録を必須とした。この カードを利用して残高照会や出金を行う際は、必ず生体認証を行うため、生体認証を備え た ATM を数多く配置し、他行 ATM との相互利用も可能とし、生体認証を利用する顧客 が不便を感じさせないようにした。 生体認証の利用方法についても、顧客に十分理解いただけるよう配慮している。すなわ ち、説明を行う行員が自ら生体認証に精通するよう、導入1 ヶ月程度前から、ビデオ映像 などを用いた勉強会を開催し、実際に利用する演習も実施した。

6.4.システム管理に配慮した点

一般に、光を利用する生体認証は、生体認証センサへの直接光に弱い。そのため、周囲 の照明に配慮した上で、ATM の設置を行った。 生体認証の認証精度に関する評価テストも、システムベンダと協力して実施している。

6.5.運用の状況

現時点では、導入後、認証に支障を来たしたことはなく、良好に稼働している。 当初懸念された生体認証機能付きATM の数についても、サービスの充実を目的として 既存のATM の生体認証機能付き ATM への転換を進めたことにより、2008 年 1 月現在、 生体認証機能付きATM の配備が足りないという顧客の不満はほぼ解消している。

6.6.システム導入の効果

生体認証機能付き IC カードを導入したことで、安全性の高いサービスを提供できた。 また、比較的早い時期に生体認証を導入したため、セキュリティへの積極的な取組みにつ いて、多くの顧客の理解を得ることができた。

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7.医療法人恵佑会札幌病院

7.1.導入の経緯

恵佑会札幌病院では、治療行為における患者確認を強化するため手のひら静脈認証を導 入した。 医療機関において、治療時や手術時の患者の取違えは重大な問題であり、数多くの手段 が講じられている。恵佑会札幌病院ではその強化に向けてIT 技術による対策を検討した。 現在、医療機関においてはバーコードを印刷したリストバンドを用いた患者確認が広く 普及してきている。しかし、この方法には、バーコードの印刷ミス、バーコードをリスト バンドに貼り付ける際の取違え、リストバンドを患者が身に付ける際の取違えの可能性も ある。また、患者の中には、バーコードを身に付けることに対して、拒否感を持つ人もい る。そこで、恵佑会札幌病院では、人間の情報をそのまま用いる生体認証を導入すること を決定した。 恵佑会札幌病院における生体認証の導入は、2006 年から生体認証装置の検討を開始する とともにシステム開発を進め、2007 年 9 月に生体認証を含むシステムの結合試験を実施 し、同年10 月に本格稼動を開始した。

7.2.認証システムの概要

生体認証は、手術室内での患者の確認に利用している。各手術室にはPC 端末があり、 生体認証センサは、その PC 端末に長い USB ケーブルで接続されている。そして、患者 が手術台に横たわった際に認証を行う。 生体情報の登録は、手術予定患者の入院時の問診(アナムネーゼ)の際、看護職員によ る説明のもと、病棟で行う。登録用には、14 台の生体認証センサを用意している。これら のセンサは所定のPC 端末に接続するほか、無線 LAN を用いたノート PC に接続すること もでき(図 7-1 認証時)、病室で登録することも可能である。 図 7-1 生体認証センサノート PC 接続例

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手術患者の生体情報は院内のサーバで一括管理している。最大の登録可能な患者数は、 年間6000 人程度を想定している。現在 1000 人程度の患者が登録されているが、これらの 生体情報は個人情報の管理の観点から、3 ヶ月後に消去している。

7.3.ユーザに対して配慮した点

病院内で利用するという環境から、特に、清潔感等の面に配慮した。そのため、生体認 証センサにできるだけ触れない方式を採用している。 また、手術予定の患者には、登録時に生体認証の説明を行って、生体認証の理解を得る ようにしている。

7.4.システム管理に配慮した点

実運用に先立ち、試験を行った。試験は、職員、および、模擬患者により約2 週間実施 している。 また、導入後も、生体認証センサが適切に動作しているかどうかのチェックを随時実施 している。

7.5.運用状況

院内は、室温、湿度、照明等、年間を通して均一になるように調整されており、安定し て稼動している。 導入当初、一部、生体認証センサへの手のかざし方が説明書と違っていたため、登録や 認証ができないこともあったが、院内電子ネットワークを通じて再度、職員へ説明したこ とにより、それ以後は、そのような問題もなくなった。

7.6.システム導入の効果

手術患者の確認がより確実になったことに加え、この取り組みに対する患者からの理解 も得られ、病院の信頼向上につながっている。

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謝辞

本事例集の編集にあたり、ご多忙中のところ調査にご協力いただいた方々に、御礼申し 上げます。

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図  4-2  手のひら静脈による本人確認  認証装置を設置した環境は、何れも建物内部に相当し、照明は一定の状態に維持されて いる。  入退室の本人確認は、IC カードと生体認証の併用である。認証装置は、IC カード認証 機能と手のひら静脈認証機能を兼ね備えており、先ず、IC カードを提示して IC カード認 証を行った後、手のひらをかざして生体認証を行う。  利用者の生体情報は、厳重に管理された 2 台のサーバで管理している。倉庫の各認証装 置とサーバとは、社内の LAN とは独立した LAN で接続され

参照

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