• 検索結果がありません。

ATLAS実験における重心系衝突エネルギー8 TeVでの陽子-陽子衝突のデータを用いたトップクォークとボトムクォークに崩壊する荷電ヒッグス粒子の探索

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ATLAS実験における重心系衝突エネルギー8 TeVでの陽子-陽子衝突のデータを用いたトップクォークとボトムクォークに崩壊する荷電ヒッグス粒子の探索"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Search for charged Higgs bosons in the H± →

tb decay channel in pp collisions at √s = 8

TeV with the ATLAS detector

著者

Nagata Kazuki

発行年

2017

その他のタイトル

ATLAS実験における重心系衝突エネルギー8 TeVでの

陽子-陽子衝突のデータを用いたトップクォークと

ボトムクォークに崩壊する荷電ヒッグス粒子の探索

学位授与大学

筑波大学 (University of Tsukuba)

学位授与年度

2016

報告番号

12102甲第7974号

URL

http://hdl.handle.net/2241/00147712

(2)

名 永 田 和 樹

の 種

類 博 士 ( 理 学 )

号 博 甲 第 7974 号

学 位 授 与 年 月 日 平成 29 年 1 月 31 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当

科 数理物質科学研究科

学 位 論 文 題 目

Search for charged Higgs bosons in the H

±

→ tb decay channel in pp collisions

at √s = 8 TeV with the ATLAS detector

(ATLAS 実験における重心系衝突エネルギー8 TeV での陽子-陽子衝突のデータを

用いたトップクォークとボトムクォークに崩壊する荷電ヒッグス粒子の探索)

査 筑波大学教授

博士(理学)

受川 史彦

査 筑波大学教授

理学博士

金 信弘

査 筑波大学准教授

博士(理学)

武内 勇司

査 筑波大学准教授

博士(理学)

谷口 裕介

査 筑波大学講師

博士(理学)

佐藤 構二

論 文 の 要 旨

本論文は,素粒子標準理論を超える物理として,電荷を持つヒッグス粒子(荷電ヒッグス粒子)の生成 と崩壊を,欧州 CERN 研究所で遂行中の高エネルギー陽子陽子衝突実験 ATLAS において探索した結 果を報告したものである。CERN 研究所の Large Hadron Collider (LHC) 加速器は,2010 年より本格稼 働し,ATLAS および CMS の両実験が,2011 年および 2012 年に,重心系衝突エネルギー7 および 8 TeV での陽子陽子衝突実験を遂行した。それまでの最高エネルギーの加速器(米国フェルミ国立加速器研究 所のテバトロン)の 2 TeV を大きく上回り,新粒子・新現象の発見が期待された。2012 年夏には,長年に わたる探索にもかかわらず未確認であったヒッグス粒子を ATLAS および CMS 実験が発見し,翌 2013 年 には,同粒子を理論的に予言した2氏がノーベル物理学賞を受賞した。ヒッグス粒子の発見により素粒子 標準理論を構成する粒子はすべて実験的に確認されたが,同理論が素粒子の究極の理論であると考え る研究者は少なく,その拡張あるいは変更について,さまざまな理論模型が提唱されている。特に,ヒッグ ス粒子を含むセクターでは,標準理論で予言される唯一無二のヒッグス粒子に加えて,4つのヒッグス粒 子が存在するとする理論が有力である。この理論では,うち2つが電荷を持つ粒子(荷電ヒッグス粒子)で あり,その質量が大きい場合には,主としてトップ・クォークとボトム・クォークの対に崩壊すると予言される。 本論文の研究では,2012 年に ATLAS 実験で取得した重心系エネルギー8 TeV の陽子陽子衝突事象

(3)

を解析し,荷電ヒッグス粒子を探索した。データ量は,積分輝度 20.3 fb-1 に相当する。本研究の探索が感 度を持つ質量領域は,200 GeV から 600 GeV である。荷電ヒッグス粒子生成の素過程は,反ボトム・クォ ークとグルオンの散乱により,荷電ヒッグス粒子と反トップ・クォークが生成されるというものである。生成さ れた荷電ヒッグス粒子は,トップ・クォークと反ボトム・クォークの対に崩壊する。よって,終状態は,最終的 に,トップと反トップ・クォークの対および反ボトム・クォークから成る。場合によっては,始状態の反ボトム・ クォークと対を成すボトム・クォークが終状態に現れる。つまり,トップ・反トップ・クォーク対と1つまたは2つ のボトム・クォークが探索すべき荷電ヒッグス粒子の作る終状態である。本研究の解析では,トップあるい は反トップ・クォークの崩壊で生じた W ボソンのうちの 1 つが荷電レプトン(電子またはミュー粒子)とニュ ートリノに崩壊するチャンネルを用いた。よって,直接に観測する終状態は,荷電レプトンと複数(5つまた は6つ)のジェット(うち3つまたは4つはボトム・クォーク由来)となる。信号事象の収集には,高運動量の 荷電レプトンがあることを要求した(電子 24 GeV 以上,ミュー粒子 25 GeV 以上)。さらに,事象選別にお いて,高運動量のジェット(25 GeV 以上)が4つ以上存在すること,およびそのうち2つ以上がボトム・クォ ーク由来のものとして同定されていることを要求した。信号領域は,ジェット数が5以上(うちボトム・クォー ク由来が3つ以上)と定義される。事象選別後,この領域に観測した事象数は,5184(電子チャンネル)お よび 6764(ミュー粒子チャンネル)である。 選別後の事象には,標準理論の枠内の,信号以外の過程に由来するものが含まれる。これらを背景事 象と呼ぶが,その量と,事象選別に用いる様々な変数の分布の評価は,細心の注意をもって行う必要が ある。特に,QCD素過程によってトップ・反トップ対に随伴してボトム・反ボトム対が生成されるものが,信 号と同じ終状態を与えるため,重要である。これらの評価には,理論に基づくモンテ・カルロ計算,および, 実データ中の理解の進んだ選別領域の事象を用いて行った。さらに,信号探索の感度を向上させるため に,多変量解析(Boosted Decision Tree, BDT)を採用して,解析の最適化を図った。最終的に,既知の 物理過程により期待される背景事象を有意に越える信号候補事象は観測されず,荷電ヒッグス粒子の生 成断面積に対する上限を設定した。質量200 GeVに対して6.28 pb,600 GeVについては0.24 pbである。 これにより,いくつかの理論模型について,これまでの探索では及ばなかった高い質量領域での荷電ヒッ

グス粒子の存在を棄却した。たとえば,Minimal Supersymmetric Standard Model (MSSM)において,0.5

≤ tanβ ≤ 0.6 の場合に,200 GeVから 300 GeVの質量領域を,tanβ≈0.5の場合に 350 GeVか ら 400 GeVの領域を排除した。

審 査 の 要 旨

〔批評〕 本論文の研究は,素粒子物理学における喫緊の課題であるヒッグス・セクターの検証と素粒子標準理 論を超える物理の探索を行ったものであり,学術的意義が高い。CERN 研究所の LHC を用いた実験に は,世界中の研究者が集結して研究を行っており,まさに世界最先端をゆく研究である。本論文では,特 に,荷電ヒッグス粒子の探索を対象としている。同粒子は,素粒子の標準理論を超える理論模型にしばし ば登場する粒子であり,これまでもさまざまな実験で探索が行われたが,未だ発見されていない。素粒子 標準理論は実験事実を記述するのにきわめて高い成功を収めているものの,それが素粒子の究極理論

(4)

であると考える研究者はほとんどおらず,LHC 加速器の稼働とそれに伴う新たなエネルギー領域での粒 子衝突実験は,新粒子・未知粒子の探索・発見に大きな期待が寄せられている。 本研究では,重心系エネルギー8 TeV の陽子陽子衝突実験において荷電ヒッグス粒子探索を行うこと により,これまでの探索領域を大きく拡げることに成功した。新現象の探索においては,信号と背景事象 の分離を最大化し,探索感度を上げることが肝心である。従来の手法では,さまざまな条件を課して,背 景事象が十分少なくなるようにするのが通例であった。しかしながら,この方法では信号に対する効率が 小さくなりがちで,必ずしも探索の感度は高くない。それに対し,本研究では,多変量解析を導入し,信号 に対する効率を高く維持しつつ,背景事象との分離を達成することに成功した。 また,このような解析には,信号事象および背景事象を十分に理解し,それらのふるまいを定量的に記 述することが前提となる。信号・背景のモデル化は,理論予言に基づくモンテ・カルロ事象を用いた模擬 実験により行う。通常,信号事象の記述は理論計算に頼るが,背景事象の記述には,それでは不十分な 場合も多い。本研究では,背景過程の一部分は実データを用いて評価し,また,さまざまな物理量の分 布は,素性のよく知られたデータ・サンプルを用いて検証するなど,入念な配慮がなされている。 さらに,探索に用いた終状態は,多数のハドロン・ジェットを含む。これらの再構成と測定は決して容易 なものではなく,特に,ボトム・クォーク由来とジェットの識別は,ジェットを構成する粒子の飛跡の高精度 な再構成が不可欠である。 著者はこれらの点を深く考慮しつつ,慎重かつ着実に,難しい研究を進めた。共同研究においては, 各々のテーマの研究・解析も複数の研究者が寄与して進められるが,著者の貢献はきわめて大きく,その 点でも評価される。結果として,荷電ヒッグス粒子の発見には到らなかったが,これまでの探索領域を大き く拡張するものであり,素粒子物理学に新たな知見をもたらした。また,研究の詳細は,本論文中に,論 理的かつ具体的に述べられている。よって,本論文は,博士論文として十分な学術的価値を持つものと 判断される。 〔最終試験結果〕 平成28年12月16日、数理物質科学研究科学位論文審査委員会において審査委員の全員出席のも と、著者に論文について説明を求め、関連事項につき質疑応答を行った。その結果、審査委員全員によ って、合格と判定された。 〔結論〕 上記の論文審査ならびに最終試験の結果に基づき、著者は博士(理学)の学位を受けるに十分な資 格を有するものと認める。

参照

関連したドキュメント

微小粒子状物質は、大気中に浮遊する粒径が2.5μm

様々な国の子供の死亡原因とそれに対する介入・サービスの効果を分析すると、ミレニ アム開発目標 4

超純水中に濃度及び粒径既知の標準粒子を添加した試料水を用いて、陽極酸 化膜-遠心ろ過による 10 nm-SEM

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

子どもが、例えば、あるものを作りたい、という願いを形成し実現しようとする。子どもは、そ

2 E-LOCA を仮定した場合でも,ECCS 系による注水流量では足りないほどの原子炉冷却材の流出が考

① 新株予約権行使時にお いて、当社または当社 子会社の取締役または 従業員その他これに準 ずる地位にあることを