2011 年度後期「化学」(担当:野島 高彦)
水溶液の濃度
1 医療の仕事と水溶液 医療の仕事では,血液,尿,唾液といった体液を取り扱う.また,薬品の 多くが水溶液の状態になっている.液体を正しく取り扱う技術は医療従事者 にとって必要不可欠なものである.そして濃度がわからなければ液体を正し く取り扱うことはできないのである. 2 水溶液に関係する用語 塩化ナトリウムを水に溶解したものが塩化ナトリウムの水溶液であり,グ ルコースを水に溶解したものがグルコースの水溶液である.ここで,溶かさ れるもの,すなわち塩化ナトリウムやグルコースを溶質,溶かすもの,すな わちここでは水を溶媒,と呼ぶ.溶質が溶媒に溶け残ることなく均一に溶け ているものが溶液である.そして,溶液中にどれくらいの量の溶質が溶けて いるかをあらわす量が濃度である.溶液のうち,もうこれ以上は溶けない, という濃度まで溶質を溶かした溶液を飽和溶液と呼び,その時の濃度を溶解 度や飽和濃度と呼ぶ.これに対して,まだ溶質を溶かす余地のある溶液を不 飽和溶液と呼ぶ.また,条件が整うと,飽和濃度を超えて溶質が溶けた状態 になる場合がある.このような状態の溶液を過飽和溶液と呼ぶ.3 溶液濃度のあらわしかた 代表的な濃度の表し方 4 種類を表 1 に示した. 3.1 質量パーセント濃度 100 g の溶液を考えたときに,そこに何 g の溶質が溶けているかをパーセ ントであらわす方法が質量パーセント濃度である.質量パーセント濃度をあ らわす単位は%である*1.たとえば100 g の塩化ナトリウム水溶液があり,こ の中に 1 g の塩化ナトリウムが溶けていたとしよう.このときの質量パーセン ト濃度は以下のとおり 1 %である*2.小学校で習う「食塩水の濃度」は,この 濃度である. (1 g)/(100 g) = 0.01 = 1 % ここで注意しなければならないのは,水と塩化ナトリウムをあわせて 100 g である,という点である.水の質量は 100 g ではなく 99 g なのである. 100 g の水に塩化ナトリウム 1 g を加えると 1 %よりも薄くなってしまうので 注意せよ. [例題] 2.5 g のグルコースが溶けている 50 g の水溶液中の,グルコースの質量 パーセント濃度を求めよ. [解答] (2.5 g)/(50 g) = 0.050 = 5.0 % 3.2 質量/体積パーセント濃度 100 mL の水溶液を考えた時に,そこに何 g の溶質が溶けているかをあら わす方法が質量/体積パーセント濃度である.溶液を扱う際には,質量ではな くて体積で考えた方が便利な場合が多い.溶液はピペットやメスシリンダー など,体積をはかる器具で扱うことがほとんどだからだ.そこで,一定の体 1 質量パーセント濃度の単位として%(w/w)もしくは wt%を用いる場合がある が,これらは正しい表記ではない.単位は%とし,それが質量パーセント濃度 であることを文章によって明記するのが正しい記述である.同じように質量 体積パーセント濃度の単位として%(w/v)を用いる場合があるが,これも正し い表記ではない.単位は%である.それが質量/体積パーセント濃度であるこ とを文章によって明記するのが正しい記述である. 2 数値と「%」の間にはスペースを入れる.入れないと SI ルール違反になる.
積の溶液にどれだけの溶質が溶けているのか,を考える方法も必要になるの だ.質量/体積パーセント濃度の単位にも%が用いられる.たとえば 100 mL の塩化ナトリウム水溶液があり,この中に1 g の塩化ナトリウムが溶けている 場合の質量/体積パーセント濃度は以下のとおり 1 %である. (1 g)/(100 mL) = 0.01 g mL-1 = 1 %*3 水と塩化ナトリウムを合わせた体積が 100 mL であり,水を溶かす前の体 積が 100 mL というわけではない.また,1 g の塩化ナトリウムを溶かすとき に用いられる水は 99 mL にはならない.塩化ナトリウム 1 g が 1 mL の体積 を持っているわけではないからだ. [例題] 4.00 g のグルコースが溶けている 200 mL の水溶液の,グルコースの 質量/体積パーセント濃度を求めよ. [解答] 水溶液 100 mL について考える.ここに溶けているグルコースの質量を求 める.その量を x とすると次式が成り立つ. 100 mL : x = 200 mL : 4.00 g ∴ x = (100 mL)(4.00 g)/(200 mL) = 2.00 g 100 mL に 2.00 g が溶けているので,このグルコース水溶液の質量/体積 パーセント濃度は 2.00 %である. 3.3 モル濃度 1 L の体積の水溶液を考えた時に,そこに何モルの溶質が溶けているのか を表す方法がモル濃度である.モル濃度の単位には mol L-1を用いるが, mol dm-3やM を用いることもある*4.
1 mol の NaCl が溶けている 1 L の水溶液では,NaCl の濃度は以下のとお
りである*5. 3 g mL-1が%に置き換わっており単位の整合性がとれていないので注意せよ. このように定義しているのでしかたがない. 4 M はモラーと読む. 5 NaCl と水をあわせて 1 L にしているのであって,水 1 L に NaCl を加えて いるわけではない.そういうことをすると体積は1 L ではなくなってしまう.
(1 mol)/(1 L) = 1 mol L-1
1 mol L-1の1/1 000 の濃度は 1 mmol L-1であり,1 mM とあらわすことが
ある.同様にその1/1 000 の濃度を 1 µM,さらにその 1/1 000 の濃度を nM,
さらにその 1/1 000 の濃度を pM とあらわすことがある.
[例題]
2.00 mol の NaCl を含む 500 mL の水溶液がある.この水溶液の NaCl の 濃度をモル濃度であらわせ. [解答] (2.00 mol)/(0.500 L) = 4.00 mol L-1 [例題] 5.85 g の NaCl を含む 1.00 L の水溶液がある.この水溶液の NaCl の濃度 をモル濃度であらわせ.NaCl のモル質量は 58.5 g mol-1とせよ. [解答] モル濃度を求めるのだから,溶けている NaCl が何 mol なのかを計算して おく必要がある.これを x として比例計算をする. 1 mol : 58.5 g = x : 5.85 g x = (1 mol)(5.85 g)/(58.5 g) = 0.100 mol 0.100 mol の NaCl が 1.00 L 中に溶けているので,濃度は次のようになる. (0.100 mol)/(1.00 L) = 0.100 mol L-1 = 1.00 10-1 mol L-1
[例題]
0.500 mol L-1のNaCl 水溶液を 250 mL 調製することにした.必要な NaCl
の質量を求め,調製方法を述べよ.NaCl のモル質量は 58.5 g mol-1とする. [解答] まず,必要な物質量を求める.調製後の水溶液を考え,この中に含まれて いる NaCl の質量を計算する. (0.250 L)(0.500 mol L-1) = 0.125 mol これの質量を求める.物質量 モル質量=質量なので,以下のとおりにな る.
(0.125 mol)(58.5 g mol-1) = 7.3125g = 7.31 g 従って,7.31 g の NaCl を水に溶解させて体積を 250 mL にする. 3.4 質量モル濃度 1 kg の溶媒を考えて,そこに何モルの溶質が溶けるかを表す方法が質量モ ル濃度である.質量モル濃度の単位は mol kg-1である.液体の密度は温度が 変わると変化するので,温度変化を伴う実験においては,体積よりも質量で 考えた方が便利な場合もある.また,温度が変化すると溶解度が大きく変化 する溶質もあり,溶液ではなく,溶媒の質量を基準にした方が便利な場合も ある.そのためにモル濃度とは別に質量モル濃度が定義されている. [例題] 11.7 g の NaCl を 500 g の水に溶かした.このときの NaCl の質量モル濃 度を求めよ.NaCl のモル質量を 58.5 g mol-1とせよ. [解答] 11.7 g の NaCl の物質量を求める. (11.7 g)/(58.8 g mol-1) = 0.200 mol これが 500 g の水に溶けているので,NaCl の質量モル濃度は以下のとお りである.
(0.200 mol)/(0.500 kg) = 0.400 mol kg-1 = 4.00 10-1 mol kg-1
3.5 ppm と ppb *6
微量成分の濃度をあらわす際に ppm (parts per million)や ppb (parts per billion)が用いられることがある.溶液の濃度の場合,これは以下のことを 意味する. 1 ppm = 1 mg L-1 1 ppb = 1 µg L-1 ppm や ppb は溶液の濃度をあらわすとき以外にも用いられる.例えば固 体試料中に含まれる微量成分の存在割合をあらわす際,1 ppm = 1 mg kg-1と して考えることが多い.ppm や ppb が用いられている場合には,何を 1 ppm 6 使用が推奨されない単位だが,広く使われてしまっているのでここで説明し ておく.化学講義ではこれ以降扱わないし,試験にも用いない.
や 1 ppb としているのかに十分に注意する必要がある.ppm や ppb は公的に は利用が推奨されていない単位なので,特別な事情が無い限りppm や ppb を 用いてはならない*7. 4 溶液濃度計算の実際 4.1 濃度の単位を換算する 分析検査や溶液調製を始めようとして,溶液ビンのラベルを見たところ, 濃度が質量パーセントで記されていた.しかし実験手順書はモル濃度で書か れている,というような状況は珍しくない.質量パーセント濃度,質量/体積 パーセント濃度,モル濃度の 3 種類について,例題を解きながら換算技術を 身につけていこう. (a) 質量パーセント濃度から質量/体積パーセント濃度を求める [例題] 質量パーセント濃度が 25.0 %の硫酸の濃度を質量/体積パーセント濃度で あらわせ.この硫酸の密度は 1.18 g cm-3である. [計算の指針] 質量パーセント濃度が 25.0 %ということは,100 g の溶液中に 25.0 g の硫 酸が溶けていることを示している.ここで100 g ではなく,100 mL に何 g の 硫酸が溶けているのかがわかれば,質量/体積パーセント濃度を求めることが できる.そこで密度を使って質量→体積の換算を行う.体積=(質量)/(密度)で ある. [解答] この水溶液 100 g について考える.質量パーセント濃度が 25.0 %なので, ここに含まれている硫酸の質量は 25.0 g である. 溶液 100 g の体積を求める. (100 g)/(1.18 g cm-3) = 84.75 cm3 = 84.75 mL ここに 25 g の硫酸が溶けている.100 mL に含まれる硫酸の質量を x とす ると次式が成り立つ. 7 日本工業規格(JIS)では ppm や ppb といった略号の使用を禁止している. SI では ppm を禁止してはいないが,「極力避けるのがよい」としている.
100 mL : x = 84.75 mL : 25 g ∴ x = (100 mL)(25.0 g)/(84.75 mL) = 0.295 = 29.5 % (b) 質量/体積パーセント濃度から質量パーセント濃度を求める [例題] 質量/体積パーセント濃度が 8.5 %のグルコース水溶液の濃度を,質量パー セント濃度であらわせ.この水溶液の密度は 1.03 g cm-3である. [計算の指針] 前問と逆の計算である.質量/体積パーセント濃度が 8.5 %ということは, 100 mL の水溶液中に 8.5 g のグルコースが溶けていることを示している.こ こで100 mL ではなく,100 g に何 g のグルコースが溶けているかがわかれば, 質量パーセント濃度を求めることができる.そこで密度を使って体積→質量 の換算を行う.質量=密度 体積である. [解答] この水溶液 100 mL について考える.この中に 8.5 g のグルコースが含ま れている. この溶液 100 mL の質量を求める. (1.03 g cm-3)(100 cm3) = 103 g したがって,この水溶液の質量パーセント濃度は次のようになる. (8.5 g)/(103 g) = 0.083 = 8.3 % (c) 質量パーセント濃度≒質量/体積パーセント濃度の場合 医療や生命科学研究で用いられる一般的な水溶液においては,密度は 約 1 g cm-3である.したがって,質量パーセント濃度と質量/体積パーセント 濃度が区別されていない手順書を目にすることもある.濃度が単に%であらわ されていた場合,混乱する必要はない.一桁%の濃度なら,区別せずに好きな 方を考えれば良いのである. (d) 質量/体積パーセント濃度からモル濃度を求める [例題] 質量/体積パーセント濃度が 1.00 %の NaCl 水溶液の濃度を,モル濃度で あらわせ.NaCl のモル質量は 58.5 g mol-1とせよ.
[計算の指針] モル濃度を求めるためには,溶液の体積と,NaCl の物質量がわかればよ い.100 mL について考えよう.NaCl の物質量は,物質量=(質量)/(モル質量) から求められる. [解答] 100 mL の水溶液について考える.質量/体積パーセント濃度が 1.00 %なの で,ここには 1.00 g の NaCl が含まれている.これの物質量を求める. (1.00 g)/(58.5 g mol-1)= 0.0171 mol これが 100 mL に溶けているので,モル濃度は次のようになる.
(0.0171 mol)/(0.100 L) = 0.171 mol L-1=1.71 10-1 mol L-1
(e) 質量パーセント濃度からモル濃度を求める [例題] 質量パーセント濃度が20 %,密度が 1.2 g cm-3のNaOH 水溶液の濃度を, モル濃度であらわせ.NaOH のモル質量は 40.0 g mol-1とせよ. [計算の指針] 質量パーセント濃度が与えられているので,100 g の溶液について考える ことにしよう.次の順に換算を進めて行けばよい.100 g に溶けている質量→ 1 L に溶けている質量→1 L に溶けている物質量.溶液の質量から体積を求め るときには密度を使えばよい.体積=(質量)/(密度)である.溶質の質量から物 質量を求めるときにはモル質量を用いればよい.物質量=(質量)/(モル質量)で ある. [解答] 100 g の水溶液を考える.ここに含まれる NaOH の質量は次のとおりであ る. (0.20)(100 g) = 20 g これの物質量は次とおりである. (20 g)/(40.0 g mol-1) = 0.50 mol 100 g の水溶液の体積を求める.
(100 g)/(1.2 g cm-3) = 83.33 cm3 = 83.33 mL = 83.33 10-3 L モル濃度を求めると以下のようになる. (0.50 mol)/(83.33 10-3 L) = 6.0 mol L-1 これまでは説明のために一段階ずつ計算を進めていたが,慣れてきたら次 のように一度に計算してしまって構わない.数値の精度という面では,計算 は一度に処理することが望ましい. (0.20 100 g/40.0 g mol-1)/(100 g/1.2 g cm-3) = 0.0060 mol cm-3 = 6.0 mol L-1 (f) モル濃度から質量パーセント濃度を求める [例題] モル濃度が 18.0 mol L-1,密度が1.84 g cm-3の硫酸H2SO4の質量パーセ ント濃度を求めよ.H2SO4のモル質量は98.0 g mol-1とせよ. [計算の指針] 前問の逆計算である.次の順に換算を進めて行けばよい.1 L に溶けてい る物質量→1 L に溶けている質量→1000 g に溶けている質量→100 g に溶けて いる質量.H2SO4の質量=物質量 モル質量,溶液の体積=(溶液の質量)/(溶液 の密度)である. [解答] この水溶液 1 L について考える.ここに H2SO4が18.0 mol 溶けている. この H2SO4の質量を求める. (18.0 mol)(98.0 g mol-1) = 1 764 g 一方,水溶液 1 L = 1 000 mL = 1 000 cm3の質量は次のとおりである. (1.84 g cm-3)(1 000 cm3) = 1 840 g したがって質量パーセント濃度は次のようになる. (1 764 g)/(1 840 g) = 0.9587 = 95.9 % 4.2 濃縮溶液の希釈 医療検査や生命科学実験においては,必要な水溶液を調製するときに,あ らかじめ貯蔵してある濃縮保存液を水で希釈して用いることが多い.何種類
かの濃縮保存液から必要量を取り出してブレンドして混合溶液を調製する場 面も珍しくない.そのときに必要となる濃度計算方法を身につけよう. (a) 1 種類の濃縮溶液を希釈して望みの濃度の希釈液をつくる 5.00 mol L-1のNaCl 水溶液が手元にあるとする.ここから適当な量を取っ て,水で希釈して,濃度が 0.150 mol L-1のNaCl 水溶液を 200 mL 調製する 場合,5.00 mol L-1のNaCl 水溶液を何 mL 取ればよいだろうか. こうした操作において最初に考えなければならないのは,最終的に自分が 調製する希釈水溶液の中に含まれている NaCl の物質量である.これは次の 量になる. 物質量 = 濃度 体積 = (0.150 mol L-1)(0.200 L) この物質量の NaCl を,5.00 mol L-1の濃縮液から取ってくればよい.そ の量を xとすれば,次の式が成り立つ. 物質量 = 濃度 体積 = (5.00 mol L-1)(x) したがって以下の式が成り立つ. (5.00 mol L-1)(x) = (0.150 mol L-1)(0.200 L) この式から xを求めればよい.次のようになる. x = (0.150 mol L-1)(0.200 L)/(5.00 mol L-1) = 0.0300 L = 30.0 mL したがって,5.00 mol L-1のNaCl 水溶液を 30.0 mL とり,これを水で希 釈して 200 mL にすれば良い. [例題] 500 mM のホウ酸水溶液を希釈して 100 mM のホウ酸水溶液を 150 mL 調 製したい.このときに必要となる 500 mM ホウ酸水溶液の体積を求めよ.ま た,希釈溶液の調製方法を述べよ. [解答] 調製後の水溶液に含まれるホウ酸の物質量を求める. (0.100 mol L-1)(0.150 L) この量を取るために必要な 500 mM ホウ酸水溶液の体積を x とすると,次 式が成り立つ.
(0.500 mol L-1)(x) = (0.100 mol L-1)(0.150 L) x = (0.100 mol L-1)(0.150 L)/(0.500 mol L-1)= 0.0300 L = 30.0 mL 従って,500 mM のホウ酸水溶液 30.0 mL を水で希釈して 150 mL にすれ ばよい. (b) 2 種類以上の濃縮液をブレンドして望みの濃度の混合液をつくる このやりかたを応用すると,2 種類以上の溶質が溶けている水溶液を自由 に調製できるようになる.たとえば濃縮保存液として 5.00 mol L-1の塩化ナト リウム水溶液と,1.00 mol L-1のリン酸水溶液が手元にあるとしよう.ここか らそれぞれ適当な量を取って,水で希釈して,塩化ナトリウムを 0.100 mol L-1, リン酸を 0.0500 mol L-1含む水溶液を250 mL 調製する方法を考えてみよう. それぞれの濃縮液は何 mL ずつ必要だろうか. まず塩化ナトリウムについて考えよう.調製後の 250 mL の水溶液に含ま れる塩化ナトリウムの物質量は次のとおりである. 物質量 = 濃度 体積 = (0.100 mol L-1)(0.250 L) 塩化ナトリウムの濃縮液から取ってくる体積を x とすると,次の式が成り 立つ. 物質量 = 濃度 体積 = (5.00 mol L-1)(x) したがって以下の関係が成り立つ. (5.00 mol L-1)(x) = (0.100 mol L-1)(0.250 L) この式を解くと,必要な塩化ナトリウムの体積が求められる. x = (0.100 mol L-1)(0.250 L)/(5.00 mol L-1)= 0.00500 L = 5.00 mL したがって,5.00 M の塩化ナトリウム水溶液は 5.00 mL 必要である. 同じようにリン酸についても考える.必要なリン酸濃縮液の体積をy とす ると,次の式が成り立つ.
(1.0 mol L-1)(y) = (0.050 mol L-1)(0.250 L)
y = (0.050 mol L-1)(0.250 L)/(1.0 mol L-1)= 0.0125 L = 12.5 mL
以上から,目的の水溶液を調製するためには,5.00 mol L-1の塩化ナトリ
ウム水溶液を 5.00 mL,1.00 mol L-1のリン酸水溶液を 12.5 mL とり,水で
[例題] 3.00 M の酢酸ナトリウム水溶液と,2.00 M の塩化ナトリウム水溶液があ る.これらを用いて,酢酸ナトリウムを 300 mM,塩化ナトリウムを 150 mM 含む水溶液を 200 mL 調製した.このときに必要となる 3.0 M の酢酸ナトリ ウム水溶液の体積と,2.0 M の塩化ナトリウム水溶液の体積をそれぞれ求めよ. また,希釈溶液の調製方法を述べよ. [解答] 酢酸ナトリウムについて考える.200 mL の希釈液に含まれる酢酸ナトリ ウムの物質量は,(0.300 mol L-1)(0.200 L) である. 必要となる 3.00 M 酢酸ナトリウム水溶液の体積を x とすると次式が成り 立つ. (3.00 mol L-1)(x) = (0.300 mol L-1)(0.200 L) ∴ x = (0.300 mol L-1)(0.200 L)/(3.00 mol L-1) = 0.0200 L = 20.0 mL 同様に塩化ナトリウムについても考える.必要となる 2.00 M 塩化ナトリ ウム水溶液の体積を y とすると次式が成り立つ.
(2.00 mol L-1)(y) = (0.150 mol L-1)(0.200 L)
∴ y = (0.150 mol L-1)(0.200 L)/ (2.00 mol L-1) = 0.0150 L = 15.0 mL 3.00 M 酢酸ナトリウム水溶液 20.0 mL と,2.00 M 塩化ナトリウム水溶液 15.0 mL を水で希釈して 200 mL にすればよい. 人生は明るい! ここまでの計算ができれば,今後の人生において,必要となった成分を必 要なだけ含む混合溶液を,保存液をブレンドして自由自在に調製することが できる! 溶液調製の苦労から解放されるのだ! 参考文献 1. (独)産業技術総合研究所 訳・監修:計量標準総合センター国際単位系(SI) 日本語版 (2011) http://www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf 2. 日置 昭治:「量の表しかた」,ぶんせき,2011(2),66-71 (2011) http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2011/201102nyuumon.pdf #上記 2 点は無料でダウンロードできるので,入手しておくとよい.
計算問題 1. 500 mM の塩化カリウム KCl 水溶液を 500 mL 調製したい.必要な塩化 カリウムの質量を求めよ.KCl のモル質量を 74.6 g mol-1として計算せよ. 2. 750 mL の 2.50 M 塩化ナトリウム NaCl 水溶液に溶けている塩化ナトリ ウムの質量を求めよ.NaCl のモル質量を 58.5 g mol-1として計算せよ. 3. 質量/体積パーセント濃度で 1.00 %の塩化マグネシウム MgCl2水溶液の塩 化マグネシウム濃度をモル濃度であらわせ.MgCl2のモル質量を 95.2 g mol-1として計算せよ. 4. 150 mM の塩化ナトリウム NaCl 水溶液に含まれる NaCl の質量/体積パー セント濃度を求めよ.NaCl のモル質量を 58.5 g mol-1として計算せよ. 5. 3.00 M の塩化ナトリウム水溶液がある.これを希釈して 120 mM の塩化 ナトリウム水溶液を 400 mL 調製したい.3.00 M の塩化ナトリウム水溶 液は何 mL 必要か.また,調製手順を述べよ. 6. 3.00 M の塩化ナトリウム NaCl 水溶液がある.これを用いて質量/体積 パーセント濃度が 1.00 %の塩化ナトリウム水溶液を 400 mL 調製する場 合,何 mL の 3.00 M の塩化ナトリウム水溶液が必要か.NaCl のモル質 量を 58.5 g mol-1として計算せよ. 7. 300 mM のクエン酸ナトリウム水溶液と,5.00 M の塩化ナトリウム水溶 液がある.これらを用いて,クエン酸ナトリウムを 15.0 mM,塩化ナト リウムを 150 mM 含む水溶液を 500 mL 調製したい.300 mM のクエン 酸ナトリウム水溶液と,5.00 M の塩化ナトリウム水溶液はそれぞれ何 mL 必要か計算せよ.また,調製方法を述べよ. 8. 質量パーセント濃度が 37.0 %の濃塩酸(HCl 水溶液)がある.これを希釈し て,100 mM の希塩酸を 500 mL 調製するためには,濃塩酸は何 mL 必要 か.HCl のモル質量を 36.5 g mol-1,濃塩酸の密度を 1.19 g cm-3として計 算せよ.
計算問題の解答 1. まずモルから考える.ハナシはそれからだ. 必要なKCl の物質量を求める. 物質量 = (濃度)(体積) = (0.500 mol L-1)(0.500 L) = 0.250 mol これの質量を求める. 質量 = (物質量)(モル質量) = (0.250 mol)(74.6 g mol-1) = 18.65 g = 1.87 10 g 2. NaCl の物質量を求める. 物質量 = (濃度)(体積) = (2.50 mol L-1)(0.750 L) = 1.875 mol これの質量を求める. 質量 = (物質量)(モル質量) = (1.875 mol)(58.5 g mol-1) = 109.6875 g = 1.10 102 g 3. モル濃度を考えるので,1 L の水溶液を考える. 質量/体積パーセント濃度で 1.00 %の濃度なので,ここに含まれる MgCl2 の質量は10.0 g である. これの物質量を求める. 物質量 = (質量)/(モル質量) = (10.0 g)/(95.2 g mol-1) = 0.105 mol これが1 L に溶けているので,モル濃度は次のようになる.
(0.1050 mol)/(1 L) = 0.105 mol L-1 = 1.05 10-1 mol L-1
4. 100 mL の水溶液を考える.ここに含まれる NaCl の物質量を求める.
物質量 = (モル濃度)(体積) = (0.150 mol L-1)(0.100 L) = 0.0150 mol
これの質量を求める.
質量 = (モル質量)(物質量) = (58.5 g mol-1)(0.0150 mol) = 0.878 g
5. 希釈後の水溶液に含まれる塩化ナトリウムの物質量を求める. 物質量 = (濃度)(体積) = (0.120 mol L-1)(0.400 L) 一方,3.00 M 水溶液の体積を x とすると,x に含まれる塩化ナトリウムの 物質量は次のとおりである. 物質量 = (濃度)(体積) = (3.00 mol L-1)(x) したがって,(0.120 mol L-1)(0.400 L) = (3.00 mol L-1)(x) ∴ x = (0.120 mol L-1)(0.400 L)/ (3.00 mol L-1) = 0.0160 L = 16.0 mL 調製手順:3.00 M の塩化ナトリウム水溶液を 16.0 mL とり,水で希釈し て400 mL にする*8. 6. 希釈後の水溶液に含まれている塩化ナトリウムの質量を求める. 100 mL の塩化ナトリウム水溶液に 1 g の塩化ナトリウムが溶けていると きの質量/体積パーセント濃度が 1 %だから,質量パーセント濃度 1.00 % の塩化ナトリウム水溶液 400 mL に溶けている塩化ナトリウムの質量は 4.00 g である. これの物質量を求める. 物質量 = (質量)/(モル質量) = (4.00 g)/(58.5 g mol-1) 一方,3.00 M の水溶液から取ってくる体積を x とすると,ここに含まれ る物質量は次のとおりである. 物質量 = (濃度)(体積) = (3.00 mol L-1)(x) したがって,(4.00 g)/(58.5 g mol-1) = (3.00 mol L-1)(x) ∴ x = (4.00 g)/{(58.5 g mol-1)(3.00 mol L-1)} = 0.02279 L = 22.8 mL 8 400 mL の水に溶かしてはいけない.体積が 400 mL を超えてしまう.
7. クエン酸ナトリウムについて考える. 希釈後の物質量は次のようになる. 物質量 = (濃度)(体積) = (0.0150 mol L-1)(0.500 L) 一方,300 mM の水溶液を体積 x だけ取ったとき,ここに含まれるクエン 酸ナトリウムの物質量は次のようになる. 物質量 = (濃度)(体積) = (0.300 mol L-1)(x) 従って次の関係が成り立つ. (0.300 mol L-1)(x) = (0.0150 mol L-1)(0.500 L) ∴ x = (0.0150 mol L-1)(0.500 L)/(0.300 mol L-1) = 0.0250 L = 25.0 mL 同様に塩化ナトリウムに関しても必要な体積y に関して次の関係が成り立 つ.
(5.00 mol L-1)(y) = (0.150 mol L-1)(0.500 L)
∴ y = (0.150 mol L-1)(0.500 L)/(5.00 mol L-1) = 0.0150 L = 15.0 mL 調製方法:300 mM のクエン酸ナトリウム水溶液 25.0 mL と,5.00 M の 塩化ナトリウム水溶液15 .0 mL を取り,両者を水で希釈して 500 mL に する. 8. 希釈後の水溶液に関して考える. モル濃度0.100 mol L-1の希塩酸500 mL 中に含まれる HCl の物質量を求 める. 物質量 = (濃度)(体積) = (0.100 mol L-1)(0.500 L) = 0.0500 mol これの質量を求める. 質量 = (モル質量)(物質量) = (36.5 g mol-1)(0.0500 mol) = 1.825 g 必要な濃塩酸の体積をx とすると,この質量は次のようになる. 質量 = (密度)(体積) = (1.19 g mL-1)(x) ここに含まれているHCl の質量は次のようになる. (0.370)(1.19 g mL-1)(x) したがって,以下の関係が成り立つ. (0.370)(1.19 g mL-1)(x) = 1.825 g ∴ x = (1.825 g)/{(0.370)(1.19 g mL-1)} = 4.14 mL □