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第十回目

鉄鋼の熱処理の基礎

生命医科学部 医工学科 バイオメカニクス研究室(片山・田中研) IN116N 田中  和人 E-mail: [email protected] 内線: 6408

材料工学Ⅱ

1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

[email protected] a.Fe-C状態図と標準組織 炭素鋼(鋼):Fe+少量のC Fe3C(セメンタイト, cementite):準安定相で, 安定相は黒鉛,通常の熱 処理ではセメンタイトとして 存在 鋼(steel) :C量が約2.0% 以下 鋳鉄(cast iron): C量が約 2%以上 黒鉛化を促進するSiが 多い,Fe-黒鉛系が重 要 図1.3 Fe-C合金の平衡状態図(実線: Fe-Fe3C系,点線:Fe-黒鉛系) [email protected]

1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

フェライト(ferrite,αFe ) 純鉄,室温ではbcc構造 磁気変態点(A2点,770℃) より低温では強磁性,高 温では常磁性 Cの最大固溶量は727℃ で0.02%,侵入型で固溶, 固溶限以上のC,セメンタ イト(Fe3C)を形成 セメンタイト(Fe3C) 斜方晶(orthorombic) 213℃に磁気変態点(A0 点とよぶ)以下で強磁性 図1.3 Fe-C合金の平衡状態図(実線: Fe-Fe3C系,点線:Fe-黒鉛系) [email protected]

1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

オ-ステナイト(austenite,γ Fe ) αFe を加熱して912℃(A3点) で fcc構造 A3点から1394℃(A4点)まで 安定 Cの最大固溶量2.11%(1148℃, 図1.3のE),侵入型で固溶 δ-フェライト(δFe) A4点から融点(1538℃)まで bcc構造 図1.3 Fe-C合金の平衡状態図(実線: Fe-Fe3C系,点線:Fe-黒鉛系)

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1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

Sで示される組成(0.77%C,共析 組成)のオ-ステナイトを冷却 727℃(A1点)でフェライトとセ メンタイトの二相 共析変態 γ→α+Fe3C パ-ライト(pearlite)が形成さ れる • フェライトとセメンタイトが層 状に配列 パ-ライト変態ともいう 図1.3 Fe-C合金の平衡状態図(実線: Fe-Fe3C系,点線:Fe-黒鉛系) [email protected]

標準組織

標準組織:オ-ステナ イト状態から徐冷(たと えば炉冷)して,平衡 状態図にほぼ従って 生成した組織 共析鋼(eutectoid steel) 共析組成( C量 0.77% )の鋼 亜共析鋼(hypo- eutectoid steel) C量0.77%以下の鋼 過共析鋼(hyper-eutectoid steel) C量0.77%以上 図1.4 各種炭素鋼の標準組織(焼ならし組織) (a)0.17%C,(b)0.30%C,(c)0.8%C(共析鋼),(d)1.1%C [email protected]

1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

A3線 亜共析鋼がオ-ステナイト 単相となるGS線 Acm線 過共析鋼はSE線以上でオ -ステナイト単相 SE線以下でオーステナイト 中にセメンタイトが析出 A1点 水平線PSK(727℃),共析 変態がおこる温度 共析変態 純鉄には現われない鋼特 有の重要な変態 図1.3 Fe-C合金の平衡状態図(実線: Fe-Fe3C系,点線:Fe-黒鉛系) [email protected]

標準組織

共析鋼をYから徐冷 S点までオ-ステナイト単相 S点(A1点) 共析変態 パ-ライト組織:P点で示さ れるC濃度(0.02%)のフェラ イトとセメンタイト(Fe3C, C 量6.67mass%) 図1.5 C量の異なるFe-C合金をオース テナイトから徐冷したときの組織変化およ び室温での標準組織

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標準組織

0.4%Cの亜共析鋼をXから徐冷 温度T1 • C濃度a1のフェライトが析出 • 初析フェライト • オ-ステナイトの結晶粒界に 生成 温度低下にともなってフェライト量 が次第に増加 • フェライトのC濃度はGP線に沿っ てっ増加 • 残りの未変態オ-ステナイト のC量はGS線(A3線)に沿って 増加 U点(A1点)直上 重量比率でUS/PSの量のフェライ ト(C濃度P),PU/PS の量のオ- ステナイト(C濃度S(共析組成)) オ-ステナイトの共析変態,パ- ライト組織 図1.5 C量の異なるFe-C合金をオース テナイトから徐冷したときの組織変化およ び室温での標準組織 [email protected]

標準組織

1.2%Cの過共析鋼Zから徐冷 Acm線 • セメンタイトの析出 • 初析セメンタイト,オーステ ナイトの結晶粒界に沿って 網目状に析出 温度の低下 • セメンタイトの析出量が増加 • 未変態オ-ステナイトのC量 がAcm線に沿って減少 A1点 • S点の共析組成 • 未変態のオ-ステナイトが パ-ライト変態 図1.5 C量の異なるFe-C合金をオース テナイトから徐冷したときの組織変化およ び室温での標準組織 [email protected]

二元系状態図

平衡:ゆるやかに加熱・冷却が行われた時の相の状態 状態図上の線:変態点の集まり,境界で相が変化 CuとNiの合金で考える プリントNo.3   図3.1 図3.1 [email protected]

二元系状態図

A,Cで冷却:凝固点まで単調に冷却,凝固点で一定温度, その後も単調に冷却 Bで冷却 L1の温度で固相の晶出 初晶という プリントNo.3   図3.1

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[email protected] 図3.1

二元系状態図

合金の特徴 冷却中の液相と固相の組成が異なる • 液相の組成 L1からL2へ • 固相の組成 S1からS2へ プリントNo.3  図3.1 [email protected]

二元系状態図

相の割合と化学成分 平衡状態図から求められる C0の化学成分の合金で考える L相の組成 B元素 a0% A元素 (100-a0)% α相の組成 B元素 b0% A元素 (100-b0)% L相の割合 (b0-c0)/ (b0-a0) α相の割合 (c0-a0)/ (b0-a0) てこの法則 プリントNo.3   図3.2 図3.2 [email protected]

二元系状態図

100g中のL相の重量をX(g)とすると α相の重量は(100-X)g a0X+ b0 (100-X)=100c0 X = (b0-c0)/ (b0-a0)*100 各相の比重から体積も求められる. プリントNo.3   図3.2 図3.2 [email protected]

共晶型と共析型

共晶型 Al-Si系 Fe-C系 共晶反応 液相(L)→固相(α)+ 固相(β) 共析反応 固相(γ)→固相(α)+ 固相(β) Fe-0.8%C 固相γ(オーステナイト) →固相α (フェライト)+ 固相β (セメンタイト) プリントNo.3   図3.3 図3.3

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鉄鋼材料

純鉄:C 0.006% 以下 鋼:C 0.006%以 上から2%程度 表7-1 [email protected]

1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

b.過冷オ-ステナイトの変態と組織 (i)変態点におよぼす冷却速度の影響 変態:平衡状態図の温度(Ae)とは 異なる 過熱(Ac) 過冷(Ar) パ-ライト変態点が低下 マルテンサイト変態(Ms点):原 子の拡散なし 図1.6 共析炭素鋼の熱膨張曲線に及 ぼす冷却速度の影響 [email protected]

4・4 相変態 P.57

b. マルテンサイト変態 マルテンサイト変態:拡散を伴わないで他の結晶構造へ変化す る変態 鋼の場合:オーステナイト相(fcc)からマルテンサイト相(bccま たはbct)へ変態 マルテンサイト変態の特徴 (1)単相から単相への結晶構造の変化,可逆的 (2)無拡散のせん断機構による変態,組成の変化なし(無拡散変 態) [email protected]

1・3 鉄鋼の熱処理の基礎

b.過冷オ-ステナイトの変態と組織 (ii)過冷オ-ステナイトの恒温変態と恒温変態線図 恒温変態(または等温変態)(isothermal transformation):過冷オ-ステナイト を一定温度に保持した時におこる変態

恒温(または等温)変態線図(isothermal transformation diagram),TTT線図 (time-temperature-transformation diagram):共析炭素鋼をオ-ステナイト 状態からAe1点以下の種々の温度に急冷,その温度に保持して変態の開始 時間および終了時間を測定したもの 図1.7 共析炭素鋼の恒温変態線 図(TTT線図) S曲線,C曲線 550℃付近S曲線の鼻(nose) 300℃付近入江(bay) Ms点(共析炭素鋼の場合)220℃ 付近

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b.過冷オ-ステナイトの変態と組織

(ii)過冷オ-ステナイトの恒温変態と恒温変態線図

パ-ライト変態: 層状セメンタイト間隔(ラメラ間隔)は

変態温度が低くなるほど小,硬さや強さが上昇,微細パー

ライトという

ベイナイト(bainite)変態

羽毛状の上部ベイナイト(upper bainite)

針状の下部ベイナイト(lower bainite)

図1.7 共析炭素鋼の恒温変態線 図(TTT線図) [email protected]

b.過冷オ-ステナイトの変態と組織

(iii)オ-ステナイトの連続冷却変態 と連続冷却変態線図 連続冷却変態線図(continuous cooling transformation diagram), CCT線図:オ-ステナイトを種々 の一定速度で冷却,変態の開始 点と終了点を測定,温度と時間 の関係を図示したもの Psパーライト変態の開始線 Pfパーライト変態の終了線 Msマルテンサイト変態開始温 度 連続冷却変態の場合ベイナ イト変態はおこらない 図1.9 共析炭素鋼の連続冷却 変態線図(CCT線図) (TTT線図も併せて示してある) [email protected]

b.過冷オ-ステナイトの変態と組織

(iii)オ-ステナイトの連続冷却変態と 連続冷却変態線図 冷却曲線(2)(下部臨界冷却速度) より遅く冷却 Ps線でパ-ライト変態 Pf線で完了,全面パ-ライト組織 冷却曲線(4)(上部臨界冷却速度) より速く冷却 オ-ステナイトはMs点まで過冷, マルテンサイト変態を開始,全面 マルテンサイト組織 焼き入れ硬化 冷却速度(3):パ-ライト+マルテン サイト 図1.10 共析炭素鋼の CCT線図の説明図 [email protected]

c.鋼のマルテンサイト変態

鋼のマルテンサイト Cが過飽和に固溶 転位密度が高い 非常に硬くて強い 固溶C量によって決まる(図1.11) 構造 bccまたはbct(体心正方晶:body centered tetragonal)構造のα‘マ ルテンサイト hcp構造のεマルテンサイト 図1.11 マルテンサイト の硬さとC量の関係

(7)

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c.鋼のマルテンサイト変態

旧オーステナイト粒界 ラス(lath) パケット(packet):平行に並んだ(つ まり,同じ晶へき面の)多くのラスの 集団からなる領域 ブロック(block):同じ晶へき面かつ 同じ結晶方位をもつ(つまり,同じバ リアントの)ラスの集団からなる領域 図1.13 0.2%C鋼ラスマルテンサイト [email protected]

c.鋼のマルテンサイト変態

残留オ-ステナイト(retained austenite) 焼入鋼の硬さが低下,硬さ不足 対策 サブゼロ処理(subzero treatment)または深冷処理:室温以 下の温度に冷却してマルテンサイト変態させる 図1.10 共析炭素鋼の CCT線図の説明図 [email protected]

f.

焼もどし(tempering)

f.焼もどし(tempering) 焼入れしたマルテンサイト組織:もろい 焼入鋼をA1点以下の適当な温度に加熱して組 織と性質を調整する処理 調質ともいう 図1.19 焼入炭素鋼の焼もどし過程 [email protected]

g.鋼の焼なましと焼ならし

焼なまし(annealing) 加熱してオ-ステナイト,十分な時間 加熱後,炉中にて徐冷 均質化焼なまし(拡散焼なまし) 軟化焼なまし(完全焼なまし) 球状化焼なまし:炭化物(主としてセメ ンタイト)の球状化 • 塑性加工性,被削性の向上,高炭 素鋼(工具鋼など)のじん性向上 ひずみとり焼なまし(応力除去焼なま し) • 鋳造,溶接,塑性加工,焼入れな どによって発生した残留応力を除 去,550~700℃の比較的低温で 焼なまし 図1.20 各種焼なまし および焼ならしの温 度とC量の関係

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[email protected]

g.鋼の焼なましと焼ならし

焼ならし (normalizing) 粗大で不均一な結晶粒,局部的に 粗大化した炭化物など好ましくない 組織を改善.微細な整粒組織を得て 機械的性質の改善 A3点またはAcm点以上の適当な温 度(通常,A3,Acm以上40~60℃) に加熱して一様なオ-ステナイトに した後空冷 図1.20 各種焼なまし および焼ならしの温 度とC量の関係 [email protected]

h.鋼の強化法およびじん化法

基本的な強化機構:転位の運動を妨害 (1)転位密度上昇による転位強化(加工強化) (2)結晶粒微細化強化 Hall-Petchの式 (3)合金元素による固溶強化  強化作用:侵入型元素>置換型 元素 (4)析出強化および分散強化 マルテンサイト:上記4つを含む Cが過飽和に固溶,高密度の転位,組織が微細,焼もどし時 の析出物 1 2 0 s

kd

σ

=

σ

+

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h.鋼の強化法およびじん化法

高じん性化の方策  (1)有害不純物や非金属介在物の除去:鋼中にP,S,H,Oなどの 不純物  (2)結晶粒の微細化:延性-ぜい性遷移温度が低温側  (3)オ-スフォ-ムや制御圧延などの加工熱処理の利用:組織の微 細化  (4)残留オ-ステナイトの利用:強いマルテンサイト地にオ-ステナ イトを少量分散させた組織  (5)変形中のひずみ誘起マルテンサイト変態の利用:準安定オ-ス テナイトを変形すると,応力によってマルテンサイトが生成,大きな 伸び,マルテンサイト変態誘起塑性またはTRIP (Transformation-induced plasticity)現象  (6)力学的じん化:圧縮残留応力による疲労強度上昇 [email protected]

金属材料の熱処理

表7-2

参照

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