日本における学校教育の基本的役割は,国 民として社会生活に必要な資質や能力を保証 し現代社会に生きていく力を育成していくこ ととされている。こうした一般的目標が設定 されている一方で,学校教育は現代の産業界 の求める即戦力養成の役割も期待されてい る。
OECD
(2010
)は21
世紀に求められる人 材力量として,深い理解力,柔軟性,創造的 に関連させ結びつける能力,協働による問題 解決力などを提示し,融合的専門性・融合的 創意性の必要性を強調している。 世界各国では自国民の基礎学力の定着を図 ると共に,複雑化する現代的課題を解決し, 社会を牽引していくことができるようなエリ ート養成や,それに関連する英才教育など人 材育成が試みられており,その方法として融 合教育が積極的に取り組まれている。 日本での英才教育というと,幼児期からの 早期教育や才能教育など比較的低い年齢が対 象としてイメージされる。また日本の高等学 校などで実施されている特別授業や進路別ク ラス編成などは,エリート養成という意味合 いは薄く,現行教育課程に基づいた大学入試 現在世界諸国で試みられている創造的 思考力のある人材育成と全人的教育を目 指す教科融合教育は,理想的な教育理念 の実現を目指しているが,異なる教科を 融合する意味をどう捉え,どのように構 想し実践するのか,が問われる。 本稿では韓国で実践されている融合教 育の一つであるSTEAM
教育の実践現場 を訪問観察し,教科融合の原理と実践の 場面を捉え,その成果と課題を明らかに することとした。その結果,STEAM
教 育実践場面では美術活動が児童の学習意 欲を高めるための補助的道具として用い られており,科学教育と美術教育の相互 相関性を追求するまでには至っていない ことが明らかとなった。科学
と
芸術
の
融合
による
教育
の
可能性
と
課題
−韓国
STEAM
教育
の
原理
と
実践場面
の
検討−
Exploring Possibilities and Problems of Education by Integrating Science and Art
− Focusing on an examination of the principles and practices of STEAM education in
Korea −
*
安東恭一郎 ANDO Kyoichiro**
金 政孝 KIM Jeonghyo *安東恭一郎/香川大学教育学部 ANDO, Kyoichiro/Kagawa University, Faculty of EducationE-Mail: [email protected]
**金 政孝/韓国教育課程評価院 KIM, Jeonghyo
Korea Institute for Curriculum and Evaluation E-Mail: [email protected]
合格を目指した学力向上が主たる目的となっ ている。 一方,欧米や東南アジアなどで実施されて いるエリート養成プログラム・英才教育の多 くは幼少期から高大生までが対象となり,企 業や研究所に直結した優秀な科学技術者を養 成する意味合いが強い。そして,こうしたエ リート養成教育・英才教育の多くは,
STEM
教育1)と呼ばれる複数の理科系の教科を融合 した教育課程を独自に編成している。 そして,それに伴う特別な学校施設の建築 や教員の手厚い配置,そして教育特区を設け た特別エリート高校の新設などに及び,各国 とも新たな時代に対応できる人材養成に大が かりな投資をしている。 ところが近年,理数融合教育における学習 意欲の減退とその結果として学習成果の伸び 悩みを背景に,理数教育の限界が指摘され始 めた。 他方,芸術教科に対する生徒の学習意欲の 高さや創造性を伸張する教科特性が注目さ れ,芸術内容及び創造的アプローチを理数教 科に取り込むことで学習成果が上がることが 実証されるようになった2)。 諸外国では,このような理科系の融合教育 に芸術系科目を加えた融合教育をSTEAM
教 育3)と呼び,多様な展開をしている。 韓国においても理数教育と芸術教育の融合 教育を国家教育政策として位置づけ,「科学 英才高校」を各道(道は日本の県にあたる) に特設し英才教育と関連させながら2007
年 度からSTEAM
教育を実践してきている4)。 そして2010
年度からは,「融合教育・人材養 成」としてSTEAM
教育を教育政策として位 置付け,科学高校など一部学校の英才教育と してだけではなく,初等教育から始まる義務 教育全体に「理数教科に芸術教育を融合する 授業」を取り入れ,総合的な学習能力の向上 を目指した教育課程全体の再構築を目指して い る5)。2013
年度現在,2014
年度か ら の本 格実施を予定し,授業プログラム開発を試行 している6)。Ⅱ.本稿
の
構成
と
問題
の
所在
1
.構成 本稿は芸術と理数教育を融合するSTEAM
教育について論考するが,その前に第3
部 で現在まで世界で取り組まれている教科融 合の取り組みを概観する。ここではまず教 科融合の始まりとして,理数教科の教科融 合・STEAM
教育の状況を提示する。次にこ れらSTEM
教育に芸術を加えた融合教育・STEAM
教育へ と展開し て い く状況を概観 し,その融合理念を検討する。 第4
部では,韓国において取り組まれて いるSTEAM
教育の教育課程の基本構造を提 示し,韓国におけるSTEAM
教育のオリジナ リティについて提示する。また,日韓の教育 状況の類似性を示す。その上で第5
部にお いて,その基本構造に基づき実践された授 業場面の概要を提示すると共に授業分析を 行う。続く第6
部では,授業実践場面分析 及び韓国教育政策からSTEAM
教育を捉え直 し,美術教育における課題を明らかにする。 最終部では,STEAM
教育研究から得られた 成果と今後の融合教育研究の課題について提 示する。2
.問題の所在STEAM
教育は,これまで細分化されてき た教科群を理数科目だけではなく芸術教科ま で幅広く教科統合することで,科学的思想と 芸術的創造性の融合を目指す理想的な教育理 念の実現を目指している。 この場合,教育内容が隣接しない科学と芸 術を融合するという場面を,どのように教育 課程として構想し実践するのか,そして融合 教育によってどのような力量を形成するの か,などが問われる。 現在世界的に融合教育が広まりつつあるが,複数教科を融合する点は共通するもの の,その教育目標や教育理念そしてそこから 派生する教育課程は第
3
部で概観するよう に多様で,それぞれの国情に対応した編成と なっている。 韓国で取り組まれているSTEAM
教育は, 学習形態を問題解決学習による教科横断的な 学習形態としている。そして,それを授業と して具現化する方法として,3
つの活動準拠 (第6
部で述べる)を提示し,これらを段階 的に学習することを授業設計のひな形とする 授業モデルを提示している。 安東とKIM
は,これまで韓国STEAM
教 育の教育理念がこれら3
つの活動基準に基 づき教育課程として提示される場面を捉え, 教育理念を教育課程へ具体化する場面の課題 を関連文献7)に基づき検討してきた。 その結果,STEAM
教育における教育理念 は現代的課題を明確に捉えた学習方法を提示 しているが,韓国STEAM
教育の教育原理と なる3
つの活動基準は教育理念と矛盾があ ること,そして活動基準に基づき例示される 学習プログラムは活動基準の要件を満たして いないこと,そして,感性的体験場面とされ る美術活動の構想に課題があること,さらに 理念が授業場面でどのように具現化している かを検証する必要があることなどを指摘して きた8)。 そこで,本稿は,STEAM
教育原理・構想 に基づき,試行的に実施されているSTEAM
教育実践場面を訪問し「STEAM
教育原理に おける課題が授業実践場面でどのように現 れているのか」「実践場面において美術活動 が,どのように展開し,位置付けられている のか」について明らかにすることとした。 次部では,韓国のSTEAM
教育を検討する 前に,世界各地で展開されている多様な融合 教育について概観し,教科融合の取り組み方 法は単一ではなく,それぞれの国情に併せて 展開していることを提示する。Ⅲ.融合教育
の
世界的状況
1
.理数教科を中心とする融合教育 世界各国では,次世代を担う人材育成を目 指した様々な教育が試みられており,その一 つに複数の教科を総合した総合的・融合的な 学習の取り組みがある。教科統合の方法や教 科の組み合わせは多様であるが,中でも顕著 なのは,理数技術工学系教育において科学と 数学そして工学など理系教科を二科目以上統 合した教育課程である。 理系教科の複合化・教科統合は,1990
年 当初アメリカ科学財団NSF
によってSTEM
教育として取り組みが始まり9),以後各国で 多様なSTEM
教育が展開され,現在では多 くの国で重点教育政策として位置づけられて いる。 日本では,2002
年度からスーパーサイエ ンスハイスクール(SSH
)を指定して,諸外 国と同様に理数教育を重視した教育政策が展 開されている。ただし,その展開規模は既存 の高校の教育課程を理数中心に再編成した り,高大連携事業などで高校の理科授業に大 学教員が出講したりする程度に留まってい る。また,諸外国の学校環境インフラ整備と 比較するとその投資は理科実験教室改善程度 であり,その指定規模も全国展開というには かなり少ない(2011
年,145
校指定)。2
.複合的教科融合への取り組み 教科融合の試みは,理数教科の融合から始 まったが,現在次第に文系,芸術系など多様 な教科を融合した教育課程が試みられるよう になってきている。 各国で取り組まれている融合教育は,基本 的には理数工学系の力量形成を主軸にしなが ら,他教科を融合し,学力の質的改善や現代 的教育課題に対応しようとしている。現在の ところ融合教育は,世界的には以下のような3
つの流れがあり,それぞれ独自の教育課程 を組み展開している。(
1
)芸術と科学の融合による教育課程編成 アメリカは,教育目標を科学的思考力の育 成や問題解決力の育成を目指してSTEM
教 育推進を軸としながら,芸術を含む他教科と の融合を積極的に進めている。また,低所得 者対策など幅広いカリキュラムを組んでい る。アメリカでは大学教育を含め各州や地域 で多様な取り組みが行われている点が,他国 には見られない特徴である10)。 イスラエルでは,芸術と科学教育の融合に よって現代的課題を解決し創造的活動ができ る人材育成教育課程を実施している。この 融合プログラムが有効に活かされるよう,IASA
(Th
e Israel Arts and Science Academy
) によって,CTI
(Th
e Chais Teacher Institute
) の下,教師養成が実施されているのが特徴で ある。 (2
)理数領域の人材養成としての融合教育 イギリスではナショナルカリキュラムを通 して創造性を育成する教育を導入するため2000
∼2002
年に全国の小中学校に呼びかけ て,200
校 を 選 定 し,2003
年 に は1000
校 ま で拡大した。ここでの創造性教育は教科融合 による授業が実施されているのが特徴であり 「デザインと技術,ICT
授業におけるグラフ ィックイメージの展開」など情報技術を軸に した創造性教育が取り組まれている11)。 ドイツでは,数学を基盤として,これに 「科学,技術,工学」を加えた連邦一般科学 プログラムがSTEM
教育として位置づけら れている。このプログラムでは問題解決能力 を重視しており,ジュニア・ドクター制度を 設け博物館などで特別プログラムを実施して いる。高い成績を収めた生徒に対して名誉博 士号を与えるなどの工夫もしている12)。 (3
)既存の教科に依存しない融合教育 フィンランドでは,既存の教科に依拠し ないInno School Project
という未来学校コン セプトに基づく融合学習が行われている。 ここでは4
つのコンセプト「学習空間構成
Inno Arch
」「遊 び の 学習環境構成Inno
Play
」「教授の革新空間Inno Edu
」「教育サ ービスの革新空間Inno Serve
」が一つの研究 プロジェクトとして結びつけられ,多様な分 野の研究者が参加して教育改善授業が実施さ れている。また,芸術教育として,これら学 校正規教育課程に美術館と連携した教育プロ グラムが運営されている13)。 (4
)STEM
からSTEAM
教育へ 前節で見てきたように融合教育は理数教科 だけではなく,多領域教科を多様な組み合わ せによって展開してきたが,科学に芸術を 融合する教育原理を明確に提示したのは,Georgette Yakman
14)(Virginia
州 技 術 教 育協会会長・
2006
年)である。彼女は従前のSTEM
教育にArts
(芸術教育)を融合する教 育をSTEAM
教育と呼び,理科学的思考に芸 術的思考を融合することで,創造的思考力を 備えた全人的な育成ができる,とした。そし てSTEAM
教育の理念説明において「天才と 呼ばれてきた人間は,芸術と科学を融合した 思考によってその才能を発揮してきた。人間 の創造的思考を高めていくためには科学的思 考と芸術的思考が共に必要である」とし,現 在の教育が科学と芸術を分離してきたことに 問題があったと指摘する。 その上で,各教科の基礎分野で獲得された 知識技能は,科学・人文を融合することで発 展可能な共通言語を生み出し,学問分野を乗 り越えた高次の思考を養成できると述べる。 そして,科学と芸術が連結し融合すること で全く新しい教育の枠組みが生まれ,この 融合教育が目指すのは単に科学教育の効果 的な発展ではなく,「全人的教育(Life Long
Holistic
)」だとしている。STEAM
教育の構想が生まれた背景には, 産業界における人材育成に求める期待が変わ ってきたことと,理数教育の学力向上の必要 性などがある。すなわち,従前は産業界発展 のために科学技術者養成が優先されていたが,技術の継承と発展だけではなく,産業を 牽引できる創造的で新たな価値を生み出す人 材が求められるようになったこと,さらに近 年
STEM
教育に対する学習意欲の低下と理 数教育の学力の頭打ちが指摘されており,そ の打開策が求められていたことも背景となっ ている。 韓国 で は,Georgette Yakman
の考 え に 基 づいたSTEAM
教育を国家教育政策と位置づ け,理科学分野と芸術分野の融合教育を推 進している。次部では,韓国の教育課程に おけるSTEAM
教育の位置付け,そして韓国STEAM
教育政策の米国との共通性とオリジ ナリティ,および日韓の教育状況の類似性の 各側面から見ていくこととする。Ⅳ.韓国
の
STEAM
教育政策
1
.科学教育の展開とSTEM
教育 韓国教育課程において,科学教育の充実は 一貫して教育政策の重点課題とされてきた。1983
年に京畿道科学高校が設置されたの をスタートとして全国に科学専門高校が設置 され,第7
次改定時・2002
年にはSSH
(理 数教育を重点的教育課程に置き,早期卒業・2
年次卒業,大学と連携した研究&
教育プ ログラムを置く英才高校)として特別高校と なり,続く2009
年にはこれらをさらに発展 させる「科学英才学校設置」が法的に整備さ れた15)。 また,同時に科学教育の教育課程であるSTEM
教育が米国の事例を基にしてモデル 開発されると共に,2007
年度からは理数教 育をより進める教育融合プログラムとしてSTEAM
教育が注目されるようになった16)。 そして,2009
年改正教育課程(現教育課 程)では,科学科と技術科はSTEAM
教育と 明示され本格的に運用されている。 さ ら に,STEAM
教 育 は,2010
年 に は 「融合教育・人材育成」の教育政策の一環と して位置づけられ17),加えて2011
年に第二 次科学技術人材育成支援基本計画において教 育政策とされた18)。このような新たな考え を現場で実現するために,韓国科学創意財団 (KOFAK
) が 中 心 と な っ てSTEAM
教 育 の 成功事例を公開したり,STEM
教育との関 連や初等・中等段階に適用するための講演会 の企画19) をしたり,あるいは教師STEAM
教育研究会を支援したりするなどして,実践 可能なプログラムの開発を行っている。 また,その規範となるSTEAM
プログラム は,KOFAK
が支援するSTEAM
研究プログ ラム・リーダースクールプログラム・教師研 究会プログラム,そして全国大学附属の科学 英才教育院の英才教育プログラムなど,教育 課程の基盤として多様な場面での活用を想定 して開発されている。 他方,前教育課程から「異なる教科と教科 で共通する内容・学習要素で関連付ける」教 科連携が考慮されおり,現教育課程において はますます他教科との連携を強めていくこと が求められている。美術教育課程でも,他教 科との連携による教育課程の再構成が求めら れ,現在その試案の段階にある。2
.韓国STEAM
教育のオリジナリティ 韓国STEAM
教育の基本目標は「科学技術 に対する学生たちの興味を高め,科学技術に 対する知識と技術を伸張し,科学技術分野へ の優秀な人材を確保する」といった科学技術 学力伸張であり,「未来の科学技術の発展を 主導する創意的で融合的な人材を育成するた め,科学技術に対する興味と理解を高める」 とされており,この点において科学技術分野 への優秀な人材を育成する米国のSTEAM
教 育と同様である。 韓国のSTEAM
教育が米国のそれと異なる のは,「科学技術に対する興味だけでなく, 感受性と想像力で革新的なアイデアを創出す ることができ,価値志向的な創造的人物を志 向する」としていることである。すなわち,科学技術に対する興味だけでなく,他者との 調和や思いやりを大切にしながら,芸術的感 性及び直観力を働かせて革新的なアイデアを 創出できる人物の育成,を目標としているの である。 このように知識・技術面以上に情意的・倫 理的側面を強調する背景として,近年の韓国 が抱える問題,つまり,学力は世界的に高得 点だが,学習意欲や態度が著しく低下してい るという深刻な教育事情がある20)。 すなわち,現在の韓国で学校教育に求めら れているのは,高度な知識や高い学力保証だ けではなく,学ぶことへの興味関心の復活 や,学習から得られる自信や他者との協調・ 信頼といった,人間性のある基本的態度の回 復なのである。 情意面を強調する韓国
STEAM
教育では, したがって知識・技術の獲得と同時に芸術教 育の役割や効果に注目し,融合教育の教育課 程編成において芸術教育の内容を取り込もう としている点が他国のSTEAM
教育にはない 特徴である。3
.日韓の教育状況の類似性 日本では,現在のところSTEM
教育に芸 術教育を取り入れるという発想は見られな い。一方,PISA
(2012
年)の国際順位はゆ とり教育の脱却をすることで読解力を中心に 学力改善傾向にあるとされるが,同時に理数 教育に対する学習意欲の減退が課題である, ともされている21)。また現在,英語,道徳 の必修化などが予定され,それに伴う授業時 間数削減や教育課程再編の可能性もある。こ れら教育状況は韓国と類似している。 このようなことから科学教育に芸術教育 の融合 を 試 み る 韓国STEAM
教育(以下,STEAM
教育と略す)の課題と可能性を明 らかにしておくことは今日的課題と捉え, 韓国研究者22) と共に韓国で試行されているSTEAM
教育の実践場面を検討することとし た。 そこで次部では,韓国で試行的に実施さ れているSTEAM
教育の授業場面を対象とし て,教科融合理念がどのように構想され,科 学教育が美術教育をどのように理解し,どの ような役割を期待しているのかを検討する。Ⅴ.
STEAM
教育
の
実践
1
.STEAM
教育・授業実践場面 本授業場面検討では,KOFAK
が開発するSTEAM
研究プログラムに基づいた授業が実 施されている初等学校のSTEAM
教育実践場 面を訪問し,検討することとした。STEAM
研究プログラム実践学校訪問の選定に関して は,韓国京畿道教育委員会に依頼した。 一つの授業観察のみで韓国全体のSTEAM
教育授業像を把握することはできないが,紹 介された小学校は,STEAM
教育プログラム のリーダーズスクールとして選定され,観察 対象となる授業は,STEAM
教育の優秀授業 者と認定されているとのことであった。この ようなことから,本授業を観察することで典 型的なSTEAM
教育授業を検討できると判断 した。訪問した学校はソウル市内から1
時 間ほど郊外の住宅街にあり,児童集団は学習 に意欲的であるとのことであった。 授業は3
時間続きで実施され,9
時30
分∼12
時までの午前中の参観となった。 ・訪問日:2012
年12
月19
日 ・訪問学校,学年:韓国京畿道
DOKJEONG ELAMENTARY SCHOOL
,6
年生 ・融合教育科目(科学・美術・実科) ・授業題材名「ROBOTBUG
」3
時間(連続 実施) ・ 授 業 の 目 標: 未 来 の 人 助 け の で き るROBOT
を「水辺の昆虫」から構想し,視 覚的に現し特徴を説明できる。 ・授業の流れ 実 施 さ れ た 授 業 は3
つ の教 科 科 目「 理科,実科,美術」の教育内容を一つの授業全 体として構成したものであった。 〈場面
1
,理科授業・個人学習〉 児童は水辺に生息する昆虫について図鑑な どを参考にして,一人が一つの昆虫を正確に 写し,特徴を調べて書き添える。次に,一人 の児童が描いた一つの昆虫を6
枚白黒コピ ーする(6
グループ分)。そして,各グルー プは,一枚の模造紙にそれら全員分を貼り付 けていく。 〈場面2
,理科授業・共同学習〉 グループで,貼り付けた友だちの描いたコ ピーの昆虫に,さらに特徴を調べて書き加え る。一つの昆虫に対して4
人が特徴を書き 足すことになる。 〈場面3
,実科授業・共同学習〉 グループで一つの昆虫を決めて,未来を救 う昆虫ROBOT
を構想する。「専門家の協議 録」と題されたワークシートが配布され,そ れぞれの専門家「昆虫学者・未来学者・工 学者・デザイナー」の立場で未来のROBOT
を構想する。ここでは話し合いによる記録 と,イメージスケッチが中心の活動となる。 実科とは日本の「技術」に相当する教科であ る。技術の時間になぜ会議を設定したのか, については後述する。 〈場面4
,美術授業・共同学習〉 構想した未来を救う昆虫ROBOT
を,美 術 表 現 と し て 完 成 す る。 場 面3
の話 し 合 いで決定したROBOT
のイメージを,絵と して表現していく。話し合い想像した未来ROBOT
の機能や特徴を視覚的なイメージと して決定して現していく。 〈場面5
,発表と学習のまとめ〉 美 術 表 現 し た「 未 来 を 救 うROBOT
昆 虫」をグループ代表が,工夫した内容とその 表現をクラス全体に3
分ほどで発表する。 教師がそれに対して簡単なコメント・評価を 加える。2
.STEAM
教育・授業場面検討 (1
)本授業の構成 本授業は,学習計画に融合教育科目(科 学・美術・実科)として記されており,授業 内容も各教科の連続として構成されていた。 このことから,外形的には融合教育を一体化 した学習内容としてではなく,異なる教科を 「理科+
実科+
美術」と順番に連続して繋い でいくこととして捉えられていたことがわか る。 理科は状況の提示段階として「昆虫の見本 を観察し,その特徴を理解する・概念形成段 階」として働き,実科は創意的設計段階とし て「架空の専門家という視点から昆虫に新た な意味を加える・発案する活動段階」として 働き,美術は感性的な体験「アイデアを視覚 的表現する・創意活動」として働き,それぞ れがSTEAM
プログラムの枠組みを満たして いたことになる。 この授業を実施した教師は,それぞれの教 科内容の知識や技術に対して興味関心を持ち ながら獲得できるよう問題解決の学習過程を 設定し,授業を構成していた。以下にその工 夫点がSTEAM
教育としてどのように働いて いるのかを検討する。 (2
)愛着の持てる理科学習 第1
および第2
場面は「水辺の昆虫の特 徴や生態について知識を得る」という理科の 学習内容であった。 理科学習では,観察に基づいて表現する活 動は一般的に行われているが,ここでの工夫 図 1 特徴や生態の調べ学習点は,「教師が個々の児童が再現的に表現し た昆虫をグループ分コピーし,児童は自分が 選んだ昆虫だけではなく,友だちが描いた昆 虫についてその特徴や生態を調べ,情報を 書き加える」という工夫がされていた(図
1
)。 観察し正確に描くという行為は必ずしも自 分の個性を反映しない表現方法ではあるが, 単なる写真資料を用いるのではなく,友だち の描いた表現物に情報を書き加えることは, 表現した作者・児童を意識することになり, 愛着を持って情報を書き加えることにもな る。 (3
)創造的活動へと移行する実科授業場面 第3
場面は,第2
場面までの理科的知識 を基にしながら創造的活動へと移行する場面 であった。本授業全体では「未来を救う昆虫ROBOT
を構想する」ことが目標なので,昆 虫の生態や形態を基にしながら,児童はそれ に新たな意味や機能を与えることが求められ る。 この活動は,個々の児童が個別に選んだ昆 虫の情報を調べてまとめる,という受動的学 習から,協働によってグループで一つのイメ ージにまとめ,未来を救うという価値的内容 を加え,独自の機能を空想する主体的学習活 動へ展開する大きな学習の節目となる。 この場面をスムーズに進めるため,教師 は「専門家の協議録」と題されたワークシー トを配布し,グループで協働して話し合いが できるような共通の観点を与える,という工 夫をしていた。「昆虫学者・未来学者・工学 者・デザイナー」といった共有できる観点を 与え,児童はそれぞれ専門家の立場で未来 のROBOT
について意見を出し合い,未来ROBOT
を構想することができた(図2
)。 児童たちは,専門家という具体的で共有でき る観点を与えられることによってすぐに意見 交換を始めることができた。また専門家が多 様に設定されていたので,児童は自分のイメ ージしやすい専門家の立場で発言することが できるよう工夫されていた。 また,ここでは,デザイナーが専門家の一 人として入っており,第4
場面の美術表現 活動に繋がるように配慮されていた。 (4
)創造的活動としての美術授業場面 第4
場面は第3
場面でイメージした「未 来を救う昆虫ROBOT
」を八つ切り画用紙に 丁寧に美術表現していく活動場面であった。 グループで一つの昆虫のイメージを協働し て創造していく活動は,個々のイメージを統 合し一つの理想的な形態にまとめていく作業 であり,簡単ではない。 この協働活動を可能にしたのは,第3
場 面で観点を共有でき,それによって活発に意 見交換でき,互いに信頼することができてい たからである。 児童は既に第3
場面で構想したスケッチ に基づきながら,描く過程の中で話し合いを 重ね,さらに新たな機能や意味を加え,イメ ージを拡げていた。 図 2 専門家の立場でROBOTを構想する 図 3 はちROBOTそれぞれのグループから生み出される「未 来 を 救 う 昆虫
ROBOT
」 は「針 に は 解毒, 治療薬の機能があり,救急手当てが必要な 人を察知して急行する「はちROBOT
」(図3
)」や「災害などで住宅移動ができ,ゆっ くり移動し安心して住める移動可能な集合住 宅「かたつむりROBOT
」(図4
)」など工 夫のある多様な表現を展開していた。 本授業は韓国STEAM
教育の原理に基づき 提示された学習構成の枠組みに基づき設計さ れたものであった。次章では,その原理・枠 組みと本授業の関係を確認し,STEAM
教育 の課題について検討することとする。Ⅵ.
STEAM
教育
の
検証
1
.本STEAM
教育授業の意味 (1
)STEAM
教育・学習構成の枠組みSTEAM
教育 に お け る「科学 と 芸術 の 融 合」は「概念形成と創意性を持って他者と交 流し配慮を追求する活動の中で起こる」と説 明され,その到達点として「創意的設計と感 性的な体験を通して科学技術と関連する多様 な分野への興味や理解が深まり,創意的で総 合的に問題解決できるような人材が養成でき る」とされていた23)。 また,STEAM
プログラム設計では,その 原理に基づき,学習構成の枠組みとして「状 況の提示」「創意的設計」「感性的な体験」を 設定し,これらを順番に段階的に学習するこ とで,意欲的で循環的な学習構造を構築す る,とされていた24)。 最初の場面となる「状況の提示」とは「生 徒が日常の中で課題を発見し,それを科学原 理の観点から設定する」課題設定の段階であ り,「創意的設計」とは,「設定した課題を解 決する試行錯誤の場面で,生徒のアイデアが 反映される」試行錯誤の段階であるとされ る。そして,注意書きとして「この活動場 面において教師が知識や技術を教えることが 中心になってはならない」とされている。続 く「感性的な体験」とは「創造的設計の場面 で獲得できた科学原理に基づき,新しい問題 に挑戦する最終段階」とされている。さらに この最終段階では,「科学原理が実生活とど のように結びついているかを理解し,さらに 社会の多様な問題解決に興味を示すようにな る」とされている25)。 それでは,本授業においてSTEAM
教育の 枠組みとされる学習構成はどのように実践さ れていたのかについて検討する。 (2
)状況の提示・理科授業場面 この授業では,理科学習において「水辺の 昆虫」といった日常生活の環境に目を向けさ せ,そこに生息する多種多様な昆虫に関心と 疑問を持つことからスタートしている。これ は,状況設定の第一の要件である「生徒が日 常生活の中で課題を発見する」に対応させた ものである。次に,児童は自分が関心を持っ た水辺の昆虫を個々に描き,さらにそれを切 り抜いた昆虫を教師が黒板に描いた水辺風景 の中に再配置した。「昆虫図鑑などから昆虫 を写し描く」という行為に求められること は,昆虫の特徴を正しく把握し,理解したこ とを絵に描いて確かめる,という科学的な観 点に基づく学習活動である。 児童は自分が描いた昆虫だけではなく,友 だちの描いた昆虫の中に自分の昆虫を確認で き,水辺の環境の中に置いて,状況をより身 近に感じることができた。 図 4 かたつむりROBOT教師は「昆虫の生態を調べる」という課題 に対して,まず擬似的ではあるが児童の調べ 描いた昆虫を水辺に集合させて,科学的知識 と生活感覚とを結びつけようとしていた。 一方,状況提示の第二の要件である「日常 生活の中で発見した課題を科学原理の観点か ら設定する」については,次の実科授業にお いて引き継がれている。 (
3
)創意的設計・実科授業場面 次の実科授業では,最初に「専門家会議」 という場面を設定している。実科という教科 は,科学技術の工学的知識・技能の獲得を目 指す教科であるが,ここでは知識や技術の観 点からではなく,この教科の趣旨である客観 的な観点から対象を捉え,分析的に検討する という活動を強調し授業を展開させている。 この段階は「水辺の昆虫」といった児童に とって身近な存在や環境に関心を持ち調べさ せた段階から,これらを「未来を救う」とい った架空の課題に置き換える場面であった。 この転換点は状況提示の第二の要件であ る「日常生活の中で発見した課題を科学原理 の観点から設定する」にあたる部分である。 本授業者はここで「昆虫学者・未来学者・工 学者・デザイナー」という異なる観点を持つ 専門家がそれぞれ「未来を救う昆虫を構想す る」という場面を設定した。 異なる専門家のそれぞれの観点から発想し ていくという活動は,児童に明確な考える観 点を与えることになり,そこから新しいアイ デアを次から次へと引き出す場面となった。 これはSTEAM
教育第二段階とされる「創意 的設計」段階の「設定した課題を解決する試 行錯誤の場面で,生徒のアイデアが反映され る」に対応した活動と言える。 これによって,児童は「水辺の昆虫」とい う科学知識を「未来の昆虫」という想像の世 界に転換することができ,加えて,想像のイ メージを,個別としてではなく,共有のイメ ージとしてまとめていく作業を協働して生み 出すことができた。 (4
)感性的な体験・美術授業場面 実科授業で共有のイメージを生み出すこと ができた児童は,第3
場面である美術授業 場面で,それを個別のイメージとしてではな く,グループで共有できるイメージを出し合 い,視覚表現へと具体化させていく段階に移 行させていく。 美術授業場面は「感性的な体験場面」とさ れており,この段階は「児童自らが疑問を感 じ設定した課題を,児童自身のアイデアによ って試行錯誤し創造的設計の場面で獲得でき た科学原理に基づき,新しい問題に挑戦する 最終段階」26)とされている。 この場面は実科授業活動を通して言語的に イメージされた「未来の昆虫」を「創造的設 計の場面で獲得できた科学原理」と仮定し, それを視覚表現とするグループ活動であっ た。教室全体を見ると,どのグループも実質 的に絵を描いていくのは一人の児童(おそら くグループで一番絵を描くのが得意な児童) であった。他のメンバーは一人の児童によっ て描き生み出されていく「未来を救う昆虫ROBOT
」に対して様々な意見を加え,それ が表現に反映される様子を確認していた。こ こでは,個別の児童が「絵を描かないでイメ ージを助言する美術表現活動」が容認されて いた。そして,各グループの作品が出来上が ると,それぞれのグループが考案した「未来 を救う昆虫ROBOT
」について1
グループ3
分の持ち時間で全体発表をした。 本美術授業場面を観察する限り「感性的な 体験場面」の第二の要件である「新しい問題 に挑戦する」をこの美術活動と結びつけるこ とは困難である。本美術活動では,グループ 内・一人の児童が「専門家会議」でイメージ された内容を他のメンバーから注文を受けて 視覚表現しているに過ぎず,特に新しい問題 に挑戦している訳ではなかった。 また,最終段階で期待される「科学原理が実生活とどのように結びついているかを理解 し,さらに社会の多様な問題解決に興味を示 すようになる」についても本美術活動として 説明し関連付けることはできない。 これらを関連付ける活動は,美術活動の最 後に行われた「未来を救う昆虫
ROBOT
の 発表場面」である。ここでは,「自分たちが 考案し工夫した昆虫ROBOT
がいかに実生 活の課題と結びつき,問題解決に貢献できる か」について熱心に発表していた。 言い換え る と,本STEAM
教育に お い て 「感性的な体験場面」の求める要件を満たし ているのは美術活動ではなく,発表場面であ り,本授業で取り組まれた美術活動は,発表 場面のために準備された「デザインとアイデ アを発展させるための繋ぎの作業場面」とし てしか機能していなかったことがわかる。2
.本STEAM
授業の課題 (1
)STEAM
準拠枠組みにおける課題 前節では,本授業をSTEAM
準拠の枠組み から検証したが,その結果「理科授業」「実 科授業」においては,その求める要件を満た していたことがわかる。一方,本授業におけ る美術活動は,STEAM
教育の求める「感性 的な体験場面」の要件を満たすことができて いなかった。 美術活動がSTEAM
準拠の枠組みを満たせ なかった状況は,次の二つの課題と一つの疑 問を導くことになる。すなわち第一は「本授 業者の授業設計あるいは授業実践が不十分で あった・授業者本人の課題」,第二は「美術 活動をSTEAM
準拠の枠組みである「感性的 な体験場面」の設定に問題がある・STEAM
準拠の枠組みの課題」,そして「STEAM
教 育の融合理念における芸術の位置付けに問題 がある・根源的な問題」である。そこで,以 下の項でそれぞれについて検討する。 (2
)授業者本人の課題 本授業者は美術活動を,他者の表現行為を 自分自身の表現として受け入れたり,協働し てイメージを創り上げたりする活動として展 開していた。つまり,本授業者は,実科授業 の専門家会議から始まる他者とのコミュニテ ィによる協働イメージ形成を描画として具体 化させることを美術活動としていたことにな る。 授業後の授業者及び本学校関係者によれ ば,本時のSTEAM
教育の展開活動で,授業 計画通り進めることができなかった場面は, 最後の発表時間が予定より少なくなり,児童 同士が意見交換する時間が確保できなかった 点においてであった。美術活動についての言 及はなかった。 また,他のSTEAM
授業においても,美術 活動は本授業のように学習全体の最終部分で まとめの発表提示の方法として用いられた り,学習前半のアイデアを出し合う場面で スケッチをしたりするなどの位置付けが多 い27)ということであった。 すなわち,本授業における美術活動は,授 業設計通りに行われており,授業実践が不十 分であったとは言えない,ということにな る。 (3
)STEAM
準拠の枠組みの課題STEAM
準拠の枠組みにおいて美術活動場 面とされる「感性的な体験場面」は,「創造 的設計の場面で獲得できた科学原理に基づ き,新しい問題に挑戦する最終段階」と説 明されていた。この場面については前章第4
節で検討したように,この枠組みは,本授業 における美術活動を説明できる状況とはなっ ていなかった。 安東,KIM
は,前研究28)においてSTEAM
教育原理で示される準拠枠組みと,その中で 提示され構想さている教育プログラムに不整 合があることを指摘してきた。 本研究は,STEAM
教育・準拠枠組みが授 業実践においてどのように展開されているか を確認する場面であった。その結果「感性的 な体験場面」準拠枠組みから美術活動場面を説明することはできなかった。また,本授業 における美術活動は単なる科学学習の補助的 役割(アイデアを視覚化する作業)として用 いられており,この状況は,準拠枠組みに基 づいて構想さている教育プログラム29) と比 較しても,なお要件を満たしていないことが 明らかとなった。 このようなことから,
STEAM
教育原理に おけるプログラムの不整合状態は,実践現場 でも改善することは出来ず,美術活動の位置 づけをさらに不明確で補助的なものとしてい ることが確認された。 (4
)根源的な問題 ①科学教育と美術教育の関係STEAM
教育は科学(STEM
)に芸術的教 養を融合することで,新しい課題に対する問 題解決能力を育成できる,とされ開発されて いる教育課程である。 このSTEAM
教育は美術活動を科学教育の 補助的学習としていることは,本授業検討に おいて明らかであった。 このような美術活動の位置付けの課題はこ れまでも指摘されてきた。ノサンウは次のよ うに述べている。 「ほとんどの融合人材教育実践は,科学・数学教 科を中心としたSTEAM準拠の枠組みに基づいて 開発されており,芸術活動は科学教育の補助的教 科として表層的な融合が行われており,芸術科目 は単に学習動機を誘発するための状況提示や発表 するための道具として用いられている。」30) すなわち,提示されている教育プログラム において美術活動に期待されているのは「科 学原理や技術に基づいて設計段階までイメー ジされたものを視覚的に製品や表現物として 制作すること,またはその制作物としての付 加価値を高める活動」,そして「科学学習に よって得られた学習成果を基に,装飾した り,個性化したりする活動」31) と捉えられて いる。 このことは,韓国STEAM
教育が目標とす る「科学技術に対する興味だけでなく,革新 的なアイデアを創出できる人物の育成」に直 接対応している活動,とも言える。 すなわち,科学教育から捉える美術活動の 意味は,あくまでも科学技術の利用可能性に おいて発揮され,学習意欲を高めるために重 要な教育手段なのである。 ②脳生理学における芸術教育の必要性 一方,韓国教育政策・融合人材教育活性化 案32) に関連する報告書で解説される「未来 型融合人材」は英才教育によって生み出され るとし,次の様に英才を類型化し,定義して いる。すなわち,「1
,ダヴィンチ型・科学 と芸術の両方に強力な才能がある」,「2
, アインシュタイン型・科学に強力な才能があ り,ヴァイオリン演奏も水準以上」,「3
, 英才・創意的融合人材型」の3
類型が想定 されている。STEAM
教育によって育成する 人材は,その3
番目の英才類型で「才能の 中心が科学学力にあり,それに芸術的教養を 借用して生まれる」33)と説明されている。こ れらの定義は,ロバートらが主張する英才教 育理論34)に基づくとされている。 そして,同報告書では,STEAM
教育の意 義を「先端技術に芸術的感性が加わることで 脳内にバランスの取れた思考が形成され,脳 生理学的観点からも創意ある新しい価値を伴 う産業を生み出せる」35) とし,関連する報告 書でも「現代産業に必要なのは技術力だけで はなく,創意的な芸術的感性から生まれるデ ザイン力にある」36)と強調している。 これら政策構想・報告書ではSTEAM
教育 課程を産業振興政策の中に埋め込み,芸術教 育の重要性を脳生理学的視点から捉え,「左 脳」は科学的思考,「右脳」は芸術的思考を 担うとし,脳内バランス(相補性)を取るこ とが未来型人材育成だとする。 脳生理学の機能分化に基づき,左脳だけを 重視する教育(自然科学系重視)への批判 は,既に1960
年代に認知心理学によって提示されており,特段に新しい考えではない。 ただ,この時は脳生理学研究の成果37) に基 づき,芸術教育の立場から教育課程全体にお ける芸術の必要性・対等性を主張38) するも のであった。
STEAM
教育においても,同様の脳生理学 観点から芸術教育の必要性を述べているが, 異なるのは,科学能力の伸長を最重点課題と して右脳・芸術教育の補助が必要である,と 主張していることである。 すなわち,教育政策構想の段階で「芸術活 動は,科学活動に重要な働きをする必要な活 動である」と位置付けているが,「融合人材 教育」において芸術は科学を補助する役割と して構想されているのである。 ③科学原理を探究する問題解決学習 韓国カリキュラム開発では,学問の細分化 や専門分野の多様化に対して,学問をより総 合的に捉え,教科を再編したり統合したりす る学際的なアプローチが試みられてきた。 そのアプローチは,1980
年代の3
つの生 活科を教育課程に組み込むことから始まって おり,第7
次課程では,生活科における教 科統合という発想を改め,主題中心による生 活科の再構造化が行われた。ここでは,3
つ の生活科を対象として活動主題の統一が行 われ,生活科は教科の統合としてではなく,3
つの生活科において,共通する8
つの主 題39) をそれぞれ追求する,主題中心の合科 教育へ移行された。 ま た,2009
年・ 改 正 教 育 課 程(2012
年 施行)では,第7
次教育課程において設置 された創意的裁量活動に特別活動を吸収し 「創意的体験活動40)」として領域が再編され 「教科の集中履修制の導入による教科の統合 運営41)」による教科選択科目の統合や,主 題中心による教科の再構造化が行われた。 このように韓国の教育課程における教科 統合は,教育内容が近接する他教科との合 科(3
つの生活科)から始まり,現在は主 題(課題)をコアとして各教科教育内容を有 機的に関係づける総合的な教育課程へと展開 している。STEAM
教育もこの主題設定融合の考えを 踏襲している。STEAM
教育プログラムは全 て共通テーマを与えられ,そのテーマから各 教科の「融合要素」を設定して「該当科目が 担当する学習内容」が決定されている42)。 すなわち,STEAM
教育が目指す「主題中心 の新しい課題に対する問題解決能力の育成」 とは,まず科学・数学の学問体系で予め定め られた概念や法則を発見する問題解決活動 (科学・実科)を行うこと,が基本となる。 その上で,獲得した科学原理をもとにして現 代的課題に対応できる創造的な活動をする, とされている。これら教育プログラムの段階 では,科学・実科・美術など融合科目は等価 として配置されている。 しかし,本稿で見てきたように,STEAM
教育における美術活動は,科学教育を補助 する従属的関連科目として位置付けられて おり,「既存の科学原理を基にして,新たな 発見をしたり創造物を生み出したりする」 教育プログラムが設計されているとは言え ず43),また授業においても美術固有の価値 を学んだり児童が主体的に自己表現したりす る活動への配慮はなかった。Ⅶ.本稿
の
到達点
と
課題
1
.科学教育が芸術活動を規定する2013
年現在,美術教育は集中履修の対象 となり,教科としての存在感をますます弱め て行く一方で,STEAM
教育・科学教育にお ける必須教育(芸術科目)として注目されて いる。STEAM
教 育 を 全 面 的 に 推 し 進 め るKOFAC
は,科学教育を担当する教員を対象 として,世界から著名な芸術家や美術教育研 究者を招聘し芸術教育セミナーを積極的に開催しており日本の美術教育関係者も講演して いる。また,韓国の児童生徒は集団で世界の 芸術教育・学校現場に引率され,体験的な芸 術指導を受けている。科学教育担当教師は, このような芸術教育のセミナーや研修に参加 することが義務づけられており,この状況は 芸術教育の振興のようにも見えるし,衰退し ているようにも感じられ複雑である。 分かることは,芸術教育は科学教育の文脈 において積極的に取り込まれ,産業育成政策 の方法として有効活用されている,というこ とである。 一方,現在の韓国教育課程及び
STEAM
教 育は主題を中心とする教科の再編成がおこな われているのだが,何れも「予め定められた 概念や法則を発見していく問題解決学習」が 基本となっている。そして,美術活動におけ る創造的過程の意義や美術表現することの意 味が十分に問われないまま(若干の批判はあ るが),科学教育と産業振興政策中心で状況 が展開している,ということである。 そして,「科学教育に芸術教育が補助とな る」という根拠は,かつて美術教育が,学校 教育課程において科学教育と同等に必要な教 育であると主張していた脳生理学の原理がそ のまま用いられている。ここでも科学教育に 美術教育が取り込まれている。2
.残された課題 理数教育の側から芸術教育を融合する教育 課程は,第3
部で見てきたように,現在世 界各地で取り組まれている今日的教科融合課 題である。そして,韓国STEAM
教育は,小 学校から高等学校までを対象とし,理数教育 に芸術教育を積極的に融合させる壮大な試み である。 われわれは,韓国教育課程の展開を背景と して取り組まれるSTEAM
教育の課題を美術 教育の観点から明らかにしてきた。ここでは 教育課程プログラム上,科学と芸術は等価と されているが,授業実践場面や教育振興政策 においては美術教育が科学教育を補助する機 能として働いていることを指摘した。STEAM
教育は美術教育を,創造性の育成 や脳生理学における脳内相補性,といった従 来の教科アイデンティティによって理解しよ うとしているが,現在のところ科学と芸術と いう質的に異なる領域を繋ぐ原理を提示でき ているとは言えない。 この状況は韓国の教育課程編成が科学教 育・産業人材育成を最重要視していることの 帰結ではあるが,現在の融合教育は芸術の意 味をよく理解できないまま,科学の側からの 解釈に基づき表層的に扱っている感は否めな い。 しかし,STEAM
教育は現在の融合プログ ラムを完成形としておらず,これまで例示し てきたような多様な芸術研修プログラムを組 み,芸術の力・意味を理解しようと努力を重 ねていることも事実である。 他方,美術教育はSTEAM
教育の芸術融合 の取り組みが表層的であることを指摘してい るものの,美術教育の立場から,融合の可能 性・原理を示すことはできていない。また, 科学教育に対して美術教育の意義を十分に発 信できているとも言えない。 教科統合の試みは,アメリカにおける教育 課程改革の中,1960
年代から取り組まれて 来たものであり,芸術と科学を融合する教育 開発プロジェクトとしては「普通教育におけ る芸術」44) などがある。そして,これら融合 教育においても問題とされていたのは,他教 科と結びつく芸術(美術)教科の基底となる 原理(discipline
)をどのように定めるか, ということであった。STEAM
教育においても,各教科の原理を 「融合科目要素」として取り出し,それらを 結びつけた授業設計が試みられているが,現 在のところ,それがまだ表層的なレベルにと どまっていることが,現在の最重要課題であ る。このことは同時に,われわれが美術教育の 基底となる原理をどのように説明できるか, ということが今改めて問われていると言い換 えることができる。 すなわち,われわれが美術教育の立場か ら,科学教育の原理と結びつく相互関連性を 提示できる時こそが,芸術と科学を融合する 教育の可能性を切り開いていく場面となるの である。 註
1) STEM教育とは,科学(Science),技術(Technology), 工学(Engineering),数学(Mathematics)の頭文字を合
わせてSTEM(理数融合教育)とする造語である。
2) David A. Sousa, Tom Pilecki., From Stem to Steam, Using
brain-compatible strategies to integrate the arts, Corwin a
sage company. United States of America, 2013, pp.57-63.
3) STEAM教 育 と は,STEM( 理 数 融 合 教 育 ) に 芸 術 (Arts)のAを追加してSTEAMとした造語である。 4) 2009年 3 月 1 付けで韓国科学英才高校は,KAIST附設 韓国科学英才高校に改名され,KAISTに吸収統合され た。科学英才高校には,韓国科学英才高校,ソウル科学 高校,京畿科学高校,大邱科学高校の 4 校が指定され ている。これら英才高校では教育課程にSTEAM教育が 取り入れられ,芸術と科学による融合教育が先進的に取 り組まれている。
5) Kim, Jeonghyo「融合人材教育(STEAM)が美術科教
育課程に示唆する点の探索」『2012年度・韓国教育課程 評価院研究報告』2012,11.韓国教育課程評価院 6)前掲書.Kim,によれば,政府直属の韓国技術科学部は 政策としてSTEAM教育体系を確立するため,STEAM 教育プラグラム開発所を設置し,「総論研究」「授業モデ ルの開発」を行っている。2011年度にはSTEAMリー ダーズスクールを16学校指定し,2012年度には80校が 指定された。これら指定学校では毎月一回以上,全国か ら参加者を集めて,STEAM教育授業の検討会を行って いる。そして,これらの実践の中で優秀授業モデルの選 定と,優秀教師(先導教師と呼ばれる)の認定( 1 万 人を目標としている)を行い,STEAM授業モデルの構 築を試みている。 これに併せてSTEAM教育教師研究会(現場教員+大学 教員(工学・芸術・人文))の支援も行い,2012年度 現在で150団体が実践可能な教育プログラムを開発し, これらの成果を韓国科学創意団体(KOFAC)が公演す るSTEAM教育学会の発表,論文を通して実践可能な STEAM教育プログラム開発を行っている。指定学校で は,全授業の中で20パーセントがSTEAM教育関連授 業実施の割合とされ,これが,2014年度からSTEAM 教育の教育課程編入が予定されている普通教育における モデルカリキュラムとなる。 7)韓国のSTEAM教育の基本理念・教育政策は以下の研 究・文献に基づき展開されている。 ベクユンス他「融合人材教育実行方向を定立するための 基礎研究」KOFAC,2012. ペ ク・ ソ ン ヘ 他「 融 合 人 材 教 育 パ ー ト ナ ー シ ッ プ (Partnership) 及 び プ ロ グ ラ ム 開 発 研 究 」KOFAC, 2012. ベクユンス他「わが国のSTEAM教育の方向,学習者中 心の教科教育研究11( 4 )」KOFAC,2011. 上 記 文 献 に お い て, 融 合 的 知 識 や 概 念 形 成 (Convergence)と創意性(Creativity)を持ちながら他 者との疎通(Communication)と配慮(Caring)を通し て真の融合教育が起きると報告し,これを 4 C-STEAM として提案した。 4 C-STEAM教育とは,創意的設計 (Creative Design)と感性的な体験(Emotional Touch) を通して科学技術と関連する様々な分野の融合的知識・ 過程・本質に関する興味と理解を高め,創意的かつ総
合的に問題を解決できるような融合的素養(STEAM
Literacy)を備えた人材を養成する教育とされている。 8) Kim, Jeonghyo・安東恭一郎,「Possibilities and Prospects
of STEAM Education based on the Convergence of Science and Art: Principles of STEAM Education in Korea and Designing Its Practices」,『Art Education Research Review』,韓國美術教育学会,第27冊第 1 号,2013, pp.123-157. 9) ア メ リ カ で最 初 にSTEM教 育 が 試 み ら れ た の は 「Learning by Design」と呼ばれる工学と技術を融合する ため問題解決学習を中心とする科学・数学教育適用プロ グラムで,各領域を単純に統合するのではなく,多様な 領域を融合していく教育プログラムが試みられた。この 取り組みはアメリカ技術工学教育学会とNASAによっ て取り組まれた。 10) アメリカにおける融合教育の事例を以下にあげる。 ・GPGC http://www.gpgc.org/(2013.11月確認) ルイジアナ州立大学では,12歳から17歳を対象とする 7 週間の夏期創造学習プラグラムとして科学教育に人 文・ファインアートを融合した教育プログラムが試みら れている。GPGCとは‘Governor s Program for Gifted Children’すなわち天才教育のことであり,「何を考え るか,ではなく,どのように考えるのか」といった問題 解決学習を軸としていることが特徴である。
・IMSA https://www.imsa.edu/discover(2013.11月確認)
イリノイ州で取り組まれた融合学習である。IMSAとは
‘Illinois Mathematics and Science Academy’ の 略 語 で 数学と科学を中心としながらも,既存の教科(数学,科 学,英語,歴史,社会,外国語,美術,音楽,など)を 融合して編成したもので,学生自身が問題・課題設定を し,既存の教科内容を横断しながら問題解決を目指す教 育プログラムである。 ・MESA http://mesa.ucop.edu/about/(2013.11月確認) カリフォニア州を中心に 8 つの州合同で低所得者およ
び女子学生を対象に放課後に実施され,科学,数学, 工 業 分 野 へ の 進 路 教 育 の た め 組 ま れ た。MESAと は ‘Mathematics, Engineering, Science, Achievement’の略 語であり,このカリキュラムは,20のSTEMプログラ ムが組まれて,科学と数学の原理を中心にしながら美術 が教育課程に与える影響が検討されている。 ・FOSS http://www.nsf.gov/index.jsp(2013.11月確認) FOSSとは,科学学習に必要な全ての学習を含んだ教育 課程であり,アメリカ国家科学財団(NSF)の支援を 受けて実施される小中学生の科学体験学習向けに開発さ れた世界的な創造体験学習モジュールの総称である。 ここでは物理,科学思想・技術,生物,地学の 4 領域 を中心に41種類の学習モジュール(初等32種,中等 9 種)が準備され,モジュールごとに教材,学習活動レポ ートキット・プログラムが準備されている。この教育プ ログラムではデザイン要素の導入が試みられている。 ・ARTStem http://www.artstem.org/(2013.11月確認) ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ大 学 に お い て 実 施 さ れ た 芸 術 と
STEM教 育 を 融 合 す る 試 み で あ り‘Bridging STEM toSTEM’として芸術家と教育者,科学者と研究者とを 結びつけ科学,技術,芸術,数学教育を総合するための プログラム開発が行われた。この取り組みは研究成果を 中等教師,学生に還元することが特徴である。 11) 弓野憲一,平石徳己「世界の創造性教育」『教育心理 学年報』第46集,Vol.46. 2007,pp.143-144. 12) イム・ギョンスン他『青少年の創意増進を図る融合プ ログラム開発案・中間報告』ポハン工科大学,科学文化 研究センター,2009. 13) InnoSchool,http://innoschool.tkk.fi /(2013.11月 確 認)
14) Georgette Yakman“STEAM Education Program Description,STΣ@M:Science & Technology, interpreted through Engineering & the Arts, all based in Mathematical elements” http://www.steamedu.com,(2013.11月確認) 15) 2009年 3 月,韓国科学英才高校は,KAIST附設韓国 科学英才高校に改名され,KAISTに吸収され,改訂さ れた韓国科学技術院法の適用を受ける。 16) 韓 国・ 理 科 学 融 合 教 育(STEM教 育 ) が, 芸 術 教 育に関心を示し始め る き っ か け は「Journal of STEM Education」において2000年頃から芸術を取り入れた論 文が散見されるようになったことと,アメリカMESA プログラム(註 8 参照のこと)に参加した韓国学生・ 研究者が科学と芸術の融合による学習成果を持ち帰って 報告した(KOFAC・米国STEM実施基礎研究)ことも 影響している。 17) 教育科学技術部「独創人材や先進科学技術で開く未 来の大韓民国,2010」『2011年業務報告』教育科学技術 部,2011. 18) 教育科学技術部「第 2 次科学技術人材育成支援の基 本計画」教育科学技術部,2011. この政策を受けて,韓国科学創意団体(KOFAC)が主 体となり,初等学校から高等学校までの科学教育担当教 員を海外の先進的な芸術教育の視察派遣する事業も行な われている。また,STEAM教育の全教育課程実施と充 実のために「先端科学教師研究センター」を韓国16市 に所在する道教育委員会に設置し,ここでは,「入門研 修・STEAM教育概念理解」,「基礎研究・STEAM教育 授業実践育成」「深化研究・STEAM教育プログラム開 発能力育成」の 3 段階で研修会が計画的に実施されて いる。
19) Campbell, T. Student motivation and interests as proxies for forming STEM identities.(2011, June).Invited Keynote Speaker for Integrated Education Approach among STEAM K-12 School Subjects. Kyungpook National University, Daegu & Ehwa Womans University, Seoul, Republic of Korea.
20) 韓国は2007年実施されたPISAとTIMSSの科学・数 学科目で何れも世界上位となり,優秀な結果を収めた. 一方,これとは対照的に1995年以来科学・数学に対す る自信と興味関心は世界最下位であり,‘2011 OECD 子供青少年幸福指数’調査では 3 年連続最下位を記録 した。 21) PISA2012年のとりまとめ(文科省,2013,11)によ ると,「我が国(日本)の生徒の学力は改善傾向にある が,「学習に主体的に取り組む意欲・態度」に関連する 項目に肯定的な回答をした生徒の割合はOECD平均よ り低くなっている(参加65カ国中,韓国と日本はほぼ 最下位)」とされている。TIMSS(国際数学・理科教育 調査,2011)においても日本の児童生徒の学習意欲が 低いことが課題とされている(韓国も同様)。これらの 国際学力調査から,日韓共に「世界的に学力は最上位か それに近く,学習意欲は最下位かそれに近い」ことが共 通している。 22) 安東とKIMは,美術教育課程研究を共通課題とし, 日韓美術教育の類似点や相違点を研究視点・手がかりと しながら共同研究を2012年度から開始した。本稿の授 業観察は韓国教育課程の最前線研究を目的とし,韓国京 畿道教育委員会の協力・了解を得て実現したものであ る。本稿以外にも共同で「日韓デジタル教科書研究」 「韓国高等学校・美術教育課程研究」「日韓サブカルチャ ー研究」など現代的教育課題をテーマとして研究を進め ており,日韓双方で研究成果を発表している。 23) ベクユンス他,前掲「わが国のSTEAM教育の方向, 学習者中心の教科教育研究11( 4 )」 24) チョヒャンスク「2012年融合人材教育(STEAM)・ リーダー・スクール・教師研究会オリエンテーション」 2012,STEAMスクール及び教師研究会発足式資料集。 25) 同,チョヒャンスク,資料集 26) 韓国科学創意団体(KOFAC),教師研究会プログラ ム,STEAM教育開発研究のための授業プログラム, http://www.scienceall.com/index.sca(2013,11確認) 27) 韓国科学創意団体(KOFAC)が提示したプログラム サンプル集「美術中心の小学校高学年STEAM教育」 2012.で示される「STEAM科目要素・美術」によれ ば,美術の働きは「科学学習で出来上がった図案をさら にリアルに現すこと」「科学学習に基づいた作成ができ