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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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プレスリリース

2011 年 4 月 5 日 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部

炎症を抑える新しいたんぱく質を発見

−花粉症などのアレルギー疾患や、炎症性疾患の新たな治療法開発に期待−

慶應義塾大学医学部の吉村昭彦教授らの研究グループは、リンパ球における新たな免 疫調節機構を解明、抑制性T細胞を人工的につくり出し、炎症性のT細胞を抑える機能 を持った新しいたんぱく質を発見しました。試験管内でこのたんぱく質を発現させたT 細胞は、炎症を起こすT細胞の増殖を抑制することがわかりました。 この発見は、花粉症、喘息などのアレルギー疾患やリウマチなどの自己免疫疾患の全 く新しい治療方法の開発につながるものと期待されます。 本研究成果は、2011年4月5日(英国時間)に英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」で公開されます。 <概略> 慶應義塾大学医学部の吉村昭彦教授らの研究グループは、リンパ球における新たな免疫 調節機構を解明、抑制性T細胞を人工的につくり出し、炎症性のT細胞を抑える新しいた んぱく質を発見しました。 これまで炎症を抑制するリンパ球の一種として抑制性T細胞注1)が知られていましたが、 人工的に抑制性T細胞をつくることは困難でした。新たに発見された、たんぱく質は Nr4a2注2)と呼ばれていたもので、通常の免疫や炎症を促進するエフェクターT細胞注 3)には発現していません。しかしこのたんぱく質を未感作T細胞注4)に発現させるとT細 胞の感作にともなって抑制性T細胞の性質を付与できることがわかりました。Nr4a2 は特にFoxp3注5)とよばれる抑制性T細胞の性質を決定する重要なたんぱく質の発現 を誘導し、さらにインターフェロンγ注6)と呼ばれる炎症を促進するたんぱく質の発現を 止めることができました。試験管内ではNr4a2を発現させたT細胞は炎症を起こすT 細胞の増殖を抑制することがわかりました。またNr4a2がないと抑制性T細胞はFo xp3を安定に保つことができずにだんだん抑制能力を失うこともわかりました。 これらの発見は、炎症を促進するリンパ球にNr4a2の発現を高めることで、他の免 疫機能を保持したまま炎症を抑制する方法の開発につながるもので、リウマチなどの自己 免疫疾患や花粉症、喘息などのアレルギー疾患の全く新しい治療方法の開発につながるも

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のと期待されます。 本研究成果は、2011年4月5日(英国時間)に英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」で公開されます。 また、本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究領域「ア レルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」における研究課題「細胞内シグ ナル制御による免疫リプログラミング」(研究代表者 吉村昭彦慶應義塾大学医学部教授) によって得られたものです。 <研究の背景と経緯> 免疫システムは我々の身体を多種多様な病原体から守っています。ヘルパーT細胞は免 疫系の司令塔としての役割を担っており、侵入した病原体の種類に応じTh1、Th2、 Th17の3種類のいずれかの炎症性T細胞が分化誘導され、その病原体の排除に最適な 免疫応答を誘導します(図1A)。これらの免疫応答を促進する細胞をエフェクターT細胞 注3)と呼びます。一方免疫応答は適切な時期に終息しなければなりません。もし異常に免 疫系が活性化され続けるとリウマチなどの自己免疫疾患や花粉症などのアレルギーを引き 起こします。そこでヘルパーT細胞のなかにはエフェクターT細胞を抑制し免疫応答を適 切に制御するT細胞、抑制性T細胞(Treg)注1)が存在します。Tregは様々なメ カニズムで免疫応答の抑制に機能し、生体の恒常性(ホメオスターシス)を維持していま す。その制御異常はリウマチなどの自己免疫疾患や花粉症、喘息などのアレルギー性疾患 を引き起こします。例えばTh1がTregよりも過剰になりすぎる場合は炎症性腸疾患 やI型糖尿病になりやすくなりますが、一方Tregが強すぎると病原菌に感染しやすく なったり腫瘍細胞の排除ができないなどの不都合もあります(図1B)。このようにエフェ クターTh/Tregのバランスの異常は様々な疾患の発症に関わっており、そのバラン スの人為的な改変が可能となれば、それら疾患の治療に結びつくと考えられます。本研究 グループは人工的にこのバランスを変えたり、Tregを作り出す研究に取り組んできま した。そしてこれまでT細胞では機能がわかっていなかった核内オーファン受容体注7) 一種であるNr4a2というたんぱく質が、Tregの分化誘導を促進する一方でTh1 への分化を抑制する機能を持つことを明らかとしました。 <研究の内容> 本研究グループはまず、遺伝子発現データベース検索を中心にTreg誘導に機能する 候補因子を選択しました。それら候補因子を対象に、Foxp3 (Treg)の分化・維持・ 機能発現において必須の役割を担っている転写因子) の誘導能を指標に絞り込みを行った 結果、核内オーファン受容体Nr4a2が最も強いFoxp3誘導能を示すことがわかり ました。 Nr4a2は未成熟T細胞への異所的発現によりFoxp3を誘導すること、および インターフェロンγの産生(すなわちTh1分化)を強力に抑制することを見出しました (図2A)。注目すべきことに、Foxp3の誘導はTh1の分化誘導条件下でも著明に見 られました。さらに、Nr4a2により誘導されたFoxp3陽性細胞は試験管内でTr egと同等のT細胞増殖抑制活性を示しました。これらの結果は、炎症環境下でもNr4 a2を活性化すればTh1分化を抑制でき、一方でTregを分化誘導し、ひいては炎症

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反応を寛解に導ける可能性を示しています。 次にT細胞でNr4a2遺伝子のないマウス(ノックアウトマウス)を作成し、内在性 Nr4a2のヘルパーT細胞分化や炎症性疾患における役割の解析を行いました。まず、 Nr4a2を欠損した未成熟T細胞を試験管内で各ヘルパーT細胞サブセットやTreg 誘導条件で培養を行ったところ、Th1の異常な分化亢進が確認されました。特にTre g誘導条件下ではTreg分化の著明な減少、およびTh1の異常な分化誘導が確認され ました(図2B)。さらにT細胞特異的にNr4a2を欠損させたマウス個体では、炎症性 腸疾患の実験的なモデル腸炎の増悪化が見られました(図2C)。これらの結果から、外か ら発現させただけでなく、内在性のNr4a2もTregの分化誘導、Th1の抑制に機 能し、炎症性疾患の発症に対し抑制的に働く因子であることが明らかとなりました。 さらにNr4a2を欠損させたTregの解析を行ったところ、これらの細胞では野生 型Tregと比較しFoxp3発現を失いやすい、すなわちTregとしての形質が不安 定であることが明らかとなりました。またNr4a2欠損Tregでは CD25 やTGF-β 等の抑制機能に関与する分子の発現に低下が見られ、抑制活性が共に著明に減少している ことが確認されました(図3A,B)。 以上のように、本研究グループはNr4a2がTreg分化を促進しTh1を抑制する 一方、Tregの安定な形質維持に機能すること、およびTregの安定性と免疫抑制能 に必要な因子であることを見出しました。 <今後の展開> 本研究によってNr4a2はTregを誘導する一方Th1分化を抑制することが明ら かとなりました。よってこのたんぱく質の発現や機能調節により、様々な疾患の制御が可 能になると考えられます。今後はNr4a2がどのようにしてTreg誘導、Th1分化 を制御するのか分子機構を明らかにするとともに、生体内でのNr4a2を標的とした自 己免疫疾患やアレルギー性疾患の治療法の開発を進めたいと考えています(図4)。 ※本リリースは文部科学省記者会、科学記者会、厚生労働記者クラブ等に送信させていた だいております。 <本発表資料のお問い合わせ先> 吉村昭彦(ヨシムラ アキヒコ) 慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室教授 〒160-8582 東京都新宿区信濃町35 東校舎4F TEL 03-5363-3483 FAX 03-5360-1508 E-mail:yoshimura@a6.keio.jp <本リリースの発信元> 慶應義塾大学信濃町キャンパス総務課(担当:吉野) 〒160-8582 東京都新宿区信濃町35 TEL 03-5363-3611 FAX 03-5363-3612 E-mail : med-koho@adst.keio.ac.jp

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<参考図> 図 1:ヘルパーT細胞の分化とエフェクターT細胞/Tregのバランス A: 侵入した病原体の種類に応じ 3 種類いずれかのヘルパーT細胞(Th1, Th2, T h17)が未感作T細胞(naive)から分化し、その病原体の排除に最適な免疫応答 を誘導します。一方TregはそれらヘルパーT細胞を抑制する機能を持ちます。 B: Th1とTregのバランスが崩れると様々な疾患が発症します。

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図 2: Nr4a2はTreg誘導を促進しTh1分化を抑制する A: 未感作ヘルパーT細胞にNr4a2を異所的発現させて抗原刺激するとTregの マスター転写因子Foxp3が誘導される一方(左)、Th1分化が抑制されます(右:イ ンターフェロンγ(IFNγ)の量が減少している。)。赤は通常の(野生型)T細胞。緑は Nr4a2を強制発現させたT細胞を意味する。 B: 未感作ヘルパーT細胞をTreg誘導条件下で培養すると、野生型(左)と比較し Nr4a2欠損T細胞(右)ではTreg誘導の減弱が見られる一方、Th1分化の異常 な亢進が確認されます。 C: T細胞特異的にNr4a2を欠損させたマウスでは腸炎モデルの増悪化が見られま す。体重減少は腸炎によるものです。

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図3: Nr4a2欠損TregはT細胞抑制能が低下している A: 未感作T細胞(ナイーブT細胞)をT細胞欠損マウスに移入すると自己免疫性の腸 炎を発症し、体重減少が観察される(●印)。野生型Tregを共移入すると腸炎の発症は 抑制される(△印)。一方、Nr4a2欠損Tregは抑制能が著しく減弱している(□印)。 B: Nr4a2欠損Tregは分化状態が不安定であり、野生型Tregと比較し、T 細胞欠損マウス移入後Foxp3発現を失いやすい。右の青で囲った野生型Treg では Foxp3 の保持率は80%以上であるが左の赤で囲ったNr4a2欠損Treg では40%以 下に低下している。

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<用語解説> 注1) 抑制性T細胞(Treg)(ティー レグ) CD4陽性ヘルパーT細胞の一種で、免疫抑制機能を有する。自己に対する免疫応答を抑 制するほか、IL‐10やTGFβなどの抗炎症性サイトカインを分泌し、炎症を抑制す る機能も持つ。胸腺で作られる他、未感作T細胞の一部からも作られる。 注2) Nr4a2 ステロイドの受容体など細胞の核内で働く核内受容体と呼ばれる一群のたんぱく質のひと つのであるが、結合するリガンド(ホルモンなど)は不明。多くの細胞で発現しており様々 な機能をもつと考えられているがTregにおける機能は不明のままであった。 注3) エフェクターT細胞 免疫系を活性化するT細胞。特にヘルパーT細胞ではTh1,Th2,Th17の3種類 が知られている。それぞれ特徴的なサイトカインを放出し、感染防御や免疫応答に関わる 他、自己免疫疾患、アレルギー、癌でも重要な働きをする。 注4) 未感作T細胞 抗原にであったことのないT細胞。ナイーブT細胞とも言う。この細胞が抗原刺激をうけ るとエフェクターT細胞に分化成熟する。一部Tregにも分化する。 注5) Foxp3(フォックス ピー スリー) Tregの性質を決定する最も重要なたんぱく質。免疫抑制機能をもつたんぱく質の発現 を誘導し、一方で炎症にかかわるたんぱく質の発現を抑制する。もしTregがFoxp 3を失うと炎症を促進するエフェクターT細胞に転換してしまう。 注6) インターフェロンγ(IFNγ) Th1細胞から分泌される炎症を強力に促進するたんぱく質。病原菌の感染を防いだり腫 瘍細胞を排除したりする働きがあるが、過剰に分泌されると炎症や自己免疫疾患となるこ とがある。 注7)核内オーファン受容体 ステロイドなどの脂溶性のホルモンの受容体を核内受容体という。それらと構造が非常に よく似ているたんぱく質の一群で未だリガンド(ホルモンなど)が発見されていないもの を核内オーファン受容体と呼ぶ。 <論文名>

“The nuclear orphan receptor Nr4a2 induces Foxp3 and regulates differentiation of CD4 + T cells”

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