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保育士の子どもの発達を捉える視点に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)保育士の子どもの発達を捉える視点に関する研究 ―心理士による保育援助の基礎的研究として― キーワード:保育士、気になる子、発達、保育コンサルテーション 人間共生システム専攻 南里はるか Ⅰ【問題と目的】 1.はじめに. 幼児を理解する際の視点として、幼児に援助的に関われる かどうか、幼児に困惑感を持つかどうか、幼児を肯定的に. アスペルガー症候群、ADHD、LD といった軽度発達障害の. 受けとめられるかどうか、保育者自身との信頼関係がある. 子ども達の問題の一つとして、その早期発見、早期対応が. かどうか、保育者自身が幼児に対応する力があるかどうか. 難しいことが挙げられる。保育園においては、そうした子. という五つの視点を用いていることを示した。また、秋田. ども達の、普通は見過されるような非常に軽い障害の徴候 を、保育士が「気になる」行動として的確に感じ取ってい る場合が少なくない(村井ら,2001) 。また、こうした「気 になる」子の保育において、保育者が大きな困難を感じ、 専門的な支援を求めていることはよく指摘されている(浜 谷,1999) 。こうした現状を受けて、近年、保育の場におけ るコンサルテーションの必要性が認識されてきている。こ. ら(1997)は、保育において子どもの特性を捉える際に保 育者が用いることの多い枠組みとして、 「保育者から見て手 がかかるかどうか」 、 「感情表現の豊かさや直接性」 、 「気持 ちの切り替えの早さ」 、 「行動の活発さ」などが多くあげら れると述べている。しかしながら、これらの研究は、いず れも子どもをどう理解するかという視点からのものであり、 発達の視点から子どもをどう捉えているかについてはほと んど研究がなされていない。卒業論文では、以上のことを. こでいうコンサルテーションとは、浜谷(2002)が述べて. 踏まえて、保育士の子どもの発達の捉え方に関して研究を. いるように、 「発達臨床の専門家と保育の専門家の対等で自. 行った。その結果、発達領域の違いに注目すると、保育士. 由な共同的な問題解決であり、その目的は、保育者の保育. が全体的な傾向として、運動・操作領域や対成人・子どもな. 機能を改善することによって、子どもの状態を改善するこ. どの対人関係面についてよりも、しつけ・食事領域などの. とにある」ということができる。心理臨床の立場からのコ. 生活面について重視しており、ついで言語理解・表出領域. ンサルテーションにおいては、保育者の保育機能のみなら. などの言語面について重視していることが示された。問題. ず保育者の心理面や保育者間の関係、保育者と保護者との. 点としては、質問項目に発達検査をそのまま採用したこと. 協力についてもサポートしていく必要がある。. によって、保育士独自の視点を捉えることができなかった. 実際に、筆者は現在、福岡市東区に所在する3箇所の保. という点が挙げられた。実際の保育現場においては、発達. 育園に対して、その園の園長や保育士が気になっている子. 検査の項目のみでは捉えきれない保育士特有の子どもを見. どもについての相談活動に携わっているが、そこでまず感. る視点や保育園という集団生活ならではの発達の捉え方が. じることは、保育の専門家である保育士の先生方が、気に. あるはずであり、そこにこそ、非常に軽い障害の兆候を感. なる子の気になる行動を見抜く鋭い視点を持っているとい うことである。先にも述べたように、保育士は、乳幼児健 診などでは見過されてしまうような非常に軽い障害の徴候 を、その鋭く細やかな観察眼でもって感じ取っている場合 が少なくない。まずは、この保育士の、鋭敏な観察眼・視 点に注目することが、保育コンサルテーションをしていく 際に重要ではないだろうか。 2.保育者の子どもの発達を見る視点 保育者の視点に関する先行研究においては、これまで、 発達の視点からよりも、保育者が子どもをどう理解してい るか、子どもの特性をどう捉えているかという幼児理解の 視点からの研究が主であった。吉村(1999)は、保育者が. じとる保育士の鋭い観察眼が反映されていると思われる。 3.保育者の「気になる子」の気になる内容 そこで、本研究においては、最近、保育臨床の場で議論 が活発になってきている、保育者の「気になる子」につい ての研究を参考にして、保育士の子どもの発達を捉える視 点について検討する。先行研究としては、主に以下のよう なものがある。井口(2000)は、保育者が問題にする「気 になる子」の傾向について大規模な調査を行い、保育者に よる「気になる子」についての自由記述を、基本的生活習 慣、言葉、こだわり行動、情緒的不安、身体運動・操作力、 集団行動、不活発・無気力の7つのカテゴリに分類した。 また、岩立ら(2001)による保育士 67 名の「気になる行 動」についての自由記述による調査では、多動、乱暴、自.

(2) 己中心的といった行動面に関する記述が多いことが報告さ. 数の算出を繰り返し、項目の取捨選択を行った。最終的に、. れている。さらに、肥後(2001)は、 “気になる子”につ. 「言語表出(α=0.83) 」9項目、 「言語理解(α=0.84) 」. いて心理臨床的理解について検討し、保育者による自由記. 7 項目、 「対人関係性(α=0.91) 」14 項目、 「集団行動(α. 述を攻撃性、多動性、疎通性のなさ、自己表出の問題、集. =0.71) 」4項目、 「自己コントロール(α=0.84) 」2項目、. 団参加の困難、情緒の問題などにカテゴライズしている。. 「固執傾向(α=0.79) 」4項目、 「感覚統合(α=0.82) 」. これらの研究にみられる、子どもの「気になる」行動につ. 8項目、 「多動(α=0.74) 」5項目、 「攻撃性(α=0.74) 」. いての保育者の記述を質問項目作成の際に参考とする。な. 2項目、 「不注意(α=0.71) 」4項目、 「衝動性(α=0.86) 」. お、先行研究においては、対象とする「気になる」子ども. 2項目、 「自己評価の低さ(α=0.80) 」4項目、 「情緒面(α. の特徴は必ずしも一致していないため、本研究においては、. =0.84) 」9項目、 「基本的生活習慣(α=0.70) 」8項目、. 「気になる子」を健常から障害に至るスペクトルの中間か. 「身体運動(α=0.86) 」7項目、 「操作(α=0.85) 」5項. ら障害の方向に位置する子どもとして定義することとする。. 目の、合計92項目が選出され、16カテゴリーとなった。. 4.本研究の目的. 2.各カテゴリーの平均の比較. (1)先行研究より、子どもの「気になる」発達および行. 各カテゴリーの評価点の平均を比較するために、1要因. 動に関する保育士の記述を抽出し、保育者の視点からの子. 15水準の被験者内計画による分散分析を行った。図1は、. どもの発達内容を明らかにすること。. 各カテゴリーの平均をグラフ化したものである。分散分析. (2)保育士がより「気になる」発達内容の検討。. の結果、 カテゴリーの効果は有意であり (F=7.730,p<.01) 、. (3)保育士が子どもの発達をどのように関連づけて捉え. LSD 法を用いた多重比較を行った結果、表1に示す項目間. ているかについての検討。 (4)保育経験年数と「気になる」発達内容との関係につ いての検討。 なお、対象とする「気になる」子どもの年齢については、 実際に保育園の相談活動において多くの相談依頼を受ける、 年少児クラス、つまり、3歳以上5歳未満に設定した。 Ⅱ【方法】 1.調査対象 福岡県に所在する保育園3ヶ園における保育士のうち 年少児クラス(3歳∼4歳11ヶ月の子どもを対象とす. に有意差が見られた(MSe=0.26,5%水準) 。 図1)各カテゴリーの平均の比較 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 ① 言 語 表 出. ② 言 語 理 解. ③ 対 人 関 係 性. るクラス)を担当したことのある保育士。 2.質問項目. ④ ⑤ 集 自 己 団 行 コ 動 ルン ト ロ ー. ⑥ 固 執 傾 向. ⑦ 感 覚 統 合. ⑧ 多 動. ⑨ 攻 撃 性. ⑩ 不 注 意. ⑪ 衝 動 性. ⑫ 自 己 評 価 の 低 さ. ⑬ 情 緒 面. ⑭ 基 本 的 生 活 習 慣. ⑮ 身 体 運 動. ⑯ 操 作. 表1)多重比較表( MSe=0.26,* p<.05。LSD=0.26). 質問項目については、保育者における「気になる子」の 気になる内容について、先行研究から抽出すると同時に、 発達検査などを参考にして、最終的に計100項目を抽出 した。これらの質問項目をランダムに配列し、質問紙を作 成した。各質問項目においては、 「気にならない」から「非 常に気になる」までの6件法を採用した。 3.調査手続き 各園に調査用紙20部をそれぞれ配付し、保育士に回答 を求めた。調査は、平成X年11月に行われた。回収部数 は、31部であり、回収率52%であった。 Ⅲ【結果】 1.各カテゴリーにおける信頼性の検討. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ①言語表出 ②言語理解 ③対人関係性 ④集団行動 ⑤自己コントロール <* ⑥固執傾向 ⑦感覚統合 >* >* ⑧多動 >* >* ⑨攻撃性 >* ⑩不注意 ⑪衝動性 ⑫自己評価の低さ >* >* ⑬情緒面 ⑭基本的生活習慣 ⑮身体運動 <* ⑯操作. >*. >* <* >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. >*. >*. >*. <*. <*. <*. >* <*. <* >* >*. >*. >*. >*. >* >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. <*. >*. <*. >*. >*. <*. >* <*. <*. <*. >* >*. >*. <* <*. <*. >* >*. >*. <*. >*. <*. >*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. >*. >* >* >*. <* <*. <*. <*. <*. 注1)不等号の向きは横のカテゴリーを基準にした縦のカテゴリーとの比較で. 3.各カテゴリーを予測するもの 「言語表出」 、 「言語理解」 、 「集団行動」 、 「自己コントロ. まず、調査項目100項目を、先行研究をもとに仮カテ. ール」 、 「固執傾向」 、 「感覚統合」 、 「不注意」 、 「衝動性」の. ゴリライズし、この仮カテゴリーの信頼性を検討するため. カテゴリー評価点をそれぞれ基準変数とし、基準変数カテ. に、クロンバックのα係数を算出した。信頼性の低かった. ゴリーを除く15カテゴリーを説明変数として、有意水準. カテゴリーについては、α係数が.70 以上になるようにα係. 5%のステップワイズ法による重回帰分析を行った。結果.

(3) は、表2に示すとおりである。. のであることがわかる。このことは、近年急激に増えてい. 表2)各カテゴリーにおける有意な説明変数 基準変数 言語表出 (R=.929) 言語理解(R=.877) 対人関係性 (R=.947) 集団行動 (R=.860) 自己コントロール (R=.868) 固執傾向( R=.793) 感覚統合 (R=.915) 多動 (R=.801) 攻撃性 (R=.756) 不注意 (R=.806) 衝動性 (R=.881). 説明変数 対人関係性 集団行動 自己コントロール 情緒面 対人関係性 運動 不注意 言語表出 言語表出 不注意 衝動性 自己評価の低さ 固執傾向 対人関係性 対人関係性 自己コントロール 攻撃性 攻撃性 固執傾向 多動 衝動性 操作 集団行動 自己コントロール 多動 自己評価の低さ 不注意. β 0.455 0.447 -0.337 0.322 0.877 0.518 0.276 0.278 0.691 0.263 0.688 0.61 -0.374 0.793 0.952 -0.304 0.209 0.515 0.442 0.419 0.41 0.603 0.3 0.658 0.403 -0.434 0.301. T値 3.004* * 3.779* * -3.405* * 2.630* 9.819* * 4.583* * 3.689* * 2.498* 6.093* * 2.32* 6.304* * 4.254* * - 2.527* 7.022* * 90679* * -2.928* * 2.120* 4.184* * 3.59* * 2.545* 2.49* 4.529* * 2.253* 5.312* * 3.286* * -3.046* * 2.156*. 4.保育経験年数と各カテゴリー評価値との相関関係. る虐待の問題や、子どもの心の健康の問題を反映している ということができるだろう。また、先に挙げた、気になる 内容として非常に高かった「攻撃性」に関しても、「攻撃 性」の問題をただADHDの症状としてだけではなく、子 どもの欲求不満や心理的身体的虐待が背景にあるものも含 めて、注目していることを示唆している。 評価点平均の有意に低かったカテゴリーとしては、「身 体運動」、特に「操作」カテゴリーであることが示された。 つまり、粗大運動を主とする全般的な運動発達面や微細運 動に対しては、保育士はさほど気になっていないことが明 らかになった。学習障害やADHDにおいては、はさみな どの使い方に代表されるコントロールがぎこちないことが 知られている。また、自閉的傾向のある子どもたちでは、 独特な姿勢や動きなどが見られ、これらは、知覚過敏であ. 保育士の保育経験年数とカテゴリー評価点との相関を調. ったり、知覚と運動とのバランスがうまくとれないことに. べるために、各カテゴリーについて、経験年数とのピアソ. よると考えられている。このように、微細運動や粗大運動、. ンの相関係数を算出した。その結果、 「固執傾向」において、. 全身のコントロールなどは軽度発達障害児を把握する上で、. r=.40 であり、有意であった(p<.05) 。また、 「感覚統合」. 重要な側面であり、したがって、保育士に対して、微細運. において、r=.43 であり、有意であった(p<.05) 。なお、. 動や巧緻性の側面への考慮、さらに全身の微妙なコントロ. その他のカテゴリーにおいては有意差がみられなかった。. ールを必要とする協応動作・協調運動に対しての観察およ. Ⅳ【考察】 1.保育士が「気になる」子どもの発達について. び理解を促すことが有効であろう。 また、「対人関係性」および「集団行動」、「言語表出」. 分散分析における多重比較の結果から言えることは、保. カテゴリーは、「多動」、「攻撃性」、「不注意」、「衝. 育士が「多動」 、 「攻撃性」 、 「不注意」などのADHD的側. 動性」カテゴリーに比べて有意に低い結果となっている。. 面について最も気になっているということである。つまり、. 項目内容をみてみると、「視線が合いにくい」、「表情が. 「気に入らないことがあるとすぐに手や足が出て暴力に訴. 乏しい」、「遊び仲間に入れない」、「ごっこ遊びをしな. える」や「急にわけもなく暴力をふるう」といった他者へ. い」、「エコラリアが多い」、「みんなと一緒のことがで. の乱暴な行動、 「絶えずウロウロと移動し落ち着きがない」、. きない」、「会話が一方的で、やりとりができない(相互. 「静かにしていなければならない状況で騒いだりして静か. 性がない)」といった自閉性障害に深く関係すると思われ. に座っていることができない」等の落ち着きのない行動、. る内容、「参加したい気持ちはあるが、他児と衝突してす. 「何度注意しても同じことを繰り返す」、「ぼんやりとし. ぐにはみだしてしまう」、「集団生活での約束事が守れず. ていることが多く人の話が耳に入っていない」等の注意の. 勝手な行動をいつもとる」、「特定の遊び相手(自分がリ. コントロールのできなさ等に対して、保育士が非常に気に. ードできる相手など)としか関係をつくれない」、「貸し. していることを示している。このことは、保育士が、日々. 借りができない」といった、ADHDやLDの子どもによ. の保育のなかで、子どもの安全性や子ども同士の喧嘩によ. く見られる問題の内容となっている。すなわち、子どもの. る怪我の心配に最も注意を配っていることを示唆している。. 他者への関わりかたやその特徴に対しては、「攻撃性」、. 次に、 「情緒面」 、 「自己評価の低さ」カテゴリーにおいて. 「多動」といった、直接子どもの安全に関わる内容に比べ. の平均が有意に高い結果となっていた。項目の内容を見て. ると、あまり目がいっていないことがうかがえる。対人関. みると、「自分に注意を引こうとして周囲の子を巻き込ん. 係性の問題は、発達障害児を把握するうえで、非常に重要. だりいたずらや反抗等の困ったことをする」、「いい子す. な視点であり、保育士に対して、この人とのかかわり方の. ぎる」、「分離不安が強く母親や保育士か離れられない」、. 特徴や不器用さ、独特さに目を向けてもらうことで、新た. 「保育園に行きたがらない」、「自信がなくおどおどした. な視点を提供できることが考えられる。. 感じがある」、「周囲の意向や評価を気にしすぎる」など、. 2.保育士が、関連させて捉えている子どもの発達内容. 養育環境による愛着の問題や子どもの心の問題に関するも. 重回帰分析の結果から端的に言えることは、保育士が子.

(4) どもの発達の中で関連させて捉えている内容は、発達障害. できるという意味で、保育コンサルテーションを行ってい. 臨床においても関係性が深いと考えられるものであり、保. くうえで大いに参考になる。. 育士が子どもの発達を見る際の鋭い観察眼を持っていると. 3.保育士の保育経験と「気になる」発達内容との関係. いうことである。さらには、保育士特有の関連のさせかた. 保育経験と各カテゴリーとの相関の分析において、 「固執. も見られ、非常に興味深い結果がみられた。以下、注目す. 傾向」 、 「感覚統合」カテゴリーが正の相関を示す結果とな. べき結果について述べる。. った。この結果は、保育経験が長いほど、 「固執傾向」およ. 表2から、 「攻撃性」 、 「衝動性」カテゴリーでは、 「多動」. び「感覚統合」の発達をより気にしているということを示. カテゴリーが同じく説明変数として有意であり、 「多動」に. している。つまり、自閉性障害特有のこだわり行動や、触. おいては「攻撃性」カテゴリーが説明変数として有意であ. 角防衛、自己刺激的行動の問題について、保育経験者であ. った。したがって、保育士が「攻撃性」 、 「衝動性」 、 「多動」. るほど、より目を向けているということである。このこと. の三カテゴリーを深く関係づけて捉えていることが明らか. は、先の平均の比較において、 「固執傾向」 、 「感覚統合」が. となった。それに対して、 「不注意」では、 「多動」 、 「攻撃. 他に比べて有意に低かったことを考えると、経験のある保. 性」 、 「衝動性」カテゴリーのいずれも説明変数として有意. 育士は、保育士の中で相対的に占める割合は少ないが、研. ではなく、 「操作」 、 「集団行動」が説明変数として選出され. 修などを通して自閉性障害への専門的知識を持っており、. ていた。つまり、保育士が、 「多動」 ・ 「攻撃性」 ・ 「衝動性」. それを子どもの具体的行動と結びつけて捉えることが出来. と、 「不注意」とは別のものからなると捉えていることを示. ていることを示唆しているのではないだろうか。. している。このことは、DSM−Ⅳなどにおける「不注意. 4.今後の課題と展望. 優勢型」、「多動―衝動性優勢型」という公式のADHD. 今回は、最も相談依頼の多い年少児クラスの子どもに限. 診断基準を裏付ける結果であり、保育士が実践を通しての. って、保育士の「気になる」発達内容について検討した。. 確かな観察眼を有していることが示されることとなった。. 今後は、更に月齢別に発達内容を整理していくことで、保. また、 「衝動性」 、 「自己評価の低さ」が高く気になり、逆. 育援助におけるアセスメントの際に有効な発達チェックリ. に「固執傾向」についてあまり気にならない保育士は、 「自. ストを作成し、保育士の理解しやすい子どもの発達プロフ. 己コントロール」を気にする程度が高いことが示された。. ィールを提示することができると考える。保育園場面に即. これは、 「順番を待つことが難しい」、「他児らの遊びをじ. した発達検査は、これまでも皆無であり、今後の保育援助. ゃましたり、干渉したりする」という衝動性の問題、「自. において、こうした発達検査の開発は、社会的にも非常に. 信がなくおどおどした感じがある」、「周囲の意向や評価. ニーズの高いものであるといえる。また、保育士に「気に. を気にしすぎる」といった子どもの心の問題が、「待つこ. なる」内容をチェックしてもらうことで、子どもの発達状. とが出来ない」、「人のものを勝手に取ったり使ったりす. 況の把握と同時に、その保育士自身の気になっている内容. る」という自己統制の能力に関係すると捉えていることを. を踏まえた援助にもつながる。 「気になる」という概念には、. 示す。反対に、「特定の手触りにこだわる」などのこだわ. 保育士の負担感をも反映されていることが考えられ、子ど. り行動には関係がないと考えていることを示している。衝. もへの援助だけでなく、保育士自身を支えるという意味で. 動性が自己統制に深く関与していることは容易に予想でき. 重要である。. るが、保育士が、子どもの自己評価の低さの問題と自己コ. また、本研究においては、 「気になる」行動を、発達障害. ントロールの問題とを関連づけて捉えていることは興味深. の視点から論じてきたが、子どもの示す「気になる」行動. い。これは、保育の専門家ならではの捉え方、考え方が反. を、 「障害」の側面のみに偏って捉えることは危険だという. 映されていることが考えられる。. 意見も大いに考えられる。しかし、 「気になる」行動をその. 特に、 「対人関係性」については、 「言語表出」 、 「言語理解」 、. 子が保育者に示している「ニーズ」であると捉えて、適切. 「固執傾向」 、 「感覚統合」カテゴリーに共通して、説明変. な対応を考えていくことは、今後の保育臨床において非常. 数として選出されていた。したがって、 「対人関係性」を高. に大切な視点ではないだろうか。障害をもとうがもつまい. く気にする保育士は、同時に「言語表出」 、 「言語理解」 、 「固. が、子どもはさまざまな問題行動を示し、その多くは、子. 執傾向」 、 「感覚統合」についても気になっている可能性が. どもたちの大人へ向けての何らかのサインであると考えら. 高いことが明らかになった。このことは、保育士の、対人. れる。 「気になる」行動が、後に障害ではなかったにせよ、. 関係上の問題への注意の向け方を見ることで、同時にコミ. その時点での子どものニーズに対して、さまざまな視点か. ュニケーションの問題、こだわり行動や触覚過敏などの自. ら適切な対応を考えていくことが今後の保育コンサルテー. 閉性特有の問題にも目を向けているかどうかを知ることが. ションにとって建設的ではないだろうか。.

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