保育士の子どもの発達を捉える視点に関する研究 [ PDF
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(2) 己中心的といった行動面に関する記述が多いことが報告さ. 数の算出を繰り返し、項目の取捨選択を行った。最終的に、. れている。さらに、肥後(2001)は、 “気になる子”につ. 「言語表出(α=0.83) 」9項目、 「言語理解(α=0.84) 」. いて心理臨床的理解について検討し、保育者による自由記. 7 項目、 「対人関係性(α=0.91) 」14 項目、 「集団行動(α. 述を攻撃性、多動性、疎通性のなさ、自己表出の問題、集. =0.71) 」4項目、 「自己コントロール(α=0.84) 」2項目、. 団参加の困難、情緒の問題などにカテゴライズしている。. 「固執傾向(α=0.79) 」4項目、 「感覚統合(α=0.82) 」. これらの研究にみられる、子どもの「気になる」行動につ. 8項目、 「多動(α=0.74) 」5項目、 「攻撃性(α=0.74) 」. いての保育者の記述を質問項目作成の際に参考とする。な. 2項目、 「不注意(α=0.71) 」4項目、 「衝動性(α=0.86) 」. お、先行研究においては、対象とする「気になる」子ども. 2項目、 「自己評価の低さ(α=0.80) 」4項目、 「情緒面(α. の特徴は必ずしも一致していないため、本研究においては、. =0.84) 」9項目、 「基本的生活習慣(α=0.70) 」8項目、. 「気になる子」を健常から障害に至るスペクトルの中間か. 「身体運動(α=0.86) 」7項目、 「操作(α=0.85) 」5項. ら障害の方向に位置する子どもとして定義することとする。. 目の、合計92項目が選出され、16カテゴリーとなった。. 4.本研究の目的. 2.各カテゴリーの平均の比較. (1)先行研究より、子どもの「気になる」発達および行. 各カテゴリーの評価点の平均を比較するために、1要因. 動に関する保育士の記述を抽出し、保育者の視点からの子. 15水準の被験者内計画による分散分析を行った。図1は、. どもの発達内容を明らかにすること。. 各カテゴリーの平均をグラフ化したものである。分散分析. (2)保育士がより「気になる」発達内容の検討。. の結果、 カテゴリーの効果は有意であり (F=7.730,p<.01) 、. (3)保育士が子どもの発達をどのように関連づけて捉え. LSD 法を用いた多重比較を行った結果、表1に示す項目間. ているかについての検討。 (4)保育経験年数と「気になる」発達内容との関係につ いての検討。 なお、対象とする「気になる」子どもの年齢については、 実際に保育園の相談活動において多くの相談依頼を受ける、 年少児クラス、つまり、3歳以上5歳未満に設定した。 Ⅱ【方法】 1.調査対象 福岡県に所在する保育園3ヶ園における保育士のうち 年少児クラス(3歳∼4歳11ヶ月の子どもを対象とす. に有意差が見られた(MSe=0.26,5%水準) 。 図1)各カテゴリーの平均の比較 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 ① 言 語 表 出. ② 言 語 理 解. ③ 対 人 関 係 性. るクラス)を担当したことのある保育士。 2.質問項目. ④ ⑤ 集 自 己 団 行 コ 動 ルン ト ロ ー. ⑥ 固 執 傾 向. ⑦ 感 覚 統 合. ⑧ 多 動. ⑨ 攻 撃 性. ⑩ 不 注 意. ⑪ 衝 動 性. ⑫ 自 己 評 価 の 低 さ. ⑬ 情 緒 面. ⑭ 基 本 的 生 活 習 慣. ⑮ 身 体 運 動. ⑯ 操 作. 表1)多重比較表( MSe=0.26,* p<.05。LSD=0.26). 質問項目については、保育者における「気になる子」の 気になる内容について、先行研究から抽出すると同時に、 発達検査などを参考にして、最終的に計100項目を抽出 した。これらの質問項目をランダムに配列し、質問紙を作 成した。各質問項目においては、 「気にならない」から「非 常に気になる」までの6件法を採用した。 3.調査手続き 各園に調査用紙20部をそれぞれ配付し、保育士に回答 を求めた。調査は、平成X年11月に行われた。回収部数 は、31部であり、回収率52%であった。 Ⅲ【結果】 1.各カテゴリーにおける信頼性の検討. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ①言語表出 ②言語理解 ③対人関係性 ④集団行動 ⑤自己コントロール <* ⑥固執傾向 ⑦感覚統合 >* >* ⑧多動 >* >* ⑨攻撃性 >* ⑩不注意 ⑪衝動性 ⑫自己評価の低さ >* >* ⑬情緒面 ⑭基本的生活習慣 ⑮身体運動 <* ⑯操作. >*. >* <* >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. >*. >*. >*. <*. <*. <*. >* <*. <* >* >*. >*. >*. >*. >* >*. >*. >*. >*. >*. >*. >*. <*. >*. <*. >*. >*. <*. >* <*. <*. <*. >* >*. >*. <* <*. <*. >* >*. >*. <*. >*. <*. >*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. <*. >*. >* >* >*. <* <*. <*. <*. <*. 注1)不等号の向きは横のカテゴリーを基準にした縦のカテゴリーとの比較で. 3.各カテゴリーを予測するもの 「言語表出」 、 「言語理解」 、 「集団行動」 、 「自己コントロ. まず、調査項目100項目を、先行研究をもとに仮カテ. ール」 、 「固執傾向」 、 「感覚統合」 、 「不注意」 、 「衝動性」の. ゴリライズし、この仮カテゴリーの信頼性を検討するため. カテゴリー評価点をそれぞれ基準変数とし、基準変数カテ. に、クロンバックのα係数を算出した。信頼性の低かった. ゴリーを除く15カテゴリーを説明変数として、有意水準. カテゴリーについては、α係数が.70 以上になるようにα係. 5%のステップワイズ法による重回帰分析を行った。結果.
(3) は、表2に示すとおりである。. のであることがわかる。このことは、近年急激に増えてい. 表2)各カテゴリーにおける有意な説明変数 基準変数 言語表出 (R=.929) 言語理解(R=.877) 対人関係性 (R=.947) 集団行動 (R=.860) 自己コントロール (R=.868) 固執傾向( R=.793) 感覚統合 (R=.915) 多動 (R=.801) 攻撃性 (R=.756) 不注意 (R=.806) 衝動性 (R=.881). 説明変数 対人関係性 集団行動 自己コントロール 情緒面 対人関係性 運動 不注意 言語表出 言語表出 不注意 衝動性 自己評価の低さ 固執傾向 対人関係性 対人関係性 自己コントロール 攻撃性 攻撃性 固執傾向 多動 衝動性 操作 集団行動 自己コントロール 多動 自己評価の低さ 不注意. β 0.455 0.447 -0.337 0.322 0.877 0.518 0.276 0.278 0.691 0.263 0.688 0.61 -0.374 0.793 0.952 -0.304 0.209 0.515 0.442 0.419 0.41 0.603 0.3 0.658 0.403 -0.434 0.301. T値 3.004* * 3.779* * -3.405* * 2.630* 9.819* * 4.583* * 3.689* * 2.498* 6.093* * 2.32* 6.304* * 4.254* * - 2.527* 7.022* * 90679* * -2.928* * 2.120* 4.184* * 3.59* * 2.545* 2.49* 4.529* * 2.253* 5.312* * 3.286* * -3.046* * 2.156*. 4.保育経験年数と各カテゴリー評価値との相関関係. る虐待の問題や、子どもの心の健康の問題を反映している ということができるだろう。また、先に挙げた、気になる 内容として非常に高かった「攻撃性」に関しても、「攻撃 性」の問題をただADHDの症状としてだけではなく、子 どもの欲求不満や心理的身体的虐待が背景にあるものも含 めて、注目していることを示唆している。 評価点平均の有意に低かったカテゴリーとしては、「身 体運動」、特に「操作」カテゴリーであることが示された。 つまり、粗大運動を主とする全般的な運動発達面や微細運 動に対しては、保育士はさほど気になっていないことが明 らかになった。学習障害やADHDにおいては、はさみな どの使い方に代表されるコントロールがぎこちないことが 知られている。また、自閉的傾向のある子どもたちでは、 独特な姿勢や動きなどが見られ、これらは、知覚過敏であ. 保育士の保育経験年数とカテゴリー評価点との相関を調. ったり、知覚と運動とのバランスがうまくとれないことに. べるために、各カテゴリーについて、経験年数とのピアソ. よると考えられている。このように、微細運動や粗大運動、. ンの相関係数を算出した。その結果、 「固執傾向」において、. 全身のコントロールなどは軽度発達障害児を把握する上で、. r=.40 であり、有意であった(p<.05) 。また、 「感覚統合」. 重要な側面であり、したがって、保育士に対して、微細運. において、r=.43 であり、有意であった(p<.05) 。なお、. 動や巧緻性の側面への考慮、さらに全身の微妙なコントロ. その他のカテゴリーにおいては有意差がみられなかった。. ールを必要とする協応動作・協調運動に対しての観察およ. Ⅳ【考察】 1.保育士が「気になる」子どもの発達について. び理解を促すことが有効であろう。 また、「対人関係性」および「集団行動」、「言語表出」. 分散分析における多重比較の結果から言えることは、保. カテゴリーは、「多動」、「攻撃性」、「不注意」、「衝. 育士が「多動」 、 「攻撃性」 、 「不注意」などのADHD的側. 動性」カテゴリーに比べて有意に低い結果となっている。. 面について最も気になっているということである。つまり、. 項目内容をみてみると、「視線が合いにくい」、「表情が. 「気に入らないことがあるとすぐに手や足が出て暴力に訴. 乏しい」、「遊び仲間に入れない」、「ごっこ遊びをしな. える」や「急にわけもなく暴力をふるう」といった他者へ. い」、「エコラリアが多い」、「みんなと一緒のことがで. の乱暴な行動、 「絶えずウロウロと移動し落ち着きがない」、. きない」、「会話が一方的で、やりとりができない(相互. 「静かにしていなければならない状況で騒いだりして静か. 性がない)」といった自閉性障害に深く関係すると思われ. に座っていることができない」等の落ち着きのない行動、. る内容、「参加したい気持ちはあるが、他児と衝突してす. 「何度注意しても同じことを繰り返す」、「ぼんやりとし. ぐにはみだしてしまう」、「集団生活での約束事が守れず. ていることが多く人の話が耳に入っていない」等の注意の. 勝手な行動をいつもとる」、「特定の遊び相手(自分がリ. コントロールのできなさ等に対して、保育士が非常に気に. ードできる相手など)としか関係をつくれない」、「貸し. していることを示している。このことは、保育士が、日々. 借りができない」といった、ADHDやLDの子どもによ. の保育のなかで、子どもの安全性や子ども同士の喧嘩によ. く見られる問題の内容となっている。すなわち、子どもの. る怪我の心配に最も注意を配っていることを示唆している。. 他者への関わりかたやその特徴に対しては、「攻撃性」、. 次に、 「情緒面」 、 「自己評価の低さ」カテゴリーにおいて. 「多動」といった、直接子どもの安全に関わる内容に比べ. の平均が有意に高い結果となっていた。項目の内容を見て. ると、あまり目がいっていないことがうかがえる。対人関. みると、「自分に注意を引こうとして周囲の子を巻き込ん. 係性の問題は、発達障害児を把握するうえで、非常に重要. だりいたずらや反抗等の困ったことをする」、「いい子す. な視点であり、保育士に対して、この人とのかかわり方の. ぎる」、「分離不安が強く母親や保育士か離れられない」、. 特徴や不器用さ、独特さに目を向けてもらうことで、新た. 「保育園に行きたがらない」、「自信がなくおどおどした. な視点を提供できることが考えられる。. 感じがある」、「周囲の意向や評価を気にしすぎる」など、. 2.保育士が、関連させて捉えている子どもの発達内容. 養育環境による愛着の問題や子どもの心の問題に関するも. 重回帰分析の結果から端的に言えることは、保育士が子.
(4) どもの発達の中で関連させて捉えている内容は、発達障害. できるという意味で、保育コンサルテーションを行ってい. 臨床においても関係性が深いと考えられるものであり、保. くうえで大いに参考になる。. 育士が子どもの発達を見る際の鋭い観察眼を持っていると. 3.保育士の保育経験と「気になる」発達内容との関係. いうことである。さらには、保育士特有の関連のさせかた. 保育経験と各カテゴリーとの相関の分析において、 「固執. も見られ、非常に興味深い結果がみられた。以下、注目す. 傾向」 、 「感覚統合」カテゴリーが正の相関を示す結果とな. べき結果について述べる。. った。この結果は、保育経験が長いほど、 「固執傾向」およ. 表2から、 「攻撃性」 、 「衝動性」カテゴリーでは、 「多動」. び「感覚統合」の発達をより気にしているということを示. カテゴリーが同じく説明変数として有意であり、 「多動」に. している。つまり、自閉性障害特有のこだわり行動や、触. おいては「攻撃性」カテゴリーが説明変数として有意であ. 角防衛、自己刺激的行動の問題について、保育経験者であ. った。したがって、保育士が「攻撃性」 、 「衝動性」 、 「多動」. るほど、より目を向けているということである。このこと. の三カテゴリーを深く関係づけて捉えていることが明らか. は、先の平均の比較において、 「固執傾向」 、 「感覚統合」が. となった。それに対して、 「不注意」では、 「多動」 、 「攻撃. 他に比べて有意に低かったことを考えると、経験のある保. 性」 、 「衝動性」カテゴリーのいずれも説明変数として有意. 育士は、保育士の中で相対的に占める割合は少ないが、研. ではなく、 「操作」 、 「集団行動」が説明変数として選出され. 修などを通して自閉性障害への専門的知識を持っており、. ていた。つまり、保育士が、 「多動」 ・ 「攻撃性」 ・ 「衝動性」. それを子どもの具体的行動と結びつけて捉えることが出来. と、 「不注意」とは別のものからなると捉えていることを示. ていることを示唆しているのではないだろうか。. している。このことは、DSM−Ⅳなどにおける「不注意. 4.今後の課題と展望. 優勢型」、「多動―衝動性優勢型」という公式のADHD. 今回は、最も相談依頼の多い年少児クラスの子どもに限. 診断基準を裏付ける結果であり、保育士が実践を通しての. って、保育士の「気になる」発達内容について検討した。. 確かな観察眼を有していることが示されることとなった。. 今後は、更に月齢別に発達内容を整理していくことで、保. また、 「衝動性」 、 「自己評価の低さ」が高く気になり、逆. 育援助におけるアセスメントの際に有効な発達チェックリ. に「固執傾向」についてあまり気にならない保育士は、 「自. ストを作成し、保育士の理解しやすい子どもの発達プロフ. 己コントロール」を気にする程度が高いことが示された。. ィールを提示することができると考える。保育園場面に即. これは、 「順番を待つことが難しい」、「他児らの遊びをじ. した発達検査は、これまでも皆無であり、今後の保育援助. ゃましたり、干渉したりする」という衝動性の問題、「自. において、こうした発達検査の開発は、社会的にも非常に. 信がなくおどおどした感じがある」、「周囲の意向や評価. ニーズの高いものであるといえる。また、保育士に「気に. を気にしすぎる」といった子どもの心の問題が、「待つこ. なる」内容をチェックしてもらうことで、子どもの発達状. とが出来ない」、「人のものを勝手に取ったり使ったりす. 況の把握と同時に、その保育士自身の気になっている内容. る」という自己統制の能力に関係すると捉えていることを. を踏まえた援助にもつながる。 「気になる」という概念には、. 示す。反対に、「特定の手触りにこだわる」などのこだわ. 保育士の負担感をも反映されていることが考えられ、子ど. り行動には関係がないと考えていることを示している。衝. もへの援助だけでなく、保育士自身を支えるという意味で. 動性が自己統制に深く関与していることは容易に予想でき. 重要である。. るが、保育士が、子どもの自己評価の低さの問題と自己コ. また、本研究においては、 「気になる」行動を、発達障害. ントロールの問題とを関連づけて捉えていることは興味深. の視点から論じてきたが、子どもの示す「気になる」行動. い。これは、保育の専門家ならではの捉え方、考え方が反. を、 「障害」の側面のみに偏って捉えることは危険だという. 映されていることが考えられる。. 意見も大いに考えられる。しかし、 「気になる」行動をその. 特に、 「対人関係性」については、 「言語表出」 、 「言語理解」 、. 子が保育者に示している「ニーズ」であると捉えて、適切. 「固執傾向」 、 「感覚統合」カテゴリーに共通して、説明変. な対応を考えていくことは、今後の保育臨床において非常. 数として選出されていた。したがって、 「対人関係性」を高. に大切な視点ではないだろうか。障害をもとうがもつまい. く気にする保育士は、同時に「言語表出」 、 「言語理解」 、 「固. が、子どもはさまざまな問題行動を示し、その多くは、子. 執傾向」 、 「感覚統合」についても気になっている可能性が. どもたちの大人へ向けての何らかのサインであると考えら. 高いことが明らかになった。このことは、保育士の、対人. れる。 「気になる」行動が、後に障害ではなかったにせよ、. 関係上の問題への注意の向け方を見ることで、同時にコミ. その時点での子どものニーズに対して、さまざまな視点か. ュニケーションの問題、こだわり行動や触覚過敏などの自. ら適切な対応を考えていくことが今後の保育コンサルテー. 閉性特有の問題にも目を向けているかどうかを知ることが. ションにとって建設的ではないだろうか。.
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