ネガティブな出来事の意味づけ方に関する一研究 [ PDF
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(2) Ⅱ方法. →自己卑下に関する項目は、フロア効果により削られたもの. 調査対象と調査時期:. が多かった。ネガティブな出来事を経験してきた自分に対し. 2002年 10月下旬から12月中旬に、F県内の 4年制 K 大学. て、”自分はダメだ、自分が悪い“と捉えることは一時的なも. に通う大学生男女 300名( 男性 133名、女性 167名 平均年. のなのかもしれない( 面接調査では、その当時は多少あった. 齢 19.27 SD1.03) に質問紙調査を実施。また、質的な検討. が今はない、との回答が多かった)。同じ否定的な捉え方で. を行うため、同大学生37名( 男性 16 名、女性 21名 平均年. も,“自分は他者とは違う”という部分は継続的に取り入れら. 齢 20.18 SD1.71) に筆者との半構造化面接調査を行った。. れていく可能性がある。 項目. 質問内容:. 因子1因子2 因子3 共通 性 .791 .146 .071 .652. ・ ネガティブな出来事の選定. その経験をしてきた自分は頑張り屋だなぁと感じる. ライフライン(人生を振り返って、気分の浮き沈みを一 本の線で表現してもらうもの)を用いてイメージアップ. その経験をしてきた自分を褒めるに値する人間だと感じ .728 .283 -.003 .611 る .693 .281 -.089 .567 その経験をしてきた自分を誇りに感じる. をした後、過去のつらかった出来事として、思い出される印. その経験をしてきた自分は強いなぁと感じる. 象的なものの中から、一つを選んでもらう。. その経験をしてきた自分はやればできる人間だと感じる .655 .321 -.024 .533. ・ 経過時間. その経験をしてきた自分を大事に思ってくれる人はいる .227 .726 -.040 .580 と感じる その経験をしてきた自分は他の人とのつながりを感じる .206 .688 -.221 .565. ・ 出来事の内容の種類. .665 .095 -.008 .452. その経験をしてきた自分は他の人に大事にされていると .182 .622 -.020 .421 感じる その経験をしてきた自分は一人ぼっちではないと感じる .229 .621 -.125 .454. 学業・進路に関すること、 友人・対人関係に関すること、家 族に関すること、事故や病気に関すること、恋愛に関するこ. その経験をしてきた自分を分かってくれる人がいると感 .231 じる その経験をしてきた自分は他の人とは距離があると感じ -.021 る その経験をしてきた自分は他の人とうまくやっていけな -.152 いと感じる .052 その経験をしてきた自分は孤独だと感じる. と、その他、の中から当てはまるものを一つ選んでもらう。 ・ 「ネガティブな出来事の意味づけ方」 卒論時の分類から、当てはまるものを一つ選んでもらう。 ・ 「ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え 方」 尺度項目. .563 -.298 .459 .018 .793 .629 -.022 .685 .493 -.254 .611 .441. *その経験をしてきた自分は他の人とそんなに変わらな -.079 .192 -.502 .295 いと感じる 30.6 13.3 7.05 51.0 寄与率 %. Hermans らの先行研究、北山・唐澤(1995)の日本的自己の 測定項目、孤独感尺度( 落合、1989) 自尊心尺度を参考に、. Table2.『ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え方』. 自己高揚・ 自己卑下・ 他者とのつながり・ 孤独 に基づく自分. ②「 ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え方. に対する捉え方に関する項目を作成。. 尺度」 と「 ネガティブな出来事の意味づけ方」 との関連。. ・ 個人の心理特性∼『 精神的回復力』 尺度. 「ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え方尺. 精神的回復力尺度( 小塩・ 中谷・ 金子・ 長峰,2002) を使用。. 度」のそれぞれの因子ごとに、その捉え方を強く感じている. ・ 他者との相互作用∼『 他者からの支え』 尺度. ほど高得点となるように得点化し、それらの得点に関して「 ネ. 心理的支え尺度(串崎,1998)の中から、他者の存在が認め. ガティブな出来事の意味づけ方」 の 8グループによる分散分. られる項目を抜粋した。. 析を行った( 下位検定: Tukey 法) 。 * 「自分を褒める捉え方」得点. Ⅲ結果と考察. 8グル ー フ ゚による有意な主効果が見られた(F(7,151)=13.11. 第一研究目的:「ネガティブな出来事を経験してきた自分に. p<.001)。下位検定で,“G 私を成長させてくれたもの”と“F. 対する捉え方」 を調査する。. いつか役立つかもしれないもの”を除くその他全部の間(G. ①「ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え. >F以外すべて)、“Fいつか役立つかもしれないもの”と“E. 方」尺度の作成。. ただの思い出” ( F>E) に有意な差が認められた( Figure1) 。. 「ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え方」. * 「自分を分かってくれる他者がいるという捉え方」得点. 尺度30項目に対して、天井・フロア効果にかかる項目を削. 8グル ー フ ゚による有意な主効果が見られた(F(7,56)=5.27 p. 除し、主因子法バリマックス回転による因子分析を実施した. <.001) 。下位検定では,“ G 私を成長させてくれたもの” と“ A. (Table2)。自己高揚に関する項目からなる第一因子は「自. いつまでも私を苦しめるもの”,“B どうなるか分からないも. 分を褒める捉え方」、他者とのつながりに関する項目からな. の” ,“ E ただの思い出” の間に( G>A,B,E) 、および“ C いつ. る第二因子は「自分を分かってくれる他者がいるという捉え. か乗り越えたいもの”と “A いつまでも私を苦しめるもの”の. 方」 、主に孤独に関する項目からなる第三因子は「 自分は他. 間に( C>A) それぞれ有意な差が認められた( Figure2) 。. 者と距離があるという捉え方」 と命名した。. 2.
(3) * 「自分は他者と距離があるという捉え方」得点. と」 よりも経過時間が短かった( F( 5,180) =33,p<.001) 。. 8グル ー フ ゚による有意な主効果が見られた。(F(7,30)=4.37. →経過時間の結果は,ネガティブな出来事を経験して時間. p<.001)。下位検定では,“G 私を成長させてくれたもの”と. が経つほどに肯定的に捉えることができるようになるというよ. “ A いつまでも私を苦しめるもの” ,“ B どうなるか分からないも. り、むしろ時間が経つほどに、敢えて肯定的に意味づけるこ. の” ,“ C いつか乗り越えたいもの”と“ G 私を成長させてくれ. ともなくなるというようなものであった( 面接調査では、もともと. たもの”の間に(A,B,C>G),“A いつまでも私を苦しめるも. 出来事自体がそれほど大したことではなかった、という部分. の” と“ E ただの思い出” の間に( A>E) それぞれ有意な差が. しか聞かれていない)。出来事の内容の種類では,「学業・. 認められた( Figure3) 。. 進路に関すること」 は K 大学に合格したということによって、. →「自分は他者と距離があるという捉え方」を持つとき、その. 「友人・対人関係に関すること」よりも、はっきりした解決があ. ネガティブな出来事で苦しんでおり,思い出してつらいという. るため、意味づけ方が好ましいものになっているのではない. 意味づけ方をしていた。このことは、自分が他者と違って異. かと思われる。しかし、これらの点については、出来事の内. 端であり、うまくやっていけない、孤独な感じが本人を苦める. 容の種類における経過時間で見られた差のことを考えあわ. ということを示唆しているのではないか。一方、「自分を褒め. せると,お互いの結果に引きずられていると思われる。. る捉え方」 を持つとき、ネガティブな出来事からも何かを得る. ・『精神的回復力』得点. ことができるというような意味づけ方に至っており、「 自分を分. 8 グループにおいて、『 精神的回復力』 得点に有意な差が見. かってくれる他者がいるという捉え方」を持つとき、ネガティ. られた( F( 7,491) =6.38 p<.001) 。下位検定によると、“ B ど. ブな出来事を今はつらいが乗り越えていきたい、という意味. うなるかわからないもの” “E ただの思い出” “ そのうち忘れる. づけ方をしていた。これら二つの捉え方は、ネガティブな出. もの”と“G 私を成長させてくれたもの” の間と(B,E<G p<.. 来事を克服していく過程において重要な捉え方になるのか. 01、D<G p<.05) 、“ B どうなるかわからないもの” “ E ただの. もしれない。. 思い出” と“ F いつか役立つかもしれないもの” の間に( B,E< F p<.05)、それぞれ有意な差が見られた(Figure5)。なお、. 第二研究目的: 「 ネガティブな出来事の意味づけ方」 ,およ. 各因子ごとに分けてみたところ、『感情調整能力』には有意. び「 ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え. な差が見られなかった。. 方」 に影響を与えるものを調査する。. →個人の心理特性である『 精神的回復力』 得点に関しては、. ①「ネガティブな出来事の意味づけ方」について. 特に『肯定的未来指向性』と『新規性追求』にのみその差が. 8グループにおいて、 経過時間、 『精神的回復力』 得点、 『他. 見られたことから,『 精神的回復力』 はネガティブな出来事で. 者からの支え』得点、それぞれに関して分散分析を行っ. 苦しまなくなることに直接的な影響は与えていないが,そこ. 2. た。出来事の内容の種類については,χ 検定を行った。. から新しい意味を見出して一回り成長していこうという積極. ・経過時間、出来事の内容の種類. 性に重要であり,その意味でもしかしたらネガティブな出来. 8 グループにおいて、経過時間に有意な差が見られた. 事を克服していくことにも影響を与えるかもしれないと思われ. ( F(7,23)=2.98 p<.01) 。下位検定では、“ Eただの思い出” と. る。面接調査では、まだその出来事でつらいときにも、そこか. “G私を成長させてくれたもの”の間にのみ有意な差が認め. ら何かを得よう、成長しようと思うことで乗り越えていく(いっ. られた(E>G p<.05) (Figure4)。また,内容の種類と「ネガ. た) との言及が見られている。. 2. ティブな出来事の意味づけ方」 のクロス集計表を作成し,χ. ・『他者からの支え』得点. 2 (24). 検定をおこなった結果,人数の偏りは優位であった(χ. 8 グループにおいて、『 他者からの支え』 得点に有意な差が. =42.81,p<.01)。残差分析によると(Table3),「学業・進路. 見られた(F(7,275)=2.78 p<.01)。多重比較によると、“A. に関すること」においては,“私を成長させてくれたもの”の. いつまでも私を苦しめるもの”、“B どうなるか分からないも. 残差がプラスに(p<.01),“そのうち忘れるもの”の残差がマ. の”と“G 私を成長させてくれたもの”の間に(A,B<G p. イナスに有意であった( p<.05) 。「 友人・ 対人関係に関するこ. <.05) 、有意な差が見られた( Figure6) 。. と」においては,“私を成長させてくれもの”の残差がマイナ. →『 他者からの支え』 が少ないことは,ネガティブな出来事に. スに,“ただの思い出”と“そのうち忘れるもの”の残差がプラ. 苦しみ肯定的な見込みや乗り越えていこうとする気持ちも感. スに有意であった(p<.01)。また,ネガティブな出来事の内. じられないことにつながっていると言える。しかし、それが『 他. 容の種類における経過時間に関しても有意な差が見られ,. 者からの支え』が実際に少ないのか、求めない・重要視しな. 「学業に関すること」と「恋愛に関すること」が「友人・対人関. いのかどうかまでは分かっていない。面接調査では、他者を. 係に関すること」「家族に関すること」「病気・事故に関するこ. 支えにしていこうとすること自体が少ないようであった。. 3.
(4) ②「ネガティブな出来事を経験してきた自分に対する捉え. 感情の浮き沈みが激しく安定していない者は,他者からの. 方」について. 支えもその場限りの不安定なものに感じられるのかもしれな. 各因子ごとの得点に関して、経過時間、『他者からの支え』. い。ネガティブな出来事の内容による影響が一部で見られ. 得点、及び『精神的回復力』得点の三要因の分散分析を実. たが、「学業に関すること」では大学浪人をしたことを選んだ. 施した。また,出来事の内容の種類において、各因子ごとの. ものが多く,その後勉強したことがはっきりしていているため,. 得点に関して分散分析を行っている。. その努力を自分で褒めることができ、浪人や失恋などは一. ・「自分を褒める捉え方」得点. 般に多くの人が経験することであるため,それほど自分が他. 上述の三要因の交互作用はいずれも認められなかった。. の人と距離があるという感じでつらくなることが少なかったの. 『他者からの支え』の高低群においてのみ有意な差が見ら. ではないかと思われる。. れた(F(1,365)=26.31. H>L p<.001 Figure7)。また,内. 容 の 種 類 に よる差 が 、一 部 で 見 られ た(F(5,82)=6.04. 第二研究総合考察. p<.001)。下位検定によると,「学業・進路に関すること」が. 経過時間と『 精神的回復力』の肯定的な未来志向性や積. 「友人・対人関係に関すること」「家族に関すること」よりも有. 極性のあるなしが,「ネガティブな出来事の意味づけ方」に. 意に得点が高かった( p<.01) 。. は影響を持っていたのに比べて,「ネガティブな出来事を経. ・「自分を分かってくれる他者はいるという捉え方」得点. 験してきた自分に対する捉え方」 に対してはそれらの影響は. 上述の三要因の交互作用はいずれも認められなかった。そ. 見られなかった。肯定的な未来志向や積極性というのは,そ. して,『他者からの支え』得点の 高群と低群の間にのみ有. の人の期待や意志に通じるところであるため,「ネガティブな. 意な差が見られた( F(1,599)=54.59 H>Lp<.001 Figure8) 。. 出来事の意味づけ方」にはよりその人の期待や意志が反映. *『精神回復力』の下位因子のそれぞれに分けて上記の分. されていると言えるのではないだろうか。. 析を行ったところ、『感情調整能力』に限っては、「自分を褒. また、『他者からの支え』が多いことは、ネガティブ. める捉え方」得点(F(1,85)=7.41 p<.01)と「自分を分かってく. な出来事で苦しんでいても乗り越えていこうと思えるこ. れる他者はいるという捉え方」得点(F(1,34)=3.09 p<.10)に. とや、好ましい方向での自分に対する捉え方につながる. おいて、『他者からの支え』得点との交互作用が見られた。. ことが分かった。面接調査によると、他者との相互作用. 多重比較によると、『 感情調整能力』 の高群に限って、『 他者. とは、他者に語るという直接的なものだけでなく、いっ. からの支え』 の多少による差が見られた( H>L p<.05 ) 。. しょに頑張る人がいたり、同じような境遇の人の話を聞. ・「自分は他者と距離があるという捉え方」得点. いたり見たり、というような間接的なものも含まれてい. 上述の三要因の交互作用はいずれも認められなかった。. ることが語られている。. 『 他者からの支え』 の高群と低群においてのみ,有意な差が 見られた(F(1,149)=21.86 L>H p<.001 Figure9)。また,. Ⅳ最後に. 内 容 の種 類による差 が、一 部 で見 られた(F(5,29)=4.07. 面接調査では、話すことについての抵抗感(話す必要がな. p<.001)。下位検定によると,「友人・ 対人関係に関すること」. いということも含む)や、その抵抗感に応じて人や場を選ん. が「学業・進路に感すること」「恋愛に関すること」よりも有意. だり,話し方や話す程度も調整したりしながら,うまく使い分け. に高得点であった( p<.01) 。. て話すことなどが多く語られた。そのように、うまく人に話 すことも、また直接的には話さないでいることも、自分. →『 他者からの支え』 得点は、いずれの「 ネガティブな出来事. 一人で解決しようとすることも、それぞれ自分なりの対. を経験してきた自分に対する捉え方」 得点に対しても影響を. 処であると思われる。心理臨床場面も、一つの他者との相. 及ぼしており、それらはより好ましい方向への影響であった。. 互作用の場であるが、クライエントはそれぞれ話すことへの. このことは、今回扱った感情が、他者との関係の中で現れる. 抵抗感や自分なりの対処を持っているはずであり、カウンセ. ものが多かったので、当然の結果とも考えられる。ただ、「自. ラーはその部分を大事にしていくことが求められるのではな. 分を褒める捉え方」 に関しても『 他者からの支え』 のみが有意. いだろうか。カウンセラーは,「出来事の体験に別の意味を. な影響をもっていたことから、他者から支えられることが肯定. 汲み取っていくための援助者」と捉えられることもあるが. 的な自己評価につながっていくと考えられる。また、『 精神的. ( Spence1982;Schafer1992;河 1993) 、「 素材の意味は誰がそ. 回復力』 のうち『 感情調整能力』 が低いと,『 他者からの支え』. れを聞いているかによって多く左右される」(Spence, 1982). があっても「自分を褒める捉え方」や「自分を分かってくれる. のであり、聞き方の部分についてはこれからの課題である。. 他者はいるという捉え方」得点が高くならなかったことから,. 4.
(5) 5.
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