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Academic year: 2021

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様式4)

学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

笠木 真人 印

(学位論文のタイトル)

Association between scale-free brain dynamics and behavioral perfo rmance –Functional MRI study in resting state and face processing ta sk

(脳活動のスケールフリーな指標と課題施行中の行動について -安静時と 顔認識課題時での機能的MRI研究)

(学位論文の要旨)2,000字程度、A4判

非侵襲的な計測で脳活動を評価する手法のうちのひとつに、脳活動の信号から算出され るべき乗数(power-low exponent; PLE)を用いるものがある。PLE は特定の周波数スケール に依存しないことからスケールフリーな指標であり、脳活動を総体的に把握できる可能性 がある指標として精神疾患の病態解明や病状評価に寄与するものと期待されている。本指 標について機能的 magnetic resonance imaging (MRI)を用いた研究では、認知機能課題施 行時の PLE は安静時よりも低いという報告がある。しかし、安静時や課題施行時の PLE と、

課題施行中のより具体的な行動の関係については未だわかっていない。

本研究では、認知機能課題中に活動する脳部位での安静時・課題施行時の PLE は課題時の 行動指標と関連するという仮説を立て、機能的 MRI を用いて安静時と課題施行時の Blood Oxidant Level Dependence (BOLD) 信号を測定して PLE の算出を行い、同時に課題の平均 反応時間(mean reaction time; mRT)を記録して行動指標とし、PLE と mRT の関係を調べた。

15人の健常男性(21歳から37歳、平均26.5歳)を被験者とした。本研究は群馬大 学臨床研究部倫理委員会の承認を得ており、全ての被験者は説明の上で同意書に署名した。

画像撮影は MRI 構造画像として高解像度 T1 強調画像を、また機能的 MRI 画像は echo-plan ar imaging シークエンスで撮像を行い、安静時・課題施行時の機能的 MRI は4分撮像した。

課題は顔認知課題を行った。1ブロック20秒のブロックデザインで、被験者は顔認知ブロ ックでは2つ提示される顔のうち表情があるほうのボタンを、コントロールブロックでは 2つ提示される四角い図形のうち大きいほうのボタンを押すよう指示され課題を行い、画 像が提示されてから被験者がボタンを押すまでの時間を記録し反応時間とした。この課題 遂行時に撮像した機能的 MRI 画像を解析し、顔認識時に有意に BOLD 信号が変化した部分を 関心領域に設定した。この関心領域でパワースペクトラムの描出を行い、これを対数変換す ることで PLE 算出を行った。各領域での PLE 変化をペア T 検定で評価した。PLE と課題遂行 時の反応時間についてピアソンの相関解析をもちいて解析を行った。顔認識課題時では内

(2)

側前頭前野(medial-Prefrontal Cortex; mPFC), 後部帯状回(posterior cingulate corte x; PCC)で有意な BOLD 信号の低下を認め、両側扁桃体(amygdala; AMYG),紡錘状回(fusifor m face area; FFA)では有意な BOL 信号の上昇を認めた。mPFC では課題時の PLE が安静時に 比べて有意に低く、また左 FFA の PLE は課題時の PLE が安静時に比べて有意に高かった。P CC や AMYG,右 FFA では安静時と課題時で PLE の有意な変化を認めなかった。ピアソンの相 関解析を用いた解析結果では、mPFC において、安静時の PLE と mRT が有意な負の相関を示 した(r = –0.688; 95% CI: –0.239 to –0.902; p = 0.005)。同部位において、課題時の P LE とは有意な相関は見られなかった。また、同部位において PLE の安静時と課題時の差を とったものと mRT が有意な負の相関を示した(r = –0.659; 95% CI: –0.352 to –0.869; p

= 0.008)。他の部位については PLE と mRT の有意な相関は見られなかった。

本研究では mPFC において、(1)安静時と比較して、課題時の PLE は有意に低下した (2)安 静時の PLE と顔認識課題時の mRT は有意な負の相関を示した (3)安静時と課題時の PLE の 差分と顔認識課題時の mRT は有意な負の相関を示した ことが結果として得られた。これ はスケールフリーな脳活動の変化が顔認識課題の実行に強く関与していることを示唆する。

これらの結果が mPFC のみで観察され、他の部位については見られなかったことについて は、mPFC での PLE が表情や自己意識の処理を反映するという先行研究を併せると、本研究 でもちいた顔認識課題の処理に関する脳機能の特性によるものと考えられる。

結果を総合して考察すると、安静時に大きい PLE が課題時に小さく変化することで顔認 知がスムーズに行われることが示唆される。それは mRT が安静時と課題時の PLE の差分と 有意に相関することからも裏付けられる。精神疾患においては安静時の PLE が低下すると いう報告があり、今回観察されたような安静時と課題時の PLE 変化が起こりづらいことが 予想される。この点について研究を進め、疾患ごとの違いや病状評価尺度との関連を明らか にすることで疾患機序の解明や定量的な病状評価が行えるようしたいと考えている。

本研究の限界点は、機能的 MRI の撮像時間が 4 分と短く正確な PLE を算出するには S/N 比が比較的大きいこと、ブロック課題の周波数に関連したパワースペクトラムのピークが F FA にみられること、顔認識課題時の PLE 算出に課題部とコントロール部の両方のデータを 用いていることなどが挙げられる。

本研究で安静時 PLE と、安静時 PLE と課題時 PLE の差分が課題実行の指標としての反応時 間と関連することが示された。この結果は脳内の自発的でスケールフリーな系が、顔認識課 題時の行動や課題に誘発される脳内の変化に大きな役割を果たしていることを示唆する。

今後さらに研究を進めることで疾患機序の解明や病状の定量的評価ができることを目指し ている。

参照

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