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Journal of the Society of Photography and Imaging of Japan, vol 83, p22(2020)
本誌 1 号恒例となった画像保存特集をお届けする.ご存知 の方も多いと思うが,この特集は,毎年,秋に開催される画 像保存セミナーの講演を中心に構成している.本年度は,昨 年 11 月 29 日に開催され盛況のうちに終了した. 今回の特集は,セミナーでの 6 つの講演 * をもとに構成し た.以下,簡単に著者と内容について紹介したい. 日本大学の高橋先生が,画像保存・写真史の第一人者であ ることは,いまさら書くまでもないかもしれない.今回は, ネガ原板の重要性と,それをプリント,活用する場合に同時 代的な技法を用いることの意義について解説いただいた.画 像保存において,写真技法を知ることの重要性についても, あらためて強調されている.また,記事にある湿板写真が極 めて高い鮮鋭性を持つことと,鶏卵紙が非常に広い露光域を 持つことの説明は,専門外の方には,あまり知られていない 貴重な情報となるのではないだろうか. 画像保存の実務に従事されている堀田氏からは,写真の劣 化要因についての基礎的な解説とともに,ご自身が研修を積 まれたシカゴ美術館の写真保存・修復の現状について紹介い ただいた.現場での実体験にもとづく解説は,多くの方に有 益なものとなるだろう.さらに,昨今多発する災害も背景と した,保存施設に画像保存を専門とするコンサバターを置く ことの重要性についての提言は,この分野以外の方にも広く 耳を傾けていただきたいと願わずにおれない. オリンパスの吉田氏からは,「文化財写真の保存に関する ガイドライン」の改訂内容について解説いただいた.このガ イドラインは,写真学会と文化財写真技術研究会のジョイン ト委員会で審議,制定されたもので,氏は,その主査を務め られている.今回の改訂でも引き継がれたガイドラインの基 本的な考え方について紹介いただくとともに,画像技術の発 展にともなう改訂の要点を解説いただいた.改訂作業は,現 在,最終段階とのこと.発行時には,本会ホームページに告 知されるので,時々チェックしていただければと思う. 綿引氏と,大関・山田の両氏からは,ディジタルアーカイ ブにおいて重要な,オリジナルの色情報を正確に記録する具 体的な手法についてそれぞれ解説いただいた. 綿引氏は,株式会社インフォマージュで,紙資料を中心と したディジタル化作業の実務に従事されている.ICC プロ ファイルを作成することで,オリジナルとの色差が大幅に減 らせることが実例から示されるとともに,プロファイルを作 成する際の注意事項等について,現場の立場からわかりやす くまとめていただいた. 国立映画アーカイブの大関氏,富士フイルムの山田氏から は,分光情報の主成分分析をもちいたディジタル化手法を映 画フィルムに適用した事例を解説いただいた.この手法では, ディジタル入力値からフィルムの分光透過率を推定でき,よ り正確な色再現が可能となる. 東京藝術大学の平先生には,芸術や文化財一般の保存に対 し,示唆に富んだ記事をまとめていただいた.形ある “もの” の保存が優先されることはもちろんだが,重要なのは,芸術 や文化財そのものが「継承」されること,との指摘には,あ らためて気づかされるものがあるのではないだろうか.芸術 としての写真の保存についても,考える機会になればと思う ものだ. 映画フィルム保存関連の事業を展開されている足柄製作所 の山本氏には,セミナーでの講演内容を一般論文としてまと め直し,ご投稿いただいた.三酢酸セルロース(TAC)フィ ルムベースの劣化状態を多角的な分析手法から判定する手法 の提案で,重要な情報,成果だと思う.診断サービス等への 実用化も期待したいものだ. 最後に,今回,セミナー開催時期との関係で原稿締め切り までの期間が短くなってしまった中,記事をご執筆くださっ たみなさまに,重ねてお礼を申し上げます.あわせて,セミ ナーの企画,運営に当たられた,清野実行委員長(IMAGICA Lab.)はじめ,実行委員各位に感謝致します. *
令和 2 年 1 月 10 日受付・受理 Received and accepted 10th January, 2020 カメラ・写真技術解説家
Freelance Lecturer of Camera and Imaging
セミナーでは,綿引氏と,大関・山田両氏の講演は,ひとつにまとめていたが,掲載にあたっては,別々の記事とした.
特 集:画像保存
画像保存 -特集にあたって-
A Foreword to Image Conservation Special Issue