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<地域研究>家事労働の生産性評価

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1. 家事労働の生産性評価 1725203 松葉 駿平. 指導教員 居城 琢. 第 1章 はじめに 第 1節 本研究の目的. 本研究の目的は、世帯収入と家事労働の. 生産性の関係性について議論した上で、世. 帯ごとの家事労働生産性をジェネラリスト. 賃金に反映する方法論を考察することであ. る。. 世帯分類ごとの家事労働生産性を指標化. し、その指標を反映した修正ジェネラリス. ト賃金の算出を試みる。. 第 2節 先行研究の整理. 第 1項 家事労働の定義. 先行研究では、国連欧州経済委員会. (UNECE)が 2017 年に発表、経済社会総. 合研究所国民経済計算部翻訳(2018)の、. 「Guide on Valuing Unpaid Household. Service Work(無償の家計サービス生産の. 貨幣評価についての指針)」(以降「指針」. とする)における、家事労働の定義と、そ. の貨幣評価法、及び「指針」にて紹介され. ているフィンランドの事例研究について触. れる。 . 「指針」において、「一般的生産境界内. の活動」の中でも、「SNA 生産境界内の活. 動」に含まれないもののなかで自己の最終. 使用のためのサービス提供活動を、家事労. 働に含むとしている(図 1-2-1-1)。. <図 1-2-1-1>. (UNECE(2017)「指針」 図 2-1:生産形態の枠組みと SNA との関係、2008 年 を引用). 「自己使用のためのサービス生産活動」. の定義から、「指針」においては、家事労. 働に含まれる活動の事例として、家事(炊. 事、掃除、洗濯、縫物・編物、家庭雑. 事)、介護・看護、育児、買物が挙げられ. ている。. 第 2項 ジェネラリスト賃金を用いた投入. 評価法. また、「指針」において、家事労働の貨. 幣評価法として、産出評価法、投入評価法. が挙げられている。産出評価法か、投入評. 価法かについては、「この「指針」では、. 労働や資本、その他原材料に関する情報が. 入手できることを考慮し、自己使用のため. のサービス生産の評価に、投入による方法. を用いることを勧告しています。」と述べ. られている。. 投入評価法の構成要素は、図 1-2-2-1 に. 掲載されている。. <図 1-2-2-1>. 2. (UNECE(2017)「指針」 表 3-1:投入による計測:ガイドラインの要約 を引用). 第 3項 フィンランドの研究. 「指針」の「7.06 家計の可処分所得と. 無償の家計サービス生産との関係について. ーフィンランド」にて、”Household. Production and Consumption in Finland. 2001 Household Satellite Account”の. Chapter6、”Household production in. different types ofhouseholds”. (Tailastokeskus Statistikcentralen. Statistics Finland、National Consumer. Research Center、2006、pp47-60)が紹. 介されている。. この研究では、世帯分類ごとの家事労働. の貨幣評価額の違いについて分析してお. り、その中で、世帯収入と家事労働の貨幣. 評価額の関係性について触れている箇所が. ある。. 「指針」において、フィンランドの研究. は、「フィンランドの事例では、一般に、. 収入では自己使用のためのサービス生産の. 量を説明できないと結論付けています。全. 体としては、自己使用のためのサービス生. 産を外部から調達しようとするとき、適当. な代替物が手に入る必要があると示してい. ます。もし手に入らなければ、家計の収入. によって自己使用のためのサービス生産が. 大きく変わることはありません。」とまと. められている。. 第 4項 日本の家事労働関連の研究. 内閣府経済社会総合研究所の「無償労働. の貨幣評価」(2018)は、2016 年の社会生. 活基本調査の公表後、「方針」で紹介され. た概念や手法に沿って、日本の家事労働の. 貨幣評価を行っている。この研究において. は、男女別、年齢階層別の家事労働時間に. ついては言及されているが、世帯単位での. 調査、および世帯収入ごとの調査について. は公表されていない。. 第 3節 本研究の意義. 本研究の意義は、日本における世帯収入. ごとの家事労働生産性の実態を明らかにで. きる点にある。フィンランドの 2001 年時. 点の研究では、世帯収入によって家事労働. 時間は説明できないと結論付けられている. が、20 年前の研究であり、新たな家電や. 家事関連サービスの登場によって家事労働. の環境が変化していると考えられる。ま. た、フィンランドで用いられていた年間収. 入五分位ではなく、12 段階の収入区分ご. との家事労働時間を比較することで、より. 詳細な結論を見出すことができる。. 第 4節 研究の仮説. 本研究における仮説は、「世帯収入が高. くなるほど、家事関連消費額が増加し、家. 事労働生産性が向上する」というものであ. る。「家事労働消費額」は、前述した投入. 評価法で用いられる「固定資本減耗」と. 「中間消費」を足し合わせた額である。世. 帯年収が高いほど、より高付加価値な家事. 関連の財・サービスを調達する余裕がある. ため、「家事関連消費額」の増加が家事労. 働時間を短縮し、家事労働生産性の向上に. 寄与すると考える。また、高収入の世帯ほ. 3. ど家事労働時間を短縮するという考え方. は、家事労働の機会費用を考えたときに合. 理的である。. 第 5節 研究手法 本研究の手法は、3 段階に分けられる。. 第 1 段階は、「世帯収入が高いほど家事労. 働生産性は高いか」の検証、第 2 段階は. 「世帯収入が多いほど家事関連消費額が多. いのか」の検証、第 3 段階は「家事労働生. 産性が高いほど家事関連消費額が多いの. か」の検証である。これらを組み合わせる. ことで、「世帯収入が高いほど、家事関連. 消費が多くなり、家事労働生産性が高くな. る」という仮説を検証可能となる。. 「世帯収入が高いほど家事労働生産性は. 高いか」の検証に関しては、「世帯の総家. 事労働時間は、世帯人員が増えるにつれて. 増加する」という前提のもとに議論を進め. ていく。. また、この「家事労働生産性指標」を反. 映した、修正ジェネラリスト賃金を算出す. る。具体的には、「家事労働生産性指標」. が 0 の世帯の家事労働の賃金を、2016 年. のジェネラリスト賃金率である 1,090 円/. 時と仮定し、この 1,090 円/時に、家事労. 働生産性を掛け合わせたものを、「修正ジ. ェネラリスト賃金」として算出する。ま. た、この修正ジェネラリスト賃金と、各世. 帯年収ごとの年間家事労働時間を掛け合わ. せた、「修正帰属報酬」も算出し、生産性. を加味したときの、世帯収入ごとの家事労. 働の年間帰属報酬を比較する。. 「世帯収入が多いほど家事関連消費額が. 多いのか」の検証については、各世帯収入. ごとの「家事関連消費額」を 2016 年家計. 調査より分析する。. 「家事労働生産性が高いほど家事関連消. 費額が多いのか」の検証については、世帯. 収入ごとの「家事労働生産性指標」と「家. 事関連消費額」の関係を分析する。2016. 年社会生活基本調査と 2016 年家計調査の. 世帯年収区分が異なるため、まずはこれら. の区分の結合を行う。そのうえで、「家事. 労働生産性指標」と「家事関連消費額」の. 関係性が明らかにする。最後に、世帯年収. ごとの「修正帰属賃金」と「家事労働関連. 消費額」の関係を分析し、世帯年収ごとの. 家事関連の投入の構造を探る。. 第 2章 世帯収入と家事労働時間の関係性. 第 1節 世帯人員と世帯の総家事労働時間. の前提 . 本論文は、「世帯の総家事労働時間は、. 世帯人員が増えるにつれて増加する」とい. う前提のもとに議論を進めていく。言い換. えれば、家事労働需要は、世帯人員をその. 根源として変動するということである。こ. こで、世帯人員と、世帯人員の家事労働時. 間の総和である「世帯の総家事労働時間」. の関係性を見ていく。なお、「世帯の総家. 事労働時間」を計算するに当たっては、10. 歳以上世帯人員一人あたり家事労働時間. に、世帯年収ごとの 10 歳以上世帯人員の. 平均人数をかけることで算出した。結果は. 表 2-1-1 および図 2-1-1 に掲載されてい. る。. 結果を見てみると、一人あたり家事労働. 時間で見ると、世帯人員が増えるごとに減. 少傾向にあるが、「総家事労働時間」にな. ると世帯人員が増えるごとに増えている。. これは、10 歳以上の世帯人員全員が家事. 労働に参加しているわけではなく、世帯人. 員が増えても家事労働に参加する人数に大. 4. きな変化がないためと考察できる。. <図 2-1-1>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). ここで、世帯年収と世帯人員の関係性に. 触れる。表 2-1-2 と、図 2-1-2 を見てみる. と、世帯年収が高いほど、世帯人員が多く. なる関係が見て取れる。ただし、世帯年収. が 1000 万円を超えると、減少傾向に転じ. ることがわかる。前述した、世帯人員が増. えると、「総家事労働時間」が増えるとい. う関係性から、世帯年収が増えると、世帯. 人員が増加する傾向にあり、結果として. 「総家事労働時間」が増える傾向があると. いえそうである。すなわち、世帯年収ごと. の家事総労働時間に違いがあった場合、世. 帯人員の違いによるものなのか、それ以外. の要素で説明すべきなのか、原因を分けて. 分析する必要があることを示唆している。. <図 2-1-2>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). 第 2節 世帯収入と家事労働時間の関係性. 世帯年収ごとの「総家事労働時間」を分. 析するに当たっては、夫婦世帯における、. 一日当たりの家事労働時間のデータを参照. した。世帯年収ごとの「世帯の総家事労働. 時間」を算出する際は、同一世帯年収の男. 性と女性の家事労働時間を足し合わせてい. る。結果は、表 2-2-1 および、図 2-2-1 に. 掲載されている。. 表を見てみると、世帯年収ごとの「総家. 事労働時間」は、世帯年収が 500 万円~. 599 万円までは増加し続け、そこをピーク. に世帯年収 1,000 万円~1,499 万円までは. 減少傾向にある。そして、世帯年収 1,500. 万円を超えると、再び増加していることが. 分かる。. <図 2-2-1>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). 次に、「世帯の総家事労働時間」の傾向. が、世帯人員による影響なのか、それ以外. の要素によって説明すべきなのかを明らか. にする。そこで、世帯年収ごとの、「総家. 事労働時間」の調査世帯全体の平均との乖. 離と、世帯人員の調査世帯全体の平均との. 乖離に注目する。例えば、「総家事労働時. 5. 間」が平均よりも長い場合でも、世帯人員. の平均との乖離も同じであれば、その乖離. は、世帯人員の平均との乖離で説明が可能. である。なお、平均の世帯人員には、2016. 年社会生活基本調査の夫婦世帯における. 10 歳未満を含む平均世帯人数 2.95(人). を採用した。平均の「総家事労働時間」に. は、世帯収入ごとの「総家事労働時間」の. 単純平均の値、353.3916667(分/日)を採. 用した。. 表 2-2-2 及び、図 2-2-2 を見てみると、. 「総家事労働時間」の平均との乖離と、世. 帯人員の平均との乖離は、必ずしも同じ動. きをしないことが分かる。世帯年収別でそ. の傾向を見てみると、年収 100 万円から. 699 万円までの世帯では、「総家事労働時. 間」の平均との乖離が、世帯人員の平均と. の乖離よりも大きくなっていることが分か. る。ここから、年収 100 万円から 699 万. 円までの世帯では、平均的な需要以上の時. 間を家事労働に費やしているという状況を. 推測することができる。一方で、年収 700. 万円以上の世帯においては、「総家事労働. 時間」の平均との乖離が、世帯人員の平均. よりも小さいことが分かる。ここから、年. 収 700 万円以上の世帯では、世帯人数によ. って需要される家事労働をこなすために必. 要な平均時間よりも短い時間で家事労働を. 終わらせているということが推察できる。. すなわち、世帯年収ごとの「総家事労働時. 間」の違いは、世帯人員以外の変数によっ. て説明されうるということである。この結. 果は、本研究の、「世帯年収が高くなるほ. ど家事労働生産性が高くなる」という仮説. を検証する上で重要な発見となる。. <図 2-2-2>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). 第 3章 家事労働の生産性を考慮した世帯. 年収ごとのジェネラリスト賃金率. 第 1項 世帯年収ごとの家事労働生産性. ここまで、世帯年収によって、「総家事. 労働時間」が異なること、さらにその違い. が世帯人員以外の変数によって説明されう. る違いであることがわかった。このような. 世帯年収ごとの家事労働生産性を加味した. ジェネラリスト賃金率算出の方法論につい. て考察する。. 表 3-1-1 は、表 2-2-2 に、世帯人員の平. 均からの乖離と「総家事労働時間」の平均. との乖離の差を計算したものを追記した表. である。これは、家事労働生産性の平均と. の乖離を示している。つまり、世帯人員. 2.95(人)、世帯の「総家事労働時間」. 353.3916667(分/日)の、平均的な世帯を. 想定したときに、各収入の世帯は、この平. 均的な世帯と比較して、世帯人員が多いの. か少ないのか、そして、平均と比較して、. どれくらい総家事労働時間が長いのか、あ. るいは短いのかを確認することができる。. 平均よりも「総家事労働時間」が長くて. (あるいは短くて)も、世帯人員そのもの. が多け(少なけ)れば、それらの平均との. 乖離は相殺し、世帯人員の平均からの乖離. 6. と「総家事労働時間」の平均との乖離の差. は 0 になるはずである。. しかし、実際には、図表 2-2-2 および図. 表 3-1-1 で分かるように、各世帯年収にお. いて、その差は 0 とはなっていない。第 2. 章第 1 項でも述べたように、「総家事労働. 時間」は、世帯人員に左右される。世帯人. 員と総家事労働時間の長さが比例しないと. いうことは、世帯年収間で、家事労働生産. 性に違いがあることを示唆している。. <図 3-1-1>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). 第 2項 世帯収入ごとの家事労働生産性を. 加味したジェネラリスト賃金の算出. 世帯収入によって、家事労働の生産性が. 違うことが分かったところで、その違いを. ジェネラリスト賃金に反映させる手法を検. 討する。前述したように、「世帯人員の平. 均からの乖離と総家事労働時間の平均との. 乖離の差」は、平均的な世帯を 0 としたと. きの、「家事労働生産性指標」といえるだ. ろう。この各世帯の「家事労働生産性指. 標」は、絶対的な値ではなく、あくまで平. 均との差を基にした相対的な値であるが、. 世帯収入の違いによる世帯人員の多寡を考. 慮した、時間ベースの指標である。本研究. では、「世帯の総家事労働時間は、世帯人. 員が増えるにつれて増加する」という前提. のもとに議論を進めているため、この「家. 事労働生産性指標」は、世帯収入ごとの家. 事労働生産性の違いの全てを包含している. といえる。. ここで、平均的な世帯の家事労働の賃金. 率を W としたときに、. 各世帯収入の家事労働賃金率=W×(1+家事. 労働生産性指標). を用いることを考える。これは、「家事労. 働生産性指標」を家事労働の賃金率に反映. させる試みである。生産性の違いが、割合. としてそのまま賃金率に反映されるため、. 市場経済における賃金率の決定方法と異な. る部分があるかもしれない。しかし、この. 賃金率を用いることで、ジェネラリスト賃. 金の問題であった、「家事労働時間が短い. 家事労働主体の家事労働の帰属報酬が過小. 評価される」という事態を回避することが. できる。. 内閣府経済社会総合研究所が平成 30 年. に実施した「無償労働の貨幣評価」の調査. 研究によれば、2016 年のジェネラリスト. 賃金は、1,090 円/時とされている。この. 1,090 円/時を、平均的な世帯の家事労働賃. 金率とした場合、. 各世帯収入の家事労働賃金率=1,090×(1+. 家事労働生産性指標). が成り立つ。各世帯収入における「家事労. 働生産性指標」は、表 3-1-1 に示した通り. であり、この値を用いて、各世帯収入の家. 事労働賃金率、すなわち「修正ジェネラリ. スト賃金」を求めると、図表 3-2-1 のよう. になる。図表からは、世帯収入 100 万円未. 7. 満の世帯の修正ジェネラリスト賃金が高. く、300 万円~399 万円の世帯を底とし. て、900 万円~999 万円世帯までは、上昇. を続け、年収 1,000 万円を超えると減少傾. 向に転じる様子が分かる。ここから、家事. 労働の生産性が高い世帯は、年収 100 万円. 以下の世帯、次に 900 万円~999 万円世帯. ということがわかる。. <図 3-2-1>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). 第 3項 修正ジェネラリスト賃金を用いた. 家事労働の帰属報酬. 「修正ジェネラリスト賃金」を用いて、. 世帯年収ごとの 1 日当たり、および年間の. 家事労働の帰属報酬を算出する。図表 3-3-. 1 は、2016 年のジェネラリスト賃金 1,090. 円を用いた帰属報酬、各世帯年収ごとの修. 正ジェネラリスト賃金を用いた修正帰属報. 酬、および一日当たりの修正帰属報酬に. 2016 年の日数である 366 日をかけた、修. 正年間帰属報酬を掲載している。修正帰属. 賃金に着目すると、世帯年収 900 万円~. 999 万円までは上昇を続け、1,000 万円を. 超えると、その帰属報酬は減少に転じるこ. とが分かる。この動きは、ジェネラリスト. 賃金を用いた帰属報酬計算と反するもので. あることが確認できる。. <図 3-3-1>. (「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類による生活時間に関. する結果 生活時間編」(総務省統計局)より筆者作成). 第 4章 世帯収入と家事関連消費額の関係. 性. 第 1節 目的別家計消費分類の中間消費、. 最終消費及び家計固定資本形成への当ては. め. 世帯収入と家計消費額の関係性を分析す. るにあたり、2016 年家計調査の品目分類. を、家事労働における中間消費、最終消. 費、及び家計固定資本形成へ分類する。分. 類の結果は表 4-1-1 に示されている。分類. に当たっては、「指針」の付 4.1「COICOP. コードの中間消費、最終消費及び家計固定. 資本形成へのあてはめ」を参考にしてい. る。. 投入評価法における家事労働の貨幣評価. 額は、図 1-2-2-1 に掲載されているように. 算出が可能である。ここで、家事労働主体. によって可変な要素は、「労働投入の帰属. 報酬」、「固定資本減耗」、「中間消費」であ. る。この中で家計調査に関連する「固定資. 本減耗」「中間消費」の総和を、「家事関連. 消費」と定義し、議論を進める。なお、. 「固定資本減耗」は、表 4-1-1 における、. 資本形成の額を、耐用年数で割った値であ. る。耐用年数については、図 4-1-2 に「指. 針」の「付 4.3: 自己使用のためのサービ. 8. ス生産活動における家計資産のあてはめ」. を参照している。「家事用耐久財」「冷暖房. 用器具」は、「調理器」「電子レンジ」「冷. 凍・冷蔵庫」「食器洗い機」「洗濯機・乾燥. 機」「暖炉、シャワー、掃除機など」の平. 均年数である 9.3 年、「一般家具」「寝具. 類」は、「家具・調度品」「カーペットな. ど」の平均年数である 12.5 年、「自動車等. 購入」は「新車」、「中古車」の平均年数で. ある 12 年、「自転車購入」は「自転車」の. 9 年を採用している。. 第 2節 世帯年収ごとの家事関連消費額. 「中間消費」と「資本形成」を合わせた. 「家事関連消費」の世帯収入ごとの金額は. 図表 4-2-1 のようになる。社会生活基本調. 査で用いられていた世帯年収区分と、家計. 調査で用いられていた世帯年収の区分が異. なることに注意したい。. 図表 4-2-1 を見てみると、世帯収入が高. くなるにつれてゆるやかに家事関連消費額. が増加していることがわかる。また、家事. 関連消費額の中間消費を資本形成の内訳を. 見てみると、どの世帯収入区分でも中間消. 費の割合が大きいことが分かる。ただし、. 数値は、家計調査において単身世帯とそれ. 以外の区別がされていないため、単身世帯. も含めた各世帯年収区分の消費額である。. <図 4-2-1>. (総務省統計局 「2016 年家計調査 年間収入五分位・十分位階級別」より筆者作成). 次に、家事関連消費額と「家事労働生産. 性指標」との関係性を見てみる。前述した. ように、2016 年社会生活基本調査と 2016. 年家計調査の世帯年収区分が異なるため、. 3 区分への結合を表 4-2-2 のように行っ. た。結合した区分における、家事関連消費. 額と家事労働生産性指標の値は、図表 4-2-. 3 に掲載されている。図表 4-2-3 の各値. は、結合前の各区分の値の単純平均の値を. 採用している。図表 4-2-3 の傾向を見てみ. ると、家事労働生産性指標、家事関連消費. 額の平均との乖離は、区分Ⅰでは平均を下. 回り、区分がⅡ、Ⅲと上がっていくにつれ. て、どちらの指標も上昇していることが分. かる。この傾向は、本研究の第 3 段階、. 「世帯年収が高くなるほど、家事関連消費. が増え、家事労働生産性が高くなる」とい. う仮説を検証するものである。. <表 4-2-2>. 結合した区分 社会生活基本調査の区分 家計調査の区分. Ⅰ. 100 万円未満 ~273 万円未満. 100 万円~199 万円 273 万円~330 万円. 200 万~299 万円 330 万円~384 万円. 300 万円~399 万円 384 万円~446 万円. 400 万円~499 万円 446 万円~516 万円. 500 万円~599 万円 516 万円~595 万円. Ⅱ. 600 万円~699 万円 595 万円~696 万円. 700 万円~799 万円 696 万円~814 万円. 800 万円~899 万円 814 万円~1014 万円. 900 万円~999 万円 . 9. Ⅲ. 1,000 万円~1499 万円 1014 万円以上. 1,500 万円以上 . (総務省統計局 「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類によ. る生活時間に関する結果 生活時間編」 及び 総務省統計局 「2016 年家計調査 年間. 収入五分位・十分位階級別」より筆者作成). <図 4-2-3>. (総務省統計局 「2016 年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 詳細行動分類によ. る生活時間に関する結果 生活時間編」 及び 総務省統計局 「2016 年家計調査 年間. 収入五分位・十分位階級別」より筆者作成). 第 5章 終わりに. ここまで、世帯収入ごとの家事労働生産. 性について議論してきた。本研究の示す限. りでは、世帯年収が高いほど家事関連消費. が多く、世帯人数に対する家事労働時間が. 短く、家事労働生産性が高いことがわか. る。本研究では扱えなかったテーマとして. は、「家事労働需要の決定要因」「世帯収入. ごとの家事労働生産性の違いの詳細な原. 因」「手作りの付加価値」が挙げられる。. 「家事労働の決定要因」について、本研. 究では世帯人員を挙げた。世帯人員が多い. ほど、家事労働需要が多いという前提の基. に議論を進めた。しかし、世帯の広さや、. 住んでいる地域、家族構成などによって. は、必ずしも世帯年収が高いほど家事労働. 生産性が高くなると結論付けられない可能. 性がある。世帯年収と様々な変数を組み合. わせたクロスデータ分析が必要である。. 「世帯収入ごとの家事労働生産性の違い. の詳細な原因」について、本研究では、世. 帯収入により家事労働の生産性が異なる要. 因を、世帯年収ごとの「家事関連投入」額. と仮定した。世帯年収と「家事関連投入. 量」、「家事関連投入量」と「総家事労働時. 間」の間接的な関係性を見出すことができ. たが、世帯収入が上がるごとに、家事の. 「全要素生産性が向上する」といった、一. 見世帯年収と結びつかない変数が家事労働. 生産性に影響している可能性がある。世帯. ごとの家事の習熟度といったデータの入手. は困難であり、家事労働の産出を計測する. ことはさらに困難であることが家事労働の. 生産性に関する議論を阻害している。. 「手作りの付加価値」については、本研. 究の主眼を根本から見直す必要が出てくる. 視点である。「手作り」に高い付加価値が. あるのであれば、家事労働遂行能力という. 意味での家事労働生産性だけでなく、手作. 業の「愛情」も貨幣評価に加味するべきで. ある。「愛情」が加味されていなければ、. 愛情を込めて長時間家事労働を行う家事労. 働主体の帰属報酬は過小評価されてしま. う。家事労働の遂行能力、そして家事労働. の質としての「愛情」の両者が分かった時. 初めて、労働時間だけでは分からない、家. 事労働主体の生産性の実態が浮き彫りにな. るであろう。. 参考文献. Tailastokeskus Statistikcentralen Statistics. Finland、National Consumer Research. Center(2001) “Household Production. and Consumption in Finland 2001. Household Satellite Account”(2020 年 12. 10. 月 31 日閲覧). http://www.tilastokeskus.fi/tup/kantilinpito/2. 001_household_satellite_account.pdf. 国連欧州経済委員会 (2017)「無償の家計. サービス生産の 貨幣評価についての指. 針」(2021 年 1 月 14 日閲覧). https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/s. atellite/roudou/contents/pdf/181213_hony. aku.pdf. 小西葉子(2014)「生産性を計測するとい. うこと 技術を正しく評価するために. (プレゼンテーション資料)」(2020 年 12. 月 14 日閲覧). https://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/141. 21901_konishi.pdf. 斎藤悦子(2010)「福井県共働き夫妻の家. 事労働の社会化と生活時間」 『社会政策. 社会政策学会誌』10 巻 2 号 p.23-39. (2021 年 1 月 7 日閲覧). https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/10. /2/10_23/_pdf/-char/ja. 孫亜文(2017) 「家事労働研究の潮流と. これからの課題―家事労働が個人にもたら. す効果に着目して―」『Works Review』. 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