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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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様式8の1の2 別紙2

論文審査の結果の要旨

専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 十鳥 弘泰

本論文は,「プログラムの実行挙動に基づく投機的並列実行方式に関する研究」と題し,従来 の並列実行方式では性能向上の達成が困難であったプログラムに対して,プログラム実行の振る 舞いを解析し,その情報を活用した新たな並列実行方式について検討したものである。

近年,複数のプロセッサコアにより構成されるマルチコアプロセッサが普及しており,プログ ラムを高速に実行するため,プログラムを並列化する技術が盛んに研究されている。プログラム の並列化においては,プログラムからの並列性の抽出を阻害する制御およびデータの依存関係が 問題となる。特に,非数値処理系プログラムでは依存関係の有無が曖昧な場合が多く,少しでも 依存する可能性がある場合には,保守的に同期通信を行う必要がある。これは,並列実行による 性能向上を妨げる大きな原因である。

投機的並列実行は,将来実行される可能性のある処理を予測し,先行して並列実行する方式 である。投機的並列実行において予測が失敗した場合,先行的に実行した処理は無駄なものとな り,実行をやり直すために必要な回復処理などにより性能低下となる可能性がある。このため,

予測精度が投機的並列実行の性能向上に大きく影響する。

本研究では,高精度な予測を実現するため,プログラム中のループの実行挙動を解析し,ル ープにおける命令の実行経路 (パス) の実行割合の偏りを利用した投機的並列実行について検 討している。実行割合上位2本のパスに限定した予測を行う2パス限定投機方式に着目し,同方 式を実現するマルチコアプロセッサ・アーキテクチャを設計,提案している。また,提案したプ ロセッサを模擬するソフトウェア・シミュレータを構築し性能評価を行うことで,プロセッサの 実行性能について明らかにしている。さらに,複数のパスを持ち,複雑な実行挙動を示すプログ ラムについて,複数のパスを予測対象とすることによって,予測精度を改善させる手法について も評価を行い,その予測性能について明らかにしている。

本研究において得られた研究成果は次のようにまとめられる。

(1) ループ中の実行割合上位2本のパスを予測対象とする2パス限定投機方式について,同方式 を実現するマルチコアプロセッサを設計し,クロックサイクル精度のシミュレータを構築す ることにより性能評価を行った。この性能評価によって,非数値処理系プログラムのループ に対して,投機実行のためのコード最適化として,ループ展開およびコードスケジューリン グを行うことにより,逐次実行に対する性能向上を達成できることを示した。

(2) パスの予測に用いるパスの実行履歴を表す情報について,従来1ビットで表されていた実 行履歴情報をNビットに拡張することで,3本以上のパスを予測対象とする手法を提案し,

シミュレータにより予測性能の評価を行った。この評価により,提案手法のパス予測機構が,

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同等の記憶資源を持つ従来のパス予測機構に対して高い予測性能を達成できることを示した。

(3) プログラム実行全体におけるパス実行割合と,プログラム実行中のある区間におけるパス 実行割合が必ずしも一致しないことを示し,その区間における実行割合上位2本のパスを,

次の区間における予測対象パスとする手法を提案した。プログラム実行中にパスの実行挙動 を解析するパスプロファイラを利用し,動的に予測対象とするパスを選択することで実行挙 動の変化に追従した予測が可能であることを示した。そして,シミュレータを利用した予測 性能の評価により,提案した動的な予測手法が,従来の静的な予測手法に比べ,高い予測性 能を達成できることを明らかにした。

本論文については,2014年2月5日に本学アカデミアホールにおいて,審査委員全員および学内 のこの分野の研究者などの出席のもとに公聴会が開催され,研究成果の発表および質疑応答が行 われた。公聴会の後の学位審査委員会において,本論文の内容を詳細に検討した。その結果,本 研究により計算機工学分野で新しい知見が得られたことが認められた。本論文は工学的に価値が あり,研究内容の学術レベルおよび研究としての独創性および有用性において優れたものと判断 した。

よって,本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める。

参照

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