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カラオケ装置が行動の積極性に与える影響*1

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愛知淑徳短期大学研究紀要 第31号 1992125

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響*1

性格と歌唱力の評価による検討

新 美 明 夫

   The Effect of KARAOKE on the Activity of Behavior:

An Examination by Personality and the Evaluation of Singing Ability

Akio Niimi

 ボーカル部分を除いた録音済みの伴奏と,マイクから入力される歌とを合成増幅させる装置 としての「カラオケ」は,1970年代初めに,業務用が発売され,おもにスナックやバーなどの

酒場を中心に広がっていった(小川,1991)。1970年代半ばには家庭用の装置も開発され,1977,

78年にはカラオケ・ブームと呼ばれるほどの浸透ぶりを示した(成田,1991;上野,1991)。

しかし,熱狂的な流行の後,突然の終局を迎えるこ.との多い娯楽のブームの中で,カラオケの

流行は長期化し,現在では,さまざまな生活場面に定着してきている。装置自体の短期間の進 歩が,提供されるソフトの形態を,当初のカセットテープから,CD,レーザーディスクへと 発展させ,ハードの進歩と,ソフトの充実とがうまくかみ合ったことも,この長期的な流行の

一つの原因であろう。

 カラオケの流行は,一方で住宅地に隣接するスナックなどの深夜まで続くカラオケ騒音とし

て社会問題化した(上野,1991)。その防音対策の一環として,1980年代半ばにはカラオケボッ

クスが登場し,当初,中年男性が酒場で演歌を歌う道具であったカラオケを,酒と切り放され た場所で利用することを可能とし,一部では少年非行との関係を取りざたされながらも,老若 男女がさまざまなジャンルの曲を歌うようになった。際物的なイメージで浸透していったカラ オケは,ここに至って,地方自治体が住民福祉政策の一環として導入するまでになり,完全に

日本の文化の一部として定着したといってよいだろう。

 カラオケの利用形態は,基本的には個人的な利用ではなく,集団での利用である。カラオケ の魅力は,集団の中での個の積極的な表出が苦手だと言われる日本人に,気軽に「自己陶酔を

ともなう自己表現の機会を提供(小川,1991)」し,「有効性のみを求めて働く日常の機能主義

を脱する楽しみと,欝積した心の中のパトスを解放するカタルシス(丸山,1989)」効果をも つことだと解釈されている。その効果は「自らが受け身の観客や聴衆であるばかりでなく,能

*1 本稿は,1991年度の本学コミュニケーション学科卒業生である南里日出美が卒業研究の一環として   収集したデータを利用し,全面的に再分析して,まとめなおしたものである。

一125一

(2)

動的な主役となって舞台に立つかの如き錯覚をもつことによって一層高められる」と言われる

(丸山,1989)。しかし,カラオケは,それを利用した自己表現が,集団における個の表出を 抑制する「日本的な集団性,共同性,ムラ的な感性とかならずしも矛盾せず」,カラオケの「場

を共有することで集団主義を満足させた上で,選曲とパフォーマンスによる個々の自己表現を

保証する」,きわめて便利な利用が可能な装置だったのである(小川,1991)。

 このように,カラオケ装置を媒介とした集団の場の機能は,まず,第1に集団の構成メンバー 個々の自己表現であり,第2に,場を共有することによる集団維持機能であることが指摘され

ている。本稿の目的の第1は,カラオケ利用時の行動を組織的に検討することによって,これ

らの機能の存在を確認することである。

 さて,受動的な観客・聴衆としての役割と,能動的な主役としての役割を交替に演ずるカラ オケの場の中で,われわれがしばしば驚かされるのは,個々のメンバーの普段の集団内におけ る行動との落差である。普段は消極的で目だたないメンバーが,カラオケの場では水を得た魚 のようにマイクを放さなかったり,逆に積極的なメンバーが意気消沈し引っ込み思案になった りすることがある。おもに行動の積極性・活動性の側面でこのような落差を発見することもま

た,カラオケの魅力の一つである。

 カラオケ装置も機械の一つであり,機械は人間のもつ能力の一部を延長・拡大するものであ る。内蔵されたエコー装置や,プロ歌手と同レベルのフルバンドによる伴奏は,歌唱力が飛躍 的に向上した感覚を個人にフィードバックする。普段はおとなしい人が車を運転すると非常に 攻撃的になる例があるように,カラオケ装置もまた,マイクをもつことで,その人の行動傾向

に影響を与えることがあるのだろう。

 カラオケ装置がそれを利用する人の行動に与える,このような影響に注目し,カラオケ利用 時の行動を規定する要因を検討することが,本稿の第2の目的である。ここでは規定要因とし

て,利用者個人の性格と歌唱力の評価を取り上げることとする。

 第1の規定要因である性格は,通常その人の行動のよい指標となる。日常場面での行動との 落差が指摘されるカラオケ時の行動と,心理学的に測定された性格との関連を分析することに

よって,行動の落差がどの程度あるのかを知ることができると思われる。

 第2の規定要因である歌唱力の評価は,カラオケ装置のもつ歌唱力の向上の感覚のフィード バックの累積的効果の直接的な結果であると考えられる。「自分は歌が下手だ」と思っている 人にとって,歌う順番が回ってくるのは苦痛である。また,それなりに歌える人も「もっとう

まく歌いたい」欲求が,カラオケ場面で増幅されることもよく指摘されることである。ホーム・

カラオケの普及やカラオケ教室の隆盛は,歌唱力向上のために努力する人の多さのよい証拠で あろう。何度もカラオケで歌うことによって得られた,自己の歌唱力への自信が,カラオケの

場での積極性・活動性を高めていると思われる。

 歌唱力の客観的な評価は非常に困難である。主観的な評価と客観的な評価のズレが生み出す

カラオケの場での楽しみや,それが原因で起こるトラブルも興味のある問題である。しかし,

(3)

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響127

カラオケ利用時の行動の積極性・活動性の規定要因としては,主観的評価の方が,より重要で

あろう。ここでは,歌唱力の主観的な評価とカラオケ利用時の行動との関連を検討することで,

カラオケ装置が行動の積極性・活動性に与える影響を探ることとする。

 また,上記の2要因を同時に考慮に入れることで,日常生活場面での行動と,カラオケ利用 時の行動との落差が,ある程度説明できるであろう。カラオケの場における行動は,必ずしも 個々人の性格から推測されるようなパタンをとらないことは,ここまで検討してきたとおりで ある。カラオケ装置のもつ歌唱力の向上の感覚のフィードバックが,個人の性格とどのように

関わって,カラオケ利用時の個人の行動に影響するのかを検討することとしたい。

1.カラオケ利用時の行動の測定

 本調査に先立って,数人のカラオケ利用者に面接を行い,カラオケ利用時のさまざまな行動 のリストを作成した。その行動リストを整理して,カラオケを歌っている時の行動10項目,聞 いている時の行動12項目の計22項目にまとめた。これらの行動項目に対し,自分があてはまる かどうかを5段階評定で回答する形式に整えた(項目の具体的内容については表6参照)。

2.性格の測定

 本稿では,カラオケ利用時の行動を規定する要因の一つとして個人の性格を取り上げる。日 常の行動とカラオケ利用時の行動との落差を探るためには,日常生活場面での行動そのものを 調査する方が直接的ではあるが,カラオケはすでに社会的な現象であり,その利用者は老若男 女の多岐にわたる。したがって,その日常生活場面における行動を共通の尺度で測定すること は非常に困難であると思われる。そこで,人の行動特性をかなり明確に推測することのできる

性格を測定することで,これに代えることとした。

 性格の測定用具としては,信頼性も高く,もっとも普及しているY−G性格検査を利用する こととした。YG性格検査は,12の性格特性を測定する下位尺度からなっているが,ここでは 日常生活場面における個人の行動の積極性・活動性に関連すると思われる4つの性格特性のみ

を利用した。すなわち,「G.一般的活動性」「R.のんきさ」「A.支配性」「S.社会的外向」

の 4つの下位尺度である。これらの下位尺度が意味する性格特性は,辻岡の検査実施手引によ れば,次の通りである。

G.一般的活動性:仕事が早い。動作はきびきびしている等の活動性と,ほがらかな性質

         である。

R.のんきさ:人といっしょにはしゃぐ。いつもなにか刺激を求める等の気がるな,のん

       きな,衝動的な性質である。

一127一

(4)

  A.支配性:会やグループのためにはたらく。引っ込み思案でない等のソシアルリーダー

        シップである。

  S.社会的外向:人との交際を好む,人と話をするのはすきであるなどの社会的接触を好

      む傾向で,その反対の性格は社会的内向(social introversion)とよば       れる。

 これらの性格特性は因子分析によって,さらに,GとRが「衝動性」因子, AとSが「主導 性」因子を構成することがわかっている(辻岡,1982)。いずれも日常生活場面での個人の行

動の積極性・活動性と非常に関連のある性格特性だと思われる。

 Y−G性格検査は,国内でもっとも多く使用されている検査の一つであるが,それだけに使 用の際の取扱いの注意も多く指摘されている。八木・江口(1983)は実務的な立場から,個々 の項目内容と性格特性の特徴とのズレを指摘している。とくに「R.のんきさ」については,

日本語の のんきさ を意味しないと述べている。彼らは各性格特性の特徴を,豊富な実務経 験に基づいて再構成し,表1のように修正している。利用する性格特性の選択には,この指摘

表1 得点による性格特性の特徴

格性 性特

G

R

A

S

高得点の際の特徴

 自分は敏腕で能率がよい,とい う自信にささえられて,現在の心 境はきわめて快適である.周囲の 人との人間関係も非常に良い.行

動的(活動的)

 活動的で好奇心も旺盛だが,調 子に乗りすぎて軽薄な行動に走る

こともある.軽率(向こうみず)

 自信家で,どちらかというとお 節介やきである.指導者意識が強 く,多弁で,活発に行動する.自

己顕示欲.お山の大将.

 社交的かつ派手好きで,口数も 多い.誰とでも気軽に話し,くっ

たくがない.

低得点の際の特徴

「自分は不器用で能率が悪い」とい

う意識が,当人を陰気にし,行動を 不活発にしている.どちらかという

と理屈が多い.

 必要以上に慎重で,優柔不断であ

る(決断力が弱い).沈滞ムードで,

陽気な気分にはほど遠い心境.

 自信がなく,引っ込み思案である.

他人に引きずられることが多く,

指導者意識は弱い.

 口数が少なく,人嫌い(非社交的)

であり,性格は地味.引っ込み思

案で,自信もない.

註)八木・江口(1983)より抜粋して作成

(5)

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響129

も参考にした。なお,表1には今回利用した性格特性のみが取り上げてある。

 各性格特性を測定する下位尺度は10問構成で0〜20点の得点分布をするが,男女で若干その 分布特性が異なるため,素点を標準化した1〜5点の標準点で扱うことが多い(辻岡,1982)。

そこで本稿でも,このY−G検査から得られた得点は,この標準点に換算して利用することと

する。

3.歌唱力の評価の測定

 自己の歌唱力の評価の測定は,質問紙調査ではかなりのバイアスがかかることが予想される。

そこで,それを少しでも緩和するため,「まわりの人はどの程度に評価していると思うか(他

者評価の認知)」と「自身で評価するとどれくらいだと思うか(自己評価)」の2つの設問を用 意した。いずれも,「人並以上(5点)」から「人並以下(1点)」の5段階評定とした。

4.調査票の構成

 調査票全体を4部構成とした。第1部はフェイス・シートであり,性別・年齢・職業などの デモグラフィック要因,および,カラオケ利用の経験の有無などを設問した。第2部は,カラ オケの利用状況を設問するための項目群であり,カラオケの利用経験者を対象とする設問であ る。利用の機会や場所とともに,カラオケ利用時の行動について設問した。また,ここでは日 常生活場面での積極性や,自己の歌唱力の評価に関する設問も用意した。第3部では,Y−G 性格検査のうち,今回利用した4つの性格特性を測定する4下位尺度,40項目を設問した。第

4部は,カラオケ利用の経験がない者を対象とした設問であり,利用しない理由や,利用者に

対する評価などを設問した。

5.調査対象および実施方法

 19歳以上の男女を対象とし,愛知淑徳短期大学の学生,学生の両親,学生の知人,教員等を

通じて調査票を配布・回収した。300部配布したところ,回収できた調査票は265部であった。

フェイス・シート項目など重要な設問に欠損値のある者を除いたところ,最終的に有効な調査 票は260部,有効回収率は86.7%であった。調査期間は1991年10月末から11月末の約1ヵ月間 である。表2に有効な調査票が得られた調査対象者(以後分析対象者と呼ぶ)の属性の内訳を

不してある。

 なお,本稿のデータの分析には,データ解析ソフトHALBAU(高木ら,1989)を利用した。

1.カラオケの経験の有無と性格

カラオケの経験の有無については,図1に示すように分析対象者の9割近くが「経験あり」

一129一

(6)

表2 分析対象者の内訳 ()内は%

性性 男女 性別 職業

109(41.9)

151(58.1)

学生     97(37.5)

有職者*   139(53.7)

専業主婦    19(7.3)

無職・その他  4(1.6)

20代以下 140(53.8)

30代   29(ll.2)

40代   47(18.1)

50代   38(14.6)

60代以上  6(2.3)

*ハe一ト・アルバイトを含む

       TOTAL=260

と答えており,その浸透の一般性をよく示している。また,性別でも経験者の割合にはほとん ど差はみられず,年齢層別では若干の差はみられるものの,全年齢層で経験者は70%を越えて

いる。老若男女に関わらず,どの層にも受け入れられているカラオケの特徴がよく現れている。

0 20     40      60     80    100(文}

0

   膠経験あり[:コ経験なし

20      40     60      80    100(驚)

全体一口・・tV・T

      ・・代羅嬢コ

女性wawwmamaコ・・微羅羅羅羅〉=コ

   。・ニ0.74(。.,」        x2 ・49・3***   **°・IX水準でaxx        図1 カラオケの経験の有無

 では,カラオケの経験の有無と性格とはどのような関わりがあるのであろうか。本稿で取り

上げた4つの性格特性の標準点を基準変数とし,性別およびカラオケ経験の有無を要因として,

2元配置の分散分析を行った。その結果の概要を表3に,経験別・性別による各性格特性の平 均値を図2に示した。カラオケの経験の有無については,一般的活動性を除く3つの性格特性

において有意な主効果を示しており,カラオケが一般的な娯楽として普及した現在においても,

やはり経験別にみると,経験者には積極的・活動的な人が多いようである。とくに支配性にお いては,交互作用が有意な効果を示しており,男性は経験による差がないのに対し,女性では 明らかにカラオケ経験者の方が未経験者よりも高得点を示している。女性の場合は,とくに支

配性の高低が,カラオケを経験するかしないかの分かれ目となっていることが示唆されている。

性別の要因では,性格特性の平均値にほとんど男女差はみられなかったが,社会的外向におい

(7)

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響131

てのみ,女性の方が全体としてやや高い得点を取る傾向がみられた。

表3 性格特性の標準点の2元配置分散分析結果の概要        (各変動要因の有意性)

   変動要因

ォ格特性

性 別

カラオケの

o験の有無

交互作用

一般的活動性

フんきさ x配性 ミ会的外向

n.S.

氏DS.

氏DS.

n.S.

磨磨磨

***

.S.n

DS.*

氏DS.

**0.1%水準,*5%水準,†10%水準で有意

  3  2  1

的活動性

5

 4  3  2

ラオケ ヵラオケ 験あり 経験なし

5

4

3

 2

一一● 男性

…○ 女性

o

カラオケ カラオケ

・経験あり 経験なし

   ・ 3 2   会的外向

ラオケ カラオケ 験あり 経験なし

ラオケ カラオケ 験あり 経験なし

2 カラオケ経験・性別による性格特性の平均値

.カラオヶ経験者の性格と日常生活場面での積極性・活動性

本稿では,個人の性格とカラオケ利用時の行動との関連を分析することによって,日常生活 面での積極性・活動性とカラオケ利用時との落差を検討することを目的の一つとしている。

の前提として,今回利用した性格特性が個人の日常生活場面での行動をよく予測するもので ければならない。今回取り上げた性格特性が妥当なものであったかどうかの検討を,この項 行うこととする。ただし,今回の対象者は多岐にわたり,その代表的な行動をすべて取り上 るのは不可能であり,部分的なチェックに過ぎないことを断っておきたい。

取り上げた日常生活場面での行動は,家庭や学校,会社にいる時の積極性・活動性を表すと 131一

(8)

思われる行動12項目である。それぞれの場面で取る行動として,「全くそうである(5点)」か

ら「全くそうでない(1点)」までの5段階評定尺度で回答を求めた。カラオケの経験者をそ の性格特性の標準点に基づいて,各性格特性を強く示す者(標準点で,4,5点)を高群,平 均的な者(3点)を中群,性格特性名の反対極の特性を示す者(1,2点)を低群とし,各群

ごとに,それぞれの行動の評定平均値を求めた。表4に各性格特性の群ごとの人数分布を,表 5に群別の平均値と,分散分析結果の有意性を示した。なお,これ以降の分析においては,カ

ラオケの経験者のみを対象とする。

表4 カラオケ経験者の性格分布

性格特性

低群 中群 高群 合計

一般的活動性 フんきさ x配性 ミ会的外向

31(13.7)

R0(13.2)

S4(19.4)

Q7(ll.8)

73(32.2)

T1(22.4)

X5(41.9)

V8(34.2)

123(54.2)

P47(64.5)

W8(38。8)

P23(53.9)

227(100.0 Q28(100.0 Q27(100.0 Q28(100.0

単位は人,( )内は%

*性格特性の得点に欠損値のある1名を分析から除外してある

 Y−G性格検査は,各性格特性における低群・中群・高群の分布が30.9%,38.3%,30.9%

に近くなるように構成されているが(辻岡,1967),表4からわかるように,各性格特性とも,

カラオケ経験者の分布は,高群側に分布がずれていることがわかる。とくに,支配性を除いた

3特性では,高群に属する者が半分以上を占めている。

 これらの性格特性の群別に日常生活場面での行動の平均値を算出した結果を示したのが表5 である。これをみると,各性格特性は,日常生活場面での積極性・活動性を示すほとんどの行 動と密接な関係をもっており,今回取り上げた性格特性が妥当なものであったことを示してい

ると思われる。

3.カラオケ利用時の行動の因子分析

 カラオケを集団で楽しむ際には,いろいろな行動がとられる。それらの相互作用を通して,

問題の項で示したようなカラオケの魅力が生じるわけである。本稿ではカラオケ利用時の行動 を経験者にインタビューすることで,その代表的なものを収集し,22項目を取り上げた。ここ では,これらの代表的な行動項目を因子分析することで,カラオケ装置を媒介とした集団の場 の機能である集団の構成メンバー個々の自己表現や,集団維持機能を示す行動の因子の抽出を

試みる。

 各行動項目は,「全くそうである(5点)」から「全くそうでない(1点)」の5段階評定尺

(9)

一ωω

表5 日常生活場面における積極性・活動性を示す行動の,性格特性の高低別平均値と分散分析結果(有意性)

性 格 特 性 一般的活動性

のんきさ 支配性

社会的外向

日常生活場面における行動

低群 中群 高群 低群 中群 高群 低群 中群 高群 低群 中群 高群

① 人と意見が違っていてもあえて口を出さない

3.23 3.04

2.91

3.29 3.29 2.85

3.55 3.Ol

2.72 3.32 3.00 2.92

n.S.

** ***

n.S.

2.誰とでもあいさつができる

3.10 3.83 4.25 3.82 3.94

4.Ol

3.66 3.84 4.25 3.48

3.71 4.21

***

n.S.

** ***

③ 初対面の人と話すのは苦手である

3.39

3.ll

2.60 3.25 2.94 2.77 3.57

3.11 2.31

4.00 3.23 2.43

***

n.S.

*** ***

4.何か小さな失敗をしたとき,冗談の一つでも言うこ

2.65

3.Ol

3.60

2.61

3.10 3.49 2.68 3.17 3.69 2.56 2.96 3.63

とができる *** *** *** ***

5.人が落ち込んでいるとき,なぐさめるより,笑わせ

2.55

2.81

3.20 2.43 2.78 3.17 2.72 2.85 3.24 2.50 2.63 3.29

ようとするほうである

** **

***

6.集会などがあり,急に代表であいさつをするように

2.10 2.14 2.97 2.29 2.67

2.61 1.82

2.44

3.ll 1.84

2.35 2.90

頼まれたとき,素早く引き受けることができる

***

n.S.

*** ***

7.みんなが何かやるときは,よくまとめ役になる

2.13 2.32 3.43 2.43 2.94 2.96 2.02

2.71

3.50 2.16 2.65 3.20

***

*** ***

8.大勢の人の前で話しをするのは好きである 1.81

2.26 2.82

1.78 2.51

2.60

1.78

2.22 3.09

1.80

2.30 2.73

*** ** *** ***

9.人と違った目だつことをするのが好きである 1.08 1.ll

3.03

1.57

2.57 3.00

1.86

2.54 3.36

1.68 2.41

3.13

*** *** *** ***

10.一般的に積極的である

2.42 2.69

3.51 2.25

2.86 3.33 2.14 2.95 3.72

1.96

2.72 3.55

*** *** *** ***

ll.暇な時は,家にいることが少ない

3.00 3.04 3.33

2.61

2.80 3.43 3.00 2.97 3.52 2.80 2.99

3.41

n.S.

*** **

12.友達とわいわい騒ぐのが好きである

3.55 3.85

4.09

3.29 3.39 4.25

3.55

3.95

4.ll

2.88

3.81

4.24

*** ** ***

○付き数字は,積極性・活動性の反対の性質を示す行動

***0.1%水準,**1%水準,*5%水準,†10%水準で有意

斗寸牌醜法び轡S麟商虞六中㌔か束囎一ωω

(10)

度で回答を求めた。この得点に基づいて,22の行動項目の相互相関行列を算出し,主因子法・

バリマックス回転による解を求めた。なお,分析には行動項目の一部に欠損値のある2名を除 く226名を対象とした。SMCを共通性の初期値とする主因子解を求めたところ,正の固有値を もつ12個の因子が抽出された。この12因子の固有値の推移を検討したところ,第4因子以降の 固有値は1.0未満であり,第3因子との較差も明瞭であることから,因子数を3程度と見当を

つけた(固有値は第1因子から順に,5.53,1.40,1.00,0.62,0.57……である)。参考まで に3−−7因子の各場合について,バリマックス回転後の因子負荷行列を比較検討したところ,

やはり3因子の場合がもっとも心理的解釈が容易であったので,因子数は最終的に3と決定し た。3因子の場合の回転後の因子負荷行列を表6に示す。

 因子負荷行列の様相より,第1因子は「2 スポットライトに照らされた方がよい」「8 皆 の注目が向くように目だつことをする」など,多数の項目に負荷が高く,問題の項で述べたよ

うなカラオケの場の第一の機能である自己表現の機能すなわち,「自己陶酔をともなう自己表 現」や「欝積した心の中のパトスを解放するカタルシス」への積極性であり,また「能動的な 主役となって舞台に立つかの如き錯覚」を与える舞台装置や観客の態度への好みを示す因子で ある。カラオケ利用時の行動のなかでは,もっとも注目され,議論されてきた機能を示す行動

の因子であろう。「FI:カラオケを歌うことによる自己アピールへの積極性(自己アピール)」

因子と名づける。

 第ll因子は「22他の人と雑談している」「21飲んだり食べたりしている」など,集団の 場としての楽しみを追求する行動であり,「4 歌っている時は歌うことに集中している」の 項目にマイナスの負荷をしていることからも,カラオケの場での,歌うこと以外の楽しみを求

める行動を示す因子である。「F ll:歌うこと以外の楽しみに対する積極性(歌以外)」因子と 名づける。

 第皿因子は「15歌に合わせて手拍手をする」「16他の人が歌っているのと一緒に口ずさむ」

など,歌っている人に対する積極的な支援の行動を示す因子である。カラオケの場の第2の機 能である集団維持機能すなわち,自己表現が「日本的な集団性,共同性,ムラ的な感性とかな

らずしも矛盾せず」,カラオケを媒体とした集団の場を社交の場として存続していくことを保 証する行動を示す因子であろう。ただし,この2項目の負荷量はマイナスであり,「17何も

しないで静かに聞く」に対する負荷がプラスであることから,因子名としては方向が逆ではあ るが,意味が取りやすいことから「F皿:歌う人のもりあげに対する積極性(もりあげ)」因

子と名づける。

 以上のように,カラオケ利用時の行動の因子分析によって,「FI:自己アピール」「Fll:

歌以外」「F皿:もりあげ」の3因子が抽出されたが,そのうちの二つの因子,FI, FMは,

問題の項で検討した,集団でカラオケを楽しむ際の二つの機能である,個々の自己表現と集団 維持機能を示す因子であった。本稿ではこれ以降,カラオケ利用時の行動を分析する際に,個 別の行動項目ではなく,これら3つの因子を用いることとする。通常因子の内容を表す指標と

(11)

         カラオケ装置が行動の積極性に与える影響135 表6 カラオケ利用時の行動の因子分析結果

行動項目内容 因子1 因子n 因子m

〈第1因子を構成する項目〉

2 スポットライトに照らされた方がよい

0.7270

一〇.0272 一〇.0499 3 ミラーポールは回った方がよい

0.6890 0.0997

一〇.0651 7 自分が歌っている時は聞いてほしい

0.5991

一〇.4111

0.0078

8 皆の注目が向くように目だつことをする

0.7202 0.0092

一〇.0922 9 手拍子やかけ声などがほしい

0.6020

一〇.0613 一〇.3138 ll聞くより歌う方がよい

0.6520

一〇.1715

0.Oll9

12歌いたいと思ったら遠慮せずどんどん歌う

0.6638

一〇.1035 一〇.Oll6 13誘われたら一緒に歌う

0.5698

一〇.0724 一〇.2798 14選曲は早く決める

0.5225

一〇.2392

0.1370

20次に何を歌うかを考えている

0.6056

一〇.2446 一〇.lil6

〈第H因子を構成する項目〉

4か歌っている時は歌うことに集中している

0.3045

一〇.4830

0.1372

21飲んだり食べたりしている

0.0702 0.5420

一〇.0403 22他の人と雑談している 一〇.0464

0.6058 0.0927

〈第皿因子を構成する項目〉

15他の人が歌っているのと一緒に口ずさむ

0.2761

一〇.2018 一〇.4099 16歌に合わせて手拍子をする

0.1544 0.0420

一〇.4526

17*何もしないで静かに聞く

一〇.0475 一〇.0325

0.7364

〈因子構成から除外された項目〉

1 歌う時は立って歌う

0.2894

一〇.0515

0.Ol67

5 歌えさえすれば満足である

0.4535

一〇.3616

0.0848

6 観客の様子は気にならない

0.0805

一〇.0529

0.1398

10 自分が歌っているときに,他の話題

0.3715

一〇.2993 一〇.0992

で盛り上がっていると白ける

18 「ヒューヒュー」などと冷やかす

0.4631 0.2053

一〇.2104 19何もしないでポーッとしている 一〇.2138

0.2747 0.2737 因子寄与 4.9697 1.6270 1.3237

一135一

(12)

しては因子得点が用いられるが,ここでは今後の使用や算出の簡便さから,次のような方法を とる。すなわち,それぞれの因子が示す行動の指標として,各因子に対して高負荷を示した項 目の合成得点を因子得点の近似値として採用することとする。それぞれの因子を構成する項目 は表6に示した通りである。ただし,合成得点を算出する際に,因子名の意味内容に沿った方 向にそろえるために,得点を逆転する必要のあるものについては,項目番号に*印をつけてあ る。なお,第1因子には5,19番の項目もかなりの高負荷を示しているが,5番は第H因子に も負荷がかなり高いこと,19番は他の構成項目に比較して負荷量が少し低いことから,構成項 目からは除外した。したがって,「FI:自己アピール」は10項目,「Fll:歌以外」と「F田

:もりあげ」は,各3項目の合成得点がその指標となる。

4.性格とカラオケ利用時の行動

 今回取り上げた4つの性格特性は,いずれも日常生活場面での個人の積極性・活動性と密接 に関連している。では,これらの性格特性はカラオケ場面での個人の行動とどのような関連を もつのであろうか。第3項で得られたカラオケ利用時の行動の3因子を基準変数として,表4 で示したような各性格特性の群ごとに平均値を算出し,一元配置の分散分析を行った。分散分 析の結果の概要を表7に,平均値を図3に示した。

表7 性格によるカラオケ利用時の行動の一元配置分散分析結果(有意性)

因子 FI

Fn F皿

要因 自己アピール

歌以外

もりあげ

一般的活動性

N。S.

格 のんきさ

N.S.

**

特 支配性 ***

N.S.

性 社会的外向 ***

N.S、

***0・1%水準,**1%水準,*5%水準,†10%水準で有意

 3因子のうち,取り上げた性格特性との関連がもっとも明確なのはFIの「自己アピール」

である。のんきさ,支配性,社会的外向の各性格特性には,明確な効果が認められた。群間の 平均値の多重比較においても,各性格特性の高群と低群間には有意差がみられ,各性格特性が 顕著なほど,カラオケ利用時の自己アピールへの積極性が高いことがわかった。一般的活動性

の性格特性でも,同様の傾向がみられたが,他の性格特性ほど明確ではなかった。

(13)

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響137

F33

132 昌31 13・

,し29

 28  27

 0

低群 中群 高群 低群 中群 高群 低群 中群 高群

 ド  !

10 F

 三  孜  以  外

 z

 り  あ  竺

 詞  33 F I32 自31

9・・

Y z9

ル28  27

 0

 Fm

高群 中群

低群

高群

中群 低群

高群

中群

低群

FH︵F皿︶ 歌以外︵もりあげ︶

210987650

F皿︵F皿︶ 歌以外︵もりあげ︶

210987650

F 皿

ヴ■

高群 中群

低群

﹁ ‥

  ﹈⁝ n F →

  ﹁

F I

.ジ㊨

高群 中群

低群

高群

中群

低群

34

3   23  3

FI

31

R0 Q9 Q8

自己アピール

27@0

 34  33

F

I 32

自31

ア30

129

ル28  27

 0

低群 中群 高群 低群 中群 高群 低群 中群 高群

210987650 FH︵F皿﹀ 歌以外︵もりあげ︶

***0.1%水準,**1%水準,*5%水準,†10%水準で有意 図3 性格とカラオケ利用時の行動

 Fllの「歌以外」の因子では,取り上げた性格特性のうち一般的活動性が要因として有効で あった。これについては,一般的活動性が低いほど,歌うこと以外の楽しみに対する積極性が 高い傾向があることがわかった。群間の多重比較でも高群と低群の間に有意差がみられた。支

配性の性格特性でも,一般的活動性ほどには明確ではないが,同様の傾向がみられた。

 F田の「もりあげ」の因子では,のんきさの性格要因が有意であった。群間の多重比較では,

高群と低群の間に有意差がみられ,のんきなほど,歌う人のもりあげに対する積極性が高いこ

とがわかった。社会的外向においても,やや明瞭さを欠くが同様の傾向がみられた。

 以上のように,日常生活場面での積極性・活動性の指標としての性格と,カラオケ場面での 行動とはかなり密接な関連があることがわかった。とくに,カラオケのもっとも主要な機能で ある「FI:自己アピール」との関連が顕著であった。また,カラオケの場では,副次的な目 的である「Fll:歌以外」の楽しみに対する積極性が,一般的活動性が低い者ほど強いことは

興味深い。

5.歌唱力の評価とカラオケ利用時の行動

 カラオケ利用時の行動を規定するもう一つの要因として今回取り上げたのは,歌唱力の評価

一137一

(14)

である。この項では,その単独効果を検討する。

 自己の歌唱力の評価について,調査バイアスを防ぐため,自己評価と他者評価の認知という 2形式の設問をした。両者の相関は非常に高く(r=O.7887),予想したほどのズレはみられ

なかった。両者の平均値にも有意な差はなく,同じ程度の評価をしていることがわかったが,

いずれも中点より,人並以下の方向にずれており(自己評価:M=2.77,他者評価の認知:M

=2.81),やはり,照れなどの効果で若干低い評価をしたものと思われる。表8に,両方の評 価をクロス集計した結果を示しておく。自己評価と他者評価の認知で同一の評価をした者(表

8の口部分)は,167人(73.2%)であった。

表8 自己の歌唱力についての自己評価と他者評価の認知の関係

他者評価の認知

どちらかといえば どちらかといえば 自己評価

人並以上       人並

l並以上 人並以下 人並以下

合計

人並以上

ヌちらかといえば人並以上

l並

ヌちらかといえぱ人並以下

l並以下

口 3 1

 1    3

 13・ ﹇96﹈ 3    11      2

 9

 8

 2

 9(3.9)

R4(14.9)

撃撃戟i48.7)

S4(19.3)

R0(13.2)

合 計

9(3.9) 27(ll.8)125(54.8)

45(19.7)

22(9.6) 228(100.0 単位:人  ( )内は%

 歌唱力の評価がカラオケ利用時の行動に与える影響を検討するため,自己評価と他者評価の

認知のそれぞれの得点に基づいて,サンプルを3群に分けた。すなわち,「人並以上」「どちら かといえば人並以上」と回答した者を人並以上群,「人並」と回答した者を人並群,「どちらか

といえば人並以下」「人並以下」と回答した者を人並以下群と分類した。この分類を要因として,

カラオケ利用時の行動の3因子について,それぞれ一元配置の分散分析を行った。分散分析結 果の概要を表9に,評価の高低別の平均値を図4に示す。

 分散分析の結果を見ると,自己評価,他者評価の認知の双方とも,すべての因子について要 因として有意な効果があることがわかった。自己評価,他者評価の認知とも,その効果は同一 傾向を示している。すなわち,歌唱力評価の高い者ほど「FI:自己アピール」や「F皿:も

りあげ」への積極性が高く,逆に,「Fll:歌以外」の楽しみへの積極性は,歌唱力評価の低 い者ほど強いことがわかった。要因の結果としては,前項で検討した性格特性の効果よりも明 確な差が現れている。とくに「FI:自己アピール」への効果は明瞭である。図4では,FI の目盛り間隔が図3の2倍になっていることに注意されたい。

(15)

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響139

表9 歌唱力評価によるカラオケ利用時の行動の分散分析結果        (有意性)

    因子

v因

  FI ゥ己アピール

FH

フ以外

 Fm

烽閧?ー

自己評価

シ者評価の認知

***

磨磨

**

**

***0.1%水準,**1%水準,*5%水準で有意

 40

 ヨ 

『 ・・

自34 己32 ζ3。

、L z6

 26 FI

人並以上

人並

人並以下 人並以上

人並

人並以下

人並以上

人並

人並以下 Fロ︵F皿︶ 歌以外⌒もりあげ︸

210987650  40

 38 亨36 自34

亨・・

,し 2s

ピ30

 26

 0

FI

       者   価     ***0.1%水準,**1%水準,*5%水準で有意 図4 歌唱力の評価とカラオケ利用時の行動

人並以上

人並

人並以下

人並以上

人並

人並以下

人並以上

人並

人並以下

F∬︵F皿︶ 歌以外︵もりあげ︶

210987650

6.性格と歌唱力の評価

 カラオケ利用時の行動に影響する要因としての性格と歌唱力の評価は,その単独効果の検討 において,いずれも規定要因として有意な効果がみられた。しかし,歌唱力の評価の方がより 明瞭な効果を示していることもわかった。では,カラオケ利用時の行動は,性格と歌唱力評価 が相乗的に規定するのであろうか,それとも要因双方の相関が高く,いずれかの効果は見かけ のものに過ぎないのだろうか。個人の性格から予想される行動と,カラオケ利用時の行動との 落差を検討するために,性格と歌唱力の評価との関係を検討することとする。まず,各性格特 性の高低別に歌唱力の評価の平均値を算出し,分散分析によって比較することとした。その結

果を表10に示す。

 各性格特性の高低別の歌唱力の評価の平均値を見てみると,自己評価でも他者評価の認知で も,のんきさを除く3つの性格特性において有意差がみられた。いずれも各性格特性の高群は 5段階評定の中点である3点(人並)にきわめて近い平均値を示しており,全体としては,若 干控えめな評価と考えられるものの,各性格特性の低群との差は明瞭であった。とくに支配性

ではその傾向は顕著であり,高群の平均値は中点よりも,人並以上よりの得点を示している。

一139一

(16)

表10 性格特性の高低別の歌唱力評価の平均値

自己評価

他者評価の認知

  歌唱力

@   評価 ォ格特性

性格特性の分類 瘡Q 中群 高群

分散

ェ析 多重比較

性格特性の分類 瘡Q 中群 高群

分散

ェ析

多重比較

一般的活動性

2.20 2.70 2.96 *** 高〉低 2.52 2.68 2.97 〉低 のんきさ 2.57 2.80 2.80

N。S.

2.50 2.77 2.88

N.S.

支配性 2.34 2.73 3.02 ***

高〉中,低

2.49 2.72 3.09 ***

高〉中,低 社会的外向

2.29 2.72 2.89

高〉低 2.44 2.67 2.96 **

高〉中,低

(註) 多重比較の欄は,10%水準で有意差の見られたものをまとめて表記した

また,この性格特性のみに高群と中群との有意差も見られる。これらの結果から,一般的活動 性,支配性,社会的外向の3つの性格特性においては,その特性の傾向が強いほど自己の歌唱

力の評価は高いことがわかる。支配性においては,とくにそれが著しい。

 性格と歌唱力評価の全体的な関係がわかったところで,実際の歌唱力の評価の分布を詳しく 検討してみることとする。図5は,各性格特性の高低の分類別に歌唱力の評価の分布を図示し

たものである。これを見るとわかるように,平均値の比較で有意差のなかった,のんきさでは 明確でないが,その他の3つの性格特性では,低群から高群へ移るにしたがって,歌唱力評価 の分布が明らかに高い評価の方向へとシフトしている。とくに「人並以上」「どちらかといえ ば人並以上」の高い評価をしている者の割合を見ると,のんきさを除く3つの性格特性の低群 では非常に小さくなっている。一般的活動性低群において,他者評価の認知が高い者の割合が

12.9%であるのが低群の中ではもっとも多く,他はすべて1割以下である。逆に,「人並以下」

「どちらかといえば人並以下」という低い評価をした者は,のんきさを除く3つの性格特性の 高群においては2割から2割5分程度であるのに対し,対応する低群での割合は5割前後であ る。すなわち,一般的活動性,支配性,社会的外向の3つの性格特性において,その傾向が高 い高群では,自己の歌唱力について,自己評価にしろ他者の評価の認知にしろ,4人ないし5 人に1人しか低い評価をしないのに対し,各性格特性の低群では,2人に1人程度は低い評価

をしていることがわかる。つまり,高群に属する者はあまり自分の歌が下手だとは思わないの であり,低群は人並ないしそれ以上だと思っている人と,人並以下だと思っている人が半々だ

ということである。

 これらの結果から第4項で検討した,性格特性のカラオケ利用時の行動への影響は,より明 確な効果をもつ歌唱力評価を介したものであることが推測される。すなわち,歌唱力評価の高 低は,カラオケ利用時の行動の3因子を規定する要因としてかなり有効であるが,その歌唱力 の評価は個人の性格特性に影響されているということである。結果として,各性格特性とカラ オケ利用時の行動との関係は間接的になり,歌唱力の評価とカラオケ利用時の行動との表面的

(17)

0

自己評価

20   40   60   80    100

(%)

0

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響141

他者評価の認知

般的活動性のんきさ支配性

20    40    60   

80    100

会的外向

ee高群Wtii$lgllliiiiii$uaZ

tWiiii$i iiigMZ中群一膠 gEillillgiElllwaua低群一

(%)

低群

、、

@、 1、 @、

、      、A      、

中群

、、 、 、 、、

@、

高群

どちらかといえば人並以上

人並以上 人並 どちちかと

「えば人並以下

@  人並以下

図5 性格と歌唱力の評価

な関係はやや曖昧なものになったのであろう。しかし,このような推測を確認するためには,

性格特性と歌唱力の評価とを同時に要因として取り込んで分析し,さらにふたつの要因間の交 互作用をも検討する必要がある。しかし,この項で検討したように,各性格特性の低群では歌

唱力の評価の高い者が非常に少なく,2要因をこのままの分類で同時に分析することは難しい。

そこで,次善の策として,性格特性の分類を,その特性が強い者(高群)と,強くない者(中 群+低群)の2分類として,次項で分析を行うこととする。これより,各性格特性の2分類を,

新たにそれぞれ高群,低群と呼ぶことにする。

7.性格特性と歌唱力の評価による2元配置分散分析

 カラオケ利用時の行動の3因子を基準変数として,性格特性と歌唱力の評価の2つを要因と する2元配置の分散分析を行った。変動要因の有意性の結果を表11〜13に,2要因水準間の各

一141一

(18)

組の平均値を図6〜8に示した。因子ごとに性格特性と歌唱力の評価の効果を検討することと

する。

①FI:自己アピール

 まず,歌唱力評価の要因について自己評価を指標として用いた場合を検討してみる。「FI

:自己アピール」は,性格特性単独の分析では,もっともその効果が明確な因子であったが,

ここでは一般的活動性の要因効果がみられなかった。また,支配性でも,その効果は単独の分

      表11 「FI:自己アピール」の二元配置分散分析の結果(各変動要因の有意性)

歌唱力の評価

自己評価

他者評価の認知

変動要因 変動要因 変動要因

フ唱力 性格特性

性格

チ性

歌唱力

フ評価

交互

?p

性格

チ性 の評価

交互

?p

一般的活動性 n.S.

***

n.S. n.S.

***

のんきさ ***

n.S. n.S.

***

n.S.

支配性

***

n.S. n.S.

***

n.S.

社会的外向 ** ***

** *** **

        ***0.1%水準,**1%水準,*5%水準,†10%水準で有意

F40     F40     F40     F 40 135   。 135   .。 135   ° 135

自3。    自30    自30 (e   自3・  ・一一 °

;25 一般的活動性925。のんきさ925・ 支配性 ;・5 社会的外向

ヱ・と_三勤L三蓬」・L三i選鞘・と_霊

   人人人  人人人  人人人  人人人    並並並  並並並  並並並  並並並

   以以 以以 以以 以以    下上 下上 下上 下上

  歌唱力の自己評価     歌唱力の自己評価     歌唱力の自己評価     歌唱力の自己評価

。・・   F・・    F・・   F・・

135     135   .。 135   .。 135

昌・・   ° §・・.. t 昌・・  一゜! 昌・・ !e・・…、。

     一般的活動性 ア25    のんきさ  ア25    支配性   ア25    社会的外向 ア25

工2L三野L三i劃・と_塑 1・と⊇

   人人人  人人人  人人人  人人人

   並   並   並       並   並   並      並   並   並       並   並   並

   以以 以以 以以 以以    下上 下上 下上 下上

   他者評価の認知      他者評価の認知      他者評価の認知      他者評価の認知

   図6 性格特性と歌唱力評価の水準間の組み合わせによる「FI:自己アピール」の平均値

(19)

カラオケ装置が行動の積極性に与える影響143

析の場合よりもかなり暖昧になっている。この2つの性格特性は,歌唱力の自己評価との関連 がもっとも顕著なものであり,この要因単独の分析での効果は,歌唱力評価の要因を通しての 間接的なものであったことが,この結果から示唆されている。これに対して歌唱力評価の要因

は,非常に明確な効果を示している。すなわち,歌唱力評価の指標である自己評価が高いほど,

自己アピールへの積極性は高い。取り上げた2要因の主効果がいずれも有意であったのは,の んきさと社会的外向を性格要因として取り上げた場合であるが,のんきさの場合には歌唱力評 価との交互作用はみられず,2つの要因は相乗的に効果をもたらすことがわかった。社会的外 向の場合には,わずかに交互作用がみられ,社会的外向の傾向が強くない者では,この傾向が

強い者よりも歌唱力評価の要因の効果が現れにくいことがわかった。

 次に,他者評価の認知を歌唱力評価の要因として用いた場合を検討してみる。この場合は,

3つの性格特性:一般的活動性,のんきさ,支配性に主効果がみられず,性格特性のカラオケ 利用時の行動への効果が,歌唱力評価を通した間接的なものであったことが,自己評価の場合

よりもさらに明瞭に示されている。ただし,一般的活動性では交互作用がみられ,一般的活動 性が強くない者の場合,歌唱力評価が高くても自己アピールへの積極性はあまり強くならない ことがわかった。唯一主効果が有意であった性格特性である社会的外向でも,交互作用がみら れ,歌唱力評価が,自己アピールへの積極性に効果があるのは,社会的外向の傾向が強い者に

限られることが示されている。

② F ll:歌以外

 歌唱力評価の指標として,自己評価を用いた場合も,他者評価の認知を用いた場合も,変動 要因のいずれも同一傾向を示している。すなわち,4つの性格特性はいずれも直接的な要因効 果を示しておらず,一方歌唱力評価の要因は,自己評価の場合も,他者評価の認知の場合もい ずれも,有意な効果を示している。性格特性として,のんきさを取り上げた場合を除き,すべ

表12 「FH:歌以外」の二元配置分散分析の結果(各変動要因の有意性)

歌唱力の評価

自己評価

他者評価の認知

変動要因 変動要因 変動要因

フ唱力 性格特性

性格

チ性

歌唱力

フ評価

交互

?p

性格

チ性 の評価

交互

?p

一般的活動性 n.S.

**

n.S. n.S.

**

n.S.

のんきさ

n.S.

** **

n.S.

**

支配性

n.S.

**

n.S. n.S.

**

n.S.

社会的外向

n.S.

**

n.S. n.S.

**

n.S.

***0.1%水準,**1%水準,*5%水準,†10%水準で有意

一143一

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