• 検索結果がありません。

中学校技術・家庭科の性格と目標

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中学校技術・家庭科の性格と目標"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

中学校技術・家庭科の性格と目標

大 沢 泉一

1 性  格

世界における技術発達の歴史をかえりみると,或る時期には極めて急速な技術め発展があ り,またその時代の社会機構や社会情勢のあり方によっては,極めて消極的でその発展がむし ろ阻止された時代が見られる。技術はこのように急激な進歩と沈滞とが繰返されながら今日ま で蓄積されてきたものであり,そういう見方からすると,現代は技術革新時代の一つ「として最

も華やかな時期であるといえよう。

 このように技術の発達には今日までいろいろな消長があったという事実だけに止らず,技術 の発展はそれ以後の人間の生活様式や社会機構に大きな変革をもたらすものであり,また新し い社会機構や社会情勢はその時代の技術の進歩・停滞に大きく作用するものである。例えば前 者の著しい例としてはわれわれは,18世紀後半から19世紀初頭にかけての産業革命による近代 社会機構の確立をあげることができるしまた,後者の例としては封建社会における技術の甚だ しい停滞や現代社会における科学技術の目ざましい展開をあげることができる。しからば近代 における技術の特質は果して何であろうか。

 それは先づ何といっても近代技術が科学と強い結びつきをもっておるということであろう。

もと技術は科学なるものが未だ生まれない以前から既に存在し専ら人間のカンやコツのみに委 ねられたものであった。漸く16世紀後半に入って機械および応用力学に関する研究が始まり,

初めて科学的な力学理論の発展が見られ,科学と技術との握手がこの頃より始められた。特に 18世紀に入れば科学をもたない技術としては最早行きつくところまで行きついてしまい,職人 の直観だけでは一歩も先に進めない状態となり,これ以上の進歩は科学的分析の応用如何に かかっていたということができる。かくしてその時代の研究家は思索と科学的実験とを重ねる ことによって,初めて18世紀後半の産業革命の基礎をうち立てることに成功してする。このよ うにこの時代から初めて科学と技術とは相たつさえて,進むことになった訳であるが,20世紀 に入れば科学も技術も共に前世紀に比べて一段と次元の高い発達を遂げ,科学を基礎とした技 術即ち科学的技術なるもの,の性格が極めて明瞭に現はれてきている。

 思うに今日までの人間の歴史を通じて科学技術の進歩発達の最も著しい時代は現代であり,

特に第二次世界大戦以後の進歩はまことに目ざましく,世界は二つの陣営に分れてその優劣に 世界の目が集中されている状態で,科学技術の発展に大きな刺戟を与えている。

 このような時代に「わが国が世界各国に伍して独立国家として確固たる地位を築くために は,科学技術の振興に一段の努力を尽す必要がある。すでにここ数年来学校教育のすべての段 階を通じて,基礎学力ないしは科学技術の基礎である数学,理科教育を含めて科学技術教育の

       一47一

(2)

強化を図ることが要請され…(注1)…ζの要請にこたえて,中学校指導要領の改訂に当っては

「道徳教育の強化,基礎学力の充実,とならんで特に科学技術教育の向上を図る」ことが取り 上げられた。(注2)

 このような国民教育に対する改革は実はわが国だけの問題ではなく,世界における先進諸国 はみな同様な趨勢にあり,各国先を争って科学技術教育の強化を図りつつある実情であり,イ ギリス,アメリカ,ソ連等みなわが国より早く教育の改革に着手している。今参考までにそれ ら各国の動向を概観すれば次のようである。

 (イギリス)……長い伝統をもっていたイギリスは第二次世界大戦直後教育制度を改革し,

戦後の科学と生産技術の発展に即応していくため,1944年に新たに教育制度を制定した。この 法律によって中等教育制度のなかに三種の中学校(グラマー,テクニカル,モダーン)を設け 中等普通教育のなかに技術教育の正当な位置づけを行なった。このうちモダーン・スクールは 日本の中学校に当るもので,ここでは最初一般的教養としての技術教育ということより,学年 の進行につれて職業的傾向を強める方向をとっていたが,1956年の技術教育白書による技術教 育5ケ年計画が定められたことによって,従来の方法が検討されている。技術教育白書によれ

 「技術教育はあまり狭い職業的なものであってはならない。急激な変化は現代の特徴である から・将来の技術教育の主な目的は・少年少女が将来の生産技術に適応できるように教育すべ きである。技術の学習は…数学と科学の基本の上に強固な基礎をおかなければならない。その 基礎である原理に習熟していれば,新しい構想と新しい技術を採用することが一そう容易であ

る」と。この白書は一般に好意をもって迎えられているということである。(注3)

 (アメリカ)……アメリカでは普通教育における技術的教科としてはインダストリアル.ア ーツが小学校からシニア・ハイスクールまで課されている。その代表的なものは日本の中学校 に相当するジュニア・ハイスクールでの教育で,多くの州で必修の教科になっている。その且 的とするところは現代の生産技術の発展に対応して,アメリカ青年の総べてに現代の産業様式 の理解と,その産業の基礎的技術を習得させるためのもので職業的技術教育とは別な普通教育 の教科として実施されている。併しこれもさまざまな傾向を辿りながら今日まで進んできたも ので・1940年代では産業の一般的理解と基礎的技術の習得を目的としながらも,自然科学的基 礎をもたない技術教育が行なわれていたが,1950年代からは現代技術文明の概観をつかませる ための教科として,生産技術を主体とし,特に最近では近代技術の変革に対応して,電気や通 信が強化され「エレクトロニクス」が新たに学習領域としてとり入れられ,大量生産方式が実 習工場に採用されつつあるという。(注4)

 (ソビエト)……革命前のロシアは科学や産業の遅れた国でその一般的水準は低く国民の大 多数は文盲であった。そういう状態からスタートしソ連が今日の一流国として世界に確固たる 地位を築くまでに発展したことは,一つには第二次世界大戦に戦勝国となり得たためであるこ とは勿論であるが,それ以外にソ連の近代国家としての発展に大きく貢献したものとしては,

(3)

先づ何といってもソ連における科学技術の著しい発展をあげなければならない。そしてこの科 学技術を育て上げるための基盤となったものはソ連における国民教育水準の向上と,総合技術 教育の展開である。総合技術教育は10年制普通教育のなかで行なわれるものでその目的とする

ところは「生産の重要な部門について理論と実際において知らせる」ことである。

 総合技術教育では第1〜4学年の低学年においては「手の学働」という教科が課されるが,

これは人間の労働活動について最初の理解を与えるものでありまた,第5〜7学年の「実際作 業」では学年の進行につれて理論的な学習と論証が重んぜられるようになり,理科・数学との 関連を考え,作業に先だって理論的知識や基本法則を重視するもので,自然科学と技術との有 機的な結びつきを図っている。そして第8〜10学年の「生産の基礎」が総合技術教育の最終段 階として重要なものとなっている。

 この高学年の総合技術教育では現代の生産の機械化・自動化の基礎である機械技術と電気技 術に重点がおかれていて,工作機械・自動車・トラクターなどの作用の原理,それをつくる材 料や機構,および各産業の基礎動力としての電気技術等生産の基礎に関する部分が含まれてい

る。(注5)

 わが国における技術教育については職業教育としての専門教育は既に相当の歴史をもってお るが,普通教育としての技術教育は今始まったばかりである。思うに最近における科学技術の 驚異的進歩と生産分野における革命的な変革は,われわれの日常生活のみならず思考そのもの に対しても少なからぬ影響を与えている。世は人工衛星や原子力の時代であり,交通・運輸・

通信の発達は世界の距離を極度に短縮した。この新しい時代においてわれわれがその生活を確 立し,文化的生活を営んで行くために,またわが国産業や国民生活の向上発展を図るために,

各人の近代技術に対する教養を一そう充実することは重要な課題である。

 今近代技術なるものを今日の発展の段階で具体的にみれば,生産面では機械の自動化,高速 化による大量生産・生産管理・オートメーションと急速な発展があり,また交通・運輸・通信 面では自動車・航空機・ロケットおよび新しい通信技術の発達等が見られる。なおまたそれら 両面を包括するものとして電子工学の発達特に20世紀科学技術の最高の達成とみられる原子力 の解放がある。しかし中学校の技術教育を考える場合,これら現代の先端を行く科学技術がそ のまま教育の対象となり得ないことは当然である。

 思うに現代技術文明の基礎をなすものは生産技術の進歩発展であって,互換式大量生産方式 を採用した近代産業はその生産様式に根本的な変革をきたしている。そしてここに要求される

ところは最早や従来の単なる技能的訓練ではなく,その生産全般に亘っての理解と,その基礎 となる科学的,技術的な教養である。かかる技術的基礎の変革はその水準が高度化すればする 程・若い世代に対して科学と技術の土台となる基礎的な科学技術を習得することが要求され

る。従ってこの意味からは青少年の技術教育は現代科学技術に通ずる生産技術でなければなら ないし,また将来の発展性が期待されるものでなければならない。

 しかし現代社会の今一つの大きな特徴は交通・運輸・通信の急速な進歩発達であってこれら

       一49一

(4)

がわれわれの生活において果す役割は極めて大ざい。これらの進歩発達によって世界の距離iは 極端に短縮せられており,近代科学枝術は現代に生きる者の生活のなかで,その日常生活に融 けこみ常にわれわれの身近かに接するものであり直接肌に触れてくるものである。従ってこれ ら近代技術の発展に対応してそれらに関する基礎的知識技能は青少年が今後現代に適応して行 くために必要な教養であり,その生活の向上発展を図る上で必要な大切な要素である。この意 味からは青少年の技術教育は日常生活や社会生活と直接結びついた所謂生活技術を含まなけれ ばならない。

 このように中学校における技術教育が生産技術と生活技術との両面を含むべきものであると すれば,それらにおいて共通的にその根本にある特質は何であろうか。それは近代技術の根本 には科学があり科学と技術の強い結びつきが見られるということであろう。

 もと既成技術を土台として科学が起り,後に科学の指導性が極めて強化される径路を辿って おるが,今日では両者は殆んど融けあって極めて強固な結合をもっている。即ち科学的基礎の 上に立つ技術こそ近代技術の特質であるといえる。科学は冷静に知るという理論的なところに 眼目があり,技術はいいものをうまく作りたいという実践のところにねらいがある。このこと から理論的基礎の上に立つ実践こそ近代技術の本質であるといえよう。

 かく見れば中学校の技術教育が実践を重んじる教科であることも,その教育が単なる作業に 終始するものでなく,理論的根拠の探究や,理科・数学との関連が重視されなければならない 理由も明かとなる。このことは中学校技術教育における基本的な問題として重視さるべきもの で,これらの点に関し充分な配慮のもとに行なわれる教育によって初めて青少年の近代技術に 対する教養が養はれるものと考える。

亜 目  標

 1,総括目標

 今日までの入間の歴史を通じて現代の著しい特徴は科学技術の目ざましい発展と近代産業の 根本的変革である。特にこれらの進歩発達は前世紀に比べて極めて顕著でありかかる社会情勢 のなかでそれに適応してわれわれが文化生活を営んで行くためには,各人が近代技術に対する 理解と教養をもつことが必要であり,またそれに応ずる実践能力を身につけることが大切であ る。これを国民的立場から見るとき,この新らしい世界情勢に応じて,わが国としても国家産 業の向上発展が必要であり同時に国民生活水準の高揚が図られなければならない。この要求に 応ずるため

 ①国民全般の科学技術に関する教養を高め  ②わが国産業の発展を図り

 ③国民生活の向上を図る(注6)

 計画のもとに,国民教育の一環として中学校普通教育のなかに新たに技術・家庭科が設けら れ,このなかで青少年の近代技術に関する教養を一そう充実することとなった。

 即ち中学生に対し・

(5)

 ①近代技術に関する基礎的な技術を習得させ  ② 技術に関する理解を与え

 ③創造的実践的能力を養う(注7)

 こととし,その総括目標としては次の如く掲げられている。

 「生活に必要な基礎的技術を習得させ,創造し生産する喜びを味わせ,近代技術に関する理 解を与え,生活に処する基本的態度を養う」(注8)

 ここにいう生活に必要な基礎的技術という言葉は,その表現が梢々曖昧であり,生活なる語 を生産生活とみるか消費生活とみるか,その意味のとり方によっては指導内容も異なってくる と思はれるが,むしろここでは近代技術の基礎としてその意味を理解することが当を得たもの であると考えるしそのねらいも明瞭となってくる。このように近代技術の基礎としての技術と 考えれば,当然そこに技術と生産との関連として生産技術があり,また技術とわれわれの日常 生活との関連として生活技術があることとなる。即ちこれら近代技術に対する教養や実践力を 高めることによって,産業の発展と国民生活の向上を図ろうとする意図が達せられることにな る。中学校の技術教育が生産技術を対象とすると同時に一方生活技術もまた含まれなければな らないとする考えは既に前節において述べたところであるが,何としても総括目標の上のよう な表現に物足りなさを禁じ得ないし,また事実各学年の指導内容も概ね日常生活的であって・

生産の基礎に充分触れ得ないうらみがある。その点イギリス,アメリカ,ソ連等主要な国々に おける技術教育においては,その目標が寧ろ生産技術を対象とすることが明かに表明されてお り,例えばアメリカにおいては青少年の総べてに対し「現代の進んだ産業様式の理解と産業の 基礎的技術を習得」させようとしているし,またソ連の総合技術教育においては「生産の重要 な部門について理論と実際において知らせる」ことを目的としていることなど考えあわせれ ば,わが国の場合一そう生産技術的内容の強化が望まれる次第である。

 2,各学年の目標  (1)第1学年

 第1学年の総括目標は

  ①設計・製図,木材加工,金属加工,栽培に関する基礎的技術の習得   ②考案設計の能力の養成

  ③ 技術と生活との関係の理解

  ④ものごとを合理的に処理する態度の養成(注9)

 の4項目に分けることができる。即ち第1学年においては,小学校における科学的,技術的 芸術的教育の成果をもととして「設計・製図」「木材加工・金属加工」「栽培」に関する基礎 的な知識,技能,態度を習得させることを目標とし,それらの実践を通して,考案設計の能力 を養うとともに,ものごとを合建的に処理する能度を養成しようとしている。特に③の「技術 と生活との関係の理解」という点に注目すれば,第1学年では卑近な日常生活との関連におい て技術と生活との関係を理解させようとするもので,この点上学年のこれに対応する項目とし        一51一

(6)

て例えば,第2学年においては「技術と生産との関係の理解」となり,第3学年においては「

近代技術と生産や生活との関係の理解」となっているなど,低学年の日常生活的なものから学 年の進行につれて,生産との関連およびより高い社会生活への連繋がはかられ,その指導内容 が次第に高度化されていることがうかがえる。

 今参考のため外国の1例としてソ連の総合技術教育についてみれば,第1〜4学年の低学年 においては「手の労働」という教科があり,ここでは手作業を中心とした製作が行なわれてい る。勿論これはわが国小学校程度の低学年であるから,使用される材料も紙,布,粘土等で所 謂手工に近いものであるが,そのねらいは人間の労働活動について最初の理解を与えようとす るもので,特に技術模型の製作では,スケッチや図面を書き,物指や定規を使って正確に計 り,精密な仕事をする習慣を養おうとしている。次に5〜7学年になると木工材料,金属材料 を用いた「実際作業」の教科が設けられ「学校作業場での実際作業」が行なわれ,その中で教 科の系統性や理論的な学習と論証が重視され,作業の過程で自然科学と技術とを有機的に結び つけるよう努力されている。そして最後の段階が第8〜m学年の「生産の基礎」である。

 わが国の技術教育において中学校低学年の科学技術教育の第1歩として「手の労働」なる性 格を持たせることは意義のあることである。中学校低学年までの児童生徒に対して,彼等の年 令相応の物を作る能力を得させることは教育上大切なことであって,彼等が自ら物を作ること ができ,彼等が自ら物を創造する可能性を取得することは,彼等自身にとってもまた大きな喜 びである。これを知識の発達という点から考えても,ただ頭からだけ湿る学習ではなく,手を 働かすことによって学ぶ知識は彼等の年令では欠くことのできない重要なものである。かくし て理論的な学習と論証を重視しながら「手の労働」を実施することによって,実践を通して,

物事を処理するための合理的態度や能率的に物を完成する基本的能力を養うことができる。

 次に技術と生産や生活との関連については,これを現実の場における応用面から考えると,

その一面は産業における生産技術への応用であり,他の一面は日常生活,社会生活への適用で ある。即ちその一つは生産技術と直結するものであり他の一つはわれわれの日常生活,社会生 活において直接われわれの肌に触れてくる技術である。この二つのものは夫々その質を異にす るものではなく,根本において同じ源から発出するもので,それが適用される現実の場におい てみれば,生産技術的なものともなるしまた生活技術的なものともなる。従って中学校技術教 育においては,根本においてこれをとらえることが心要であるがしかし,教育が技術の発展と 現実への繋りまで推し進められると,産業と日常生活の何れに重点を置くかによって教材の選 び方も異なってくる。従って中学校技術教育がこの両面を包含するものとすれば,その何れに 重点を置くべきかは中学校生徒の心身の発達程度と時代の要求によって決定すべきもので,要 は最高の技術に伸び得るような基礎的技術で,しかも標準的なものを,中学生の身に適合し得 る如く,教育的配慮に従って取り入れることがなされなければならない。

 この意味から,第1学年においては最も基本的な技術的操作を含むものを主体とし,しかも 身近な生活技術的なものとして児童生徒の日常生活に直結するものから教材を選ぶことが適当

(7)

であり,これを手の労働的実際作業として指導することが大切であろう。そしてかくすること により,彼等は技術と生活との関係の理解に第1歩を踏みだすことになろうし,また彼等の将 来の成長や発展に対して必要な準備を行なうことになるであろう。

 しかしここで第1学年に対して定められた指導内容の実際について一言所見を追加すれば,

その内容が特に第1学年では極めて初歩的な作業に属する操作も含まれていて,寧ろ小学生な らば大きな興味を以ってこなし得るであろうと思はれるものも見受けられる。従ってこれらの ものは,できれば小学校上学年に送りこむこととし,中学校ではこれら小学校における基礎的 技能を土台としてその上に基礎的技術を積み重ねるよう安配することがより望ましいと考え る。そしてかくして生じた時間の余裕は技術教育内容の充実のために有効に利用できるものと 考える。

 (2)第2学年

 第2学年の総括目標によれば

  ①設計・製図,木材加工,金属加工,機械に関する基礎的技術の習得   ② 考案設計の能力を高める

  ③ 技術と生産との関係の理解

  ④ 生活の向上と技術の発展に努める態度の養成(注1の  となっている。

 第2学年では第1学年における「設計・製図」「木材加工・金属加工」の学習を発展させる ことは勿論,機械に関する基礎的技術を習得させるもので,②の考案設計の能力を高めるとと もに,③の技術と生産との関係を理解させようとするところに,第1学年と比べ注目すべき要 点があると考える。学年の進行につれて能力を高めようとするねらいは教育として誠に当然の ことであるが考案設計の能力を高めようとするところに生活技術的なものから,生産技術的な ものへの発展が図られているとみることができる。考案設計は製作の一部であり物の完成へ進 むための重要な一つの段階として物の製作と緊密な関連をもっておるもので寧ろこれなくして は正確で緻密な物の完成は到底望まれない。この意味で考案設計能力は生産技術につながるも のであり生産技術における大切な要素としての「設計・製図」への発展性をもつものである。

ここに第1学年の考案設計の能力を一そう高めた第2学年における「設計・製図」は生産技術 としての性格を強化し,生産との結びつきが強められておるものとみることができる。

 次に技術と生産との関係の理解という点については,第1学年の技術と生活との関係の理解 と対比して考えるときその相違点がはっきりすると思う。即ち第1学年から第2学年への移行 は「設計・製図」「木材加工」「金属加工」を通じて,その指導内容が日常生活的技能の段階 から,生産的鼓術の段階え高められ,生産現場えの適用の可能性を持ち,同時に現代における 各種生産様式の理解にまで達することを期待するものとして,教育内容の充実が図られている ものと考えられる。このことは第1学年の木工用工作機械の使用から第2学年ではボール盤,

旋盤,研削盤等代表的な金工用工作機械の使用まで,その指導内容が高められている点からも

       一53一

(8)

うなづける訳である。

 しかし指導目標としてはこのような方向をとりながらも,実際の具体的内容においては,金 属加工として取扱はれる分野が狭く,現代生産様式の理解にまで達することは甚だ困難であ り,示された基礎事項の中にはこれら生産様式の理解に関する項目が何等含まれていない。実 は中学校3年間を通して,これら工作技術に関する内容は第2学年で終っておるのであって,

工作機械等使用のこれが最後の段階である。従ってこのことを思えば尚更上述の感を深くする ものであって,この時機において技術と生産との密接な関連について尚一そう慎重に配慮され ることが望まれる次第である。

 (3)第3学年

 第3学年における総括目標は

  ①機械および電気に関する基礎的技術の習得   ② 近代技術を活用する能力の養成

  ③近代技術と生産や生活との関係の理解   ④ 生活に処する基本的な態度の養成(注i1)である。

 技術教育の内容は学年の進行につれて,先づ卑近な生活技術から生産技術えの発展を辿らな ければならないことは既に述べてきたが,第3学年においては中学校教育の最終段階として,

これを総括する立場から一そうその内容を高め,近代技術としての性格を強めると共に,これ ら近代技術を活用する能力と自信とを与えることが望まれる訳である。

 産業の近代化による生産の拡大発展にしても,また交通・運輸・通信の進歩発達にしても,

その基礎をなすものは機械および電気に関する技術であって,これはまたわれわれの日常生活 にも深い繋りをもっておる。か㌧る近代技術のなか㌧ら基礎的でしかも生産や生活に共通する ものとして,エネルギー利用の手段方法を知ることは極めて重要なことである。

 専ら人力や動物力にたよっていた未開の時代から人類の知恵は次第に進歩し,動物力以外の 自然力の利用の第一歩として,風力,水力の利用を考え,続いて自然界に埋蔵された無限のエ ネルギーを掘り起すことに人間は成功した。それは石炭,石油であり,電力であり,その平和 的利用が今後に約束されている原子力で…ある。このように長い歳月を要し積み重ねられてきた エネルギー発達の歴史は,そのま\人類発展の歴史であり,エネルギーの利用や開発の問題は 人間生活の根本問題として技術教育の中にとり入れられるべき重要問題である。

 今これらの点を考慮し,機械および電気に関する指導内容を考えれば,機械に関しては,機 械材料の技術学的性質やその処理方法から,機械の構造や取扱方法があり,重要なねらいの一一 つとしてエネルギー利用の各種の形式についての指導が含まれるであらうし,また電気に関し ては,エネルギー源としての電気的動力機械,熱エネルギー利用の手段としての各種電熱機 器,およびわれわれの日常生活の必需品とみられる照明器具から,現代生活の特徴とみられる 各種通信機器まで実に豊富な教材が考えられる。

 これらのものは総べて生産や生活現場において欠くことのできない重要機械器具であって,

(9)

どの一つを取り上げても近代技術の基礎として重要なものばかりである。従ってこれらに関す る指導は青少年の技術教育として大切であり,これらに関する知識技能は直接生産に関与する と否とにか\わらず,一般に望まれる技術的素養である。

 この意味から考えると,現在第3学年に割り当てられた機械および電気に関する教材は適当 なものと考えられるが,これを実施するに当っては,豊富な内容に対する授業時間配分の問題 や,生徒数の割りふりの問題から,施設・設備の充実の問題まで,考慮すべき多くの問題があ

り,これらの方面に幾多の困難が予想される実情である。(昭和37年9月末完了)

参  考  文  献

(注i)(注2)中学校技術・家庭科研究の手びき P・1

(注3)桐原毒見著生産技術教育 P43〜,岡,三枝,長谷川編科学技術教育の実際 P19〜.

(注4)同上 P34〜.

(注5)矢川徳光訳教授学(上) P148〜岡,三枝,長谷川編科学技術教育の実際 P45〜.

(注6)中学校技術・家庭指導書 P・1

(注7)同上 P・1

(注8)同上 P・2

(注9)同上 P・iO

(注10)同上 P・26

(注11)同上 P・39

(参考図書)

岡,三枝,長谷川編 科学技術教育の基礎。

岡,三枝,長谷川編 科学技術教育の実際。

S・リリ一著小林,伊藤訳 人類と機械の歴史。

桐原藻見著 生産技術教育。

村上芳夫著 技術指導細案。

松岡久雄著 工業概論。

文部省 中学校技術・家庭科指導書,研究の手びき,指導の手びき。

一37.10.17受付一

…55一

参照

関連したドキュメント

「技術力」と「人間力」を兼ね備えた人材育成に注力し、専門知識や技術の教育によりファシリ

・学校教育法においては、上記の規定を踏まえ、義務教育の目標(第 21 条) 、小学 校の目的(第 29 条)及び目標(第 30 条)

人間は科学技術を発達させ、より大きな力を獲得してきました。しかし、現代の科学技術によっても、自然の世界は人間にとって未知なことが

 履修できる科目は、所属学部で開講する、教育職員免許状取得のために必要な『教科及び

 履修できる科目は、所属学部で開講する、教育職員免許状取得のために必要な『教科及び