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[書評] ゲー・グレービッヒ「社会主義世界体制に おける国際分業と外国貿易」

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[書評] ゲー・グレービッヒ「社会主義世界体制に おける国際分業と外国貿易」

その他のタイトル [Book Review] The International Specialization and the Foreign Trade in the Socialistic World System

著者 杉本 昭七

雑誌名 關西大學商學論集

巻 5

号 6‑7

ページ 511‑525

発行年 1961‑02‑28

URL http://hdl.handle.net/10112/00021706

(2)

ゲー

書 評

・グレービッヒ

G . G r a b i g ,   I n t e r n a t i o n a l e   A r b e i t s t e i l u n g

n  u d  A uB en ha nd el   i r n   s o z i a l i s t i s c h e n   W

e l t s y s t e m , e r   B l i n ,

1

 

9 6 0  

生産面との関連にお

. . .  

社会主義諸国間の経済関係の理論的分析は︑生産面における

協力と特化の歴史が浅いことのために︑貿易あるいは国際経

済の研究の湯合

1

外国貿易収益性計算︑価格調整︑価格決

定︑為替収益性︑市場調査の方法等

I

いては殆どとりあげられなかったということができる︒しかし

一九五六年の第七回経済相互援助会議により社会主義国際分業

の第一歩がふみ出されて以来︑流通面だけからの分析方法は︑生

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

長期的見通しをその中にもっている︵たとえば経済的国境の消 産面からの分析によって補われなければならなくなった︒ここに社会主義諸国間の経済関係に︱つの新しい段階をみることができる︒これとともに︑研究もこの新しい課題にこたえなけれ

ここで紹介するゲー・グレービッヒの書物は︑この新しい段

階の要求にこたえるものである︒彼は︑一貫して生産と貿易と

の相互作用において発展法則を把握しており︑この意味におい

て注目すぺき労作である︒またこの書物は︑社会主義の発展の ばならなくなった︒

杉 本

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易

(3)

512 

Jの小冊子

(1

0二頁︶はつぎの構成からなっている︒ 社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

減︑社会主義圏独自の価格基礎の問題︑その他︶︒

生産と流通を統一して把握し︑その運動法則を明確にしようと

していること︑またそのことを通じて社会主義の発展の長期的

展望を示し︑さらにそのなかに社会主義貿易論の体系化の努力

さえみうること︑これらの点において非常に興味深いものであ

る︒また︑この書物は︑わが国における社会主義貿易研究が︑

今なおその方向を明確ならしめておらず︑単に紹介の段階にと

どまっている時︑今後の社会主義貿易研究に大きな刺戟をあた

グレービッヒは︑すでに松井清︑吉信粛両教授によって翻訳

l l  

された﹁社会主義世界市硼﹂︑また木下悦二教授によって紹介② された﹁社会主義世界経済体制発展の諸問題﹂の著者コールマ

イとともに今後注目さるぺき人の一人である︒なおグレービッ

ヒには︑他に論文﹁国際生産特化が社会主義国の外国貿易にあ

G .  G

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i a l ,

 

以下本書の構成にそって紹介する事にする︒

界市場における価格形成の見通し 第二節 第一節 第三章 織的課題 第四節 社会主義世界体制における国際分業

第三節 社会主義国際分業の発展の諸特徴社会主義陣営における経済協力の形態と方法ならびにそれらの発展社会主義世界市場における外国貿易の諸機能国際生産特化が社会主義諸国の外国貿易にもたら

国際生産特化が社会主義諸国および社会主義諸国

間における貿易量と貿易構成とにもたらした成果

社会主義国際分業における外国貿易の経済的・組

社会主義世界市場における価値法則と価格

価値法則の役割と価格基礎の発展

国際生産特化をとくに考慮した場合の社会主義世 した成果 第二節 第一節

第二章社会主義国際分業体制における外国貿易の役割と課 第二節 第一章

第一節 序文

(4)

第一章﹁社会主義世界体制における国際分業﹂は︑一節﹁社会 主義国際分業の発展の諸特徴﹂と二節﹁社会主義陣営における

(4)  (3)  (2)  要な問題としてつぎの諸点をあげている︒ ること﹂︵五頁︶︒そしてこの新しい課題にともなって生じる重 している︒﹁生産の国際的専門化と協力の利点と成果を実現す として︑ここから社会主義貿易の新しい課題を次の様に定式化 れ︑社会主義国際分業と経済協力に新しい段階がはじまった︑ て社会主義諸国間の生産の合理的な特化と協力の問題が討議さ 序文においては︑一九五八年五月の経済相互援助会議におい

社会主義国家間の生産協力は︑

量︑貿易構成にどのように作用するか?・

貿

外国貿易にどのような経済的・組織的課題が生じるか?

外国貿易それ自体が社会主義国際分業にどのように積極

これらと関係して︑社会主義世界市場の価格のきそとし て何が要求されるか?

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

貿易

(2)  (1) 

プロレクリア国際主義によって結合する独立した社会主 多くの国に社会主義生産関係が生じたこと︑

経済協力の形態と方法ならびにそれらの発展﹂の二つからなっ

一節においては︑社会主義国際分業の特徴とその基礎は何で あるかということが問題となっている︒まず国際分業は一面で は生産力の発展を示すものであり︑他面において︑国際分業の 性格︑その発展の特徴︑形態および国際分業によってえられる 成果は︑生産関係によって規定されるとして︑国際分業を二面 から規定する︒すなわち︑生産力のみならず︑生産関係と結合 した社会経済的範疇として国際分業は規定されるのである︒だ から生産力の側面では︑資本主義の下で存在した物質的前提を さらに発展させること︑具体的には国際生産特化の際に︑現存 の生産能力の合理的な利用︑人口︑労働力の質と生活水準︑科 学および技術の発展︑国の交易関係等を考慮しなければならな いという問題が生じる︒他方生産関係の側面からは︑資本主義 国際分業のもたらした害悪︵例えば工業国と農業国への分化︶

の除去︑生産力水準の差をなくすこと︑後進国を先進工業国の 水準に高めるという課題が生じる︒そしてこのことを可能なら しめる条件として

(5)

514 

的に組織され︑社会主義陣営全体を包括する︱つの社会主義再Jのような社会主義国際分業の特徴と目的は︑具体的歴史的 れと一致するとしている︒即ち一面で社会主義生産関係が国際 ら︑社会主義国の一国の利益と要求が全社会主義世界体制のそ 基礎︵マルクス・レーニン主義理論︶︑同じ政治条件︵プロレク に移行する条件がつくられる︒ 義国家が形成されたこと︑ 社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

をあげている︒このように国際分業における生産関係視点の強

調から︑グレービッヒはユーゴスラヴィアの学者による世界市

場と世界経済に関する規定を否定する︒すなわち﹁ユーゴスラ

ヴィアの修正主義者は︑世界経済と世界市場を︑その社会経済的

内容︑所有関係︑階級関係とは無関係な空間的また量的範疇とし

て定義している︒彼らは社会主義世界体制の形成をプロックへ

の世界の分裂の結果として把握している︒彼らの見解によれば

二つの世界体制の存在は︑誤った政策と同義語であるので︑彼ら

は平和的共存の原則を二つの世界体制の融合へとおしひろげ︑

単一世界市場の復興を要求する︒その際︑彼らは同権と独立と

にもとづく国の協力の増大を︑社会主義への世界の前進とみな

す︒彼らは社会主義諸国間の関係に︑ただ一般的・民主主義的

そしてグレービッヒは︑社会主義諸国に同じイデオロギーの

生産過程が形成され︑他面独立した社会主義国家が存在するという条件が︑社会主義国際分業を可能ならしめる基礎となる︒そして国際分業の例として︑東ドイツが工作機械の種類を一九六0年迄に二0%減少させ︑プルガリアは二五種類から将来には

以上にのぺたところから︑グレービッヒは︑社会主義国際分業

の発展の特徴ならびにその目的をつぎのようにまとめている︒

①社会主義の基本的経済法則が社会主義国際分業の目的を規

定するR社会主義国際分業の発展は︑計画的過程である︒それは個

個の社会主義国︑社会主義世界体制の計画的・比例的発展︑

後進国の水準を先進工業国の水準に急速に近づげることを

含む︒これによって社会主義国全体が共産主義社会へ同時

⑧社会主義国際分業は︑社会的労働の節約︑労働生産性の上

昇︑そして国民経済収益性を高める重要な手段である︒ま

たそれは︑社会主義拡大再生産ならびに社会主義と共産主

義の物質的・技術的基礎をつくりだすための重要な国際的

(6)

条件の下で異なった経済的課題に具体化されなければならず︑

その具体的な課題に応じて経済協力の形態と方法が生じる︒そ

れを現在では経済相互援助会議が果しているのである︒

かくて︑二節﹁社会主義陣営における経済協力の形態と方法﹂

が問題となる︒まず経済協力の形態と方法を規定するものは︑

つぎの二つの条件である︒︱つは︑社会主義国際分業は社会主

義陣営の生産力を最大限に生かすような形態で行われなければ

ならないということ︒第二は生産力と生産関係の発展状態に応

じて︑社会主義国際分業の形態は︑低いものから高いものに発

展するということである︒この二つの条件によって︑経済協力

の形態と方法は︑生産と流通の二つの領域において具体化され

る︒いまこれらを列挙すると︑つぎのようになる︒

1︑もっとも包括的な且つもっとも重要な方法として︑社会

主義国家問の長期展望計画の調整がある︒これには生産︑

投資︑外国貿易︑運輸︑科学・技術等の面における国際的

2︑生産面における国際協力の方法には︑

よび科学・技術の交換︑科学研究上の協力︑幹部の養成︑

c輸送の合理的利用と運輸費の節約に関する協定︑が含ま

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶ ⑱もっとも有利な国民的前提に応じた国際特化︑⑮専門家お

多角・双務協定︑貿易契約等の外国貿易協定︑⑮支払協定

c資本主義国との貿易の際の協力︑が

グレービッヒはここで︑経済協力の国際機関としての経済相

互援助会議の任務と組織の発展をみることにより︑前述の経済

協力の形態を発展過程に位置づけている︒彼によると︑

九年四月に創設された経済相互援助会議の主要課題は︑その後

数年間︑貿易面での協力︑機械・工業設備購入のための信用︑

技術的・科学的援助の組織化にあった︒そして五四年の第四回

大会から︑外国貿易だけでなく生産計画における多面的協力の

必要性が主張され︑五六年五月の第七回大会で一九五六ー六〇

年の長期計画の調整がはじまり︑ここに生産の国際特化の第一

歩がふみ出された︒これは更に発展させられ︑五七年七月の第

八回大会では︑一九六

OI

七五年迄の長期展望計画の調整が︑

原料︑燃料問題に関して行われた︒このようにグレービッヒは︑

社会主義国際分業の発展過程を︑流通面の協力が主要な形態

であった五六年迄と︑生産の国際的協力がはじまったそれ以降

の段階との二つにわけている︒彼によると︑この過程はまた同

と相互の信用保証

3︑流通面における方法には︑⑱長期貿易協定︑年次協定︑

(7)

5  16 

が社会主義諸国および社会主義諸国間における貿易議と貿易楷│ー強調している︒ついで社会主義国際分業とくに生産特化が 社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

時に流通面だけの協力によって生じた欠陥︵生産の平行的発展

と︑それにもとづく原材料と加工工業との不均衡︑貿易量の増

自然条件の最大限の利用 大テンボの停滞︑貿易収支の困難︶をとりのぞく為に不可欠な方向でもあった︒即ち︑それらの欠陥は当然のことながら︑⑱

⑮近代技術と大贔生産による労働生

産性の上昇c最大の経済的効果をもつ投資︑⑪労働力の合理

側国際交換による社会的労働の節約︑的配置とその質的向上

貿易量の増大︑有利な貿易構成の形成の方向によって解決され

ざるをえなかったのである︒このように生産面での協力の発展

という新しい方向から次の問題が生じる︒一っは国際特化が社

会主義諸国および諸国間貿易にあたえる作用に関するものであ

り︑他は逆に外国貿易が国際的生産特化の発展に与える影響で

ある︒この問題が第二章で分析されるのである︒

第二章﹁社会主義国際分業体制における外国貿易の役割と課

題﹂は四つの節からなっている︒すなわち一節﹁社会主義世界

市場における外国貿易の諸機能﹂︑1一節﹁国際生産特化が社会

主義諸国の外国貿易にもたらした成果﹂︑三節﹁国際生産特化

四節﹁社会主義国際分業における外国

貿易の経済的・組織的課題﹂の四つである︒

一節においては︑彼はまず社会主義経済の特徴である生産と

消費︑目的と手段の一致という点から︑外国貿易はその媒介環

と考えられるということから出発する︑そして︑外国貿易の役

割を一時的不均衡を克服する単なる補助手段と考えてはならな

い︒外国貿易は︑社会主義の基本的経済法則︑したがってつり

あいのとれた計画的発展の法則に従うものであることを強調す

る︒しかし他面で現実には価値法則も作用しており︑この価値

法則の作用を制限するために外国貿易独占の役割がとくに重要

視されるのである︒彼によれば︑外国貿易独占の主要な機能は︑

田相互援助にもとづく社会主義諸国間の外国貿易の計画的組織

化図国際独占資本の経済的攻撃および社会主義経済に対する

資本主義世界市場の破壊的影響からの防禦︑③乎和共存の下に

おける資本主義諸国との平等な権利にもとづく貿易の回復なら

びに拡大︑の三つであり︑このうち以前には第二の防禦機能が

高く評価されたが︑それには歴史的条件が決定的であるとして︑

ソ同盟一国が資本主義諸列強に包囲された事実を指摘し︑そ

の現段階との違いを第一︑第三の役割が重要になったこと

(8)

一国で全主要工業部門を発展させる必要をなくさせ︵ソ同盟と

中国をのぞく︶︑第一部門の発展テンボをソ同盟の場合より小

さくさせる可能性を与え︑これらの生産特化の条件にもとづい

て︑外国貿易の方向︑盤︑構造が決定されるとして︑生産特化

によって貿易が規定されることを指摘して二節に進んでいる︒

二節では︑国際生産特化が外国貿易に与える作用が問題とな

っている︒その場合︑外国貿易収益性の理論の意義が検討さ

れ︑それと国際特化との関係をのべるという形をとっている︒

ここ数年間︑外国貿易の収益性を高める問題が全社会主義国で

討論の中心となり︑外国貿易を国民経済の課題遂行上の補助手

段とする過少評価は克服された︒その点で大きな成果があっ

た︒しかし︑この外国貿易による社会的労働の節約の観点は︑

あらゆる社会構成体の分業一般に関するものであり︑また一国

の立場からのみ︑とくに外国貿易の立場からのみ出発している

点に大きな問題がある︒この立場から出発すれば︑社会主義国

際分業の課題︑すなわち︑生産力のつりあいのとれた分配︑労

働生産性の水部の接近︑労働生産性のたえざる上昇︑後進国の

工業化といった課題が十分に解決されえないという欠陥が生じ

うる︒外国貿易収益性の立場からの出発は︑社会主義陣営全体

の収益性の観点からの考察︑生産特化との関連︑又長期的にみ

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

協力︑科学・技術協力︑長期展望計画などが複雑な相互計画を 四節においては︑国際協力の進行につれて︑すなわち生産の れた計画的発展の法則と価値法則との関連をも読みとることが た収益性との関連で修正されなければならない︒すなわち外国貿易収益性は︑国際特化をもっとも有利におこなうための基準をうる一っの比較方法にすぎない︒このような視角から考える画的にくみ出すものとして把握され︑他方で社会主義国際分業の方向づけを与える一手段として把握される︒我々はここに外国貿易収益性理論の限界と位置づけ︑また同時につりあいのと

三節においては︑社会主義国際分業がまだ最初の段階にある

こと︑︵たとえばョーロッパ人民民主主義諸国の一九五七年にお

けるトラククー生産量三七

000

のうち貿易されたのは︑わず

かに五三八

0

と約一五%にすぎない︶を示し︑それにも拘らず

国際特化が貿易董を益々増大させるであろうこと︑叉貿易構成

に関しては︑貿易に占める工業製品の比重の増大︑とくに生産

手段の増大などを示し︑社会主義工業化とそれにもとづく国際

生産特化が︑さらに貿易構成を変えるであろうことを数字でも

と︑外国貿易収益性は一面では国際特化から生じる利益を計

(9)

518 

ますます必要とするとして︑多角決済の問題︑市場調査の問

題︑又短期的な決済の問題として国際信用基金の設立の問題︑

第三章﹁社会主義世界市場における価値法則と価格﹂は︑

節﹁価値法則の役割と価格基礎の発展﹂︑二節﹁国際生産特化

をとくに考慮した場合の社会主義世界市場における価格形成の

見通し﹂の二項から成りたっている︒この章はとくに重要な問

題をふくんでいるので詳細にみることにする︒

まず︑社会主義世界経済体制における商品流通の必然性は︑

国際分業と商品所有者として独立した社会主義国が存在するこ

とから生じ︑この二つの前提の内容︑社会的条件によって社会

主義国際商品流通の範囲と特徴が生じるとする︒そしてこの

1 1

つの前提の内容︑社会的条件とは︑グレービッヒによるとつぎ

のようである︒山社会主義世界経済体制には新しい社会主義国

際分業が発展しており︑その主要な形態は︑社会主義国家間の

生産特化と協力である︒③社会主義世界市場で生じるあらゆる

商品関係の基礎は︑生産手段の社会主義的所有であり︑それが

蓄積フォンドの提案など︑多方面にわたる問題を提起している︒ さらに国際生産特化を一層進めるために投資を容易にする国際 社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

社会主義国家を国際的に結合させる︒その際経済的結合は︑計

画的に相互援助にもとづいて行われ︑国民経済の発展テソボを

速める︒だから社会主義世界経済体制における商品ー貨幣関係

は︑その内容において社会主義経済の合法則性にしたがい︑そ

の形態においては生産協力に従属する︒このように商品ー貨幣

関係が社会主義経済の合法則性にしたがうとしても︑社会主義

世界市場では社会主義諸国間に商品流通がおこなわれるので︑

そこには価値法則が作用する︒そして社会主義の社会的・経済

的条件が︑価値法則に規制的役割を演じさせない条件となって

関係の一層の拡張と共に︑価値法則の作用領域は量的に拡大す

ることになる︒ここに価値法則の役割を明確にし︑それを利用

しなければならない理由があるとする︒その場合︑価値は二つ

の形態で世界経済にあらわれる︒︱つは国民的価値(‑国の国

民的平均労働︶︑他は国際価値︵国際的平均条件

1 1

強度︶に応じる価値の大きさ︶として︒そして社会主義諸国間

において︑価値法則を利用して等価交換をおこなおうとする場

合には︑つぎの二つの方向が志向されなければならないとする

山社会主義世界市場における国民労働交換のための客観的・統

一的基礎を改良するために︑又国際生産特化から生じる労働生 いるとしても︑社会主義国際分業の発展から生じる商品ー貨幣 八〇

(10)

産性の上昇︑原価の低廉化とそれによる生産物価値の低下を︑

全社会主義国の外国貿易価格の低下を通じて実現することがで

きるために︑社会主義世界市場価格を国際価値に一層近づける

こと︒②不利な条件で生産されている価値を国際平均の水準に

さらに近づけるために︑いろいろの形態の後進国援助を発展さ

せること︒この社会主義国の発展水準の接近によって︑社会主

義世界市場における商品交換は︑傾向として同じ大きさの国民

労働の交換へ近づくであろう︒すなわち山社会主義全体の生

産性の資本主義のそれへの接近による社会主義世界市場価格の

位置の強化と︑②社会主義国間の生産性の差の除去の二つであ

る︒この条件ができてはじめて社会主義諸国間に等価交換が遂

行されうるとする︒したがって現在の社会主義世界市場価格

は︑社会主義世界市場価格のあらゆる特徴をそなえてはいな

い︒なるほど現在の社会主義世界市場価格は︑社会主義国相互

の同意にもとづいて確定される協定価格であり︑景気変動で左

右されない少なくとも協定期間中同一価格であり︑同一商品は

同一価格をもつ傾向をもち︑従属をもたらさない援助手段でと

くに後進国︵例えばアルバニア︑北朝鮮︶に対しては有利にきめ

られる︑等の新しい内容をもってはいるが︑これら新しい内容

は︑社会主義世界市場価格の特質を完全に持っているとはいえ

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶ ない過渡的な性格の価格である︒それでは社会主義世界市場の特質をすべてかねそなえた価格とはいかなるものであろうか︒グレービッヒはつぎの四点を指摘する︒山社会主義世界市場価格は︑価値法則にもとづいて国際的に一致していなければならない︒国際分業の進展︑生産︑投資︑貿易面での国際協力の進展とともに価格の相互協定はもはや十分ではなくなる︒②社会主義世界市場価格は︑社会主義陣営の国際的平均的生産条件に照応した社会的必要労働の支出によって決定されなければならない︒③国際的生産協力にもとづく労働生産性の上昇によって︑生産物の原価したがって商品価値は低下するので︑価格は低廉化しなければならない︒④社会主義世界市場価格は︑労働生産性の上昇および社会主義陣営における生産の国際特化の手段でなければならない︒だからグレービッヒによれば︑現在の諸条件にふさわしい社会主義世界市場価格を決定する過程におけるもっとも重要な問題は︑一方で資本主義世界市湯価格の有害な盲目的作用の克服を容易にし︑他方︑前述の四つのメルクマールをもつ社会主義世界市場価格への移行を容易にするような価格の基礎

( P r e i s b a s i s )

を見出すことである︑と現在の価格

形成への視角を明確にしている︒ついで現在迄の社会主義世界

市場価格形成の段階を︑

0年の平均的資本主義市場価格

(11)

520 

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

を審議の基礎とした第一段階と︑前年の平均的世界市場価格に もとづいてルーブリで確定し︑価格約款の協定という形態をと った第二段階とにわけて︑第二段階の発展の特質をつぎの点に みている︒その一っは︑多くの主体的要素を同時に除去して︑

全社会主義国の商品輸出入を統一的な価格で行うようにした事 であり︑その二は︑世界の主要商品市場の価格によることによ って国際価値に一層近づいた事であり︑第一一一には前年の世界市 場価格によることによって︑実際の価格にもとづくよりも市場 と価格の発展をよりよく観察し︑短期変動をのぞき︑協定期間 内は安定している点であるとして︑このことによって計画的・

比例的発展の法則によりふさわしくなり︑等価交換の遂行とい う点でも一歩前進したとしている。叉彼は、新製品•特別製品 の価格決定の問題︑臨時的な価格についても説明している︒叉 社会主義世界市場価格の決定の際︑何故欠陥の多い資本主義世 界市場価格に基礎をおいたのかという点に関しては︑社会主義 世界市場の具体的歴史的な形成過程ー資本主義世界市場からの 脱脚ーを考慮することの必要性と社会主義諸国に統一的基礎が

存在しなかった点にふれている︒

1一節においてほグレービッヒはまず︱︱つの問題を提起してい

る︒田社会主義国家間の価格形成のきそとして︑何故資本主義

機械の社会主義世界市場における価格は︑プルガリアの国民的 価格基礎をもつ必然性はどこから生じるのか? 交易にどのような不利が生じるか?図社会主義陣営に独自の 世界市場価格は不適当なのか?ここから社会主義世界市場の

第一の問題に関しては︑資本主義世界市場価格は︑独占によ って価格と価値の差が大きく︑人為的になされていること︑投 機的傾向と軍事化によって市場調査ならびに価格調査が不可能 なこと︑恐慌による盲目的・無政府的価格変動があること︑そ の他によって社会主義経済に攪乱を生じさせるとしている︒

第二の問題については︑社会主義世界経済体制に生じる経済 過程︵労働生産性の上昇︑世界生産と世界貿易に占める社会主 義諸国の割合の増加︶が︑社会主義世界市場の独自な価格基礎 をつくる事を可能にし︑要求するとしている︒その場合︑社会 主義世界市場における価値が中心となる︒例えば社会主義陣営 におけるある種の機械生産の大部分が︑国際的平均的生産条件 をもつブルガリアに集中されているとしよう

e

この場合︑この

平均的生産費に同種の機械を生産する他の国の生産費を考慮し て決定される︒このようにして価格形成をおこなえばつぎのよ うな利益が生じるだろう︒田この機械の輸出によってえられる 価格は︑ブルガリアの国民的生産費を保障するものであり︑

(12)

品や新しい製品︒第二の方法は︑有効な価格調査や市場調査に よって国際価値に出来るだけ近づけようとする方法︒たとえば 最近十年間の主要商品市場の平均的世界市場価格を調査すると いう方法は︑この要求によりよく照応している︒資本主義世界 市場の価格運動を調査するために期間を長くすればするほど︑

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

の特化と協力を理論の基礎にすえ︑その発展の方向を基軸とし て外国貿易を把握していることである︒さらにその際︑生産力視 点と同時に生産関係視点を常に指摘しながら論を進めているこ とをも忘れてはならない︒以下いくつかの問題点を指摘しよう︒

山外囲貿易収益性理論の位懺づけに関する問題︒

資本主義世界市場価格との比較をおこなうことが困難な特殊製さきにものべたようにグレービッヒの見解の特質は︑彼が生産

c独自の価格基礎をみいだしたりまたは

最初の投資に対する支出は︑国際特化によって生じた成果によ って償却され︑国民経済収益性をも高めうるであろう︒②輸入 国もこの確定された世界市場価格を支払うことによって国際特 化の利益をうる︒何故なら︑自国でそれを生産したらより高い 生産費を要したであろうから︒③この世界市場価格は︑他の社 会主義国の技術的・経済的進歩に刺戟をあたえるだろう°なぜ なら完全な特化はありえないだろうから︒つぎにそれでは社会 主義世界市場価格を価値に照応させて確定するには具体的にど のような方法をとればよいか?それには二つの方法がある︒

︱つは一定の商品範疇の場合に︑社会主義世界経済体制の国 際価値に近いように意識的に価格を確定する方法である︒これ にぞくする商品には︑⑱社会主義諸国に世界の主要市場がある 商品︑⑮国際生産協力において特に重要な商品︑たとえば原材

料︑化学製品︑機械

より国際価値に一致するようになる︑といっている︒

しかしながらこの二つの方法︑即ち社会主義陣営の生きた労 働と蓄積労働の社会的必要贔の支出に社会主義世界市場の価格 を全体として近づけることは︑現段階においては可能ではな い︒現在はまだ個々の社会主義国の発展水準がまったく異なっ ており︑生産の国際協定と社会主義国の水準の接近による社会 主義陣営の生産力のつりあいのとれた分配は︑はじまったばか りである︒さらに社会主義国はまだ先進資本主義国より不利な 生産条件で生産しており︑このことは︑資本主義国における主 要商品市楊に対して社会主義世界市場の価格を平均して高くし ており︑このことが社会主義国に不利をもたらしている︒

以上︑グレービッヒの見解を紹介してきた︒

(13)

522 

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

グレービッヒは︑第二章二節においてこの問題をとりあげて

いる︒彼は︑外国貿易収益性

1 1

外国貿易による社会的労働の節

約という観点は︑あらゆる社会構成体の分業一般にあてはまる

ことであって︑この立場からだけでは︑社会主義に独自な具体

的な課題︑すなわち生産力のつりあいのとれた分配︑労働生産

性水準の接近︑後進社会主義国の工業化といった課題は達成さ

れえない︒外国貿易収益性は︑国際特化の基準をうる一手段で

あって︑全社会主義陣営の収益性あるいは長期的にみた収益性

の観点によって修正されなければならない︑といっている︒た

しかに一定の時点において︑どれだけ国民的労働が節約される

かという問題を精密に量的に把握するという意味における外国

貿易収益性を基準として経済発展をおこなうならば︑後進社会

主義国の工業化︑労働生産性水準の接近という現在社会主義陣

営のもつ大きな課題は達成されないであろう︒この点はグレー

ビッヒの指摘する通りである︒また現在独立した多くの国が存

在する条件のもとでは︑ただ︱つだけの社会主義陣営全体の収

益性をあらわす公式あるいは方法の定式化を行うことはできな

い︒しかしながら︑外国貿易収益性の研究の際︑長期的視点を

導入することによって︑一国の計画化︑さらには全社会主義陣

営の計画化との関係を示すことは可能である︒つまりそれは蓄 積部分をいかに外国貿易収益性計算に導入するかという問題ヽ・J

なる︒この問題はいまだ充分に展開されていないけれども︑た

とえば中国の学者シャン・シュ・スウ︑シュー・シェソ・ヂュ③ ソは︑すでに蓄積部分を導入した式を具体的に示している︒だ

からグレービッヒが﹁長期的観点によって修正されなければな

らない﹂と指摘していることは︑外国貿易収益性理論の発展と

して計画化と結合しうるものであると思われる︒この親点から

外国貿易収益性理論はさらに発展させられなければならない︒

②社会主義諸国間貿易の際の独自な価格形成︒

この問題は︑グレービッヒのもっとも重要な問題提起の一っ

であり︑今までわが国にしられている見解のうち︑もっとも体系

的な構成をもっている︒とくにわが国で︑独自な価格形成を否定

する見解があらわれていることから考えても︑大きな問題とな

るだろう︒彼は現在の社会主義世界市場価格は︑社会主義にふ

さわしい要素をすぺてもつに至っておらず︑いわば過渡的なも

のだとして︑完全な社会主義世界市場価格のメルクマール︑そ

れに至る道筋︑またそのことを可能ならしめる条件を詳細に展

開している︒グレービッヒによれば︑完全な社会主義世界市場

価格を可能ならしめる条件は︑一っは社会主義陣営の資本主義

陣営に対する優位であり︑他の一っは社会主義国間の生産力差

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社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

は︑いくつかの社会主義的特徴をそなえながらもなお資本主義 世界市場価格を基準としており︑グレービッヒは現段階での社 会主義世界市場独自の価格形成には否定的で︑技術援助︑借款 その他の方法で先進国は後進国を援助する方がよいというチェ

コスロバキア︑東ドイツ︑ソ同盟の学者の立場を堅持している

ようである︒しかし他方︑既に筆者が他の論文で指摘したよう に︑現段階においても社会主義世界市場価格は独自に︑資本主

義世界市場価格

j t e よらずに形成さるべきだとの主張が︑ハンガ

2

リー︑ブルガリアの後進社会主義国に存在している︒この問題 を考察する際には︑先進社会主義国の後進社会主義国に対する 技術援助︑借款︑専門家派遺︑共同作業等々のあらゆる援助の 形態と量を研究しなければならないとはいえ︑現に後進社会主 義国に不満が存在する以上︑何故現段階の価格形成は︑社会主 義世界市場独自でおこなってはならないか︑またはおこないえ ないかを説明する必要があるのではないだろうか︒価格形成の 問題についていえばグレービッヒを含めたチェコスロバキア︑

ソ同盟︑東ドイツの学者は︑グレービッヒが完全な独自価格形 成の条件とした︑田資本主義とくらべた社会主義の生産力の優

位︑②社会主義諸国間の生産力差の消滅︑の二つの条件のう の消滅である︒そして社会主義世界市場価格は︑現在の時点で

八五

ち︑前者に主眼点をおいているといえよう︒つまり彼らの見解 のおくに横たわっているのは︑先進資本主義国との生産力比較 であり︑それにうちかっための刺戟をとくに重要視していると 考えられる︒このように考えるならば︑グレービッヒを含む考

えは生産関係視点の重視この場合社会主義対資本主義の競

争よりも社会主義諸国間の生産力格差の縮減を重要視する考え ほ︑全般的危機の第二段階の基本的な国際対立を無視している

ことになるl

ということになるのだろうか︒社会主義諸国間 の生産力差の消滅が大きな目標となっている以上︑全社会主義 陣営とくに後進社会主義国の発展を支援するには︑価格形成を もそのために奉仕させるべきであるとの見解も無視できないよ うに思われる︒さらに現実をふまえて考えるならば︑現在︑社 会主義世界市場独自の価格形成を否定する見解が主流を占めて いるその理由の一っは︑いまだ経済的にも意識的にも一国の立 湯を全体の立場に充分に重ねえないことに求められるべきもの かもしれない︒いずれにしても今後明確にされなければならな

③計画化の法則と価値法則

グレービッヒは︑商品ー貨幣関係は社会主義経済の合法則性 にしたがうけれども︑他方社会主義国際分業の発展から生じる

(15)

524 

の段階では相互の協力により︑社会主義体制の全体としての最 も速かな発展と人民の最大限の福祉という目的にしたがって︑

生産の直接的調整まで進んでおり︑それが価値法則によって歪 められることはない︒価値法則が生産の直接的調整に当って協 議のための資料を提供するであろうが︑そのことは一義的に国 際分業の決定を規制するということと別問題である︒ここに価 値法則と計画的発展の法則との関連と協力の領域を見出すべき

であ一,て……••……•。」⑧ 

イムレ・ワイダもまた同様の見解をのべている︒これに対し 止したりすることは別問題である︒社会主義国際分業は︑今日

社会主義世界体制における国際分業と外国貿易︵杉本︶

商品ー貨幣関係が一層拡張するとともに︑価値法則の作用領域 は盤的に拡大する︒だから︑価値法則の役割を明確にし︑それ を利用しなければならない︑といっている︒しかしながら︑グ レービッヒの場合︑この両者の関係が明確にされているとはい い難い︒一般的にいって︑わが国では︑計画化の法則と価値法 則との関係は︑すでに明確になっているといえよう︒たとえ ば︑木下教授はつぎのようにいっておられる︒﹁価値法則の適 用により採算性の側面から︑個々の国々の個々の産業に問題が 生ずることはいうまでもないが︑そのことと︑各国が勝手な判 断で︑ある産業の生産を中止したり︑他国への商品の供給を停

グレービッヒの場合︑両者の作用する次元とそれらが併行して 存在することが明確になっても︑価値法則はどのような意味で 社会主義の合法則性にしたがうのかという点が不明確なことが

以上︑三つの点を指摘したが︑とくにグレービッヒが︑価格 形成について叙述した点をはじめ︑今後の素描とはいえ︑多く の大胆な問題提起をしているため︑この小冊子は一読に価する

図木下悦二書評︑コールマイ﹃社会主義世界経済体制発展

の諸問題﹄経済学雑誌第四十巻第五号

S h a n   S h

︑ S u

s u , S s t i   S h o n , D j u n ,   "

D i e   R e n t a b i l i t a t   d e s   A u f l e n h a n d e l s

"

,   D e r   A u f l e n h a n d e l

  1 4 / 1 9 5 9  

④チニルニアンスキーをはじめ東ドイツ︑ソ同盟︑チニコス

固杉本昭七﹁﹃二つの世界市場論﹄に関する一試論﹂関西大

I m r e .   V a j d a ,   "

E i n i g e   B e m e r k u n g e n   U e b r   d i e   P r i e s b a s i s   a u f   d e m   s o z i a l i s t i s c h e n   W e l t m

a r k t , "

  D e r   A u f l e n h a n d e l  

2 2 / 1 9 5 8  

D .   T o s c h e f f ,   "

z u r   P r e i s a b s i s   a u f   d e m   s o z i a l i s t i s c h ,   e n e   W l t m a r k t "

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9 / 1 9 5 9 .  

八 六

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杉 山 木 広 本 上 田 田 昭 達 和 司

七 人 男 朗

助 専 助 助 紹

手 師 手 授

^ 

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︵ 六 0 年 十 一 月 十 五 日 ︶ ⑲ 料三四年五月五五ー五六ページ︒ m 木下悦二﹁社会主義世界市場における価格形成﹂研究と資

ワ イ ダ 前 掲 論 文

参照

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