着床前診断をめぐる法規制のあり方
石 川 友佳子
*
一、はじめに
近年、遺伝子診断技術の進歩により、人の疾患や障害を出生前に様々な検 査法を用いて診断することが可能になった。いわゆる母体血による新型出生 前診断 など、著しくその技術は進歩している。着床前診断もその一つとし て挙げることができる。
着床前診断 とは、体外受精において受精卵を母胎へ移植する前に、そこ から 個または 個の細胞を採取して、遺伝性疾患を発症する可能性がある か否かを遺伝子診断するものであり、最終的には遺伝性疾患を発症しないと 診断された受精卵を子宮に戻し、正常な児を出産させようとするものである。
従って、採取された細胞に疾患遺伝子の存在が認められた場合には、両親の 判断に基づいて、その受精卵は廃棄されることもある。
着床前診断の適用が問題となる事例として、例えば、以下のものが挙げら れる 。すなわち、ある特定の遺伝性疾患や遺伝性障害を有する子供が生ま れる高度の危険がある場合、女性の高齢出産等のためにその子供に染色体異
*福岡大学法学部准教授
常が発生する高度の危険がある場合や、更には特定の疾病の発生に関係なく、
ただ単に性別やある特定の遺伝的要素を望むために着床前診断を行う場合で ある。また、受精卵の染色体異常のために習慣流産に苦しむ夫婦に対して着 床前診断を行う場合も考えられる。その中で最も重要視されている適応は、
その子供に重篤な遺伝性疾患等を遺伝させる高度の蓋然性がある夫婦であり、
「①重篤な遺伝性疾患を有する子どもを持つことによる母親の負担をなくす ことができる、②遺伝病を持つ子どもを出産する可能性がある両親にも、遺 伝病のない子どもの出産を保証することができるため、実子を持つことを断 念する必要がなくなる、③着床後の出生前診断の結果行われる中絶手術は母 親に身体的・心理的に大きな負担をもたらすが、これを避けることができ る」 といったことが着床前診断の利点として注目されている。上記のよう な着床前診断の利点が強調されるが、同診断は診断結果に基づいて受精卵を 廃棄することもあり、その点に同診断の重大な倫理的問題がある。着床前診 断は、日本産科婦人科学会により、同学会会告 に基づいて、規制されてい るが、会告に違反して着床前診断を行う医師が存在するなど、その実効性に は疑問が呈されている。
ドイツでは、 年に、同診断の実施を例外的に許容し、規制する新法が 成立した。この新法は、着床前診断を刑法により規制しており、その立法過 程や着床前診断の法規制に関する十数年にわたる議論には、日本の法制に とって参考とすべき点がおおいにある。以下では、ドイツにおける近年の状 況を概観する。
二、着床前診断に関するドイツの法制
.胚保護法成立以後の議論
ドイツでは、 年に「胚の保護のための法律(胚保護法)」が成立した 。 この法律は、研究目的でのヒト胚の作成・利用、余剰胚の発生・研究利用、
クローン胚の作成・母胎への移植等を刑罰を科すことによって禁止しており、
母胎外に存在するヒト胚を厳格に保護するものであると言われている 。し かし、当時の胚保護法には、着床前診断についての明確な個別規定が存在せ ず、着床前診断の禁止は胚保護法の解釈により見解がわかれていた 。
年に、ドイツ連邦医師会は、着床前診断の是非についての社会的議論 を喚起するために、そのたたき台として「着床前診断に関するガイドライン のための討議草案」を作成し、この討議草案において着床前診断を厳格な要 件のもと許容する立場を示した 。これをきっかけとして、着床前診断の是 非についての議論がより活発に進み、国家倫理評議会 や連邦議会アンケー ト委員会「現代医学の法と倫理」 も着床前診断についての見解を表明する など、国家レベルでの議論も行われた。
このような議論においては、主に、着床前診断を例外なく禁止する見解と 限定された要件のもとで制限的に許容する見解が主張されていた 。ある特 定の疾患遺伝子をもつ夫婦の願い、すなわち遺伝による重篤な疾患や障害の ない健康な子を授かりたいという願いは、それ自体、理解しうるものであり、
真摯に受けとめられなければならない。しかし、このことから直ちに、着床 前診断の実施が許容されるわけではない。憲法上保障される生殖の自由も無 制限なものではなく、あらゆる手段を用いて健康な子供を求める権利なるも のは認められない。着床前診断の例外なき禁止を主張する見解は、診断結果 によってはヒト胚が母胎へ移植されずに廃棄される点をヒト胚に対する許さ
れない生命侵害であり、人間の尊厳という観点からも許されない選別である、
という 。したがって、着床前診断の是非をめぐる議論においては、この技 術を求める夫婦の願い、生殖の自由、ヒト胚の廃棄という生命侵害、そして 診断結果による選別という観点が重視され、その際、出生前診断における胎 児診断(以下では、出生前診断とする)とその診断結果による妊娠中絶との 関係、着床前診断の許容がもたらす社会的影響、具体的な規制態様などが検 討されていた。
着床前診断の是非を考察するにあたって、しばしば出生前診断との比較が 論拠として持ち出されていた。ドイツ連邦憲法裁判所は、胎児性適応事由に よる妊娠中絶を許容しており 、胎児性適応事由が条文に規定されていない 現行規定においても、この要件は医学的・社会的適応事由に取り込まれて運 用されている。出生前診断とその診断結果に基づく妊娠中絶が許容されてい ることとの整合性が問題となる。着床前診断の例外なき禁止を主張する見解 は、着床前診断の場合にはまだ、胎児と母胎との比類なき結びつき、つまり 妊娠が存在せず、女性に具体的な妊娠葛藤はない、と述べる。妊娠中絶が既 に存在する葛藤状況を解決しようとする行為であるのに対して、着床前診断 は体外受精により自ら葛藤を創出しており、また、妊娠という身体的結びつ きがないことから、ヒト胚の廃棄の決断も妊婦にとってより心的負担が少な く下され得る、という 。確かに、妊娠中絶の許容を根拠付けるのは、妊娠 という特殊な状況がもたらす妊娠葛藤であり、ヒト胚を移植する前の葛藤状 況と妊娠がもたらす葛藤状況が同一であるとはいえない。しかし、胎児性適 応事由は、遺伝性疾患を有する胎児を妊娠していることそれ自体が重要なの ではなく、妊婦の現在および将来の生活を考慮したときに胎児の疾患を原因 として妊婦の身体的・精神的健康が著しく害される場合に認められており、
出産後の養育も含めた妊婦(その周囲の人々)の利益と胎児の生命との葛藤 が妊娠中絶を許容する理由とされる。着床前診断も、まさにこのような葛藤
の回避が目的であるといえるよう 。また、着床前診断は、体外受精を必要 とするが、胎児性適応事由による妊娠中絶が後に行われることを回避できる、
すなわち、受精卵よりも更に成長した人間の生命である胎児への生命侵害を 回避できるという点も、着床前診断の制限的許容を主張する見解の根拠とさ れていた 。
着床前診断を許容することによる社会的影響として、遺伝性疾患や障害を もつ人々への差別、疾患遺伝子をもつ夫婦に対して着床前診断を受けるよう 社会的圧力が加わる可能性、そして着床前診断の適用の拡大や同技術の濫用 の可能性が懸念されていた 。このような問題点は、着床前診断の制限的許 容は当事者夫婦の深刻な葛藤状況を回避するためであることを明確に確認し たうえで、夫婦の十分なインフォームドコンセントと適切な法的規制で対応 されるべきであることが主張された。
着床前診断の具体的な規制態様として、ドイツ連邦医師会 、国家倫理評 議会 および連邦議会アンケート委員会「現代医学の法と倫理」 により、様々 な提案がなされた。着床前診断を例外的に許容するための適応事由としては、
重篤な遺伝性疾患や遺伝性障害を持つ子供が生まれる高度の危険性を有する 場合、および染色体異常が遺伝することにより着床できなかったり又は流産 してしまうなど、胎児が母胎外で独立生存可能な段階まで成長し得ない場合 が挙げられる。この場合でも、着床前診断を許容するために重視されるのは、
子供の遺伝性疾患それ自体ではなく、そのことによって極めて重大な葛藤状 況に当該夫婦が陥っているということである。十分なインフォームドコンセ ントを得るためには、着床前診断を実施する施設とは独立した機関で事前に 相談を受ける義務を課すことが提案されている。その際、各分野の専門家に より、他に採り得る選択肢、すなわち養子縁組又は自身の子供を持つことの 断念や、妊娠し出生前診断を受けるという可能性を説明し、更に生殖補助医 療の際必要となる処置技術、その処置に費やされる時間、処置に伴う危険性、
当該遺伝性疾患を持たない子供を妊娠し出産する結果の可能性、移植されな い胚の取扱い等の情報が、十分に当事者に伝えられなければならない。着床 前診断を実施するためには、当該夫婦の文書による同意が要件とされ、また 着床前診断後には新たに説明及び相談対話を経た上で胚を移植するかどうか の同意が必要とされた。そのほかにも、着床前診断を行う施設やスタッフの 技術的要件や、コントロール機関を設置し、着床前診断実施の許可申請に基 づいて個別審査を行い実施許可の判断を下すといった認可制などの提案もな された。
.胚保護法の改正
年以降、着床前診断について様々な議論が行われ、明確な法規制の必 要性がたびたび指摘されていたにもかかわらず、法律の制定には至らない時 期が続いた。しかし、着床前診断に関する立法への大きなきっかけとなった のは、 年 月 日の連邦通常裁判所判決であろう。
( ) 年 月 日連邦通常裁判所判決 と 年ドイツ倫理評議会「着 床前診断に関する見解」
連邦通常裁判所は、本判決において、着床前診断を行った医師の行為は胚 保護法に違反しないとの判断を下し、被告人を不処罰とする原判決を支持し た。被告人である医師は、 組の夫婦に対して、胚盤胞期胚から採取した多 能性細胞を用いた着床前診断 を行い、いずれの夫婦も染色体転座により死 産や流産の危険性があるか、遺伝性疾患をもつ子を出産する高度の蓋然性の ある場合であった。本件事案では、被告人の行った体外受精、すなわち、後 の母胎へのヒト胚移植の可否が着床前診断結果に左右されるような体外受精 が、「卵細胞が由来する女性の妊娠以外の目的でその卵細胞を人為的に受精 させる」ことを禁止する胚保護法 条 項 号の処罰規定に該当するかどう
か、そして、着床前診断を行うためにヒト胚から多能性細胞を採取したこと、
その多能性細胞を用いての診断実施、さらに診断結果により疾患遺伝子が確 認されたヒト胚の培養中止・死滅が、「ヒト胚をその生命維持に役立たない 目的」での利用を禁止する胚保護法 条 項に該当するかどうかが問題点と なった。
連邦通常裁判所は、胚保護法 条 項 号に関して、被告人の行為は妊娠 をもたらす意思で行われていた、として本条項違反を否定する。すなわち、
着床前診断は、妊娠をもたらすための全過程における一つの中間目的にすぎ ず、胚保護法 条 項 号の規定では、体外受精は、妊娠をもたらすことが 行為の主要目的もしくは意識を支配するものでなければならないが、もっぱ ら妊娠をもたらすためにのみ用いられなくてはならないわけではない、と判 示する。また、胚保護法 条 項違反も否定しており、ヒト胚からの多能性 細胞の採取それ自体は胚を損なうものではない、診断で利用される多能性細 胞はもはやヒト胚ではない、疾患遺伝子が確認されたヒト胚の培養中止、死 滅は生命維持処置の不作為として評価され、被告人には患者の意思に反して その子宮へ胚を移植することは可能でなく期待できない、を根拠としている。
以上のように、本判決では、被告人の本件行為が胚保護法 条 項 号お よび 条 項に該当するかどうかの解釈論が展開されているが、その中で、
着床前診断の是非、および、その立法に関しての重要な示唆が含まれていた。
第一に、多能性細胞を用いた着床前診断は、胚保護法の立法当時ではいまだ 普及していない診断法であったことから、法律の文言上も立法資料上も同診 断についての明確な立場は表明されていないこと、および 年に成立した 遺伝子診断法の適用領域から着床前診断が明確に外れていることを挙げ、現 行法上、多能性細胞を用いた着床前診断についての法規定が存在しないこと を強調する。
第二に、連邦通常裁判所は、立法者が、胚保護法 条 項において例外的
に精子選別による性選択を許容していることから、子どもに伴性遺伝性疾患 が発生する危険のある両親の葛藤状況を考慮している、と述べる。また、着 床前診断を禁止すると、「わかっていながら」生育能力のない子どもや重度 の疾患を有する子どもを出生する危険を夫婦におかさせることになってしま い、さらに出生前診断とその後の妊娠中絶という結果になる可能性を危惧し ている。このことから、本判決は、立法者が上述の重大な危険を回避する(多 能性細胞を用いた)着床前診断を禁止しようとしていたとは認められない、
と結論付けるが、本判決から、多能性細胞を用いた着床前診断まで絶対的に 禁止することへの否定的立場も読み取れる。
最後に、本判決における解釈は、遺伝的要素に基づいた「無制限な選別」
を許容するものではない、と述べ、本判決の射程を提示するが、これは立法 への重要な示唆ともなりえるものであった。すなわち、本判決で許容された 着床前診断は、上述の重大な危険を避けるために重篤な遺伝性疾患を検査す る着床前診断であり、単なる性選択の目的やある特定の免疫型のヒト胚を生 殖する目的での着床前診断は認められない、と。 歳以降に発現する遺伝性 疾患を検査するための着床前診断については、態度決定を留保し、明確な法 的規制が望ましいと述べる。
以上のような連邦通常裁判所判決をきっかけとして、 年には、ドイツ 倫理評議会が着床前診断についての見解を公表した。この見解では、着床前 診断の法的禁止を求める意見 と着床前診断の制限的許容を求める意見 が記 載されているが、大体において従来からの議論を受け継いだ内容であり、そ の根拠や提言にそれほど目新しいものはない。
ただ、制限的許容を求める意見は、着床前診断を許容することによって妊 娠後の出生前診断やその診断結果による妊娠中絶が回避できるという観点か ら、女性の健康の保護を重大な根拠としており、着床前診断の許容要件にお いても、出生前診断の結果行われる妊娠中絶との整合性が強調されている。
着床前診断を許容する適応事由の一つとして、子どもに重篤な遺伝性疾患や 障害が発生する危険がある場合が挙げられているが、その遺伝性疾患・障害 は、もしそれが出生前診断によって確認されたならば、当該女性に身体的・
精神的健康への危険が生じるため、妊娠中絶の医学的適応事由にあてはまる ものとの限定が付されている。また、着床前診断によって、意図的に検査し た疾患とは異なる遺伝性疾患が偶然にも発見された場合、その疾患が妊娠中 絶の医学的適応事由にあてはまりうる場合にのみ、その診断結果は両親に報 告されても良い、とする。ここでは、着床前診断を許容する根拠として、遺 伝性疾患をもつ子どもの出生を回避することそれ自体ではなく、女性の健康 を害する重大な葛藤状況を回避することに重点をおく明確な態度が見られる。
これは、着床前診断を禁止する論拠として従来から主張されてきた「胚の選 別」という批判に配慮したものであろう。
その他にも、立法への提言として、上記の連邦通常裁判所判決で述べられ ていた性選択のための着床前診断の禁止や細胞や組織のドナーを生み出すた めのヒト胚選別の禁止だけでなく、女性が高齢であるために予想されうる染 色体異常の危険を避けるための着床前診断やある程度の年齢に成長した後に はじめて発現しうる疾患を検査するための着床前診断も禁止すべきとする。
また、着床前診断は、認可された施設でのみ行えること、施設の認可は連邦 で統一した法規制で行われ、施設の数も限定されなければならないことが提 案されている。
( )連邦議会への法案提出
以上のような経緯をへて、 年 月には、連邦議会へ つの胚保護法改 正法案が提出された。着床前診断を禁止する法案 、着床前診断を規制する 法案 、そして着床前診断を制限的に許容する法案 があり、最終的には、着 床前診断を規制する法案が、連邦議会において可決され、連邦参議院の審議
を経て新法となった。
廃案となった つの法案では、共通して、ヒト胚を診断結果に基づいて選 別し、生命を侵害することへの拒否、そして、着床前診断を許容することに よる病者・障害者への社会的差別や適応事由の拡大の可能性を回避すること を重要な根拠としていた 。着床前診断を制限的に許容する法案は、着床前 診断を原則的に禁止する立場をとっており、出生前診断とは異なり着床前診 断を許容することはできない、とする。すなわち、出生前診断は、基本的に、
万一のための準備、したがって妊娠中の母と子の保護に役立つものであり、
出生前診断とその後に行われうる妊娠中絶は、妊婦の現在および将来の生活 を考慮して、その生命および身体的・精神的健康への重大な危険を避けるた めに適切であり、このような葛藤状況は他の方法では回避できない。それに 対して、胚の「重篤な」疾患を検査する着床前診断では、このような葛藤状 態は存在しない。女性は妊娠していないし、このような着床前診断は、ある 特定の要素に基づいてヒト胚を選別する行為である。ある特定の要素をもつ 子ども求める権利なるものは存在しない、と。しかし、本法案は、原則的禁 止の立場を示しながらも、高度の蓋然性をもって死産もしくは流産に至りう る遺伝的または染色体上の特質をもつ夫婦に対しては、例外的に着床前診断 の実施を許容する。許容のための基準は、ヒト胚の疾病ではなく、生存能力 である、という。夫婦の遺伝的重荷とヒト胚に生存能力がないこと、この つの限定により、適応事由の拡大に明確な限界を設定することができるとす る。このように、人の出産にまでいたらない死産および流産に適応事由を限 定することは、特定の疾患をもつ子どもの出生を回避する「選別」という観 点が問題になるよりも、むしろ子どもを懐胎し出産することが困難な夫婦に 対しての救済手段、ある意味(不妊)治療としての性格を持ちうるように思 われる 。
( )新法の成立
着床前診断を規制する法案が、修正を経て新法となった。本法案が、上記 の連邦通常裁判所判決の趣旨を最も受け継いだ内容であるといえよう 。新 法 及びそれに基づいて着床前診断の実施要件を具体化するために制定され た命令 は、以下のような内容である。
(ⅰ)着床前診断の適応事由
新法により、胚保護法 a 条が新たに挿入された。 項では、着床前診断 を行った者は 年以下の自由刑または罰金刑に処すとし、 項で、両親の遺 伝的特性により子どもに重篤な遺伝性疾患が発症する高度の危険がある場合、
もしくは、死産や流産に至りうる高度の蓋然性がある場合に、女性の書面に よる同意を得た上で、着床前診断を行った者は違法でない、と規定される。
いかなる場合が、着床前診断の適応事由、すなわち「重篤な遺伝性疾患が発 症する高度の危険」や「死産や流産に至りうる高度の蓋然性」に含まれるの かが問題になり、個々の事例において、このような不明確な概念を解釈する ことは倫理委員会の課題とされる 。法案提出時の理由書 によると、重篤な 遺伝性疾患は、「期待しうる生命の長さがわずかであることや病状の重さに よって、そして治療可能性の低さによって、他の遺伝性疾患からは本質的に 区別されうるとき」と定義され、一般に発生しうる危険とは区別された「高 度の遺伝的危険」が存在しなければならないとする。すなわち、「 %から
%の確率で遺伝性疾患の発生する蓋然性があるときが高度の危険とされう る」。また、「死産や流産に至りうる高度の蓋然性」は、女性の高齢により死 産や流産の確率が統計上、高いというだけでは当てはまらない 。
ここで、重篤性を判断する際、当該女性や当該夫婦の諸状況も考慮される べきか否かは問題となろう。妊娠中絶の許容にとっては、妊娠に基づく妊婦 の葛藤状況が重大な衡量要素となっていた。着床前診断に関する命令 条
項は、倫理委員会は着床前診断実施の申請を「個々の事例における心理的、
社会的および倫理的観点を考慮して」審理しなければならないと規定し、着 床前診断の実施は医学的観点からだけでなく、当該夫婦の背景も含めた全体 的考察に基づいて判断されなければならないと根拠づける 。すなわち、着 床前診断実施に関する決定は、医学的観点を考慮して行われうるだけでなく、
必然的に、個別事例のあらゆる医学的、心理的、社会的および倫理的観点を ともに考慮して行われなければならない。遺伝性疾患が重篤であるか否かの 評価は、診断結果からのみ判明することはまれである。むしろ、そのために は、通常、当該夫婦の家族的背景を含めて評価することも必要である、と。
確かに、出生前診断・その診断結果に基づく妊娠中絶との対比や整合性は、
学説による議論、連邦通常裁判所判決、そしてドイツ倫理評議会の見解など においてたびたび主張されており、その際には、着床前診断も出生前診断も、
遺伝性疾患を有する子どもの出生を回避することではなく、将来の生活状況 も考慮した夫婦の心的葛藤を回避することに主眼が置かれていた。このこと から、重篤性の判断では、夫婦の心的葛藤や疾患を有する子どもを出生・養 育することの期待可能性も考慮されなければならず、着床前診断と出生前診 断は法律上、同等に扱われ、着床前診断の適応事由を出生前診断よりも厳格 に規定するべきではないとの主張も存在する 。しかし、ダウン症候群や女 性の高齢のため子どもに染色体異常が生じる危険が高まる場合、これらは出 生前診断の主要な適用領域となっているが、着床前診断の適用領域からは除 外するという見解が有力となっており 、着床前診断の適用は例外との位置 づけが維持されている。
ある程度の年齢に成長した後にはじめて発現しうる疾患を検査するための 着床前診断については、連邦通常裁判所判決がその態度を保留していたのと 同様に、胚保護法 a 条および着床前診断に関する命令でも規定されていな い。しかし、 年の遺伝子診断法 条 項が、 歳以降に発現する遺伝
性疾患を検査するための出生前診断を禁じていることから、この条項は倫理 委員会の決定に大きな影響を与えるであろう。
(ⅱ)倫理委員会の役割
胚保護法 a 条 項 号は、倫理委員会が着床前診断の許容要件を検討し、
同意した場合に着床前診断を実施することができると規定し、着床前診断に 関する命令 条および 条において、州が学際的に構成された(医学、倫理 学、法学の専門家、そして患者の利益や障害者の自立の擁護のための代表機 関の代表者)独立倫理委員会を設置すること、 カ月以内に着床前診断実施 についての決定を書面で申請者に通知すること、倫理委員会は着床前診断の 実施を審査する際に、専門家の招へいや鑑定の要請、そして口頭による申請 者の聴取ができること、倫理委員会の決定には、投票権のあるメンバーの三 分の二以上の多数をもって行われること、などが定められている。
倫理委員会の同意の実務的意義は極めて高く、これにより医師や遺伝学者 は法的安定性を獲得できる 。着床前診断に関する命令 条 項により、申 請者には、許容要件を充たす場合、倫理委員会の同意を求める請求権が認め られ 、却下の決定に対しては、行政裁判所に告訴することができる。しか し、着床前診断という生殖の自由にも関連する極めて私的な領域において、
倫理委員会がこれほど広範な権限を与えられていることには批判もあり 、 法律の規定が、極めて不明確で、解釈が必要な許容要件しか規定していない 場合はより一層、倫理委員会の果たす役割は大きい。
(ⅲ)それ以外の着床前診断実施の許容要件
着床前診断に関する命令 条 項において、着床前診断で検査に用いられ る細胞は「個体へと成長することができない」ものと規定されており、多能 性細胞を用いた着床前診断のみが許容される。
着床前診断は、認可を受けた施設で行われ(胚保護法 a 条 項 号)、
適切な資格を有する専門医によって、専門知識をもって実施することが保障 されている(着床前診断に関する命令 条)。着床前診断の実施施設に、認 可を求める請求権は存在しない。複数の適切な施設が認可を申請し、これら の施設の中から選択しなければならない場合、所轄官庁は、公共の利益、申 請者の多様性、そして着床前診断に関する施設の需要を考慮して決定する。
このことによって、着床前診断の実施を限定数の施設に集中することができ、
技術提供の質を保障することができる 。
さらに、着床前診断を希望する女性は、着床前診断の医学的、心理的そし て社会的効果について説明および相談を受けなければならない(胚保護法 a 条 項 号)。相談は、着床前診断を自らは実施しない医師が行う(着床 前診断に関する命令 条 項 号)。
三、おわりに
以上のように、ドイツでは、刑法(胚保護法)により着床前診断の実施を 原則的に禁止し、適応事由に該当する例外的状況においてのみ許容するとい う法規制がなされている。また、詳細は、着床前診断に関する命令で規定さ れ、手続違反には秩序罰で対応されている。
日本においては、現在、着床前診断に関して、国家レベルでの規制は存在 せず、日本産科婦人科学会の会告が規制している。日本産科婦人科学会の会 告である「『着床前診断』に関する見解」 は、重篤な遺伝性疾患児を出産す る可能性のある、遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合および均衡 型染色体構造異常に起因する習慣流産(反復流産)に限り、着床前診断を適 用することができるとする。同学会では、実施者からの申請に基づく認可制 を採用しており、その理由については以下のように述べる。つまり、「『重篤』
ということに関しては、実施者や被実施者によって見解が異なる可能性があ るので、本会において適応疾患を個々に審査する必要があり、申請により個々 に決定するものとする。このような手続きを必要としたのは、 .前記の会 告に示された範囲が多岐にわたること、したがって、 .適応疾患が拡大解 釈される可能性があること、 .治療法の進歩により一度認定された疾患が 今後永久に適応となるとは限らないこと、 .将来予想される受精卵の遺伝 子スクリーニング、遺伝子操作を防止することを目的としているからであ る」 と。
日本産科婦人科学会では、以上のような個別審査が極めて厳格に適用され ており、実施が許可された疾患として、デユセンニュb型筋ジストロフィー、
副腎白質ジストロフィー、オルニチン・トランスカルバミラーゼ(OTC)
欠損症、筋緊張性筋ジストロフィー、ミトコンドリア遺伝子病の Leigh 脳症、
習慣流産(均衡型転座保因者)がある。同学会のこのような厳格な判断に対 しては、批判もあり、学会会告に違反して着床前診断を行ったことを公表す る医師もいる 。確かに、着床前診断が、ヒト胚という初期の人間の生命と いう重大な法益を扱う技術であること、また社会的にも多くの問題点が指摘 されている技術であることから、このような技術の規制を一つの専門的な任 意団体に委ねることには疑問もある。また、着床前診断の許容される適応・
範囲についても、多くの諸利益や社会的な諸問題が混在し、同学会に属さな い者への拘束力の無さや適応拡大の危険性も考慮されなければならないため、
国家レベルでの検討が必要であるように思われる。
ドイツの議論では、着床前診断を例外的に許容する根拠として、遺伝性疾 患をもつ子どもの出生を回避することそれ自体ではなく、将来の生活状況も 考慮した夫婦の心的葛藤を回避することが強調されていた。このような論拠 は、生命の選別や病者・障害者への社会的差別といった着床前診断に対して 向けられる批判にも対応できる可能性を持っており、当該夫婦へのカウンセ
リングやインフォームド・コンセントの重要性も根拠づけることができる。
基本的には、妥当な見解であると思われる。しかし、女性や夫婦の心的葛藤 の回避を考慮に入れた場合、着床前診断実施の許容基準がより一層、不明確 なものになることは否定できない。また、女性や夫婦の心的葛藤の回避とい う論拠は、出生前診断とその後の妊娠中絶の許容理由とも共通する。このこ とから、ドイツでは、着床前診断の許容要件を出生前診断の要件よりも厳し くしてはならないとの見解も主張されていた。これに対しては、着床前診断 の場合にはまだ妊娠が存在せず、出生前診断ほどの具体的な妊娠葛藤はない ことや、体外受精を必要とすることなどから、着床前診断の適用には例外と の位置づけが維持されるべきとされる。
着床前診断に関して、国家レベルでの規制を行うにしても、それを法律に 基づく規制とするか、それとも国のガイドラインに基づく規制とするかでは、
特に実効性という点で大きな違いが生じるが、法律(法律に基づくガイドラ インも含む)に定められた手続の違反に対して制裁、特に刑事制裁が加えら れることについては問題がある。ここでは、人工妊娠中絶と類似の状況、す なわち実際には妊娠状況にはないとしても、妊娠中絶に匹敵し得るような両 親の葛藤状況が存在するため、現行法との整合性から、刑事制裁には謙抑的 でなければならない 。
日本医師会・日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本人類遺伝学会「『母体血を用い た新しい出生前遺伝学的検査』についての共同声明」( 年 月)、日本産科婦人科学会「出 生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」( 年 月)、平岡史樹「出生前診 断―最近の動向」日本医師会雑誌 巻 号 頁を参照。
本稿では、主に受精卵診断を対象とする。核融合以前の前核期に採取された極体の診断につ いては、沖利通・永田行博「極体生検法の実体」鈴木秋悦・宮川勇生・久保春海・神崎秀陽 編『ART ラボラトリー 不妊治療の新しい展開のために』( 年、メジカルビュー社)
頁以下を参照。
Schlussbericht der Enquete-Kommission“Recht und Ethik der modernen Medizin”, 5. 2002, Deutscher Bundestag, Drucksache 14/9020, S.86ff.
内閣府総合科学技術会議生命倫理専門調査会「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(中間 報告)」 頁( 年 月 日)。
日本産科婦人科学会「『着床前診断』に関する見解」(平成 年 月)
Bundesgesetzblatt, 1990, Teil Ⅰ, S.2746. 胚保護法の成立過程については、Rolf Keller/ Hans -Ludwig Günther/Peter Keiser,Embryonenschutzgesetz, Kommentar zum Embryonen- schutzgesetz, 1992, S.65ff.;川口浩一・葛原力三「ドイツにおける胚子保護法の成立につい て」奈良法学会雑誌第 巻 号 頁以下、齋藤純子「胚保護法」外国の立法 年第 巻 号 頁以下を参照。
Rolf Keller/ Hans-Ludwig Günther/Peter Keiser, a.a.O. [Anm.6] S.121ff.; Elke H. Mildenberger, Der Streit um die Embryonen:Warum ungewollte Schwangerschaften, Embryoselektion und Embryonenforschung grundsätzlich unterschiedlich behandelt werden müssen,MedR 2002, Heft 6, S.294; Jörn Ipsen, Der “verfassungsrechtliche Status” des Embryos in vitro, JZ 2001, Heft 20, S.990. ドイツにおけるヒト胚研究の法規制については、拙稿「生殖医療技術をめ ぐる刑事規制(一)、(二)」法学第 巻 号、 巻 号を参照。
胚保護法における「胚」として、「受精した、発育能力のある、核融合の時点からの人間の 卵細胞」が、更に「その為に必要な更なる前提条件が存在する場合には分裂し得、個体へと 発育し得る、胚から採取された全能性細胞」が挙げられている(胚保護法第 条 項)。細 胞の発育能力は、細胞分裂の過程で低下していき、全能性(Totipotenz)から多能性(Pluri- potenz)へと移行していく。多能性細胞も様々な細胞へ分化させることができるが、個体へ 発育させることはできない。胚保護法では、このような多能性しか有さなくなった細胞は、
体細胞と同様に、規制の対象とされておらず、核融合以降の受精卵及び必要な条件が整えば 人へと発育し得る全能性細胞がヒト胚として保護客体とされている。
従って、ドイツにおける議論では、ヒト胚から採取され遺伝子診断される細胞が全能性細 胞であるのか、それとも多能性細胞であるのかで分けて論じられている。診断のため採取さ れた細胞が全能性細胞である場合、採取された細胞それ自体が胚保護法による「胚」と見な されるため、全能性細胞を用いた着床前診断は、胚保護法第 条 項及び第 条 項により 禁止され、この点については見解が一致している。つまり、遺伝子診断される全能性細胞そ れ自体は、診断後母胎へ移植されず廃棄されることから、着床前診断は全能性細胞、つまり
「胚」への「その維持に役立たない目的のため」の利用(第 条 項)と解され、また採取 された全能性細胞は元の受精卵と同じ遺伝形質を有するので、第 条 項におけるクローン 禁止にも該当する。Vgl. Rolf Keller/Hans-Ludwig Günter/Peter Kaiser, a.a.O. [Anm.6], S.196,
208f.
解釈が分かれているのは、多能性細胞を用いた着床前診断についてであり、その際、胚保 護法第 条 項 号及び第 条 項が関連する。つまり、着床前診断を行い、疾患遺伝子の 存在が認められた場合、ヒト胚を廃棄することもありうるような体外受精が、胚保護法第 条 項 号で禁止される「卵細胞が由来する女性の妊娠をもたらす以外の目的」での人為的 受精に該当するかどうか、またヒト胚からの細胞採取、細胞診断、及び疾患遺伝子が確認さ れた後にヒト胚を母胎へ移植しないことが、それぞれ胚保護法第 条 項で禁止されるヒト 胚の「その維持に役立たない目的のため」の利用と言えるかどうかである。Vgl. Sclussbericht der Enquete-Kommission “Recht und Ethik der modernen Medizin”, 2002, Deutscher Bundestag, Drucksache 14/9020, S.101f.; Nationaler Ethikrat, Genetische Diagnostik vor und während der Schwangerschaft, S.34.
胚保護法による禁止を主張する見解、すなわち、着床前診断を前提とした体外受精では、
診断結果により疾患遺伝子が確認されればヒト胚を廃棄するという目的も追求され、それは
「妊娠をもたらす」といった法律の目的と矛盾するものであり、また、そのような目的のた めの細胞採取および細胞診断も胚の維持に役立つ目的であるとはいえないとして、着床前診 断は胚保護法により禁止されているという見解が有力に主張されていた。Joachim Renzik- owski, Die strafrechtliche Beurteilung der Präimplantationsdiagnostik, NJW 2001, Heft 38, S.2754ff.; Elke H. Mildenberger, a.a.O. [Anm.7] S.296f.
しかし、シュライバー博士は、胚保護法第 条 項 号および第 条 項の該当性を検討 し、着床前診断は胚保護法によって規制されていないと述べた。すなわち、胚保護法第 条 項 号における「妊娠をもたらす」目的は、後の胚移植が診断後の女性の決定に依存して いるからといって、否定されるわけではなく、また条文の文言からはその目的が他の付随目 的を完全に排除するものであるとは読み取れない、そして、胚保護法第 条 項で禁止され るヒト胚の「その維持に役立たない目的のため」の利用についても、ヒト胚からの細胞採取 および細胞診断それ自体は、ヒト胚を侵害する行為ではなく、診断結果によっては母胎への 移植もありうる「中立的行為(neutrale Handlung)」と評価されるべきであり、疾患遺伝子 が確認された場合、患者の意思に反してヒト胚を母胎へ移植することは医師に期待できず、
ヒト胚を移植しないという不作為により医師を処罰することはできない、と。着床前診断に 関する法規定の不存在を確認した上で、改めて着床前診断を規制すべきかについて議論すべ きであると主張した。H.-L. Schreiber, Von richtigen rechtlichen Voraussetzungen ausgehen.
Zur rechtlichen Bewertung der Präimplantationsdiagnostik, Deutsches Ärzteblatt 97, Heft 17, 2000, S.A 1135f.;ハンス=ルートヴィッヒ・シュライバ―「生殖医療の法的諸問題」龍谷 大学「遺伝子工学と生命倫理と法」研究会編『遺伝子工学時代における生命倫理と法』(
年、日本評論社) 頁以下。同様に、当時の胚保護法による着床前診断の禁止を否定する 見解として、Gunnar Duttge, Die Präimplantationsdiagnostik zwischen Skylla und Charybdis, GA 2002, S.245ff.; Rudolf Neidert ,Das überschätzte Embryonenschutzgesetz-was es verbie- tet und nicht verbietet, ZRP 2002, Heft 11, S.470.
Bundesärztekammer, Diskussionsentwurf zu einer Richtlinie zur Präimplantationsdiagnostik, 24. 2. 2000, Deutsches Ärzteblatt 97, Heft 9, S.A 525ff.後に、連邦医師会の理事会は、着床 前診断を禁止すべきと表明する。Tätigkeitsbericht der Bundesärztekammer, Deutsches Ärzteblatt 99, Heft 24, 2002, S.A 1653.
Nationaler Ethikrat, a.a.O. [Anm.8].
Sclussbericht der Enquete-Kommission “Recht und Ethik der modernen Medizin”, a.a.O.
[Anm.8].
国家倫理評議会及び連邦議会アンケート委員会「現代医学の法と倫理」はそれぞれ、着床前 診断の是非に関して、制限付許容と絶対的禁止との つの見解を提示する。国家倫理評議会 においては、着床前診断の制限付許容が多数を占め、連邦議会アンケート委員会「現代医学 の法と倫理」では、着床前診断の絶対的禁止が多数意見となっている。
Christian Starck, Verfassungsrechtliche Grenzen der Biowissenschaft und Fortpflan- zungsmedizin, JZ 2002, Heft 22, S.1071.
BverfGE 39, 48ff.; BverfGE 88, 256f.
Ulrich Eibach, Präimplantationsdiagnostik (PID) ―Grundsätzliche ethische und rechtliche Probleme, MedR 2003, Heft 8, S.443ff.; Ute Sacksofsky, Präimplantationsdiagnostik und Grundgesetz, KJ 2003, Heft 3, S.285ff.; Gunnar Duttge, Die Präimplantationsdiagnostik zwischen Skylla und Charybdis, GA 2002, S.254ff.
Monika Frommel, Die Menschenwürde des Embryos in vitro, KJ 2002, Heft 4, S.424.; Ulrich Schroth, Forschung mit embryonalen Stammzellen und Präimplantationsdiagnostik im Li- chte des Rechts, in: FuatS. Oduncu /Ulrich Schroth/Wilhelm Vossenkuhl (Hg), Stammzellen- forschung und therapeutisches Klonen, 2002, S.257, 267.; Kurt Faßbender, Der Schutz des Embryos und die Humangenetik: Zur Verfassungsmäßigkeit des neuen Stammzellengeset- zes und des Embryonenschutzgesetzes im Lichte des einschlägigen Arzthaftungsrechts, MedR 2003, Heft 5, S.283ff.; ders., Präimplantationdiagnostik und Grundgesetz, NJW 2001, Heft 38, S.2751f.
Horst Sendler, Menschenwürde, PID und Schwangerschaftsabbruch, NJW 2001, S.2149f.; Ul- rich Schroth, a.a.O. [Anm.16] S.267.
Christian Starck, a.a.O. [Anm.13] S.1071.; Ute Sacksofsky, a.a.O. [Anm.15] S.292.; Ernst-
Wolfgang Böckenförde, Menschenwürde als normatives Prinzip, JR 2003, Heft 17, S.814f.
Bundesärztekammer, a.a.O. [Anm.9] S.A 525ff.
Nationaler Ethikrat, a.a.O. [Anm.8] S.56ff.
Schlussbericht der Enquete-Kommission “Recht und Ethik der modernen Medizin”, a.a.O.
[Anm.8] S.110f.
改正法・その立法過程を紹介・検討したものとして、三重野雄太郎「着床前診断と刑事規制
―ドイツにおける近時の動向を中心として―」早稲田大学大学院法研論集 号 頁以下、
渡辺富久子「ドイツにおける着床前診断の法的規制」外国の立法 号 頁以下、渡邉斉志
「着床前診断の条件付き合法化」論究ジュリスト 号 頁以下、戸田典子「着床前診断法 成立:胚保護法改正へ」ジュリスト 号 頁がある。
BGH, Urteil vom 6. Juli 2010, 5 StR 386/09.本判決の評釈として、Eva Schuman, Präimplanta- tiondiagnostik auf der Grundlage von Richterrecht?, MedR (2010) 28, 844ff.; Hans-Georg Dederer, Zur Straflosigkeit der Präimplantationdiagnostik, MedR (2010) 28, 819ff.;三重野雄 太郎「着床前診断と胚保護法」早稲田法学 巻 号 頁以下がある。
Deutscher Ethikrat, Präimplantationdiagnostik: Stellungnahme, 2011.
前述の注 を参照。
Deutscher Ethikrat, a.a.O. [Anm.24] S.111ff.
Deutscher Ethikrat, a.a.O. [Anm.24] S.80ff.
Deutscher Bundestag, Entwurf eines Gesetzes zum Verbot der Präimplantationdiagnostik, Drucksache 17/5450.
Deutscher Bundestag, Entwurf eines Gesetzes zur Regelung der Präimplantationdiagnostik, Drucksache 17/5451.本法案の修正案については、vgl. Deutscher Bundestag, Drucksache 17 /6400.
Deutscher Bundestag, Entwurf eines Gesetzes zur begrenzten Zulassung der Präimplanta- tiondiagnostik, Drucksache 17/5452.本法案の修正案については、vgl. Deutscher Bundestag, Drucksache 17/6400.
着床前診断を禁止する法案は、それ以外にも、着床前診断後の出生率の低さ、体外受精・胚 移植による女性への重大な心身の負担、そして誤診の可能性など、着床前診断が必ずしも女 性にとって負担の軽い医療技術ではないことも根拠に挙げる。
着床前診断を禁止する法案は、このような限定に対しても、結局は、「生存に値する生命」
かどうかの境界づけであり、それは恣意的で倫理上許容できない、と批判する。着床前診断 を制限的に許容する法案は、当初の提案では、死産・流産の危険の他に、出生後に死亡する 危険がある場合(出産後、数日もしくは数週間における嬰児の死亡。極めて例外的には、約
か月後の死亡も含む)も適応事由に含めていたが、その後の修正案では削除され、死産・
流産の危険に限定されている。
Vgl. Drucksache 17/5451, S.2f.
Gesetz zur Regelung der Präimplantationsdiagnostik (Präimplantationsdiagnostikgesetz
PräimpG) vom 21. November 2011, BGBl.Ⅰ, S.2228.
Verordnung zur Regelung der Präimplantationsdiagnostik (Präimplantationsdiagnostikver- ordnungPIDV) vom 21. Februar 2013, BGBl.Ⅰ, S.323.着床前診断に関する命令は、新法に より改正された胚保護法 a 条 項 文に基づいて制定された。
Drucksache 17/5451, S.7; Drucksache 717/12, S.27 Drucksache 17/5451, S.8.
Drucksache 717/12, S.29.
Drucksache 717/12 (Beschluss), S.6.
Monika Frommel, Die Neuregelung der Präimplantationdiagnostik durch 3 a Embryonen- schutzgesetz, JZ 2013, S.489, 492f.
Tanja Henking, PräimplantationdiagnostikNeues Gesetz, neue Probleme, ZRP 2012, S.22.
Gesetz über genetische Untersuchungen bei Menschen (Gendiagnostikgesetz) vom 31. juli 2009, BGBl Ⅰ, S.2529.
Monika Frommel, a.a.O. [Anm.40] S.492.それに対して、医師が処罰される危険性を指摘し たものとして、Tanja Henking, a.a.O. [Anm.41] S.21.
Drucksache 717/12, S.31.
Monika Frommel, a.a.O. [Anm.40] S.492.
Drucksache 717/12 (Beschluss), S.2.
日本産科婦人科学会「『着床前診断』に関する見解」(平成 年 月)。
日本産科婦人科学会「『着床前診断』に関する見解」(平成 年 月)生命倫理と法編集委員 会編『資料集;生命倫理と法』(太陽出版、 年) 頁以下。
朝日新聞 年 月 日朝刊、朝日新聞 年 月 日朝刊を参照。また、 年 月には、
同学会が着床前診断実施の承認を下さなかったために、患者らの妊娠・出産をするための治 療を受ける権利が侵害されたとして損害賠償請求を求める訴訟も提訴された。この着床前診 断権利確認訴訟においては、習慣流産のために妊娠することが出来なかった患者に対して唯 一の治療法として着床前診断を受ける権利が保障されるよう求められていた。遠藤直哉『危 機にある生殖医療への提言』( 年、近代文芸社)、大谷徹郎・遠藤直哉編著『はじまった 着床前診断』( 年、はる書房)、遠藤直哉「着床前診断と患者の権利―説明義務違反によ る治療機会の喪失」『 世紀の家族と法;小野幸二教授古稀記念論集』(法学書院、 年)
[追記]なお、本稿脱稿後に、三重野雄太郎「着床前診断の規制と運用―ド イツの着床前診断令の分析を中心として―」早稲田大学大学院法研論集 号 頁に接した。
頁以下を参照。
甲斐克則「遺伝情報の保護と刑法―ゲノム解析および遺伝子検査を中心とした序論的考察
―」『中山研一先生古稀祝賀論文集 第一巻生命と刑法』( 年、成文堂) 頁以下。