智顗 撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳注
︵二
︶
藤 井 教 公
国際 仏教 学大 学院 大学 研究 紀要 第 号︵ 平成 年︶ 18
26
Journal of the International College
for Postgraduate Buddhist Studies
Vol. XVIII, 2014
智顗 撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳注
︵二
︶
藤 井 教 公
はじ めに 筆者 は先 に本 誌第 十七 号︵ 平成 二十 五年 三月 刊︶ に智 顗撰
﹃維 摩経 文疏
﹄訳 注︵ 一︶ と題 して
︑智 顗の
﹃維 摩経 文疏
﹄の 訳注 の一 部分 を発 表し た︒ 本稿 は︑ 先に 刊行 した 訳注
︵一
︶に 続く もの であ る︒ 体裁 は前 稿を 踏襲 して
︑
﹃新 纂大 日本 続蔵 経﹄ 第十 八巻 所収 の﹃ 維摩 経文 疏﹄ のテ キス ト原 文を 数行 のま とま りご とに 区切 って 示し
︑そ の部 分の 訓読 を掲 げ︑ その 後に 訳注 を付 した
︒本 稿は 四六 五頁 中段 十行 目か ら四 六九 頁中 段四 行目 まで を掲 載す る︒ 続き は順 次発 表し てい きた い︒ 過誤 の多 いこ とを 懼れ るが
︑大 方の 批正 を請 う次 第で ある
︒凡 例は 次の 通り であ る︒ 凡 例 一︑ テキ スト 原文 には 一︑ 二点
︑レ 点な どの 返り 点が 施さ れて いる が︑ 読点 や句 点は ない
︒今
︑返 り点 を省 き︑ 国際 仏教 学大 学院 大学 研究 紀要 第十 八号
平成 二六 年三 月
一
意味 に従 って 句点 を施 した
︒ 一︑ テキ スト の文 中に は頁 と段 の変 わり 目に カッ コで
﹃新 纂大 日本 続蔵 経﹄ 巻十 八の 頁と 段を 示し た︒ 一︑ 字体 はテ キス ト部 分と その 引用
︑書 き下 し文
︑﹃ 大正 蔵経
﹄所 収の 経典 論書 の引 用部 分な どは
︑原 則と して 正字 を用 いた
︒そ れ以 外は 略字 を用 いた
︒ 一︑ テキ スト 文中 のゴ チッ ク字 体部 分は
﹃維 摩経
﹄の 経文 部分 であ る︒ 一︑ テキ スト 文中 の︿
﹀内 の部 分は 割り 注部 分を 示す
︒ 一︑ テキ スト 文中
︑及 び書 き下 し文 中の ヤマ カッ コは 筆者 によ る補 いで
︑﹃ 略疏
﹄と の対 照に よる テキ スト 欄外 注記 に従 って 字を 補っ たも ので ある
︒ 一︑ 守篤 本純 の﹃ 維摩 詰經 疏籤 録﹄ の場 所の 指示 は︑ 巻数 と頁 数を 記し
︑頁 数の 次に 表の 場合 は﹁ オ﹂
︑裏 の場 合は
﹁ウ
﹂と 記し た︒ 一︑ 註に 記し た典 拠の 引用 文で
︑引 用部 分が 判然 とし にく い場 合に は該 当部 分に 傍線 を付 した
︒
【テ キス ト︼
﹃新 纂大 日本 続蔵 経﹄ 巻十 八︑ 46 5b 10 -4 65 c5 (以 下頁
︑段
︑行 のみ を記 す) 佛國 品 [465b10
﹈第 三釋 佛國 品者
︒此 品明 長者 子寶 積請 問佛 國因 果︒ 世尊 答佛 國因 果︒ 身子 生疑
︒佛 以神 力現 淨土 相︒ 時諸 大衆 得大 乘益
︒還 復穢 土求 聲聞
︒衆 得小 乘道
︒約 此標 名故 云佛 國品 也︒ 此經 既以 佛國 爲宗
︒必 須識 佛國 義︒ 今略 爲八 重︒ 第一 總明 佛國
︒第 二別 明佛 國︒ 第三 明修 佛國 因︒ 第四 明見 佛國 不同
︒第 五明 往生
︒第 六明 說教
︒第 七約 觀心
︒第 八用 佛國 義通 釋此 經︒ 第一 總明 佛國 者︒ 大聖 前說 普集 經及 諸方 等︒ 多明 法身 正報
︒今 因寶 積獻 蓋︒ 如來 合蓋 現土
︒即 表欲 說依 報也
︒
智顗 撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳注
︵二
︶︵ 藤井 )
二
所以 者何
︒正 報既 顯故
︒須 廣明 依報
︒譬 如若 說王 及臣 民︒ 必須 知國 土治 政事 業︒ 所言 佛國 者︒ 所() 居域 故名 佛國
︒ 譬如 王國 雖與 臣民 共住
︒而 從王 2國 名某 王國 也︒ 今佛 雖與 有緣 衆生 共居
︒而 從佛 受名() 某佛 國也
︒亦 名佛 土︒ 佛身 所依 處故 名佛 土︒ 亦名 佛世 界︒ 佛﹇ 46 5c
﹈所 住處 之分 界() 故名() 佛亜
︒佛 所居 止萬 境相 現不 同︒ 故名 爲亜
︒佛 國有 事 有理
︒事 即應 身所 居之 域︒ 理則 約極 智所 照之 境︒ 而至 理虗 寂︒ 本無 境智 之殊
︒豈 有能 居界 域之 別︒ 但以 隨機 化物
︒ 說其 眞應 兩身
︒故 明事 理二 土也
︒ ( ) テキ スト 欄外 注に
﹁所 上疑 脫佛 字﹂ とあ り︑
﹃維 摩経 略疏
﹄︵ 以下
﹃略 疏﹄ と略
︶に も﹁ 言佛 國者 佛所 居域 故名 佛國
﹂
︵﹃ 大正 蔵﹄ 巻三 十八
︑564a
︶と あっ て︑
﹁佛
﹂の 字が 入っ てい る︒ ( ) テキ スト 欄外 注に
﹁名 下疑 脫名 字﹂ とあ り︑
﹃略 疏﹄ にも
﹁而 從佛 受名 名某 佛國
﹂︵
﹃大 正蔵
﹄巻 三十 八︑ 56 4a
︶と あ って
︑﹁ 名﹂ の字 が入 って いる
︒ ( ) テキ スト 欄外 注に
﹁分 界疑 倒﹂ とあ り︑
﹃略 疏﹄ にも
﹁佛 住界 分名 佛世 界﹂
︵同 前︶ とあ る︒ ( ) テキ スト 欄外 注に
﹁名 上疑 脫亦 字﹂ とあ る︒
【書 き下 し︼ 佛國 品 第三 に佛 國品 を釋 すと は︑ 此の 品︑ 長者 子寶 積︑ 佛國 の因 果を 請問 し︑ 世尊
︑佛 國の 因果 を答 えた もう
︒身 子︑ 疑を 生じ
︑佛 は神 力を 以て 淨土 の相 を現 じた もう
︒ 時に 諸の 大衆 は大 乘の 益を 得る も︑ 穢土 に還 復し て聲 聞を 求め
︑衆 は小 乘の 道を 得︒ 此れ に約 して 名を 標す る が故 に佛 國品 と云 うな り︒ 此の 經は 既に 佛國 を以 て宗 と爲 す︒ 必ず 須ら く佛 國の 義を 識る べし
︒ 智顗 撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳注
︵二
︶︵ 藤井 )
三
今︑ 略し て八 重と 爲す
︒一 には 総じ て佛 國を 明か す︒ 二に は別 して 佛國 を明 かす
︒三 には 佛國 の因 を修 する を 明か す︒ 四に は佛 國を 見る こと 不同 なる を明 かす
︒五 には 往生 を明 かす
︒六 には 說教 を明 かす
︒七 には 觀心 に約 す︒ 第八 には 佛國 義を 用て 此の 經を 通釋 す︒ 第一 に総 じて 佛國 を明 かす とは
︑大 聖前 に﹃ 普集 經()
﹄及 び諸 の方 等を 說き
︑多 く法 身正 報を 明か す︒ 今︑ 寶積
︑ 蓋を 献ず るに 因り て︑ 如來
︑蓋 を合 して 土を 現じ()
︑即 ち依 報を 說か んと 欲す るを 表す るな り︒ 所以 は何 ん︒ 正報 既に 顯わ るる が故 に須 く廣 く依 報を 表す べき なり
︒譬 えば 若し 王及 び臣 民を 說か ば︑ 必ず 須ら く國 土治 政の 事業 を知 るべ し︒ 言う 所の 佛國 とは
︑︵ 佛の
︶居 る所 の域 の故 に佛 國と 名づ くる が如 し︒ 譬え ば王 國︑ 臣民 と共 に住 する と雖 も而 して 王に 従っ て國 を称 し某 王國 と名 づく るが 如き なり
︒今
︑佛 は有 緣の 衆生 と共 に居 する と雖 も而 も佛 に従 って 名を 受く
︒某 佛の 國︵ と名 づく る︶ なり
︒亦 た佛 土と 名づ く︒ 佛身 の所 依の 處な るが 故に 佛土 と名 づく
︒亦 た佛 世界 と名 づく
︒佛 所住 の處 の分 界な るが 故に 佛刹 と名 づく
︒佛 の居 止す る所 にし て萬 境の 相現 ずる こと 不同 なる が故 に名 けて 刹と 爲す
︒佛 國に 事有 り︑ 理有 り︒ 事は 即ち 應身 所居 の域
︑理 は則 ち極 智所 照の 境() に 約し て至 理虗 寂に して 本と 境智 の殊 なり 無し()
︒豈 に能 居の 界域 の別 有ら んや
︒但 だ隨 機化 物() を以 て其 の眞 応兩 身() を說 くが 故に 事理 の二 土を 明か すな り︒ ( )
『普 集經
』 智顗 が﹃ 維摩 経﹄ の開 経と して 位置 づけ る経 典︒ 本書 テキ スト の後 の巻 五に 経文
﹁彼 時佛 與無 量百 千之 衆 恭敬 圍繞 而爲 說法
﹂︵ 49 5a ,l .1 4︶ の﹁ 彼時
﹂の
﹁説 法﹂ の内 容に つい て﹁ 昔尚 統師 問長 耳三 藏云
︒佛 時與 無量 大衆 說何 等法
︒答 說普 集經 即方 等教 攝﹂
︵496a,ll.4
-6
︶と あっ て︑ 長耳 三藏 の説 とし て﹃ 普集 経﹄ を出 して いる
︒長 耳三 藏は 山 口弘 江氏 によ れば 那連 提黎 耶の 可能 性が ある とい う︒ 本書 には
﹃普 集経
﹄の 語は 十三 回の 使用 例が ある が︑ 本書 では 真 性解 脱を 説く 経と して いる
︒﹃ 大集 経﹄ には
﹁大 普集 経﹂ の名 が出 るが
︵﹃ 大正 蔵﹄ 巻十 三︑ 94 b, l. 15
︶︑ 本書 でい う経
智顗 撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳注
︵二
︶︵ 藤井 )
四
とは 無関 係で あろ う︒ この 経に 関す る論 考と して 山口 弘江
﹁﹃ 維摩 経文 疏﹄ 所引 の﹁ 普集 経﹂ につ いて
﹂︵
﹃印 度学 佛教 学研 究﹄ vo l. 53 -1
︑二
〇〇 四年 一二 月︶ があ る︒ ( ) 蓋を 合し て土 を現 じ 経の 仏国 品で
︑長 者子 宝積 ら五 百人 が仏 に供 養し た七 宝造 りの 傘蓋 が︑ 如来 の威 神力 によ って すべ て合 わさ って 一つ にな り︑ また 如来 によ って 穢土 が浄 めら れて 仏国 土が 現出 した こと をい う︒ ( ) 極智 所照 の境
究極 の智 慧が 明ら かに する 対象 のこ と︒ ( ) 本と 境智 の殊 なり 無し
智慧 とそ の智 慧の 対象 とが 本来 的に 能所 の区 別な く同 一で ある こと
︒ ( ) 隨機 化物
能力 素質 に応 じて 衆生 を教 化す るこ と︒ ( ) 眞応 兩身
仏身 論で いう 真如 身と 応身 の二 身の こと
︒
【テ キス ト︼ 46 5c 5- 27 然非 本無 以垂 迹故
︒有 應形 應土
︒非 迹無 以顯 本故
︒引 物同 歸法 身眞 國也
︒是 以此 經云
︒雖 觀諸 佛國 土永 寂如 空︒ 而現 種種 清淨 佛國 土︒ 則應 同凡 聖︒ 現有 封壃
︒凡 聖果 報高 下殊 別︒ 現淨 穢亦 非︵ 一() 也︶
︒故 瓔珞 經云
︒起 一切 衆 生應 一切 國土 應︒ 或有 釋言 應() 國者 是衆 生集 業所 感︒ 故此 經云
︒衆 生之 類是 菩薩 淨土
︒聖 人慈 悲之 力此() 現生
︒故 法 華經 云︒ 而生 三界 朽故 火宅
︒爲 度衆 生生 老病 死︒ 或有 釋言 諸佛 法身 猶如 明鏡
︒一 切色 像悉 現其 內︒ 是則 一切 國土 皆從 法身 本國 應出
︒國 由佛 有故 名佛 國︒ 故法 華經 云︒ 今此 三界 皆是 我有
︒其 中衆 生悉 是吾 子︒ 今詳 覈斯 語︒ 若云 應國 從法 身出
︒即 是自 生︒ 若謂 從衆 生業 有︒ 即是 佗生
︒若 衆生 對法 身故 得有
︒即 是共 生︒ 若離 業離 法身 而有
︒即 是無 因緣 生︒ 而有 國土 也︒ 此皆 墮四 種性
︒性 義須 破類 前可 知︒ 當知 國土 若淨 若穢
︒皆 不可 說︒ 有因 緣故 而可 說者
︒ 悉檀
︵赴()
︶機 四句 皆得 說也
︒ 智顗
撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳注
︵二
︶︵ 藤井 )
五