• 検索結果がありません。

次期学習指導要領におけるカリキュラム・

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "次期学習指導要領におけるカリキュラム・"

Copied!
23
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

次期学習指導要領におけるカリキュラム・

マネジメントの理論と方法(

1

竹 内 久 顕

Ⅰ 課題の設定

2015年度は、教育課程改革に関わる重要な文書が相次いで発表された。

15826日、中教審の教育課程企画特別部会が、次期学習指導要 領改訂に向けての中間答申に当たる「論点整理」を発表した。②151221日、「学校と地域」「チーム学校」「教員養成」に関する、3本の中教審 答申が取りまとめられた1。③16125日、馳文科大臣が、「『次世代の 学校・地域』創生プラン―学校と地域の一体改革による地域創生」(通称「馳 プラン」)を発表した。④16331日、大学入試等に関する、高大接続 システム改革会議がその「最終報告」を発表した。これらのうち、③の馳プ ランは、②の今後の具体的な工程とその方向性を示したものなので、実質的 には①②④の5文書だが、いずれも密接に連関しながら「2030年の社会と 子供たちの未来」(①「論点整理」)へ向けての制度設計を試みたものである。

教育課程の観点から見た場合、最も重要なのは、①「論点整理」であるこ とは言うまでもない。ここには、後述のように、「アクティブ・ラーニングの 視点」「学習評価の充実」「カリキュラム・マネジメントの充実」等といった 教育課程の再編が示されている。そして、その教育課程再編を現実的に実効 性あるものとして支える制度改革として②と④を位置付けることができる。

②④のような制度改革と指導要領改訂が同時進行していることから、文科省 は、今次改訂での教育課程再編に相当な力を注いでいることが伺える。

そこで、本稿では、まず、次期指導要領の特色を「論点整理」から読み取 り、それを支える制度改革(②④)の概要を整理する。次に、次期指導要領

(2)

の特色の一つである「カリキュラム・マネジメント」(以下、CMと略記)に 焦点を当て、指導要領と教育学(カリキュラム論)における教育課程(カリ キュラム)2の捉え方を振り返る(今回ここまで)。そして、こうした基礎理 解の上で、既にCMとしての工夫が先行しているESD(持続可能な開発の ための教育)、環境教育、国際理解教育等を参照しつつ、指導要領に即した 平和教育のためのCM構想について試論的に考察することとする(次回)。

Ⅱ 次期指導要領の特色と制度改革構想

1)次期指導要領の特色―「社会に開かれた教育課程」の構想

次期指導要領(「論点整理」)は、「2030年の社会と子供たちの未来」を見 据えるとの掛け声のもとで教育課程の役割を捉え直し、「社会に開かれた教 育課程」をキーワードとして掲げた。そこには、「教育課程もまた社会との つながりを大切にする必要がある」や「教育課程を介して社会や世界との接 点を持つ」と記されているものの、学校と社会の「つながり」「接点」とい う表現はスローガンとしてはわかりやすいが、どういう教育的営みを学校に 対して求めているのかが、これだけでは漠然としており具体性に欠ける。そ こで「論点整理」では、「社会に開かれた教育課程」を実現するうえでの論 点として、次の3点が掲げられている3

①「社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよ りよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と 共有していくこと」。

②「これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い 関わり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力と は何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと」。

③「教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放 課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学 校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させ ること」。

(3)

③では、学校と地域・社会の人的・物的な連携という組織構造・組織運営 上の課題が記されている。そして、「共有・連携」するとされる「目指すと ころ」が①と②に示されている。①では、「よりよい社会を創る」という

「目標を社会と共有」とあるが、それだけであれば③と変わらない。そこで、

①の眼目は冒頭の下線「社会や世界の状況を幅広く視野に入れ」であると解 され、学校教育が「社会や世界の状況」とは無関係に行なわれるのではな く、「社会や世界」がどういう状況にありどういう課題を抱えているのかと いったことを社会と共有できるような教育課程の実現を図るということであ る。②では、「自らの人生を切り拓いていく」ための資質・能力に焦点が当 たっているようだが、これだけだとどういう意味で「社会に開かれ」といえ るのかわからない。そこで、下線冒頭の「社会や世界に向き合い関わり合 い」に注目すると、子どもたちが「社会や世界」の課題に対して積極的・能 動的・探究的に関与し参画することを通して、「自らの人生を切り拓いてい く」ための資質・能力を育むということだと解される。

すなわち、学校教育は「社会や世界の状況」に常に目を向け(①)、子ど もたちが「社会や世界」の創造に自ら関与・参画していく(②)、こうした 意味での「つながり」「接続」を可能とするために、学校と社会が人的・物 的に「つながり」「接続」する仕組みを整える(③)。こうした教育課程を

「社会に開かれた教育課程」と呼び、これが次期指導要領の基盤となってい る構想である4

2)次期指導要領の特色―「育成すべき資質・能力」の構想

「論点整理」では、「社会に開かれた教育課程」という理念のもとで、次期 指導要領に基づく指導を通して「子供たちが何を身に付けるのか」=「育成す べき資質・能力」として、次の「三つの柱」を設定している。

①「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」5

②「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力 等)」6

(4)

③「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向か う力、人間性等)」7

そして、こうした「資質・能力」を各教科等で育成することになるのだ が、そのためには、「教育課程の総体的構造の可視化」を試みることが必要 であるという。それは、各教科等で育まれた力(思考力・判断力等)を、単 に当該教科の文脈にとどめるのではなく、「実社会の様々な場面で活用でき る汎用的な能力」へと高めていくためには、「総体的観点からの教育課程の 構造上の工夫」が必要であるということである。そして、そうした「工夫」

の例として、各教科等間の相互の関連付け、教科横断的な総合的な学習、社 会参画につながる特別活動等が挙げられている。こうして、「教育課程の全 体構造と各教科等を往還的に整理」することで、教育課程の「総体的構造 化」を図ることとなるのである。

ここまでの理解を踏まえて、「論点整理」の「補足資料」(60頁)の図を もとに「教育課程の総体的構造」の要点をまとめてみよう。

①知識・技能 ②思考・判断・表現 ③学びに向かう力・

人間性 各教科 各教科固有の知識・

技能 各教科の本質に根差

した問題解決の方法 各教科を通じて育ま れる情意・態度 総合的な学習 (各学校で設定) 横断的・総合的な問

題解決の能力 横断的・総合的な問 題解決に取組む態度 特別活動 集団の運営方法や基

本的な生活習慣 よりよい集団生活や 生活習慣を形成する 能力

自己の役割や責任を 果たす態度 道徳 道徳的価値 道徳的判断力 道徳的心情・実践意

欲・態度

3)次期指導要領の特色―「カリキュラム・マネジメント」の構想

以上のような「教育課程の総体的構造」を構築するための方法として、次 期指導要領のキーワードとして浮かび上がってきたのが、「カリキュラム・

マネジメント(CM)」である。CMとは、「論点整理」では、「(教育課程の)

編成主体は各学校」であるということを前提に、各学校が子どもと地域の実

(5)

情などを踏まえて、各学校の教育目標実現へ向けて教育課程を編成しさらに それを実施・評価・改善することとされている。そして、そのCMは次の

「三つの側面」から捉えるものとされている。

①各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教 科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列し ていくこと。

②教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調 査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を 図る一連のPDCAサイクルを確立すること。

③教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資 源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

これらを要約すれば、①総合的・横断的なカリキュラム編成、② 指導と 評価の一体化 (PDCAサイクル)に基づくカリキュラム編成、③前二者

(①②)実現のために学校の内外を通じた組織・経営的視点からのカリキュ ラム編成、となる。

次期指導要領は、方法としてアクティブ・ラーニングの視点やICTの技 法を取り入れたり、学習評価を充実させたりしつつ、以上のようなCMを 確立することによって「教育課程の総体的構造化」を図り、「社会に開かれ た教育課程」の実現を目指すというものである。

4)制度改革構想―CMに関わる事柄に関して

以上が、次期指導要領の特色であるCMに関するものだが、これを支え る制度改革構想について、各答申等を要約しつつ簡単にまとめておこう。

①答申A(学校と地域):「コミュニティ・スクール」と「地域学校協働本 部」を充実させ、両者の一体的・効果的な運用を図る。前者は学校サイドの もので、地域住民や保護者等の参加による学校運営協議会を設置する学校で あるコミュニティ・スクールを充実させ、地域住民や保護者の声を反映させ て「特色ある学校づくり」を進めることを目指す。後者は地域(社会教育)

(6)

サイドのもので、これまで個別に地域住民のボランティアとして行なわれて いた放課後教室、家庭教育支援、登下校見守りといった諸活動の総合化と緩 やかなネットワーク化を図って地域学校協働本部を整備し、学校との連携・

協働を目指す。

②答申B(チーム学校): 複雑化・多様化した諸課題に対応するととも に、教員が子どもと向き合う時間を十分に確保できるようにするため、ス クールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、部活動指導員等の専門 スタッフの参画を進め、「チーム学校」としての学校のマネジメント機能を 強化する。

③答申C(教員養成): 教育職員免許法改正に関わる点に限定すると、

CM、アクティブ・ラーニング、チーム学校、学校と地域の連携、ICT教 育、総合的な学習に関わる事項が教員養成課程において必須とされる見通し である。次期指導要領に基づく指導力を持った教員の養成を目指すものと なっている。

④「最終報告」(高大接続): 高等学校教育改革、大学教育改革、大学入 学者選抜改革を一体のものとして位置付けており、高校教育に関しては、次 期指導要領の趣旨にのっとったものとなっている。高校在学中に実施する

「高等学校基礎学力テスト(仮称)」、現在の大学入試センター試験に代わる

「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」及び個別大学の入試の3段階の試 験構想が立てられた。そして、この3段階の試験に「学力の3要素」8を対 応させ、高等学校基礎学力テストでは「知識・技能」を中心に、大学入学希 望者学力評価テストでは「思考力・判断力・表現力」を中心に、そして個別 大学入試では「主体性を持って、多様な人々と協働して学ぶ態度」にまで踏 み込んだ評価を求めている。

5)小括

以上の4つの制度改革と次期指導要領を対比してみよう。

次期指導要領では、「社会に開かれた教育課程」のもとで「育成すべき資

(7)

質・能力」として「三つの柱」が立てられた。そして、それらを育成するた めには「教育課程の総体的構造」を可視化することが不可欠であるとの認識 の下で、CMの「三つの側面」が重視されることとなった。逆に言えば、

「三つの側面」から成るCMによって「教育課程の総体的構造」を構築する ことを通して、「三つの柱」の資質・能力を獲得した子どもたちが、「これか らの社会を創り出していく」ということになるのである。

そして、こうした次期指導要領の構想の実現を支えるために4つの制度改 革が同時進行で進められようとしている。CMの「三つの側面」に着目して 4つの制度改革との関わりを整理すると次のようになるだろう。

CMの「三つの側面」 4つの制度改革

①総合的・横断的なカリキュラム編成 高大接続 答申C(教員養成)

② 指導と評価の一体化 に基づくカ リキュラム編成

③学校の内外を通じた組織・経営的視

点からのカリキュラム編成 答申A(学校と地域)

答申B(チーム学校)

筆者は、「平和で民主的な国家及び社会」(教基法第1条)という意味での

「これからの社会」を創り出す「形成者」(同)として必要な資質・能力を育 むうえで、「①総合的・横断的なカリキュラム編成」に重要な意義があると 考える。しかしながら、たとえば総合的な学習が、理念においてそうした資 質・能力を育むためのものであったにもかかわらず、現実においては様々な 困難(後述)を抱えていることを否定することはできない。そのため、答申 Cで教員養成課程において総合的な学習の指導法の科目を新設すると提言さ れていることには一定の意義がある。しかし、最も期待したいのは、高大接 続改革によって「三つの側面」の①②が励まされることになるという点であ り、今後の経過を注視したい9

Ⅲ カリキュラム・マネジメント(CM)論の検討

1)教育学研究におけるCM

CMに関してしばしば引用される中留武昭を中心とするグループ(田村知

(8)

子、曽我悦子ら)の研究を概観する10

中留は、CMを、「学校の教育目標を実現するために、教育活動(カリ キュラム)の内容上、方法上の連関性と条件整備活動(マネジメント)上の 協働性との対応関係を、組織構造と組織文化とを媒介としながら、PDCA サイクルを通して、組織的、戦略的に動態化させる営み」と定義づける11。 この定義からは、次の論点が読み取れる。①カリキュラムとマネジメントを 一体のものと捉える、②「連関性」と「協働性」という2つの「つながり」

を基軸とする、③組織構造や組織文化も課題として捉える、④動態的な営み として捉える。次に、この4つの論点について検討する。

①カリキュラムとマネジメントの一体化: 中留によれば、従来、研究上も 実践上も、カリキュラムは「内容・方法を対象とした分野」、マネジメントは

「条件整備という経営を対象とした分野」として、別々に理解され論じられて きた12。しかしながら、曽我悦子は、98年告示の指導要領(高校は99年告 示)で総合的な学習の時間が設けられたことを機に、両者の一体化の必要性 が認識されるようになったと指摘する。総合的な学習は、各学校の「創意工 夫」や「学校の実態に応じた学習活動」によるものとされていたため、学校 ごとのカリキュラム開発(SBCD13が欠かせない。したがって、「弾力的な 時間の運用」「多様な学習形態」「外部人材の協力」「全教職員の教科の枠を 越えた指導体制」「地域の教材や学習環境の積極的な活用」等、カリキュラ ム開発においてマネジメントが必須となったのである。さらに、曽我による と、その後の実施過程において課題が顕在化してきたことを機に、行政にお いても一体化が認識されるようになったという。すなわち、具体的な目標を 設定しないままの実践、どういう学力が身に付いたかの検証・評価を行なわ ない実践、教科との関連が自覚されていない実践や教科に転用する例などが 少なからず見受けられたようだが、こうした事態に対し、2003年の指導要領 一部改訂で、目標・内容・方法・評価を含む全体計画の作成、社会教育施設 等の学校外との連携などが盛り込まれ、研究サイドと行政サイドの双方でカ リキュラムとマネジメントの一体化が不可欠と考えられるようになった14

(9)

②連関性と協働性: 中留・曽我は、「連関性」を次のように3つの側面か ら論ずる。第1に、内容上の連関性。これは、「各教科・科目間」「単元間」

「教科と領域間」「教科と総合的な学習の時間との間」の相互の「つながり」

で、さらに、環境・情報・食育等「現代的な課題」に取り組む際の「つなが り」を意味する。第2に、方法上の連関性。これは、「学習指導の方法」「学 習活動の形態」「指導体制」「学習評価」等における「つながり」を意味する。

3に、機能上の連関性。これは、PDCAサイクルや「習得→活用→探求」

といった学習過程の流れなど、時系列に則した「つながり」を意味する。そ して、これら3つの「連関性」を実現するために、教科・学年の枠を越えた 教員同士、管理職と教諭、学校と地域・家庭・行政・社会教育施設等といっ たさまざまなレベルでの「協働性」が必要とされる15

③組織構造・組織文化: 中留・曽我は、連関性と協働性を妨げる要因とし て、伝統的に、授業等の教育活動が閉鎖的な「個業」として行なわれてきた ということ、教科書・指導書・黒板のセットで授業が行なわれてきたという こと(教科書と指導書に依存したような授業のことだろう)といった、「ネ ガティブな文化」にあると指摘する16。したがって、組織構造のみならず 組織文化にも切り込んだ意識改革が必要であるということになる。

④動態的な営み:カリキュラム論では、カリキュラムの「統合性」「連関 性」が論じられることがあるが、大きく2つの次元がある。第1に、さまざ まな教科・領域の学習経験を相互に関連付けるという次元。第2に、学習 経験を子ども自身の内部の意味行動と関連付けるという次元。中留は、カリ キュラムをマネジメントの視点で構造化する場合、第1の次元、すなわち

「学習経験の統合への機会を教科・領域との相互関連において促す視点」に 立つことになるという。この立場に立つと、カリキュラムの内容・方法上の 連関性、教科の枠を越えた協働性、PDCAサイクルによるカリキュラム再 編と学校改善などを継続的に行なっていく「動態的」な営みとしてCM 実施されるというのである17

以上が、中留らの学術的なCM論だが、これを、先に確認した次期指導

(10)

要領のCMの考え方と照合してみよう。「論点整理」に記されていた、CM の「三つの側面」を再び振り返ってみる。

「論点整理」の「①総合的・横断的なカリキュラム編成」は中留らの「内 容上・方法上の連関性」のことであり、「② 指導と評価の一体化 (PDCA サイクル)に基づくカリキュラム編成」は「機能上の連関性」に相当し、

「③学校の内外を通じた組織・経営的視点からのカリキュラム編成」は「協 働性」とそれぞれ符合する。また、次期指導要領策定に関わっている文科省 初中局の合田哲雄も、管理職向けの発言の中で、「バラバラになりがちな各 教科等や、学習指導と生活指導、学校全体のマネジメントと各学級、学校の 内と外などをつなげていく」ことが問われていると言い18、さらに、「すで に実施されている」はずのALCMを今回あえて打ち出すことで、「その 重要性を先生方に再認識していただき、教科書を変え、授業を変え、学習評 価を変えることが必要」だと言う19。つまり、連関性と協働性のCMを取 り入れることで、教員の意識や授業・評価観等のいわば組織文化の変革を目 指すという点で、中留らのCM論と文科省のそれは重なる。次期指導要領 は、これまでのCM研究の蓄積を踏まえてCMに焦点を当てたとみなすこ とができる。

「論点整理」 中留らのCM

①各教科等を相互に関連付け、教科横断的な視点に

立ち、教育課程の全体を編成する 内容上・方法上の連関性

②教育課程の実施・評価・改善というPDCAサイ

クルを確立する 機能上の連関性

③地域等の外部の人的・物的リソースを効果的に活

用する 協働性、組織構造・組織文化

しかし、力点の置き方に微妙な差異が見られる。中留らのCM論は包括 的なグランドデザインの下で展開してきた。田村知子が教員向けに著した ブックレットでは、教育活動(「教育目標の具現化」「カリキュラムの PDCA」)、条件整備活動(「組織構造」「組織文化」)、学校外部の規定要因

(「家庭・地域社会」「教育課程行政」)の6要素のすべてを「リーダー」たち

(11)

が中心となって「総合的にマネジメントしていく」と構造化して提起してい る20

一方、合田の発言に、①の意味のCMが「今回の改訂において非常に重 要になっています」というものがある21。これまでの経緯を見ると、実は、

CMの語は、すでに2008年の中教審答申でも用いられているのだが、そこ では②の意味で用いられていた22。また、1512月に学校と地域・専門 家等との連携に関する中教審答申(答申A、答申B)が出ることになるのだ から、③に関しては、指導要領改訂の問題というより、制度改革として別途 試みられることになるだろう。したがって、次期指導要領のCMでは、① の側面(中留らの「内容上・方法上の連関性」)にこそ焦点が当たるという ことになるのである。

そこで、本稿では続けて、中留らが提起するCM論のうち、「内容上の連 関性」(教科の枠を越えたつながり、「論点整理」の①)についてさらに検討 することとする。まず、カリキュラムの 分化と統合 に関する基礎的な理 解を確認しておく。

2)カリキュラムの 分化と統合

カリキュラムの編成において、領域をいかに設定するか、すなわち 分化 と統合 の仕方という課題は、主に、「科学」の原理と「生活」の原理のい ずれに立脚するかという論争として展開してきた。この原理的対立は、それ ぞれ「学問中心カリキュラム」(系統主義カリキュラム)と「子ども(児童)

中心カリキュラム」(経験主義カリキュラム)に対応する。

「学問中心カリキュラム」は、科学(学問・技術・芸術)の成果と論理に 即して体系的にカリキュラムの領域(教科)を設定するというものである。

この場合、たとえば数学に対して算数・数学科、歴史学に対して社会科歴史 のように、学問領域に対応して各教科・科目が編成されているため、学問体 系の細分化に伴い、カリキュラム全体は「分化」の方向に向かう。一方、

「子ども中心カリキュラム」は、子どもたちの生活経験と興味の中から課題

(12)

を見出し、それらを解決する過程に即して学習を進め、生活経験をより豊か なものへと組み替え、興味の拡大を図るというものである。生活の中で求め られる知識や技能は系統的に分類されるものではなく、複合的・総合的に関 連し合っているため、カリキュラム全体は「統合」の方向に向かう。そし て、そのいずれの方向に向かっているか、言い換えれば、いずれの要素に力 点が置かれているかに応じて、さらに67類型に細分化される23

以下に、「学問中心カリキュラム」の要素の強いものから「子ども中心カ リキュラム」の要素の強いものへと配列してみよう。

①教科カリキュラム(分化カリキュラム): 親学問に対応して教科・科目 を設定するという、最も典型的な学問中心カリキュラムで、教科・科目間の 連関性は特に考慮されない。小中高と校種段階が上がるにつれ、学習内容の 専門性が高まるため、教科・科目が細分化されることになる24

②相関カリキュラム(関連カリキュラム): 教科・科目が個別に独立して いる場合、内容の重複が見られたり、他教科・科目での学習を踏まえないと 理解が深まらなかったりといった単元・事項は少なくない。そこで、複数の 教科・科目の学習内容を関連付けてカリキュラムを編成することで、効率的 で実効的な学習を進めようというもの。〈例1〉高校理科の生物で、DNAや 光合成の単元を理解するためには、化学で学習する物質の構成や有機化合物 の理解が欠かせないし、生物の生態系の単元と地歴科地理の自然地理の学習 を関連付けることも可能である。〈例2〉中国思想を学習する際、地歴科世 界史で諸子百家の活躍した時代背景を学び、公民科倫理で孔孟思想を理解 し、国語科古典(漢文)で論語の原文に触れるといった学習をできるように カリキュラムを組めば、中国思想をダイナミックに学ぶことができる。〈例 31853年のペリー来航によって日本は開国し、59年から貿易が始まった。

しかし、開国させたのはアメリカだったにもかかわらず、最大の貿易相手国 はイギリスだった。この理由は地歴科日本史の学習のみでは説明できない。

61年からアメリカは南北戦争に突入したため対日貿易を主導することがで きなくなった。また、イギリスはアジア進出には積極的だったものの、51

(13)

年から中国南部を中心に展開した太平天国の乱のため上海を拠点とするイギ リスは日本進出で出遅れることとなった。こうした世界史での学習と関連付 けることで初めて日本史の理解が深まる。

③融合カリキュラム: 関連の深い複数の教科・科目を単一の教科・科目に したもの。〈例1〉中学理科は、高校では物理・化学・生物・地学と細分化 されている科目を融合して単一教科とする。〈例2〉高校国語科には現代文 と古典という科目があるが、この両者を融合した国語総合がある。

④広領域カリキュラム(広域カリキュラム): 融合カリキュラムの考え方 を一部の教科・科目群にとどめるのではなくカリキュラム全体に及ぼしたも ので、学問体系による分類というより、子どもの生活経験や日常の課題に即 して編成したもの。〈例1〉幼稚園の教育要領25では、カリキュラムを「健 康、人間関係、環境、言葉、表現」という5つの広領域で編成している。

〈例2〉総合的な学習は広領域カリキュラムに位置付けることができるが、

現行指導要領において、融合カリキュラムとの違いが明確でない場合もあ る。たとえば、小学校低学年の生活科は理科と社会を合わせたものだが、論 者によって③とする場合も④とする場合もある。そもそも、これらの類型は 理念型なため、現実の実践においては明確に分類することが難しい場合もあ る。

⑤コアカリキュラム: 子どもの現実的な生活上の問題解決のための単元学 習からなる「中心課程(コア)」と、そのために必要な専門的・体系的な知 識・技能を習得するための「周辺課程」を有機的に連関させて編成したも の。歴史的には、20世紀初頭以来の世界的な新教育運動の中で、ドルトン プラン等さまざまな実践が展開しており、日本でも戦後初期の経験主義的な カリキュラムの下で採用されていた。そこでは、社会科を中心課程とし、他 の教科を社会科の単元に連関させてカリキュラム全体を編成した。一例とし て、小学校6年生の社会科の単元を示す26。「仕事を通じて人々はどのよう に協力するか」「どうすれば私たちは安全な生活ができるか」など8単元が 示されており、そのうち第5単元(「問題五」)は「上手な物の買い方には私

(14)

たちはどんな知識を必要とするか」というものである。そして、この単元の

「学習活動の例」として次のようなものが例示されている。「商品の値段には どんな要素が含まれているかを発見する」「広告を集めてどれがより宣伝的 かを話しあう」「季節による果物、野菜、魚の値段を調べて話しあう」「正し い洗たく法、乾燥法、アイロンかけを実行する」「家や学校の室のかざりつ けを計画する」「畳の歴史を聞き,その手入れ法を話しあう」「入用な金額を 調べて予算表を作る」等。これらの学習活動に対応する周辺課程としては、

算数・国語・家庭・図工科等があるだろうから、社会科の学習と並行して、

たとえば図工科で「室のかざりつけ」を作るといった学習をすることにな る。

⑥経験カリキュラム: 教科・科目の存在を前提としないもので、もっぱら 子どもの日常生活経験の中の課題や興味に即してカリキュラムを編成する。

3)指導要領に見る 分化と統合 の変遷

戦後日本の教育課程は、指導要領に即して見ると、経験主義と系統主義の いずれかに力点を置いて 振り子現象 のように変遷してきた27

①経験主義カリキュラムの採用(1947年〜50年代)

47年に最初の指導要領が「試案」として出された。そこでは、戦前の国 家主義的、注入主義的な教育のあり方への反省から、当時アメリカで盛ん

だったDeweyの教育思想に基づく経験主義カリキュラムが取り入れられ

た。新設教科の社会科を中心課程とするコアカリキュラムによって構成され る生活単元学習が試みられた(6類型の⑤参照)。

②系統主義カリキュラムへの転換と 教育内容の現代化 (60年代〜70 年代)

58年に指導要領が文部省告示として官報に掲載され法的拘束力が明確と なったが、教育課程の面でも原理的転換が行なわれた。「はいまわる経験主 義」「基礎学力の低下」といった批判のなか、高度成長時代を迎え、高度な 科学・技術の教育や ハイタレント の輩出を可能とすべく、系統主義への

(15)

転換と内容の高度化が進んだ。この動きは、57年のスプートニクショック を機に急速に進んだアメリカのカリキュラム改革によってさらに加速するこ ととなった(教育内容の現代化)。このことは、学習内容の高度化による、

詰め込み学習、暗記学習、受験戦争、落ちこぼれ問題といったさまざまな問 題を顕在化させ、再びカリキュラム原理の転換を余儀なくされた。

③人間性重視のカリキュラムへの転換(80年代以降)

教育内容の現代化 の負の側面はアメリカでも問題視されるようになり、

カリキュラムの「人間化」「人間性重視」への転換が試みられた。そうした 背景で77年に出された指導要領は、豊かな「人間性」の育成と「ゆとりの あるしかも充実した学校生活」(いわゆる ゆとり教育 )の方針もとで、学 習内容の削減が進められた。また、生活科(89年改訂)や総合的な学習の 時間(98年改訂)の新設に見られるようなカリキュラムの統合(合科的な 指導)への動きと体験的な活動の重視といった、経験主義的要素の取り入れ も特徴的である。

以上のような 振り子現象 の過程を経た現在の指導要領は、教科カリ キュラムの考え方を基本に各教科が編成されているという意味では、学問中 心カリキュラム(系統主義)の類型に属する。しかし、たとえば、「各教科 等及び各学年相互間の関連を図り」(総則)、「合科的・関連的な指導を進め ること」(小学校総則)とあるように相関・融合カリキュラムの要素も含ま れている。あるいは、総合的な学習は広領域カリキュラムの例であるし、

「生活科を中心とした合科的な指導を行うなどの工夫」(小学校生活科)はコ アカリキュラム的なものをイメージすることもできる。したがって、現行指 導要領は、経験主義的要素も含む多様なカリキュラム類型のそれぞれの利点 を活かせるように工夫されており、「カリキュラムのハイブリッドな編成」28 ということもできよう。

しかしながら、教科カリキュラムには、上記②の時期に顕著に見られたよ うに、「児童生徒の経験が分裂させられ、暗唱に傾きがち」になりやすく

「創造性、社会的感受性、反省的思考力、寛容といった人格特性を育てにく

(16)

い」といった弊害も指摘されている29。中留らが指摘する「個業」という 組織文化・教員意識と相まって、教科カリキュラムのもとにある各教科それ ぞれが分断されたままであるならば、とりわけ小中高と校種段階が上がるに つれ、上記弊害の克服は難しい。中留らのいう「内容上の連関性」(教科の 枠を越えたつながり、「論点整理」の①)を図るCMを取り入れることで、

教科カリキュラムの弊害を乗り越えようというのが次期指導要領の趣旨なの である。

そこで次に、指導要領に示されている教科・領域の基本的構造はそのまま で、教科間の連携を図る方法の具体例として、クロスカリキュラム(以下、

CCと略記)について検討する。

4)クロスカリキュラム(CC)とは

CCとは、イギリスやオーストラリアで試みられているカリキュラム30 で、日本でも1990年代半ばころから紹介されるようになり31、とりわけ総 合的な学習の導入を機に注目されるようになった。

田中博之は、複数の研究者の定義を参照して、CCを「既存の教科や領域 をいくつか組み合わせて作成した大単元、またはいくつかの大単元を配列し た計画であり、児童生徒の学習意欲の向上や、認識と行動の統一、さらに現 代的なテーマに則した総合的な知識や技能の獲得を狙いとしているカリキュ ラム」と定義づける32。また、田中も参照している高階玲治は、CCの意義 として以下の6点を挙げる(要約引用)。(a)各教科等に分散している細切 れの指導を避けることができる、(b)各教科等にまたがる学習内容を統合 して単元構成することができる、(c)各教科等の特質を活かすことができ る、(d)認識(各教科)と行動(特別活動等)を統合して生活に密着したカ リキュラム構成ができる、(e)学校・地域の実態に即した実際的なカリキュ ラムを構成できる、(f)テーマごとにまとまりのある連続的指導(学期単 位、年間等)ができる33

以上の田中の定義から読み取れるCCの特質を3点にまとめ、高階の指摘

(17)

と合わせて整理してみよう。

①既存の教科・領域を組み合わせる(高階の(a)(b)(c)に相当): 各教 科等の固有性を確保しつつ、全体として効率的で実効的な学習が可能となる 点では、先の相関・融合カリキュラムの意義とも符合する。

②意欲の向上や認識と行動の統一に資する(高階の(d)(e)に相当): 先 に挙げた教科カリキュラムの弊害を克服するうえで有効で、カリキュラムの 統合と分化、科学の原理と生活の原理といった二元論的把握を止揚する可能 性を示唆している。

③現代的なテーマに則する(高階の(e)(f)に相当)。

③の「現代的なテーマに則した総合的な知識や技能の獲得」について、さ らに考察する。ここでいう 現代的なテーマ とは、たとえば環境・人権・

平和等といったものだが、これらの現代的・人類的課題の学習は、分断され たままの教科・科目で対応することは必ずしも有効とは言えず、複数の教 科・科目のカリキュラムを連関させることに意義がある場合が多い。〈例1〉 環境をテーマとした学習は、社会科的な事項と理科的な事項が密接に関連す る。たとえば、原子力と環境という課題を扱う場合、エネルギー政策に関す る学習は社会科(公民)で、放射能の環境・人間への影響に関する学習は理 科で行なうのが適切である。これを社会科のみであるいは理科のみで行なう 場合、教師の専門性の問題も念頭に置くと、必ずしも効果的な学習を展開で きるとは限らないだろう。〈例2〉多文化共生をテーマとした学習は、ほぼ すべての教科等に含まれる。歴史・地理的な学習は社会科で、民族文化の学 習は芸術系教科で、言語に関する学習は外国語科や国語科で取り組むことが できるが、道徳や特別活動(生徒会活動や学校行事等)も含めると実践的な 学習へと展開することもできるし、そもそも、総合的な学習での最適のテー マともいえよう。

次に、次期指導要領で重視されることになる、連関性を構築するCM 手がかりを探るために、CCの先進国イギリスの事例をまとめてみる。

(18)

5)イギリスのクロスカリキュラム(CC

田中によると、イギリスでは1970年代ころから、「一つの中心になるト ピックに関わる多様な活動を、いくつかの教科を関連させながら行うことを 特色とする学習方式」である「トピック学習」が広まっていた。また、その 理論的背景は、Deweyの経験主義の教育思想やその流れをくむKilpatrick のプロジェクト・メソッドにまでさかのぼることができるという34。もと もと、イギリスのカリキュラムは、伝統的に、中央政府が関与することな く、日本でいう教育委員会や学校を中心に作られていたが、197080年代 にかけて全国共通のカリキュラムの必要性が議論されるようになり、88年 教育改革法以来、「全国共通カリキュラム(National Curriculum)」の作成 が始まった。こうした過程で、全体的なカリキュラムと、その中に位置付く CCの構想が作られることとなったのである。

この一連の過程に関して、磯崎哲夫が次のようにまとめている。7080 年代の議論の中で、「学校が社会から遊離し孤立した知のみを扱っているこ と」に対する批判を受け、「既存の縦割り的で柔軟性に欠ける伝統的教科主 義」に対してCCが提唱されるようになり、その代表的なものとして「DES モデル」と「HMIモデル」が生まれた。前者は、「官僚的コア・カリキュラ ム・アプローチ」とも呼ばれ、「伝統的教科領域」を基礎とするもので、CC を「基礎教科の補完的役割」と位置付ける「消極的見解」に立つ。一方、後 者は、「専門家的コモン・カリキュラム・アプローチ」とも呼ばれ、教科領 域よりも幅広い「学習及び経験領域」をカリキュラム構成の基礎とするもの で、CCを「幅広く調和のとれたカリキュラム達成に不可欠な要素」と位置 付ける「積極的見解」に立つものだった35

その後、90年代に入りNational Curriculumの具体化が進む中で、NCCCCWが、CCを正式に位置づけるカリキュラム構想を示した36NCC のものは、数学・英語・理科等の伝統的教科領域からなる「基礎カリキュラ ム」と5つのテーマと6つのスキルからなる「クロスカリキュラー要素」に よって構成されている37。一方、CCWのものは、教科ではなく、子どもの

(19)

経験範囲を反映した8つの「学習領域」を基礎として構成されており、各学 習領域に複数の教科等が対応している38。かつての「DESモデル」と

HMIモデル」はそれぞれが接近しながらも、前者はNCCの構想として、

後者はCCWの構想として発展してきたようである。日本の指導要領は、

各教科等を基本としつつ総合的な学習を特設しており、NCC構想に近いが、

その場合、伝統的教科領域を補完するものとしてCC(総合的な学習)を捉 えがちとなり、先に曽我が指摘したような危うさ(注14)に陥りかねない。

イギリスと日本のCCの事例分析を踏まえて、田中がCCの今後の課題と していくつか提起しているが、そのうち「教科横断的なプロジェクト学習

cross-curricular project)」の考え方は、次期指導要領のもとでCCを活か したCMを試みるうえで参考になる。それは、総合的な学習といくつかの 教科・領域を関連付けたもので、「総合的な学習の時間におけるプロジェク ト学習に、教科学習における表現活動や道徳における価値の意識化、そして 特別活動における集団的な意思決定を関連付けて作成した大単元において、

子どもたちが主体的に進める問題解決的な学習」というものである39。具 体例として田中が紹介しているものに、総合的な学習に国語科と算数科の学 習を関連付けた「浜小けが0プロジェクト」という小学校4年生の実践があ る(堺市立浜寺小学校)。これは、国語科で活動報告文の書き方を、算数科 で棒グラフと表の作成を学び、それらの知識・技能を活用して活動報告書を 作成し、総合的な学習として校内のけがをなくすためのプロジェクトを考え 実践するというものである40。なお、同小のHPには、2015年度の同プロ ジェクト成果を子どもたちが発表する様子が紹介されているが、「プロジェ クターマ マ映しながら、クイズや劇、歌の発表をしました」とある41。特別活 動やICT教育とも関連付けるなど、CCの幅が広がっている様子がうかがえ る。

以上の整理・理解を踏まえ、次稿では、ESD、環境教育、国際理解教育等 の先行実践を参照しつつ、指導要領に準拠した平和教育のためのCMにつ いて論ずる。

(20)

1 A「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在 り方と今後の推進方策について」(以下、「答申A(学校と地域)」と呼ぶ)。B

「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(以下、「答申B

(チーム学校)」と呼ぶ)。C「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上 について―学び合い、高め合う教員養成コミュニティの構築に向けて」(以下、

「答申C(教員養成)」と呼ぶ)。

2) 本来、「教育課程」は「カリキュラム(curriculum)」の訳語のはずだが、実際 には、「教育課程」は行政が用いる公的な語として、「カリキュラム」は研究上 の語として用いられてきた。田村知子によれば、「教育課程」は年間指導計画 等のような「計画文書として考えられがち」だったのに対し、「カリキュラム」

は「(授業で)実施されたカリキュラム」や「(子どもに)学ばれたカリキュラ ム」も含む広い概念を強調するために、「近年、あえて使用されるようになっ た」という(田村編『実践・カリキュラムマネジメント』ぎょうせい、2011 年、4頁)。本稿では、「教育課程」の語も、田村のいう広い意味の「カリキュ ラム」の意味で用いることとする。なお、田村の説明は、IEA(国際教育到達 度評価学会)が用いる 三つのカリキュラム ―「意図したカリキュラム(in-

tended curriculum、指導要領等で国が定めたもの)」「実施したカリキュラム

implemented curriculum)」「達成したカリキュラム(achieved curriculum)」―

の、後二者を踏まえたものと思われる。

3) 次に引用する文中の下線は、文科省教育課程企画室長大杉住子の解説動画「学 習指導要領改訂の方向性について」(文科省HPからYoutubeにリンク)の映 像中の資料で赤字となっている箇所であり、「論点整理」を理解するにあたっ て文科省が強調している点である。

4) もっとも、「社会に開かれた教育課程」の考えには慎重な対応も欠かせない。

経産省が文科省の協力を得て開催した「初等中等教育段階における起業家教育 の普及に関する検討会」が、20153月に指導事例集「『生きる力』を育む起 業家教育のススメ」を発表した。検討会メンバーで文科省初中局の米原泰裕

が、「EduTownあしたね」(東京書籍がキャリア教育用に運営しているサイト、

https://ashitane.edutown.jp)のインタビューに答え次のように発言している。

「起業家教育」では、学校が「地域社会や企業人など、学校外の力もお借りし て取り組む姿勢」が大切で、「『社会に開かれた教育課程』という言葉を最近用 いていますが、学校と地域社会は、今後より連携・協力して」教育を進めるこ とが重要(2015129日)。先の指導事例集でも、連携先として「商工会 議所、経済団体等」が列挙されている。「社会に開かれた教育課程」の「社会」

が企業社会を意味するものとして矮小化されてしまうのか、それとも、「平和 で民主的な国家及び社会」(教基法第1条)を意味する豊かなものとして捉え るのかを念頭に置いておかねばならない。

5 各教科等に関する個別の知識や技能を指し、詳しくは次の通り。新たな知識・

技能の習得、既存の知識・技能との関連付け、汎用性のある知識・技能として 体系化。なお、「論点整理」では資料として、Deep LearningEngestromWiggins&McTigheなどが参照されているが、この論点に関しては別稿で検討。

『教職研究 28』(立教大学学校・社会教育講座教職課程、20164月)所収。

(21)

6「問題発見・解決」と「協働的問題解決」のために必要な力を指し、詳しくは 次の通り。思考力=必要な新たな知識・技能を獲得し、既存のものと組み合わ せ活用しながら問題を解決するために必要な力。判断力=必要な情報、解決の 方向性や方法、結論を選択・決定するために必要な力。表現力=相手や状況に 応じた表現の力。

7 ①②の資質・能力を、どのような方向性で働かせていくかを決定付けるもの で、主として情意や態度に関わる力を指し、詳しくは次の通り。主体的に学習 に取組む態度、自己の感情や思考プロセスを客観的にとらえるメタ認知に関わ る力、多様性を尊重する態度、他者と協働する力、リーダーシップやチーム ワーク、感性・優しさ・思いやりといった人間性に関するもの。

8)「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って、多様な人々と協 働して学ぶ態度」の三つで、次期指導要領の「育成すべき資質・能力」の「三 つの柱」に対応したもの。

9 知識量を競う問題が大半の現在の大学入試のあり方が、「最終報告」の通りに 変わったとすれば、それに伴って高校のカリキュラムや学習のあり方も変わる だろう。そうなれば、高校入試が変わり中学校の学習が変わる、といった連鎖 が期待できる。しかしながら、「最終報告」は、結論を先送りしたり具体的な ことにまで踏み込み切れなかったりといった限界が見られることも指摘されて いる。また、内容によっては、「実現を疑問視する見方」を示す委員がいたと も報じられている(『内外教育』201641日)。

10 CMの語は、2000年前後のころに中留が用いたのが最初だという(田村知子

『実践・カリキュラムマネジメント』ぎょうせい、2011年、11頁)。

11)中留武昭・曽我悦子『カリキュラムマネジメントの新たな挑戦』教育開発研究 所、2015年、1833頁。同書は、中留・曽我の分担執筆と共同執筆が混在し ているので、引用は両者を区別せず、同書の頁数を示すのみとする。

12前掲書、17

13)学校を基盤としたカリキュラム開発(SBCD: School-Based Curriculum Devel- opment

14前掲書、2628

15前掲書、3739

16)前掲書、5

17)前掲書、3637

18『教職研修』教育開発研究所、20156月、21

19『総合教育技術』小学館、20161月、15

20)田村知子『カリキュラムマネジメント』日本標準、2014年、15頁。田村が同 書で示した構造図は、類似のものを中留らも用いているので、共同研究として 共有されているものと思われる。

21前掲『教職研修』、19

22)「学 校 教 育の質を向 上さ せ る観 点」か ら、「PlanDoCheckActionPDCAサイクルの確立が重要」であり、このような「カリキュラム・マネジメ ントを確立することが求められる」とある。「幼稚園、小学校、中学校、高等 学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(2008117日)

23)論者により名称・意味が様々だが、ここでは、カリキュラム論の概説書等での 共通理解と考えられる名称等を用いることとする。

(22)

24たとえば、中学校の「理科」が高校では「物理・化学・生物・地学」の科目に 分化する。

25)学習指導要領を幼稚園では教育要領と呼ぶ

26)『学習指導要領 社会科編Ⅰ(試案)』1947年版

27有本昌弘「カリキュラムをめぐる振り子現象」安彦忠彦他編『よくわかる教育 原論』ミネルヴァ書房、2012年、8889

28)田中博之『カリキュラム編成論』放送大学教育振興会、2013年、52

29)広岡義之「教育課程(カリキュラム)の意義」広岡編『新しい教育課程論』ミ ネルヴァ書房、2010年、9

30クロスカリキュラムの先進国としてしばしば引用されるイギリスには Cross Curriculum という用語はなく、たとえば Cross-curricular Project のよう に Cross-curricular という語が用いられているとのこと(田中前掲書、187 頁)。本稿では、イギリスのものも含めてクロスカリキュラム(CC)の語を用 いることとする。

31)高階玲治「クロスカリキュラムの構想」高階編『実践 クロスカリキュラム』

図書文化、1996年、15

32田中前掲書、188

33高階前掲書、16

34)田中前掲書、189190頁。田中によると、アメリカに生まれたDeweyの進歩 主義教育が、教育行政によって奨励され(1967年のPlowden Report)、全国的 に広まったのは、まずイギリスだったとのこと。

35磯崎哲夫「英国におけるクロス・カリキュラムとその運営」野上智行編『「ク ロスカリキュラム」理論と方法』明治図書、1996年、105107頁。DESと は、「教育科学省(Department of Education and Science)」で、現在の教育省

DfEDepartment for Education)。HMIとは、「勅任視学官(Her Majestyʼs

Inspector)」で、学校や教員養成機関などの監査を行なう教育専門職。

36 NCCは、「全国共通カリキュラム委員会(National Curriculum Council)」。

CCWは、「ウェールズカリキュラム審議会(Curriculum Council for Wales)」。

37 5つのテーマとは「経済・産業、キャリア、健康、市民、環境」で、そのそれ ぞれごとに、「コミュニケーション、数的処理、調査研究(study)、問題解決、

対人的社会的関係、情報テクノロジー」の6つのスキルが設定される(磯崎前 掲、100頁)。たとえば、テーマ「環境」には、数的処理として「環境に関する 統計を解釈する」等、調査研究として「環境問題についてのプロジェクトを組 織・計画する」等、対人的社会的関係として「他者と協力して働く」等といっ たスキルが示されている(田中前掲書、193194頁)。

38 8つの学習領域とは「表現的・審美的、言語的・文学的、数学的、身体的・レ クリエーション的、科学的、社会的・環境的、精神的・道徳的、技術的」であ る。たとえば、「社会的・環境的」領域には、「地理、歴史、理科、宗教、国語」

等の教科と「農業学習、コミュニティ学習」等の諸活動が対応しており、さら に、「コミュニケーション、問題解決、情報テクノロジー」等のスキルが示さ れている(磯崎前掲、102103頁)。

39田中前掲書、202

40)前掲書、203209頁。掲載実践は2010年度のものと思われる。

41)堺市立浜寺小学校HPhttp://www.sakai.ed.jp/hamadera-e/)、2016225

(23)

日の「2分の1成人式」の記事。

キーワード

学習指導要領、カリキュラムマネジメント、クロスカリキュラム、経験 主義と系統主義、カリキュラムの分化と統合

参照

関連したドキュメント

速度や美観への興味、競争の興味等が、この課程の学習を進める原理となっている。生活

⇒「会社の仕事をする」⇒「ミッションを受けとる」⇒「プ レゼンテーションをする」という流れで探究学習を行う ことになる。

 のとれた育成を目指す

れるときは,

 前号で詳細に述べた aim-talk

日本では学校「教育課程」として戦前は「教科課程」(小学校)や「学科課程」(中学

 このように、知的障害教育における教育課程編成では、幼稚

エ 現代の経済社会と経済活動の在り方