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財産・損益・収支のオプション価値

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財産・損益・収支のオプション価値

著者 佐藤 清和

雑誌名 金沢大学経済論集 = Kanazawa University economic review

巻 34

号 1

ページ 87‑111

発行年 2013‑12‑27

URL http://hdl.handle.net/2297/36842

(2)

Ⅰ はじめに

企業会計上の利益とは,一会計期間における経営成績の指標として損益計 算書に表示されると同時に,クリーンサープラス会計を前提とすれば,貸借 対照表における純資産の増分に一致する。このように利益には,短期的な企 業業績の測定値という性質と,累積的な企業価値の変動額という性質が付与 されている。前者の業績指標としての利益に対しては,出資者である株主に 利益配当請求権が認められ,それは株式の本源的価値の一部を構成している。

一方,後者の純資産増分としての利益に対しては,その累積額に対して残余 財産請求権が認められ,これもまた株式価値の本源的構成要素とされている。

株式に化体されたこれら2つの権利とは,その権利行使にもとづくペイオフ 構造に着目するならば,いずれもオプション契約と同様の条件付請求権であ ると考えることができる。

まず前者の利益配当請求権とは,営業収益を原資産,損益分岐点を権利行

-87-

佐  藤  清  和

目  次

Ⅰ はじめに

Ⅱ 利益オプションと資産オプション

Ⅲ 収支分岐点と収支オプション

Ⅳ 確率測度の問題

Ⅴ 数値例

Ⅵ 問題と課題

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-88-

使価格,また決算日を権利消滅日とするヨーロピアン・コール・オプション と同質の条件付請求権とみることができる(佐藤[1999],佐藤[2012])。した がって,本稿ではこの請求権を「利益オプション」と呼ぶこととする。一方,

後者の残余財産請求権とは,総資産を原資産,負債額を権利行使価格,また 債務超過時点を権利消滅日とするヨーロピアン・コール・オプションと考え ることができる(Black and Schole[1973],Mes rton[1974])。そこで以下では,

この請求権を「資産オプション」と呼ぶこととする。

本稿の目的は,株式価値を構成する利益オプションと資産オプションに基 づいた新たな株式価値(企業価値)評価モデルを提示することにある。その際,

これら2つのオプション価値を担保する支払手段としての将来キャッシュ・

フローに着目し,そこに内在するオプション的性質についても言及する(この オプションについては,以下「収支オプション」と呼ぶ)。すなわち,本稿は利 益,資産およびキャッシュ・フローを原資産とする3つのオプションの合成 物という視点から,株式価値の評価を試みるものということができる。

ここで具体的な評価モデルの検討に入る前に,本稿の考え方の基礎となっ ている確率的CVP分析およびオプション価格理論に関連する先行研究につい て概観しておこう。

まず確率的CVP分析とは,これまで不確実性下におけるCVP分析として主 に会計学の分野で報告されてきた一連の研究成果であり,そこでは短期利益 計画における採算性評価にCVPの不確実性を反映させることが企図されてい た。その嚆矢となる研究がJaedickeand Robichek[1964]であり,彼らは売上 高および原価を正規確率変数として利益の実現確率を求める方法を提示した。

その後1990年代にかけて,確率的CVP分析として一連の研究成果が報告されて きた(例えば,Ferrar,Hayyaand Nachman[1972],Liao[1975],Kottasand Lau

[1978],Ismail and Lounderback[1979],Chen[1980],Constantinides. et. al.

[1981],Karnar[1983],Chei ung and Heaney[1990],Cheung[1991]。

一方,株式が企業資産に関する残余財産請求権としてコール・オプション とみなされることは,Black and Schole[1973]によって明らかにされ,s Merton

[1974]によってその具体的な評価式が与えられた。その後,この考え方に基 づいてオプション・アプローチによる企業倒産(債務超過)の予測モデルが提

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-89-

案されることとなった。今日ではこのオプション・アプローチは信用リスク に関する主要な測定モデルとして実務上さらに高度化されるに至っている

(Saundersand Allen[2002],森平[2009])。

このように株式の本源的価値を考察することは,企業価値を評価および予 測する基礎理論を検討することであり,これを利益および資産とともに キャッシュ・フローの視点から分析することは,損益計算書,貸借対照表お よびキャッシュ・フロー計算書に基づいた財務諸表分析の一環としても有用 である。具体的には,企業による事業投資に係わる意思決定時のリアル・オ プションの評価問題はもとより,公営事業におけるPFI事業者の選定基準とし て重要な指標であるVFM(ValueForMoney)の算定上においても,本稿の分析 モデルは有効だと考えられる。

本稿の構成は以下のとおりである。第Ⅱ節では,株式の本源的価値として の利益オプションないし資産オプションのペイオフ構造について概観する。

その上で第Ⅲ節において将来キャッシュ・フローのオプション価値に関する 評価式を収支分岐点とともに導出する。続く第Ⅳ節では,前節までの3つの オプション評価モデルの基礎となる確率測度について検討する。第Ⅴ節では,

3つのオプションについて簡単な数値例を用いて検討する。第5節は本稿の 問題点と今後の課題である。

Ⅱ 利益オプションと資産オプション

2.1 利益オプションの評価式

はじめに利益配当請求権に基づく利益オプションの評価モデルについて,

これをCVP分析の枠組みの中で定式化する。必要な記号をつぎのように定め る(その他の記号は必要に応じて追記していく)。

   S:売 上 高, F:固定費, V:変 動 費, B:損益分岐点売上高,

  m :貢献利益率,π :利 益, h:配当性向, TS:決算日, rF:無リスク金利,

  D :利益配当請求権=利益オプション価値

当期の利益は貢献利益(売上高と貢献利益率の積)と固定費の差額であり,

次式のように与えられる。

(5)

-90-

ここで,m=1-(V/S)および0≦m≦1であり,0≦Sならびに0≦Fである。

式敢において,π=0 の場合が損益分岐点売上高:B=F/mであるから,式敢 は次式のように変形される。

式敢および式柑より,B<Sならば利益(0<π)が生じ,反対にB>Sであれ ば損失(0>π)が発生することになる。ここで利益が生じた場合,これを原 資とする株主への配当金が決定されると考えられるから,株式とは利益の発 生を条件として配当金というペイオフが生じる条件付請求権ということがで きる。この条件付請求権がまさに株式に化体されている利益配当請求権であ り,これは式敢および式柑の利益式により,売上高Stを原資産また損益岐点 売上高Bを権利行使価格とするコール・オプションと同様のペイオフ構造を 有していることが分かる1)

このオプションは1事業期間における利益に対する請求権であるから,そ の権利消滅日は当該期の決算日となる。なお権利行使後も引き続き株式を保 有する場合,利益配当請求権としての株式価値は次期以降も継続的に増加す ることになる。さらに同オプションの行使日が権利消滅日である決算日のみ だとすれば,これはヨーロピアン・コール・オプションと同じ期間構造を有 することになる2)

なお本稿では,経常的な事業活動に関するCVP分析を前提とする。すなわ ち,特別損益等の事業活動には直接関連しない項目や非経常的な発生項目に ついては考慮しない。通常のCVP分析で分析対象とされるのは,経常的な事 業活動における採算性であり,この視点から株式価値の評価式を導くことが 本稿の目的だからである.ただし,営業外費用ではあっても重要な固定費の 一つである支払利息については第Ⅴ節で別途取り上げる。

前述のようにコール・オプション契約の場合,ひとたび権利行使がなされ ペイオフが確定されれば,その時点でオプションの価値は消滅してしまう。

一方で株式の場合には,たとえ権利消滅日後であっても株式を保有する限り

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は,次期以降の配当金に対する請求権は消滅しない。したがって,株式の現 在価値とは将来期間にわたる利益配当請求権の累積額の割引現在価値に相当 するものと考えられる。

以上より当期末の株式価値D(S,t T ;B)は,各期の増分ΔD=Dt+-Dtの累積 和として次式によって与えられる。

ここで式桓の右辺は,B<STを条件として発生した利益配当額である。ただ しB>STの場合は利益配当額が0になることを示している。ここで権利行使さ れた利益配当請求権は,決算時Tにおける株式の本源的価値に相当し,これ が株式価値の増加分ΔDとして測定されたことを意味している。これとは逆 に,損失計上時のB>STであれば,利益配当請求権は行使されないことから ΔDはゼロになる。

このような株式価値の評価方法とは,いわゆる配当割引モデルと同じ考え 方に基づいている。ただし配当割引モデルでは将来の配当額が直接的な予測 対象とされ,配当の原資となる利益の算出構造は不問とされる。これに対し て,本稿では式桓のようにCVP関係式で表わされた採算性に基づく利益オプ ションとして株式価値を予測するという点で,利益計算の過程が株式価値の 予測手法として明確に構造化されたものになっているところに優位性がある。

図1には,利益配当によるペイオフの状況がCVP項目間の関係とともに示 されている。図中の実直線は,式敢ないし式柑で与えられる貢献利益mSを 示している。同図より売上高が右方向へと増加するにつれて固定費Fは回収 されていく。さらに売上高が損益分岐点を超えると固定費は全額回収され,

π=mST-F=m(ST-B)の利益がもたらされる。この利益を原資として配当金 が分配されることになるが,その条件はB<STということになる。なお,式桓 の配当性向は h=D /m(ST-B)で与えられる3)

ここで確率的CVP分析について簡単に振り返っておきたい。これによって 確率的CVP分析から利益オプションという考え方が自然に導かれることが明 らかになる。そこでJaedickeand Robichek[1964]にしたがい,図1における横

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軸の売上高が平均μおよび分散σの正規確率変数であると仮定する。これに よれば期待利益は次式のように与えられる。

ただし,       である。式棺は決算時点に おける売上高の確率分布にともなう期待利益の計算式である。なお,ここで 用いている記号E[・]は期待値を表わすオペレータであり,後述の資産オプ ション価値とは異なるので注意願いたい。

以下では式棺の結果を,連続時間における売上高の確率過程に拡張して検 討していくことにする。そこで売上高の確率過程{St}に関する利益オプショ ン  の連続時間における期待現在価値を示せば,次式のようになる。

ここで売上高に関するリスク中立確率測度QSが存在するならば,期待価値 は次式で与えられる。

t

t t

CFBE

f (s)

E E

E FR

F S B

U

t s

0 S

図1:利益オプションと収支オプション

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-93-

さらに売上高が対数正規分布し,かつ連続的に無リスクヘッジポートフォ リオを作成することが可能な資産(総売上高に対応する売上債権)市場が存在 するならば,式款の解は次式で与えられる。

ただし,式歓のN(・)は正規確率変数の分布関数を表わしており,それぞれ の変数は次のとおりである。

ここで配当性向を100%(h=1.0)とすれば,この利益オプション評価式は利 益自体の評価(予測)額を与えることになる。

2.2 資産オプションの評価式

ここでは株式価値を構成する残余財産請求権としての資産オプションを定 式化する。次のように記号を定める。

   E:残余財産請求権=資産オプション価値,L:負 債,

  TD:負債満期日,

株主は企業の資産価値が負債価値を上回った場合,その差額である残余財 産に対する請求権を有している。この残余財産である純資産額の増減を決算 日ごとに期間計算したものが利益に他ならない。一方で資産価値が負債価値 を下回った場合は,残余財産はゼロ(債務超過状態)となるから,残余財産請 求権は行使できない。ただし株式会社において株主は有限責任であるから,

超過債務の返済が課されることはない。

以上より残余財産請求権としての資産オプションとは,資産価値を原資産,

満期日の負債価値を権利行使価格および負債の満期日を権利消滅日とする コール・オプションと同質の条件付請求権であると位置づけられる。

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-94-

前項と同様にここでもリスク中立確率測度QAが与えられている状態を前提 とすると,この資産オプションの現在価値は次式のように表わされる。

さらに前項の利益オプションと同様のリスク中立確率測度QAのもとでは,

資産オプションの価値は次式のように与えられる。

ここで総資産の成長率が対数正規分布し,かつ連続的に無リスクヘッジ ポートフォリオを作成することが可能な資産が存在しているとすれば,式款 の解は次式で与えられる。

甘 ただし,式潅のN(・)は,それぞれ次のとおりである。

以上のように配当オプションと資産オプションのそれぞれについて,リス ク中立確率測度が存在するという前提で期待現在価値の評価式が導かれた。

両方の評価式はヨーロピアン・コール・オプションとして,その形式は酷似 しているが,それぞれの定義によれば両者の異同もまた大きい。そこで表1 に両者の相違点について列記しておく。

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このように株式とは利益配当請求権としての利益オプション,および残余 財産請求権としての資産オプションという2つのオプションの合成価値とし て,次式のように式汗と式甘の合計で表わされることになる。

なお,  は1会計期間ごとに権利消滅日が到来するという意味で短期的 オプションであり,一方の  は長期負債か短期負債かによって満期日が異な るため,短期的オプションか長期的オプションかについての判別は困難である。

本章で検討された2つのオプション,すなわち利益オプションと資産オプ ションとはそれぞれ株式に化体された利益配当請求権および残余財産請求権 の現在価値を示す。したがって,株式Pの価値はこれらのオプションの総和 として測定される。すなわち,

竿

となる。ここでGtは上場株式の価値を構成するキャピタルゲインを意味する が,この価値については本稿では考慮しない。なぜなら,利益オプションお よび資産オプションとは,現に株式を保有した場合に期待される株式価値で あるのに対して,キャピタルゲインとは,これらの価値とは異なり株式市場 の動向や投資家の取引行動といった外生的要因の影響を大きく受ける値だか らである。無論,Dt+EtとGtが厳密に峻別されるものではなく,それぞれが株 式価値の形成に相互に影響を与えると考えられえる。

表1 配当オプションと資産オプションとの異同 資産オプション 利益オプション

残 余 財 産 請 求 権 利 益 配 当 請 求 権

派 生 資 産

総 資 産

売 上 高

原 資 産

満 期 負 債 価 額 損益分岐点売上高

権利行使価格

負 債 満 期 日

決 算 日

権 利 消 滅 日

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Ⅲ 収支分岐点と収支オプション

3.1 収支分岐点

収支分岐点分析とは,國弘[1958]によって初めて体系的に示されたキャッ シュ・フローに基づく採算性分析の方法である。その基本的な考え方は,損 益分岐点分析をキャッシュ・フローの視点から拡張するものではあったが,

その目的とするところは,あくまで損益計算と収支計算の相互補完的役割と して両者が財産計算(貸借対照表)にそれぞれ固有の関連性をもっていること を重視した総合的な採算性評価法の確立にあったと考えられる。ここで相互 補完的関連性とは,損益面における財産計算(損益計算書における利益計算と 貸借対照表における純資産計算)と収支面における財産計算(キャッシュ・フ ロー計算書における収支計算と貸借対照表における資金計算)が,いわば並列 的な関連性を持って財務諸表を構築していることを意味している。

このような収支分岐点の性質を考えるには,その導出方法を見ることが もっとも有効である。これは現行の財務諸表の様式に沿っていうならば,貸 借対照表や損益計算書のように会計帳簿から直接かつ誘導的な記録および計 算過程を経て得られるというものではなく,利益の計算結果に種々の修正を 加えることによって収支差額を求めるという点では,間接法による営業 キャッシュ・フロー計算と同様のプロセスによって得られるものである。し たがって利益計算における収益および費用といった総額情報に相当するよう な,収入総額および支出総額という計算項目は登場しない4)。その代わり間 接法にもとづくキャッシュ・フロー計算書におけるような運転資本や減価償 却費によって利益とキャッシュ・フローの相互関連性が示されるという利点 を有している。

収支分岐点とは,まさにこのような利益からキャッシュ・フローへの変換 過程を通じて両者の関連性が加味された採算点として導出される財務指標と いうことができる。

ここで収支分岐点の具体的な計算過程について説明するため,以下のよう に記号を定めておく。

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   U:経常収支,  R:経常収入,  D:経 常 支 出, I:棚卸資産,

  AR:売上債権, AP:仕入債務,  N:非支出費用,VR:変動収支,

  FR:固定収支, WC:運転資本, WF :運 転 資 金,vr:変動収支率

経常収支Utとは,現行のキャッシュ・フロー計算書でいうところの営業活 動によるキャッシュ・フローに対応し,経常収入と経常支出との収支差額と して定義される。このうち経常収入とは,売上高を期中における売上債権の 増加分だけ減額することによって得られる。また経常支出は,営業費用を棚 卸資産の増加ならびに仕入債務の増加分だけ,それぞれ増額および減額する ことによって得られる。以上より,経常収支は次式のように与えられる。

ただし,ΔARt=ARt-ARt-1,ΔItIt-It-1およびΔAPt=APt-APt-1である。こ こで,Ut=0となるような売上高が,次式で与えられている収支分岐点売上 高 SCFBEである。このような収支分岐点売上高の求め方は「有高増減法」と呼ば れている(國弘[1958])。

「有高増減法」による収支分岐点売上高と損益分岐点を比較すると,分子に おいて固定費は非支出費用(減価償却費等)だけ減額される一方で,運転資本 ΔWC=ΔARt+ΔIt-ΔAPtの変動額が加算されるところに相違点がある。す なわち,収支分岐点売上高は損益分岐点売上高に対して(-Nt+ΔWFt/mだけ 上下に位置することになる。

このような損益分岐点との構造上の違いを理解した上で,収支分岐点売上

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高を算出するいま一つの方法について説明する。この方法は上述の議論に加 え資産回転率を用いるため,収支構造と資産・負債の関連性についての分析 を容易にするという点で優れている。

まず売上債権,棚卸資産および仕入債務の回転期間をtARtIおよびtAPとおく と,ARt=tARS,It=tISおよびAPt=tAPであるから,これらを式看に代入すると,

となるから,

が得られる。ここでΔWFt-1は前期末の運転資本を意味するが,これらは当期 中に回収されて収入になるか,あるいは期末までに支払われて支出になると 仮定される。つまりこれらの項目は前期から繰り越された資金とみなすこと ができるため,WFt-1は前期運転資金と呼ばれている。このような収支分岐点 売上高の求め方は「期末有高法」と呼ばれている(國弘[1958])。

この方法による収支分岐点売上高とは,分子の固定費が非支出費用と前期運 転資金の影響を受けるとともに,分母の貢献利益率もまた運転資本の回転率の 影響を受けることによって損益分岐点売上高とは異なった値をとることになる。

以下では,運転資本回転率を通じて流動資産および流動負債と収支分岐点 との関連性が示される「期末有高法」を用いることにする。

3.2 収支オプション

ここで収支分岐点に係わる記号を集約しておこう。経常収支は経常収入と 経常支出との収支差額として定義されたが,さらに3.1項の定義によれば この経常収支は変動収支と固定収支に分解することができる。式緩の右辺第

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1項は売上高に応じて変動する収支を意味していることから変動収支率vrと よばれており,vr=m-(tAR+tI-tAP)とおくことによって,変動収支として VRt=vrtStが得られる。同じく式緩の右辺第2項は売上高の増減とは相関しな い収支部分であるから,この部分は固定収支と呼ぶこととする。すなわち,

FRt=(ARt-1+It-1-APt-1)-(Ft-Nt)である。以上より経常収支ならびに収支 分岐点売上高は,次式のように簡便な表記が可能になる。

翰 これより収支分岐点に位置する収支分岐点売上高は次式で与えられる。

このような収支分岐点売上高とは,分子における固定的な支出超過額が,

分母の変動収支率に基づく収入超過額(vrtSt>0)によって全額回収されるよ うな水準にある売上高を示す。言い換えれば,売上高が収支分岐点を超過す れば経常収支は収入超過となり,逆に収支分岐点未満であれば経常収支は支 出超過となる。後者の場合は,経常収支項目以外の方法による資金調達によっ て,この支出超過にともなう資金不足は填補されなければならない。このよ うな経常収支と収支分岐点の関係は,損益分岐点売上高とともに図1に記さ れているとおりである。

なお式緩の経常収支を式缶の収支分岐点売上高を用いて表わせば,次式の とおりになる。

このような経常収支の性質とはどのようなものと考えられるだろうか。明 らかなことは,経常収支計算から得られる収支差額とは,現金および現金同 等物の期末残高の増加ないし減少として総資産の一部を構成するが,これは あくまで差額情報であり,その値が前期末の現金及び現金同等物残高に加減 されることによって同資産の期末残高になる。つまり収入超過の場合は同資 産残高の純増を意味し,逆に支出超過の場合はその純減を意味することにな

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る。付言すれば,収支差額とは正負両方の値を取りうるが,現金および現金 同等物の残高は負の値をとらないから,経常収支計算において支出超過と なった場合には,現金および現金同等物の前期繰越額あるいは経常外の活動

(すなわち資金調達活動や資産処分活動)によって調達された新たな資金に よって支出超過分は補填され,その残高はゼロ以上の値をとることになる。

このような経常収支の差額とは,同じく収益と費用の差額である利益が利 益配当請求権の対象となり,また残余財産請求権の対象が純資産になるのと は異なり,株式に化体された諸権利と直接の関連性を有する訳ではない。

しかしながら,その一方で経常収支差額とは資本調達コストとしての利益 配当や資本維持が付託された純資産価値を担保する支払手段としての役割を 担っている。すなわち経常収支差額とは,利益配当請求権の行使対象となる 利益ならびに残余財産請求権の行使対象となる純資産という株式に化体され た支払請求権に対する,もっとも確実な支払手段であるということである。

このように,経常収支としての資金が利益配当請求権および残余財産請求 権に対する支払手段としての機能を有することに着目すれば,経常収支額と は売上高を原資産,収支分岐点売上高を権利行使価格とする派生資産ないし 派生負債と考えることが可能である。前述のとおり経常収支とは,収支分岐 点売上高を境界として収入超過ないし支出超過の正負いずれかの値を取るか ら,ここでの条件付請求権とは前者の場合がコール・オプション,また後者 の場合はプット・オプションと考えるべきである。すなわち,ここでのコール・

オプションとは,利益配当ないし残余財産に関する各請求権の行使に対する 支払手段としての資産価値を意味し,一方プット・オプションとは,経常収 支の支出超過状態に対する経常外の資金調達にともなって生じた債務を意味 することになる。

以上より経常収支とは,次式のようなコールとプットの合成オプションと して定式化されることになる。

莞 式莞右辺の第1項と同第2項にはプット・コールパリティーの関係が成立 するから,

(16)

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が得られる。これより式莞は,次式のように表わすことができる。

ただし式潅のN(・)は,それぞれ次のとおりである。

ここで収入超過が予測される場合とは,利益配当および残余財産に対する 権利行使に対する支払い手段としての資産として収支差額が予測されている ことを意味する。逆に支出超過が予測される場合とは,この資金ショートを 填補すべく経常外の資金調達を行うことの必要性として課される負債が予測 されていることになる。

このように経常収支差額とは,株式に化体された利益配当請求権ならびに 残余財産請求権の行使に対する流動性(支払手段)として,それぞれ資産価値 ないし負債価値として予測されることになる。本稿では,両者の価値が経常 収支に基づくオプションとして複製されるという点から,これを収支オプ ションと呼ぶこととする。

本稿で検討された3つのオプション,すなわち利益オプション,資産オプ ションおよび収支オプションとは,それぞれ株式に化体された利益配当請求 権および残余財産請求権の現在価値を示すとともに,それらの権利を支払手 段として担保する機能を有する条件付請求権として評価することが可能であ る。すなわち,株式価値Ptとは,これらの3つのオプション価値の条件付き 和として次式のように測定される。

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ここでMin(Dt/h,Ut)とは,配当決定前の純利益を意味するDt/hと経常収支 Utのうち,いずれか小さい値を取ることを意味している。このことは配当の 原資となる利益と経常収支差額が,次のような関係にあることによるもので ある。

すなわち,もしDt/h<Utであれば,配当原資としての利益が配当の支払い 手段である経常収支差額によって十分にカバーされていることから,利益配 当請求権としての株式価値は,両者のうち相対的に小さな値をとるDt/hとな る。一方,Dt/h>Utの場合には,逆に配当原資としての利益が支払い手段で ある資金によってカバーされていない不足部分が生じるため,株式価値を構 成するのはDt/hではなくUtということになる。

Ⅳ 確率測度の問題

前節までは売上高および資産の将来変動に関するリスク中立確率測度QSお よびQAが存在することを前提に,3つのオプション価値の評価式について議 論してきた。ただし,このような前提が成立するためには,それぞれのオプ ションの原資産となる売上高や資産がすべて証券化され,さらに活発な取引 市場に上場されている必要がある。しかしながら,このような前提は現実的 ではなく,したがってリスク中立確率が存在することもまた現実的な前提と は言い難い。

そこで本稿ではBones[1964]にならい,代表的投資家(ないし市場)によっs て売上高および資産それぞれの期待成長率が与えられていると仮定して議論 を進める5)。ここでは利益オプションを取り上げ,その確率測度について検 討する。まず決算日をTとして,不確実な売上高  が次式のような幾何ブラ ウン運動に従うものとする。

(18)

-103-

ここで,μSは売上高の期待成長率,σ Sはその標準偏差とする。また は平 均0,分散1の標準正規確率変数である。式諌の確率微分方程式を解くこと により,T 期における売上高STは次式のように与えられる。

このことはT 期における売上高STの対数値は,平均( μ S-σ /2)(T-t),お よび標準偏差     の標準正規分布に従うことを意味する。したがって 当期売上高がStであり,市場参加者の主観的な売上高成長率がμSであるとき の利益配当請求権の源泉となる利益が発生する確率は,次式のように計算で きる。

ここで実確率Pの下で,

である。この考え方によれば,利益オプションの評価式は次式のようになる。

陥 ただし,式陥のN(・)は正規確率変数の分布関数を表わしており次式のとお りである。

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同様のプロセスにより資産オプションと収支オプションについても,式監 および式貫の無リスク金利を,それぞれ資産および売上高の期待成長率で置 き換えることによって,原資産に関する完備市場の存在を前提としないBones モデルに基づく評価式が得られることになる。

Ⅴ 数値例

ここでは議論を簡明にするため,1期間2項モデルによる離散時間の数値 例を取り上げて検討する。会計数値を以下のように与える。なお金額単位は 定めない。

  A=200,  L=100,  K=100,St=100,V=50,F=35,

  m=1-(50/100)=.5,rF=0.1,rFL=10,h=0.,   N=10, WFt-1=20, tWF=0.3, uS=1.2,dS=0.

なお3行目のtWF,uSおよびdSとは,ここで新しく定義された記号であり,

それぞれ運転資金回転率,増収率および減収率である。

 ここで事業利益をEBIT,純利益をNIとおくと,当期の事業利益はEBIT=100-

50-35=15,および純利益はNI=15-10=5 である。また当期売上高Stは100 であるから,これが20%(uS=1.2)増加して120の増収になるか,または20%

(dS=0.8)減少して80の減収になると予測されている。

また貢献利益率および固定費は,それぞれ m=0.5, F=35であるから,増収 の場合の事業利益はEBIT=120╳0.5-35=25,また減収の場合はEBIT=80╳

.5-35=5となる。これらから支払利息 rFL=10を差し引くと,増収の場合NI

=120╳0.5-35-10=15の純利益,減収の場合 NI=80╳0.5-35-10=-5の 純損失となる。配当性向がh=0.2であるから,増収にともなう配当金(利益配

(20)

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当請求権に基づくペイオフ)は20╳0.2=4となるが,減収による損失は配当 金の原資にならないため配当金は0となる。

なお第Ⅳ節で検討したBonessモデルによる確率測度のことを考えれば,こ こで資産および売上高に関する期待成長率(市場参加者である予測者のリス ク選好)が与えられるべきである。しかしながら,本項では3つのオプション・

モデルを比較検討することを重視し,特定の期待成長率(確率分布)を与える ことはせず,第Ⅲ節までと同様にボラティリティとして売上高の増収率ない し減収率だけを設定し,これによってリスク中立確率を算定することにする。

言い換えれば,これは売上高の時系列がマルチンゲールであると仮定するこ とと同義であり,任意の会計期間tにおいてE[St+1St]=Stを仮定することと同 値である。そこで増収確率をquとおき,また減収確率をqd=1-quとすると,

E[St+1St]=puSt+(1-p)dSt=Stであることから,次式のようなリスク中立確 率が得られる。

ここで,1<uおよび0<d<1であるから,0<d<1<uという関係が満たされ,

qu={qu|0<qu<1}となる。したがって,quおよびqdは「リスク中立確率測度」

と考えることが可能である。

はじめに利益オプションについて例示する。ここでは増収率および減収率 がそれぞれ1.2および0.8であるから,増収確率はpu=(1-08).(1/.2-0.8)=0.5 となる。この確率のもとで利益配当請求権としての利益オプションΔDの期 待値は次式で与えられる。

したがって利益オプションの現在価値は,次式のような無リスク金利rFに よる割引現在価値になる。

丸 すなわち,利益オプションの現在価値ΔDtは,

(21)

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となる。ここではCVP関係に基づく損益分岐点を用いず,期待純利益から直 接的に利益オプションの現在価値を求めている。

続いて資産オプションについて計算する。ここでも売上高と同様に資産の 成長率に関するリスク中立確率が存在すると仮定する。ただし資産の成長率 は純資産の成長率に一致し,さらに純資産はクリーンサープラス会計を前提 として損益のみに起因して増減すると考える。純資産K=100であるから,増 収の場合は純利益はNI=15となるから,純資産はK=115となる。一方,減収 の場合は純損失NI=-5が生じるためK=95となる。したがって,資産額は それぞれA=200+15=215およびA=200-5=195となる。なお負債の変動は 0とする。

つぎに収支オプションの価値を求めてみよう。まず式緩より収支分岐点売 上高の分母は固定収支額としてFRt=WFt-1-(Ft-Nt)={20-(35-10)}=-5 となり支出超過となる。また同式の分子は変動収支率としてvrt=m-(tAR+tItAP)=0.5-0.3=0.2である。これを式缶に代入することにより収支分岐点は SCFBE=-(-5)/.2=25となる。増収および減収に関するリスク中立確率を式 翰に適用し,これを無リスク金利で割り引くことにより,次式のように収支 オプションの現在価値が求められる。

式含よりMin(Dt/m,Ut)=1./.2=7であり,これは式巌の収支オプション の値よりも小さな値である。収支オプションは支払い手段として利益オプ ションを完全にカバーしているため,式還よりこの収支オプションは株式価 値には反映されず,株式の現在価値Ptは利益オプションと資産オプションの 合計となる。

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この株式価値の評価額96.9と純資産簿価K=100との差額である-3.1は,株 式に化体された複数の条件付請求権として測定された企業価値に生じた「負 の自己創設のれん」に相当する。

Ⅵ 問題と課題

株式価値の評価モデルに関する論考として本稿の貢献するところがあると すれば,以下の諸点になるであろう。

① 株式に化体された利益配当請求権が,ヨーロピアン・コール・オプショ ンと同様のペイオフ構造を有することに着目し,これを利益オプションと して確率的CVP分析とオプション理論を融合してその評価式を提示した。

具体的には,売上高を原資産,利益配当請求権をその派生資産とするオプ ション価格式を提示した。これによりCVP分析による企業業績(損益分岐点 に基づく採算性)指標と株式価値との理論的関連性の一端が定式化された。

② 純資産に対する残余財産請求権とは,株式に化体されたヨーロピアン・

コール・オプションと見なし得ることから,これを資産オプションと位置 づけることにより,株式価値の本源的価値(キャピタルゲインを除く価値)

を①の利益オプションとの合成オプションとして評価できることを示した。

また2つのオプションが利益配当という短期的視点と残余財産という長期 的視点から分析され得ることを示した。

③ 株式価値を構成する2つのオプション価値を支払手段として担保する という経常収支の性質を明らかにし,その上で収支分岐点を用いることに よって,①の利益オプションと同様にキャッシュ・フローにも収支オプショ ンと呼べるオプション価値があることを明示した。

④ 以上の3つのオプション価値に基づいて株式価値を予測・分析するこ との有用性について,簡単な数値例を用いて考察した。また,その結果と して得られた株式価値と純資産簿価との差額が「のれん」ないし「負ののれ ん」を示すことについて言及した。

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最後に本稿に課せられた数多の課題のうち,その一部を記しておく。

⑤ 株式価値のオプション的性質を定量的に評価する上でもっとも重要な ことは,原資産である売上高および資産の成長性に関する確率測度である。

本稿ではBone[1964]による期待成長率の存在を前提として小論を述べたs が,このような確率測度の特定は非完備市場における資産評価における難 題であり,さらなる検討を要する課題である。

⑥ 利益オプションおよび資産オプションは,現行の株式会社制度によっ て定められた条件付請求権を根拠とするところに実在性がある。しかしな がら,本稿が提示した収支オプションとは,これら2つのオプションの権 利行使に対する支払手段として測定されたものである。したがって,測定 対象としての実在性ならびに分析対象としての必要性に関するさらなる理 論的検討が必要である。

⑦ 本文で提示したオプションの合成価値として株式価値を評価すること の有用性は,会計情報ならびに株価情報等に関する大規模なアーカイバル データに基づいた実証的検証によってのみ明らかにされる。同時に⑤の確 率測度の理論的難点は,この実証的検証による経験的分析によって補完さ れることが期待される。

⑧ 本文では株式価値に内在する3つのオプション的性質に着眼して,株 式価値自体の評価式を求めることに専心した。しかしながら,本文で資産 オプションと呼んだ残余財産請求権としてのオプション価値の評価式は,

先行研究では倒産確率の推定問題に応用されている。したがって,今後は 本稿のオプション評価式を企業の倒産や各種債務のデフォルト確率の推定 問題に応用することも有用な課題だと考えられる。

1)Cheung and Heaney[1990]は,資本予算(事業投資)に係わる意思決定の最適化基準を 導出する方法として,CVP分析における利益関数を用いることを提示した。彼等は 事業投資の利益関数が,投資による売上高を原資産,また損益分岐点売上高を権利 行使価格とするコール・オプションとプット・オプションの合成関数として記述さ れることを示した。これにより投資利益をオプション価値としたうえで,事業投資 と国債とのポートフォリオに基づいた連続時間の利益予測モデル,および代表的投

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資家の効用関数に基づいた離散時間における利益予測モデルを示した。

2)現行の会社法では期中における配当も可能であるから,この場合の株式価値とは権 利行使日が固定されないアメリカン・コール・オプションとなる。

3)実際には配当額やその実施時期を決定するのは企業側であるが,配当金を受け取る 権利が株主に帰属しているという点から,配当金の分配をもって株主による利益配 当請求権の行使と考える。なお純資産額が300万円以上(会社法第458条)の場合,損 失発生時においても剰余金を原資とする配当は可能である(同第461条第2項第一 号)。また配当日の属する事業年度に係る計算書類が確定した時点において配当金が 分配当可能額を超えて配当されている場合には,当該配当を行った業務執行者は,

その株式会社に対して連帯してその超過額を支払う義務を負うことになる(同第465 条第1項)。

4)ここでは「営業活動によるキャッシュ・フロー」の計算過程が,間接法によるキャッ シュ・フロー計算では総額情報としては与えられないことに言及している。財務活 動および投資活動によるキャッシュ・フローの場合には,当該活動にともなう収入 と支出が総額表示されるのが一般的である。

5)BonessモデルはBlack and Shole[1973]のような非裁定条件に基づく均衡価格モデルs ではなく,市場ないし投資家の期待選好を前提とする非均衡モデルである。なおこ こでのBonesモデルの解説は,森平[2009]の説明に依っている。

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謝  辞

本稿における測度変換およびリスク選好の概念,ならびにCVP分析とオプション理論 に関する展望論文については,森平爽一郎先生(早稲田大学大学院ファイナンス研究科)

より多くのご教示をいただいた。ここに記して厚く感謝申し上げる次第である。なお本 稿は,科学研究費助成事業「オプション理論を応用した原価態様の非対称性に基づくCVP 分析の研究」(研究代表者:佐藤清和,課題番号:24530555)に基づく研究の一部である。

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