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Fig. 3. Morse curves for the ground ( a ) and excited state ( b ) of a diatomic molecule2) Fig. 2. The various modes of energy dissipation from electr

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724 UDC541.65:668.8 (色 材,53〔12〕724-739.1980)

色素 の 発 色 メ カニ ズ ム とそ の 合成 へ の 応 用

賢*

1. 緒 言 色 素 の発 色 メ カ ニ ズ ムは,1865年Kekule'に よ っ て ベ ンゼ ン環 の概 念 が 導 入 され ,つ いで1867年 にWitt が 発 色 団 説 を提 唱 した の に 始 ま る。 そ の後,数 多 くのい わ ゆ る"説"が 提 案 され た が,今 日に 至 る共 鳴 理 論 の基 礎 は1935年 にBuryに よ って 提 唱 さ れ た"Resonance" (共 鳴)の 概 念 で あ る。 共 鳴 理 論 は 半 経 験 的 で は あ るが, 色 素 を 合 成 す る上 で非 常 に 有 効 な 概 念 で あ り,色 と化 学 構 造 の 関 係 を よ り明確 に し,今 日の 数 多 くの 色 素母 体 の 発 見 へ と貢 献 して きた 。 歴 史 的 に は,新 規 な染 料 の 開 発 に対 す る経 済 的 なdrivingforceが 色 素 の発 色 メ カニ ズ ム の研 究 を 促 進 して きた こ とに な る。 す な わ ち,共 鳴理 論 が 世 に 出 る 以 前 に 今 日知 られ て い る 多 く の染 料 母 体 (ア ゾ,ア ン トラキ ノ ン,イ ンジ ゴ,フ タ ロ シ ア ニ ンな ど)は,染 料 合成 化 学 者 の努 力 と実 験 上 の 偶 然 か ら発 見 され て い た とい え る1)。 しか し,以 後 今 日に 至 る ま で の 新 規 な 染 料 母 体 の 開 発 に 共 鳴 理 論 が 必 要 不 可 欠 で あ った こ とは 自 明 で あ る。 と ころ で 定 量 的,理 論 的 な 色 素 の発 色 メ カ ニ ズ ム は,光 吸 収理 論 や 量 子 化 学 に よ って な され ね ぽ な らず,今 日の 分 子 軌 道 法(MO法)に よる 理 論 的 説 明 へ と発 展 して きた の で あ る。 こ こ に至 っ て 色 素 の 発 色 メ カ ニ ズ ムは,い わ ゆ る 視 覚 と して の"色"を 研 究 の 対 象 と して きた 染 料 合 成 化 学 者 か ら,物 性(吸 収 ス ペ ク トル)と して の"色"を 研 究 の 対 象 とす る物 理 化 学 者 に よっ て主 に 取 り扱 わ れ る結 果 とな って きた 。 した が って 今 日で は,色 素 化 学 者 は 必 然 的 に この 両 領 域 を 全 うす る 必 要 が あ る 訳 で あ る。 本 報 で は種 々の 色 素 母 体 の発 色 メ カ ニ ズ ムに つ い て述 べ,そ れ らの発 色 系 に 影 響 を 及 ぼす 諸 因 子,た と えば 置 換 基 効 果,ア ネ レー シ ョ ン効 果,電 荷移 動 の 効果,分 子 間 お よび 分 子 内 相 互 作 用,互 変 異性,立 体 効果 な どにつ い て 考 察 す る。 また,人 間 の視 覚 を つ か さ ど る視 物 質 (Visualpigment)の 特 異 的 な 発 色 系 と,そ の立 体 化 学 に 関連 す る 発 色 メ カ ニ ズ ム につ い て最 近 の成 果 を 紹介 す る。 最 後 に,分 子 軌 道 法(PPPMO法)を 用 い て2,3の 色 素系 の発 色 メ カ ニ ズ ムを 考 察 し,そ れ ら を応 用 した 新 規 な色 素系 の 合成 デ ザ イ ンにつ い て最 近 の成 果 を紹 介 す る0 2. 色 と は,色 素 と は 何 か 太 陽 光 を プ リズ ム で分 光 す る と大 き くは 虹 の7色 に な るが,人 間 は380∼780nmの い わ ゆ る可 視 光 を 波 長 の 違 い に よ り160種 も の 色 調 と して 区 別 で き る とい わ れ て い る 。 人 間 に と っ て色 の認 識(視 覚)は 眼 の 中 に あ る視 物 質 が 可 視 光 を 吸 収 す る こ とに よ って 開 始 され る一 連 の 情 報伝 達 で あ る とい え る。 一・方,色 素 とは あ る波 長 領 域 の 可 視 光 を 吸 収 す る 物 質 の こ とで あ る 。 吸 収 光 と 余 色 (色 素 の 色)の 関 係 はColorCircle(図 一1)の 対 角 線 上 の対 に よっ て 示 され る。 す なわ ち,色 素 が435∼480nmの 青 色 の光 を 吸収 す 昭 和55.9.24受 理

Color and Constitution of Organic Colorants, and Some Approach to New Chromophore Masaru MATSUOKA

* 大 阪 府 立 大 学 工 学 部 応 用 化 学 教 室

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色 材, 53(1980) 色 素 の 発 色 メカ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の応 用 725 れ ば そ の色 素 は余 色 と して黄 色(黄 色 の 色 素)を 示 す 。 逆 に,580∼595nmの 黄 色 の光 を吸 収 す れ ば 色 素 の色 は 青 色(青 色 の色 素)と な る。 した が って 赤 色 の色 素 は 490∼500nmの 青 味 緑 色 の 光 を 吸 収 す る こ とに な る。 ま た緑 色 の 色 素 は単 一 の 吸 収 光(図 一1で はpurpleの 光 とな る が,単 色光 と して は 存 在 しない)を もた ず,一一般 に は 黄 色 と青 色 の波 長 領 域 で2つ の吸 収 帯 を もつ こ とに な る。 た とえ ぽMalachiteGreenは430と630nm付 近 に2つ の 吸 収 帯 を 持 つ 。 こ の こ とは,ま た 緑 色 色 素 を 黄 色 と青 色 の 色 素 の混 合 に よ って 得 る こ と と対 応 して い る。 以 上 の こ とか ら,全 可 視 光 を 吸 収 す れ ば 黒 色 で あ り,全 反 射 す れ ぽ 白色 とな る こ とが わ か る。 黄,赤,青 を 色 の三 原 色 と い い,混 合 す れ ぽ 黒 色 とな る。 一 方,光 の三 原 色は 混 合 す れ ば プ リズ ム分 光 の逆 とな っ て 白 色 光 く太 陽 光)と な る。 3. 色 素 の 吸 収 ス ペ ク トル と 光 化 学 色 素分 子 は 光 エ ネ ル ギ ー(dE)を 吸 収 す る こ とに よっ て基 低 状 態 か ら励 起 状 態 に励 起 さ れ る。 式(1)か ら, (1) 吸 収 す る エ ネ ル ギ ーの 値 に よ って 波 長(λ)が 決 ま り,そ の遷 移 の 確 率 に よ って モ ル吸 光 系 数 εが 決 ま る(図 一2)。 各 々の 遷i移状 態 は 量 子 化 され て い て エ ネ ル ギ ー的 に不 連 続 だ が,振 動 副 準 位 の 多重 度 と,そ れ らの 間 隔 が 狭 いた め 図 一3に 示 す よ うに包 絡 線 と し て の 連 続 スペ ク トル を 与 え る。 光 エ ネ ル ギ ー を 吸 収 して 励 起 され た 色 素 分 子 は 図 一2に 示 す 失 活 過 程 を 経 て 過 剰 の吸 収 エ ネ ル ギ ー を放 出 して 基 低 状 態 に も ど る。色 素 の吸 収 スペ ク トル(λmax, ε,波 形)に よ って そ の色 素 の 色 調 が 決 ま る◎ また 励 起 分 子 の 失 活 過 程 の様 子 に よ って,そ の 色 素 の ケ イ光 性, リン光 性,光 反 応 性,光 安 定 性 等 が 議 論 で き る。 色 素 の 発 色 系 に は π一π*系(ε ∼104)と"一 π*系(ε ∼102)の 2つ の 場 合 が あ り,一 般 の 色 素 はx-一一rr*系で発 色 して い る。 4. 色 素 の 色 と 構 造 色 素 の 色 と構 造 の 関 係 に つ い て は 古 くか ら多 くの 報 告 が 知 られ て い る が,最 近GriiEfithsは そ れ らを 集 大 成 し て 著 書 と して い る2)◎ 色 素 の 色 と構 造 の 関 係,発 色 メ カ ニ ズ ム,MO理 論 との 対 比 に よ る共 鳴 理 論 の 不 合 理 性 の 指 摘 な ど,こ の 著 書 は 色 素 化 学 者 に とっ て 非 常 に 重 要 で あ る の で是 非 参 考 に され た い 。 本 報 で も多 くの 結 果 を, こ の著 書 か ら引 用 したo一 般 に色 素 の 吸 収 スペ ク トル は π平 面 の拡 張,す な わ ち 共 役 系 の拡 大 に よ って 深 色 移 動 す る こ とが 良 く知 られ て い る◎ 長 鎖 状 お よび 多 環 状 炭 化 水 素 の最 大 吸 収 波 長 λm。xは,環 の数 や 連 結 基 の数 ηの 増 大 に伴 って 直 線 的 に 深 色 移 動 す る 。 た とえ ぽ,ス チ ル ベ ン系 で は 中 央 の エ チ レ ン鎖 の 数nに よ っ て320nm@ =1)か ら490nm(n=7)ま で,ま た ベ ンゼ ン系 で は ベ ンゼ ンの200nmか らペ ン タセ ン(n=5)の590nmま で,さ らに1の よ うな シ ア ニ ン色 素 で は600nm(n=4) か ら1,200nm(n=10)ま で,そ の 吸 収 ス ペ ク トル がn

Fig. 2. The various modes of energy dissipation from electronically excited states

a. Internal conversion, b. Intersystem crossing, c. Fluorescence, d. Phosphorescence2)

Fig. 3.

Morse curves for the ground ( a ) and

excited state ( b ) of a diatomic molecule2)

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726 色 素 の 発 色 メ カ ニ ズ ム'とその 合 成 へ の 応 用 色 材, 53(1980)

の数 に よ って 直 線 的 に変 化 す る こ と が 知 られ て い る3)。 こ の こ とは,現 在 で はMO計 算 に よ るHOMO(Highest Occupied Molecular Orbita1,最 高 被 占軌 道)か らLU MO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital,最 低 空 軌

道)へ の 一 電 子 遷 移 に対 応 す る吸 収 スペ ク トル の変 化 と して 考 察 され て い る 。一 般 的 な 染 料 の発 色 系 はScheme-1に 示 す よ うに,電 子供 与 性 基(Donor)と 電 子 吸 引 性 基(Acceptor)が 共 役 連 結 基 に よ っ て結 合 され て い る, い わ ゆ る分 子 内 電 荷 移 動 型 の発 色 系 を とる もの が 多 い 。 ア ゾ系,ス チ リル 系,ア ン トラキ ノ ン系,キ ノ フ タ ロ ン 系,イ ンジ ゴ系 な どが そ れ で あ る。 そ の 他 の発 色 系 と し て は,色 価 が 低 い た め 一 般 に は 余 り利 用 され な い"→ π* 発 色 系 や,ポ リエ ンや 多環 状 化 合 物 で 代 表 され る ポ リエ ン発 色 系,そ れ に シ ア ニ ン系 色 素 で代 表 され る シ ア ニ ン 発 色 系 が あ る。 置 換 基 の電 子 供 与 性 や 吸 引 性 は イ オ ン化 ポ テ ン シ ャル (1.P)や ハ メ ッ トの 置 換 基 定 数 σ値 で表 わ され,置 換 基 効 果 と して考 察 され て い る。 た と え ば2一 置 換 ア ン トラ キ ノ ンの λm。xは 置 換 基XのIPと 良 い 直 線 関 係(図 一 4)が 得 られ る と ころ か ら,こ の 系 で はXをDonor,ア ン トラキ ノ ン骨 格 をAcceptorと す る 分 子 内 電 荷 移 動 型 の 吸 収 が 可 視 部 第 一 吸 収 帯 で あ る と され て きた4)。 伺 様 の 良好 な 直 線 関 係 が,1,4一 二 置 換 ア ン トラ キ ノ ン系 染 料5) や そ の ア ネ レー シ ョ ン誘 導 体6)に つ い て も認 め られ て い る。 と ころ が ア ン トラキ ノ ン系 色 素 につ い て の これ ら の 発 色 メ カ ニ ズ ム は,そ の 後 のPPPMO法 を 用 い る詳 細 な 検 討 の結 果 か ら,後 述 す る よ うに 置 換 ベ ンゼ ン環 を Donor,ナ フ トキ ノ ン環 をAcceptorと す る分 子 内電 荷 移 動 型 の発 色 系 を と る こ と が確 認 され た2・7)。一 方, MalachiteGreen2の 置 換 基 効 果 は,o値 と波 数 の 差 (ンx--VH)に よ って 直 線 的 に関 係 づ け ら れ て お り(図 一 5)8),長 波 長 側 の い わ ゆ るx-bandは フ ェニ ル環 上 の置 換 基Xの 電 子 供 与 性,吸 引 性 に よっ て一 次 的 に影 響 され・ る こ とが わ か って い る。 色 調 に及 ぼす 置 換 基効 果 につ い て は,そ の 置 換 位 置 が 重 要 で あ り,いわ ゆ る共 鳴位 置 で の 置 換 基 の 有 無 が 問 題 とな る。 た とえ ば ア ゾ系 の場 合,4 位 へ 電 子 供 与 性 基 を導 入 す る と2',4'お よび6'位 へ の電 子 吸 引 性 基 の導 入 は,3'や5'位 へ の 導 入 に 比 べ て よ り 大 ぎ な深 色 効 果 を もた らす こ とが 知 られ て お り,Donor -Acceptor置 換 ア ゾベ ンゼ ンの置 換 基 効 果 は 表 一12)によ っ て示 さ れ る。 これ ら表 一1の 結 果 は 共 鳴 理 論 で は 十 分 に説 明 で きな か った が,後 述 す るMO法19)の 結 果 に よ

Scheme-I. Schematic representation of Donor -Acceptor chromogen2)

Fig. 4. vma. of 2-R-anthraquinone versus I. P of CH3-R4)

(4)

色 材, 53(1980) 色 素 の発 色 メカ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の応 用 727 って詳 細 に 検討 さ れ た 。 ま た イ ンジ ゴや チ オ イ ンジ ゴ系 で は 置 換 位 置 の 効 果 が顕 著 で あ り,5位(ヘ テ ロ原 子 の ρ位)に 電 子 供 与 性 基 を 導 入 す る と深 色 効 果 が得 られ る。 そ して6位 で は5位 の 場 合 と全 く逆 の効 果 が認 め ら れ る こ とが 表 一29)の結 果 か らわ か る。 こ の よ うな位 置 特 異 的 な 置 換 基 効 果 は,新 規 な 染 料 の合 成 に際 して も応 用 され て い る。 た とえ ば,ス チ リル系 染 料 旦 に お い て,糎 では そ の λmaxは362nmだ が,3bで は432nmと な り,Acceptorの 電 子 吸 引 性 を増 せ ば大 幅 な 深 色 効 果 が 得 られ る こ とが わ か る。 と こ ろが,さ らに 璽 で は512 nmと な って3bに 比 べ 約80nmも の深 色 効 果 が得 ら れ る こ とが わ か っ て い る。 この3cをScheme-2の よ う に 重 ね あわ せ て 考 え る と クマ リン系 色 素3dに 対 応 さ せ る こ とが で き る。 した が って3dの4位 にCN基 を 導 入 す る と大 幅 な深 色 性 が 得 られ る こ と が 予 想 で き る。 事 実,4aは いわ ゆ る"SchockColor"と して発 売 さ れ た 強 い ケ イ光 性 の黄 色 分 散 染 料(λmax452nm)で あ るが, 4bで は ケイ 光 性 の 赤 色 染 料(519nm)と な る。 また4 タ イ プか ら環 拡 大 した5は 有 名 な ケ イ光 性 赤 色 分 散 染 料 で あ る が,5bと な る と青 色(630nm)と な る こ と が 知

Table 1. Absorption spectra of some donor-acceptor substituted azobenzenes2)

(5)

728 色 素 の 発色 メカ ニ ズ ム とそ の合 成 へ の応 用 色 材,53(1980) 3 3d 4 5

6

7

られ て い る10)。こ の よ うにCN基 を ク マ リ ン環 の4位 に 導 入 す る こ とに よ っ て い ず れ の 場 合 に も約80nmも の 深 色 性 を得 る こ とが で き,そ の 位 置 特 異 性 は 顕 著 で あ る。 また,キ ノ フ タ ロ ン系 で はDonor成 分 を 環 拡 大 す る こ と に よっ て大 幅 な 深 色 性 が 得 られ る こ とが 知 られ て い る。 一 般 に キ ノ フ タ ロ ン系 色 素 は黄 色 を 呈 し,置 換 基 の 導 入 や ア ネ レー シ ョンに よ っ て も そ の 色 調 は 大 き くは 変 化 しない11)が,Donorと な るキ ノ リ ン成 分 の π電 子 系 を拡 大 す る こ とに よ ってScheme-3の612)や713)の よ う な 新 規 な 赤 色 系 色 素 が 合 成 で き る こ とが 知 られ て い る。 この よ うな,色 素 の置 換 基 効 果 は 多 くの発 色系 で 認 め ら れ て お り,先 のGriththsの 著 書2)な ど に ま とめ ら れ て い るo 一 方,ケ イ光 増 白染 料 や ケイ 光 染 料 は,光 を 吸 収 した 後 に そ の 過 剰 の エ ネ ル ギ ー を ケイ 光 と して放 出 して 基 低 状 態 に も ど るた め,他 の染 料 とは 異 な る スペ ク トル を 与 え る。 す な わ ち普 通 の染 料 は 吸収 ス ペ ク トル の み を示 す が,ケ イ 光 染 料 で は 放 射 スペ ク トル を伴 うこ とに な る。 図 一6に ナ フ タル イ ミ ド型 ケ イ 光 増 白染 料 の 吸収 お よび 放 射 ス ペ ク トル を 示 した 。 可 視 光 に対 応 す る400nm以 下 の,375nm付 近 に 吸収 を もつ の で この 化 合 物 は 無 色 で あ り,し か も450nm付 近 の 光(青 色)を 放 射 す る の で一 般 の基 質(汚 れ な どで450nm付 近 の反 射 率 が 低 下 して い る,図 一7線a)を 増 白 させ る効 果 が あ る。 これ ら の関 係 は 図 一7に よ って 示 され る。 す な わ ち ケ イ光 増 白染 料 で染 色 した 基質 は,線 ∫の よ うに 全 可 視 部 領 域 で 全 反 射 に近 い反 射 曲線 を 与 え るた め 増 白効 果 が 増 す こ と に な る。 また ケ イ光 性 の 染 料 の場 合 に は 図 一6の 吸 収 帯 が 長 波 長 側 に移 動 し た 形 と な り,た とえ ば8で は519 nmに 吸 収 主 波 長 が あ り635nmに ケイ光 主 波長(赤 い 色 を 放 射)を 示 す 結 果,そ の反 射 曲 線 は 線Aの よ うに な り,見 か け 上 吸 収 スペ ク トル の いわ ゆ る"谷"が 深 くな る(赤 色 の 反 射 光 が 強 くな る)結 果,鮮 明 な赤 色 を示 す と され て い る。 ロ ー ダ ミンBや そ の 他 の ケイ光 性 染 料 の 鮮 明 性 も この よ うに して理 解 で き る。 5. 種 々 の 因 子 に よ る 発 色 系 の 変 化 5.1 分 子 間 相 互 作 用 分 子 内 電 荷 移 動 型 の 発 色 系 を もつ 色 素 は 必 然 的 に双 極 子 能 率 が大 き く,分 子 間 相 互 作 用 を 受 け や す い 。 色 素 分 子 間 の相 互 作 用 は ト リフ ェ ニ ル メ タ ン系 カ チ オ ン染 料 や £ の よ うな シア ニ ン系 色 素 で は 顕 著 で あ る。9の 場 合, 単 量 体 は550nm付 近 に 吸 収 を もつ が 濃 度 の増 加 と と も Scheme-2iO).

(6)

色 材, 53(1980) 色 素 の 発 色 メカ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の応 用 729

8

に505nm付 近 に二 量 体 の 吸収 を 示 し,さ らに 多 分 子 が 会 合 した 場 合 に は480nm付 近 に 吸 収 が 現 わ れ る と い

9

う14)。 こ の こ とは,た とえ ば 二 量 体 で はScheme-4の よ うに 分 子 が 上 下 で逆 に重 な って 互 い の電 荷 を 打 ち 消 す た め,そ の 励 起 に さ ら に大 きな エ ネ ル ギ ーが 必 要 とな り 短 波 長 側 で 吸 収 す る と して理 解 され る。 また,色 素 分 子 間 の溶 液 中 で の 会 合 は 比 較 的 低 濃 度 で もお こ る とさ れ て お り,1,4一二 置 換 ア ミノ ア ン トラキ ノ ン系 染 料 で は10-5 モ ル/1の ベ ンゼ ン溶 液 中 で も二 量 体 や 多 量 体 の存 在 が確 認 され て い る15)。した が っ て モ ル 吸 光 係 数 εを 求 め る場 合 に は,従 来 十 分 と考 え られ て い た10-5モ ル/1濃 度 溶 液 で もLambert-Beer則 を 満 足 しな い 色 素 が あ る こ と に留 意 す べ きで あ る。 また,こ の よ うな 色 素 分 子 間 の相 互 作 用 を有 効 に 利 用 す る場 合 と して,イ ン ジ ゴや キ ナ ク リ ドン,フ タ ロ シ ア ニ ン系 色 素 等 が 良 く知 られ て お り, そ の良 会 合 性 に よ って 色 調 を 含 む 良好 な 染 顔 料 物 性 を 得 て い る。 5.2分 子 内 相 互 作 用 分 子 内相 互 作 用 と して は 分 子 内水 素結 合 に よ る効 果 が 良 く知 られ て い る。o一ヒ ドロ キ シ ア ゾ系 や4一 フ ェ ニ ル ア ゾー5一ピ ラ ゾ ロ ン系10染 料 で は 分 子 内水 素 結 合 が 後 述 10 す る互 変 異 性 体 に よる発 色 系 の違 い に 直 接 的 に結 び つ い て い る。 また α一置 換 ア ン トラキ ノ ン系 染 料 で も置 換 基 がOHやNH2の 場 合 に は9位 の カ ル ボ ニ ル基 との 間 で 分 子 内 水 素 結 合 を 形 成 し,そ の 結 果 深 色 効 果 を も た らす こ とが後 述 す るPPPMO法 の 結 果 か ら も確i認さ れ て い る16)o

Fig. 6.

Absorption and fluorescence

spectra

of

naphthalimide

and reflectance

curve (A)

with and (B)

without fluorescence

exci-tation of 8'°)

Fig. 7.

Reflectance curves without Fluorescent

Whitening

Agent

(FWA)

( a ), and with

FWA (d : true reflectance,

f : total

reflec-tance. e : Fluorescence

curve of FWA.)

(7)

730 色 素 の 発 色 メカ ニ ズ ム と そ の 合 成 へ の 応 用 色 材, 53(1980) 5.3 溶 媒 効 果 溶 質(色 素)と 溶 媒 の 相 互 作 用 は 一 般 に広 く認 め られ て い る。 顕 著 な 例 は,11の よ うな両 性 イ オ ン色 素 に お い て 認 め られ て い る。 す な わ ち11は ベ ンゼ ン中 で は 溶 媒 と の相 互 作 用 が 小 さい た め 深 紫 色 の568nmで 吸 収 す るが,水 溶 液 中 で は 強 い 水 素 結 合 に よる相 互 作 用 を うけ て 色 素 の イ オ ン性 が 減 少 す るた め443nm(燈 色)で 吸 収 を 示 す 。 実 に125nmも の 溶 媒 効 果 を うけ る こ とに な る 。 一 般 の色 素 の場 合 に は,基 低状 態 よ り も励起 状 態 が よ り極 性 の構 造 を とる た め,極 性 溶 媒 は基 低 状態 よ りも 励 起 状 態 を よ り安 定化 す る結 果,深 色(赤 色)移 動 を も た らす こ と に な る。 た とえ ば,4一 ジ エ チ ル ア ミノー4'一ニ トロ ア ゾベ ンゼ ン12は シ クロ ヘ キ サ ン溶 媒 中 で は470 nmで 吸 収 す るが,よ り極 性 の 強 い エ タ ノ ー ル中 で は 510nmに 吸 収 を 示 し,正 のSolvatochromism(溶 媒 の 極 性 の 変 化 に よる ス ペ ク トル の 変 化)を 示 す こ とに な る 。 溶 媒 効 果 と色 素 の 基 低 状 態 お よび 励 起 状 態 の 関 係 は 図 一8に よ っ て示 され る。 す な わ ち,気 相 ま た は 無 極 性 溶 媒 中 で のそ れ ぞれ の 値(a)に 比 べ て,(b)は 基 低 状 態 が 励 起 状 態 よ りも よ り極 性 で あ る の で 負 のSolvato・ chromismを 示 し,(c)は そ の逆 で 正 の 効 果 を示 す。 化 合物11の 場 合 が(b)で あ り,化 合 物12の 場 合 が 11 12 (c)に 相 当す る。 一 般 的 な 色 素 の 場 合 は(c)で 正 の・ Solvatochromismを 示 す。 以 上 の よ うな π一π*発 色系 に比 べ,か π*発 色 系 で は 異 な った 溶媒 効果 を 示 す。 す なわ ち π一π*発 色 系 で は 水 素 供 与 性 の 極性 溶 媒 に よ って "電 子 が 水 素 結合 を 形 成 し,π 電 子 密 度 を低 下 させ る結 果,水 素 供 与 性 の 極 性 溶 媒 中 で は 浅 色(青 色)移 動 を 示 す こ と に な る。 化 合物13は そ の ニ トロ ソ基 のn一 π*吸 13 収 を736nmに 示 して緑 色 を 呈 す るが,水 中 で は 黄 色 で 553nmに 吸 収 を 示 す 。 一 方 ,吸 収 スペ ク トルの波形は溶媒の極性に よって変 化 し,極 性 が低 い ほ ど振 動 レベ ル に 帰 因 す る微 細 な 吸 収 帯 を 示 し,極 性 が 高 くな る と溶 媒 との 相 互 作 用 に よ って 振 動 レベ ル 間 の エ ネ ル ギ ー差 が 不 明 確 に な るた め 微 細 構 造 が 消 え て包 絡 線 と して の 吸 収 スペ ク トル を 示 す こ とに な る。 した が っ て 吸収 ス ペ ク トル を 検 討 す る場 合 に は, で き るだ け 無 極 性 の溶 媒(石 油 工 一 テ ル や ヘ キ サ ンな ど) を 用 い る方 が 良 い こ とに な る。 5.4 互 変 異 性,酸 塩 基平 衡 色 素 の 互 変 異 性 に よ る色 変 化 につ い て は,ア ゾ系 色 素 の ア ゾーヒ ドラ ゾ ン互 変 異 性 が 良 く知 られ て お り,表 一32> に 示 す よ うに 平 衡 混 合 物 と して存 在 し て い る場 合 が 多 い 。 スペ ク トル的 に は ヒ ドラ ゾ ン構 造 の方 が よ り深 色的 で あ る。 また ア ゾ系 や ス チ リル 系 で は トラ ンス ーシス互 変 異 性 も よ く知 られ てお り,一 般 に トラ ンス型 が よ り深 色 的 で あ る。 最 近 の太 陽 エ ネ ル ギ ー利 用 に 関す る も の と して は,ジ アセ チ ル イ ンジ ゴの光 トラ ンス→ シス異 性 化 反 応17)や ア ゾベ ンゼ ンの光 トラ ンス→ シ ス異 性 化 反 応18》 な どが知 られ て い る。 太 陽 光 に よ って シ ス型 に異 性 化 し た 色 素 が,暗 反 応 で エ ネ ル ギ ー を放 出 して安 定 な トラ ソ ス 型 に も ど り,結 果 的 に太 陽 エ ネ ル ギ ー を化 学 的 に貯 蔵 し う る こ とに な る。 こ の分 野 の研 究 は ます ます 盛 ん に な る と考 え られ る。 溶 媒 の極 性 に よ る 可 逆 的 な 色 変 化 は Solvatochromismと 呼 ば れ,先 の溶 媒 効 果 の 項 に示 し た が,熱 に よ る可 逆 的 な色 変 化 はThermochromismと 呼 ば れ,色 素 の ア ゾーヒ ドラ ゾ ン互 変 異 性 や トラ ンスーシ ス 互 変 異 性 に 帰 因 す る こ とが 多 い。 また 光 に よる可 逆 的 な 色 変 化 はPhotochromismと 呼 ば れ て い る。 色 素 の pH値 の差 異 に よる色 変 化 はHalochromismと 呼 ば れ, pH指 示 薬 と して広 く利 用 され て い る。 これ は色 素 の酸 一塩 基 平 衡 に 帰 因 して 考 え ら れ る。 ジ メ チ ル ア ミノ ア ゾ

Fig. 8.

Effect of a polar solvent on the transition

energy

of a molecule ; ( a ) situation

in the

vapour phase, or in non-polar

solvents ; ( b )

ground state more polar than excited state ;

( c ) ground

state

less polar

than

excited

state2)

(8)

色 材, 53(1980) 色 素 の 発 色 メカ ユ ズ ム と そ の 合 成 へ の 応 用 731 ベ ンゼ ン誘 導 体14は2つ の プ ロ トン化 サ イ トを持 って お り,Scheme-5の よ うな 酸 一塩 基 平 衡 を 示 して色 変 化 を 示 す。 す な わ ち 中 性 分 子14a(X=H,405nm)に 比t べ て,14bは ア ミノ基 が プ ロ トン化 され るた め 電 子 供 与 力 を失 って浅 色 的(320nm)と な るが,そ の互 変 異性 体 14cは14dの よ うな発 色系 を と るた め 深 色 的(510nm) とな る。 こ の よ うな ア ゾ系 色 素 の プ ロ ト ン化 平 衡 は メチ ル オ レ ンジ(X=P-SO,H)や メ チ ル レ ッ ド(X=・o-COOH> の よ うなpH指 示 薬 と して 利 用 され て い る。 一 方,フ ェ ノ ール フ タ レイ ンは ト リフ ェ ニ ル メタ ン系 色 素 の ラ ク ト ン15aで 無 色 で あ る が,塩 基 に よ っ て開 環 して15bと な って 紅 色 を呈 す る 。 さ ら に ア ル カ リ性 が 強 く な る と 15Cと な って 再 び無 色 とな る。 こ の種 の ラ ク トン化 合 物 の 開 環 反 応 に よる発 色 系 は,感 圧,感 熱 用 色 素 と して 今 Table 3. Absorption maxima and dominant tautomeric forms for some azo-hydrazone systems2)

(9)

732 色 素 の 発色 メカ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の応 用 色 材, 53(1980) 日 で は ク リス タ ルバ イ オ レ ッ トラ ク トン16の よ うに 広 く利 用 さ れ て い る。 同様 の開 環 反 応 に よ る発 色 系 は ス ピ ロ ピ ラ ン系 色 素17に つ い て も知 られ て い る。 16 管7 5.5 立 体 効 果 立 体 的 な 因 子 に よる 色 変 化 は,π 平 面 の保 持 や不 対 電 子 の 共 役 系 へ の組 み 入 れ の 程 度 の 問 題 と して取 り扱 わ れ る 。 す な わ ち ス ペ ク トル 的 に は,基 低 状 態 と励 起 状 態 に 二お け る結 合 次 数 の増 減 と,そ の結 合 の立 体 障 害 に よ る回 転 の 自 由度 の差 異 に よ って 考 察 で き る。 す な わ ち,図 一9

18

に お い て励 起 状 態 で結 合次 数 が増 加 す る場 合(b)は 立 体 障 害 に よ り浅 色 移 動 を,減 少 す る場 合 に は 深 色 移 動 を 伴 うこ とに な る。 い い 変 え れ ば,立 体 障 害 が 基 低 状 態 の 一 重 結 合 で お これ ぽ 浅 色 移 動 を,二 重 結 合 でお これ ば 深 色 移 動 を もた らす こ とに な る。(b)が 一 般 的 で あ り, (c)は 化 合物18の よ うに,基 低 状 態 で 中央 の二 重 結 合 に対 してRの 立 体 障 害 が 働 く場 合 で あ る。 こ の場 合 に は 19

20 20a ZOb

Fig. . 9. Effect of bond rotation on the ground and excited state of a molecule, a: planar situa-tion, b: increased bond order in the excited state, c : reduced bond order in the excited state2)

(10)

色 材, 53(1980) 色 素 の発 色 メカ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の応 用 733 励 起 状 態 で 中央 の二 重 結 合 は一 重 結 合 性 を と るた め 立 体 障 害 が緩 和 され る◎ した が って,R・ ・Hに 比 べ,R=CH, で 深 色移 動 を伴 うこ とに な る。 ま た この 際,平 面 性 の欠 除 に よ って εはR=Hの 場 合 よ り大 幅 に 低 下 して い る。 モ ノ ァ ゾ系 染 料 の 場 合 に はScheme・-6の よ うに そ の 立 体 効 果 が 顕 著 で あ る ◎ す な わ ち19の 場 合 に は,R、=H に 比 べCH3の 場 合 に はCH3基 と ジ メ チ ル ア ミノ基 間 で 立 体 障 害 が 生 じ,そ の 結 果,ジ メ チ ル ア ミノ基 が π平 面 か らず れ るた め(N原 子 と フ ェ ニ ル基 問 の一 重 結 合 に つ い て の 立 体 障 害 で 図 一9の(b)に 相 当 す る)そ の電 子 供 与 性 が 弱 ま り,浅 色 移 動 を 伴 うこ とに な る。化 合 物2g の 場 合 に は,R=H,R'=CH3で は20aよ りも20bの 構 造 を と り うる のでCH3基 の 影 響 は な く,R=R'=Hの 場 合 と同 様 の 吸 収 スペ ク トルを 示 す が,R=R'ニCH3の 場 合 に は もは や20bタ イ プの 構 造 は と りえず20aタ イ プの 構 造 とな っ て,CH3基 と β位 ア ゾ窒 素原 子 との 間 の 立 体 障 害 に よ り平 面 性 が 損 わ れ,浅 色 移 動 と εの低 下 を もた らす こ とに な る2)。 こ の種 の立 体 障 害 に よる 色 素 の 浅 色 移 動 は多 くの発 色 系 で 認 め られ て お り,ア ゾ系 に つ い て は 後 述 す るPPPMO法19)に よ る考 察 に よっ て も再 現 され て い る。 5.6 視 物 質 の 発色 構 造 と立 体 化 学 人 間 は可 視 光 の範 囲 で波 長 の違 い に よ り160種 もの 色 調 を 区 別 で き る とい わ れ て い る◎ と こ ろが 人 間 の視 覚 に 関 連 す る視 物 質(レ チ ナ ー ル と タ ンパ クが 結 合 した もの) 中 の色 素 は レチ ナ ー ル121し か 知 られ て い な い◇ す な わ ち こ の レチ ナ ー ルが タ ンパ クと の結 合 様 式 や そ の立 体 構 造 の変 化(各 位 で の シ スートラ ンス互 変 異性,結 合 の ね じれ な ど)に よっ て全 可 視 光 を 吸 収識 別 で きる 構 造 を と り うる こ とに な る 。わ れ わ れ は 全 色 調 を カバ ーす るの に何 百,何 千 も の色 素 を 商 品 と して持 って い るが,人 間 の 目は一 種 類 の色 素 系 でそ れ を ま か な って い るの は 驚 く べ き こ とで あ る。 今 さ ら なが ら生 体 の 神秘 に 敬 服 の 念 を いだ か ざ る を え な い。 さ て,こ の レチ ナ ー ル が ど う して 種 々の発 色 系 を と りう るか は 少 しず つ 判 明 しつ つ あ る20) が,レ チ ナ ー ル そ の もの は 紫 外 部 に し か 吸 収 を もた な い。 とこ ろ が,そ れ ぞれ 異 な った タ ンパ ク質(オ プ シ ン) と シ ッフ塩 を形 成 して4種 類 の 色 素 とな る。 す る と,吸 収 は可 視 部 に移 動 し,さ らに プ 質 トン化 に よ って カ チ オ ン型 の 色 素22と な っ て多 くの波 長 域 を カバ ーで き る発 色 系 を形 成 す る とされ て い る。MO計 算 に よ って 視 物 質 の一 つ,paド プ シ ンはScheme-7の よ う な 立 体 構 造 を とる と考 え られ て い る2i)。こ の場 合,イ オ ン結 合 に よ り, C13位 で実 に40。Cも のね じれ を 生 じ,そ の立 体 構 造 の 変 化 に よっ て深 色 性 の光 を 吸収 で き る発 色系 を 形 成 す る

21

22

と考 え られ て い る。 色 素 化 学 とそ の発 色 メカ ニ ズ ムに つ い て も生 体 に学 ぶ(Biomimetic)と こ ろが 多 い と考 え ら れ,今 後 の発 展 が期 待 され る。 6. 共 鳴 理 論 の 不 合 理 性2) 先 に述 べ た よ うに共 鳴 理 論 は 色 素 を 合 成 す る うえ で 非 常 に有 効 で 便 利 な理 論 で は あ った が,理 論 的 な 根 拠 に 乏 しい た め 多 くの不 合 理 性 を 示 す 結 果 とも な った 。 た とえ ば,ニ ト戸 ア ニ リンの 場 合,共 鳴 理 論 に よれ ば そ の λ繊腿 はP一 体=o一 体>m-一 体 とな るは ず で あ る が,実 際 に はo-(402)>m-(375)>p-(371nm)と な っ てp-・体 が も っ と も浅 色 的 で あ る。 この こ とは,共 鳴 理 論 で は低 エ ネ ル ギ ー の共 鳴系 の み を 考 慮 に 入 れ て考 え て い た こ とに 帰 因 し て い る◎ 実 際,HMO法 やPPPMO法 で は正 確 な 順 序 が 計 算 さ れ て い る 。 また,ベ ンゼ ン環 に2つ の 電 子 供 与 性 基(D)と1つ の 電 子 吸 引 性 基(A)を 導 入 した 場 合 (23∼25),共 鳴理 論 で は23が24や25よ り深 色 的 で あ る と予 想 で き るが,実 際 に は25>24>23と な って 一 致 しな い。 ま た26と27の 色 素 で も共 鳴位 置 に 置 換 基 を もつ26が500nmで 赤 で あ る の に,27は585nmで Scheme-7. 21)

(11)

734 色 素 の 発 色 メ カ ニ ズ ム と そ の合 成 へ の 応 用 色 材, 53(1980)

23

24

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27

紫 で あ る。 ζ の よ うな 共 鳴 理 諦 では 説 明℃ きな い不 合 理 性 は 多 くの色 素系 で認 め られ て い る◎ ま た後 述 す る ア ミ ノ ア ン トラキ ノ ン系 や ア ゾ系 色 素 に お い て もそ の 不 合 理 性 が 指 摘 で き,そ れ らの 事 実 はMO法 に よ って は じめ て 理 論 的 に再 現 さ れ て い る◎ 結 論 と して,共 鳴理 論 は 色 素 の合 成 デ ザ イ ンの た め の予 想 手 段 と し て は 有 効 で あ る が,そ の予 想 は 必 ずMO法 に よっ て理 論 的 に 裏 付 け され '=ねば な ら ず ,そ れ な しに 構 造 と ス ペ ク トル の 関 係 の 解 析 ψまな しえ な い とい え る。 7. PPPMO法 に よ る 発 色 機 構 の 考 察 一 部 発 色 系 の 共 鳴 理 論 に よる説 明 の 不 合 理 性 につ い て は 先 に述 べ た が,こ れ ら の事 実 はMO法 に よ っ て理 論 的 に説 明 さ れ る。 吸 収 ス ペ ク トル の 考 察 は 量 子 化 学 に よる 理 論 的 な 説 明 に よ っ て な され ね ば な らな い が,コ ン ピ ュ ー ター に よ る計 算 法 の発 達 に よ って 複 雑 な 量 子 化 学 計 算 が 可 能 に な った 。 最 も簡 単 なHMO(HUckelMO)法 に よ って も簡 単 な 色 素 系 の計 算 は 可 能 だ が,こ こ で は π電 子 系 の 計 算 に有 利 なPPPMO(Pariser-Parr-PopleMO) s法22)を用 い て 計 算 を行 な った◎ 最 近 ア ゾ系19),ア ン トラ キ ノ ン系16・23>,アザ ア ン トラキ ノ ン系21),ナ フ トキ ノ ン 系2聯)色 素 につ い て の 系 統 的 な 計 算 結 果 が 発 表 され た 。 ア ン トラ キ ノ ン 系 色 素 の 発 色 系 につ い て は,井 上7)や Grithths2)の 先 駆 的 な計 算結 果 か ら,可 視 部 第一 吸 収 帯 々こ相 当 す る遷 移 は ほ とん ど の場 合HOMOか らLUMOへ の 一 電 子 遷 移 に 相 当 す る こ とが わ か っ て い る 。 そ の 際 の π電 子 密 度 の変 化(Scheme-8)か ら,1一 ア ミノ ア ン トラ キ ノ ンの 第一 吸 収 帯 は,アxリ ン骨 格 をDonor,ナ フ ト キ ノ ン骨 格 をAcceptorと す る分 子 内電 荷 移 動 型 の 吸 収 に 相 当す る こ とが 指 摘 され た 。 す な わ ちScheme-"8の 28 結 果 か ら,ア ミノ窒 素 原 子 の み な らず2,4位 で も π電 子 密 度 の 減 少 が 認 め られ る こ と,一 方,9,10位 の カ ル ボ ニ ル酸 素 原 子 のみ な らず,5,6,7,8位 炭 素原 子 上 で も π電 子 密 度 の増 加 が認 め られ た こ とか ら,先 の ア ミノ 基 をDon◎r,ア ン トラキ ノ ン骨 格 をAcceptorと す る考 え 方4)が 不 適 当 で あ る こ とが わ か った 。 また,共 鳴理 論 に よ る発 色 系 の考 え方 が こ こで も不 合 理 で あ る こ とが 指 摘 され た 。 す なわ ち,共 鳴理 論 に よれ ば28の よ うな 極 限 構 造 を と っ て発 色 す る と考 え られ る結 果,9位 の カル ボ ニル 酸 素 の π電 子 密 度 が増 加 す る と考 え られ るが,MO計 算 の 結 果 で はむ しろ10位 の カル ボ ニ ル酸 素 で の 増 加 の 方 が 値 が 大 き い。 この よ うな 事 実 は す べ て の ア ン トラキ ノ ン 系 や ナ フ トキ ノ ン系 色 素 の 計 算 結 果 か ら も認 め られ て お り㌧ 共 鳴 理 論 の不 合理 性 を 指 摘 す る も ので あ る。 約40 Scheme-8. Changes in 7r-electron density

accom-panying first excitation of 1-amino-anthraquinone, -I- sign indicates an in-crease in 7r-electron density2)

(12)

色 材, 53(1980) 色 素 の 発 色 メ カ ニ ズ ム とそ の合 成 へ の応 用 735 種 類 の置 換 ア ン トラキ ノ ン系 色 素 の実 測 した 第一 吸 収 エ ネ ル ギ ー(dEm。x)と そ の 計 算 値(∠E1)と の 間 に は, 図 一10の よ うな 良 好 な 直 線 関 係 が え られ 式(2)の 関 係 式 が 得 られ た16).こ の こ とか ら,理 論 的 に は どん な ア ン

(2)

トラ キ ノ ン系 色 素 の色(λm。x)も 予 測 で き る こ と に な る。 す な わ ち,求 め る構 造 式 を 書 き,計 算 に よ って そ の 第 一 吸 収 エ ネ ル ギ ー(aE,)を 求 め,図 一10の 直 線 上 に プ ロ ッ トす れ ば,お の ず とそ の λm。x値 が 求 ま る こ とに な る。 共 鳴 理 論 で は 予 想 しえ な か った こ とで あ る。 計 算 結 果 を 解 析 す る こ とに よ って,1一 ア ミノア ン トラキ ノ ン のHOMOの 軌 道 の係 数 は ア ニ リンのHOMOの そ れ に, LUMOの 係 数 は 無 置 換 ア ン.Fラ キ ノ ンのLUMOの そ れ にほ ぼ相 当す る こ とが わ か った(Scheme-9)。 した が っ て ア ン トラキ ノ ン系 色 素 の色(λm。x)は そ のHOMO の エ ネ ル ギ ー レベ ル に よ って 影 響 され,そ のLUMOの エ ネ ル ギ ー レベ ル に は ほ とん ど影 響 され な い こ と,し た が っ て ま た,置 換 基 の イ オ ン化 ポ テ ン シ ャル(1.P)に ほ ぼ 比 例 す る こ と4・5・6)などが わ か った 。 一 方,1,4一 二 置 換 ア ン トラキ ノ ン誘 導 体29の 色 調 に お よぼ す ア ネ レー シ ョ ン効 果 につ い て もMO法 に よっ て 明確 な 説 明 が な され た23)。これ ら誘 導 体 の吸 収 ス ペ ク トル は ア ネ レー シ ョ ン の 位 置 に よ って 次 の よ うに変 化 す る こ と が 知 ら れ て い た6)0 2,3一ベ ン ゾ体;置 換 基 に よっ て 異 な り,ヒ ドロ キ シ体 で は 大 幅 な赤 色移 動 が,ア ミノ体 で は 青 色 移 動 す る。 5,6一ベ ン ゾ体;大 幅 な 赤 色 移 動 す る 。 6,7一ベ ン ゾ体;少 し青 色 移 動 す る 。'・ 2,3,5,6一 お よび2,3,6,7一 ジ ベ ン ゾ体;上 記 ア ネ レー シ ョ ン効 果 の 加成 性 が 成 立 す る。 Fig. 10. Linear relationship between calculated

and observed Amax")

(13)

736 色 素 の 発 色 メカ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の 応 用 色 材, 53(1980) 29 これ らの 現 象 はPPPMO法 に よる計 算 結 果 か ら も良 く 再 現 され,以 下 の よ うに 説 明 され た 。 母 体 ア ン トラ キ ノ ンお よび5,6-,6,7一 ベ ン ゾ体 につ い て は 先 に 述 べ た と 同様 の発 色 構 造 を と る こ とが わ か った が,2,3一 ベ ン ゾ関 連 誘 導 体 で は,そ の第 一一励 起 に 伴 う π電 子 密 度 の 変 化 が,Scheme-10の よ うに な っ て,置 換 ナ フ タ レ ン を

Donor,ナ フ トキ ノ ンをAcceptorと す る発 色 構i造を とる

こ とが わ か った 。 した が っ て先 の 置 換 ベ ンゼ ンをDonor とす る 系 に 比 べ て,そ の置 換 基 効 果 が 大 き く異 な り,置 換 基 の 電 子 供 与 性(1.P)の 差 異 に よ っ て図 一11に 示 す よ うにX=OHの 場 合 に は 赤 色 移 動 を,X=NHRの 場 合 に は青 色 移 動 を 示 し,置 換 基 の1.Pが 大 き くな る に従 って 青 色 移 動 か ら赤 色 移 動 へ と直 線 的 に 変 化 して い くこ とが わ か った 。 ア ン トラ キ ノ ン系 色 素 の 分 子 内 お よび 分 子 間 水 素 結 合 に よ る吸 収 ス ペ ク トル の変 化 は,置 換 基Xの1.Pを 小 さ く し,9お よ び10位 カル ボ ニル 基 の1.Pを 大 き くす る こ とに よ っ て見 積 る こ とが で き るが,置 換 基Xの1.Pを 小 さ く した 場 合 には 赤 色 移 動 を伴 うこ とは す で に わ か っ て い る。 表 一4の 結 果 は,9お よび10位 の カ ル ボ ニ ル基 の1.Pを 大 き く した 場 合 で あ り,い ず れ の場 合 に も ∠E1 は 小 さ くな って い る。 した が って ア ン トラキ ノ ン系 色 素 の吸 収 ス ペ ク トル は,分 子 内 お よび 分 子 間 水 素 結 合 に よ っ て いず れ も赤 色 移 動 す る こ とが 予 測 で き る。1位 置 換 基 と9位 カル ボ ニル 基 間 で の 立 体 障 害 に よ る ∠E1と 振 動 子 強 度(ノ 、)への影 響 に つ い て も検 討 した が,∠E,は ね じれ の角 度 が45℃ まで だ とほ とん ど影 響 は 認 め られ な い が,fi値 は か な り低 下 す る こ とが わ か った 。 した が って 立 体 障 害 が あ る と モ ル吸 光 度 εが 低 下 す る こ とが 予 測 され た 。 一 方,ナ フ トキ ノ ン系 色 素 につ い て も同 様 の 計 算 結 果 が 発 表 され て い る。 ナ フ トキ ノ ン系 色 素 で は Scheme-10. Changes in ir-electron density

accompanying the first excitation and the characters of the intra-molecular charge transfer")

Fig. 11.

Relationship

between

annelation

effect (44E1)

and 4E1 parent23)

Table

4.

Effects of intermolecular

hydrogen bonding with the quinone carbonyl groups on the first

excita-tion energy 4E1 and the oscillator

strength

fi of 1-amino- and 2-aminoanthraqunone

(AQ)S16)

(14)

色 材, 53(1980) 色素 の 発 色 メ勇 ニ ズ ム と そ の 合 成へ の 応 用 73ア AcceptorがP一 ベ ン ゾキ ノ ンとな るた め,対 応 す る ア ン トラ キ ノ ン系 色 素 よ りも よ り深 色 的 で あ る こ とが 知 られ て いた が,MO計 算 結 果 に よ って も再 現 さ れ た(Scheme -11)。2 ,3位 お よび6,7位 に ア ミノ基 な どの 電 子 供 与 性 基 を もつ ナ フ トキ ノ ン系 色 素 の場 合 に は,一 般 に キ ノ イ ドバ ン ドと呼 ばれ て い る 第二 吸 収 帯 が450nm付 近 に 現 わ れ るの で,1,2,4一 お よび1,4,5一 ト リ置 換 ア ミノ ナ フ トキ ノ ン誘 導 体 で は 色 調 の くす み を もた らす 結 果 に な る。Grifhthsら25)は,ナ フ トキ ノ ン系 色 素 の深 色 性 を有 効 に 利 用 し,し か も,5,6位 の反 応 活 性 に よる耐 光性 の乏 しさを 補 う目的 で,5,6位 に イ ミダ ゾー ル 環 を も つ ナ フ トキ ノ ン系 色 素30を 合 成 して い る。 この 色 素 は, 第 一 励 起 に伴 う π電 子 密 度 の変 化 か らN一 メチ ル ア ニ リ ン環 をDonor,イ ミダ ゾ ール 環 を 含 むP一 ベ ン ゾキ ノ ン をAcceptorと す る分 子 内電 荷 移 動 型 の 発 色 構 造 を と る こ と,ま た イ ミダ ゾー ル環 を カチ オ ン化 す れ ば さ ら に深 色 性 が 得 られ る こ とが 予 測 で きた ◎ そ して,カ チ オ ン化 す る こ とに よ って 深 色 性 で しか も耐 光 性 にす ぐれ た カチ オ ン染 料31を 得 て い る(S¢heme-12)QMO計 算結 果 を 合 成 に うま く結 び つ け た 一 つ の例 とい え よ う。 ア ゾ系 色 素 の吸 収 スペ ク トルに つ い て は従 来 か ら多 く の研 究 が な され て きた が,最 近 の古 後 ら19)のMO計 算 結 果 に よっ て多 くの新 しい知 見 が 得 られ た。 実 測 した 第 一 吸 収帯(λm。x)か らの値(aEmax)と 計 算 に よ り求 め た 第一 励 起 エ ネ ル ギ ー(AE1)の 間 に は 図弓2の よ うな 良 好 な相 関 関 係 が 得 られ,ア ゾ系 色 素 の 色(λmax)の 予 測 が 可 能 とな った。 そ して ア ゾ系 色 素 の 色 は,第 一 励 起 干 ネ ルギ ー(HOMOか らLUMOへ の一 電 子 励 起)に よっ

30

31

て ほ ぼ 決 ま る こ とが 確 認 さ れ た 。 ま た,置 換 基 効 果(表 一5)に 対 す る 事 実 もMO計 算 に よ っ て よ り 明 確 に な り, 同 時 に 共 鳴 理 論 に よ る 説 明 の 不 合 理 性 も 再 認 識 さ れ た ◎ た と え ば,ア ミ ノ ア ゾ ベ ン ゼ ン や4'・ 一・・,,.トPア ミ ノ ア ゾ ベ ンゼ ン類 で は2->3->4一 体 の 順 に 深 色 性 と な る こ と, 4'一ニ ト ロージ ア ミ ノ ア ゾ ベ ンゼ ン系32で は2,5->3,5->2,6一 ヒ3,4->2,4一 体 の 順 に 深 色 性 と な っ て,電 子 供`li 性 基 が4'位 ニ ト ロ 基 の 共 鳴 位 置 に あ る2,4一 体 が 最 も 浅 色 的 で あ る こ と がMO計 算 に よ っ て も再 現 さ れ た ・ 一 昌 方,4'一 ジ エ チ ル ア ミ ノ ーシ ア ノ ア ゾ ベ ン ゼ ン系 鐘 や4" 一ジ エ チ ル ア ミ ノ ージ シ ア ノ ア ゾ ベ ン ゼ ン 系34で は,そ れ ぞ れ2->4->3一 体 と,2,4r==2,6-一>2,5->2,3-・ 体 の

Scheme-11. Comparison of HOMO-LUMO level between anthraquinones (AQ) and naphthoquinones (NQ)

Scheme-12.

Fig. 12. Relationship between 4E1 and JEmax of azo dyes19)

(15)

738 色 素 の 発 色 メカ ニズ ム とそ の合 成 へ の応 用 色 材, 53(1980) 順 に深 色性 とな って 共 鳴 位 置 へ の 電 子 吸 引 性 基 の導 入が 深 色 性 に 有 効 で あ る こ とが わ か った 。 以 上 の 結 果 か ら,ア ゾベ ンゼ ン誘 導 体 の吸 収 ス ペ ク ト ル は共 鳴 理 論 に よ る説 明 で は 不 十 分 で あ り,λm。xの 値 を 含 む 置 換 基 効 果 はMO計 算 に よ っ て予 測 さ れ ね ば な ら な い こ とが わ か った 。 水 素 結 合 の結 果 につ い て は,4一 ジ ア ル キ ル ア ミノア ゾベ ンゼ ン誘 導 体35に つ い て 検 討 し 35 た 結 果,ア ミノ基 へ の 水 素 結 合 に よっ て は 浅 色 シ フ ト し,ア ゾNa原 子 へ の 水 素 結 合 に よ っ て は深 色 シ フ トす る 。 と こ ろがNβ 原 子 へ の 水 素 結 合 の場 合 に は,ベ ンゼ ン環Bの 電 子 吸 引性 の 程 度 に よ っ て異 な る こ とが わ か っ た 。 す な わ ち,吸 引 性 が あ る程 度 以上 強 くな る と浅 色 シ フ トす る こ とが わ か り,A,B両 環 上 の 置 換 基 の電 子 的 効 果 に よっ て そ の 効 果 が 異 な る こ とが わ か った 。 ま た, ア ゾ基 の オ ル ト位 で の立 体 障 害 に よ る効 果 につ い て は 先 の 事 実(Scheme-6)が 良 く再 現 さ れ た 。 そ の他 の 色 素 系 に 対 す るMO計 算 結 果 と して は,Fabianら27》 の一 連 の 報 告 が あ り,オ キ ソ ノー・ル 系,シ ア ニ ン系 等 に つ い て 主 と して理 論 計 算 が な され て い る。 8.結 語 以 上,色 素 の発 色 メ カ ニ ズ ム とそ の 合 成 へ の応 用 に つ い て 述 べ て き た が,今 後 ます ますMO法 に よ る考 察 が一 般 化 し,多 くの発 色 系 に つ い て そ の発 色 メカ ニ ズ ムが 詳 細 に検 討 され る もの と考 え る。 そ して,そ れ を 応 用 した 新 しい 色 素系 の 合 成 デザ イ ンが 可 能 とな り,色 素化 学 の 発 展 に大 き く寄 与 す る も の と信 じる。 関 連 文 献 を で き るだ け 調 査 した つ も りだ が,重 要 な文 献 が ぬ け て い るか も しれ な い。 ま た,紙 面 の 関 係 もあ っ て 全 部 の 色 素 系 につ い て考 察 で きな か った こ とを こ とわ って お く。 最 後 に ご く最 近 に な ってFabianら28)の 著 書 を 入 手 した 。Grifhthsの 著 書2》と と もに,こ の 分 野 の 最 新 の 情 報 を 集 大 成 して い て 重 要 で あ る ので 是 非 一 読 され た い 。 文 献 1)飛 田 満 彦:染 料 と 薬 品,24,114(1979)

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Berlin,

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刊 行 物 紹 介

ア ク リ ル ゴ ム,エ ピ ク ロ ル ヒ ド リ ン ゴ ム 紙 屋 南 海 夫 ・斉 藤 孝 臣 ・福 嶋 宏 著 A5判140頁2,600円 1980年1月31日 初 版 発 行 (株)大 成 社 本 書 は,"合 成 ゴ ム加 工 技 術 全 書 く 全12巻 〉"の 中 の 一 冊 で あ る 。 そ の 内 容 は 特 定 の ポ リrプー に つ い て,初 級 な い し 中 級 の 技 術 者 に も っ と も 理 解 さ れ や す い 形 で ま と め ら れ て い るo 現 場 技 術 者 の み な らず,ポ リ マ ー 関 係 の 技 術 者 や 研 究 者 の 参 考 書 と し て も役 立 つ で あ ろ う。 本 書 の 構 成 は,具 体 的 に 示 す と(1)ア ク リ ル ゴ ム と く2)エ ピ ク ロ ル ヒ ド リ ソ ゴ ム に 関 し,以 下 の と お りで あ るo ● ア ク リ ル ゴ ム の 性 質(耐 熱 性 ・耐 油 性 ・耐 薬 品 性) ● ア ク リ ル ゴ ム の 種 類 と 特 徴(ア ク リ ル 酸 エ ス テ ル の 構 造 と 性 質,活 性 モ ノ マ ー の 種 類 と橋 か け,諸 性 質) ● 配 合 剤 の 選 定(橋 か け 剤 と補 強 剤,充 て ん 剤,老 化 1防止 剤,安 定 剤,可 塑 剤) ● ア ク リル ゴ ム の 混 練 り と 成 形 加 工(混 練 り,成 形 条 件,接 着,貯 蔵 性) ● ア ク リル ゴ ム の ポ リ マ ー ブ レ ソ ド(ふ っ 素 ゴ ム ・ア ク リ ル ゴ ム ブ レ ソ ド,エ ピ ク ロ ル ヒ ド リソ ・ ア ク リ ル ゴ ム ブ レ ソ ド,ア ク リ ル ゴ ム の 再 生 利 用) ● ア ク リ ル ゴ ム の 実 用 配 合 剤 ● ア ク リ ル ゴ ム の 織 布 コ ー テ ィ ソ グ へ の 応 思 ● エ ピ ク ロ ル ヒ ド リ ソ ゴ ム の 特 性 ● 加 工(素 練 り,混 練 り操 作,押 出 加 工,カ レ ン ダ ー 加 工,金 属 腐 食 性,接 着 剤,粘 度 特 性) ● エ ピ ク ロ ル ヒ ド リソ ゴ ム の 配 合(加 硫 系,チ オ ウ レ ア 類,ア ミ ソ 類 に よ る 加 硫,補 強 剤,可 塑 剤) ● 性 質(物 性 の 温 度 依 存 性,耐 熱 性,耐 寒 性,耐 油, 耐 薬 品 性,ス コ ー チ 性,圧 縮 永 久 ひ ず み,耐 水 性,導 電 性,室 温 加 硫 系) ● 実 用 配 合(AMS3201E規 格 配 合,0リ ソ グ,耐 油 ホ ー ス,耐 油 カ バ ー,難 燃 配 合,ス ポ ソ ジ 配 合,そ の 他) ● ポ リ マ ー ブ レ ソ ド(ゴ ム/ゴ ム ブ レ ン ド,樹 脂 と の ブ レ ソ ド) な お,合 成 ゴ ム 加 工 技 術 全 書 く 全12巻 〉 に は,次 の 各 巻 が あ る の で 付 記 し て お く。 イ ソ プ レ ソ ゴ ム,ブ タ ジ ェ ソ ゴ ム,ス チ レ ソ ・ ブ タ ジ ェ ン ゴ ム,溶 液 重 合SBR,ニ ト リ ル ゴ ム,ク ロ ロ プ レ ソ ゴ ム,エ チ レ ン ・プ ロ ピ レ ソ ゴ ム,ブ チ ル ゴ ム,ハ イ パ ロ ソ ・塩 素 化 ポ リ エ チ レ ソ,ウ レ タ ン エ ラ ス ト マ ー ・多 硫 化 ゴ ム,シ リ コ ー ソ ゴ ム ・ふ っ 素 ゴ ム,お よ び 本 書 で あ るo(小 石 真 純)

Fig.  3.  Morse  curves  for  the  ground  ( a  )  and  excited  state  ( b  )  of  a  diatomic  molecule2)
Fig.  5.  Substituent  effects  of  Malachite  Green  28)
Table  2.  Substituent  effects  of  indigo  and  thioindigo  derivatives
Fig.  7.  Reflectance  curves  without  Fluorescent  Whitening  Agent  (FWA)  ( a ),  and  with  FWA  (d  :  true  reflectance,  f  :  total   reflec-tance
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参照

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