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王 琳

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Academic year: 2021

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おう りん

王 琳

学 位 の 種 類 博士(商学)

甲第1595

学位授与の日付 平成 28 年 3 月 22 日

学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

ヘッジ会計の研究 ―ヘッジ会計の体系性と一貫性の観点から―

論文審査委員 (主 査) 福岡大学 教授 太田 正博 (副 査) 福岡大学 教授 山内 進

福岡大学 教授 井上 伊知郎 福岡大学 教授 池田 健一

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1 論 文 内 容 の 要 旨

本 研 究 で は 、 ヘ ッ ジ 会 計 を 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 と マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 に 区 分 し 、 ヘ ッ ジ 会 計 を 総 合 的 に と ら え て 、 そ の 体 系 性 と 一 貫 性 の 観 点 か ら 検 討 す る と 同 時 に 日 本 の 銀 行 業 に お け る ヘ ッ ジ 会 計 の 実 態 を 明 ら か に し た 。 ヘ ッ ジ 会 計 の こ の よ う な 総 合 的 研 究 は 他 に な い と 考 え る 。

企 業 が 行 う ヘ ッ ジ に は 、 い く つ か の 形 態 が あ る 。 ヘ ッ ジ 対 象 が 個 別 の 資 産 ・ 負 債 で あ り 、 ヘ ッ ジ 手 段 と 1 1 の 関 係 と い う 形 態 が 最 も 一 般 的 で あ る 。 こ の よ う な ヘ ッ ジ を 個 別 ヘ ッ ジ と い う 。 ヘ ッ ジ に は 、 複 数 の 資 産 及 び 負 債 か ら な る 一 つ の ポ ー ト フ ォ リ オ を ヘ ッ ジ 対 象 と す る 形 態 も あ る 。 こ の ポ ー ト フ ォ リ オ が 固 定 さ れ て い る 場 合 の ヘ ッ ジ を ク ロ ー ズ ド ・ ポ ー ト フ ォ リ オ ヘ ッ ジ と い う 。 個 別 ヘ ッ ジ と ク ロ ー ズ ド ・ ポ ー ト フ ォ リ オ ヘ ッ ジ を 合 わ せ て 一 般 ヘ ッ ジ と い う 。 こ の 一 般 ヘ ッ ジ は 、 企 業 の リ ス ク を 静 的 に 管 理 す る も の で あ る 。

他 方 、 特 に 銀 行 業 界 で は 、 リ ス ク ・ ポ ジ シ ョ ン が 頻 繁 に 変 動 す る た め に 、 一 般 ヘ ッ ジ で は リ ス ク 管 理 が 十 分 で は な く 、 動 的 リ ス ク 管 理 が 必 要 と な る 。 動 的 リ ス ク 管 理 と し て オ ー プ ン ・ ポ ー ト フ ォ リ オ ヘ ッ ジ が 行 わ れ る 。 こ の オ ー プ ン ・ ポ ー ト フ ォ リ オ ヘ ッ ジ を マ ク ロ ヘ ッ ジ と い う 。 こ の マ ク ロ ヘ ッ ジ の ヘ ッ ジ 効 果 を 財 務 諸 表 に 反 映 す る た め に 、I A S B は 、 新 た な マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 モ デ ル を 開 発 す る こ と を 決 定 し た 。

マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 は ま っ た く 新 し い 会 計 モ デ ル で あ る 。 新 し い 会 計 モ デ ル は 複 雑 か つ 高 度 な 内 容 に な り 、開 発 に は 長 期 を 要 す る と 予 想 さ れ た 。 そ の た め 、I A S B は マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 を 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 か ら 切 り 離 し て 、 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 基 準 を 先 に 完 成 さ せ 、 マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 基 準 を 時 間 を か け て 開 発 す る こ と と し た 。

こ の よ う な 研 究 背 景 に 鑑 み て 、 本 研 究 は 、 最 初 に 、 ヘ ッ ジ 会 計 の 必 要

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性 か ら 検 討 し た 。 ヘ ッ ジ 会 計 を 一 般 ヘ ッ ジ と マ ク ロ ヘ ッ ジ に 分 け て 、 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 に お け る ヘ ッ ジ 対 象 、 ヘ ッ ジ 手 段 、 及 び ヘ ッ ジ 会 計 の 方 法 を 分 析 し て 、 そ の 特 徴 を 把 握 し 、 次 い で 提 案 さ れ て い る 新 た な マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 の モ デ ル を 検 討 し 、 ヘ ッ ジ 会 計 全 体 と し て の 体 系 性 と 一 貫 性 を 考 察 し た 。 本 研 究 の 構 成 は 次 の と お り で あ る 。

「 序 章 」 で は 、 本 研 究 に お け る 研 究 の 問 題 意 識 を 明 ら か に し 、 本 研 究 の 目 的 お よ び 方 法 を 明 ら か に し た 。 ま ず 、 本 研 究 の 目 的 は 、 米 国 財 務 会 計 基 準 審 議 会 ( 以 下 、FA S B)、 国 際 会 計 基 準 審 議 会 ( 以 下 、I A S B)、 日 本 の 企 業 会 計 基 準 委 員 会 ( 以 下 、A S B J) に お け る 金 融 商 品 の 時 価 評 価 、 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 の 方 法 を 比 較 研 究 し 、 ヘ ッ ジ 会 計 の 必 要 性 お よ び 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 の 優 位 性 を 主 張 し 、 さ ら に 、 マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 の 意 義 お よ び 現 状 を 明 ら か に す る こ と で あ る 。 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 に お い て 、 ヘ ッ ジ の 経 済 的 実 態 が 財 務 諸 表 上 で 忠 実 に 表 現 さ れ て い る か ど う か を 検 討 し 、 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 の 問 題 点 を 抽 出 し た 。 そ の 上 で 、 マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 に 関 す る I A S B の 提 言 を 詳 細 に 検 討 し 、 新 た な マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 モ デ ル の 可 能 性 を 明 ら か に し た 。 研 究 方 法 は 、FA S BI A S B お よ び A S B J の 各 会 計 基 準 の 比 較 と 各 会 計 基 準 の 下 で 具 体 的 な ヘ ッ ジ 行 為 が ど の よ う な 会 計 的 表 現 に な る か を 分 析 的 に 明 ら か に し 、 そ の 問 題 点 と 解 決 策 を 見 い だ す 方 法 に よ っ た 。

1 章 「 金 融 商 品 の 時 価 評 価 」 で は 、 金 融 商 品 測 定 に お け る 混 合 測 定 を 支 持 し 、 そ れ と の 関 連 で ヘ ッ ジ 会 計 の 必 要 性 を 主 張 し た 。 す べ て の 金 融 商 品 を 公 正 価 値 で 測 定 す る 全 面 公 正 価 値 測 定 の 下 で は ヘ ッ ジ 会 計 が 不 要 と な る 。FA S B お よ び I A S B は 、 金 融 商 品 の 全 面 公 正 価 値 測 定 の 方 向 で 検 討 し 、 ヘ ッ ジ 会 計 を 全 面 否 定 し よ う と し た が 、 現 段 階 で は 、 時 価 と 取 得 原 価 の 混 合 ア プ ロ ー チ を 採 用 す べ き で あ り 、 混 合 ア プ ロ ー チ の 下 で

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ヘ ッ ジ 会 計 の 長 所 と 短 所 を 比 較 考 量 し た 結 果 、 ヘ ッ ジ 会 計 の 必 要 性 を 確 認 で き た 。

2 章 「 ヘ ッ ジ 手 段 - デ リ バ テ ィ ブ 」 で は 、 ヘ ッ ジ 手 段 で あ る デ リ バ テ ィ ブ の 発 展 、 取 引 の 種 類 、 時 価 評 価 お よ び FA S B に お け る デ リ バ テ ィ ブ の 会 計 基 準 に つ い て 考 察 し た 。

3 章 「 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 の 方 法 」 で は 、FA S BI A S B お よ び A S B J 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 の 方 法 の 比 較 を 行 い 、A S B J に お け る 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 と FA S B お よ び I A S B の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー ・ ヘ ッ ジ 会 計 の 相 違 点 、A S B J に お け る 時 価 ヘ ッ ジ 会 計 と FA S B お よ び I A S B に お け る 公 正 価 値 ヘ ッ ジ 会 計 の 相 違 点 が 主 と し て ヘ ッ ジ 対 象 に あ る こ と を 明 ら か に し た 。

ま た 、 公 正 価 値 ヘ ッ ジ 会 計 と 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 の 比 較 検 討 を 行 い 、 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 の 優 位 性 を 主 張 し た 。 公 正 価 値 ヘ ッ ジ 会 計 に 関 し て 、 ヘ ッ ジ 手 段 と ヘ ッ ジ 対 象 の 逆 転 現 象 を 指 摘 し た 。 こ の 指 摘 は 本 研 究 の 特 徴 の 一 つ で あ る 。 ヘ ッ ジ 対 象 に 生 じ る 損 益 を ヘ ッ ジ 手 段 に か か る 損 益 で 相 殺 す る の で は な く 、 ヘ ッ ジ 手 段 に 発 生 す る 損 益 を ヘ ッ ジ 対 象 に か か る 損 益 で 相 殺 す る と い う 「 ヘ ッ ジ 手 段 と ヘ ッ ジ 対 象 の 逆 転 」 が 生 じ る と い う 指 摘 で あ る 。 そ れ に 対 し て 、 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 で は 、 ヘ ッ ジ 対 象 に つ い て 損 益 が 認 識 さ れ る 会 計 期 間 に ヘ ッ ジ 手 段 に 係 る 損 益 が 認 識 さ れ る の で 、 ヘ ッ ジ 手 段 と ヘ ッ ジ 対 象 の 逆 転 現 象 を 回 避 す る こ と が で き る 。 こ れ が 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 の 優 位 性 の 第 一 根 拠 で あ る 。

公 正 価 値 ヘ ッ ジ 会 計 で は 、 一 般 会 計 で は 取 得 原 価 又 は 償 却 原 価 法 で 測 定 さ れ る 資 産 ・ 負 債 項 目 が 公 正 価 値 で 評 価 さ れ る こ と が あ り 、G A A P の 整 合 性 に 欠 け る こ と に な る 。そ れ に 対 し て 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 は G A A P の 整 合 性 を 維 持 で き る 。 ま た 、 公 正 価 値 ヘ ッ ジ 会 計 で は 双 務 未 履 行 の 確 定 約 定 の 公 正 価 値 評 価 を 通 じ て 資 産 又 は 負 債 を 認 識 す る が 、 こ れ も

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G A A P に 反 す る 。そ れ に 対 し て 繰 延 ヘ ッ ジ は G A A P に 反 す る よ う な 予 定 取 引 に 関 す る 資 産 又 は 負 債 の 認 識 を 行 わ な い 。 資 産 ・ 負 債 の 測 定 お よ び 確 定 約 定 を 含 む 予 定 取 引 の 認 識 測 定 に 関 す る G A A Pと の 整 合 性 が 繰 延 ヘ ッ ジ の 優 位 性 の 第 二 根 拠 で あ る 。 繰 延 ヘ ッ ジ 会 計 の 優 位 性 を 本 研 究 で は 次 の よ う に ま と め た 。

1 つ は 、 繰 延 ア プ ロ ー チ に よ れ ば 、 ヘ ッ ジ 対 象 に つ い て 損 益 が 認 識 さ れ る 会 計 期 間 に ヘ ッ ジ 手 段 に 係 る 損 益 が 認 識 さ れ る の で 、 ヘ ッ ジ 手 段 と ヘ ッ ジ 対 象 の 逆 転 現 象 を 回 避 す る こ と が で き る 。

2 つ は 、 繰 延 ア プ ロ ー チ に よ れ ば 、 双 務 未 履 行 段 階 の 予 定 取 引 に 関 し て 損 益 を 認 識 し な い で 済 ま せ る こ と が で き る 。こ れ は G A A Pと 整 合 す る 。

3 つ は 、 繰 延 ア プ ロ ー チ に よ れ ば 、 他 の 会 計 基 準 で 時 価 評 価 を 要 求 さ れ て い な い 資 産 負 債 項 目 に 関 し て 時 価 評 価 を 行 う 必 要 が な く 、G A A P の 整 合 性 が 保 た れ る 。

4 章 「 日 本 の 銀 行 業 の ヘ ッ ジ 会 計 」 で は 、 日 本 の 銀 行 業 に お け る ヘ ッ ジ 会 計 の 取 扱 い と 現 状 を 明 ら か に し た 。 金 融 商 品 取 引 法 に 基 づ い て 提 出 さ れ た 有 価 証 券 報 告 書 等 の 開 示 書 類 か ら 、 日 本 の 上 場 銀 行 9 4 社 の 有 価 証 券 報 告 書 を 調 査 し 、 ヘ ッ ジ 会 計 の 使 用 状 況 を 明 ら か に し た 。

5 章 「I A S B に お け る マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 」 で は 、I A S B に お け る マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 モ デ ル (P R A) 開 発 の プ ロ セ ス を た ど り 、 ポ ー ト フ ォ リ オ 再 評 価 モ デ ル に 関 す る ポ ー ト フ ォ リ オ 対 象 項 目 、P R A の 適 用 対 象 、P RA の 評 価 方 法 、P R A 再 評 価 調 整 の 表 示 方 法 な ど の 主 要 な 問 題 に つ い て 検 討 を 行 い 、 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 と の 整 合 性 を 考 慮 に 入 れ た 筆 者 の 見 解 を 主 張 し た 。

1 つ は 、 管 理 対 象 ポ ー ト フ ォ リ オ の 対 象 項 目 に つ い て で あ る 。 パ イ プ ラ イ ン 取 引 は P R A を 適 用 す る 目 的 上 、管 理 対 象 ポ ー ト フ ォ リ オ に 含 め ら

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れ る か 否 か に つ い て 、 広 告 し た 金 利 に よ る 取 引 を 取 り や め ま た は 拒 否 で き る な ら 、 こ れ ら の 広 告 は 確 定 約 定 で は な い 。 し か し 、 取 り や め も 拒 否 も で き な い な ら 、 広 告 は 確 定 約 定 に な る 。 要 す る に 、 銀 行 は 過 去 の 経 験 に よ っ て 、 パ イ プ ラ イ ン 取 引 が 確 定 約 定 と 認 め ら れ る 場 合 、P R A の 対 象 に 含 め る べ き と 考 え ら れ る 。

2 つ は 、 エ ク イ テ ィ ・ モ デ ル ・ ブ ッ ク (E M B) は P R A を 適 用 す る 目 的 上 、 管 理 対 象 ポ ー ト フ ォ リ オ に 含 め ら れ る か 否 か に つ い て の 見 解 は 、 自 己 資 本 は 、 財 務 諸 表 に 認 識 さ れ る 再 評 価 損 益 を 生 じ る べ き で は な い 。 す な わ ち 、 自 己 資 本 が 時 価 評 価 不 適 当 項 目 で あ り 、 公 正 価 値 ヘ ッ ジ の 対 象 に す べ き で は な く 、 管 理 対 象 ポ ー ト フ ォ リ オ に 含 め る べ き で は な い と 考 え る 。

3 つ は 、P R A の 適 用 範 囲 に 関 し て 、「 動 的 リ ス ク 管 理 に 焦 点 を 当 て た ア プ ロ ー チ 」 と 「 リ ス ク 軽 減 に 焦 点 を 当 て た ア プ ロ ー チ 」 と い う 2 つ の ア プ ロ ー チ が あ る 。 こ の 2 つ の ア プ ロ ー チ に は そ れ ぞ れ 利 点 と 欠 点 が あ る 。 動 的 リ ス ク 管 理 の 反 映 か 純 損 益 ボ ラ テ ィ リ テ ィ の 安 定 か の ど ち ら に 重 点 を お く か に よ っ て 異 な る 選 択 と な る 。 リ ス ク 管 理 の 実 態 を 適 切 に 反 映 す る 新 し い ア プ ロ ー チ を 開 発 す る と い う 新 た な モ デ ル 開 発 の 趣 旨 を 考 え る と 、 純 損 益 ボ ラ テ ィ リ テ ィ の 削 減 は お そ ら く 最 優 先 に な る 。 ま た 、 一 般 ヘ ッ ジ 会 計 に お け る ヘ ッ ジ の 有 効 性 は 、 ヘ ッ ジ 対 象 と ヘ ッ ジ 手 段 を 相 殺 す る 部 分 、 つ ま り ヘ ッ ジ が 行 わ れ る 部 分 が 有 効 と 認 め ら れ る 。 し た が っ て 、P R A の 適 用 範 囲 は 、 一 般 ヘ ッ ジ と の 一 貫 性 の 観 点 か ら 見 る と 、 ヘ ッ ジ が 行 わ れ る 部 分 に の み P R A を 適 用 す べ き と 考 え る 。要 す る に 、「 リ ス ク 軽 減 に 焦 点 を 当 て た ア プ ロ ー チ 」 が 選 択 さ れ る 傾 向 性 が 大 き い と 考 え ら れ る 。

4 つ は 、P R A の 表 示 に つ い て 、 各 意 見 を 参 考 し な が ら 、 各 代 替 案 を 比

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較 し た 上 で 、 財 政 状 態 計 算 書 に お け る 単 一 の 純 額 表 示 科 目 に よ る 表 示 と 包 括 利 益 計 算 書 に お け る 実 際 の 正 味 金 利 収 益 の 表 示 が 選 択 さ れ る 傾 向 性 が 大 き い と 考 え ら れ る 。

「 終 章 」 で は 、 以 上 の よ う な 本 研 究 の 意 義 を 明 ら か に し 、 今 後 の 研 究 課 題 を 述 べ た 。 今 後 の 研 究 課 題 と し て は 、 次 の 3 点 で あ る 。

ま ず 、FA S B お よ び I A S B は 、 金 融 商 品 の 全 面 公 正 価 値 測 定 の 方 向 で 検 討 し 、 ヘ ッ ジ 会 計 を 全 面 否 定 し よ う と し た が 、 将 来 は こ の 全 面 公 正 価 値 ア プ ロ ー チ に 係 る 議 論 を 注 視 し 続 け る 必 要 が あ る 。

次 に 、D P に お い る P R A の 検 討 は マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 の プ ロ ジ ェ ク ト の 最 初 の デ ュ ー ・ プ ロ セ ス で あ り 、 今 後 、 最 終 基 準 の 作 成 に 向 け た 作 業 が 行 わ れ る 。 そ の 進 捗 を 丁 寧 に 追 跡 す る 必 要 が あ る 。 ま た 、D P で は 、 金 利 リ ス ク の 純 額 ・ オ ー プ ン ポ ジ シ ョ ン の 公 正 価 値 ヘ ッ ジ の 扱 い が 主 な 議 論 の 対 象 で あ っ た が 、 為 替 相 場 変 動 や コ モ デ ィ テ ィ 価 格 変 動 等 を 対 象 と し た オ ー プ ン ・ ポ ー ト フ ォ リ オ の 検 討 も 必 要 が あ る 。

最 後 、P R A は マ ク ロ 公 正 価 値 ヘ ッ ジ モ デ ル で あ る が 、 マ ク ロ キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー ヘ ッ ジ モ デ ル も 検 討 す る べ き と 考 え る 。 さ ら に 、 マ ク ロ ヘ ッ ジ 会 計 の 開 発 は 銀 行 業 を 起 点 と し 行 わ れ る が 、 他 の 業 種 に 応 用 す る こ と が 予 定 さ れ て い る 。 し た が っ て 、P R A の 他 業 種 へ の 応 用 の 研 究 も 必 要 で あ る 。

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- 1 - 審査の結果の要旨

企業は金融資産、金融負債または予定取引の価格変動、利子率変動および為替相場変動 のリスクを管理する目的で、先物取引、先渡取引、オプション取引およびスワップ取引な どのデリバティブを手段とするヘッジ取引を行う。個別の金融資産・負債または予定取引 を対象に特定のデリバティブを指定して行うヘッジが個別ヘッジであり、一般ヘッジであ る。それに対して、複数の金融資産・負債または予定取引からなる一つのポートフォリオ をヘッジ対象として特定のデリバティブを指定して行われるヘッジがマクロヘッジであ る。ヘッジ会計はヘッジ取引の効果を財務諸表上で表現する会計行為である。本論文はヘ ッジ会計を一般ヘッジ会計とマクロヘッジ会計からなる一つの体系ととらえ、その全体を 総合的に検討し、一貫性のあるヘッジ会計の方法を追求した研究である。

各国の金融商品会計基準では、ヘッジ対象の金融資産および金融負債が混合測定アプロ ーチに基づいて測定され、ヘッジ手段であるデリバティブは公正価値で測定される。その 結果、ヘッジ対象に生じる損益とヘッジ手段に生じる評価損益に期間的ミスマッチが生じ、

ヘッジ効果が期間損益計算に反映されない不都合が生じる。このミスマッチを解消し、ヘ ッジ効果を損益計算に反映させ、純損益のボラティリティを抑制することがヘッジ会計の 目的である。したがって、ヘッジ対象のすべてを公正価値で評価する全面公正価値アプロ ーチによれば、ヘッジ会計は不要になる。本論文では、金融商品全面公正価値評価の議論 とそれに対するアメリカ会計学会の議論を検討し、ヘッジ会計の必要性を確認している。

これが本論文の第1の研究成果である。

米国財務会計基準審議会(FASB)、国際会計基準審議会(IASB)および日本の企業会計 基準委員会(ASBJ)の一般ヘッジ会計の方法には相違がある。FASBおよびIASB が公正 価値ヘッジとキャッシュフローヘッジを採用しているのに対して ASBJ は繰延ヘッジを基 本にして、一部の項目に時価ヘッジを認めている。本論文は FASB および IASBのヘッジ 会計の方法と ASBJ のヘッジ会計の方法には、ヘッジ対象に関して重要な差異があること を指摘している。これが本論文の第2の研究成果である。

ヘッジ会計の諸基準と一般会計の諸基準(GAAP)には一貫性が保たれるべきである。こ の一貫性の観点から、ヘッジ対象の公正価値測定を要求する公正価値ヘッジよりも公正価 値測定を要求しない繰延ヘッジの方が優れていると主張している。また、公正価値ヘッジ では、ヘッジ手段の評価損益を相殺する目的でヘッジ対象の公正価値評価が行われるとい う「ヘッジ手段とヘッジ対象の逆転現象」を指摘し、逆転現象が生じない繰延ヘッジの優 位性を主張している。これが本論文の第3の成果である。

第4章では、我が国の有価証券報告書の注記事項を調査し、銀行業の一般ヘッジ会計の 実態を明らかにしている。

5章ではマクロヘッジ会計に関するIASBの討議資料が検討されている。最初に、IASB の審議経過を整理して、討議資料で提示された論点が纏められている。次いで、パイプラ イン取引とイクイティーモデルブック(EMB)のヘッジ対象ポートフォリオの対象項目と しての適格性が検討されている。一般ヘッジ会計における予定取引および確定約定の会計 処理との一貫性を考慮して、パイプライン取引が確定約定に該当するなら対象項目とし、

予定取引に該当するなら対象外にすべきとの結論に至っている。GAAP では自己資本の再

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評価が行われないことから、EMBは対象外にすべきと主張している。これが第4の成果で ある。

マクロヘッジに関する次の論点はポートフォリオ再評価アプローチ(PRA)の再評価対 象に関して、動的リスク管理に焦点を当てたアプローチとリスク軽減へ焦点を当てたアプ ローチの選択問題である。本論文では当期純損益のボラティリティを抑制することを優先 すべきとしてリスク軽減アプローチの採用を支持している。

マクロヘッジ会計におけるPRAは管理対象リスクに関わる再評価であって、ヘッジ対象 の全面的な公正価値評価ではない。本論文では、その点を根拠にして、財政状態計算書に おける再評価調整額の代替的表示方法の優劣を論じている。これは、本論文の第5の成果 である。

本論文は、国際会計基準、米国基準および日本基準に関する文献を丹念に探査して、ヘ ッジ会計基準の相違を明確に把握した上で、一般ヘッジ会計としての繰延法の優位性を指 摘し、一般ヘッジ会計との一貫性の観点からマクロヘッジ会計のあるべき姿を模索してい る。マクロヘッジ会計に関して残された課題は多いが、マクロヘッジ会計研究が緒に就い たばかりの現段階ではやむをえない。

本論文の論述には一貫性があり、論旨も明確である。論文公聴会における質疑応答なら びに主査および副査による口頭試問に対する応答も勘案して、本論文を課程修了の博士論 文として適当であると判定した。

主査 太田正博 副査 池田健一 井上伊知郎 山内進

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