Vol.9 No.2 原子力バックエンド研究
巻頭言
地層処分の安全性を立証する
富士常葉大学長 徳山 明
原子力発電環境整備機構は,いま,地層処分に向けてその処分場の候補地を選定するために,概要調査を行う地域を公 募していますが,改めて地層処分は安全なのかが問われています.疑問点の主なものは,地震の時,地下に埋めておいて 本当に安全なのか,また,埋めておく長い期間の内に放射性物質が地下水に溶け出さないのか,等いくつかの重要な問題 に限られています.ある時次のような質問を受けたことがあります.「廃棄体は20cm程の厚さの鋼鉄で包まれているの で,確かに,地震の振動に対しては安全なことは分かるが,地震時には地殻が大きく変形する.このことについて考えた ことがあるのか.」このような地震時の地殻変形についての疑問に対して,どのように応えれば良いのでしょうか.
日本付近では,海溝に向かって大洋からプレートがもぐり込んでいると考えられ,プレートの上に載っている地殻は,
それに引きずられて,もぐり込みの方向(ふつう SE-NW 方向)に縮み,それと直角方向に伸びる変形を受けています.
この変形が限界に達すると,その地殻ブロックが破壊し,地震が発生します.その変形を受けるブロックが大きいと規模
(マグニチュード,M)の大きな地震となります.ブロックが半径60km程度だとM8,20km位だとM7の地震が発生す ると考えられています.
では,実際にどのくらいの変形が蓄積されると地震が発生するのでしょうか.私たちはかつて,伊豆半島で発生した地 震の際に,実際にどのくらいの地殻変形が生じたかを,地震の前後での精密測量によって比較検討しました.その結果,
1974年5月の伊豆半島沖地震の際には,南伊豆のブロックがNNE-SSW方向に縮み,ENE-WSW方向に伸びましたが,
最大の伸びは5/10万(1kmについて5cm)と計算されました.その後,1978年1月の伊豆大島近海の地震では,このブ ロックには全く変形はなく,その東隣のブロックでは,南北3kmの測線が17cm縮み(2/10万),東西4kmの測線が103cm 伸びた(25/10万)ことが実測されました.
放射性廃棄物を埋め込もうとしている地殻のブロックでは,全体として最大1kmについて10〜20cmの伸び・縮みが生 ずれば地震が起きてしまうことになります.これに対し,放射性廃棄物を包んでいる鋼鉄の容器(オーバーパック)は
12〜15%の変形にまでは耐えることができますから,1kmについて100m以上の変形が生じない限り,壊れることはあり
ません.地層の中には,いわば,安全弁があって,オーバーパックの変形限界の1/1000程度の変形が生じた段階で地震 が生じてしまうことになり,オーバーパックは安全に保たれると言うことができます.地殻が変形を受ける場合,もちろ ん,変形が均一にはならず,不連続に,つまり,断層ができることがあり,これは絶対に避けなければいけません.今ま での経験からは,M7以上の大地震は活断層に沿って何度も繰り返し発生しているという性質があります.従って,処分 する候補となる地域を活断層が横切っていなければ,地震に対しては安全だと言うことができます.活断層を見逃がさな いためにはどうするかが問題ですが,今では,精密な地表の調査を行えば,技術的には大きな活断層は必ず発見できるま でになりました.
概要調査地域が選ばれれば,このように一つひとつ,支障となる問題を解決してゆけば,地層処分に対して安全な地域 を保証することができます.その調査の仕方をどのようにすれば良いかについて,いま考えています.多くの地域が応募 されることを願っています.
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原子力バックエンド研究 March 2003
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