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バルクナノメタル開発の最前線 ―強ひずみ加工法の紹介―

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Academic year: 2021

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バルクナノメタル開発の最前線

―強ひずみ加工法の紹介―

1. はじめに

 構造用金属材料の高強度化は自動 車・航空機などの軽量化に寄与するた め,省資源・省エネルギーの観点から も重要な課題である.金属材料の強化 手法の中でも結晶粒微細化は,その他

の強化手法である固溶強化や析出強化 に比較して合金元素を不要とし,組成 の制約がないため,幅広い金属材料に 対して適用できるだけでなく,リサイ クル性の点でも有利である.一般の工 業用金属材料の結晶粒径は数十から数 ミクロンなのに対して,バルクナノメ タルは数百から数ナノのオーダの非常 に微細な結晶粒を有しており,まさに

“結晶粒径だらけ”の材料と言える.

2. バルクナノメタルとは

 ナノメタル(またはナノ結晶金属)

はこれまでにも物理蒸着法や電解析出 法などによっても作られてきたが,厚 みや大きさに限界があるため薄膜が中 心であった.バルクナノメタルとは厚 みや大きさが数ミリメートル以上の ディメンションを有し,この作製を可 能にしたのがここで紹介する強ひずみ 加 工(Severe Plastic Deformation:

SPD)法である.メカニカルアロイン グを利用した粉末焼結でも作製は可能 であるが,不純物のコンタミ等の問題 がある.

3. 強ひずみ加工法

  図 1に 示 す の は SPD 法 の 中 で も ECAP(Equal-Channel Angular Pressing)法と呼ばれる特殊な押出し 加工で,ビレットが挿入方向と 90 度 の方向に押し出されるため,経路の コーナ部分で相当ひずみに換算して 1 程度のせん断変形を受ける.加工前後 でビレットの形状変化がないため,原 理的には何回でも加工でき,巨大ひず みを付与することが可能である.材料 によっても異なるが,通常は 8 パス程 度の加工によりナノ結晶化される(図 2).ECAP 法のほかにも圧力を加え ながらねじり変形させる HPT(High Pressure Torsion)法や,板を重ねて くり返し接合圧延する ARB(Aceumu- lative Roll-Bonding)法などがある.

これらの方法で作製されたバルクナノ メタルの強度は加工前に比べて 4 倍程 度まで高くなり,たとえば純アルミニ ウムの場合は低炭素鋼なみの強度を得 ることができる.興味深いことは,一 般に金属材料の強化と延性はトレード

オブの関係になるが,SPD 法により 作製したバルクナノメタルは強化され ても,図 3に示すように延性も比較 的高く保持されていることが最近の研 究で明らかになった(1).高強度かつ高 延性であることはその後の二次加工 や,耐衝撃性にも有利になる.延性が 高い理由は,結晶粒が非常に小さいた め変形の機構が変化したことが考えら れている.そのほかにも ARB 法で作 製したナノ結晶アルミニウムでは加工 すると軟化し,焼きなますと硬化する ことや(2),炭素鋼では低温で脆もろくなる 性質が生じなくなるなどの不思議な現 象が報告されている(3).バルクナノメ タルのこのような特異な性質は材料内 部がまさに結晶粒界や転位など欠陥だ らけであることに起因すると考えられ ている.

4. おわりに

 バルクナノメタルはさまざまな分野 への適用が期待できるが,現在,実用 化が考えられているのはチタンを利用 した医療用インプラント材である(4). またアルミニウム合金や難加工材であ るマグネシウム合金の超塑性加工への 展開が期待できる.先に述べた種々の SPD法は大量生産には不向きであり,

したがって,しばらくは付加価値の高 い分野に限定されると考えられる.し かし一方では,大量生産を目指した SPD 法の連続化への研究も進められ ているが,ここでは紙面の制約から割 愛させていただく.

(原稿受付 2011 年 1 月 19 日)

〔宮本博之 同志社大学〕

●文 献

( 1 )Zhu, Y. T. and Liao X. Z., Nanostructured Metals Retaining ductility Nature Materi- als, 3(2004),351-352.

( 2 )Huang, X., Hansen,N. and Tsuji, N., Hardening by annealing and softening by deformation in nanostructured matals Sci- ence, 312(2006),249-251.

( 3 )Kimura, Y., Inoue, T, Yin, F., et al,Inverse temperature dependence of toughness in an ultrafine grain-structure steel Science, 320(2008),1057-1059.

( 4 )Valiev, R. Z., Semenova, I. P., et al,

Nanostructured SPD processed Titanium for medical implant Materials Science Fo- rum, 584-586(2008),49-54.

図1 ECAP 法の模式図(a)と金型中 央部のせん断変形を受けている純 銅ビレット(b)

φ20mm

(a)

(b)

90°

プレス前

2μm 2μm

8 パス

図 2 ECAP 加工前と 8 パス加工後の純 銅の電子顕微鏡組織

標準化した耐力

延性(%)

0 5 10 15 20

10 20 30 40 50

図 3 種々の強化法による銅,銅合金の 強度と伸びの関係1)図中黒丸が強 ひずみ加工によるナノ結晶材料

212 日本機械学会誌 2011.3 Vol.114No.1108

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