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物損事故データを活用した冬型交通事故等のリスク評価に関する研究

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Academic year: 2021

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物損事故データを活用した冬型交通事故等のリスク評価に関する研究

研究予算:運営費交付金(一般勘定)

研究期間:平 27~平 30

担当チーム:寒地道路研究グループ(寒地交通)

研究担当者:高橋尚人、平澤匡介、高田哲哉、

齊田光

【要旨】

交通安全対策の推進について、政府は「平成 30 年までに交通事故死者数を 2,500 人以下とすることを目指し、

世界一安全な道路交通の実現を図る」旨の目標を掲げており、重要な課題である。そのため交通事故データベー スや分析の充実、指標データの蓄積や分析手法の精査等を行い、評価手法の充実、詳細な要因分析に基づく対策 の推進を図るとともに、対策毎の費用効果分析を行うなどコスト面からの交通安全対策の評価が必要である。本 研究の目的は、物損事故データと民間企業が保有するビッグデータや道路管理者が保有するビッグデータを活用 し、冬期気象条件等を考慮した冬期交通事故リスクの推定手法を開発、および冬期道路維持管理作業等の事故減 少効果と費用効果分析によりコスト面から冬期交通安全対策を評価することである。平成 27 年度は、 GIS (地理 情報システム) によりデジタル道路地図と交通事故データ、道路構造データ、交通量データ、気象データ、冬期 道路管理データをリンクした交通事故分析システムを構築した。また、物損事故データを用いて、人身事故と物 損事故の発生傾向の比較整理や路面状態および気象データと冬期事故の相関分析等を行った。

キーワード:交通安全、事故分析、事故対策、交通事故リスク

1. はじめに

我が国における道路交通事故は、昭和 20 年代後半か ら 40 年代半ばごろまで事故件数、死者数共に著しく増 加した。これは急速なモータリゼーションの進展に、道 路整備、法整備等の体制が十分に整っていなかったため で、人対車両の事故が多かった。そして交通事故の死者 数は、昭和 45 年に 16,765 人の最悪を記録し、この年に 交通安全対策基本法が制定された。これに基づき第1次 交通安全基本計画が策定され、総合的かつ長期的に交通 安全対策を推進することにより、 死者数は急激に減少し、

昭和 54 年に半減するまでに至った。しかしながら、そ の後死者数は増加し続け、平成4年に2回目のピークを 迎えた。そして平成5年以降は、減少傾向にある。事故 件数については昭和 52 年から上昇し続けたが、平成 16 年から減少傾向となった( 図 1、図 2) 。

北海道の交通事故については、都道府県別の交通事故 死者数が、平成 14 年まで 11 年連続全国1位を記録する など、死者数が多い状況が続いたが、平成 14 年以降は 急減した。事故件数は、平成 12 年から減少傾向である。

図 1 交通事故死者数の推移

図 2 交通事故件数の推移

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900

1969(S44)1970(S45) 1971(S46) 1972(S47) 1973(S48)1974(S49) 1975(S50) 1976(S51) 1977(S52)1978(S53) 1979(S54) 1980(S55) 1981(S56) 1982(S57)1983(S58) 1984(S59) 1985(S60) 1986(S61)1987(S62) 1988(S63) 1989(H1) 1990(H2)1991(H3) 1992(H4) 1993(H5) 1994(H6)1995(H7) 1996(H8) 1997(H9) 1998(H10)1999(H11) 2000(H12) 2001(H13) 2002(H14)2003(H15) 2004(H16) 2005(H17) 2006(H18)2007(H19) 2008(H20) 2009(H21) 2010(H22)2011(H23) 2012(H24) 2013(H25) 2014(H26) 数(

人)

889人(1.46人/万人)

16,765人 (1.32人/万人)

482人(0.85人/万人)

8,466人(0.67人/万人)

715人(1.26人/万人)

169人(0.31人/万人)

11,451人(0.90人/万人)

4,113人(0.32人/万人) 573人(1.01人/万人) 北海道

日本全国

0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 800,000 900,000 1,000,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000

1969(S44) 1970(S45)1971(S46) 1972(S47)1973(S48) 1974(S49)1975(S50) 1976(S51)1977(S52) 1978(S53)1979(S54) 1980(S55)1981(S56) 1982(S57)1983(S58) 1984(S59)1985(S60) 1986(S61)1987(S62) 1988(S63) 1989(H1)1990(H2) 1991(H3)1992(H4) 1993(H5)1994(H6) 1995(H7)1996(H8) 1997(H9)1998(H10) 1999(H11)2000(H12) 2001(H13)2002(H14) 2003(H15)2004(H16) 2005(H17)2006(H18) 2007(H19)2008(H20) 2009(H21)2010(H22) 2011(H23)2012(H24) 2013(H25) 2014(H26)

720,880件(56.8件/万人)

30,042件 (52.9件/万人)

30,806 (54.3件/万人)

12,274件 (22.5件/万人) 573,465件 (45.1件/万人) 952,191(74.5件/万人)

北海道 日本全国

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物損事故データを活用した冬型交通事故等のリスク評価に関する研究

また、平成4年度から罰則の適用が始まったスパイク タイヤ規制条例は、粉塵の減少などの道路交通環境を改 善した反面、つるつる路面の発生、それに伴う激しい交 通渋滞などの冬期交通状況を一変させた。それに伴い冬 型事故件数が急増し、冬期交通の安全確保も急務となっ た。

本研究の目的は、物損事故データと民間企業が保有す るビッグデータや道路管理者が保有するビッグデータを 活用し、冬期交通事故等の詳細な要因分析を行い、さら に、冬期気象条件等を考慮した冬期交通事故リスクの推 定手法の開発と冬期道路維持管理作業等の個別対策技術 による事故減少効果と費用効果分析を行い、コスト面か らの冬期交通安全対策を評価することである。

2. 研究実施内容

平成 27 年度は、 GIS (地理情報システム) によりデ ジタル道路地図と交通事故データ、道路構造データ、交 通量データ、気象データ、冬期道路管理データをリンク した交通事故分析システムを構築した。また、物損事故 データを用いて、人身事故と物損事故の発生傾向の比較 整理や路面状態および気象データと冬期事故の相関分析 等を行った。

3. ビックデータ等を活用した冬期事故リスク分析手 法の開発

3.1 交通事故分析システムの整備

交通事故分析システムは平成 22 年度まで ESRI 社の ArcView3.3 ( GIS ソフトウェア)を基本システムとして 整備されていた

1)

が、 ArcView3.3 が Windows XP まで しか対応していないため、 GIS ソフトウェアを変更する 必要が生じた。そこで、Windows 7 以降にも対応する GIS ソフトウェアの ArcGIS10.3 を基本システムとして、

交通事故分析システムを再構築した(図 3 ) 。

図 3 ArcGIS 版の交通事故分析システムの Top 画面

より高度な分析を行うために、以下のデータの更新、

及び、追加することとした。

【データ更新】

・デジタル道路地図データ(H26)

・人身事故データ(H1~H25)

・気象庁観測データ(H1~ H25)

・道路交通センサスデータ(H11,H17,H22)

・道路構造データ(H22)

【新規追加】

・物損事故データ( H25 年度 )

・冬期道路管理データ (H25 年度 )

・すべり抵抗測定データ (H25 年度 )

物損事故データは、人身事故データと比較して、デー タ項目が少なく、コード体系に差異が見られるため、人 身事故データと同様の検索・分析を可能にするため、コ ード体系を修正した。また、物損事故データの事故発位 置情報は住所しかなく、緯度および経度情報が含まれて いないため、事故発位置の住所からジオコーディングに より緯度経度を仮設定し、最も近い道路上へのマップマ ッチングを実施した(表 1) 。マップマッチングの際は、

交通事故データ、 及びデジタル道路地図にある路線名称、

路線番号、現旧新区分、道路種別(高速道路、国道、道 道)を考慮した。その結果、高規格道路・一般国道にお

いて、 82%のデータを道路上の位置にリンクすることが

できた。なお、市町村道は路線番号が無いため、物損事 故データを道路上にマップマッチングできなかったが、

地域毎の集計で分析できるように、住所が示す地域の代 表地点にリンクした。

表 1 道路種別ごとのマップマッチング件数

3.2 物損事故データを活用した冬期事故の分析

北海道の一般国道で発生した人身事故と物損事故につ いて、発生傾向の比較を行った。使用したデータは人身 事故が平成 25 年 1 月~ 12 月の 3,254 件、物損事故デー タが平成 25 年 4 月~12 月、及び、平成 26 年 1 月~ 3 月の 25,431 件である。

月別発生状況を比較すると、人身事故は 7~8 月がピ ークとなっているのに対し、物損事故は 12~ 1 月に多発

物損事故発生

路線の種別 事故件数 緯度経度付与 マップマッチング

高速道路 2,113 件 2,113 件(100%) 937 件( 44%) 高規格道路・

一般国道

25,756 件 25,756 件(100%) 21,193 件( 82%)

道道 21,014 件 21,014 件(100%) 11,270 件( 54%) 市町村道 58,595 件 58,595 件(100%) 0 件( 0%)

(3)

している。夏期冬期の発生比率( 4 月~ 10 月の事故件数

/1 月~ 3 月、 11 月~ 12 月)を比較すると、人身事故の 1.37 に対して、物損事故は 0.85 となり、人身事故は夏 期の方が多く、物損事故は冬期の方が多いことが明らか となった。

図 4 月別人身事故発生件数(平成 25 年)

図 5 月別物損事故発生件数(平成 25 年度)

事故類型別の発生状況は、人身事故で追突がほぼ半数 を占めているが、物損事故は追突事故と車両単独事故が 同程度の割合(3割前後)を占めている。人身事故、物 損事故共に、夏期冬期の発生状況は大差が無かった( 図 6) 。

図 6 事故類型別事故発生状況

気象と事故発生状況を分析するために、気象メッシュ データと事故データをマッチングし、関連性について整 理した。なお、マッチングは、冬期間に発生した人身事 故と物損事故を対象とし、人身事故は、事故発生キロポ ストに道路基準点案内システムを用いて緯度経度に変換 し、最も事故発生位置、事故発生時間に近い気象メッシ ュのデータをリンクし、物損事故は、事故発生住所にア

ドレスマッチングツールを用いて緯度経度に変換し、最 も事故発生位置、事故発生時間に近い気象メッシュのデ ータをリンクした。

人身事故( 146 件)の気温別路面状態別の発生状況を 整理すると、凍結路面での事故が気温-1 ℃~-4 ℃で多く、

全体では 1℃~ 2℃で多い( 図 7) 。物損事故( 2,565 件)

の気温別天候別の発生状況を整理すると、降雪時の事故 が気温-2℃~ -6℃で多く、全体でも -2℃~ -6 ℃が多い(図 8) 。

図 7 気温別路面状態別人身事故発生件数(平成 25 年)

図 8 気温別天候別物損事故発生件数(平成 25 年度)

人身事故の視程別発生状況では、視程が低い状況にお いて発生頻度が少なく、 視程と相関が見られなかった (図 8) 。物損事故では視程が低くなるにつれて増加傾向とな った(図 9) 。特に 2,000m 以下、 600m 以下で急増し、

200m~ 400m 最も多い結果であった。

図 9 視程別路面状態別人身事故発生件数(平成 25 年)

図 10 視程別天候別物損事故発生件数(平成 25 年度)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

冬期 冬期以外 年間 冬期 冬期以外 年間

人身事故 物損事故

車両単独 その他車両相互 右折時 左折時 出合頭 追突 正面衝突 人対車両

構成比

<国道>

0 50 100 150 200 250 300

-15 -13 -11 -9 -7 -5 -3 -1 1 3 5 7 9 11 13 15 気温(℃)

その他 吹雪 曇り 晴れ 0

5 10 15 20 25

-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 気温(℃)

積雪 凍結 湿潤 乾燥

0 2 4 6 8 10

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 2100 2200 2300 2400 25002900 30003400 3500~

視程(m)

積雪 凍結 湿潤 乾燥

<国道>

0 50 100 150 200

0 200 400 600

800

1000120014001600 1800

2000220024002600

28003000320034003600 3800

4000以

視程(m)

その他 吹雪 曇り 晴れ

(4)

物損事故データを活用した冬型交通事故等のリスク評価に関する研究

人身事故データ、物損事故データと路面のすべり抵抗 測定値データをマッチングし、 関連性について分析した。

路面のすべり抵抗値は、寒地土木研究所で所有している 連続すべり抵抗値測定装置で測定した(写真1 )

2)

。本 装置は、走行中に試験輪を車両進行方向に対して1~

2°程度の角度を与えることにより発生する横力を測 定することによって、 連続的にすべり抵抗値を算出する。

得られるすべり抵抗値 HFN は、連続路面すべり抵抗値 測定装置用測定タイヤに基づき独自に設定したすべり抵 抗値であり、通常0~ 100 の範囲で変化する。すべり抵 抗値HFN と測定輪に掛かる横力には 図11に示す関係が あり、測定輪に掛かる横力が低いほど、測定されるすべ り抵抗値 HFN も低くなる。 HFN が 40 以下であればす べりやすい路面状態と言える。

写真1 連続路面すべり抵抗値測定装置

図 11 すべり抵抗値 HFN と横力の関係

すべり抵抗値は札幌市内の一般国道 230 号(キロポス ト 1.0km~45.0km)を毎年 1 月~ 2 月の 2 ヶ月間毎日 走行し、取得したデータである。事故発生日に事故発生 位置に最も近いすべり抵抗値データとマッチングした結 果、人身事故は 22 件、物損事故は 28 件が抽出された。

人身事故はすべり抵抗値 50~ 59 で最も多く、物損事故 はすべり抵抗値 40~ 49 で最も多かった。人身事故と物 損事故は、すべり抵抗値が小さくなるほど、多く発生す る傾向があるが、物損事故はすべり抵抗値が大きい時に も発生するなど、ばらつきが大きく、複数年のデータ整 備によるデータ数の確保が期待される。

図 12 一般国道 230 号(札幌市)におけるすべり抵抗値 と人身事故件数(平成 25 年)

図 13 一般国道 230 号(札幌市)におけるすべり抵抗値 と物損事故件数(平成 25 年度)

4. まとめと今後の課題

平成 27 年度は、 GIS(地理情報システム) によりデ

ジタル道路地図と交通事故データ、道路構造データ、交 通量データ、気象データ、冬期道路管理データをリンク した交通事故分析システムを構築した。また、物損事故 データを用いて、人身事故と物損事故の発生傾向の比較 整理や路面状態および気象データと冬期事故の相関分析 等を行った。

冬期交通事故リスクの分析、評価には冬期間に多発傾 向がある物損事故の分析が重要であることが明らかにな った。 物損事故は人身事故に比べ、 データ項目が少なく、

発生位置が特定できない場合も多いが、データ数は 10 倍ほどの規模であり、有効なデータのみ活用した場合で も人身事故では明らかにできなかった分析が可能になる ことも多いと思われる。

今後は、冬期事故リスクの定義や特定、種々の要因が リスクに与える影響度合いを定量化、冬期道路維持管理 作業等の事故減少効果の評価等を行う予定である。

参考文献

1) 平澤匡介、高田哲哉、浅野基樹:交通事故分析システムの 開発について、 第 47 回北海道開発局技術研究発表会、 2004 2) 舟橋誠、徳永ロベルト、浅野基樹:連続路面すべり抵抗値

測定装置(RT3)の導入について、寒地土木研究所月報第 651 号、 2007

0 20 40 60 80 100 120 140

0 90 180 270 360 450 540 630 720

測定輪に掛かる横力(F)[N]

すべり抵抗値(HFN)

乾燥路面(路面温度-17.8℃)

雪氷路面

90

45

乾燥路面(路面温度0℃)

断続的な路面

60

(5)

A STUDY ON THE RISK ASSESSMENT OF WINTER TYPE TRAFFIC ACCIDENT WITH PROPERTY DAMAGE ACCIDENT DATA

Budged: Grants for operating expense General account

Research Period: FY2015-FY2018

Research Team: Cold Region Road Engineering Research Group (Traffic Engineering Research Team) Author: TAKAHASHI Naoto

HIRASAWA Masayuki TAKADA Tetsuya SAIDA Akira

Abstract:

The promotion of traffic safety measures is an important issue of the Japanese government. Measures to reduce the number of accidents and fatalities have been given the highest priority in road management. Safety improvement on winter roads has arisen as an urgent task. Analysis of until now had been used only injury data. However, property damage accident data is about 10 times, frequently in the winter, it is important to the planning of countermeasures.

This study is making the attribution analysis of the winter traffic accident using property damage accident data, developing a winter traffic accident risk management system, and evaluating a winter traffic safety measure.

Key words: traffic accident, accident analysis, countermeasure, traffic accident risk

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