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4人を対象とした専門家インタビュー

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Academic year: 2021

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(1)

〔論文要旨〕

目 的:①「いのちの教育」の内容を考えるうえで重視していることと,②「いのちの教育」を実施するうえで 工夫・配慮していることを明らかにした。

対象 方法:2014年1月に,「いのちの教育」の実践や研究に関わる研究者4人を対象に専門家インタビューを行っ た。分析は Mayring の手法を参考にした質的内容分析とし,逐語禄を内容ごとにコード化し,順に抽象度を上げ てサブカテゴリー,カテゴリーを生成した。

結 果:目的①について《日常で触れられない,いのちや死に関連した題材を提供する》,《日常で機会が減って いる,心温まるような体験を提供する》の2カテゴリー,目的②について《子どもが怖がらないようにいのちや死 について話す》,《子どもや家族が持ついのちや死の考え方を尊重する》,《専門家と家庭,学校が協力して子どもと 関わる》,《発達段階に応じて長期的に関わる》の4カテゴリーを抽出した。

考 察:「いのちの教育」では,①いのちや死に触れることや,感情が動く経験が日常において少ないと考え,

これらを提供することが効果的であると示唆された。また②専門家と学校,家庭が協力し合いながら長期的に子ど もたちに関わっていくことが重要である一方,いのちや死について話すうえでは配慮すべき事項があることも示唆 された。

結 論:本研究では4人の専門家の語りをとおして,「いのちの教育」の内容とその実践についての工夫を記述し,

統合することができた。

Key words:小児,教育, 教育,専門家 ,内容分析

“How Do I Get There?”The Qualitative Study about the Contents and Implementation of

“Life and Death Education”Conducted for Children:Expert Interview Satoshi kibi,Mari ikeda,Kiyoko kamibeppu

1)東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻家族看護学分野(研究職 / 大学院生)

2)東京女子医科大学看護学部看護管理学(研究職)

3)東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻家族看護学分野(研究職)

Ⅰ.目   的

子どもにいのちの大切さを教える必要性がさまざま な分野で言及されている。文部科学省からは2000年の 教育白書で,「各学校へのお願い」として子どもたち に「命の大切さ」をしっかりと教える時間を持ち,自 他の生命を尊重することについて指導するよう通達が 出された1)。また2005年の中央教育審議会教育課程部 会では,性教育・食育についての議題の中で,2014年

の中央教育審議会学校安全部会では安全教育におい て,さらに2015年のがん教育のあり方に関する委員会 の報告ではがん教育において,命の大切さを教えるこ とが重要であるといわれてきた2~4)。ここでいのちの 大切さを教える必要性は,少年非行や暴力,いじめ,

自殺などの問題,望まない妊娠や性感染症など性の問 題,あるいは疾患や事故の予防といった課題への対応 策の一つとして扱われていた。

いのちの大切さを教えるための教育は,「いのちの

〔3103〕

受付 19. 1.15 採用 19.11.30

吉備 智史1),池田 真理2),上別府圭子3)

子どもに対する「いのちの教育」の内容と その実践に関する専門家インタビューの質的分析

(2)

教育」と呼ばれてさまざまに実践されてきた。筆者ら は2013年に,「いのちの教育」の実践に関連した研究 を概観することを目的に文献検討を行った5)。その結 果,性教育や BLS(一次救命処置)教育などさまざ まな教育をとおして,教員や医療者が主体となって「い のちの教育」が実施されており,性や救命に関する知 識を得る,自尊感情を育む,悲嘆・喪失に対処できる ようになるなど個々の目的に加えて,いのちの大切さ を教えるということが共通して挙げられていることが 明らかになった。その後も,性教育や BLS,学校道 徳教育,食育,がん教育などさまざまな題材を用いた

「いのちの教育」の実践が報告されている6~10) 教育工学において,効果的な教育を設計するうえで は,学習者が教育の目標(Where am I going?)・評 価(How do I know when I get there?)・方法(How do I get there?)の3つを理解できるようにする必要 があるとされる11)。「いのちの教育」に関して,その 目標(Where am I going?)については,各通知や先 行研究,われわれが行った文献検討からも,介入方法 等に依らず共通して子どもたちがいのちの大切さを知 ること,そしてそれをとおして,さまざまな社会問 題等に対処できるようになることを目標としている ことが明らかになった。一方で,方法(How do I get there?)については,「いのちの教育」として実践さ れていることをとおして,どのように子どもたちがい のちの大切さを学び,そして種々の社会問題に対処し 得るのかということは明らかになっていない。

よって本研究では,「いのちの教育」に関わる実践 者あるいは研究者にインタビューを行い,子どもがそ の目標に到達できるようどのようにして「いのちの教 育」を行っているのかを明らかにすることを目的とし た。

Ⅱ.対象と方法

.研究デザイン

専門家インタビューとその内容分析による質的記述 的研究。

.対象者

対象者は先行研究5)も参考に,「いのちの教育」に関 する研究論文や特集の著者から選定した。さまざまな 題材が用いられる「いのちの教育」について,その実 施における普遍的な思いや個々の工夫を描くため,互

いの専門領域が重複しないよう配慮して,研究者4人 を選定した。

.データ収集

本研究は,先に述べた文献検討に続けて行った5) 2014年1月に,対象者に対して個別にインタビューを 行った。半構造化面接とし,文献検討5)の枠組みを提 示しながら対象者が思う「いのちの教育」がどのよう なものであるかを語ってもらった。なお文献検討にお ける枠組みは「いのちの教育」の《呼称》,「いのちの 教育」の介入が必要となる《背景》,「いのちの教育」

を実施する《目的》,《実施場所》,《実施者職種》,《実 施対象》,《内容・方法》であった。その中で,①「い のちの教育」の内容を考えるうえで重視していること,

②「いのちの教育」を実施するうえで工夫・配慮して いることに焦点を当てることで,「いのちの教育」の 方法(How do I get there?)に関する語りを引き出 した。インタビューは第一・第二著者が実施した。イ ンタビューは対象者の同意を得て録音し,逐語録を作 成した。

.分 析

Mayring の手法を参考に質的内容分析を行った12,13)

①「いのちの教育」の内容を考えるうえで重視してい ること,②「いのちの教育」を実施するうえで工夫・

配慮していること,の2つをそれぞれ軸として逐語禄 より語りを抽出し,コード化を行った。コードを意味 内容により集約してサブカテゴリーを生成し,さらに 抽象度を上げカテゴリーを生成した。分析は全行程に おいて,10年以上質的研究の実践・教育に携わる研究 者のスーパービジョンを受けて行った。

.倫理的配慮

本研究では,事前に対象者に文書と口頭で研究説明 を行ったうえで同意を得てインタビューを実施した。

自由にインタビューを中断できることや回答したくな い質問には回答しなくてよいことを伝え,また対象者 の負担とならないよう対象者の希望する日時・場所で

時間程度を予定して実施した。データ等の管理に関 して,同意書は鍵のかかるロッカーに保管した。また 逐語録を含め,得られた個人情報は匿名化し,電子情 報としてスタンドアローンの PC に保管・管理した。

本研究実施に際して東京大学大学院医学系研究科・医

(3)

学部倫理委員会の承認(No.10357)を受けた。

Ⅲ.結   果

対象者4人全員から同意を得てインタビューを実施 した。所要時間は56~74分,対象者詳細は表1に示し た(それぞれ A ~ D の ID を付した)。4人いずれも 大学教員(D は退職後)であり,A のみ男性であった。

A と C は学校など集団に対して介入をしていたのに 対し,B は親子の関わりをとおした「いのちの教育」

について研究しており,D は絵本をとおした関わりに ついて研究していた。

以下にカテゴリー生成の結果を示した。4人のイン タビュー逐語録から,①「いのちの教育」の内容を考 えるうえで重視していること,②「いのちの教育」を 実施するうえで工夫・配慮していることに関連した 172の語りを抽出し,91のコードに集約した。詳細は 表2に示し,[ ]内にはどの対象者の語りに基づい たサブカテゴリーであるかを示した。本文中では,カ テゴリーを《 》で,サブカテゴリーを〈 〉で示し,

インタビューデータの抜粋は“ [ ]”で示した(( ) は著者の補足)。

1.  いのちの教育 の内容を考えるうえで重視している こと

36のコードから11のサブカテゴリーが見出され,2 つのカテゴリーに集約された。

ⅰ. 《日常で触れられない,いのちや死に関連した題材を 提供する》

“昔は家庭の中で出産もあったんですよ。それとか犬猫 がお産したりとかね。そういういのちに触れる場面って けっこうあったので。[C]” のように,人が生まれるあ るいは亡くなるといったことを身近な出来事として体 験する機会が,大家族や近所付き合いの中で豊富に あった頃に比べて減っているということが〈家庭・住 環境のために,子どもがいのちや死に触れられない〉

として語られた。そのために「いのちの教育」の中で は〈いのちに直結したメッセージを伝えている〉,〈絵 本やアニメを用いて,いのちや死のことを伝えている〉

ということが語られた。インタビューでは,“ 性教育 も基本的にはいのちの教育に含まれると思うんですよ。

だから,そこだけを取り出して性教育というふうに思っ てる人が割と多いと思うんだけど,男と女の話とか,セッ クスをするときどうするこうするとかいう話だけを。で

もそれだけじゃないような気がするので。[C]” のよう に述べながら,“生まれるところからのこの,産声ですよ。

もうハラハラハラハラしながら大丈夫かなぁと思って,

赤ちゃんが生まれてきてぎゃーって泣いた途端にすーっ とホッと安心するっていう。新しいいのちがこの世に誕 生するという,まぁそういった話をとっても大事にして るので。[C]” と必要な知識を教えるだけでなく〈い のちに直結したメッセージを伝えている〉ことを強調 していた。

ⅱ. 《日常で機会が減っている,心温まるような体験を提 供する》

ここでも家庭・住環境について“一緒にテレビ見て 一緒に笑って一緒に泣いて一緒に緊張してみたいなこと が今はね,ほんとになくなってきてるのかなって思うの。

[A]” など〈テレビや食事など家族で一緒に過ごすよ うな時間が減っている〉,“片親だったりとか,あの共働 きだったりされるので,その中では子どもとじっくり話 をする時間とかっていうのは取りづらいのかなって。[B]”

のような〈核家族や共働きといった環境のために,子 どもとの関わりが減っている〉といった実感があり,

〈今の子どもが情緒的に関わってもらえていないと感 じられる〉ということが語られた。そこから,「いの ちの教育」を実施するときに,単にいのちや死に関連 した題材を提供するだけでなく,〈一緒に体験や感情 を共有する場を提供する〉,〈子ども同士で関わり合う 場をつくる〉などが実施されていた。またインタビュー では“何人かの女の子なんか,もう号泣に近い感じで感 情が動いて,それにつられて周りの子たちも気持ちが揺 れるでしょ。その体験がまさに共有体験だと思うんだけ ど。[A]” のように,実際の介入の中でも〈感動して 涙するような体験を提供している〉ということが語ら れた。また“自分に向かって,「あなたは大事」って言わ れることが大切だと思うんですね。子どもたち一人ひと りに,もうほんとに大事な存在なんだよっていうメッセー ジ。[C]” のように〈「あなたは大事な存在だ」と伝え る〉ことも,子どもたちに必要な情緒的な関わりとし て語られた。

 対象者属性

ID 性別 専門領域 集団への実践経験

A 男性 教育・心理 あり

B 女性 精神看護 なし

C 女性 母性看護 あり

D 女性 小児保健 あり

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. いのちの教育 を実施するうえで工夫・配慮してい ること

55のコードから18のサブカテゴリーが見出され,

つのカテゴリーに集約された。

ⅰ. 《子どもが怖がらないようにいのちや死について話す》

題材としていのちや死に関連したものを扱う際に,

“寝たきりの方の命とか,がんになってとか,まぁそうい うイメージがすごくあるかなっていう。[C]” など〈題 材に否定的な印象がある〉ことから,子どもが怖がる ことなどを恐れて〈親が,子どもにいのちや死のこと を話すことを難しいと感じている〉ということや,学 校などで介入を実施する際も〈受け入れられやすいよ うに,「死」と言わずに「いのち」という言葉を用いた〉

というような配慮をしていたことが語られた。

ⅱ.《子どもや家族が持ついのちや死の考え方を尊重する》

“だってそれは,その人の人生じゃないですか。だか ら,こちらが考えさせる,ほんとに「させる」なんです けど,押しつけてすることなのかなぁって。[B]”といっ たように,特定の死生観を良しとするわけではない という考えから,〈価値観の押しつけにならないよう 注意する必要がある〉ということも語られた。“やっ ぱり一緒に考えるものだと思うし,一緒に悩めばいいの かなっていうふうにお母さんたちはおっしゃってました ね。[B]” のように,親子の関わりを研究してきた経 験から,親の考えを尊重することの重要性を感じて いた。

 ①「いのちの教育」の内容を考えるうえで重視していること,②「いのちの教育」を実施するうえで工夫・配慮 していることに関する内容分析

軸 カテゴリー サブカテゴリー

①内容を考えるうえで重視していること

日常で触れられない,いのちや死に関連し

た題材を提供する 家庭・住環境のために,子どもがいのちや死に触れられない [B, C, D]

自分のいのちがまず大切だと思えるよう関わる [A, C]

いのちに直結したメッセージを伝えている [C]

絵本やアニメを用いて,いのちや死のことを伝えている [C, D]

日常で機会が減っている,心温まるような

体験を提供する テレビや食事など家族で一緒に過ごすような時間が減っている [A]

核家族や共働きといった環境のために,子どもとの関わりが減っている [B]

今の子どもが,情緒的に関わってもらえていないと感じられる [C, D]

一緒に体験や感情を共有する場を提供する [A]

子ども同士で関わり合う場をつくる [A]

感動して涙するような体験を提供している [A, C, D]

「あなたは大事な存在だ」と伝える [C]

②実施するうえで工夫・配慮していること

子どもが怖がらないようにいのちや死につ

いて話す 題材に否定的な印象がある [A, B, C, D]

親が,子どもにいのちや死のことを話すことを難しいと感じている [B]

受け入れられやすいように,「死」と言わずに「いのち」という言葉を用いた [B, D]

子どもや家族が持ついのちや死の考え方を

尊重する 価値観の押しつけにならないよう注意する必要がある [B, D]

専門家と家庭,学校が協力して子どもと関

わる 学校,家庭,専門家それぞれに違った役割がある [A, B, C]

家庭や学校で教えられないことを,専門家が代わって担っている [A, C]

教育機関が協力的であれば専門家による介入が始めやすい [A, B, C, D]

教師が子どもとより良い関わり方ができるよう専門家として助言をしている[A, C, D]

教師・専門家が親子の関わりを促すことが重要である [B, C, D]

時間の制約のために,専門家が介入できる量に限りがある [C]

時間の制約や内容の専門性のために,教師が伝えられることに限りがある [A, B, C]

子どもの教育に関して家庭への期待が大きく,家庭の負担が生じている [A, B]

発達段階に応じて長期的に関わる 成長に応じて適切な関わりが必要である [A, C, D]

幼少期の関わりが重要である [D]

先入観なく理解できる学童期の介入が重要である [C, D]

あらゆる年代・状況においていのちの教育が必要である [C, D]

いのちの教育の効果は長い時間をかけて現れるものである [B, D]

何回も繰り返し教育をする必要がある [C]

分析は Mayring の内容分析の手法を参考に実施した。

[ ]内にはサブカテゴリーにコードが含まれる対象者を記載した。

(5)

ⅲ. 《専門家と家庭,学校が協力して子どもと関わる》

「いのちの教育」の目的を達成しようとしたとき に,“学校の先生たちはやっぱり家庭の問題でしょとは,

僕たちの範疇じゃないよねって。[A]” など,〈子ども の教育に関して家庭への期待が大きく,家庭の負担 が生じている〉ことや,“たぶん学校の先生たちもすご く……カリキュラムにないことをされていて負担だと思 うんですよ。[B]” のように〈時間の制約や内容の専 門性のために,教師が伝えられることに限りがある〉

ということ,また〈時間の制約のために,専門家が 介入できる量に限りがある〉といった限界があるこ とが語られた。そのために“赤ちゃんを抱っこしたこ ともないまま大人になっちゃうから,私たち専門家が赤 ちゃん人形連れて行って抱っこさせて,それで赤ちゃん てこんな感じなんだって話するってのはしょうがないか なって思う。[C]” のように〈家庭や学校で教えられ ないことを,専門家が代わって担っている〉のだと 話されていた。一方で〈学校,家庭,専門家それぞ れに違った役割がある〉ことも認識しており,“よく 幼稚園保育所のお母さんたちに言ったのは,学校行った らやめたじゃなくて,絵本はずぅっと付き合って,2年 生でも3年生でも,あの,読んであげた方がいいってずっ と言ってきたんですよ。[D]” のように〈教師・専門 家が親子の関わりを促すことが重要である〉という ことや,“それ(教師への講演)もたくさんやっていて,

これがいのちの教育になってるんだ,これが共有体験で,

これがとても子どもにとっては大切なんだって思いで,

授業をやってくれれば。ふつうの算数の授業でも,社会 の授業でも,音楽でも技術家庭でもなんでも。[A]” の ように〈教師が子どもとより良い関わり方ができる よう専門家として助言をしている〉といったことも 語られた。

ⅳ.《発達段階に応じて長期的に関わる》

“小学生はいいですよ,小学校5年とか6年は。もう 真っ白いキャンパスだから。すぅーっとなんでも理解し てくれて。変にニタニタ笑ったりとかせず,真剣。真剣 に聞いてくれる。[C]” のように〈先入観なく理解でき る学童期の介入が重要である〉ということや,“4年 生から6年生,別れの体験,死の体験がわかる頃が一つ のこう,ピークって言うかね,そこでこう重要な,こう,

ターニングポイントがあるのかなって気がしてますけど ね。[A]”,“年長ぐらいになると明らかに違ってますよね,

やっぱりほんとに涙する子だとか。まぁいろんなことと

関連づけられるようになるんですかね。[D]”のように〈成 長に応じて適切な関わりが必要である〉といったこと が語られた。さらに,“やっぱり生涯教育。幼児期もで すけど,学童期,それから思春期……とか一生をとおして,

いろんな年代で生きること死ぬことの意味みたいなもの,

実は必要なんじゃないかっていうのがありましてね。[D]”

のように〈あらゆる年代・状況においていのちの教育 が必要である〉ということも語られた。また,“(いの ちの教育をした)直後は効果あるの当たり前だからある 程度。だからそれではなく,

�月後も残っているかど うか,すぐに戻るかもしれないので。やっぱりそういう 刺激を,ほんとは時々ね,出してあげた方がいいと思う ので。[C]” のように,介入の効果が持続しなかった 経験から,〈何回も繰り返し教育をする必要がある〉

ということが語られた。

Ⅳ.考   察

本研究では,

4人を対象とした専門家インタビュー

をとおして,①「いのちの教育」の内容を考えるう えで重視していること,②「いのちの教育」を実施 するうえで工夫・配慮していることを明らかにした。

本研究の対象者であった4人の専門家らは,「いのち の教育」の内容を考えるうえで重視していることに 対して,「いのちの教育」において《日常で触れられ ない,いのちや死に関連した題材を提供》し,《日常 で機会が減っている,心温まるような体験を提供》

することを挙げた。また「いのちの教育」を実施す るうえで工夫・配慮していることについては,《子ど もが怖がらないようにいのちや死について話す》,《子 どもや家族が持ついのちや死の考え方を尊重する》,

《専門家と家庭,学校が協力して子どもと関わる》,《発 達段階に応じて長期的に関わる》必要があると考え ていることがわかった。各カテゴリーについて考察 する。

1.  いのちの教育 の内容を考えるうえで重視している こと

ⅰ. 《日常で触れられない,いのちや死に関連した題材を 提供する》

このことは先行研究においても,疾患教育や性教 育,救命処置教育などいのちや死に関わる題材を用 いていることは明らかであった。いのちの大切さは,

実際にいのちや死に触れることで学ぶことができる

(6)

とする考え方がうかがえる。一方このインタビュー において特徴的であったことは,〈家庭・住環境のた めに,子どもがいのちや死に触れられない〉という ことを引き合いに出して,「いのちの教育」としてい のちに触れる機会を提供する必要性を説いていた点 であった。確かにここ数十年では,施設での出産・

看取りが増えた14)。そのため生死に関わる出来事が非 日常となっている可能性はある。

きょうだいの出産への立ち会いに関するレビューで は,立ち会い経験をした子どもはより愛情深くなり,

攻撃的な行動が少ないことが示唆されている15)。こう した体験の機会が減っているとすると,「いのちの教 育」としてこれに代わる取り組みを提供し,いのちの 大切さを伝えることで子どもたちの行動にも変化を及 ぼすことができれば,「いのちの教育」の目的に適っ ているといえる。

死に関連した題材を提供することについては,その 着眼点が対象者により違った。D 氏は実際の死に代 わって絵本などで死や看取りについて触れることに言 及した。一方で B 氏は実際に死別を経験した子どもと 家族がその出来事に関する話題を日常で扱うことに着 目していた。死を題材にした介入は Death education と呼ばれて海外でも多く実施されている16,17)。しかし

「いのちの教育」でいういのちの大切さを伝えること とは異なっており,死を題材にすることで伝えるいの ちの大切さについては更なる検討と実践の評価が必要 と考える。

ⅱ. 《日常で機会が減っている,心温まるような体験を提 供する》

このカテゴリーは,先行研究のレビューでは明確に 表れておらず,本研究に特徴的な結果であるといえる。

インタビューでは〈核家族や共働きといった環境のた めに,子どもとの関わりが減っている〉,〈今の子ども が情緒的に関わってもらえていないと感じられる〉と いったことが引き合いに出されて,このカテゴリーの 重要性が語られた。エリクソンによれば,乳幼児期の 子どもは養育者との関わりから,学童期には教師や子 ども同士の関わりから発達過程における危機を乗り越 えてゆくとされる18)。また子どもにとって友人との関 わりは社会的・情緒的な発達に影響する19)。したがっ て,「いのちの教育」によって子どもたちが友人や教 師などと心の交流を持つことで子どもたちの心理的発 達を促し,ひいては種々の社会問題に対処することが

できると考えられる。

「いのちの教育」の内容を考えるうえで重視してい ることについて小括すると,軸となるテーマはいのち や死に関連した題材であり,これをとおしていのちの 大切さを伝えることが「いのちの教育」であるが,最 終的な目標である種々の社会問題に対処することに向 けて,《日常で触れられない,いのちや死に関連した 題材を提供する》だけにとどまらず,心理的発達にお けるサポートとして,《日常で機会が減っている,心 温まるような体験を提供する》ことによる情緒的な関 わりを同時に行うことが効果的であると示唆された。

一方で,死を題材にした介入がどのように「いのちの 教育」の目的を達成し得るかについてはさらなる検討 が必要と考えられる。

. いのちの教育 を実施するうえで工夫・配慮してい ること

ⅰ.《子どもが怖がらないようにいのちや死について話す》

出産に立ち会ったきょうだいのレビューでは,先述 したポジティブな影響だけでなく,出産というリアル な体験に伴って恐怖や不安などのネガティブな反応が みられたことも同時に報告されていた15)。ネガティブ な反応の多くは母親の血や,痛みを訴える様子を見る ことによる不安であり,後に振り返る時間を設けて子 どもの理解を確認したり,不安の表出を促したりする ことが有効であると考察されていた15)。「いのちの教 育」として実施する場合も,状況は出産立ち会いの先 行研究とは異なるが,振り返りの時間を設けることが 有用である可能性がある。

また死を題材にした場合も,死に対するタブー視 21),死を忌避する反応が考えられる。また先行研究 では,死を表現する際に「眠っている」とか「おう ちに帰った」のような婉曲表現を使うことで子ども が寝ることを怖がるなどの反応がみられたと報告し ている21)。このように「いのちの教育」の中で死を題 材にする際にも,表現方法などへの配慮が必要であ ると考えられる。

ⅱ. 《子どもや家族が持ついのちや死の考え方を尊重する》

数少ない語りではあったが,子どもたち自身が持つ 死生観を尊重し,いのちとは・死とはということを押 し付けないという研究者としての考え方が表れてい た。「いのちの教育」として子どもに介入する際には,

子どもたち自身が考えを共有したり,自分の考えを深

(7)

めたりできることが重要であると考えられる。

ⅲ. 《専門家と家庭,学校が協力して子どもと関わる》

本研究の対象者たちは,時間的制約などから専門家 として関わることができる限界を感じながら,家庭や 学校が関わることができる内容や時間にも限りがある ことを指摘していた。そのため,それぞれが担うこと ができる役割を行い,互いに補い合うことが重要であ ると述べていた。例えばいじめ予防の先行研究では,

個人やクラスレベルにとどまらず,学校全体のレベル や家庭レベルでの介入を同時に行うことが効果的であ ることが示されている22,23)。「いのちの教育」におい ても家庭や学校レベルの適切な介入を促すことで,専 門家がクラスレベルや個人レベルで行う介入がより効 果的なものになることが示唆される。

ⅳ.《発達段階に応じて長期的に関わる》

対象者らは,「いのちの教育」の内容を理解できる 適切な年齢があることを感じており,〈成長に応じて 適切な関わりが必要である〉ことが強調されていた。

興味深いことに,同じように死の体験や死を題材にし た介入を想定していながら,異なる年齢層が挙げられ ていた。D 氏は生涯教育という言葉を挙げていたが,

あらゆる発達段階において「いのちの教育」が目的と する変化がもたらされることが望ましいと考えられて いることがうかがえる。

また,一般に学習内容の定着には長期的な介入が必 要であるため,長期的に関わることが教育的介入にお いて重要と考えられることは自然である。この際に,

専門家の介入に限らず日常で子どもたちを支えるため に《専門家と家庭,学校が協力して子どもと関わる》

ことも,一義には長期的に関わるという目標を達成す るために不可欠であるといえる。

「いのちの教育」を実施するうえで工夫・配慮して いることについて小括すると,介入を効果的なものに するためには《専門家と家庭,学校が協力して子ども と関わる》ことで,子どもたちが日常の多くの場面で

「いのちの教育」に触れることができる環境をつくる ことが重要であると考えられていることがわかる。こ のことがひいては,《発達段階に応じて長期的に関わ る》こと,またいのちや死が持つネガティブなイメー ジに対して,教師や家族も関わって《子どもが怖がら ないようにいのちや死について話す》ことや《子ども や家族が持ついのちや死の考え方を尊重する》ことを 可能にすると考えられる。

Ⅴ.研究の限界

本研究の対象者は4人であり,多くの専門家がいる 中のごく限られた集団であったといえる。そのため実 施内容を考えるうえで重視していることに関しては,

多くの実践を代表するとはいえないかもしれない。一 方で実施する際に工夫・配慮していることについては,

研究として「いのちの教育」に関わっている複数の分 野の研究者から語りを得たことで,家庭や学校の状況 を含む俯瞰的な見解が得られたと考えられる。

また本研究では,「いのちの大切さ」というものを 一様に捉えて調査・分析を行ったが,例えば性教育や 食育といった分野の違いによって,「いのちの大切さ」

の概念も異なる可能性がある。実践の際には,本研究 の結果に加えてそれぞれの分野に特有の配慮が必要か もしれない。

Ⅵ.結   論

本研究では専門家インタビューを行い,「いのちの 教育」の方法論について検討した。「いのちの教育」

では,日常で接する機会が減っているいのちを題材に,

情緒的な関わりも提供することで,子どもたちの心の 発達を促そうとしている様子がうかがえた。また「い のちの教育」においても長期的に,また家庭や地域を 巻き込んで包括的に介入を行うことが重要であると考 えられていた。一方で死を題材にした介入は,「いの ちの教育」の目的を達成するうえではさらに検討が必 要と考えられる。死別や災害など死に関わるつらい経 験は PTSD 等の精神症状を引き起こし得るが,一方 で Post-traumatic Growth (PTG:心的外傷後成長)

と呼んで,死別などの体験をとおした成長についても 報告されている24)。近藤は「いのちの教育」と PTG の概念を関連づけており25),いのちについて考える機 会をつくることで,家庭や日常のつらい体験から成長 を見出す力を身につけることにつながれば,それもま た「いのちの教育」であるといえるだろう。

本研究の一部を日本家族看護学会第23回学術集会「吉 備智史,池田真理,上別府圭子.子どもへのいのちの 教育の現状と今後の展望―専門家インタビューからの 示唆―.第23回日本家族看護学会学術集会 O-21.山 形 .8.2016.」で発表した。

利益相反に関する開示事項はありません。

(8)

文   献

1) 文部科学省.“教育白書 平成12年度 我が国の文教施策

[第2部第2章第2節1]”http://www.mext.go.jp/b_

menu/hakusho/html/hpad200001/hpad200001_2_166.

html(参照2018.9.13)

2) 文部科学省.“中央教育審議会 教育課程部会 健やか な体を育む教育の在り方に関する専門部会(第5回)”

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/

chukyo3/022/siryo/1265575.htm (参照2018.9.13)

3) 文 部 科 学 省.“ 中 央 教 育 審 議 会 ス ポ ー ツ・ 青 少 年 分 科 会 学 校 安 全 部 会( 平 成26年 度 )「 審 議 の ま と め 」 に つ い て ”http://www.mext.go.jp/

component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/

afieldfile/2014/11/19/1353563_02_3_1.pdf (参照2018.9.13)

4) 文部科学省.“がん教育のあり方に関する検討会 

「学校におけるがん教育のあり方について(報告)」”

http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/__

icsFiles/afieldfile/2016/04/22/1369993_1_1.pdf (参照2018.9.13)

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(参照2018.9.13)

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〔Summary〕

Purpose:According to Robert F.Mager (1997),the question “How do I get there?” is crucial in educational settings.We need to ascertain how education meets its objectives.Therefore,the aims of this study were two- fold:describe the key points for deciding the contents of Inochi-no-Kyoiku (Life and Death Education);and investigate the consideration required when conducting Inochi-no-Kyoiku.

Methods:We administered semi-structured interviews to four experts of Inochi-no-Kyoiku.The interviews were recorded,and the transcripts were analyzed following Mayring’s theory of content analysis.

The pieces of transcripts were named using coding processes,divided into sub-categories,and sorted by categories.

Results:We derived two categories that are relevant for our first purpose:(1) “Providing the contents concerning life or death,which are unfamiliar for the

children”;and (2) “Providing the heart-warming experiences,which is less likely to occur in child’s daily life.” For our second purpose,we derived four relevant categories:(1) “Talking about life or death paying attention not to scare the children”;(2) “Respecting children’s and their families’views on life and death”(3)

“Cooperating between experts,school personnel,and families”;and (4) “Approaching longitudinally along child’s development.”

Discussion:Our results indicate that it is necessary to provide contents related to life or death as well as emotional experiences because children are unlikely to be familiar with them in their daily lives.The results also suggest that fostering cooperation between experts,

school staff,and families is the most effective way to conduct Inochi-no-Kyoiku,even though caution is needed when talking about life or death.

Conclusion:This study provided the tips for answering the question “How do I get there?” in the context of Inochi-no-Kyoiku.It revealed what is important for the contents of Inochi-no-Kyoiku and what is experts’considerations and strategies in conducting Inochi-no-Kyoiku.

〔Key words〕

child,education,life and death education,

expert interview,content analysis

参照

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