• 検索結果がありません。

分離と化学反応を組み合わせた定量方法の開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "分離と化学反応を組み合わせた定量方法の開発"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

1

NMIJ 研究トピックス No. 2 (2017/01/17)

分離と化学反応を組み合わせた定量方法の開発

一般的な機器分析では、測定対象物質毎に標準物質を準備して、これを用いて測定対象 物質毎に機器を校正する必要がありますが、これには多くのコストが必要です。筆者ら は、ガスクロマトグラフに導入した試料をカラムで分離した後に 2 つの化学反応を利用 して試料をすべてメタンに変換するシステムを開発し、1 つの標準物質で多種成分を定 量できることを実証しました。この方法は測定対象物質と同じ標準物質を準備する必要 がないので、校正・定量に係るコストをより小さくすることができます。

私たちの身の回りでは、さまざまな物質 が使用されています。これらの物質を取り 扱う上で、物性等さまざまな情報が必須の ものとなっています。物質の質、量、状態 に関する情報である「濃度値」は、重要な 情報の一つです。人間活動におけるさまざ まな場面において、測定を行うことによっ てこの情報が分析値として得られていま す。近年では、この分析値の信頼性の確保 がますます重要となっています。国際商取 引や各国の法規制への対応、環境問題のグ ローバル化に伴い、得られた分析値が国際 的な整合性を有することを求められてい ます。そのためには、適切な精度管理を行 うことが必要で、この時に用いられる標準 物質の特性値(濃度値)が精確に値付けさ れていることが前提となっています。精確 性を担保する要素の一つは、国際単位系 (SI)へのトレーサビリティを有することで す。

SI トレーサブルな分析値を得るには、SI トレーサブルな標準物質を用いて校正さ れた分析機器で測定を行うことが必要で す。多くの種類が存在する有機化合物の分 析において一般的に用いられる分析機器 の検出器は、被検試料中の測定対象物質毎 に検出感度が異なっています。そのため、

図 1(A)に示すように、測定対象物質毎に標

準物質を準備して、これを用いて測定対 象物質毎に分析機器を校正する、すなわ ち検量線を作成することが必要です。い くつかの標準物質は、認証標準物質(た とえば、NMIJ CRM)や計量法トレーサ ビリティ制度(JCSS)によって供給されて いますが、十分な数、種類のものが供給 されているわけではありません。SI トレ ーサブルな標準物質を準備するためには 多くの時間やコストが必要であり、物質 によっては入手ができない等の問題もあ ります。

筆者らはこのような問題を解決するた め、図 2 に示すように有機化合物の分析 で汎用的に用いられている水素炎イオン 化検出器付きガスクロマトグラフ(GC-FI

ガスクロマトグラフ

C

x

H

y

O

z

xCO

2

xCO

2

xCH

4

酸化反応部 還元反応部

水素炎イオン化 検出器(FID)

炭素数に比例 した応答

ポストカラム反応部

A B C

A B C

国際単位系 (SI)

標準物質

α

被検試料

Z

Z

・・・

・・・ A B C ・・・ Z

炭素数の比較によるトレーサビリティ 物質の連鎖によるトレーサビリティ

国際単位系 (SI)

(A) (B)

渡邉 卓朗

わたなべ たくろう [email protected] 産業技術総合研究所 計量標準総合センター 物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ 主任研究員

1999 年 3 月に千葉大学大学院 自然科学研究科博士前期課程 を修了、2010 年 3 月に群馬大 学大学院工学研究科博士後期 課程を修了し、博士(工学)

を取得。1999 年 4 月に通商産 業省工業技術院物質工学工業 技術研究所入所。2001 年組織 再編により独立行政法人産業 技術総合研究所研究員、その 後主任研究員、産業技術企画 調査員を経て、2015 年 11 月 より現職。揮発性有機化合物 標準物質の開発・供給・維持・

管理に関係する研究に従事し ている。

図 1 従来のトレーサビリティ体系図(A)とポストカラム反応 GC-FID 法によるトレー サビリティ体系図(B)

図 2 ポストカラム反応 GC-FID システ

ムの概要

(2)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

2

NMIJ 研究トピックス No. 2 (2017/01/17)

D)と 2 つの化学反応を組み合わせたポストカラム反応 GC-FID システムと、これを用いた定量方法を開発しました。

このシステムでは、導入した試料をガスクロマトグラフで 分離した後、一旦完全に試料を酸化して CO

2

とし、次に還 元反応によって CO

2

をメタンに変換して検出します。その ため、検出器は炭素数に正確に比例した応答を示します。

したがって、同じ物質同士の比較ではなく、炭素数の比較 によって値付けすることが可能であり、測定対象物質と同 じ標準物質を準備する必要がなくなります。図 1(B)に示す ように、炭素数の比較によってトレーサビリティを確保し ます。

従来の検量線の作成では、図 3 に示すように、測定対象 物質毎に標準物質を準備して、それぞれの検量線を作成す る必要があり、検量線作成に係るコストは大きくなります。

ポストカラム反応 GC-FID システムでは、測定対象物質及 び標準物質共に炭素 1 原子あたりの検出器に対する感度は 同じであるので、測定対象物質毎に標準物質を準備する必 要はなく、測定対象物質毎に検量線を作成する必要もあり ません。例えば、メタン換算濃度の異なる 3 成分以上を混 合した標準物質を 1 種類測定するだけで、検量線を作成す ることができますので、従来法と比べますと検量線作成に 係るコストを小さくすることができます。実験例の一つと して、ポストカラム反応 GC-FID システムを用いて複雑な 混合物への値付けを行いました。測定対象試料として炭化 水素 58 成分混合ガスを、標準物質(標準ガス)としてメタ ン、プロパン、ベンゼン、エチルベンゼン、 o -キシレンの 5 成分を含んだ混合ガスを用いました。複雑な混合物であっ たため、3 つの分離条件を用いて 58 成分それぞれに対する 値付けを試みました。従来の方法では、測定対象成分毎、

すなわち 58 本の検量線の作成が必要でしたが、ポストカラ ム反応 GC-FID システムを用いる方法では分離条件毎に 1 本の検量線、3 つの分離条件で合計 3 本の検量線のみを作 成して 50 成分以上の物質に対して値付けを行うことがで きました。図 4 に示したのは、3 つの分離条件のうちの一 つで得られたクロマトグラムと、その条件で作成した検量 線です。この例ではベンゼン、エチルベンゼン、 o -キシレ ンの 3 成分のみを用いて検量線を作成し、混合ガス中の 10 成分の値付けを行いました。

ポストカラム反応 GC-FID システムを実用化するため、

この技術を企業に橋渡しし、その装置の製品化を支援しま

した。装置の販売が開始されるとともに、アプリケーショ ン例も示されています。分析ユーザーがポストカラム反応 GC-FID システムを用いた定量方法を利用しやすい環境と なりつつあります。

ポストカラム反応 GC-FID システムの適用が可能な測定 対象物質は、炭素・水素・酸素で構成される化合物(C

x

H

y

O

z

) に限られています。これは、ポストカラム反応部で用いて いる反応系に起因しています。用いる反応系を見直して最 適化することで、より広範な物質に対応していくことなど を目指します。

筆者らの開発したポストカラム反応 GC-FID システムを 用いた定量方法を用いることで、分析ユーザーが必要な時 に任意の測定対象物質の濃度を値付けすることができます。

この方法が皆様の分析値の信頼性確保に貢献できれば幸い です。

参考文献

[1] T. Watanabe et al, Chromatography, 27, 49-55 (2006).

[2] T. Watanabe et al, Talanta, 72, 1655-1658 (2007).

[3] T. Watanabe et al, Anal. Chim. Acta, 619, 26-29 (2008).

[4] 渡邉卓朗 他, 分析化学, 62, 183-198 (2013).

[5] 渡邉卓朗, 前田恒昭, 分析化学, 65, 221-228 (2016).

濃度

検出器の応答

測定対象物質毎の検量線作成が必要

測定対象物質毎の標準物質が必要

検量線作成時に必要な測定の回数

= (測定対象化合物の数, l)

X (検量線作成時の濃度レベルの数, m) X (繰り返し測定の回数n

回)

= l X m X n

メタン換算濃度

検出器の応答 炭素1原子あたりの感度は同じ

測定対象物質毎の標準物質を必要としない

測定対象物質毎の検量線作成を必要としない

検量線作成時に必要な測定の回数

(混合標準物質使用時)

= (混合標準物質の数

= 1)

X (繰り返し測定の回数n

回)

= 1 X n

この方法に最適な1種類以上の標準物質であればよい

従来法

ポストカラム反応GC-FIDシステムによる方法

0 0 4 8 12

50000 100000

ピ ー ク 面積 値

メタン換算濃度 / µmol mol

-1

0 10 20 30 40

応答

保持時間 / min

(標準ガス) (試料ガス)

J

F

A B C a D

E b G H

I

ベンゼン (1.247 µmol mol

-1

)

エチルベンゼン (1.090 µmol mol

-1

) o-キシレン

(1.240 µmol mol

-1

) y=a+b∙x

a: 0.0, u(a): 782.5 b: 7352.3, u(b): 89.1 Goodness-of-fit(Γ): 0.33 < 2

図 4 得られたクロマトグラムと作成した検量線の例; A:ノナン, B:ベンゼン, C:デカン, D:トルエン, E:ウンデカン, F:エチルベンゼン, G: p -キシレン, H: -キシレン, I:クメン, J: o -キシレン. a と b は同定していないが、a はα-ピネ ン、b はβ-ピネンと推定

図 3 従来法による検量線の作成とポストカラム反応

GC-FID システムによる方法との比較

参照

関連したドキュメント

元国土技術政策総合研究所危機管理技術研究センター水害研究室(株式会社建設技術研究所) 正会員 ○森田 敏徳 国土技術政策総合研究所危機管理技術研究センター水害研究室 正会員 水草

独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センター AIST, Koto-ku, Tokyo 135–0064, Japan

出版物正誤表

徳島県立農林水産総合技術支援センター畜産研究課研究報告 = Bulletin of Tokushima Prefectural Agriculture, Forestry and Fisheries Technology Support Center

1:非会員 国土交通省 国土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター 情報基盤研究室 ( 〒 305-0804 茨城県つくば市旭 1 番地, Tel

1 : 正会員  国土交通省  国土技術政策総合研究所  高度情報化研究センター  情報基盤研究室 ( 〒 305-0804   茨城県つくば市旭 1 番地,

(1)サプライチェーンリスクの増大 (2)サイバーセキュリティ自給率の低迷

参 画 機 関 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 水産研究本部 中央水産試験場 函館水産試験場 地方独立行政法人