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第 8 章

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Academic year: 2021

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第 8 章

私 的 年 金 へ の 税 制 優 遇 は 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ 受 給 を 促 進 す る か ? : サ ー ベ イ 調 査 を 利 用 し た 検 証*

ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 北 村 智 紀* *・ 中 嶋 邦 夫* * *

要 旨

本 稿 は 、60 代 後 半 の 年 金 受 給 開 始 時 期 の 家 計 を 対 象 と し た 私 的 年 金 へ の 税 制 優 遇 が 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 促 進 で き る か 、 ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン に 必 要 な 情 報 を 提 供 す る こ と に よ り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 促 進 す る か 、 独 自 の サ ー ベ イ 調 査 を 利 用 し て 実 証 的 に 検 証 し た 。 優 遇 措 置 と し て 、 ① 私 的 年 金 の 保 険 料 に 対 す る 税 制 優 遇 、 ② 私 的 年 金 の 年 金 額 に 対 す る 税 制 優 遇 、 ③ 退 職 金 へ の 課 税 を 想 定 し た 私 的 年 金 へ の 相 対 的 な 優 遇 を 検 討 し た 。ま た 、ラ イ フ プ ラ ン に 必 要 な 情 報 と し て 80 歳 時 点 で 予 測 さ れ る 金 融 資 産 額 を 提 供 し た 。 そ の 結 果 、 ② 私 的 年 金 額 へ の 税 制 優 遇 が 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を 有 意 に 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 さ ら に 情 報 提 供 に よ り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を さ ら に 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 本 稿 の 結 果 は 私 的 年 金 へ の 相 対 的 な 優 遇 に よ り 、 公 的 年 金 の 実 質 的 な 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げ が 可 能 で あ る こ と を 示 唆 す る も の で あ る 。

キ ー ワ ー ド : 公 的 年 金 繰 り 下 げ 受 給 、 私 的 年 金 税 制 優 遇 、 情 報 提 供

* 本 研 究 は 、 平 成2 9年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 政 策 科 学 総 合 研 究 事 業(政 策 科 学 推 進 研 究 事 業))「 公 私 年 金 の 連 携 に 注 目 し た 私 的 年 金 の 普 及 と 持 続 可 能 性 に 関 す る 国 際 比 較 と エ ビ デ ン ス に 基 づ く 産 学 官 の 横 断 的 研 究 」(H2 9-政 策-一 般-002)の 一 環 と し て 実 施 し た 。

* * 2018年4月 よ り 東 北 学 院 大 学 経 営 学 部 。

* * *

本 稿 は 筆 者 個 人 の 見 解 に 基 づ い て お り 、筆 者 が 関 係 す る 如 何 な る 団 体 の 意 見 も 代 表 し な い 。

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は じ め に

本 稿 は 、 サ ー ベ イ 調 査 上 の 実 験 を 利 用 し て 、60 歳 後 半 に お け る 私 的 年 金 へ の 税 制 優 遇 が 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ 受 給 を 促 進 す る こ と が 可 能 か 検 証 す る 。 公 的 年 金 は 終 身 年 金 で あ り 、 老 後 の 収 入 で は 中 心 的 な 役 割 を 果 た し て い る 。 特 に 、 平 均 余 命 以 上 に 長 生 き し た 場 合 で は 、 家 計 の 金 融 資 産 は 枯 渇 す る 可 能 性 が あ り 、 公 的 年 金 の 役 割 は 特 に 重 要 で あ る 。 し か し 、 少 子 高 齢 化 が 進 み 、 公 的 年 金 の 財 政 状 態 は 悪 化 し 、 給 付 水 準 が 低 下 す る 可 能 性 が あ る 。 そ こ で 、 公 的 年 金 の 健 全 性 を 保 つ た め に 、 家 計 の 自 助 努 力 が 可 能 な 分 野 に つ い て は 、 そ れ を 促 進 す る 政 策 が と ら れ て い る 。例 え ば 、金 融 資 産 の 積 立 期 に お け る iDeCo(個 人 型 確 定 拠 出 年 金)や NISA(少 額 投 資 非 課 税 制 度)な ど が あ る 。 し か し 、 年 金 受 給 期 に お け る 自 助 努 力 を 促 進 す る 制 度 に つ い て は 充 実 し て い な い 。 そ こ で 本 稿 は 、 公 的 年 金 と 私 的 年 金 の そ れ ぞ れ の 役 割 に 適 し た 方 法 を 考 慮 し 、60 歳 代 後 半 の 生 活 費 を 賄 う た め の 私 的 年 金 に 税 制 優 遇 を 導 入 す る こ と で 、 年 金 受 給 期 の 自 助 努 力 を 促 進 す る 可 能 性 が あ る か 検 証 し た 。 老 後 の 生 活 の 中 で リ ス ク が 相 対 的 に 大 き い の は 、 平 均 余 命 以 上 に 長 生 き し た 場 合 の 生 活 費 確 保 の リ ス ク で あ る 。 一 般 に 、 自 助 努 力 を 行 う 金 融 資 産 蓄 積 で は 、 平 均 余 命 ( あ る い は そ れ よ り 少 し 高 齢 ) を 前 提 に 蓄 積 を 検 討 す る 。 し か し 、 そ れ 以 上 に 長 生 き し た 場 合 に は 、 金 融 資 産 は 枯 渇 し 、 公 的 年 金 だ け で 生 計 を 立 て る こ と に な り 、 生 活 水 準 の 低 下 が 予 測 さ れ る 。 こ こ で 、 公 的 年 金 は 繰 り 下 げ に よ り 年 金 受 給 額 が 増 額 す る 。 公 的 年 金 は で き る 限 り 受 給 を 延 期 ( 繰 り 下 げ ) し 、 受 給 額 を 増 や せ ば 、 自 分 が 想 定 し た 以 上 に 長 生 き し た 際 に 、 金 融 資 産 が 枯 渇 し て も 、生 活 水 準 の 低 下 を 抑 制 で き る 可 能 性 で あ る 。一 方 で 、60 歳 代 後 半(65 歳 の 定 年 後 数 年 間 )は 、公 的 年 金 を 受 給 す る 代 わ り に 、私 的 年 金 の 購 入 ( や 労 働 の 延 長 ) に よ る 自 助 努 力 が 可 能 で あ る 。 し か し 、 一 般 に 公 的 年 金 の 繰 り 上 げ 受 給 ( 早 く 受 け 取 る ) こ と へ の 選 好 が 強 く 、 繰 り 下 げ 受 給 を 促 進 す る に は 一 定 の イ ン セ ン テ ィ ブ の 導 入 が 不 可 欠 で

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あ る 。

本 稿 で は 、私 的 年 金 へ の 税 制 優 遇 が 、公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 促 進 す る こ と が 可 能 か 検 証 す る 。 本 稿 で 検 討 し た 私 的 年 金 へ の 優 遇 措 置 は 、

① 私 的 年 金 の 保 険 料 に 対 す る 税 制 優 遇 、 ② 私 的 年 金 の 年 金 額 に 対 す る 税 制 優 遇 、 ③ 退 職 金 へ の 課 税 を 想 定 し た 私 的 年 金 へ の 相 対 的 な 優 遇 の 3 つ の タ イ プ で あ る 。 ま た 、 老 後 、 特 に 平 均 余 命 以 降 の 家 計 の ラ イ フ プ ラ ン 設 計 に は 、 情 報 が 不 足 し て い る 可 能 性 が あ る 。 そ の た め 、 ラ イ フ プ ラ ン 設 計 に 必 要 な 追 加 的 情 報 を 提 供 す る こ と に よ り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ と 私 的 年 金 へ の 加 入 が 有 利 で あ る こ と が わ か り 、 繰 り 下 げ を 促 進 す る か 検 証 し た 。 本 稿 で は ラ イ フ プ ラ ン に 必 要 な 情 報 と し て 80 歳 時 点 で 予 測 さ れ る 金 融 資 産 額 を 提 示 し た 。

分 析 の 結 果 、私 的 年 金 額 へ の 税 制 優 遇 が 、公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を 有 意 に 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 一 方 、 繰 り 下 げ を 選 択 し た 人 に デ ー タ を 限 定 す る と 、 公 的 年 金 の 保 険 料 へ の 税 制 優 遇 に 効 果 が あ っ た 。 ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン に 有 用 な 情 報 提 供 に よ り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 本 稿 の 結 果 は 、60 歳 後 半 の 自 助 努 力 促 進 の 可 能 性 及 び 、公 的 年 金 の 実 質 的 な 支 給 開 始 年 齢 引 き 上 げ の 可 能 性 を 示 唆 す る も の で あ る 。

本 稿 の 構 成 は 以 下 の と お り で あ る 。第 2 節 は 実 験 の 設 計 、第 3 節 は 分 析 結 果 、 第 4 節 は 結 論 で あ る 。

実 験 の 設 計

実 験 で は 、回 答 者 に 対 し て 、ま ず 事 前 説 明 と し て 、65 歳 以 降 の 標 準 的 な 生 活 費 は 年 324 万 円 で あ る こ と を 説 明 し 、 プ ラ ン A と し て 、 公 的 年 金 を 65 歳 か ら 受 給 開 始 す る か 、 プ ラ ン B と し て 、 公 的 年 金 の 受 給 を 68 歳 に 繰 り 下 げ 、65~67 歳 ま で は 私 的 年 金 に 加 入 す る 。 保 険 料 は 64 歳 時 点 で 支 払 い 、そ の 後 3 年 間 、私 的 年 金 を 受 け 取 る の か 、ど ち ら が 良 い か 選 択 す る 。 公 的 年 金 を 繰 り 下 げ る た め 税 制 優 遇 と し て 、

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以 下 の 3 の タ イ プ を 設 定 し た 。

タ イ プ A: 私 的 年 金 の 保 険 料 支 払 い に 対 す る 優 遇 、 タ イ プ B: 私 的 年 金 の 年 金 額 に 対 す る 優 遇 、

タ イ プ C: 金 融 資 産 保 有 に 対 す る 課 税 。

回 答 者 の 選 好 を 調 べ る に 、 タ イ プ A で は 、 プ ラ ン A:X+Y

プ ラ ン B:M+L+Y―(P+I) こ こ で 、

X は 65 歳 受 給 開 始 の 公 的 年 金 額 、 Y は 65 歳 時 点 の 資 産 残 高 、

M は 68 歳 時 点 の 公 的 年 金 額 、

L は 65 歳 ~67 歳 ま で の 私 的 年 金 額 、 P は 私 的 年 金 の 保 険 料 、

I は 優 遇 額 ( 初 期 値 は 0)

と し て 、 第 n 問 で 回 答 者 が プ ラ ン A を 選 択 し た 場 合 、 第 n+1 問 で は I を 一 定 額 増 額 し て ( プ ラ ン B を 有 利 に し て )、 プ ラ ン A と プ ラ ン B を 提 示 す る 。回 答 者 が プ ラ ン B を 選 択 し た 場 合 は 設 問 を 終 了 す る 。プ ラ ン A を 再 び 選 択 し た 場 合 は 、上 記 を 繰 り 返 す 。一 方 、第 n 問 で 回 答 者 が プ ラ ン B を 選 択 し た 場 合 、 第 n+1 問 で は I を 一 定 額 減 額 し て 、 プ ラ ン A と プ ラ ン B を 提 示 す る 。 回 答 者 が プ ラ ン A を 選 択 し た 場 合 は 設 問 を 終 了 す る 。プ ラ ン B を 再 び 選 択 し た 場 合 は 、上 記 を 繰 り 返 す 。こ の 設 問 で 、 保 険 料 に 対 す る 優 遇 額 が ど の 程 度 で あ れ ば 、 回 答 者 は プ ラ ン B、 つ ま り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ 受 給 を 選 択 す る か 推 計 す る 。

次 に 、 タ イ プ B で は 、 プ ラ ン A:X+Y

プ ラ ン B:M+(L+I) +Y―P

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と し て 、 年 金 額 に 対 す る 優 遇 額 が ど の 程 度 で あ れ ば 、 回 答 者 は プ ラ ン B を 選 択 す る か 推 計 す る 。

最 後 に 、 タ イ プ C で は 、 プ ラ ン A:(X―I)+Y プ ラ ン B:M+L+Y―P

と し て 、65 歳 時 点 で の 金 融 資 産 保 有 額 を ど の 減 額 す れ ば 、回 答 者 は プ ラ ン B を 選 択 す る か 推 計 す る 。減 額 は 退 職 金 へ の 課 税 と 考 え る こ と が で き る 。 私 的 年 金 を 選 択 す れ ば 課 税 さ れ な い た め 、 こ の 課 税 に よ り 私 的 年 金 が 相 対 的 に 有 利 に な っ て い る 。

さ ら に 、 各 タ イ プ A、B、C で は 、65 歳 時 点 で の 資 産 残 高 に 加 え 、80 歳 時 点 で 予 想 さ れ る 資 産 残 高 を 表 示 す る グ ル ー プ(情 報 あ り G) と 、 表 示 し な い グ ル ー プ(情 報 な し G)を 設 定 し た 。 こ の 情 報 に よ り 、 回 答 者 は 80 歳 以 降 の ラ イ フ プ ラ ン 設 計 が 容 易 に な り 、ど ち ら の プ ラ ン が 有 利 で あ る か 、自 分 に 適 し て い る か 、選 択 し や す く な る は ず で あ る 。 あ る い は 、 回 答 者 が 合 理 的 に 意 思 決 定 で き る な ら 、 こ れ ら の 予 測 も 適 切 に 行 わ れ る は ず で 、 両 グ ル ー プ で 回 答 に 差 が な い は ず で あ る 。

図 表 1 は 回 答 者 に 提 示 し た 数 値 で あ る 。 パ ネ ル A は 、 タ イ プ A(私 的 年 金 の 保 険 料 に 税 制 優 遇)の 数 値 で あ る 。図 中 に「 表 示 」と あ る の は 、 回 答 者 に 表 示 し た 数 値 で あ る 。 ま た 、「 情 報 あ り G で 表 示 」 と あ る の は 、情 報 あ り G で は 表 示 さ れ 、情 報 な し G で は 表 示 さ れ な い 数 値 で あ る 。2014 年 の 全 国 消 費 実 態 調 査 を 参 考 に 、65 歳 受 給 開 始 の 公 的 年 金 は 年 240 万 円 、65 時 点 の 資 産 残 高 は 1,600 万 円 と し た 。 プ ラ ン B で 公 的 年 金 を 繰 り 下 げ し て 68 歳 受 給 開 始 と し た 場 合 は 、年 8.4% 増 加 す る と し て 、 年 300 万 円 と し た 。 私 的 年 金 の 利 回 り の 初 期 値 は 0.5%

と し た 。実 験 は 選 択 番 号 0 よ り 開 始 す る 。こ こ で 、プ ラ ン A と プ ラ ン B の 現 在 価 値 は 一 致 す る よ う に 設 計 し た 。 早 期 年 金 受 給 へ の バ イ ア ス が あ れ ば 、回 答 者 は プ ラ ン A を 選 択 す る は ず で あ る 。回 答 者 が プ ラ ン A を 選 択 し た 場 合 は 、 選 択 番 号 1(上 の 方 向)へ 移 り 、 私 的 年 金 の 保 険

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料 を 減 額 し て 、プ ラ ン A と プ ラ ン B を 再 提 示 す る 。回 答 者 が プ ラ ン B へ 選 択 が 移 る ま で 設 問 を 続 け る 。一 方 、回 答 者 が プ ラ ン B を 選 択 し た 場 合 は 、 選 択 番 号 - 1(下 の 方 向)へ 移 り 、 私 的 年 金 の 保 険 料 を 増 額 し て 、 プ ラ ン A と プ ラ ン B を 再 提 示 す る 。 回 答 者 が プ ラ ン A へ 選 択 が 移 る ま で 設 問 を 続 け る 。 私 的 年 金 の 保 険 料 の 優 遇 額 は 、 私 的 年 金 の 利 回 り が 最 右 列 に 表 示 さ れ て い る よ う に 設 定 す る 。プ ラ ン A の 数 値 は 各 選 択 番 号 で 変 化 は な い 。最 後 ま で プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た 場 合 は 、回 答 者 の 選 択 番 号 を 10 と す る 。 一 方 、 最 後 ま で プ ラ ン B を 選 択 し 続 け た 場 合 は 、 回 答 者 の 選 択 番 号 を -10 と す る 。

[こ こ に 図 表 1 を 挿 入]

パ ネ ル B は 、 タ イ プ B(私 的 年 金 額 に 税 制 優 遇)の 数 値 で あ る 。 パ ネ ル A と 同 様 に 、プ ラ ン A の 数 値 は 各 選 択 番 号 で 変 化 は な い が 、プ ラ ン B で は 、選 択 番 号 が 大 き く な る に つ れ(選 択 番 号 0 よ り 上 に 進 む 場 合)、65 歳 ~67 歳 ま で の 私 的 年 金 額 が 増 額 さ れ る 。 一 方 、 選 択 番 号 が 小 さ く な る に つ れ(選 択 番 号 0 よ り 下 に 進 む 場 合)、 私 的 年 金 額 が 減 額 さ れ る 。 増 減 額 は 、 最 右 列 に 表 示 さ れ て い る よ う に 、 各 選 択 番 号 で 私 的 年 金 の 利 回 り が パ ネ ル A と 一 致 す る よ う に 設 定 す る 。

パ ネ ル C は 、 タ イ プ C(退 職 金 に 課 税)の 数 値 で あ る 。 パ ネ ル A や B と 異 な り 、プ ラ ン B の 数 値 は 各 選 択 番 号 で 変 化 は な い 。こ れ に 対 し て 、プ ラ ン A で は 、選 択 番 号 が 大 き く な る に つ れ 、65 歳 時 点 で の 資 産 残 高 は 減 額 さ れ る 。一 方 、選 択 番 号 が 小 さ く な る に つ れ 、65 歳 時 点 で の 資 産 残 高 は 増 額 さ れ る 。 増 減 額 は 、 最 右 列 に 表 示 さ れ て い る よ う に 、各 選 択 番 号 で 私 的 年 金 の 利 回 り が パ ネ ル A と 一 致 す る よ う に 設 定 す る 。

図 表 2 は 、回 答 者 に 示 さ れ た 選 択 機 会 の 例 で あ る 。こ こ で 情 報 あ り G で は 、80 歳 時 点 で 予 想 さ れ る 資 産 額 が 表 示 さ れ 、 情 報 な し G で は 表 示 さ れ な い 。 選 択 機 会 内 の 数 値 は 、 図 表 1 で 示 さ れ た よ う に 、 設 問 に よ っ て 変 化 す る 。

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[こ こ に 図 表 2 を 挿 入]

本 稿 に 利 用 し た サ ー ベ イ 調 査 は 、2018 年 3 月 に マ イ ボ イ ス コ ム 株 式 会 社(http://www. myvo ice.co.jp)の 登 録 会 員 の う ち 、40 歳 か ら 64 歳 の 男 女 を 対 象 に 実 施 し た 。 ま ず 、 予 備 調 査 で 年 齢 、 職 業 、 収 入 等 を 訪 ね 、45 歳 ~65 歳 未 満 の 既 婚 あ る い は 未 婚(離 別・死 別 を 除 外 し た)の 男 女 で 、 自 分 か 配 偶 者 の 少 な く と も ど ち ら か が 会 社 員 で あ る 家 計 を 対 象 と し た 。 ま た 家 計 年 収 で 300 万 円 か ら 1,500 万 円 ま で の 家 計 を 対 象 と し た 。 そ の 後 本 調 査 を 実 施 し た 。 本 調 査 の 総 回 答 者 数 は 3,585 人 で あ る 。 職 業 の 構 成 や 年 収 を 一 定 範 囲 内 と し た の は 、 回 答 者 に 公 的 年 金 額 を 提 示 す る が 、 こ の 提 示 額 よ り 実 際 の 予 測 額 か ら 離 れ す ぎ な い よ う に す る た め で あ る 。回 答 者 は 、設 問 1 ~ 設 問 19 ま で(前 半)、あ る タ イ プ に つ い て 回 答 す る 。次 に 、設 問 21~ 設 問 38 ま で(後 半)、別 の タ イ プ に つ い て 回 答 す る 。 な お 、 後 半 の 最 初 の 設 問(設 問 20)は 、 設 問 1 の 回 答 を 利 用 す る 。 各 タ イ プ に つ い て 、 前 半 と 後 半 に 回 答 し た 場 合 に は 、 回 答 者 の 経 験 等 に よ り 、 結 果 に 違 い が あ る 可 能 性 が あ る の で 、 以 下 の よ う に 、 各 タ イ プ が 前 半 と 後 半 に 割 り 当 て ら れ る グ ル ー プ(ラ イ ン)を 設 定 し た 。

ラ イ ン 1:前 半 タ イ プ A、後 半 タ イ プ B( 情 報 あ り 、回 収 数 458)、

ラ イ ン 2:前 半 タ イ プ B、後 半 タ イ プ A( 情 報 あ り 、回 収 数 461)、

ラ イ ン 3:前 半 タ イ プ A、後 半 タ イ プ C( 情 報 あ り 、回 収 数 459)、

ラ イ ン 4:前 半 タ イ プ C、後 半 タ イ プ A( 情 報 あ り 、回 収 数 459)、

ラ イ ン 5:前 半 タ イ プ A、後 半 タ イ プ B( 情 報 な し 、回 収 数 466)、

ラ イ ン 6:前 半 タ イ プ B、後 半 タ イ プ A( 情 報 な し 、回 収 数 463)、

ラ イ ン 7:前 半 タ イ プ A、後 半 タ イ プ C( 情 報 な し 、回 収 数 457)、

ラ イ ン 8:前 半 タ イ プ C、後 半 タ イ プ A( 情 報 な し 、回 収 数 462)。

分 析 結 果

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図 表 3 は 、 回 答 者 の 選 択 番 号 が 変 化 し た 番 号 、 つ ま り 、 選 択 番 号 0 で プ ラ ン A を 選 択 し た 場 合 は 、そ の 後 の 設 問 で プ ラ ン B に 選 択 を 移 し た 番 号 で あ り 、 一 方 、 選 択 番 号 0 で プ ラ ン B を 選 択 し た 場 合 は 、 そ の 後 の 設 問 で プ ラ ン A に 選 択 を 移 し た 番 号 で あ る 。な お 、プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た 人 は 選 択 番 号 10、プ ラ ン B を 選 択 し 続 け た 人 は 選 択 番 号 ―10 と し た 。各 優 遇 タ イ プ 別 に 表 示 し て い る 。各 タ イ プ で プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た 人(選 択 番 号 10)が 多 く な っ て い る が 、 そ の 割 合 は 各 タ イ プ で 異 な っ て い る 。ま た 、プ ラ ン A か ら プ ラ ン B へ 途 中 で 変 化 し た 人 の 割 合 も 、 各 タ イ プ で 異 な っ て い る 。

[こ こ に 図 表 3 を 挿 入]

図 表 4 は 、情 報 あ り G・な し G 別 の ヒ ス ト グ ラ ム で あ る 。各 タ イ プ 別 に 表 示 し て あ る 。パ ネ ル A は タ イ プ A( 私 的 年 金 保 険 料 へ の 税 制 優 遇 )の ヒ ス ト グ ラ ム で あ る 。情 報 あ り・ な し 共 に 、プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た 人 が 多 く な っ て い る が 、 そ の 割 合 は 情 報 の 有 無 で 異 な っ て い る 。ま た 、プ ラ ン A か ら プ ラ ン B へ 途 中 で 変 化 し た 人 の 分 布 も 、情 報 の 有 無 で 異 な っ て い る 。パ ネ ル B 及 び パ ネ ル C は 、そ れ ぞ れ 、タ イ プ B、 タ イ プ C に お け る 、 情 報 の 有 無 に よ る ヒ ス ト グ ラ ム で あ る 。 何 れ も パ ネ ル A と 同 様 な 傾 向 で あ る 。

[こ こ に 図 表 4 を 挿 入]

図 表 5 の パ ネ ル A は 、設 問 1 で プ ラ ン B を 選 択 し た 回 答 者 の 割 合 で あ る 。 な お 、 情 報 の 有 無 に つ い て は デ ー タ を プ ー ル し て い る 。 2 つ の タ イ プ を 比 較 で き る よ う 、 上 ・ 中 ・ 下 段 に わ け て 表 示 し て い る 。 各 タ イ プ で は 設 問 1 は 共 通 で あ る た め 、 各 タ イ プ に 割 り 当 て た 回 答 者 の 特 徴 に 違 い が な い か 検 証 で き る 。上 段 は 、タ イ プ A と タ イ プ B の 比 較 で あ る 。タ イ プ A で は 22.6% の 人 が 、最 初 か ら プ ラ ン B を 選 択 し て い る 。タ イ プ B で は 22.2% で あ り 、有 意 な 差 は な い 。中 段 は 、タ イ プ A と タ イ プ C の 比 較 で あ り 、両 者 で 有 意 な 差 は な い 。下 段 は 、タ イ プ B と タ イ プ C の 比 較 で あ り 、両 者 で 有 意 な 差 は な い 。 設 問 1 で タ イ プ

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A を 選 択 し た 人 が 本 稿 の 興 味 の 対 象 で あ る が 、 回 答 者 は 各 タ イ プ で 初 期 の 選 択 に 有 意 な 差 が な い こ と が わ か る 。

[こ こ に 図 表 5 を 挿 入]

パ ネ ルBは 、プ ラ ンBが 一 度 も 選 択 さ れ な か っ た 割 合 、つ ま り 、 最 後 ま で プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た(公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な か っ た)人 の 割 合 で あ る 。な お 、情 報 の 有 無 に つ い て は デ ー タ を プ ー ル し て い る 。 上 段 は 、 タ イ プ A と タ イ プ B の 比 較 で あ る 。 タ イ プ A で は 51.0% の 人 が 、 最 後 ま で プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た が 、 タ イ プ B で は 33.3% で あ り 17.7% 有 意 に 減 少 し て い る 。 中 段 は 、 タ イ プ A と タ イ プ C の 比 較 で あ る 。タ イ プ C の 方 が 、3.2% 有 意 に 減 少 し て い る 。下 段 は 、 タ イ プ B と タ イ プ C の 比 較 で あ る 。タ イ プ B の 方 が 、最 後 ま で プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た 人 の 割 合 は 有 意 に 低 い 。

パ ネ ル C は 、設 問 1 で プ ラ ン A(65 歳 受 給 開 始)を 選 択 し た デ ー タ に 限 定 し 、そ の 後 、プ ラ ン B へ 選 択 が 移 っ た 割 合 で あ る 。税 制 優 遇 が な け れ ば 、プ ラ ン B へ 選 択 が 移 ら な い は ず な の で 、こ の 割 合 は 税 制 優 遇 の 効 果 と 解 釈 で き る 。 な お 、 情 報 の 有 無 は デ ー タ を プ ー ル し て あ る 。 上 段 で は タ イ プ A と B の 比 較 で あ る 。 タ イ プ A で は 設 問 1 で プ ラ ン A を 選 択 し た 回 答 者 の う ち 、34.1% が そ の 後 プ ラ ン B へ 選 択 が 移 っ て い る 。一 方 、タ イ プ B で は 57.2% が 移 っ て お り 、タ イ プ B の 方 が 有 意 に 増 え て い る 。中 段 は 、タ イ プ A と C の 比 較 だ が 、タ イ プ C の 方 が 有 意 に 増 え て い る 。下 段 は タ イ プ B と C の 比 較 だ が 、タ イ プ B の 方 が 有 意 に 増 え て い る 。

パ ネ ル D は 、設 問 1 で プ ラ ン A が 選 択 さ れ た デ ー タ で 、プ ラ ン B に 選 択 が 移 動 し た デ ー タ に 限 定 し 、プ ラ ン A か ら プ ラ ン B へ 選 択 が 移 っ た 選 択 番 号 の 平 均 値 で あ る 。 な お 、 情 報 の 有 無 は デ ー タ を プ ー ル し て あ る 。こ の 表 は 、各 タ イ プ に よ り 、プ ラ ン A を 選 択 し た 人 が プ ラ ン B に 移 る 、移 り や す さ を 比 較 し よ う と す る も の で あ る 。上 段 で は タ イ プ A と B の 比 較 で あ る 。 タ イ プ A で は 3.43 番 で プ ラ ン B( 繰 り 下

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げ 受 給 ) を 選 択 し た が 、 タ イ プ B で は 4.43 番 で あ り 、 タ イ プ B の 方 が 0.91 番 だ け 有 意 に 移 る 番 号 が 遅 く な っ て い る 。中 段 は 、タ イ プ A と C の 比 較 だ が 、 タ イ プ C の 方 が 有 意 に 遅 く な っ て い る 。 下 段 は タ イ プ B と C の 比 較 だ が 、 タ イ プ B の 方 が 有 意 に 遅 く な っ て い る 。

小 括 す る と 、 タ イ プ B、 つ ま り 、 私 的 年 金 額 へ の 税 制 優 遇 が 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を 減 ら す 傾 向 ( 繰 り 上 げ を 選 択 す る 人 を 増 や す 傾 向 ) が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 一 方 、 繰 り 下 げ を 選 択 し た 人 に デ ー タ を 限 定 す る と 、 公 的 年 金 の 保 険 料 へ の 税 制 優 遇 が 、 繰 り 下 げ を 促 進 す る 傾 向 が 確 認 さ れ た 。

次 に 、図 表 6 の パ ネ ル A は 、設 問 1 で プ ラ ン B を 選 択 し た 回 答 者 の 割 合 に 情 報 の 有 無 で 違 い が あ る か 検 証 し た 結 果 で あ る 。 各 タ イ プ で 、上 ・ 中 ・下 段 に わ け て 表 示 し て い る 。上 段 は タ イ プ A で 、情 報 の 有 無 に よ る 差 で あ る 。情 報 な し で は 26.5% の 人 が プ ラ ン B を 選 択 し た が 、 情 報 あ り で は 18.6% で あ り 、 情 報 提 示 に よ り 7.8% 有 意 に 減 少 し て い る 。中 段 は 、タ イ プ B に お け る 情 報 有 無 の 差 で あ る 。情 報 あ り の 方 が 、 有 意 に 8.6% 減 少 し て い る 。 下 段 は 、 タ イ プ C に お け る 情 報 有 無 の 比 較 で あ る 。 情 報 あ り の 方 が 有 意 に 7.1% 低 い 。 情 報 な し の 方 が プ ラ ン B を 選 択 す る 傾 向 が あ る 。 こ の 理 由 は 、 情 報 あ り で は 80 歳 時 点 の 資 産 残 高 が 表 示 さ れ る が 、プ ラ ン A の 資 産 残 高 は 419 万 円 、プ ラ ン B で は 397 万 円 で あ り 、プ ラ ン A の 資 産 残 高 が 大 き い た め だ と 考 え ら れ る 。 し か し 、80 歳 以 降 の 消 費 を 考 え て み る と 、 公 的 年 金 額 年 240 万 円 で あ る プ ラ ン A の 方 が 、同 300 万 円 で あ る プ ラ ン B よ り 、金 融 資 産 が 早 く 枯 渇 す る 恐 れ が あ る 。そ れ に も 関 わ ら ず 、プ ラ ン A を 選 択 す る 傾 向 が あ る の は 、 回 答 者 は 公 的 年 金 額 、 消 費 、 金 融 資 産 額 の 関 係 を よ く 理 解 で き ず 、 単 に 金 融 資 産 の 予 測 額 を 見 て プ ラ ン を 選 択 し た 可 能 性 が 示 唆 で き る 。

[こ こ に 図 表 6 を 挿 入]

パ ネ ル B は 、プ ラ ン B が 一 度 も 選 択 さ れ な か っ た 割 合 が 情 報 の

(11)

有 無 で 違 い が あ る か 検 証 し た 結 果 で あ る 。上 段 は タ イ プ A で 、情 報 の 有 無 に よ る 差 で あ る 。 情 報 な し で は 58.5% の 人 が 、 最 後 ま で プ ラ ン A を 選 択 し 続 け た が 、 情 報 あ り で は 43.4% で あ り 、15. 1% 有 意 に 減 少 し て い る 。中 段 は 、タ イ プ B に お け る 情 報 有 無 の 差 で あ る 。情 報 あ り の 方 が 、 有 意 に 5.5% 減 少 し て い る 。 下 段 は 、 タ イ プ C に お け る 情 報 有 無 の 比 較 で あ る 。 情 報 あ り の 方 が 有 意 に 22.7% 低 い 。 こ こ で は 、 情 報 に よ っ て プ ラ ン B を 選 択 す る 傾 向 が 高 ま っ て い る 。

パ ネ ル C は 、設 問 1 で プ ラ ン A を 選 択 し た デ ー タ に 限 定 し 、そ の 後 、プ ラ ン B へ 選 択 が 移 っ た 割 合 で あ る 。上 段 は タ イ プ A に お け る 情 報 の 有 無 に よ る 比 較 で あ る 。 情 報 な し で は 20.4% で あ る が 、 情 報 あ り で は 46.6% で あ り 、26.2% 有 意 に プ ラ ン B へ 移 る 割 合 が 上 昇 し て い る 。中 段 は 、タ イ プ B に お け る 情 報 の 有 無 に よ る 違 い で あ る が 、情 報 あ り が 11.8% 有 意 に 上 昇 し て い る 。下 段 は タ イ プ C に お け る 情 報 の 有 無 に よ る 比 較 で あ る 。 情 報 が あ る 方 が 35.2% 有 意 に 上 昇 し て い る 。

パ ネ ル D は 、設 問 1 で プ ラ ン A が 選 択 さ れ た デ ー タ で 、プ ラ ン B に 選 択 が 移 動 し た デ ー タ に 限 定 し 、プ ラ ン A か ら プ ラ ン B へ 選 択 が 移 っ た 選 択 番 号 の 平 均 値 で あ る 。上 段 は タ イ プ A に お け る 情 報 の 有 無 に よ る 比 較 で あ る 。情 報 な し で は 3.87 番 で プ ラ ン B を 選 択 し た が 、情 報 あ り で は 3.26 番 で あ り 、 情 報 あ り の 方 が 0.62 番 だ け 有 意 に 移 る 番 号 が 遅 く な っ て い る 。中 段 は 、タ イ プ B に お け る 情 報 の 有 無 に よ る 違 い で あ る 。情 報 あ り の 方 が 1.01 番 だ け 有 意 に 移 る 番 号 が 遅 く な っ て い る 。下 段 は タ イ プ C に お け る 情 報 の 有 無 に よ る 比 較 で あ る が 、有 意 な 差 は な い 。

小 括 す る と 、回 答 者 は ラ イ フ プ ラ ン に 関 連 す る 情 報 で 行 動 に 変 化 が あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 情 報 に よ り 、 繰 り 上 げ 受 給 を 選 択 し な い 人 を 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 た だ し 、 情 報 の 内 容 や 分 析 方 法 に よ り 、 情 報 を 示 す 有 利 性 が 確 認 さ れ な い 場 合 も あ っ た 。

(12)

結 論

本 稿 は 、60 代 後 半 の 年 金 受 給 期 を 対 象 と し た 私 的 年 金 へ の 税 制 優 遇 が 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 促 進 で き る か 、 ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン に 必 要 な 情 報 を 提 供 す る こ と に よ り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を さ ら に 促 進 す る か 検 証 し た 。 優 遇 措 置 と し て 、 私 的 年 金 の 保 険 料 に 対 す る 税 制 優 遇 、 私 的 年 金 の 年 金 額 に 対 す る 税 制 優 遇 、 退 職 金 へ の 課 税 を 想 定 し た 私 的 年 金 へ の 相 対 的 な 優 遇 の 3 つ の タ イ プ を 検 討 し た 。 ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン に 必 要 な 情 報 と し て 80 歳 時 点 で 予 測 さ れ る 金 融 資 産 額 を 提 供 す る か 、 し な い か の 有 無 で 回 答 者 の 行 動 を 比 較 し た 。 そ の 結 果 、 私 的 年 金 額 へ の 税 制 優 遇 が 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 一 方 、 繰 り 下 げ を 選 択 し た 人 に デ ー タ を 限 定 す る と 、 公 的 年 金 の 保 険 料 へ の 税 制 優 遇 の 効 果 が あ っ た 。 ラ イ フ プ ラ ン に 有 用 な 情 報 提 供 に よ り 、 私 的 年 金 へ の 優 遇 が 容 易 に 把 握 で き る よ う に な り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ を 選 択 し な い 人 を 減 ら す 傾 向 が あ る こ と 確 認 さ れ た 。 し か し 、 情 報 に 内 容 や 分 析 の 方 法 に よ り 、 情 報 を 示 す 有 利 性 が 確 認 さ れ な い 場 合 も あ っ た 。

本 稿 の 結 果 は 、私 的 年 金 へ の 相 対 的 な 優 遇 に よ り 、公 的 年 金 の 繰 り 下 げ 受 給 を 促 進 で き る 可 能 性 が あ る こ と を 示 し て お り 、 公 的 年 金 の 実 質 的 な 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げ が 可 能 で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 ま た 、 ラ イ フ プ ラ ン 設 計 に 有 用 な 情 報 を 提 供 す る こ と に よ り 、 公 的 年 金 の 繰 り 下 げ 受 給 を さ ら に 促 進 で き る 可 能 性 が あ る 、 ね ん き ん ネ ッ ト 等 を 通 じ た ラ イ フ プ ラ ン 設 計 を 充 実 し て い く 方 向 性 が 示 唆 で き る 。

(13)

図表1:実験の設計

パネル A:私的年金保険料に対する税制優遇(タイプ A)

65歳開始 公的年金額

65歳時点 資産残高

80歳時点 資産残高

68歳開始 公的年金額

65~67歳 私的年金額

私的年金

保険料 税制優遇額 実質

保険料

65歳時点 資産残高

80歳時点 資産残高

私的年金 利回り

表示 表示 情報ありG

で表示 表示 表示 表示 情報ありG

で表示 10 最後までプランAを選択

9 240 1,600 419 300 180 535 241 294 1,306 656 37.8%

8 240 1,600 419 300 180 535 214 321 1,279 628 31.4%

7 240 1,600 419 300 180 535 187 348 1,252 599 25.7%

6 240 1,600 419 300 180 535 160 374 1,226 570 20.8%

5 240 1,600 419 300 180 535 134 401 1,199 541 16.5%

4 240 1,600 419 300 180 535 107 428 1,172 512 12.6%

3 240 1,600 419 300 180 535 80 454 1,146 483 9.1%

2 240 1,600 419 300 180 535 53 481 1,119 455 6.0%

1 240 1,600 419 300 180 535 27 508 1,092 426 3.1%

0 240 1,600 419 300 180 535 0 535 1,065 397 0.5%

-1 240 1,600 419 300 180 535 -27 561 1,039 368 -1.9%

-2 240 1,600 419 300 180 535 -53 588 1,012 339 -4.1%

-3 240 1,600 419 300 180 535 -80 615 985 311 -6.2%

-4 240 1,600 419 300 180 535 -107 642 958 282 -8.1%

-5 240 1,600 419 300 180 535 -134 668 932 253 -9.9%

-6 240 1,600 419 300 180 535 -160 695 905 224 -11.6%

-7 240 1,600 419 300 180 535 -187 722 878 195 -13.2%

-8 240 1,600 419 300 180 535 -214 749 851 167 -14.7%

-9 240 1,600 419 300 180 535 -241 775 825 138 -16.1%

-10 最後までプランBを選択 選択

番号

プランA(65歳支給開始) プランB(68歳に繰り下げ)

(14)

パネル B:私的年金額に対する税制優遇(タイプ B)

65歳開始 公的年金額

65歳時点 資産残高

80歳時点 資産残高

68歳開始 公的年金額

65~67歳 私的年金額

私的年金 保険料

実質 保険料

65歳時点 資産残高

80歳時点 資産残高

私的年金 利回り

表示 表示 情報ありG

で表示 表示 表示 表示 情報ありG

で表示 10 最後までプランAを選択

9 240 1,600 419 300 327 535 535 1,065 868 37.8%

8 240 1,600 419 300 300 535 535 1,065 781 31.4%

7 240 1,600 419 300 277 535 535 1,065 707 25.7%

6 240 1,600 419 300 257 535 535 1,065 644 20.8%

5 240 1,600 419 300 240 535 535 1,065 589 16.5%

4 240 1,600 419 300 225 535 535 1,065 541 12.6%

3 240 1,600 419 300 212 535 535 1,065 499 9.1%

2 240 1,600 419 300 200 535 535 1,065 461 6.0%

1 240 1,600 419 300 189 535 535 1,065 427 3.1%

0 240 1,600 419 300 180 535 535 1,065 397 0.5%

-1 240 1,600 419 300 171 535 535 1,065 370 -1.9%

-2 240 1,600 419 300 164 535 535 1,065 345 -4.1%

-3 240 1,600 419 300 157 535 535 1,065 322 -6.2%

-4 240 1,600 419 300 150 535 535 1,065 301 -8.1%

-5 240 1,600 419 300 144 535 535 1,065 282 -9.9%

-6 240 1,600 419 300 138 535 535 1,065 264 -11.6%

-7 240 1,600 419 300 133 535 535 1,065 248 -13.2%

-8 240 1,600 419 300 129 535 535 1,065 232 -14.7%

-9 240 1,600 419 300 124 535 535 1,065 218 -16.1%

-10 最後までプランBを選択 選択

番号

プランA(65歳支給開始) プランB(68歳に繰り下げ)

(15)

パネル C:退職金に対する課税(タイプ C)

65歳開始 公的年金額

65歳時点 資産残高

80歳時点 資産残高

68歳開始 公的年金額

65~67歳 私的年金額

私的年金 保険料

実質 保険料

65歳時点 資産残高

80歳時点 資産残高

私的年金 利回り

表示 表示 情報ありG

で表示 表示 表示 表示 情報ありG

で表示 10 最後までプランAを選択

9 240 1,359 160 300 180 535 294 1,065 397 37.8%

8 240 1,386 189 300 180 535 321 1,065 397 31.4%

7 240 1,413 218 300 180 535 348 1,065 397 25.7%

6 240 1,440 246 300 180 535 374 1,065 397 20.8%

5 240 1,466 275 300 180 535 401 1,065 397 16.5%

4 240 1,493 304 300 180 535 428 1,065 397 12.6%

3 240 1,520 333 300 180 535 454 1,065 397 9.1%

2 240 1,547 362 300 180 535 481 1,065 397 6.0%

1 240 1,573 390 300 180 535 508 1,065 397 3.1%

0 240 1,600 419 300 180 535 535 1,065 397 0.5%

-1 240 1,627 448 300 180 535 561 1,065 397 -1.9%

-2 240 1,653 477 300 180 535 588 1,065 397 -4.1%

-3 240 1,680 506 300 180 535 615 1,065 397 -6.2%

-4 240 1,707 534 300 180 535 642 1,065 397 -8.1%

-5 240 1,734 563 300 180 535 668 1,065 397 -9.9%

-6 240 1,760 592 300 180 535 695 1,065 397 -11.6%

-7 240 1,787 621 300 180 535 722 1,065 397 -13.2%

-8 240 1,814 650 300 180 535 749 1,065 397 -14.7%

-9 240 1,841 679 300 180 535 775 1,065 397 -16.1%

-10 最後までプランBを選択

プランA(65歳支給開始) プランB(68歳に繰り下げ)

選択 番号

(16)

図表2:回答者への表示例(情報あり G の場合)

注:情報なし Gでは、80歳時点の資産残高が表示されない。

◆Q1~Q19は以下の文章を読んで答えてください。

65歳以降の標準的な生活費は毎年324万円です。65歳以降の生活プランとして、次ページ以降のプランAとプランBのどちらを選びますか?

質問ごとに数値が変わりますので、注意して判断してください。

改ページ

Q1. 65歳以降の標準的な生活費は毎年324万円です。あなたはどちらのプランを選択しますか?

65歳時点 資産残高 1,600 万円 1,065 万円

公的年金 240 万円

私的年金

(65歳で加入して3年間受け取る) 180 万円

68歳~死亡 公的年金 240 万円 300 万円

80歳時点 資産残高

(65歳以降は働かない場合) 419 万円 397 万円

あなたの選択

プランA

(公的年金を65歳から受給)

プランB

(公的年金を68歳から受給)

65歳~67歳

(17)

図表3:タイプ毎の選択番号のヒストグラム

0.5 10.5 1

-10 -5 0 5 10

タイプA タイプB

タイプC

Density

選択番号

Graphs by type

(18)

図表4:情報あり・なしの違いによるヒストグラム パネル A:タイプ A

パネル B:タイプ B

0.5 1

-10 -5 0 5 10 -10 -5 0 5 10

情報なし 情報あり

Density

選択番号

Graphs by info

0.2.4.6

-10 -5 0 5 10 -10 -5 0 5 10

情報なし 情報あり

Density

選択番号

Graphs by info

(19)

パネル C:タイプ C

0.5 1

-10 -5 0 5 10 -10 -5 0 5 10

情報なし 情報あり

Density

選択番号

Graphs by info

(20)

図表5:タイプ別の選択結果

注:***はウエルチ法による平均値の差の検定で1%有意水準、**は同5%、*は同10%を表す。情報の有無に関しては

データをプールしている。パネル Cは、設問1でプラン Aを選択した回答者に限定している。パネルDは設問1でプ

ラン Aを選択した回答者で、プラン Bに移動した回答者に限定している。

N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差

タイプA 3,685 0.226 (0.007) タイプA 3,685 0.510 (0.008) タイプA 2,854 0.341 (0.009) タイプA 974 3.432 (0.082) タイプB 1,848 0.222 (0.010) タイプB 1,848 0.333 (0.011) タイプB 1,438 0.572 (0.013) タイプB 822 4.341 (0.088) 5,533 -0.004 (0.012) 5,533 -0.177 (0.014) *** 4,292 0.230 (0.016) *** 1,796 0.908 (0.120) ***

N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差

タイプA 3,685 0.226 (0.007) タイプA 3,685 0.510 (0.008) タイプA 2,854 0.341 (0.009) タイプA 974 3.432 (0.082) タイプC 1,837 0.229 (0.010) タイプC 1,837 0.478 (0.012) タイプC 1,416 0.379 (0.013) タイプC 537 3.894 (0.107) 5,522 0.004 (0.012) 5,522 -0.032 (0.014) ** 4,270 0.038 (0.016) ** 1,511 0.462 (0.135) ***

N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差 N 平均 標準誤差

タイプB 1,848 0.222 (0.010) タイプB 1,848 0.333 (0.011) タイプB 1,438 0.572 (0.013) タイプB 822 4.341 (0.088) タイプC 1,837 0.229 (0.010) タイプC 1,837 0.478 (0.012) タイプC 1,416 0.379 (0.013) タイプC 537 3.894 (0.107) 3,685 0.007 (0.014) 3,685 0.145 (0.016) *** 2,854 -0.192 (0.018) *** 1,359 -0.447 (0.138) ***

設問1でプランAを選択し、

その後、プランBに移った割合

設問1でプランAを選択し、

その後、プランBに移った設問番号

パネルA パネルB パネルC パネルD

設問1でプランBを選択した割合 プランBが選択されなかった割合

(21)

図表6:情報有無別の選択結果

注:***はウエルチ法による平均値の差の検定で1%有意水準、**は同5%、*は同 10%を表す。パネルCは、設問1で

プラン Aを選択した回答者に限定している。パネル Dは設問1でプラン Aを選択した回答者で、プランBに移動した 回答者に限定している。

タイプA N 平均 標準誤差 タイプA N 平均 標準誤差 タイプA N 平均 標準誤差 タイプA N 平均 標準誤差

情報なし 1,848 0.265 (0.010) 情報なし 1,848 0.585 (0.011) 情報なし 1,359 0.204 (0.011) 情報なし 277 3.874 (0.180) 情報あり 1,837 0.186 (0.009) 情報あり 1,837 0.434 (0.012) 情報あり 1,495 0.466 (0.013) 情報あり 697 3.257 (0.089) 3,685 -0.078 (0.014) *** 3,685 -0.151 (0.016) *** 2,854 0.262 (0.017) *** 974 -0.617 (0.200) ***

タイプB N 平均 標準誤差 タイプB タイプB タイプB

情報なし 929 0.265 (0.014) 情報なし 929 0.361 (0.016) 情報なし 683 0.510 (0.019) 情報なし 348 4.922 (0.131) 情報あり 919 0.178 (0.013) 情報あり 919 0.306 (0.015) 情報あり 755 0.628 (0.018) 情報あり 474 3.914 (0.115) 1,848 -0.086 (0.019) *** 1,848 -0.055 (0.022) ** 1,438 0.118 (0.026) *** 822 -1.009 (0.174) ***

タイプC N 平均 標準誤差 タイプC タイプC タイプC

情報なし 919 0.264 (0.015) 情報なし 919 0.592 (0.016) 情報なし 676 0.195 (0.015) 情報なし 132 3.765 (0.230) 情報あり 918 0.194 (0.013) 情報あり 918 0.365 (0.016) 情報あり 740 0.547 (0.018) 情報あり 405 3.936 (0.120) 1,837 -0.071 (0.020) *** 1,837 -0.227 (0.023) *** 1,416 0.352 (0.024) *** 537 0.171 (0.260)

設問1でプランBを選択した割合 プランBが選択されなかった割合 設問1でプランAを選択し、

その後、プランBに移った割合

設問1でプランAを選択し、

その後、プランBに移った設問番号

パネルA パネルB パネルC パネルD

(22)

参照

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